JP2010255138A - パルプ漂白工程の制御方法および制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】解析により求めたプロセス応答の定常ゲイン値を利用してパルプ原料のpH制御を実行する。
【解決手段】実験室での滴定操作を通じて得られた苛性ソーダ(NaOH)薬液の添加率の変化に対する原料濾液の終pH値の測定データ群をn次の多項式を用いて連続曲線として近似する。この多項式を微分して苛性ソーダ薬液の添加率の変化に対する原料濾液の終pH値の変化の大きさである定常ゲインの値を求める。計算結果を基に、横軸に原料濾液の終pH値、縦軸に定常ゲインの値を取ってグラフ化すると、各濾液の終pH値での単位苛性ソーダ薬液の添加率の変化に対する濾液の終pH値の変化幅(定常ゲインの値)を知ることができる。この変化幅を基に定常ゲインの代表値を決めた後、終pH値に従って、定常ゲインの値を外部から段階的に切り替えて変化させる機能をモデル予測制御に組み込んで、pH制御を実行する。
【選択図】図9
【解決手段】実験室での滴定操作を通じて得られた苛性ソーダ(NaOH)薬液の添加率の変化に対する原料濾液の終pH値の測定データ群をn次の多項式を用いて連続曲線として近似する。この多項式を微分して苛性ソーダ薬液の添加率の変化に対する原料濾液の終pH値の変化の大きさである定常ゲインの値を求める。計算結果を基に、横軸に原料濾液の終pH値、縦軸に定常ゲインの値を取ってグラフ化すると、各濾液の終pH値での単位苛性ソーダ薬液の添加率の変化に対する濾液の終pH値の変化幅(定常ゲインの値)を知ることができる。この変化幅を基に定常ゲインの代表値を決めた後、終pH値に従って、定常ゲインの値を外部から段階的に切り替えて変化させる機能をモデル予測制御に組み込んで、pH制御を実行する。
【選択図】図9
Description
本発明は、パルプ漂白工程の制御方法および制御装置に関し、より具体的には、パルプ製造工場の漂白工程のpH制御に関する。
クラフトパルプの製造では、蒸解、洗浄、精選工程を経て、最終プロセスの漂白工程(晒工程)で漂白薬品を用いて高白色度のパルプに仕上げて行く。
図12は、漂白工程における全体フローの一例を示す図である。同図に示す多段の漂白工程は4段からなる。
まず第1段で、スタンドパイプ1208−1に投入された原料の蒸解パルプは、その出口で二酸化塩素(ClO2)が添加され、高さ6〜7mの晒塔1202−1内を下から上に移動して、木材由来の化学物質の着色成分の酸化分解が行われる。
次の第2段では、洗浄フィルター1210−1において苛性ソーダ(NaOH)が添加され、次いで、スタンドパイプ1208−2の出口で酸素ガス(O2)を注入して、晒塔1202−2内で原料の着色成分がアルカリ抽出により除去され、漂白反応が進む。
続く第3段において、洗浄フィルター1210−2で苛性ソーダが添加された原料は、スタンドパイプ1208−3の出口で過酸化水素(H2O2)が添加され、晒塔1202−3でさらなる漂白が行われる。
最後の第4段において、洗浄フィルター1210−3で苛性ソーダが添加されpHが調節された原料は、スタンドパイプ1208−4の出口で再び、二酸化塩素(ClO2)が添加され、さらに晒塔1202−4で最後の漂白が行われて、所定の白さに仕上げられる。
そして、晒塔1202−4から出てきた原料は洗浄フィルター1210−4およびスタンドパイプ1208−6を経て払い出される。
漂白工程で考慮すべき項目として、パルプの白色度、薬品添加率、pH、原料濃度、温度、生産量、原料の滞留時間などがある。図12に示す例では、パルプ白色度計1204−1〜1204−5においてパルプの白色度が、そして、濾液サンプル箱1206−1〜1206−4にそれぞれ設けられた濾液pH計1212−1〜1212−4においてpHがそれぞれ測定される。
ここで、pH制御は非線形性が強い制御対象であるため、古くからコントロールが難しい対象として知られている。例えば、非特許文献1には、pH制御の困難性、そして、pH制御の全般について記載されている。この非線形性の強い制御対象に対して、例えば、通常のPIDコントローラーを用いて、これをコントロールしようとする場合、PID制御の比例帯(P)の設定が困難である。PIDコントローラーを用いた制御では、通常、その比例帯の制御ゲイン値として、通常、1つの値しか持つことができない。そのため、特にpHの値に従って適切なゲイン値が変化してくるpH値の自動制御は難しいため、自動制御化を諦め、人間が監視しながら手動操作によってpH値管理をしているケースが多い。
この対策として、PID制御の比例帯の値を複数段からなる階段状、或いは、折れ線グラフ状の可変値を取れるように設定しておき、pH値の変化に従って自動的に比例帯の値を切り替えられるようにDCS(Distributed Control System)などに組み込まれているゲインスケジューリング機能を用いて対応して行くことが考えられる。しかし、pH制御では同時に、非常に長いむだ時間の問題が付きまとってくることが多い。このため、DCSのゲインスケジューリング機能を利用したとしても、このむだ時間の要因により良好なコントロールの実現が難しく、やはりpH制御に関しては人間による手動操作で対応する場合が多かった。
また、非特許文献2や非特許文献3には、同様な理由からDCSによるコントロールが困難な工場の排水系に対して、例えば、ファジィ制御のような特殊な制御ツールを用いてpH制御を実現する技術が記載されている。
シンスキー著(池田、高尾、富田、山本訳)、「pHとイオン制御」、マグロウヒル好学社、1977年
磯浜靖、山ロ和夫、「火力発電所排水処理場におけるファジィ調節計を適用した最適pH制御」、計装、9月号、Vol.45、No.13、2002年
大倉孝之、「ファジィ制御による排水pH制御実施事例」、紙パ技協誌、Vol.61、No.3、2007年
パルプ製造工場のパルプ漂白工程において、漂白性能の良否に強く影響を与えるパルプ原料のpH値をコントロールしていこうとする場合、一般に良く使われているPID制御に限らず、高度な制御機能を持つモデル予測制御を適用しても、その制御性に困難さを生じる場合がある。
例えば、モデル予測制御の機能を用いてpH値を制御する場合、添加薬品の添加率からpH値への応答状態を表す伝達関数に含まれる「定常ゲイン」、「時定数」、そして、「むだ時間」などの値を決めて制御コントローラーに組み込んで行かなければならない。しかし、pH値の応答は非線形性が非常に強い上に複雑な動きをする。そのため、通常、固定した1つの定常ゲインの値ではうまくコントロールできない。
