JP2010095480A - ラテックス増産剤及びラテックス増産方法 - Google Patents

ラテックス増産剤及びラテックス増産方法 Download PDF

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Abstract

【課題】樹木のラテックス生産能力そのものを改善し、ラテックスを効率よく増産させることができるラテックス増産剤、及び該ラテックス増産剤を用いるラテックスの増産方法の提供。
【解決手段】植物ホルモン又はその誘導体である1種類以上の化合物を有効成分とすることを特徴とするラテックス増産剤、前記植物ホルモンが、乳管形成促進作用を有することを特徴とする前記記載のラテックス増産剤、及び、前記ラテックス増産剤を、ラテックス産生植物の幹又は茎に付着させる工程を有することを特徴とするラテックス増産方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、ラテックスを効率よく増産させることができるラテックス増産剤、及び該ラテックス増産剤を用いるラテックスの増産方法に関する。
天然ゴムは、弾性を有する高分子であり、主にゴムノキの乳管(laticifer)と呼ばれる細胞内で造られているラテックスという乳液を収集し、これに所望の加工をすることにより製造される(例えば、特許文献1参照。)。乳管は、ゴムノキの樹皮内の形成層の外側に年に数層発達する。ラテックスの収集は、一般的に、ゴムノキの幹にナイフ等を用いて溝状に傷をつけて(タッピング)、切断された乳管から流出するラテックスを回収することにより行われている。
天然ゴムは、ゴム製品の主原料として、様々な用途において幅広くかつ大量に用いられている。このため、より高収率でラテックスを得る方法の開発が求められている。より大量のラテックスを採取する方法としては、例えば、ゴムノキの幹に対してエチレンやEthephon(2−クロロエチルホスホン酸)による刺激を加える方法がある。エチレン等を樹皮に塗布することにより、乳管から流出してくるラテックスが傷口で凝固することが抑制されるため、より多くのラテックスを採取することができる。
一方、ジャスモン酸やジャスモン酸前駆体のリノレン酸等を配合したラノリンを、パラゴムノキの幹に塗布することにより、乳管分化が促進され、乳管数(乳管密度)が増大することが報告されている(例えば、非特許文献1参照。)。ジャスモン酸は、リノレン酸を前駆体として生合成されるジャスミンの香気成分の一つであり、植物の成長阻害作用や老化促進作用を有する植物ホルモンの一種である。特に、傷害を受けた場合や病原菌に感染した場合等に合成が促進されることから、環境ストレスに対する抵抗性獲得に機能的に働く環境ストレス抵抗性誘導ホルモンとして知られている。なお、非特許文献1では、同じく環境ストレス抵抗性誘導ホルモンであるサリチル酸、アブシジン酸、Ethephon(エチレン)を同様に処理した場合には、ジャスモン酸とは異なり、二次乳管の形成は認められなかったことも報告されている。
ジャスモン酸は、植物に対して多様な機能を有しており、その機能を活かして広く応用されている。例えば、果実の熟化や老化促進、休眠打破等を誘導するため、果実栽培等の農業分野においても利用されている。また、農薬の植物体への取り込みを促進し得ることから、農薬の薬理効果促進剤としての利用も報告されている(例えば、特許文献2参照。)。
特開2002−138102号公報 特開2000−247810号公報 ハオ(Hao)、外1名、アナルズ・オブ・ボタニー(Annals of Botany)、2000年、第85巻、第37〜43ページ。
エチレン刺激によるラテックスを増産する方法は、幹に対し長期的に使用し続けると樹皮割れが生じ易くなるおそれがある。また、エチレン刺激は、乳管からのラテックスの流出をより円滑にする方法であり、樹木のラテックス生産能力そのものを改善するものではなく、当該方法によるラテックスの増産には限界があり、十分ではない。
本発明は、樹木のラテックス生産能力そのものを改善し、ラテックスを効率よく増産させることができるラテックス増産剤、及び該ラテックス増産剤を用いるラテックスの増産方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、ジャスモン酸のみならず、ジャスモン酸誘導体を、ゴムノキの幹又は茎に付着させることにより、乳管形成を促進し得ること、ラテックスの生産能力は、ラテックス生合成部位である乳管細胞の数に大きく依存し、ジャスモン酸やジャスモン酸誘導体の付着により、回収されるラテックス量を増大させることができることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、
