JP2010500577A - 癌の予後および予測シグナチャーのプロテオミクスパターン - Google Patents

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Abstract

本発明は、癌患者が治療に反応するか否かを予測するための方法を提供する。本発明の方法は、タンパク質に対する抗体のパネルの結合を決定することによって、癌患者の細胞からのタンパク質を調べる段階を伴ってもよい。本発明の方法は、癌患者からの細胞の発現プロファイルおよび活性化プロファイルの双方を作製するために用いられてもよい。癌患者からのプロファイルを、患者の個々の反応を予測するために治療反応者および非反応者に関する公知のプロファイルと比較してもよい。たとえば、本発明の方法を用いて、卵巣癌または乳癌患者が治療プロトコールに反応するか否かを決定してもよい。

Description

本出願は、その全内容物が参照により本明細書に組み入れられる、「癌の予後および予測シグナチャーのプロテオミクスパターン」と題する2006年8月7日に提出された米国特許仮出願第60/836,176号に対する優先権を主張する。
I.発明の分野
本発明は、癌患者試料および/または細胞株における連続変数としてのタンパク質レベルおよびその活性化を特徴付けするために新規定量的ハイスループットアプローチを用いることに関する。定量的または半定量的分析と組み合わせたタンパク質発現および活性化パターンにより、癌の挙動および治療に対する反応の新規予測因子が同定される。
II.背景
癌は、米国および世界全体において依然として主要な健康問題である。たとえば、乳癌は北米女性における死因の第二位である(Pisani et al., 2002;Parkin et al., 2001)。開発途上国における乳癌の死亡率は、さらに高い。乳癌は、それが不均質な疾患であるという点において多くのタイプの癌の例証となる。臨床病理基準が治療の決定をガイドするために使用されるが、このアプローチは腫瘍の生物学を定義せず、同じグレードおよび同じ進行期の腫瘍がしばしば非常に異なる挙動を示す。その結果、化学療法によって処置される患者の大部分が再発せず、このように不要な毒性治療を受けることとなる一方で、治療を受けた患者の有意な割合はいずれにせよ再発する。より多くの情報を持って治療決定を行うために、癌の挙動が広く異なる基礎となる分子機構のさらなる理解が必要である。
たとえば乳癌において、乳癌のホルモン受容体状態および他の臨床病理因子は、何十年ものあいだ患者管理を推進してきた(Early Breast Cancer Trialists' Collaborative Group, 1998)。最近になって、いくつかの報告に、乳癌に対して臨床的に関連する分子的分類を得るために転写プロファイリングを用いることが記述されている(Sorlie et al., 2001)。乳癌遺伝子のプロファイルは、アントラサイクリンおよびタキサンに対する反応性を予測することができる(Ayers et al., 2004)。ポリメラーゼ連鎖反応に基づくOncotype Dx(Genomic Health Inc.)は、タモキシフェンに対する反応を予測することができる(Paik et al., 2004)。しかし、これらの試験はバリデーションを必要とし、残念なことに、これらのアルゴリズムを用いる場合、陽性および陰性の予測値は、真の個別化分子治療を許容するほど十分に最適ではない。実際に、多くの個々のタンパク質が乳癌における潜在的な予後および予測因子として広く調べられているが、現在の実践においてルーチンとして容認されているのは3個−エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)、およびHER2/neuに過ぎない。しかし、いくつかのさらなるタンパク質が乳癌の挙動のいくつかの局面に個々に相関することが見いだされている。このように、多数のタンパク質の発現および活性化ならびにシグナル伝達経路に関する統合された研究は、おそらく強力な乳癌の分類子および予測子を提供する可能性がある。このアプローチはそれ自身有用性を有する可能性があり、または遺伝子発現変化の査定力を高める可能性がある。
逆相タンパク質アレイ(RPPA)。mRNA発現アレイは、何千もの遺伝子の発現レベルを同時に測定する能力、乳癌の分類に関する理解を進展させてきたゲノムサブクラスを同定する能力、および治療に対する反応を予測する能力を有する(Sorlie et al., 2001;Ayers et al., 2004)。しかし、癌のトランスクリプトームの包括的分析は、あらゆるレベルの生物学的複雑さを捕らえているわけではない。mRNAおよびタンパク質レベルはごくおおよそ相関しているに過ぎず、タンパク質機能はしばしば、mRNAレベルとは連関していない。重要なさらなる情報はタンパク質レベル、特にタンパク質機能のレベルに存在する可能性がある(Gygi et al., 1999;Diks and Peppelenbosch, 2004)。さらに、タンパク質レベルおよび機能は、翻訳のみならず、リン酸化、プレニル化、およびグリコシル化のような翻訳後修飾にも依存する。タンパク質は、ゲノム情報およびゲノム変化の主要なエフェクターであると共に細胞機能の直接のメディエーターであることから、機能的なプロテオミクス分析は、より良いということはないかもしれないが、転写プロファイリングと同様に、細胞および癌の挙動を特徴付けする可能性を有する。ウェスタンブロッティング(WB)のような従来のタンパク質アッセイ技術は、ごく限られた数のタンパク質の発現およびリン酸化を査定できるに過ぎない。癌細胞におけるタンパク質のレベルおよび活性化状態(たとえば、リン酸化)を査定するさらなる方法が必要である。
逆相タンパク質マイクロアレイ(RPPA)は、癌細胞における多くのタンパク質のレベルおよび活性化状態(たとえば、リン酸化)の包括的な定量的プロファイリングを行うための新規方法を提供する(Charboneau et al., 2002)。RPPAは、細胞内シグナル伝達、増殖、およびアポトーシス経路を、包括的に、簡便に、および高感度な方法でマップすることができる(Charboneau et al., 2002)。RPPAは、多数のタンパク質およびその活性(たとえば、リン酸化)型の総レベルをアッセイすることができることから、この技術は、遺伝子プロファイリングより正確に病原性の細胞分子機構を反映する可能性がある。RPPAの有力な臨床での使用が探索されている(Wulfkuhle et al., 2003;Grubb et al., 2003)。しかし、今日まで、癌患者の予後または治療に対する反応に関する性向を予測するためにRPPAを用いることに関して記述されている方法はない。予後は、患者の疾患がどのように進行して、回復の見込みがあるか否かを表す医学用語である。しかし、治療に対する反応に関する性向は、治療の成功の予測または査定であり、予後に必ずしも関連しない。
ある態様において、本発明は、癌患者を評価するための方法を提供する。ある局面において、方法には、癌患者の細胞におけるタンパク質を調べることによって、癌患者の治療に対する反応(すなわち、性向)を予測する段階が含まれる。典型的に、患者から得た試料は、少なくとも一つまたは複数の癌細胞を含有する。そのような方法は、癌患者の細胞のタンパク質を抗体のパネル、たとえば二つまたはそれより多い抗体に、結合条件下で供する(たとえば接触させる)段階、およびタンパク質に対する抗体の結合を査定する段階を含んでいてもよい。タンパク質の結合および抗体の結合の査定を用いてプロファイルを生成することができ、次にこれをある治療に反応した者または非反応者に関する公知のプロファイルと比較することができる。このように、プロファイルの比較を用いて、患者の反応、治療に対する反応の性向、またはその欠如を予測することができる。ある局面において、プロファイルの比較を用いて、患者が、治療または治療の組み合わせによって有効に処置される性向を評価する。もう一つの局面において、処置する医師が、代わりの治療を選択することができるように、または選択される治療の有害な効果を最小限にすることができるように、有害な治療が同定される可能性がある。いくつかの特定の場合において、本発明の方法を用いて、癌患者が治療効果に関して十分なレベルで治療に反応する、または反応しない確率を予測してもよい。治療効果には、腫瘍または癌の生育の低減または停止;腫瘍または癌に直接または間接的に起因する状態の軽減、緩和、または一時的緩和;腫瘍または癌の全てまたは一部の殺細胞または生育停止、および当技術分野において認識される治療効果の他の測定手段が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
本明細書において用いられるように、「抗体のパネル」または「抗体パネル」という句は、複数の異なる細胞標的またはタンパク質に結合する抗体の組を指す。たとえば抗体のパネルは、そのあいだの全ての値および範囲が含まれる、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、50個またはそれより多い細胞標的、タンパク質、および/またはタンパク質改変体に結合してもよい。好ましい態様において、パネルにおける少なくとも一つの抗体は、翻訳後修飾を含むタンパク質に優先的に結合する抗体である。当業者は、翻訳後修飾という用語が、タンパク質のリン酸化、メチル化、アセチル化、グリコシル化、ミリストイル化、プレニル化、および/またはタンパク質ライゲーション(たとえば、タンパク質のユビキチン化、SUMO化(sumylation)、NEDD化)のような重要な調節機能を有する多数の共有結合的タンパク質修飾を含むことを認識する。さらに、翻訳後修飾はまた、タンパク質切断を指してもよい。このように、ある局面において、抗体のパネルは、少なくとも一つのリン酸化、メチル化、アセチル化、グリコシル化、ミリストイル化、プレニル化、ユビキチン化、SUMO化、NEDD化、またはプロテナーゼ切断産物特異的抗体を含む。そのような翻訳後修飾特異的抗体は、特定の翻訳後修飾を含む、または含まないタンパク質(たとえば、リン酸化タンパク質)に優先的に結合する(たとえば、もう一つの型と比較してタンパク質の一つの型に対して検出可能な程度により高いレベルで結合する)であろう。
このように、ある局面において、本発明は、癌患者の細胞におけるタンパク質発現または活性化を調べることによって、治療から十分に効果を得るために、治療に対する癌患者の反応および/または患者の性向を予測するための方法を提供すると理解される。いくつかの態様において、タンパク質を調べる段階は、タンパク質、活性化タンパク質、または不活化タンパク質の量を定量または推定する段階、および/または一定レベルでのタンパク質またはタンパク質修飾の有無を検出する段階を含んでもよい。本明細書において用いられるように、「活性化タンパク質」という用語は、機能的に活性であるタンパク質を意味する。たとえば、活性化キナーゼは、標的分子をリン酸化し、標的プロモーターにて転写因子媒介転写を活性化した。いくつかの局面において、活性化タンパク質は、特異的翻訳後修飾(たとえば、リン酸化は一定のタンパク質を脱活性化する可能性がある)を含むまたは含まないタンパク質であってもよい。本明細書において用いられるタンパク質発現という用語は、細胞または細胞集団におけるタンパク質の量を指す。
本発明に従うタンパク質の発現または活性化を定量または推定する段階は、たとえば患者の試料における発現または活性化を、公知の試料または参照物質(たとえば、デジタルまたは標準的な参照プロファイル)における発現または活性化と比較する、相対的定量化であってもよい。なおさらなる場合において、試料におけるタンパク質(たとえば、活性化または不活化タンパク質)を定量する段階は、タンパク質の濃度を決定する段階を含んでいてもよい。他の局面において、非修飾タンパク質と比較した試料における修飾タンパク質の割合を決定することができる。たとえば、いくつかの局面において、細胞からのタンパク質を、タンパク質の量をより正確に定量するために、2倍より多い希釈で調べてもよい。さらに、患者の試料またはプロファイルと公知の試料またはプロファイルとの比較を、細胞のほぼ同数、タンパク質の等しい量、または多数の細胞タイプにおいてほぼ等しい発現を有することが知られている特定のタンパク質の同数を比較することによって標準化してもよいと理解される。