つまり、パルプの漂白プロセスにおいてパルプ原料のpH制御を実行する場合、pH値は強い非線形性を持つため非常にコントロールが難しく、また、不安定となりがちである。
また、モデル予測制御の場合、後述するように、実際の対象プロセスでステップ応答テストを行ない、そのテストデータに基づいて多段階状からなる複数の定常ゲインの値を決定する作業が必要となる。しかし、工場の製造ラインのように、pH値の設定条件を大きく変化させて行くステップ応答テストの実施が非常に難しい場合には、最終的に得たい複数の定常ゲインの値を適切に決められないケースが多い。
また、クラフトパルプの漂白工程で使われる漂白薬品である二酸化塩素(ClO2)薬液は強酸性を示す薬品であり、添加量の僅かな変化によりパルプ原料のpH値が大きく変化する。また、この漂白薬品は高価なため、漂白薬品の使用量を少しでも減らすよう、漂白性能の良否に強く影響を与えるpHを、pH値調整用の苛性ソーダ(NaOH)薬液の添加率を調節することにより適切に制御していくことが望まれている。
本発明はこのような問題に対してなされたものであり、その目的とするところは、パルプ原料のpH制御を実行するパルプ漂白工程の制御方法および制御装置を提供することにある。
このような目的を達成するために、本発明に係るパルプ漂白工程の制御方法は、入側洗浄フィルター、晒塔および出側洗浄フィルターを順次通過するパルプの漂白工程においてpH値を制御する制御システムにおけるパルプ漂白工程の制御方法であって、前記出側洗浄フィルターで測定された終pH値の測定値の入力を受けるステップと、前記入側洗浄フィルターにおいて前記パルプに添加する苛性ソーダ(NaOH)の添加率を操作変数とし、前記終pH値を応答変数とするモデル予測制御のための伝達関数を、入力を受けた前記終pH値に適用して、前記苛性ソーダ(NaOH)の添加率の変化に対する前記終pH値の変化幅を決定するステップと、決定された前記変化幅に基づいて前記苛性ソーダ(NaOH)の添加率を制御するステップとを備え、前記変化幅を決定するステップは、前記伝達関数に含まれた定常ゲインの値を、入力を受けた終pH値の変化に従って複数段からなる値で逐次切り替えるステップを含む。
ここで、所定の範囲に渡って前記苛性ソーダ(NaOH)の添加率および前記終pH値の入力を受けるステップと、入力を受けた前記苛性ソーダ(NaOH)の添加率および前記終pH値の対応関係を、前記苛性ソーダ(NaOH)の添加率を変数とするn次の関数で近似するステップと、近似された前記n次の関数を微分することにより、前記定常ゲインの値を連続関数として算出するステップと、前記連続関数で表された定常ゲインの値を、複数段からなる階段状の値に近似するステップと、階段状の値に近似された前記定常ゲインを前記伝達関数に組み込むステップとを更に備え、前記変化幅を決定するステップは、近似された前記定常ゲインを組み込んだ伝達関数を使用することができる。
ここで、所定の範囲に渡って入力される前記苛性ソーダ(NaOH)の添加率および前記終pH値は、実験室における滴定テストにより測定された値とすることができる。
また、前記出側洗浄フィルターは、パルプ漂白工程の最終段に設けられたものとすることができる。
本発明の別の態様によれば、本発明に係るパルプ漂白工程の制御システムは、入側洗浄フィルター、晒塔および出側洗浄フィルターを順次通過するパルプの漂白工程においてpH値を制御するパルプ漂白工程の制御システムであって、前記出側洗浄フィルターで濾過されたパルプ液のpH値である終pH値を測定するpH計と、前記pH計により計測された終pH値の入力を受け、前記入側洗浄フィルター出側において前記パルプに添加する苛性ソーダ(NaOH)の添加率を操作変数とし、前記終pH値を応答変数とするモデル予測制御のための伝達関数を、入力を受けた前記終pH値に適用して、前記苛性ソーダ(NaOH)の添加率の変化に対する前記終pH値の変化幅を決定するpH制御部と、決定された前記変化幅に基づいて前記苛性ソーダ(NaOH)の添加率を制御する添加率制御部とを備え、前記pH制御部は、前記伝達関数に含まれた定常ゲインの値を、入力を受けた前記終pH値の変化に従って複数段からなる値で逐次切り替える。
本発明では、実機でのステップ応答テストを省略し、実験室(ラボ)での滴定テストから得たデータを使って、パルプ原料の漂白工程のpH制御に用いる定常ゲインの値を効率的に求めることが特徴の一つである。
定常ゲインの値を求めるに当たって、実験室(ラボ)での滴定操作で得られた数点の滴定データを基に、滴定曲線の全体形状を推定し、その滴定曲線から、単純な差分計算に拠ってその曲線の接線状の直線の傾きから「定常ゲイン」の値を求める。或いは、実験室(ラボ)の滴定操作で得られたデータ群をなめらかなn次の多項式で連結するよう近似して滴定曲線を数式の形で決定する。そして、この多項式を微分することにより、pHに対する「定常ゲイン」を数式の形で求める。
そのようにして得られた定常ゲインの連続曲線を基にして、実用上適切と判断される数個からなるpH領域に対応させる形で、各pH領域での定常ゲインの代表値を決める。この代表値を、複数段からなる多段階の定常ゲインの値としてモデル予測制御の制御機能部分に組み込み、パルプ原料のpH値に従って、制御コントローラーの定常ゲインの値を切り替えて、パルプ漂白工程のpH制御を行う。
本発明によれば、パルプ原料のpH値をハンチングさせることなく、pH値を安定化することができる。
また、パルプの漂白工程において、パルプ原料のpH値を目標値に一致するようコントロールすることにより、晒反応がより効率的な条件下で行われるようになる。結果として、パルプ漂白に必要となる高価な晒薬品の使用量を低減できる。同時に、仕上りパルプの白色度を安定化する効果がある。
また、実機でのステップ応答テストを省略し、実験室(ラボ)の滴定テストから得た滴定データを用いることにより、製造工程の状態を乱すことなく、実プロセスでのpH制御に用いる多段で複数個からなる適切な「定常ゲイン」の値を簡便に決めることができる。
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
本発明の実施形態では、実際のパルプ原料を用いた実験室(ラボ)での苛性ソーダ(NaOH)薬液の添加率の滴定操作によるテストを通じて得られた、苛性ソーダ(NaOH)薬液の添加率の変化に対する原料濾液の終pH値の10個ほどの測定データを用いる。このデータ群をn次の多項式を用いて連続曲線として近似した後、この多項式を微分することにより、苛性ソーダ(NaOH)薬液の添加率の変化(△苛性ソーダ添加率)に対する原料濾液の終pH値の変化(△pH)の大きさである定常ゲインの値を連続関数として求める。次に、この計算結果を基に、横軸に原料濾液の終pH値、縦軸に先に求めた定常ゲインの値を取ってグラフ化する。これにより、各濾液の終pH値での単位苛性ソーダ(NaOH)薬液の添加率の変化に対する濾液の終pH値の変化幅(定常ゲインの値)を知ることができる。