(1) 植物ホルモン又はその誘導体である1種類以上の化合物を有効成分とすることを特徴とするラテックス増産剤、
(2) 前記植物ホルモンが、乳管形成促進作用を有することを特徴とする前記(1)記載のラテックス増産剤
(3) 前記化合物が、ジャスモン酸又はその誘導体であることを特徴とする前記(1)記載のラテックス増産剤、
(4) 前記化合物が、下記一般式(I)[式中、R1は炭化水素基であり、R2は水素原子又は炭化水素基である。]で表される化合物であることを特徴とする前記(1)記載のラテックス増産剤、
Figure 2010095480
(5) 前記一般式(I)において、R1が炭素数1〜6のアルキル基であり、R2が炭素数1〜6のアルキル基であることを特徴とする前記(4)記載のラテックス増産剤、
(6) 前記化合物を、水溶性媒体に溶解又は分散させてなることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか記載のラテックス増産剤、
(7) 前記(1)〜(6)のいずれか記載のラテックス増産剤を、ラテックス産生植物の幹又は茎に付着させる工程を有することを特徴とするラテックス増産方法、
(8) 前記植物がパラゴムノキ(Hevea brasiliensis)であることを特徴とする前記(7)記載のラテックス増産方法、
を提供することを目的とする。
本発明のラテックス増産剤により、乳管を有するラテックス産生植物の乳管数(乳管密度)を増大させ、木本来のラテックス生産能力を向上させることができる。このため、本発明のラテックス増産方法により、ラテックス収量を効率よく増量させることができる。
<ラテックス増産剤>
本発明のラテックス増産剤は、植物ホルモン又はその誘導体である1種類以上の化合物を有効成分とすることを特徴とする。なお、本発明及び本願明細書において、植物ホルモンとは、低濃度で植物の生理過程を調節し得る物質を意味し、植物体自身が産生する物質であってもよく、人工的に合成されたものであってもよい。
本発明のラテックス増産剤の有効成分となる化合物としては、植物体に作用させた場合に、該植物体の乳管形成を促進させ、乳管数を増大させることができる作用(乳管形成促進作用)を有する植物ホルモン又はその誘導体であることが好ましい。なお、該化合物としては、乳管形成を直接促進させる化合物であってもよく、間接的に促進させる化合物であってもよい。
乳管細胞からなる乳管は、ラテックス生合成部位であり、ラテックスの生産能力は、ラテックス生合成部位である乳管細胞の数に大きく依存する。一般的に、乳管細胞の形成は自然環境下での木の生理状態や性質に左右されるものであるが、本発明のラテックス増産剤により植物体中の乳管細胞数を増加させることができるため、植物体そのもののラテックス生産能力を向上させ、ラテックス収量を増大させることができる。
本発明のラテックス増産剤の有効成分となる化合物としては、ジャスモン酸及びジャスモン酸誘導体からなる群より選択される1種であることが好ましい。なお、本発明におけるジャスモン酸誘導体は、ジャスモン酸等の公知化合物から公知の合成反応により合成することができる誘導体であって、乳管形成促進作用を有する化合物であれば、特に限定されるものではない。
特に、本発明のラテックス増産剤の有効成分となるジャスモン酸又はジャスモン酸誘導体としては、下記一般式(I)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 2010095480
[式中、R1は炭化水素基であり、R2は水素原子又は炭化水素基である。]
一般式(I)中、R1は炭化水素基である。R1の炭化水素基としては、特に限定されるものではなく、飽和炭化水素基であってもよく、不飽和炭化水素基であってもよい。また、直鎖状の炭化水素基であってもよく、分岐鎖状の炭化水素基であってもよく、環状の炭化水素基であってもよい。なお、本発明において、炭化水素基とは、炭素原子と水素原子からなる官能基を意味する。
飽和炭化水素基としては、例えば、アルキル基やシクロアルキル基等が挙げられる。また、シクロアルキル基は、単環式基であるモノシクロアルキル基であってもよく、多環式基であるポリシクロアルキル基であってもよい。