同様に、本発明の方法において抗体の結合を査定する段階は、標識の検出によって行ってもよいことは当業者によって理解される。ある場合において、抗体または抗体のパネルを標識してもよいが、ある場合において、患者の細胞からのタンパク質を標識してもよい。本発明において用いるための標識には、酵素、放射性同位元素、蛍光標識、および発光標識が含まれるがこれらに限定されるわけではない。このように、ある場合において、抗体の結合を検出する段階は、抗体および/または患者の細胞からのタンパク質のいずれかを固定する段階を伴う。本発明のいくつかの局面において、ニトロセルロースまたはニトロセルロースコーティング支持体で作製された固相支持体のような、アレイ内で細胞タンパク質を固定してもよく、その後標識抗体をタンパク質に結合させて検出する。なおさらなる局面において、本発明に従う方法を自動化してもよい。たとえば、ロボット装置を用いて細胞タンパク質または抗体のスポットをアレイに沈着させてもよく、および/またはコンピューターを用いて標的プロファイル、反応者プロファイル、および/または非反応者プロファイルのような結合プロファイルを比較してもよい。
ある態様において、本発明の抗体パネルは、ホルモン受容体または増殖因子受容体タンパク質に結合する少なくとも一つの抗体を含む。たとえば、パネルは、エストロゲン受容体(たとえば、エストロゲン受容体α)および/またはプロゲステロン受容体に結合する抗体を含んでいてもよい。もう一つの例において、抗体のパネルは、上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)に結合する抗体を含んでいてもよい。さらに、いくつかの場合において、抗体のパネルは、増殖因子受容体シグナル伝達経路において二つまたはそれより多いタンパク質に結合する抗体を含んでいてもよい。たとえば、上皮細胞増殖因子(EGFR)/HER2/ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)/AKT経路の場合、多数の経路メンバー結合抗体を含む抗体パネルは、PI3K経路における多数の変異が一定の癌(たとえば、乳癌)には存在するということから、有利となる可能性がある(Stoica et al., 2003;Bachman et al., 2004)。ある局面において、PI3K自身における活性化変異は癌における一般的な変異であることから、活性化PI3Kに結合する少なくとも一つの抗体を本発明の抗体パネルに含めてもよい。
なおさらなる態様において、本発明の抗体パネルは少なくとも一つのキナーゼタンパク質に結合してもよい。たとえば、本発明の抗体パネルは、ヤヌスキナーゼ(JAK)、マイトゲン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)、ERK1/2、MNK 1/2、S6キナーゼ、Akt、p38、mTor、PI3K、PKC、ras、b-rafまたはJNKに対する少なくとも一つの抗体を含んでもよい。さらに、本発明の好ましい局面において、キナーゼ結合抗体は、リン酸化特異的抗体であってもよい。特定の例において、本発明の抗体パネルは、MAPK/ERK1/2経路におけるタンパク質または活性化タンパク質に結合する一つまたは複数の抗体を含む。いくつかの乳癌は、RASまたはb-RAFの変異が比較的頻繁でないにもかかわらず、高レベルのMAPKシグナル伝達を有する。EGFRおよびERK1/2リン酸化を二重に遮断すると、生育阻害が増加する。MAPK経路の活性化は、EGFR/HER2の阻害を迂回することができ、これによって化学療法剤耐性が起こる可能性があり、このように、治療反応性を予測するために、活性化MAPKの検出を用いてもよい。
なおさらなる態様において、本発明の抗体アレイは、Her2、PI3K、MAPK、またはSTATシグナル伝達経路における少なくとも1、2、3、4、5個またはそれより多いタンパク質に結合する抗体を含む抗体アレイとして定義されてもよい。ある特定の例において、本発明の抗体パネルは、Eカドヘリン結合抗体、PKC結合抗体、p27結合抗体、サイクリンB1結合抗体またはp53結合抗体を含む。いくつかのさらなる場合において、本発明の抗体アレイまたはパネルは、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)結合抗体、トポイソメラーゼIIα(TOPO)結合抗体、サバイビン結合抗体および/またはタウ結合抗体を含んでもよい。これらのタンパク質は全て、化学療法に対する乳腺腫瘍の反応性に関係している(Paik et al., 2004;Murthy et al., 2005;Pusztai et al., 2004)。なお、それらは乳腺腫瘍において異なって発現しており、しばしばER陽性腫瘍におけるGSTの増幅は、化学療法剤耐性に至る可能性がある一方、TOPOの増幅は化学療法剤に対する反応性を増加させる可能性がある。
ある局面において、本発明に従う抗体パネルは、エストロゲン受容体、Eカドヘリン、リン酸化Akt、リン酸化MAPK、リン酸化JNK、および/またはリン酸化S6に結合する抗体を含んでもよい。そのような抗体パネルを用いて、治療に対する卵巣癌患者の反応を予測してもよい。もう一つの態様において、抗体パネルは、エストロゲン受容体、リン酸化p38、およびp53に結合する抗体を含んでもよい。いくつかの場合において、そのようなパネルを、治療に対する乳癌患者の反応を予測するために本発明に従って用いてもよい。
他の局面において、抗体は、Eカドヘリン、4 EBP、PKC、p53、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、S6、AKT、Her2、Src、PI3K、p38、p27、mTOR、JNK、MAPK(44/42)、サイクリンDl、および/またはサイクリンBlから選択することができる。
なおさらなる局面において、抗体は少なくともERおよびp38に結合する。
さらにさらなる局面において、抗体は少なくともER、PR、AKT、p38、およびmTORに結合する。
ある局面において、抗体はER、Eカドヘリン、AKT、MAPK(44/42)、C-jun N-末端キナーゼ(JNK)、またはS6の少なくとも二つに結合する。
さらなる局面において、抗体は少なくともER、Eカドヘリン、AKT、MAPK(44/42)、C-jun N-末端キナーゼ(JNK)、およびS6に結合する。
なおさらなる局面において、抗体は少なくともsrc、AKT、HER2、S6、およびサイクリンDlに結合する。
ある態様において、抗体の群は、腫瘍が特定の治療に対して感受性があるかまたは耐性であるかを予測する場合に、そのあいだの全ての値および変数を含み、75、80、85、90、95、98、または99%の予測値を有してもよい。
本発明のある局面において、方法は、細胞からのタンパク質を調べる前に、患者からの細胞を、生育または増殖の刺激剤または阻害剤によって処置する段階を伴ってもよい。ある場合において、そのような刺激剤または阻害剤による処置は、組織培養における細胞(インビトロまたはエクスビボ)について、または患者になお存在する細胞(インビボ)について行われる。たとえば、術前の(ネオアジュバント)化学療法(PC)は、腫瘍の進行期を減少させて、腫瘍の反応のインビボ査定を可能にし(たとえば、本発明の方法によって)、転帰を予測する機会、生物マーカー発現を評価する機会、および治療を調整する機会を提供する(Fisher et al., 2002)。ある場合において、本発明の方法を用いて、特定の治療が患者にとって有効であるか否か、またはそれによって優れた長期予後に関連する病理学的完全反応(pCR)が最適に得られるか否かを決定してもよい。たとえば、本発明の方法において用いるためのいくつかの刺激剤および阻害剤には、癌と共にインスリン様増殖因子(IGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、上皮細胞増殖因子(EGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、ホルモン(たとえば、エストロゲン)、トラスツズマブ、チロシンキナーゼ阻害剤、PI3K阻害剤と共に任意の他の化学療法剤または免疫療法分子が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
当業者は、生育の刺激剤または阻害剤が、少なくとも一つの細胞シグナル伝達経路にアゴニスト作用する、またはアンタゴニスト作用することを理解する。このように、いくつかの態様において、本発明の方法は、患者からの細胞におけるシグナル伝達経路にアゴニスト作用またはアンタゴニスト作用する段階、および次に細胞のタンパク質を抗体のパネルに供する段階によって、細胞のタンパク質を調べる段階を伴ってもよいことが理解される。いくつかの態様において、本発明のこの局面において用いるための抗体のパネルは、アゴニスト作用されている、またはアンタゴニスト作用されているシグナル伝達経路における一つ、二つ、またはそれより多くのタンパク質に結合する抗体を含んでもよい。
本発明のある局面において、癌患者は、肺、乳腺、脳、前立腺、脾臓、膵臓、子宮頚部、卵巣、頭頚部、食道、肝臓、皮膚、腎臓、白血病、骨、精巣、結腸、または膀胱癌患者であってもよい。たとえば、好ましい態様において、癌患者は卵巣癌または乳癌患者である。癌患者由来の細胞は、癌患者からの試料に含まれていてもよいと理解される。いくつかの態様において、細胞は、たとえば腫瘍生検試料に含まれる細胞のような癌細胞であってもよい。しかし、ある他の場合において、細胞は癌細胞を含まず、たとえば細胞試料は、腫瘍周辺の組織試料、血液試料、または口腔内粘膜標本であってもよい。
本明細書において用いられるように、治療という用語は、癌患者に施される、または施されるべき任意の治療を指す。たとえば、治療は化学療法、放射線療法、免疫療法、または外科療法であってもよい。ある態様において、治療は化学療法である。さらなる態様において、治療は放射線療法である。なおさらなる態様において、治療は免疫療法である。本発明に従う化学療法には、シスプラチン(CDDP)、カルボプラチン、プロカルバジン、メクロレタミン、シクロホスファミド、カンプトテシン、イフォスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、ニトロソ尿素、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン、マイトマイシン、エトポシド(VP16)、タモキシフェン、ラロキシフェン、エストロゲン受容体結合物質、タキソール、パクリタキセル、ゲムシタビン(gemcitabien)、ナベルビン、ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、トランス型白金製剤(transplatinum)、5-フルオロウラシル、ビンクリスチン、ベルケイド(Velcade)、ビンブラスチン、またはメソトレキサート療法が含まれるがこれらに限定されるわけではない。本発明の免疫療法には、ホルモン受容体、血管新生因子、もしくは癌細胞マーカーを標的とする抗体、たとえばハーセプチン、アバスチン、または癌細胞標的化免疫毒素の投与が含まれてもよい。
なおさらにさらなる態様において、処置の過程によって効果を得るために、治療に対する癌患者の反応および/または性向を予測するためのキットが提供される。そのようなキットは、一つまたは複数の抗体のパネル、タンパク質に対する抗体の結合を検出するための組成物、反応者または非反応者抗体結合プロファイル(たとえば、参照アレイまたはいずれかもしくは双方のデジタル参照物質)、マイクロアレイスライドガラス、タンパク質抽出緩衝液、細胞増殖阻害剤、細胞増殖刺激剤、および/または抗体結合プロファイルを比較するためのコンピュータープログラムを含んでもよい。ある場合において、そのようなキットは、箱のような簡便な封入物に含まれてもよい。さらに、本発明のキットには、その中に試薬を用いるための説明書が含まれてもよい。
本発明の方法および/または組成物の文脈において考察される態様を、本明細書に記述の任意の他の方法または組成物に関して用いてもよい。このように、一つの方法または組成物に関する態様を、本発明の他の方法および組成物に同様に応用してもよい。
本明細書において用いられるように、詳述「一つの」または「一つの(an)」は、一つまたは複数を意味する可能性がある。本明細書の特許請求の範囲において用いられるように、「含む」という言葉と結びつけて用いられる場合、「一つの」または「一つの(an)」という言葉は、一つまたは一つより多いことを意味する可能性がある。
特許請求の範囲において「または」という用語の使用は、代替物のみを指すと明白に示している場合を除き、または代替物が相互に排他的である場合を除き、「および/または」を意味するために用いられるが、本開示は、代替物のみと、「および/または」を指す定義を支持する。本明細書において用いられるように、「もう一つ」は、少なくとも第二のまたはそれより多くを意味する可能性がある。