次いで、このグラフを基にして、複数の領域からなる終pH領域でのプロセスの定常ゲイン(△苛性ソーダ(NaOH)薬液の添加率→濾液の終pH値)の代表値を決める。その後、終pH値に従って、定常ゲインの値を外部から段階的に切り替えて変化させる機能をモデル予測制御に組み込んで、pH制御を実行する。
図1は、クラフトパルプの漂白工程において、本実施形態で対象とする漂白設備のうち、晒塔まわりの設備における処理フローを示す。同図に示す構成は、図12における最終段を構成する晒塔およびその周辺の設備に対応する。
図1に示すフローにおいて、前の工程で処理されたパルプ原料は、晒塔1202−4の入側洗浄フィルター1210−3に供給され、洗浄水で洗浄しながらパルプ原料はパルプ濃度で12%ほどの高濃度まで脱水処理される。ここで、入側洗浄フィルター1210−3から脱水された白水の一部は濾液として下方にある濾液サンプル箱1206−3に集められる。この濾液サンプル箱1206−3にはpH計1212−3が設置されており、濾液のpH値が測定できるようになっている。
一方、入側洗浄フィルター1210−3で脱水されたパルプ原料には、フィルター出口で、続く晒塔1202−4での漂白反応に向け、パルプ原料のpH値を調節するために苛性ソーダ(NaOH)薬液が添加されると共に、パルプ原料は希釈水により約10%のパルプ濃度に調整されて下にあるスタンドパイプ1208−4に落とされる。
このスタンドパイプ1208−4では、ここに設置されている入側パルプ白色度計1204−4のセンサーにより、漂白前のパルプ原料のISO白色度の値がオンラインで測定される。尚、本実施形態で使用されるパルプ白色度計として、例えばメッツォオートメーション(会社名)製のコルメック(商品名)を使用することができる。
その後、スタンドパイプ1208−4の出口で、続く晒塔1202−4で進行させるパルプ漂白反応に向け、原料中にパルプ漂白薬品である二酸化塩素(ClO2)薬液が添加されると共に、原料温度はスチーム加熱を用いて約70℃に調節される。
その後、パルプ原料は続く晒塔1202−4に高濃度ポンプ112で搬送される。そして、この大容量の晒塔1202−4において、パルプ原料は塔底から塔頂に向かいゆっくり移動しながら2〜4時間の長時間をかけ先に添加した二酸化塩素(ClO2)による漂白反応の進行を受けて、次第に高白色度のパルプに仕上げられる。
そして、晒塔1202−4の塔頂に達したパルプ原料は塔頂スクレーパー114により掻き出されていくが、そのパルプ原料は出側洗浄フィルター1210−4によって、再び、洗浄処理と脱水処理を受けて、下方のスタンドパイプ1208−6に落とされて最終的に完成原料として高濃度ポンプ128で払い出される。
また、入側洗浄フィルター1210−3と同様に、出側洗浄フィルター1210−4の濾液ラインの濾液サンプル箱1206−4にもpH計1212−4が設置されており、濾液のpH値を測定する。この濾液のpH値は晒塔1202−4の内部で長時間かけてパルプ原料の漂白反応が進行した後の重要なpH値として注意して管理していく必要がある。尚、この出側パルプ濾過pH計1212−4の示すpH値は、「終pH」、または、「終pH値」と呼ばれる。
また補足するに、漂白反応時のpH値として、直接、パルプ原料のpH値を測定できるのが望ましいが、一般に、漂白工程のpH値はパルプ原料を洗浄した濾過フィルターの濾液の終pH値を測定する場合が多い。これは、通常、工業的に使用されるpH計センサーがその構造上、非常に壊れ易いガラス薄膜の電極を持つためであり、パルプ原料のpH値を直接、測定することができない。そのため、ここで対象とした晒プロセスにおいても、洗浄フィルターの濾液において終pH値を測定するほかない。その結果、濾液のpH指示値は、パルプ原料が大容量の晒塔1202−4の内部を通過するために必要な長い原料滞留時間分(2〜4時間)の時間遅れを伴う。これは、pH制御を実行する上で付随する厄介な問題となる。
本実施形態において測定されるpH計の指示値は、入側のパルプ濾液での測定値と終pH値の2種類である。入側のパルプ濾液での測定値から晒塔1202−4に供給されてくるパルプ原料のpH値の外乱状態を知ることができ、また、出側の洗浄フィルター1210−4の濾液から、晒塔1202−4内部でパルプ原料の漂白反応が進行した後のpH値を終pH値として知ることができる。
尚、晒塔の内容量は常に一定であるため、晒塔を通過するためにかかるパルプ原料の滞留時間は生産量に伴なって反比例的に変化することになるが、本例の晒塔1202−4は、平均的な生産量の場合、約200分(3時間20分)ほどの長い滞留時間分の移送遅れを伴なう反応設備である。従って、出側の洗浄フィルター1210−4の濾液の終pH値では、晒塔1202−4をパルプ原料が移動して通過してくる約200分の測定時間遅れが避けられないことになる。
更に、出側洗浄フィルター1210−4側のスタンドパイプ1208−6にもパルプ白色度計センサー1204−5が設置されており、オンラインでパルプのISO白色度の値を測定する。この測定値は、漂白パルプの製造管理上、最も重要な完成原料のパルプ白色度の値として厳重に管理される。
また、このプロセスでは、前述したように晒塔1202−4の入口で入側パルプ原料に二酸化塩素(ClO2)薬液が添加される。その後、晒塔1202−4を出た後のスタンドパイプ1208−6において、出側パルプ白色度計1204−5で、その薬液添加の結果としての完成原料の白色度の値が測定されパルプ原料の晒状態の良否が判定される。もし、完成原料のパルプ白色度の値が目標値から外れた場合には、晒塔1202−4の入り口で添加される二酸化塩素(ClO2)薬液の添加率を適切な状態となるようにコントロールしなければならない。
しかし、前述の理由から、晒塔1202−4の塔頂から原料が完全に出て、出側洗浄フィルター1210−4で処理されてスタンドパイプ1208−6に設置の出側パルプ白色度計1204−5によって測定されるまで、途中のパルプ白色度の状態については勿論、終pH値についてもpH計1212−4によって測定されるまで知ることができない。そして、晒塔1202−4の入り口で添加される二酸化塩素(ClO2)薬液の添加操作の良否が判るのは晒塔1202−4の原料滞留時間分を経た約200分の長時間後になる。