R1のアルキル基としては、炭素数1〜20のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜6のアルキル基であることがより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、2−メチルブチル基、ネオペンチル基、1−エチルプロピル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、4−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルペンチル基、3,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、2−エチルブチル基等が挙げられる。
R1のシクロアルキル基としては、炭素数3〜20のシクロアルキル基であることが好ましく、炭素数3〜8のモノシクロアルキル基、炭素数4〜10のポリシクロアルキル基であることがより好ましい。具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられる。
不飽和炭化水素基としては、例えば、アルケニル基、アルキニル基、アリール基等が挙げられる。
R1のアルケニル基としては、炭素数2〜20のアルケニル基であることが好ましく、炭素数2〜6のアルケニル基であることがより好ましい。具体的には、ビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、イソブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、3−メチル−2−ペンテニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基等が挙げられる。
R1のアルキニル基としては、炭素数2〜20のアルキニル基であることが好ましく、炭素数2〜6のアルキニル基であることがより好ましい。具体的には、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基等が挙げられる。
R1のアリール基としては、炭素数6〜10のアリール基であることが好ましい。具体的には、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、トリル基、キシリル基等が挙げられる。
本発明において、一般式(I)のR1としては、直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基であることが好ましい。シクロアルキル基やアリール基等の環状炭化水素基よりも、比較的水溶性媒体へ溶解しやすく、取り扱い性に優れるためである。中でも、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基であることが好ましく、炭素数4又は5のアルキル基、炭素数4又は5のアルケニル基、炭素数4又は5のアルキニル基であることがより好ましい。
R1の炭化水素基は、1又は2以上の水素原子が、水酸基、スルホニル基、スルホキシ基等により置換されていてもよい。このような置換基を有する炭化水素基として、具体的には、5―ヒドロキシー2―ペンテニル基、4―ヒドロキシー2―ペンテニル基、5―(スルホオキシ)―2―ペンテニル基等が挙げられる。
一般式(I)中、R2は水素原子又は炭化水素基である。R2の炭化水素基としては、特に限定されるものではなく、R1において挙げられた炭化水素基と同様のものを用いることができる。
また、R2の炭化水素基は、1又は2以上の水素原子が、水酸基、アルキルオキシ基、スルホニル基、スルホキシ基、ニトロ基、アミノ基等により置換されていてもよい。このような置換基を有する炭化水素基として、ヒドロキシエチル基、ジヒドロキシプロピル基等のヒドロキシアルキル基、メトキシエチル基等のアルキルオキシアルキル基等が挙げられる。
本発明において、一般式(I)のR2としては、水素原子、又は直鎖状若しくは分岐鎖状の炭化水素基であることが好ましい。比較的水溶性媒体へ溶解しやすく、取り扱い性に優れるためである。中でも、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜8のアルキルオキシアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基であることがより好ましい。
上記一般式(I)で表される化合物は、少なくとも1つの不斉炭素原子を有するため、光学異性体が存在し得る。また、R1又はR2が不飽和炭化水素基である場合には、シス-トランス異性体が存在し得る。本発明においては、乳管形成促進作用を有する限り、これらの立体異性体のいずれを有効成分としてもよい。