本出願を通して、「約」という用語は、装置、値を決定するために用いられている方法、または試験被験者間に存在する変動に関する誤差の固有の変動を値が含んでいることを示すために使用される。
本発明の他の目的、特色、および長所は、以下の詳細な説明から明らかとなる。しかし、詳細な説明および特定の実施例は、本発明の好ましい態様を示しているが、本発明の趣旨および範囲に含まれる様々な変更および改変が、この詳細な説明から当業者に明らかとなるであろうことから、例証として与えられるに過ぎないと理解されるべきである。
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、本発明のある局面をさらに証明するために含められる。本発明は、本明細書において紹介した特定の態様の詳細な記述と共にこれらの図面の一つまたは複数を参照することによって、よりよく理解されるであろう。
細胞タンパク質溶解物をニトロセルロースマイクロアレイスライドガラスに転写するためのプロトコールの例。 逆相タンパク質アレイ(RPPA)からのデータの例。図2Aは、分析において用いた細胞溶解物またはタンパク質標準物質の希釈液を示す。図2B、刺激された、または刺激されなかった(底部に示されるように)タンパク質標準物質(上の二つの列)、または組織培養細胞の希釈試料をアレイに転写する。アレイをリン酸化AKT(AKT(S473))に結合する単特異的抗体によってプロービングする。各希釈液に関する標準物質におけるタンパク質の量を示す。 RPPAアッセイ法のバリデーション。図3A、同じタンパク質試料を含むスポットは、試料におけるタンパク質の同じ量を信頼可能に示す。図3B、RPPAによって査定したHER2タンパク質(y-軸)は、HER2遺伝子コピー数(x-軸)と相関する、p<0.0001。図3C、RPPAによって査定したERタンパク質(y-軸)は、ER発現の転写プロファイリング(x-軸)と相関する、p<0.0001。図3D、RPPAによって査定したPTENタンパク質(y-軸)は、PTEN発現の転写プロファイリング(x-軸)と相関する、p<0.001。 「教師あり」転帰予測因子:ステージIII/IVハイグレード卵巣癌患者の試験試料44個を、ER、Eカドヘリン、リン酸化AKT、リン酸化S6、リン酸化JNK、およびリン酸化MAPKに対する抗体を用いてRPPAによってアッセイした。「>」は、最適以下腫瘍減量(suboptional tumor debulking)を指し、「<」は最適減量(optional debulking)を指す。 ハイグレード卵巣癌患者28人のバリデーションセットに適用した患者44人の試験セットからの「教師あり」転帰予測因子。RPPAに対する抗体は図4に示されるとおりである。「>」は、最適下腫瘍減量を示し、「<」は最適な減量を示す。 アジュバント抗ホルモン処置ハイグレード初期ホルモン受容体陽性乳癌患者における再発に関する予測RPPAシグナチャー。表1に由来するこの特定のシグナチャーの成分は、p70S6キナーゼ、stat3、MEK1(p)Ser217/221、p38、p38(p)Thr180/Tyr182、およびS6(p)Ser235-236である。クラスタ形成の際に、有意に異なる転帰を有する二つの主な亜群(クラスタ1および2と呼ばれる)が同定された(アジュバント抗ホルモン療法後の全ての再発/ステージIV症例が1群において起こった)。 リン酸化mTor、リン酸化p38 ER、PR、およびリン酸化Aktに結合する抗体を使用するRPPAからの結果を示す。RPPAは、アジュバントホルモン療法後の再発6/6例を正確に予測する。 リン酸化mTor、リン酸化p38 ER、PR、およびリン酸化Aktに結合する抗体を使用するRPPAからの結果を示す。RPPAは、アジュバントホルモン療法後のステージIV疾患5/5例を正確に予測する。 ERおよびリン酸化AKT(セリン473位でのリン酸化/活性化)に結合する抗体を用いたRPPAの結果を示す。再発例を図の右側の黒いバーによって示す。 膜受容体チロシンキナーゼ(RTK)およびホスファチジルイノシトール-3-キナーゼ(PI3K)/AKT経路の活性化は、標準的なプラチナに基づく一次化学療法後の上皮卵巣癌(EOC)細胞患者の低い腫瘍エストロゲン受容体(ER)発現および不良な転帰に関連する。逆相タンパク質溶解物アレイ(RPPA)を用いて、ER、EGFRおよびsrcの発現を、タンパク質キナーゼC(PKC)α(PKCα(p)657)、AKT(AKT(p)Ser473)、グリコーゲンシンターゼキナーゼ(GSK)3(GSK3(p)Ser21/9)、およびリボソームS6タンパク質(S6(p)Ser240/244)による活性化(すなわち、リン酸化)によって定量および統合して、予後的なRTK-PI3K/AKT経路活性化シグナチャーを形成した。シグナチャー成分は、EGFR、ER、src、AKT、GSK3、PKCα(p)657、AKT(p)Ser473、GSK3(p)Ser21/9、およびS6(p)Ser240/244である。教師なしクラスタリングの場合、有意に異なる転帰を有する二つの主な亜群(ERおよびAktと呼ばれる)が同定された。このシグナチャーの予後能は、多変量解析における進行期およびグレードとは無関係である。 教師なしクラスタリングアプローチでも、有意に異なる生存転帰を有する上皮卵巣癌(EOC)サブセットを区別することができ、EOCの臨床挙動に対する以下の表1における抗体の明白な重要性の証拠となる。Oは、大規模プロスペクティブ臨床試験において標準的なパクリタキセル/カルボプラチン一次化学療法後のEOCに関して、15.5ヶ月という、認識された無進行生存期間(PFS)の中央値より短い期間で進行する各群または各クラスタにおけるEOCの百分率を示す。 膜受容体チロシンキナーゼ(RTK)およびホスファチジルイノシトール-3-キナーゼ(PI3K)/AKT経路の活性化は、標準的なアジュバント抗ホルモン療法による処置後の初期ホルモン受容体陽性乳癌患者65人の低いエストロゲン受容体(ER)発現および不良な転帰に関連する。逆相タンパク質溶解物アレイ(RPPA)を用いて、タンパク質キナーゼC(PKC)α、AKT、グリコーゲンシンターゼキナーゼ(GSK)3、およびリボソームS6タンパク質の活性化(すなわち、リン酸化)によってER、EGFRおよびsrcの発現を定量および統合して、予後的なRTK-PI3K/AKT経路活性化シグナチャーを形成した。シグナチャー成分は、EGFR、ER、src、AKT、GSK3、PKCα(p)657、AKT(p)Ser473、GSK3(p)Ser21/9、およびS6(p)Ser240/244である。教師なしクラスタリングの場合、有意に異なる転帰を有する二つの主な亜群(ERおよびPI3Kと呼ばれる)が同定された。このシグナチャーの予後能は、多変量解析における進行期およびグレードとは無関係である。生存プロットは無再発生存を示す。 逆相タンパク質アレイ(RPPA)を用いて、初期ホルモン受容体陽性乳癌におけるER発現およびAktリン酸化のみを定量した場合、乳癌シグナチャーは、アジュバント抗ホルモン療法後の有意な予測能を保持する。これを、セリン473位でのAKTリン酸化(PI3K経路活性化に関する代用物としてのAKT(p)Ser473)およびERαレベル(有意な逆相関に関してp=0.02)を利用して、図13Aに示す。高い(=赤色)AKT(p)Ser473を有する低い(=緑色)ERα発現のこのシグナチャーは、アジュバント抗ホルモン療法後の疾患再発に関する強い予測因子を提供する(再発は図13Aにおける横線によって記される;カプラン-マイヤー曲線を図13Bに示す(p=0.04))。 アジュバント抗ホルモン療法後の乳癌再発に関連する(リン酸化型)タンパク質を決定するための、ピアソン相関、線形判別分析(LDA)、およびK最近接近傍(KNN)法を用いるリサンプリング分析によるホルモン受容体陽性乳癌逆相タンパク質アレイデータの分析。シグナチャー成分は以下の表に示される成分である。以下は、頻度順に示した高い感受性(>0.8)が得られる抗体である。 初期ホルモン受容体陽性乳癌を有するアジュバント抗ホルモン処置患者において本発明者らが予備的にバリデーションしたRPPAシグナチャー。表1に由来するこの特定の予測的シグナチャーのシグナチャー成分は、ER、PR、p38(p)Thr180/Tyr182、Akt(p)Thr308、およびmTOR(p)Ser2448である。教師なしクラスタリングの場合、有意な異なる転帰を有する二つの主な亜群が、双方の腫瘍セットにおいて同定された(アジュバント抗ホルモン療法後の全ての再発/ステージIV症例が、それぞれの場合において1群において起こった)。このシグナチャーの予後能は、多変量解析における進行期およびグレードとは無関係である。 アジュバント細胞障害性化学療法処置トリプルレセプターネガティブ乳癌を有する患者の再発に関する予測RPPAシグナチャー。表1に由来したこの特定のシグナチャーの成分は、 p70S6K(p)Thr389、FKHRL1、FKHRL1(p)Ser318/321、およびS6(p)Ser240-244である。クラスタリングの際に、有意に異なる転帰(アジュバント細胞障害性化学療法後の全ての再発/ステージIV症例はB群において起こる)を有する二つの主な亜群が同定された(群AおよびBと呼ばれる)。生存プロットは、無再発生存を示す。 膜受容体チロシンキナーゼ(RTK)経路およびホスファチジルイノシトール-3-キナーゼ(PI3K)/AKT経路の活性化は、初期ホルモン受容体陽性乳癌において、低いエストロゲン受容体(ER)発現に関連する。しかし、このシグナチャーは、患者をアジュバント抗ホルモン療法によって処置していない場合には予後的ではない。逆相タンパク質溶解物アレイ(RPPA)を用いて、タンパク質キナーゼC(PKC)α、AKT、グリコーゲンシンターゼキナーゼ(GSK)3、およびリボソームS6タンパク質の活性化(すなわち、リン酸化)によってER、EGFR、およびsrcの発現を定量および統合して、図2および図4におけるようにPI3K/AKT経路活性化シグナチャーを形成した。シグナチャー成分は、EGFR、ER、src、AKT、GSK3、PKCα(p)657、AKT(p)Ser473、GSK3(p)Ser21/9、およびS6(p)Ser240/244である。教師つきクラスタリングの場合、二つの主な亜群が同定された(ERおよびPI3Kと呼ばれる)。生存プロットは、無再発生存を示す。 アジュバント療法を行わなかった後の初期ホルモン受容体陽性乳癌再発に関連する(リン酸化型)タンパク質を決定するための、ピアソン相関、線形判別分析(LDA)、およびK最近接近傍(KNN)法を用いるリサンプリング分析による逆相タンパク質アレイデータの分析。シグナチャー成分は以下の表に示される成分である。以下は、頻度順で示した高い感受性(>0.8)が得られる抗体である。 ER発現とPI3K/AKT/mTOR経路のあいだ(具体的に、ER発現(以下の各ヒートマップの右側)活性化とAkt(p)Ser473(以下の各ヒートマップの左側)のあいだ)の顕著な逆関連は、本発明者らの乳癌および上皮卵巣癌(EOC)腫瘍セットRPPAデータにおいて一貫して認められている。それぞれの場合において、相関係数(CC)は、p値<0.05に対応する。これらのデータは、重要な関連を示唆しており、したがって根底にある機構を調べる必要がある。 表1において示される(リン酸化型)タンパク質に関する逆相タンパク質アレイ定量データを用いて誘導される、PIK3CA変異の機能的プロテオミクスシグナチャー。ホルモン受容体-陽性乳癌細胞株およびヒト腫瘍におけるヒートマップを構築した。このシグナチャーは、示される感度および特異性でPIK3CA変異体細胞株およびヒト腫瘍を検出する。PIK3CA変異シグナチャー(b)は、初期ホルモン受容体-陽性乳癌に関するアジュバント抗ホルモン処置後のPTENシグナチャー(a)と比較して、患者の無再発生存(RFS)の改善に向けての傾向(p=0.06)に関連した。
発明の詳細な説明
本発明は、細胞タンパク質の発現および/または活性化の定量を用いて、たとえば逆相組織溶解物アレイに基づく方法を用いて開発された癌の予後および予測シグナチャーに関する。たとえばタンパク質キナーゼ(たとえば、乳癌に関してホスファチジルイノシトール-3-キナーゼ(PI3K)/Aktおよびマイトゲン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK))およびステロイドシグナル伝達経路の活性化および発現を、本発明の方法によって決定してもよく、患者の臨床転帰を予測するために用いてもよい。このように、シグナチャーは、患者の予後に対するガイドとして、および同様に特定の癌サブタイプを有する個体が、特定の治療(ホルモン療法、化学療法、および標的化治療(トラスツズマブ))から効果を引き出す可能性(性向)を予測するために有用となる可能性がある。後者の使用と一貫して、本発明は、処置(たとえば、抗ホルモン)抵抗性を克服するために、治療戦略に関する個々の患者の必要要件を示すタンパク質シグナチャーを同定するために使用され得る。