このように、完成原料の仕上り白色度の値や終pH値が測定されるまでには、長い時間遅れが避けられない。このことも、パルプ白色度のコントロールやpH制御を困難なものにしている。
そして、漂白工程における漂白反応をできるだけ効率良く行って行くためには、漂白パルプ原料のpH値、つまり、このプラントでは「終pH値」の管理が非常に重要なことが判っている。図2には、それを説明するために、二酸化塩素(ClO2)薬品によるパルプ原料の漂白性能の傾向を、パルプ原料のpH値(終pH値)に対する完成パルプのISO白色度の値(単位:%)として示している。
このグラフは、二酸化塩素(ClO2)薬液の添加率が一定の条件下でのパルプ原料の白色度の到達変化の状態を示している。低pH領域では原料pH値(終pH値)の上昇と共にパルプ原料の到達白色度が上昇し漂白性能が次第に上がって行くが、原料pH値(終pH値)が5を超えた辺りで漂白効率は最大となり、そこを境に、それ以上の原料pH値(終pH値)では逆に漂白性能が低下してくることを示している。従って、ここで対象とした晒塔での漂白反応では、パルプ原料のpH値(終pH値)を、高い漂白性能が達成でき、また同時に、pH制御が十分に安定して行える領域、即ちできるだけ高目の原料pH値(終pH値)である4.8〜4.4辺りのpH領域に保持することが望ましいことが判っている。また、余り高過ぎる原料pH値(終pH値)ではpH制御が過敏な状態に近付くため不安定になる傾向にあり、更に、原料pH値(終pH値)が5を超えて増大すると、逆に漂白性能が低下して到達白色度の値も低下してしまうことが判っている。
ここで、漂白薬品の二酸化塩素(ClO2)薬液は前述したように強酸性を示す薬品であるため、この「終pH値」は、二酸化塩素(ClO2)薬液の増添によってより酸性域の方向に変化し、そして、わずかな減添によりアルカリ域の方向に変化する。そのため、二酸化塩素(ClO2)薬液を用いたこの晒塔1202−4での漂白設備では、二酸化塩素(ClO2)薬液の添加前の入側洗浄フィルター1210−3の出口の所でパルプ原料に強アルカリ性の苛性ソーダ(NaOH)薬液を添加できるような設備としている。そして、濾液pHの終pH値の状態を見て、この苛性ソーダ(NaOH)薬液でpH値を調節できるようになっている。
例えば、終pH値は目標範囲内の値に入っていたが、何らかの原因で完成原料のパルプ白色度の値が目標値よりも低下してしまったような場合、そのための最初の対策として漂白薬品の二酸化塩素(ClO2)薬液を増添して行く必要がある。しかし、この二酸化塩素薬液は強酸性であるため、添加量を必要以上に増添すると、パルプ原料の終pH値が意に反して低下し、漂白性能が悪化し始める。その結果、高価な薬品をむだに消費してしまうことになる。
また逆に、パルプ白色度の値が高くなり過ぎたような場合には、二酸化塩素(ClO2)薬液を減添する必要があるが、この場合には減添操作によりpH値が上昇する。しかし、終pH値が5近辺に近付いてくると、次第にpH値のコントロールが不安定傾向な状態となり始めたり、また場合によって終pH値が5を超えてしまうとコントロールの不安定性に加えて漂白性能が悪化し始めるといった問題が生じてくる。
また、pH値は溶液中の水素イオン濃度の常用対数値にマイナスを乗じた値として定義されている。そのため、例え小さなpH値の変化であっても、実際の測定原料中の水素イオン濃度はとても大きく変化していることになり、pH値の変化は制御系に対し強い非線形性を示すことになる。
以上で説明したように、晒塔のパルプ原料(濾液)の終pH値は、これをコントロールする苛性ソーダ(NaOH)薬液の添加率の変化に対しても、そして、パルプ原料の白色度の値をコントロールする二酸化塩素(ClO2)薬液の添加率の変化に対しても、共に、強い非線形性を示して複雑に変化する。このことからも、pH制御自体、難しいコントロール対象であることが良く理解されるであろう。この点については、後で更に詳述する。
図3に、晒塔の終pH値に対して、通常のモデル予測制御機能を用いてpH制御を実施した時の状態例を示す。また、図4には、その時、この晒塔まわりのpH制御に対して適用したモデル予測制御に組み込んだ伝達関数モデルの構成マトリックスを示す。
図4において、表400の中の各要素は、操作変数または外乱変数の変化に対する応答変数の伝達関数を示しており、ここでは、苛性ソーダ(NaOH)薬液の添加率を操作変数に取り、晒塔出側パルプ白色度と晒塔出側濾液pH(終pH値)の値を応答変数(制御変数)として、晒塔入側パルプ白色度、晒塔入側パルプ濾過pHの値、二酸化塩素(ClO2)薬液の添加率を外乱変数に取っている。
そして、ここでは、pH制御の基本機能として、フィードフォワードコントロール機能を持つモデル予測制御を用いている。この理由は、前述したような晒塔のpH制御に付随してくるパルプ原料の、晒塔内部での200分程の非常に長い滞留時間に起因するむだ時間の影響を取り除くことのできる制御機能を持たせる必要があるためであり、フィードバックコントロール機能のPID制御では、この長いむだ時間の影響を良好に取り除くことはできないためである。
また、ここでは、モデル予測制御の伝達関数の制御モデルに、一般的な、「むだ時間+一次遅れモデル」を適用して、「苛性ソーダ(NaOH)薬液の添加率」→「出側パルプ濾液の終pH値」に関与する伝達関数の定常ゲインの値には固定値を設定してpH制御を行った場合の実施例を示している。
この場合、長期間の運転に対して、終pH値は概ね良好にコントロールされている。しかし、プロセスの状態によっては、突然終pH値が激しいハンチングを引き起し始め、非常に不安定な状態が治まらずに続く場合があり、実用システムとしては危険で使用できない問題点があることが判った。
図3は、図4の表400中の第4行第2列目に当たる「苛性ソーダ(NaOH)薬液の添加率」→「出側濾液の終pH値」の、「むだ時間+一次遅れモデル」で表わした伝達関数の定常ゲインの値として、数値10の固定値を設定した場合の例を示す。図3において楕円形の破線で囲まれた部分が異常の発生を示しており、濾液の終pH値、そして、これをコントロールする苛性ソーダ(NaOH)薬液の添加率の推移にも長時間に渡って激しいハンチングを引き起こし、安定値に収束しない状態が続いた。
これを防止するために、この固定値の定常ゲインの値を小さい方向、そして、大きい方向に変化させて、いくつかのケースについて制御状態を同様に調べたが、いずれの場合にも、突然発生するpH制御の不安定さを完全に無くすことはできなかった。そして、最終的に、pH制御においては、終pH値の状態に従って、この定常ゲインの値を状況に従って適切な値に変化させながらpH制御を行って行く必要があることが判った。