なお、上記一般式(I)で表される化合物としては、ジャスモン酸以外のものであることが好ましい。すなわち、R1が(Z)―2―ペンテニル基であり、かつR2が水素原子である化合物以外であることが好ましい。
また、上記一般式(I)で表される化合物は、いずれも公知化合物又は公知化合物から公知の合成反応により簡便に合成し得る化合物である。したがって、常法により製造することができる。
例えば、上記式(1)において、R1がアルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基であり、かつR2がアルキル基である化合物は、2−アルキルシクロペンテン−1−オン、2−アルケニルシクロペンテン−1−オン、又は2−アルキニルシクロペンテン−1−オンとマロン酸のアルキルエステルとをマイケル付加させた後、脱炭酸させることにより容易に得ることができる。また、このようにして製造した化合物に対して、常法に従いアルコール類とエステル交換させてもよい。その他、上記式(1)において、R2が水素原子である化合物は、例えば、上記のように合成したR2がアルキル基である化合物を、塩基又は酸で加水分解することにより得ることができる。
また、ジャスモン酸又はジャスモン酸誘導体は、塩として本発明のラテックス増産剤に有効成分として含有させてもよい。塩としては、ジャスモン酸誘導体等の乳管形成促進作用を阻害しない限り、特に限定されず、無機塩であってもよく、有機塩であってもよい。例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、ニッケル塩、コバルト塩等の金属塩;アンモニウム塩、グルコサミン塩、エチレンジアミン塩、グアニジン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ジエタノールアミン塩、テトラメチルアンモニウム塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩等のアミン塩; 塩酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、燐酸塩等の無機酸塩;酢酸塩、りんご酸塩、フマ-ル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩等の有機酸塩;及び、グリシン塩、リジン塩、アルギニン塩、オルニチン塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩等のアミノ酸塩を挙げることができる。
本発明のラテックス増産剤は、1種類の乳管形成促進作用を有する化合物を有効成分とするものであってもよく、2種類以上の乳管形成促進作用を有する化合物を有効成分とするものであってもよい。
本発明のラテックス増産剤の有効成分としては、特に、上記一般式(1)において、R1とR2が共に炭素数1〜6のアルキル基である化合物であることが好ましい。中でも、R1がn−ペンチル基であり、R2がn−プロピル基であるプロヒドロジャスモンであることがより好ましい。乳管形成促進作用が高く、かつ水に対する溶解性が高いためである。加えて、ジャスモン酸等よりも、比較的安価であり、コストメリットも大きい。例えば、プロヒドロジャスモンを、後述する水溶性媒体に希釈することにより、乳管形成促進効果と植物体への付着の作業性に優れたラテックス増産剤を、安価に製造することができる。
本発明のラテックス増産剤は、有効成分である1種類又は2種類以上の乳管形成促進作用を有する化合物を、適当な媒体に溶解又は分散させて希釈させることにより得ることができる。該媒体は、乳管形成促進作用を有する化合物を、その乳管形成促進作用を阻害することなく十分に溶解又は分散させ得る媒体であれば、特に限定されるものではなく、公知の溶媒の中から、有効成分である化合物の性質、使用方法等を考慮して、適宜選択して用いることができる。