広く受け入れられている臨床病理変数(たとえば、ホルモン受容体陽性乳癌を有する患者におけるホルモン療法)によって規定されるような、適切な治療による処置後の特定の乳癌サブタイプを有する個々の患者に関する予後予測および効果の可能性予測を改善する試みにおいて、様々なアレイおよびプロファイリング方法論(たとえば、転写プロファイリング、比較ゲノムハイブリダイゼーション)が、現在探索されている。しかし、多数の試験にもかかわらず、特定の治療から効果を得る可能性に基づいた処置に対して特定の乳癌サブタイプ(この場合、ホルモン受容体陽性)を有する患者をさらに階層化するために承認されている試験は、Oncotype Dx(Paik et al., 2004)だけである。しかし、現在の多くの方法論はDNAおよびmRNAレベルをアッセイしており、細胞挙動の直接のメディエータであるタンパク質の発現および活性化に関する情報を提供することができない。本明細書において記述されるアプローチは、タンパク質発現レベルのみならず、タンパク質活性化状態を定量することができる新規プロテオミクス技術を使用する。逆相組織溶解物アレイ(すなわち、逆相タンパク質アレイ(RPPA))は、タンパク質発現およびタンパク質活性化を定量することから、アッセイされるタンパク質またはそのコードする遺伝子もしくはmRNAが発癌における他の試験から関係していると既にみなされている場合には特に、個々の腫瘍の起こりうる挙動の予測において、ゲノム技術および転写技術よりも有用となる可能性がある。さらに、溶解物アレイは、今日までに開発された最も高感度のタンパク質検出技術の一つであり、フェムトグラム範囲で存在する細胞タンパク質の活性化を決定することができる。RPPAはハイスループットであり、多数の腫瘍試料における何百ものタンパク質レベルを容易に、効率的に、および同時にアッセイすることができる。
たとえば、ホルモン受容体陽性腫瘍の約60%しかホルモン調節に反応しない。組織溶解物アレイを用いるERタンパク質レベルは、ホルモン受容体陽性乳腺腫瘍におけるAktリン酸化の量と反比例する。他のデータは、PI3K/Akt経路およびMAPK経路が受容体のリン酸化を通して、ホルモン非依存的にERを活性化する可能性があることを示している。ホルモン操作は、ホルモン依存的ER活性化を遮断するだけであることや、本明細書に記述される試験が、ERタンパク質の量が抗ホルモン療法後の転帰の主要な動因(driver)であることを示し得るということから、このことは、ERの定量およびキナーゼシグナル伝達経路の様々な成分の活性化状態に基づく処置の決定に対して、ホルモン受容体陽性乳癌を有する患者を、組織溶解物アレイに基づくアプローチによって階層化できる可能性があることを示唆している。
I.逆相タンパク質アレイ(RPPA)
一定の態様において、組織試料材料を溶解緩衝液と混合した後、さらなる溶解緩衝液によって連続希釈(たとえば、8回連続希釈;そのままの濃度、1/2、1/4、1/8、1/16、1/32、1/64、1/128)することによって、組織または細胞溶解物を得ることができる。希釈は、Tecan液体取り扱いロボットまたは他の類似の装置によって作製することができる。この材料を、自動GeneTacアレイヤー(Genomic Solutions, Inc., Ann Arbor, MI)または他の類似の装置によって、ニトロセルロースコーティングスライドガラス(FAST Slides, Schleicher & Schuell BioScience, Inc. USA, Keene, NH)のような基盤上に転写/スポットすることができる。ある局面において、80個の試料を一つの基盤上に8連続希釈でスポットすることができる。連続希釈は、個々のタンパク質の相対的定量を可能にする勾配および切片を提供することができる。典型的に、タンパク質の測定を対照ペプチドと比較して絶対的定量を行う。
典型的に、スライドガラスの転写後、ウェスタンブロッティングのために用いられるスライドブロッキング、ブロッティングおよび抗体インキュベーションに関して同じストリンジェントな条件を、一次抗体を付加する前に適用する。DAKO(Copenhagen, Denmark)シグナル増幅システムを用いて、抗体結合強度を検出および増幅することができる。各試料に関してシグモイドシグナル強度-濃度曲線を作製するために、スライドガラスを走査し、かつMicro Vigene自動RPPAソフトウェア(VigeneTech Inc., MA)のようなソフトウェアにより定量することによって、シグナル強度を測定する。絶対的なタンパク質濃度を正確に決定するために、公知の濃度の精製タンパク質/組み換え型ペプチドに関する標準的なシグナル強度-濃度曲線を、タンパク質濃度が未知である試料との比較のために作製する。RPPAは定量的、高感度であり、および再現性がある。RPPAはまた、安定なローディング対照としてmTOR、erk、p38、GSK3およびJNKによってバリデーションしてもよい。
遺伝子発現アレイの分析のために用いられるものと同一のプログラムおよびアルゴリズムを用いて、定量されたタンパク質発現データを分析する。データを、たとえばR統計ソフトウェアパッケージ(cran.r-project.org)において利用される方法を用いて、差示的タンパク質発現に基づくクラスタの存在に関して分析する。多様なクラスタリング法(階層化クラスタリング、K-平均値、独立成分分析、相互情報、および遺伝子シェービング(gene shaving)が含まれる)を用いて、統計学的に類似の群に試料を分類する。たとえば、Xcluster(SMD software, Paulo Alto, CA)およびTreeView(University of Glasgow, Glasgow, Scotland)ソフトウェアを用いて、タンパク質発現および活性化における類似性に関して試料を整列させる、教師なし階層化クラスタまたはヒートマップにこれらのデータ全てを入力してもよい。これらの群のロバストネスおよび統計学的有意性を、ブートストラップデータリサンプリング(Kerr and Churchill, 2001)によって評価してもよい。全てのタンパク質に基づく一次クラスタリング分析のほかに、関心対象のシグナル伝達経路におけるタンパク質を用いて、二次ブートストラップリサンプルクラスタリング分析を行ってもよい。
典型的に、ブートストラップリサンプリングに基づいて統計学的に有意であるクラスタが乳癌の重要なサブタイプを表すためには、クラスタが、患者少なくとも5人からの試料を含有すべきである。たとえば、試料80例を用いて、10%の有病率を有する乳癌サブタイプは、試験集団に対して試料少なくとも5例を寄与する確率90%を有する。このように、患者試料候補(proposed patient sample)は、少なくとも10%の有病率を有するサブタイプを検出するために十分であるべきである。一度に転写することができるより多くのスライドガラスについて分析が行われることから、潜在的な問題はバッチ効果である。しかし、スライドを異なる時間に転写し、同じ抗体によって染色した場合、スライド間変動が最少(R2>0.8)であることが示唆されている。新規の関連する可能性のあるタンパク質が同定されると、保存された試料調製物/プレートを用いてこれらの新規タンパク質に関してプロービングしてもよく、データを分析のためのデータセットに組み入れることができる。このように、試料セットは、持続的に拡充される。必要とするのは少量の溶解物のみであることから、試料は、抗体1000個までの分析に容易に適合させることができる。
患者の試料を、患者の特徴および転帰情報(PCに対する反応、治療のタイプ等)が含まれるBreast Medical Oncology Databaseのような腫瘍学データベースにリンクさせる。これらのデータを、再発までの時間に関して、フィッシャーの正確確率検定、分散分析、およびコックス比例ハザードモデルが含まれる標準的な統計法を用いてRPPAクラスタに相関させることができる。このようにして、RPPAによって作製された患者の試料のクラスタが臨床的有意性を有するか否か、および特定のエンドポイント、たとえば病理学的完全寛解(pCR)に相関するか否かを決定することができる。
教師あり統計的アプローチも同様に、pCR予測因子の構築を補助するために使用してもよい。差を決定するための適切な検出力には、「訓練集合」を必要とする(たとえば、試料80例)。さらに、本発明者らは、細胞障害性処置の効能を増強するために、ターゲティングされうる化学療法非反応性腫瘍における、キナーゼシグナル伝達パターンを同定する段階を検討する。
II.タンパク質、細胞、および細胞試料
抗体パネルに対する癌患者由来のタンパク質の結合を査定するために、患者由来のタンパク質試料を調べることは当業者によって理解される。本発明のある局面において、そのような試料を得る方法は本発明の一部として含まれる。しかし、本発明の他の局面において、本発明の方法に関するタンパク質は、凍結組織、血液、または生検試料のような、既に採取されている試料から得てもよい。
本発明のある態様において、癌患者の細胞由来のタンパク質を分析する。そのような細胞は、たとえば、膀胱、血液、骨、骨髄、脳、乳腺、結腸、食道、胃腸、歯肉、頭部、腎臓、肝臓、肺、鼻咽頭、頚部、卵巣、前立腺、皮膚、胃、精巣、舌、子宮、または他の組織もしくは臓器試料に由来してもよい。ある特定の場合において、癌患者由来の細胞は癌細胞であってもよい。本発明に従って用いてもよいいくつかの癌細胞には、新生物、悪性;癌腫;未分化癌;巨細胞および紡錘細胞癌;小細胞癌;乳頭癌;扁平上皮癌;リンパ上皮癌;基底細胞癌;毛質性上皮癌;移行細胞癌;乳頭状移行細胞癌;腺癌;悪性ガストリノーマ;胆管癌;肝細胞癌;混合肝細胞癌および胆管癌;柱状腺癌;腺様嚢胞癌;腺腫様ポリープにおける腺癌;腺癌、大腸家族性ポリポーシス;固形癌;カルチノイド腫瘍、悪性;細気管支肺胞腺癌;乳頭腺癌;色素嫌性癌;好酸性細胞癌;酸親和性腺癌;好塩基性細胞癌;明細胞腺癌;顆粒細胞癌;濾胞性腺癌;乳頭濾胞性腺癌;非被包性硬化性癌;副腎皮質癌;子宮内膜性癌;皮膚付属器癌;アポクリン腺癌;皮脂腺癌;耳垢腺癌;粘膜表皮癌;嚢胞腺癌;乳頭嚢胞腺癌;乳頭漿液嚢胞腺癌;ムチン様嚢胞腺癌;ムチン様腺癌;印環体細胞癌;浸潤管癌;髄質癌;小葉癌;炎症性癌;ページェット病、乳腺;腺房細胞癌;腺扁平上皮癌;扁平化生を伴う腺癌;胸腺腫、悪性;卵巣間質腫瘍、悪性;莢膜腫、悪性;顆粒細胞腫瘍悪性
;男性胚細胞腫、悪性;セルトリ細胞癌;ライディヒ細胞腫瘍、悪性;脂質細胞腫瘍、悪性;パラガングリオーマ、悪性;乳腺外パラガングリオーマ、悪性;褐色細胞腫;血球管血管肉腫;悪性黒色腫;メラニン欠乏性黒色腫;表在拡大型黒色腫;巨大色素母斑における悪性黒色腫;上皮様細胞黒色腫;青色母斑、悪性;肉腫;線維肉腫;線維性組織球腫、悪性;粘液肉腫;脂肪肉腫;平滑筋肉腫;横紋筋肉腫;胎児性横紋筋肉腫;肺胞性横紋筋肉腫;間質肉腫;混合腫瘍、悪性;ミューラー管混合腫瘍;腎芽細胞腫;肝芽細胞腫;癌肉腫;間葉腫、悪性;ブレンナー腫瘍、悪性;葉状腫瘍、悪性;滑膜肉腫;中皮腫、悪性;未分化胚細胞腫;胎生期癌;奇形種、悪性;卵巣甲状腺腫、悪性;絨毛癌;中腎腫、悪性;血管肉腫;血管内皮腫、悪性;カポジ肉腫;血管周囲細胞腫、悪性;リンパ管肉腫;骨肉腫;傍骨骨肉腫;軟骨肉腫;軟骨芽細胞腫、悪性;間葉軟骨肉腫;骨の巨細胞腫瘍;ユーイング肉腫;歯原性腫瘍、悪性;エナメル上皮歯牙肉腫;エナメル上皮腫、悪性;エナメル上皮線維肉腫;松果体腫、悪性;脊索腫;神経膠腫、悪性;上衣腫;星状細胞腫;原形質性星状細胞腫;線維性星状細胞腫;星状芽細胞腫;神経膠芽細胞腫;乏突起神経膠腫;乏突起膠芽細胞腫;始原神経外胚葉;小脳肉腫;神経節芽細胞腫;神経芽腫;網膜芽腫;嗅覚神経原性腫瘍;髄膜腫、悪性;神経線維肉腫;神経鞘腫、悪性;顆粒細胞腫瘍、悪性;悪性リンパ腫;ホジキン病;側肉芽腫;悪性リンパ腫、小リンパ球性;悪性リンパ腫、大細胞型びまん性;悪性リンパ腫、濾胞性;菌状息肉腫;他の明記された非ホジキンリンパ腫;悪性組織球増加症;多発性骨髄腫;肥満細胞肉腫;免疫増殖性小腸疾患;白血病;リンパ様白血病;プラズマ細胞白血病;赤白血病;リンパ肉腫細胞白血病;骨髄性白血病;好塩基球性白血病;好酸球性白血病;単球性白血病;肥満細胞白血病;巨核芽球性白血病;骨髄性肉腫;およびヘアリーセル白血病が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
III.抗体およびその産生法
先に記述したように、本発明のある局面は、抗体の使用を伴う。抗体は、当業者に周知である任意の方法によって作製することができる。ある態様において、抗体は、リン酸化タンパク質のような共有結合的修飾タンパク質を認識する。以下の方法は、最も一般的な抗体産生法のいくつかを例示する。