そこで、モデル予測制御の制御機能に対して、外部の機能から、複数段からなる多段階の定常ゲイン値を切り替えられる機能を組み込み、終pH値を見ながら、モデル予測制御の制御機能の「定常ゲイン」の値を、逐次切り替えてpH制御を行って行く形態のシステムを構成した。図9と図10に、その具体的なシステム構成について示しているが、詳細については後述する。
しかし、モデル予測制御の制御機能に、定常ゲインの値を切り替えてpH制御を行うこの機能を組み込む場合、実際に生産運転をしているプラントにおいて、制御操作端である苛性ソーダ(NaOH)薬液の添加率をかなり大きな範囲で変更し、苛性ソーダ(NaOH)薬液の添加率→終pH値への応答変化の状態について調べるテスト(ステップ応答テスト)を行うことは、最終パルプ製品の白色度品質への影響度が大きく操業状態を乱すことから、許可されないことが多い。
そのため、本実施形態では、実験室(ラボ)において実際のパルプ原料を用い、晒プラントでの漂白反応を模擬したpH滴定テストにより得られた滴定データを基に、定常ゲインの値の変化状態を簡便に見つけて行く方法を採用した。
実験においては、原料パルプを入れた容器を保温器で70℃程度に保持し、二酸化塩素(ClO2)および苛性ソーダ(NaOH)については実機と同一で所定値の濃度のものを添加して、200分の間、揺動しながら漂白反応を行った。図5に実験室(ラボ)で求めた「苛性ソーダ(NaOH)薬液の添加率〜終pH」間の測定例を示す。この測定データを仔細に見ると、いくつかの曲部を持った複雑な曲線となっていることが理解される。
次に、この図5の測定結果を用いて、苛性ソーダ(NaOH)薬液の添加率の変化に対応して、終pH値がどのくらい変化するのかを示す微分係数値(傾き値)を求める。この値が即ち、pH制御の制御機能の部分に組み込む伝達関数に対して変化させる「定常ゲイン」の値に相当する。
この値を計算するため、次の2つの方法を考えた。
第1の方法として、単純な差分計算から求める方法が考えられる。まず、図5のとびとびの測定データをなめらかなフリーハンドの曲線で結んで連続する滴定カーブを推定した後、図5から「定常ゲイン」の値を求めたい終pH値に対応する苛性ソーダ(NaOH)薬液の添加率の値をVとして読み取る。次に、添加率の微少な変化幅ΔVを決め、添加率Vから少し離れた地点での苛性ソーダ(NaOH)薬液の添加率の値(V+ΔV)、(V-ΔV)に対応する終pH値pHV+ΔV、pHV-ΔVを読み取る。すると、これらの値から、例えば、下式によって該当するpHの値での定常ゲインの近似値を求めることができる。
定常ゲイン≒(pHV+ΔV-pHV-ΔV)/{(V+ΔV)-(V-ΔV)}
・・・(1)
この計算をいくつかのVの値に対して繰り返し行って、得られた定常ゲインの値をなめらかな線で結んで行くことにより、必要とする終pH値領域での定常ゲインの値のグラフを得ることができる。
定常ゲイン≒(pHV+ΔV-pHV-ΔV)/{(V+ΔV)-(V-ΔV)}
・・・(1)
この計算をいくつかのVの値に対して繰り返し行って、得られた定常ゲインの値をなめらかな線で結んで行くことにより、必要とする終pH値領域での定常ゲインの値のグラフを得ることができる。
しかし、この方法では、微少な変化幅ΔVの取り方や、フリーハンドで推定した滴定カーブの形状次第で定常ゲインの計算値が大きくバラつく可能性があり困らされることがある。そのため、もう少し、定常ゲインの値を精度良く求めるため、第2の導出法として、多項式の近似式を使う方法を工夫した。
例えば、図5に示した12個のとびとびの測定データに対して、ここでは6次の多項式の曲線を使って、終pH値を苛性ソーダ(NaOH)薬液の添加率:Vに対して、次の(2)式のような連続関数fで近似する。このような近似は、例えば、マイクロソフト社製のEXCEL(商品名)に組み込まれている多項式近似の機能などを利用して行うことができる。
終pH=f (苛性ソーダ(NaOH)添加率V)
= -169458×V6 + 154957×V5 - 51627×V4 +7522.9×V3
- 450.39×V2 + 21.72×V+ 4.0638 ・・・・・(2)
尚、この時、解析に使われたデータの状況によっては、多項式として採用する次数により曲線の近似状態が大きく変化するため、良く注意しながら適切な次数を選択する必要がある。
終pH=f (苛性ソーダ(NaOH)添加率V)
= -169458×V6 + 154957×V5 - 51627×V4 +7522.9×V3
- 450.39×V2 + 21.72×V+ 4.0638 ・・・・・(2)
尚、この時、解析に使われたデータの状況によっては、多項式として採用する次数により曲線の近似状態が大きく変化するため、良く注意しながら適切な次数を選択する必要がある。
次に、この(2)式を苛性ソーダ(NaOH)薬液の添加率:Vに関して微分すると、苛性ソーダ(NaOH)薬液の添加率に対応して終pH値に応答してくる、定常ゲインの連続的な値を(3)式のような数式の形で簡単に求めることができる。
定常ゲイン= -169458×6×V5 + 154957×5×V4 - 51627×4×V3
+ 7522.9×3×V2 - 450.39×2×V+ 21.72 ・・・・・(3)
ここでは、後者の方法で求めた定常ゲインの曲線を、あとの作業に便利なよう図6に示すように、横軸に終pH値を取り、そして、縦軸に(3)式で求めた、定常ゲイン値(△苛性ソーダ(NaOH)薬液の添加率に対する△終pH値の微分係数値)を取りグラフ化して示す。
定常ゲイン= -169458×6×V5 + 154957×5×V4 - 51627×4×V3
+ 7522.9×3×V2 - 450.39×2×V+ 21.72 ・・・・・(3)
ここでは、後者の方法で求めた定常ゲインの曲線を、あとの作業に便利なよう図6に示すように、横軸に終pH値を取り、そして、縦軸に(3)式で求めた、定常ゲイン値(△苛性ソーダ(NaOH)薬液の添加率に対する△終pH値の微分係数値)を取りグラフ化して示す。
図6からは、終pH値に伴なって、定常ゲインの値が、かなり大きく、しかも複雑に変化することが読み取れる。この図から判るように、終pH値を同じ幅だけ上げたり下げたりしてコントロールする場合、その濾液のpH値に従ってパルプ原料に添加する苛性ソーダ(NaOH)薬液の添加率を適切な幅で変えないと、終pH値を希望する値にうまくコントロールできないこともすぐに予想できる。
また、この晒塔の対象プロセスのpH制御では、終pH値は図6のグラフ中に長方形の破線で囲まれた領域、即ちpHが約4.5〜6位の領域内で操業されている。そのため、図7は、このpH制御で有用となる終pH値の領域の部分だけを抜き出して示す。