該媒体として、例えば、水;カルナバロウ、密ロウ等のワックス類;ラノリン等のグリース類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;メチレンクロリド、クロロホルム、四塩化炭素、テトラクロロエタン、ジクロロエタン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエ-テル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、エチレングリコールフェニルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、炭酸ジエチル、エチレングリコールアセテート、マレイン酸ジブチル、コハク酸ジエチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、イソホロン等のケトン類;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等のアルコール類;ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド、スルホラン等のスルホキシド類;ニトロエタン、ニトロベンゼン等のニトロ化合物類;アセトニトリル等のニトリル類;及び、ピリジン類等を挙げることができる。
本発明のラテックス増産剤の媒体としては、5〜50℃において液状であるものが好ましい。この温度において液状であれば、十分に粘度が低いため、ラノリン等の粘度が高く半固形状の媒体よりも、より簡便に植物体に付着させることができるためである。具体的には、水、ハロゲン化炭化水素類、ケトン類、アルコール類等の水溶性媒体が好ましい。中でも、水やアルコール類等であることがより好ましい。なお、本発明において水溶性媒体とは、水と容易に混和し得る媒体を意味する。
また、本発明のラテックス増産剤の媒体としては、1種類を用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。例えば、水とアルコールとの混合溶液であってもよく、水とケトン類との混合溶液であってもよい。
本発明のラテックス増産剤中の乳管形成促進作用を有する化合物の濃度は、植物体へ付着させた場合に、乳管形成促進効果を奏するために十分な濃度であればよく、乳管形成促進作用を有する化合物の種類、用いる媒体の種類、植物体への付着方法等を考慮して、適宜決定することができる。例えば、有効成分としてプロヒドロジャスモンを用いた場合には、0.05%(w/v)以上であることが好ましく、0.05〜0.1%(w/v)であることがより好ましい。
本発明のラテックス増産剤の剤型は、植物体に付着させることが可能な剤型であれば、特に限定されるものではなく、液剤、水和剤、エマルジョン、懸濁剤、ゾル剤、ペースト剤、シート剤等を挙げることができる。植物への付着が簡便であるため、液剤、水和剤、エマルジョン、懸濁剤、ゾル剤等であることが好ましく、液剤であることがより好ましい。
本発明のラテックス増産剤は、本発明の効果を阻害しない限り、乳管形成促進作用を有する化合物と媒体のほかに、分散剤、溶解助剤、粘度調整剤、pH調整剤、保存剤、安定化剤、殺菌剤、殺虫剤、栄養剤等を含有していてもよい。
分散剤としては、例えば、公知の界面活性剤の中から適宜選択して用いることができる。界面活性剤としては、陰イオン性界面活性剤、非イオン界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤のいずれであってもよく、1種類を用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
好ましい分散剤としては、例えば、2種以上のアルキレンオキシドのブロック縮重合体、ポリオキシアルキレンエーテル系化合物、ポリオキシアルキレングリコール脂肪酸エステル系化合物、多価アルコール系脂肪酸エステル化合物、ポリオキシアルキレン多価アルコール系脂肪酸エステル化合物、ポリオキシアルキレンアルキルアミン化合物、アルキルアルカノールアミド化合物等が挙げられる。
粘度調整剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose,CMC)、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子の中から適宜選択して用いることができる。中でも、カルボキシメチルセルロースを用いることが好ましい。
本発明のラテックス増産剤は、本発明の効果を阻害しない限り、乳管形成促進作用を有する化合物以外の他の植物ホルモンを含有していてもよい。このような植物ホルモンとして、例えば、オーキシン類、インドール酢酸、ジベレリン、サイトカイニン、アブシジン酸、エチレン、Ethephon、ブラシノステロイド類、フロリゲン、サリチル酸等が挙げられる。
<ラテックス増産方法>