A.ポリクローナル抗体
ポリクローナル抗体は、一般的に抗原の多数回の皮下(sc)または腹腔内(ip)注射によって動物において作製される。本明細書において用いられるように、「抗原」という用語は、抗体の産生において用いられる任意のポリペプチドを指す。しかし、多くの場合において、抗原は、単に一つのポリペプチドより多くの材料を含むことは当業者によって理解される。本発明のある他の局面において、特定のポリペプチド抗原に対する抗体が生成される。ある場合において、完全長のポリペプチド配列を抗原として用いてもよいが、そのほかの場合において、ポリペプチドの断片(すなわち、ペプチド)を用いてもよい。なおさらなる場合において、抗原は、リン酸化、アセチル化、メチル化、グリコシル化、プレニル化、ユビキチン化、SUMO化、またはNEDD化残基のような一定の翻訳後修飾を含む、または含まないとして定義されてもよい。もう一つの例において、Her-2のような癌細胞の表面上で発現されることが同定されているポリペプチドに対する抗体を作製することができる。このように、当業者は、当技術分野において周知である方法を用いて、任意の特定の細胞または関心対象ポリペプチドに結合する抗体を容易に生成することができる。
特定のポリペプチドに結合する抗体が産生される場合、免疫される種において免疫原性であるタンパク質、たとえばキーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、またはダイズトリプシン阻害剤に、二官能または誘導体化物質、たとえばマレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を通して共役)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基を通して)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl2、またはRおよびR1が異なるアルキル基であるR1N=C=NRを用いて、標的アミノ酸配列を含有する抗原または断片を共役させることは有用である可能性がある。
たとえばコンジュゲート1 mgまたは1μg(それぞれ、ウサギまたはマウスに関して)を3倍量のフロイント完全アジュバントと混合して、多数の部位に溶液を皮内注射することにより、免疫原性コンジュゲートまたは誘導体に対して、動物を免疫する。1ヶ月後、コンジュゲートの当初の量の約1/5から1/10量をフロイント完全アジュバントにおいて多数の部位で皮下注射することによって、動物を追加免疫する。7〜14日後、動物から採血して、血清を特異的抗体力価に関してアッセイする。力価が平衡となるまで、動物を追加免疫する。好ましくは、動物を同じ抗原コンジュゲートであるが、異なるタンパク質に、および/または異なるクロスリンク剤を通して共役させた抗原によって追加免疫する。コンジュゲートはまた、タンパク質融合体として組み換え型細胞培養において作製することができる。同様に、ミョウバン、または他のアジュバントのような凝集剤を用いて免疫応答を増強してもよい。
B.モノクローナル抗体
本発明のさらなる態様において、細胞ターゲティング部分はモノクローナル抗体である。モノクローナル抗体を用いることによって、本発明の細胞ターゲティング構築物は、ポリクローナル抗体を使用するターゲティング部分より標的抗原に対して大きい特異性を有することができる。モノクローナル抗体は、実質的に均一な抗体の集団から得られ、すなわち集団を含む個々の抗体は、微量存在し得る、潜在的な自然発生する変異を除き、同一である。このように、修飾語「モノクローナル」は、別個の抗体の混合物ではない抗体の特徴を示す。
たとえば、本発明のモノクローナル抗体は、Kohler & Milstein(1975)によって最初に記述されたハイブリドーマ法を用いて作製してもよく、または組み換えDNA法によって作製してもよい(U.S. Patent 4,816,567)。
ハイブリドーマ法において、マウスまたは他の適切な宿主動物を上記のように免疫して、免疫のために用いられるタンパク質に特異的に結合するであろう抗体を産生する、または産生することができるリンパ球(すなわち、プラズマ細胞)を誘発する。または、リンパ球をインビトロで免疫してもよい。次に、リンパ球をポリエチレングリコールのような適した融合剤を用いて骨髄腫細胞と融合させて、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding 1986)。
このように調製されたハイブリドーマ細胞を播種して、非融合の親骨髄腫細胞の生育または生存を阻害する一つまたは複数の物質を好ましくは含有する適当な培養培地において生育させる。たとえば、親骨髄腫細胞が、酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠損する場合、ハイブリドーマの培養培地には、典型的にHGPRT-欠損細胞の生育を防止するヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジン(HAT培地)が含まれるであろう。
好ましい骨髄腫細胞は、効率よく融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定な高レベル発現を維持し、HAT培地のような培地に対して感受性がある細胞である。これらの中で、好ましい骨髄腫細胞株は、Salk Institute Cell Distribution Center, San Diego, Calif. USAから入手可能なMOPC-21およびMPC-11マウス腫瘍に由来する細胞株、ならびにAmerican Type Culture Collection, Rockville, Md. USAから入手可能なSP-2細胞のようなマウス骨髄腫株である。
ハイブリドーマ細胞が生育している培養培地を、標的抗原に対するモノクローナル抗体の産生に関してアッセイする。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって産生されたモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降によって、またはラジオイムノアッセイ(RIA)もしくは酵素免疫測定法(ELISA)のようなインビトロ結合アッセイによって決定される。モノクローナル抗体の結合親和性は、たとえばMunson & Pollard(1980)のスキャッチャード解析によって決定することができる。
所望の特異性(たとえば、リン酸化対非リン酸化抗原に対する特異性)、親和性、および/または活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞が同定された後、クローンを限界希釈技法によってサブクローニングして、Goding(1986)による標準的な方法によって生育させてもよい。この目的に関する適した培養培地には、たとえば、ダルベッコ改変イーグル培地、またはRPMI-1640培地が含まれる。さらに、ハイブリドーマ細胞を動物における腹水腫瘍としてインビボで生育させてもよい。
サブクローンによって分泌されたモノクローナル抗体は、たとえば、プロテインA-セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、またはアフィニティクロマトグラフィーのような従来の免疫グロブリン精製技法によって、培養培地、腹水、または血清から適切に分離される。
本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の技法を用いて(たとえば、マウス抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを用いることによって)容易に単離および配列決定されてもよい。本発明のハイブリドーマ細胞は、そのようなDNAの好ましい供給源として役立つ。単離された後、DNAを発現ベクターに入れて、これをサルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、またはそうでなければ免疫グロブリンタンパク質を産生しない骨髄腫細胞のような宿主細胞にトランスフェクトして、組み換え型宿主細胞におけるモノクローナル抗体の合成を得る。DNAはまた、たとえば、Morrison et al.(1984)の相同的マウス配列の代わりにヒト重鎖および軽鎖定常ドメインのコード配列を置換することによって、または非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全てまたは一部を免疫グロブリンコード配列に共有結合的に連結させることによって、改変してもよい。そのようにして、本明細書に記述される任意の特定の抗原に関する結合特異性を有する「キメラ」または「ハイブリッド」抗体を調製する。
典型的に、そのような非免疫グロブリンポリペプチドは、本発明の抗体の定常ドメインの代わりに置換される、または、標的抗原に対して特異性を有する一つの抗原結合部位と、異なる抗原に対する特異性を有するもう1つの抗原結合部位を含むキメラ二価抗体を作製するため、本発明の抗体の一つの抗原結合部位の可変ドメインの代わりに、そのような非免疫グロブリンポリペプチドが置換される。キメラまたはハイブリッド抗体はまた、合成タンパク質化学における公知の方法を用いてインビトロで調製されてもよい。
いくつかの応用に関して、本発明の抗体は、検出可能な部分によって標識される。検出可能な部分は、検出可能なシグナルを直接または間接的に産生することができる任意の部分となりうる。たとえば、検出可能な部分は、3H、14C、32P、35S、もしくは125Iのような放射性同位元素;フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、もしくはルシフェリンのような蛍光もしくは化学発光化合物;ビオチン(アビジンのようなビオチンに結合する物質によって抗体の検出を可能にする);またはアルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、もしくは西洋ワサビペルオキシダーゼのような酵素(化学カップリングまたはポリペプチド融合のいずれかによって)であってもよい。
Hunter et al. (1962);David et al. (1974);Pain et al .(1981);およびNygren (1982)によって記述される方法を含む、検出可能な部分に抗体を個々にコンジュゲートするための当技術分野において公知である任意の方法を使用してもよい。
本発明の抗体は、競合的結合アッセイ、直接および間接サンドイッチアッセイ、および免疫沈降アッセイ(Zola, 1987)のような、任意の公知のアッセイ法において使用されてもよい。たとえば、抗体は本明細書において記述される診断アッセイにおいて用いられてもよい。
さらに、抗体は競合的結合アッセイにおいて用いられてもよい。これらのアッセイは、標識標準物質(精製標的抗原またはその免疫反応部分であってもよい)が限られた量の抗体との結合に関して試験試料検体と競合する能力に依存する。試験試料における抗原の量は、抗体に結合するようになる標準物質の量と反比例する。結合するようになる標準物質の量の決定を容易にするために、抗体は一般的に、抗体に結合した標準物質および検体が、未結合のままである標準物質および検体から簡便に分離されるように、競合の前後で不溶化される。
サンドイッチアッセイは、それぞれが検出されるタンパク質の異なる免疫原性部分またはエピトープに結合することができる二つの抗体を用いることを伴う。サンドイッチアッセイにおいて、試験試料検体は、固相支持体に結合した第一の抗体に結合し、その後第二の抗体が検体に結合して、それゆえに不溶性の三つの部分の複合体を形成する(たとえば、米国特許第4,376,110号を参照されたい)。第二の抗体はそれ自身検出可能な部分によって標識されてもよく(直接サンドイッチアッセイ)、または検出可能な部分によって標識された抗免疫グロブリン抗体を用いて測定されてもよい(間接サンドイッチアッセイ)。たとえば、一つのタイプのサンドイッチアッセイは、ELISAアッセイであり、この場合、検出可能な部分は酵素である。