この図7のグラフから、終pH値が低く測定される領域では定常ゲインの値が11程度であるが、終pH値の上昇と共に、定常ゲインの値は次第に大きい値となって変化することが読み取れる。また、終pH値が5.3辺りから定常ゲインの値は18位の最大値を示す一方で平坦な値を示す傾向になり、また、終pH値が5.5を超過すると、定常ゲインの値は逆に小さい値に減って変化していくことが判る。
またpH制御に関連して、図7から他に判ることとして、終pH値をある幅だけ変化させようとすると、低pH領域では、かなり大きく苛性ソーダ(NaOH)薬液の添加率を変化させる必要があるが、例えば、pH5.2辺りの高pH領域では僅かな苛性ソーダ(NaOH)薬液の添加率の変化に対しても、終pH値が敏感に大きく効いて変化してくる。
尚、この苛性ソーダ(NaOH)薬液の添加率の終pH値に対する影響度合いを考える場合、その影響度合いの強さは、定常ゲインの逆数に比例するとして考える必要があることを補足しておく。これについて更に具体的に述べる。例えば、終pH値が4.9で低目であると判断された場合に、苛性ソーダ(NaOH)薬液の添加率を、取り敢えず現在の添加率から実添加率量で、例えば単位量である0.01%増添したとする。この場合、終pH値は、その薬品の増添幅にpH=5の時の定常ゲイン値15を乗じた値である0.15(=0.01×15)だけ上昇すると図7から予想できる。しかし、この時、仮に、定常ゲインの値として18が設定してあったとすると、増添操作により終pH値は0.18(=0.01×18)と、その差0.03だけ大きく上昇させてしまうことになる。
このような計算からも判るように、薬品の同一の増添幅に対して、高pH領域の大きな定常ゲイン値では終pH値は大きく変化し、逆に、低pH領域の小さな定常ゲイン値では終pHを十分に変化させられないことになる。そのため、終pH値に対して、定常ゲインの値が適切でないと、目標としたpH値にコントロールする時の収束動作が遅れることになったり、終pH値の変動に不安定さを引き起こす引き金となり易い。このため、pH制御の実施に際して定常ゲインの値の設定には格別の注意が必要となることが理解できる。
また、上で求めた図7の定常ゲインのグラフの値を用いて実際にpH制御を行う場合、終pH値に伴なって定常ゲインを常に適切な値に連続的に変化させてコントロールすることができれば良いが、通常、そのようなことが行えるようにはなっていない。一般の生産工場のプロセス制御において、DCS(Distributed Control System)設備に組み込んで使われるフィードバックコントロール機能のPID制御機能や、フィードフォワードコントロール機能を持つモデル予測制御機能の伝達関数モデルに組み込まれる定常ゲインは、一般ユーザーの使用ニーズや機能的な制約から、通常、定常ゲインの値として固定値を設定して使って行く形になっている。
そのため、実際のプラントで、定常ゲインの値を変化させる場合、例えば、モデル予測制御の機能においては、この「定常ゲイン」の値を、外部機能を用いて強制的に切り替えていく必要がある。また、その場合、制御精度は若干、犠牲となるが、定常ゲインの値を連続的に変化させるのではなく、複数段の階段状に定常ゲインの値を切り替えながら近似的に実現するといった形態を取って行くのが計算機負荷の面からも容易であり、また、現実的である。
ここでは、基本機能としてフィードフォワードコントロール機能を持つモデル予測制御を用いてpH制御を行う例について示す。図7に示す例では、上に凸型形状の定常ゲイン曲線に対して概ねこのカーブに沿った形になるように、4段階の多段の階段状に定常ゲインの値を近似的に切り替えて、これをモデル予測制御の制御機能の伝達関数の部分に反映させる。そして、4段階の各区間領域は、例えば(4)式群に示したpH値の不等式に従って定常ゲインの値を切り替えて設定する。
尚、複数段からなる多段階の段数、および、不等式で示したpH値の境界値の設定は、対象とするプロセスでのpH制御の制御状態やハードウェアの性能も考慮に入れ、使い易く実用的な段数と境界値の領域を選択するのが良い。
図8は、この晒塔まわりに対して、モデル予測制御を用いたpH制御の伝達関数モデルの構成マトリックスの一例を参考に示す。図4と同様に、苛性ソーダ(NaOH)薬液の添加率を操作変数に取り、晒塔出側パルプ白色度と晒塔出側濾液pH(終pH値)の値を応答変数(制御変数)として、晒塔入側パルプ白色度の値、晒塔入側パルプ濾過pHの値、二酸化塩素(ClO2)薬液の添加率を外乱変数に取っている。
ここでも、伝達関数は簡単のため、全て、「むだ時間+一次遅れモデル」で近似的に表現し、図8のマトリックス状の表800中の第4行第2列目に当たる苛性ソーダ(NaOH)薬液の添加率の変化に対する晒塔出側濾液pH(終pH値)の変化幅の値の伝達関数の中の定常ゲインの値を、「Gain(pH)」の形で示しているが、この値を晒塔出側濾液pH値(終pH値)に従って(4)式に示した4段階のパターンに従って切り替えて行く形態でモデル予測制御の伝達関数に組み込む。
尚、図7に示すような形で求めた複数段からなる多段階の定常ゲインの値は、実験室(ラボ)の滴定テストから求めた目安値である。実際には、この目安値を基にして、実機において、階段状の定常ゲインの値、そして、それらの値を適用する境界領域のpH値を微調整していく必要がある。
以上で述べてきた漂白プラントでの制御システムの全体構成の概念図を図9に示す。また、図9に示す制御システムにおける処理フローを図10に示す。
制御システム900は、多段階pH制御機能部902、パルプ白色度制御機能部904、苛性ソーダ(NaOH)添加率の制御部906、および二酸化塩素(ClO2)添加率の制御部908を含んでいる。これらの機能は、コンピュータのプロセッサがハードディスク等の不揮発性コンピュータ読み取り可能記憶媒体に記憶したプログラムの命令を、システムメモリに読み込んで実行することにより実現される。このプロセッサは、読み込んだプログラムの命令に従って不揮発性コンピュータ読み取り可能記憶媒体に記憶されたプロセスデータの値を読み取り、この値を入力値として演算処理を行う。プロセスデータの値は、図10に例示されるような各種測定機器から収集される。
パルプ白色度制御機能部904は、スタンドパイプ1208−4の出口で添加する二酸化塩素の添加率を設定するものである。ここで決定された添加率は、多段階pH制御機能部902および二酸化塩素(ClO2)添加率の制御部908に送られる。
二酸化塩素(ClO2)添加率の制御部908は、パルプ白色度制御機能部904から受け取った制御信号に基づいて、二酸化塩素の添加量を制御するものである。