本発明のラテックス増産方法は、本発明のラテックス増産剤を、ラテックス産生植物の幹又は茎に付着させる工程を有することを特徴とする。本発明のラテックス増産剤を幹等に付着させることにより、この付着させた部位及びその近傍の乳管の分化形成が促進され、乳管数が増大することにより、乳管で生産されるラテックス量が増大し、タッピングによって、より大量のラテックスを回収することができる。
本発明において、本発明のラテックス増産剤を付着させるラテックス産生植物は、ラテックス(主にポリイソプレン)を産生する植物であれば、特に限定されるものではなく、乳管を有しており、乳管中にラテックスが含まれている植物であってもよく、乳管細胞内ではなく細胞間隙中にラテックスが含まれている植物であってもよい。このようなラテックス産生植物として、例えば、トウダイグサ科のパラゴムノキ(Havea brasiliensis)、セアラゴムノキ(Manihot glaziovii)、クワ科のインドゴムノキ(Ficus elastica)、パナゴムノキ(Castilloa elastica)、ラゴスゴムノキ(Ficus lutea Vahl)、マメ科のアラビアゴムノキ(Accacia senegal)、トラガントゴムノキ(Astragalus gummifer)、キョウチクトウ科のクワガタノキ(Dyera costulata)、ザンジバルツルゴム(Landolphia kirkii)、フンツミアエラスチカ(Funtumia elastica)、ウルセオラ(Urceola elastica)、キク科のグアユールゴムノキ(Parthenium argentatum)、ゴムタンポポ(Taraxacum kok−saghyz)、アカテツ科のガタパーチャノキ(palaguium gatta)、バラタゴムノキ(Mimusops balata)、サポジラ(Achras zapota)、ガガイモ科のオオバナアサガオ(Cryptostegia grandiflora)等が挙げられる。中でも、乳管細胞を有するパラゴムノキ、セアラゴムノキ、ゴムタンポポ等であることが好ましく、工業用天然ゴム原料として汎用されているパラゴムノキである。
本発明のラテックス増産方法は、本発明のラテックス増産剤を、植物の幹又は茎に付着させる。幹等に付着させることにより、乳管の多い場所へ効率的に働きかけることができる。付着方法は、ラテックス増産剤を幹に直接付着させることが出来る方法であれば、特に限定されるものではなく、例えば、有効成分を水溶性媒体に希釈させたラテックス増産剤を、刷毛等を用いて直接幹等に塗布してもよく、スプレー等を用いて噴霧してもよい。また、植物へのラテックス増産剤の付着量は、乳管形成促進効果が得られる量であれば、特に限定されるものではなく、ラテックス増産剤の有効成分の種類や濃度、付着方法、植物の樹齢や種類等を考慮して適宜決定することができる。
また、塗布期間は、植物において乳管が形成される数ヶ月〜1年程度で十分である。従来法のエチレン刺激による方法の場合には、長期的なエチレン刺激により、幹への悪影響が懸念されるが、本発明のラテックス増産方では、本発明のラテックス増産剤による処理期間は乳管が形成されるまでの短期間であるため、植物への負担を顕著に軽減することができる。
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下「%」とは、特に記載が無い限り、「%(w/v)」を意味する。
[実施例1]
<ラテックス増産剤の調製>
プロヒドロジャスモンを有効成分とするラテックス増産剤を調製した。
具体的には、ジャスモメート液剤(明治製菓株式会社製)を、1%CMC溶液を用いて希釈し、50倍希釈溶液(0.1%プロヒドロジャスモン溶液)、100倍希釈溶液(0.05%プロヒドロジャスモン溶液)、500倍希釈溶液(0.01%プロヒドロジャスモン溶液)を、それぞれ調製し、これらをラテックス増産剤として用いた。なお、ジャスモメート液剤の組成は、以下の通りである;5%プロヒドロジャスモン、33%1−プロパノール、30%界面活性剤、及び32%水。
<ラテックス増産剤の付着>
スプレーによる噴霧又は刷毛による塗布により、樹齢1年目のパラゴムノキに、上記で調製したラテックス増産剤を、幹表面に0.1mL/cm2となるように、2ヶ月間にわたり2週間ごとに1回(合計4回)塗布した。各有効成分濃度に対し、3本の木に対して行った。その後、タッピングにより塗布部分から回収されたゴム(ラテックス)量を測定した。なお、タッピングは2日おきに3回実施し、各回の平均値を、回収されたゴム量とした。