本発明の方法と結びつけて用いてもよいいくつかの特異的抗体には、それぞれが参照により本明細書に組み入れられる、米国特許出願第2006/0040338号の表1またはMandell(2003)の表1において記載される抗体が含まれるが、これらに限定されるわけではない。たとえば、本発明において用いられる抗体には、Akt(pS472/pS473)リン酸化型特異的(PKBa)抗体、カベオリン(pY14)リン酸化型特異的抗体、Cdkl/Cdc2(pY15)リン酸化型特異的抗体、eNOS(pS1177)リン酸化型特異的抗体、eNOS(pT495)リン酸化型特異的抗体、ERK1/2(pT202/pY204)リン酸化型特異的抗体、(p44/42 MAPK)FAK(pY397)リン酸化型特異的抗体、IkBa(pS32/pS36)リン酸化型特異的抗体、インテグリンb3(pY759)リン酸化型特異的抗体、JNK(pT183/pY185)リン酸化型特異的抗体、Lck(pY505)リン酸化型特異的抗体、p38 MAPK(pT180/pY182)リン酸化型特異的抗体、p120カテニン(pY228)リン酸化型特異的抗体、p120カテニン(pY280)リン酸化型特異的抗体、p120カテニン(pY96)リン酸化型特異的抗体、パキシリン(pY118)リン酸化型特異的抗体、ホスホリパーゼCg(pY783)リン酸化型特異的抗体、PKARIIb(pS114)リン酸化型特異的抗体、14-3-3結合モチーフリン酸化型特異的抗体、4E-BP1リン酸化型特異的抗体、AcCoAカルボキシラーゼ(アセチルCoA)リン酸化型特異的抗体、アデュシンリン酸化型特異的抗体、AFXリン酸化型特異的抗体、AIK(オーロラ2)リン酸化型特異的抗体、Akt(PKB)リン酸化型特異的抗体、Akt(PKB)基質リン酸化型特異的抗体、ALKリン酸化型特異的抗体、AMPKαリン酸化型特異的抗体、AMPKβ1リン酸化型特異的抗体、APPリン酸化型特異的抗体、Arg-X-Tyr/Phe-X-pSerモチーフリン酸化型特異的抗体、アレスチン1βリン酸化型特異的抗体、ASKlリン酸化型特異的抗体、ATF-2リン酸化型特異的抗体、ATM/ATR基質リン酸化型特異的抗体、オーロラ2(AIK)リン酸化型特異的抗体、Badリン酸化型特異的抗体、Bcl-2リン酸化型特異的抗体、Bcrリン酸化型特異的抗体、Bim ELリン酸化型特異的抗体、BLNKリン酸化型特異的抗体、BMKl(ERK5)リン酸化型特異的抗体、BRCAlリン酸化型特異的抗体、Btkリン酸化型特異的抗体、C/EBPαリン酸化型特異的抗体、C/EBPβリン酸化型特異的抗体、c-Ablリン酸化型特異的抗体、CAKbリン酸化型特異的抗体、カルデスモンリン酸化型特異的抗体、CaMキナーゼIIリン酸化型特異的抗体、Cas p130リン酸化型特異的抗体、カテニンβリン酸化型特異的抗体、カテニンp120リン酸化型特異的抗体、カベオリン1リン酸化型特異的抗体、カベオリン2リン酸化型特異的抗体、カベオリンリン酸化型特異的抗体、c-Cblリン酸化型特異的抗体、CD117(c-Kit)リン酸化型特異的抗体、CD19リン酸化型特異的抗体、cdc2 p34リン酸化型特異的抗体、cdc2リン酸化型特異的抗体、cdc25 Cリン酸化型特異的抗体、cdklリン酸化型特異的抗体、cdk2リン酸化型特異的抗体、CDKs基質リン酸化型特異的抗体、CENP-Aリン酸化型特異的抗体、c-erbB-2リン酸化型特異的抗体、Chklリン酸化型特異的抗体、Chk2リン酸化型特異的抗体、c-Junリン酸化型特異的抗体、c-Kit(CD117)リン酸化型特異的抗体、c-Metリン酸化型特異的抗体、c-Mycリン酸化型特異的抗体、コフィリン2リン酸化型特異的抗体、コフィリンリン酸化型特異的抗体、コネキシン43リン酸化型特異的抗体、コータクチンリン酸化型特異的抗体、CPI-17リン酸化型特異的抗体、cPLA2リン酸化型特異的抗体、c-Raf(Raf1)リン酸化型特異的抗体、CREBリン酸化型特異的抗体、c-Retリン酸化型特異的抗体、CrkIIリン酸化型特異的抗体、CrkLリン酸化型特異的抗体、サイクリンBlリン酸化型特異的抗体、DARPP-32リン酸化型特異的抗体、DNA-トポイソメラーゼIIαリン酸化型特異的抗体、Dok-2 p56リン酸化型特異的抗体、eEF2リン酸化型特異的抗体、eEF2kリン酸化型特異的抗体、EGF受容体(EGFR)リン酸化型特異的抗体、eIF2αリン酸化型特異的抗体、eIF2Bεリン酸化型特異的抗体、eIF4εリン酸化型特異的抗体、eIF4γリン酸化型特異的抗体、Elk-1リン酸化型特異的抗体、eNOSリン酸化型特異的抗体、EphA3リン酸化型特異的抗体、エフリンBリン酸化型特異的抗体、erbB-2リン酸化型特異的抗体、ERK1/ERK2リン酸化型特異的抗体、ERK5(BMKl)リン酸化型特異的抗体、エストロゲン受容体α(ER-a)リン酸化型特異的抗体、Etkリン酸化型特異的抗体、エズリンリン酸化型特異的抗体、FADDリン酸化型特異的抗体、FAKリン酸化型特異的抗体、FAK2リン酸化型特異的抗体、FcγRIIbリン酸化型特異的抗体、FGF受容体(FGFR)リン酸化型特異的抗体、FKHRリン酸化型特異的抗体、FKHRLlリン酸化型特異的抗体、FLT3リン酸化型特異的抗体、FRS2-αリン酸化型特異的抗体、Gab1リン酸化型特異的抗体、Gab2リン酸化型特異的抗体、GABA B受容体リン酸化型特異的抗体、GAP-43リン酸化型特異的抗体、GATA4リン酸化型特異的抗体、GFAPリン酸化型特異的抗体、グルココルチコイド受容体リン酸化型特異的抗体、GluRl(グルタメート受容体1)リン酸化型特異的抗体、GluR2(グルタメート受容体2)リン酸化型特異的抗体、グリコーゲンシンターゼリン酸化型特異的抗体、GRB10リン酸化型特異的抗体、GRK2リン酸化型特異的抗体、GSK-3α/βリン酸化型特異的抗体、GSK-3αリン酸化型特異的抗体、GSK-3β(グリコーゲンシンターゼキナーゼ)リン酸化型特異的抗体、GSK-3βリン酸化型特異的抗体、GSK-3リン酸化型特異的抗体、H2A.Xリン酸化型特異的抗体、Hckリン酸化型特異的抗体、HER-2(ErbB2)リン酸化型特異的抗体、ヒストンHlリン酸化型特異的抗体、ヒストンH2A.Xリン酸化型特異的抗体、ヒストンH2Bリン酸化型特異的抗体、ヒストンH3リン酸化型特異的抗体、HMGN1(HMG-14)リン酸化型特異的抗体、Hsp27(熱ショックタンパク質27)リン酸化型特異的抗体、IkBa(IκB-α)リン酸化型特異的抗体、インテグリンα-4リン酸化型特異的抗体、インテグリンβ-1リン酸化型特異的抗体、インテグリンβ-3リン酸化型特異的抗体、IR(インスリン受容体)リン酸化型特異的抗体、IR/IGF1R(インスリン/インスリン様増殖因子-1受容体)リン酸化型特異的抗体、IRS-1リン酸化型特異的抗体、IRS-2リン酸化型特異的抗体、Jak1リン酸化型特異的抗体、Jak2リン酸化型特異的抗体、JNK(SAPK)リン酸化型特異的抗体、Junリン酸化型特異的抗体、KDRリン酸化型特異的抗体、ケラチン18リン酸化型特異的抗体、ケラチン8リン酸化型特異的抗体、キナーゼ基質リン酸化型特異的抗体、Kipl p27リン酸化型特異的抗体、LATリン酸化型特異的抗体、Lckリン酸化型特異的抗体、レプチン受容体リン酸化型特異的抗体、LKB1リン酸化型特異的抗体、Lynリン酸化型特異的抗体、MAPキナーゼ/CDK基質リン酸化型特異的抗体、MAPキナーゼp38リン酸化型特異的抗体、MAPキナーゼp44/42リン酸化型特異的抗体、MAPKAPキナーゼ1a(Rskl)リン酸化型特異的抗体、MAPKAPキナーゼ2リン酸化型特異的抗体、MARCKSリン酸化型特異的抗体、成熟促進因子(MPF)リン酸化型特異的抗体、M-CSF受容体リン酸化型特異的抗体、MDM2リン酸化型特異的抗体、MEK1/MEK2リン酸化型特異的抗体、MEKlリン酸化型特異的抗体、MEK2リン酸化型特異的抗体、MEK4リン酸化型特異的抗体、MEK7リン酸化型特異的抗体、Metリン酸化型特異的抗体、MKK3/MKK6リン酸化型特異的抗体、MKK4(SEKl)リン酸化型特異的抗体、MKK7リン酸化型特異的抗体、MLCリン酸化型特異的抗体、MLK3リン酸化型特異的抗体、Mnk1リン酸化型特異的抗体、MPM2リン酸化型特異的抗体、MSKlリン酸化型特異的抗体、mTORリン酸化型特異的抗体、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)リン酸化型特異的抗体、ミオシン軽鎖2リン酸化型特異的抗体、MYPT1リン酸化型特異的抗体、neu(Her2)リン酸化型特異的抗体、ニューロフィラメントリン酸化型特異的抗体、NFAT1リン酸化型特異的抗体、NF-κB p65リン酸化型特異的抗体、ニブリン(p95/NBSl)リン酸化型特異的抗体、内皮酸化窒素シンターゼ(eNOS)リン酸化型特異的抗体、神経型酸化窒素シンターゼ(nNOS)リン酸化型特異的抗体、NMDA受容体1(NMDARl)リン酸化型特異的抗体、NMDA受容体2B(NMDA NR2B)リン酸化型特異的抗体、nNOSリン酸化型特異的抗体、NPMリン酸化型特異的抗体、オピオイド受容体δリン酸化型特異的抗体、オピオイド受容体μリン酸化型特異的抗体、p53リン酸化型特異的抗体、PAK1/2/3リン酸化型特異的抗体、PAK2リン酸化型特異的抗体、パキシリンリン酸化型特異的抗体、パキシリンリン酸化型特異的抗体、PDGF受容体α/βリン酸化型特異的抗体、PDGF受容体αリン酸化型特異的抗体、PDGF受容体βリン酸化型特異的抗体、PDGFRb(血小板由来増殖因子受容体β)リン酸化型特異的抗体、PDKlドッキングモチーフリン酸化型特異的抗体、PDKlリン酸化型特異的抗体、PDKl基質リン酸化型特異的抗体、PERKリン酸化型特異的抗体、PFK-2リン酸化型特異的抗体、Pheリン酸化型特異的抗体、ホスホランバンリン酸化型特異的抗体、ホスホリパーゼCγ- 1リン酸化型特異的抗体、ホスホチロシンIgGリン酸化型特異的抗体、phox p40リン酸化型特異的抗体、PI3K結合モチーフp85リン酸化型特異的抗体、Pin1リン酸化型特異的抗体、PKA基質リン酸化型特異的抗体、PKB(Akt)リン酸化型特異的抗体、PKB(Akt)基質リン酸化型特異的抗体、PKCα/βIIリン酸化型特異的抗体、PKCαリン酸化型特異的抗体、PKCδ/θリン酸化型特異的抗体、PKCδリン酸化型特異的抗体、PKCεリン酸化型特異的抗体、PKCηリン酸化型特異的抗体、PKCγリン酸化型特異的抗体、PKCリン酸化型特異的抗体、PKC基質リン酸化型特異的抗体、PKCθリン酸化型特異的抗体、PKCζ/λリン酸化型特異的抗体、PKD(PKCμ)リン酸化型特異的抗体、PKD2リン酸化型特異的抗体、PKRリン酸化型特異的抗体、PLCβ3リン酸化型特異的抗体、PLCγ1リン酸化型特異的抗体、PLCγ2リン酸化型特異的抗体、PLDlリン酸化型特異的抗体、PP1αリン酸化型特異的抗体、PP2Aリン酸化型特異的抗体、PPARαリン酸化型特異的抗体、PRAS40リン酸化型特異的抗体、プレセニリン-2リン酸化型特異的抗体、PRK2(pan-PDKlリン酸化部位)リン酸化型特異的抗体、プロゲステロン受容体リン酸化型特異的抗体、タンパク質キナーゼA RII(PKARII)リン酸化型特異的抗体、タンパク質キナーゼBリン酸化型特異的抗体、タンパク質キナーゼB基質リン酸化型特異的抗体、タンパク質キナーゼCα(PKCa)リン酸化型特異的抗体、タンパク質キナーゼCε(PKCe)リン酸化型特異的抗体、PTENリン酸化型特異的抗体、Pyk2リン酸化型特異的抗体、Racl/cdc42リン酸化型特異的抗体、Rac-Pkリン酸化型特異的抗体、Rac-Pk基質リン酸化型特異的抗体、Rad 17リン酸化型特異的抗体、Rad l7リン酸化型特異的抗体、Raf-1リン酸化型特異的抗体、Ras-GRF1リン酸化型特異的抗体、Rb(網膜芽腫タンパク質)リン酸化型特異的抗体、Retリン酸化型特異的抗体、リボソームタンパク質S6リン酸化型特異的抗体、RNAポリメラーゼIIリン酸化型特異的抗体、Rsk p90リン酸化型特異的抗体、Rskl(MAPKAP K1a)リン酸化型特異的抗体、Rsk3リン酸化型特異的抗体、S6キナーゼリン酸化型特異的抗体、S6キナーゼp70リン酸化型特異的抗体、S6ペプチド基質リン酸化型特異的抗体、SAPK(JNK)リン酸化型特異的抗体、SAPK2(ストレス活性化タンパク質キナーゼSKK3 MKK3)リン酸化型特異的抗体、SEKl(MKK4)リン酸化型特異的抗体、セロトニンN-ATリン酸化型特異的抗体、セロトニン-N-ATリン酸化型特異的抗体、SGKリン酸化型特異的抗体、Sheリン酸化型特異的抗体、SHIP1リン酸化型特異的抗体、SHP-2リン酸化型特異的抗体、SLP-76リン酸化型特異的抗体、Smad1リン酸化型特異的抗体、Smad2リン酸化型特異的抗体、SMClリン酸化型特異的抗体、SMC3リン酸化型特異的抗体、SOX-9リン酸化型特異的抗体、SrcファミリーNegative Regulatory Siteリン酸化型特異的抗体、Srcファミリーリン酸化型特異的抗体、Srcリン酸化型特異的抗体、Stat1リン酸化型特異的抗体、Stat2リン酸化型特異的抗体、Stat3リン酸化型特異的抗体、Stat4リン酸化型特異的抗体、Stat5リン酸化型特異的抗体、Stat5A/Stat5Bリン酸化型特異的抗体、Stat5abリン酸化型特異的抗体、Stat6リン酸化型特異的抗体、Sykリン酸化型特異的抗体、シナプシンリン酸化型特異的抗体、シナプシン部位1リン酸化型特異的抗体、Tauリン酸化