多段階pH制御機能部902は、パルプ白色度制御機能部904から入力される二酸化塩素(ClO2)の添加率、出側パルプ濾液pH計1212−4により測定される晒塔出側パルプ濾液pH、出側パルプ白色度計1204−5により測定される晒塔出側パルプ白色度、入側パルプ濾液pH計1212−3により測定される晒塔入側パルプpH、入側パルプ白色度計1204−4により測定される晒塔入側パルプ白色度等を入力値として、pH値を制御する。このpH制御は、苛性ソーダ(NaOH)添加率の制御部906に制御信号を送ることによって実行される。尚、制御信号の値は、苛性ソーダ(NaOH)添加率の値である。
多段階pH制御機能部902による制御信号の生成は、図8の表800に示す伝達関数モデルに基づいて実行される。例えば、同図に示す伝達関数モデルには、二酸化塩素(ClO2)添加率、苛性ソーダ(NaOH)添加率の変化に対する晒塔出側パルプ白色度および晒塔出側パルプ濾液pHの変化幅を示す伝達関数が与えられている。従って、晒塔出側パルプ白色度および晒塔出側パルプ濾液pHの目標値に基づいて、これらの値に一致させるために必要な苛性ソーダ(NaOH)添加率を決定することができる。
また、表800の第4行第2列目は、定常ゲインをpH値の関数Gain(pH)として定義している。多段階pH制御機能部902は、pH制御を行う前に、この定常ゲインの関数を生成する。具体的には、図9上部に示すように実験室での試験(ラボテスト)により得られた滴定曲線からpH値の多段階ゲインを決定して、この多段階ゲインを伝達関数に組み込む。
(多段階ゲインの組み込み)
次に、この多段階ゲインの組み込み方法について説明する。
まず、図5において複数の点で示すように、所定範囲の苛性ソーダ(NaOH)の添加率に対する終pH値を測定する。次に、苛性ソーダ(NaOH)の添加率および終pH値の対応関係を、図5において曲線で示すように苛性ソーダ(NaOH)の添加率を変数とするn次の関数で近似する。同図に示す例では6次の関数で近似している。
次に、この多段階ゲインの組み込み方法について説明する。
まず、図5において複数の点で示すように、所定範囲の苛性ソーダ(NaOH)の添加率に対する終pH値を測定する。次に、苛性ソーダ(NaOH)の添加率および終pH値の対応関係を、図5において曲線で示すように苛性ソーダ(NaOH)の添加率を変数とするn次の関数で近似する。同図に示す例では6次の関数で近似している。
次いで、図6に示すように、近似されたn次の関数を微分することにより、定常ゲインの値を連続関数として算出する。
次いで、算出された定常ゲインの関数で表される曲線を、図7に示すように複数段からなる階段状の値に近似する。そして、この複数段からなる階段状の値を、多段階pH制御機能部902に入力する。また、表800の第4行第2列目で示される伝達関数の定常ゲインの部分に、この近似された定常ゲインの値を組み込む。
(パルプ漂白工程におけるpH制御)
次に、具体的なpH制御について説明する。
図10に示すフローにおいて、前の工程で処理されたパルプ原料は、晒塔1202−4の入側洗浄フィルター1210−3に供給され、洗浄水で洗浄しながら12%ほどの高濃度のパルプ原料まで脱水処理される。ここで、入側洗浄フィルター1210−3から脱水された白水の一部は濾液として下方にある濾液サンプル箱1206−3に集められる。この濾液サンプル箱1206−3にはpH計1212−3が設置されており、濾液のpH値が測定できるようになっている。
次に、具体的なpH制御について説明する。
図10に示すフローにおいて、前の工程で処理されたパルプ原料は、晒塔1202−4の入側洗浄フィルター1210−3に供給され、洗浄水で洗浄しながら12%ほどの高濃度のパルプ原料まで脱水処理される。ここで、入側洗浄フィルター1210−3から脱水された白水の一部は濾液として下方にある濾液サンプル箱1206−3に集められる。この濾液サンプル箱1206−3にはpH計1212−3が設置されており、濾液のpH値が測定できるようになっている。
一方、入側洗浄フィルター1210−3で脱水されたパルプ原料には、フィルター出口で、続く晒塔1202−4での漂白反応に向け、パルプ原料のpH値を調節するために苛性ソーダ(NaOH)薬液が添加されると共に、パルプ原料は希釈水により約10%のパルプ濃度に調整されて下にあるスタンドパイプ1208−4に落とされる。
スタンドパイプ1208−4では、ここに設置されている入側パルプ白色度計1204−4のセンサーにより、漂白前のパルプ原料のISO白色度の値がオンラインで測定される。
その後、スタンドパイプ1208−4の出口で、続く晒塔1202−4で進行させるパルプ漂白反応に向け、原料中にパルプ漂白薬品である二酸化塩素(ClO2)薬液が添加されると共に、原料温度はスチーム加熱を用いて約70℃に調節される。
その後、パルプ原料は続く晒塔1202−4に高濃度ポンプで搬送される。そして、この大容量の晒塔1202−4において、パルプ原料は塔底から塔頂に向かいゆっくり移動しながら2〜4時間の長時間をかけ先に添加した二酸化塩素(ClO2)による漂白反応の進行を受けて、次第に高白色度のパルプに仕上げられる。
そして、晒塔1202−4の塔頂に達したパルプ原料は塔頂スクレーパー114により掻き出されていくが、そのパルプ原料は出側洗浄フィルター1210−4によって、再び、洗浄処理と脱水処理を受けて、下方のスタンドパイプ1208−6に落とされて最終的に完成原料として高濃度ポンプ128で払い出される。
また、入側洗浄フィルター1210−3と同様に、出側洗浄フィルター1210−4の濾液ラインの濾液サンプル箱1206−4にもpH計1212−4が設置されており、濾液のpH値(終pH値)を測定している。
多段階pH制御機能部902は、DCS(Distributed Control System)1034を利用してpH制御機能で必要となる周辺設備と信号の送受信を行う。
DCS1034を介して、入側パルプ濾液pH計1212−3、入側パルプ白色度計1204−4、出側パルプ濾液pH計1212−4、出側パルプ白色度計1204−5からの信号が入力され、多段階pH制御機能部902に渡される。多段階pH制御機能部902は、入力された信号値を用いて、図8に示す伝達関数モデルに基づく制御を行う。
ここで、多段階pH制御機能部902は、図8の伝達関数を適用して、苛性ソーダ(NaOH)の添加率の設定値を決定する。決定された設定値は、DCS1034に返送される。DCS1034は受信した制御出力信号を苛性ソーダ(NaOH)添加率の制御部906に渡す。