図1は幹に付着させたラテックス増産剤のプロヒドロジャスモン濃度(%)と回収されたゴム量(mg)との関係を示した図である。図中、「◆」が未処理(付着処理なし)のパラゴムの結果を、「□」は塗布により付着させたパラゴムの結果を、「▲」は噴霧により付着させたパラゴムの結果を、それぞれ示している。この結果、全体として、付着させたラテックス増産剤のプロヒドロジャスモン濃度が高いほど、回収されるゴム量が多くなる傾向が観察された。但し、プロヒドロジャスモン濃度が同じラテックス増産剤を付着させた場合であっても、木によってバラツキが大きかった。
次に、比較的ラテックス増産剤の付着効果が高かった塗布により付着させた場合の、各パラゴムノキの木の、塗布部の乳管数(乳管層の数)を調べた。比較対象として、未処理(付着処理なし)の3本のパラゴムの木に対しても同様に乳管数を測定した。なお、乳管数は、該部分の組織切片を作成し、これに対してオイルレッドによる色素染色を行うことにより調べた。
この結果、未処理の木ではいずれも乳管数は1層であった。これに対して、0.01%プロヒドロジャスモン溶液を塗布した場合、乳管数が1層のものが2本、2層のものが1本であった。また、0.05%プロヒドロジャスモン溶液を塗布した場合、乳管数が1層のものが1本、2層のものが2本であった。さらに、0.1%プロヒドロジャスモン溶液を塗布した場合、乳管数が1層のものが1本、2層のものが1本、3層のものが1本であった。すなわち、全体として、付着させたラテックス増産剤のプロヒドロジャスモン濃度が高いほど、乳管数が多くなる傾向が観察されたが、ゴム量と同様に、プロヒドロジャスモン濃度が同じラテックス増産剤を付着させた場合であっても、木によってバラツキが大きかった。
図2は、ラテックス増産剤を塗布により付着させた場合の、乳管数とゴム量との関係を示した図である。図中、「△」が0.01%プロヒドロジャスモン溶液を塗布した木の結果を、「○」が0.05%プロヒドロジャスモン溶液を塗布した木の結果を、「●」が0.1%プロヒドロジャスモン溶液を塗布した木の結果を、それぞれ示している。また、一点鎖線は0.01%プロヒドロジャスモン溶液を塗布した場合の乳管数とゴム量との関係の近似直線であり、二点鎖線は0.05%プロヒドロジャスモン溶液を塗布した場合の近似直線であり、点線は0.1%プロヒドロジャスモン溶液を塗布した場合の近似直線である。この結果、乳管数が多くなるほど、回収されるゴム量が多くなることが分かった。
以上の結果より、プロヒドロジャスモンを有効成分とする本発明のラテックス増産剤を幹等に付着させることにより、乳管形成が促進され、乳管数を増加させることができ、この結果、ラテックス(ゴム)を増産し得ることが明らかである。
本発明のるラテックス増産剤及び該ラテックス増産剤を用いるラテックスの増産方法を用いることにより、ラテックス産生植物の乳管数(乳管密度)を増大させ、木本来のラテックス生産能力を向上させることができるため、天然ゴムの産生の分野で特に有用である。
実施例1において、幹に付着させたラテックス増産剤のプロヒドロジャスモン濃度(%)と回収されたゴム量(mg)との関係を示した図である。 実施例1において、ラテックス増産剤を塗布により付着させた場合の、乳管数とゴム量との関係を示した図である。

Claims (8)

  1. 植物ホルモン又はその誘導体である1種類以上の化合物を有効成分とすることを特徴とするラテックス増産剤。
  2. 前記植物ホルモンが、乳管形成促進作用を有することを特徴とする請求項1記載のラテックス増産剤。
  3. 前記化合物が、ジャスモン酸又はその誘導体であることを特徴とする請求項1記載のラテックス増産剤。
  4. 前記化合物が、下記一般式(I)で表される化合物であることを特徴とする請求項1記載のラテックス増産剤。
    Figure 2010095480
    [式中、R1は炭化水素基であり、R2は水素原子又は炭化水素基である。]
  5. 前記一般式(I)において、R1が炭素数1〜6のアルキル基であり、R2が炭素数1〜6のアルキル基であることを特徴とする請求項4記載のラテックス増産剤。
  6. 前記化合物を、水溶性媒体に溶解又は分散させてなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載のラテックス増産剤。
  7. 請求項1〜6のいずれか記載のラテックス増産剤を、ラテックス産生植物の幹又は茎に付着させる工程を有することを特徴とするラテックス増産方法。
  8. 前記植物がパラゴムノキ(Hevea brasiliensis)であることを特徴とする請求項7記載のラテックス増産方法。
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