型特異的抗体、Tie 2リン酸化型特異的抗体、Trk Aリン酸化型特異的抗体、心臓トロポニンIリン酸化型特異的抗体、ツベリンリン酸化型特異的抗体、Tyk 2リン酸化型特異的抗体、チロシンヒドロキシラーゼリン酸化型特異的抗体、チロシンリン酸化型特異的抗体、VASPリン酸化型特異的抗体、Vav1リン酸化型特異的抗体、Vav3リン酸化型特異的抗体、VEGF受容体2リン酸化型特異的抗体、またはZap-70リン酸化型特異的抗体および非リン酸化特異的対応物の、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個またはそれより多くが含まれてもよく、または除外されてもよい。
C.ヒト化抗体
先に考察したように、本発明の方法において用いるための抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体、またはその断片であってもよい。しかし、一定の治療目的に関して、抗体は、それらが処置される被験者において免疫応答を誘発しないようにヒト化される。そのようなヒト化抗体も同様に本発明に従って用いてもよく、そのような抗体を生成する方法は当業者に周知である(Jones et al., 1986;Riechmann et al., 1988;Verhoeyen et al., 1988)。
D.一本鎖抗体
一本鎖抗体(SCA)は、モノクローナル抗体によって可能な治療的および診断的適用を拡大するように設計された遺伝子操作タンパク質である。SCAは、モノクローナル抗体の結合特異性および親和性を有し、その天然型においてはモノクローナル抗体の大きさの約5分の1〜6分の1であることから、典型的に非常に短い半減期となる。SCAは、検出のために用いられるポリペプチド(たとえば、ルシフェラーゼまたは蛍光タンパク質)との直接融合能を含め、多くのモノクローナル抗体と比較して、いくつかの利点を提供する。それらの利点のほかに、完全なヒトSCAはヒトSCAライブラリから直接単離することができ、費用および時間を消費する「ヒト化」技法の必要性がない。
一本鎖組み換え型抗体(scFv)は、設計された柔軟なペプチドテザー(peptide tether)(Atwell et al., 1999)によって連結された抗体VLおよびVHドメインからなる。完全なIgGと比較すると、scFvは、同等の抗原結合親和性を有しつつ、小さいサイズかつ構造の単純性という長所を有し、それらは類似の2-鎖Fab断片(2-chain Fab fragment)より安定となりうる(Colcher et al., 1998;Adams and Schier, 1999)。
重鎖および軽鎖(VHおよびVL)からの可変領域はいずれも、アミノ酸およそ110個の長さである。それらを、アミノ酸15個またはそれより長いリンカーによって、たとえば二つのドメインを機能的抗原結合ポケットにアセンブルさせるために十分な柔軟性を有する配列に連結することができる。特定の態様において、様々なシグナル配列の付加によって、細胞内の異なるオルガネラにscFvをターゲティングする、または分泌させることができる。軽鎖定常領域(Ck)の付加は、ジスルフィド結合による二量化を可能にして、より高い安定性およびアビディティを与える。このように、一本鎖Fv(scFv)SCAに関して、Fv断片の二つのドメインは異なる遺伝子によってコードされるが、これは、組み換え法によって一つのタンパク質鎖scFvとしてそれらを作製できる合成リンカーを作製することが可能であることが証明されている(Bird et al., 1988;Huston et al., 1988)。さらにそれらは、ファージディスプレイライブラリからの単離の容易さ、および保存された抗原を認識できるため、しばしば用いられる(論評に関しては、Adams and Schier, 1999を参照されたい)。このように、本発明のいくつかの局面において、抗体は、上記の従来の抗体産生技術によって生成されたライブラリよりファージディスプレイライブラリから単離されるSCAであってもよい。
IV.実施例
以下の実施例は、本発明の様々な態様を説明する意図で与えられ、本発明をいかなるようにも制限することを意味していない。当業者は、目標を実行するため、および言及した目的ならびに長所と共に、本明細書における固有の目標、目的、および長所を得るため、本発明が良好に改変されることを容易に認識する。本実施例は、本明細書において記述された方法と共に、好ましい態様の目下の典型であり、例示であり、かつ本発明の範囲の制限であると意図されない。特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨に含まれるその変化および他の用途は、当業者に想起され得る。
実施例1
RPPA法および分析
RPPA法:一般的なRPPA法を図1に例示する。組織試料材料を溶解緩衝液1 ml/凍結組織40 mgと混合した後、さらなる溶解緩衝液によって連続希釈(連続8倍希釈;そのままの濃度、1/2、1/4、1/8、1/16、1/32、1/64、1/128)することによってタンパク質溶解物を得る。希釈はTecan液体取り扱いロボットによって行われる。この材料を、1回触れる毎にタンパク質溶解物1 nlを移す自動GeneTacアレイヤー(Genomic Solutions, Inc., Ann Arbor, MI)によってニトロセルロースコーティングスライドガラス(FASTスライド、Schleicher & Schuell BioScience, Inc. USA, Keene, NH)に転写する。80個の試料を、スライドガラス1枚に8連続希釈液でスポットすることができる。連続希釈液は、個々のタンパク質の相対的定量を可能にする勾配および切片を提供する。これを、対照ペプチド(室内)と比較して、絶対的な定量を行う(図2A〜2Bを参照されたい)。スライドの転写後、ウェスタンブロッティングのために用いたスライドのブロッキング、ブロッティング、および抗体インキュベーションに関して同じストリンジェントな条件を、一次抗体を付加する前に適用する。DAKO(Copenhagen, Denmark)シグナル増幅システムを用いて、抗体結合強度を検出および増幅することができる。
スライドガラスを走査して、MicroVigene自動RPPAソフトウェア(VigeneTech Inc., MA)によって定量することによってシグナル強度を測定し、各試料に関してシグモイドシグナル強度-濃度曲線を作製する。タンパク質の絶対濃度を正確に決定するために、公知の濃度の精製タンパク質/組み換え型ペプチドに関する標準的なシグナル強度-濃度曲線を作製し、タンパク質濃度が不明である試料と比較する。RPPAは、定量的で、感度がよく、および再現性がよいことが証明されている。図3Aは、RPPAの再現性を図示し、図3B〜3DはRPPAによる測定が、既に利用できるアッセイ法と相関することを証明している。RPPAはまた、安定なローディング対照として、mTOR、erk、p38、GSK3、およびJNKについてバリデーションしてもよい。
定量されたタンパク質発現データを、遺伝子発現アレイの分析のために用いられるものと同一のプログラムおよびアルゴリズムを用いて分析する。データをR統計ソフトウェアパッケージ(cran.r-project.org)において利用可能な方法を用いて差示的タンパク質発現に基づくクラスタの存在に関して分析する。多様なクラスタリング法(階層化クラスタリング、K-平均、独立成分分析、相互情報量、および遺伝子シェービング(shaving)が含まれる)を用いて、試料を統計学的に類似の群に分類する。たとえば、Xcluster(SMD software, Paulo Alto, CA)およびTreeView(University of Glasgow, Glasgow, Scotland)ソフトウェアを用いて、タンパク質発現および活性化における類似性に関して試料を整列させる教師なし階層化クラスタまたはヒートマップの中に、このデータ全てを入力してもよい。これらの群のロバストネスおよび統計学的有意性を、ブートストラップデータリサンプリング(Kerr and Churchill, 2001)によって評価してもよい。全てのタンパク質に基づく一次クラスタリング分析のほかに、関心対象シグナル伝達経路におけるタンパク質を用いて、二次ブートストラップリサンプルクラスタリング分析を行ってもよい。
ブートストラップリサンプリングに基づいて統計学的に有意であるクラスタが乳癌の重要なサブタイプを表すためには、クラスタは、患者少なくとも5人からの試料を含むべきである。たとえば、実施例4のように、試料80例を用いると、有病率10%の乳癌サブタイプは、試験集団に対して試料少なくとも5例を与える確率90%を有する。このように、提案される患者試料は、少なくとも10%の有病率を有するサブタイプを検出するために十分であるべきである。一度に転写することができるより多くのスライドガラスについて分析が行われることから、潜在的な問題はバッチ効果である。しかし、スライドを異なる時間に転写して、同じ抗体によって染色したところ、スライド間変動が最少となる(R2>0.8)ことが示唆されている。RPPAの長所は、新規の関連する可能性のあるタンパク質が同定されると、保存された試料調製物/プレートを用いてこれらの新規タンパク質に関してプロービングしてもよく、データを分析のためのデータセットに組み入れることができる点である。このように、試料セットは持続的に拡充される。必要とするのは少量の溶解物のみであることから、試料は、抗体1000個までの分析に適合することができる。
患者の試料は典型的に、患者の特徴および転帰情報(PCに対する反応、治療のタイプ等)が含まれるBreast Medical Oncology Databaseのような腫瘍学データベースにリンクさせる。これらのデータを、再発までの時間に関して、フィッシャーの正確確率検定、分散分析、およびコックス比例ハザードモデルが含まれる標準的な統計法を用いてRPPAクラスタに相関させることができる。このようにして、RPPAによって作製された患者試料のクラスタが臨床的有意性を有するか否か、および特定のエンドポイント、たとえば病理学的完全寛解(pCR)と相関するか否かを決定することができる。教師あり統計的アプローチも同様に、pCR予測因子の構築を補助するために使用してもよい。差を決定するための適切な検出力には、「訓練集合」を必要とする(たとえば、試料80個)。さらに、本発明者らは、細胞障害性処置の効能を増強するために、ターゲティングされうる化学療法非反応性腫瘍における、キナーゼシグナル伝達パターンを同定する段階を検討する。
実施例2
乳癌の予後に関する予測マーカー
ホルモン受容体陽性乳癌患者における臨床転帰を予測するために、アルゴリズムを開発する。アルゴリズムは、乳腺腫瘍の1セットにおいて開発およびバリデーションされ、タンパク質マーカー5個:エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)、ならびにAkt、p38、およびラパマイシンの哺乳動物標的(mTor)のリン酸化を用いる。ERは、現在、二分変数としてアッセイされ、このアプローチの妥当性は、たとえばFood and Drug Administration.によって現在議論されている。溶解物アレイは、連続変数としてERを処理し、データでは、ERタンパク質の量が、ホルモン受容体陽性乳癌に関する抗ホルモン療法後の転帰の主な動因であることが示唆される。このように、溶解物アレイ技術を用いるERの定量は、乳腺腫瘍のホルモン反応性を決定する際の現状の免疫組織化学アッセイを改善することができる可能性がある。