苛性ソーダ(NaOH)添加率の制御部906は、多段階pH制御機能部902から受け取った苛性ソーダの添加率の値に基づいて、苛性ソーダの添加量を操作する。
図11に、上記の方法を用いて、実際の晒塔においてpH制御を行った制御状態の一例を示す。同図に示すように、図4で発生したような終pH値や苛性ソーダ(NaOH)薬液の添加率でのハンチング現象を引き起こすことなく、しかも長期間に渡って安定的、そして、ほぼ良好な状態でpH制御を実行することができるようになった。
また、この晒塔でのpH制御の実施例では、定常ゲインの値を終pH値に従って逐次切り替えるpH制御を実行したが、下表に示すように、終pH値の標準偏差(1σ)の値は、手動監視による操作時の0.26程度に対して、0.14〜0.18位の変動に抑えながら、自動コントロールモードで連続的により安定化して運転できるようになった。
また、この終pH値の安定化の影響で、パルプ漂白のために添加される二酸化塩素(ClO2)薬液の漂白効率も上昇する効果が得られた。
上記の多段階pH制御を用いた操業を続けて行ったところ、600Ton/日の規模を有するパルプの漂白設備において、漂白薬品である二酸化塩素(ClO2)の添加量が約10%減少し、パルプ漂白工程に要する費用が年間約800万円削減された。
本発明は、パルプ製造工場の漂白工程でのパルプ原料のpH制御、そして白色度制御に利用することができる。
また、上述した実施例ではパルプ漂白工程の最終段における処理について説明したが、本発明は、入側洗浄フィルター、晒塔および出側洗浄フィルターを順次通過するパルプの多段漂白工程の任意の漂白段に適用することができる。
また、この方法は他プロセスでの一般的なpH制御にも応用することができる。
また、モデル予測制御ではなく、フィードバックコントロール機能であるPID制御のコントローラーに、同様の滴定操作と解析手順で求めた定常ゲインの値を用いて、これを複数段からなる多段階のpH制御に適用することもできる。この場合には、モデル予測制御へ適用する場合と異なり、PID制御での「比例帯(P)」の係数値を決めなければならないが、この「比例帯(P)」の係数値は、図7で求めた「定常ゲイン」の値を使って、例えば、ジーグラー・ニコルスの提案式などを用いて決めて行けば良い。
112、128 高濃度ポンプ
114 塔頂スクレーパー
900 制御システム
902 多段階pH制御機能部
904 パルプ白色度制御機能部
906 苛性ソーダ(NaOH)添加率の制御部
908 二酸化塩素(ClO2)添加率の制御部
1034 DCS(Distributed Control System)
1202−1〜1202−4 晒塔
1204−1〜1204−5 パルプ白色度計
1206−1〜1206−4 濾液サンプル箱
1208−1〜1208−6 スタンドパイプ
1210−1〜1210−4 洗浄フィルター
1212−1〜1212−4 濾液pH計
114 塔頂スクレーパー
900 制御システム
902 多段階pH制御機能部
904 パルプ白色度制御機能部
906 苛性ソーダ(NaOH)添加率の制御部
908 二酸化塩素(ClO2)添加率の制御部
1034 DCS(Distributed Control System)
1202−1〜1202−4 晒塔
1204−1〜1204−5 パルプ白色度計
1206−1〜1206−4 濾液サンプル箱
1208−1〜1208−6 スタンドパイプ
1210−1〜1210−4 洗浄フィルター
1212−1〜1212−4 濾液pH計
Claims (5)
- 入側洗浄フィルター、晒塔および出側洗浄フィルターを順次通過するパルプの漂白工程においてpH値を制御する制御システムにおけるパルプ漂白工程の制御方法であって、
前記出側洗浄フィルターで測定された終pH値の測定値の入力を受けるステップと、
前記入側洗浄フィルターにおいて前記パルプに添加する苛性ソーダの添加率を操作変数とし、前記終pH値を応答変数とするモデル予測制御のための伝達関数を、入力を受けた前記終pH値に適用して、前記苛性ソーダの添加率の変化に対する前記終pH値の変化幅を決定するステップと、
決定された前記変化幅に基づいて前記苛性ソーダの添加率を制御するステップと
を備え、前記変化幅を決定するステップは、前記伝達関数に含まれた定常ゲインの値を、入力を受けた終pH値の変化に従って複数段からなる値で逐次切り替えるステップを含むことを特徴とするパルプ漂白工程の制御方法。 - 所定の範囲に渡って前記苛性ソーダの添加率および前記終pH値の入力を受けるステップと、
入力を受けた前記苛性ソーダの添加率および前記終pH値の対応関係を、前記苛性ソーダの添加率を変数とするn次の関数で近似するステップと、
近似された前記n次の関数を微分することにより、前記定常ゲインの値を連続関数として算出するステップと、
前記連続関数で表された定常ゲインの値を、複数段からなる階段状の値に近似するステップと、
階段状の値に近似された前記定常ゲインを前記伝達関数に組み込むステップと
を更に備え、前記変化幅を決定するステップは、近似された前記定常ゲインを組み込んだ伝達関数を使用することを特徴とする請求項1に記載のパルプ漂白工程の制御方法。 - 所定の範囲に渡って入力される前記苛性ソーダの添加率および前記終pH値は、実験室における滴定テストにより測定された値であることを特徴とする請求項2に記載のパルプ漂白工程の制御方法。
- 前記出側洗浄フィルターは、パルプ漂白工程の最終段に設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のパルプ漂白工程の制御方法。
- 入側洗浄フィルター、晒塔および出側洗浄フィルターを順次通過するパルプの漂白工程においてpH値を制御するパルプ漂白工程の制御システムであって、
前記出側洗浄フィルターで濾過されたパルプ液のpH値である終pH値を測定するpH計と、
前記pH計により計測された終pH値の入力を受け、前記入側洗浄フィルター出側において前記パルプに添加する苛性ソーダの添加率を操作変数とし、前記終pH値を応答変数とするモデル予測制御のための伝達関数を、入力を受けた前記終pH値に適用して、前記苛性ソーダの添加率の変化に対する前記終pH値の変化幅を決定するpH制御部と、
決定された前記変化幅に基づいて前記苛性ソーダの添加率を制御する添加率制御部と
を備え、前記pH制御部は、前記伝達関数に含まれた定常ゲインの値を、入力を受けた前記終pH値の変化に従って複数段からなる値で逐次切り替えることを特徴とするパルプ漂白工程の制御システム。
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