逆相組織溶解物アレイおよびMicrovigeneソフトウェア(登録商標)を用いて、ホルモン受容体陽性乳癌64例および乳癌細胞株40例における、エストロゲン受容体α(ER)、ならびにHER2、ホスファチジルイノシトール-3-キナーゼ(PI3K)、マイトゲン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)、およびSTAT経路の総/活性化成分36個の発現を定量する。クラスタリングは、 Xcluster(登録商標)およびTreeview(登録商標)によって行われる。ホルモン受容体陽性乳癌患者64人中47人をアジュバントホルモン療法によって処置して、43人を化学療法によって処置する。診断0〜3ヶ月以内に転移を有すると診断された患者5人が含まれる再発12例を認める。タンパク質37個全ての発現を用いる教師なし分析は、ホルモン受容体陽性乳癌の二つの大きいサブクラスタを明らかにする。一つの大きいクラスタは、より低いER発現レベルを有する腫瘍で構成され、ほぼ活性化増殖因子シグナル伝達経路を示すリン酸化型タンパク質で構成される抗体群によって駆動(driven)された。このように、ER発現とEGFR、src、AKT、4EBP1、およびPKCα(それぞれに関してp<0.05)が含まれるPI3K/MAPK経路の成分の発現および活性化とのあいだには有意な逆相関が存在する。類似の逆相関は、アッセイした乳癌細胞株40例において認められた。ホルモン受容体陽性乳癌における再発の臨床プロテオミクス予測因子は、核グレード(p=0.001)、ERの低い発現(p=0.04)、低いp38リン酸化(p=0.02)、および高いp53(p=0.02)である。同様に、低いMAPKリン酸化およびS6リン酸化、低いp27、および高いサイクリンB1と再発との関連に対して傾向(p<0.1)を認める。教師あり分析を行うために、これらの7個の抗体による定量を用いて、再発の確率が75%であるp53-高、サイクリンB1-高、ER-低ホルモン受容体陽性乳癌の小さい群が同定され、これは他の腫瘍より有意に大きい(p<0.003)。再発12例中10例は、グレード3ホルモン受容体陽性乳腺腫瘍26例において起こることから、「グレード3」タンパク質シグナチャーは、他の患者における100%と比較して20ヶ月で17%の無再発生存に関連した(p=0.002)。
先に記述したように、ホルモン受容体陽性乳癌を有する全ての患者における転帰を予測するためのアルゴリズムを開発する。アルゴリズムは、タンパク質マーカー5個を含む:エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)、ならびにAkt、p38、およびラパマイシンの哺乳動物標的(mTor)のリン酸化(図7および8)。さらに、溶解物アレイは、ERを連続変数として扱い、試験は、ERタンパク質の量が、ホルモン受容体陽性乳癌に関する抗ホルモン療法後の転帰の主要な動因であることを示唆している。このように、溶解物アレイ技術を用いるER定量は、乳腺腫瘍のホルモン反応性を決定する現在の免疫組織化学標準アプローチを改善できる可能性がある。患者を以下のように階層化してもよい:
1.高ERおよび低PI3Kを有する患者は、タモキシフェンまたはアロマターゼ阻害剤単独に対して極めて感受性がある可能性がある。
2.低ERおよび高PI3Kを有する患者は、アロマターゼ阻害剤と併用したPI3K阻害剤に対して感受性がある可能性がある。
3.低ERおよび高PI3Kを有する患者は、ホルモン操作および化学療法を必要とする可能性がある。
4.低ERおよび高PI3Kを有する患者は、アロマターゼ阻害剤よりむしろERレベルを減少させる物質(これらは臨床において用いられている)に対して感受性がある可能性がある。
さらに、先の章において記述したように、組織溶解物アレイに基づくアプローチは、ERの定量およびキナーゼシグナル伝達経路の様々な成分の活性化状態に基づく処置の決定に対して、ホルモン受容体陽性乳癌を有する患者を、階層化するにおいて臨床的応用を有する。
実施例3
卵巣癌に関する予測マーカー
卵巣癌の予後および予測シグナチャーを、キナーゼシグナル伝達経路(たとえば、ホスファチジルイノシトール-3-キナーゼ(PI3K)/Aktおよびマイトゲン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK))およびステロイドシグナル伝達経路のタンパク質メンバーの発現および活性化の逆相組織溶解物アレイに基づく定量を用いて開発する。シグナチャーは、患者の予後に対するガイドとして、および同様に卵巣癌を有する個体が、特定の化学療法および標的候補治療(potentially targeted therapies)から効果を引き出す可能性の予測に関して有用となり得る。逆相組織溶解物アレイおよびMicrovigeneソフトウェア(登録商標)を用いて、ヒト卵巣癌44例の試験セット(図4)およびヒト卵巣癌28例のバリデーションセット(図5)における、エストロゲン受容体α(ER)、プロゲステロン受容体(PR)、ならびにHER2、ホスファチジルイノシトール-3-キナーゼ(PI3K)、マイトゲン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)、およびSTAT経路の総/活性化成分36個の発現を定量する。大多数は、術後に白金製剤に基づく化学療法によって処置された患者におけるステージIII/IVハイグレード癌である。教師ありおよび教師なしの双方のクラスタリングを、Xcluster(登録商標)およびTreeview(登録商標)によって行う。手術および白金製剤に基づく化学療法後のハイグレードヒト卵巣癌における転帰を予測するための教師ありアルゴリズムを開発して、予備的なバリデーションセットにおいてバリデーションする。アルゴリズムは、タンパク質マーカー6個を含む:エストロゲン受容体(ER)、Eカドヘリン、ならびにAkt(セリン473位)、MAPK(44/42)、c-jun N-末端キナーゼ(JNK)、およびS6のリン酸化。このシグナチャーは、ハイグレードヒト卵巣癌患者に関する手術および化学療法後の予後徴候である。
実施例4
凍結乳癌組織試料からのRPPAシグナル伝達シグナチャー
タンパク質シグナル伝達シグナチャーを、逆相タンパク質アレイ(RPPA)の教師なし階層化クラスタリングによって多数の凍結乳癌試料において特徴付けする。いくつかの凍結乳癌細針吸引(FNA)液溶解物試料を、スライドガラス上でアレイにした後、多数のタンパク質に対するバリデーションされた単特異的抗体によってプロービングし、Microvigeneソフトウェア(VigeneTech Inc., MA)を用いてシグナルを検出および定量し、Xcluster(SMD software, Paulo Alto, CA)およびTreeView(University of Glasgow, Glasgow, Scotland)を用いて、タンパク質発現および活性化に関する類似性に関して試料を整列させる教師なし階層化クラスタまたはヒートマップにこれらのデータ全てを入力することができる。このアプローチを用いて、患者の転帰との相関が証明されている。
3つのシグナル伝達カスケード(PI3K、JAK/STAT、およびMAPK)、ホルモン受容体ERおよびPR、ならびにGST、TOPO、サバイビンおよびタウタンパク質の機能的プロテオミクス発現/活性化シグナチャーの特徴付けを行うことによって乳癌を分類すること。PI3K、JAK/STAT、およびMAPKシグナル伝達経路を通してのシグナル伝達、ならびにER、PR、GST、TOPO、サバイビン、およびタウタンパク質は全て乳癌において重要な役割を有する。患者の試料においてRPPAを用いるこの「プロテオミクス」の同時特徴付けによって、別個の分子タイプに乳癌をクラスタすることができ、癌の表現型において共に重要な役割を果たすタンパク質を同定することができる。
組織の採取:IRB-承認プロトコールLAB 99-402に基づいて、術前化学療法(PC)の前に原発腫瘍から採取した瞬間凍結乳癌FNA 80例を、抗体48個を用いてRPPAによって調べる。これらの抗体は、乳癌およびその他の癌において関係しているその他のシグナル伝達事象と同様、先に詳細に注目したシグナル伝達経路の定量分析を提供する。
LAB 99-402に基づいてプレ-PC生検を行う、PCによって処置した完全に独立した患者50人の群由来の外科病理標本から情報を得て、これらの腫瘍における3つのシグナル伝達カスケード(PI3K、JAK/STAT、およびMAPK)、ホルモン受容体ERおよびPR、およびGST、TOPO、サバイビン、およびタウタンパク質の機能的プロテオミクス発現/活性化シグナチャーから先に構築されたPC反応予測因子と、PCに対する腫瘍の反応とを相関させる。
実施例5
乳癌および卵巣癌の臨床挙動を予測するためのRPPA機能的プロテオミクスパターン
本発明者らは、RPPAを利用して、バリデーションされているか、またはRPPAにおける使用のためにバリデーションされるプロセスにある表1の抗体を用いて、乳癌および卵巣癌の臨床挙動の予測に対して関連する機能的プロテオミクスパターンを調べた。これらの抗体は、先の群に属するタンパク質を検出し、乳癌および卵巣癌の発癌において重要な役割を果たすシグナル伝達プロセスの発現および活性化(たとえば、リン酸化(p))の座標映像(a coordinate picture)を開発するために選択した。本発明者らは、以下からのタンパク質溶解物を分析した:
1.アジュバントホルモン療法によって処置した(患者65人)-対-処置していない(患者51人)の初期ホルモン受容体陽性乳癌116例。
2.アジュバント細胞障害性化学療法によって処置した初期HER2増幅乳癌43例。
3.アジュバント細胞障害性化学療法によって処置した初期トリプルレセプターネガティブ乳癌52例。
4.カルボプラチンおよびパクリタキセルによって標準的に処置した新規診断EOC患者における一次手術で得られたハイグレード卵巣癌112例。
RPPAデータの教師あり分析を標準および新規統計的アプローチを用いて行った。
卵巣癌において、そのような分析アプローチは、一次卵巣癌「白金製剤耐性」、すなわち一次カルボプラチン/パクリタキセル化学療法の終了6ヶ月以内での疾患の進行、の結果として患者の予後不良の予測に関する優れた感度、特異性、陽性および陰性予測値を有する、二つの重なり合う機能的プロテオミクスバイオマーカーのグループを同定した。leave one outクロスバリデーションを用いる多数のシミュレーションによるロジスティック回帰によって、本発明者らは、一次「白金製剤耐性」の予測に関してそれぞれ、81%、94%、78%、および87%の感度、特異性、陽性、および陰性予測値を有するタンパク質シグナチャー5個(src(p)Tyr416(注意:X(p)Yは、アミノ酸Yでのタンパク質Xのリン酸化を表す)、AKT、HER2、S6(p)Ser235/236およびCCNDl(サイクリンDl))を同定した。Dr. Jonas Almeida/Wenbin Liu(Dept. of Bioinformatics and Computational Biology)(未発表)によって開発されたコミッティーモデリングを用いて、本発明者らは、独自の個々の腫瘍機能的プロテオミクスシグナチャーを同定することによって、一次卵巣癌の「白金製剤耐性」に関連するタンパク質シグナル伝達パターンの分析をさらに精密化した。本試験の結果は、一次化学療法終了後0.66ヶ月および21ヶ月での無進行生存(PFS)患者における卵巣癌由来の機能的なプロテオミクス「フィンガープリント」の顕著に異なる成分を示している。このアプローチは、個々の卵巣癌における顕著なタンパク質シグナル伝達「フィンガープリント」を同定し、以下を著しく示す:(1)カルボプラチンに基づく一次治療後6ヶ月またはそれ未満の無進行生存(PFS)患者からの腫瘍における有意な一致(すなわち、一次「白金製剤耐性」卵巣癌)、(2)srcおよびAKTが含まれるシグナチャーの主要なタンパク質成分における類似性を有するロジスティック回帰を用いて同定された、一次「白金製剤耐性」モデルとのオーバーラップ、ならびに(3)優れた感度/特異性を有する(AUCs>90%)受信者動作特性(ROC)曲線。標準的な一次化学療法の終了後の個々の卵巣癌患者におけるPFSの予測に関するコミッティーモデリングアプローチの感度および特異性に基づいて、本発明者らは、RPPAデータの分析のために用いられるソフトウェアにこれを組み入れて、分析されるべきバリデーション卵巣癌セットを誘導した。注目すべきことに、XclusterおよびTreeviewのような他のモデリング方法論を用いて、類似の結果に到達することができる。
XclusterおよびTreeviewが含まれるソフトウェアによる教師なしおよび教師ありクラスタリングを用いて、その他の潜在的に強力な予後および予測シグナチャーも、卵巣癌患者において訓練され、開発されている(図10)。教師なしアプローチでさえ、有意に異なる生存転帰を有する卵巣癌腫瘍サブセットを区別することができる(図11)。これらのシグナチャーは、卵巣癌患者の管理および処置をガイドするにおいて臨床的有用性を有する。
抗ホルモン処置乳癌。抗ホルモン処置初期ホルモン受容体陽性乳癌において、表1において示される抗体によるRPPAを利用して、本発明者らは細胞内キナーゼ経路成分の活性化と、ホルモン受容体の腫瘍発現レベルのあいだに有意な逆の相関が存在することを、アジュバントホルモン療法によって処置した初期ホルモン受容体陽性乳癌患者65人において証明した。この逆相関関係を示すためにRPPAデータを用いて誘導したシグナチャーは、これらの処置患者における転帰を有意に予測する(図12)。これは、卵巣癌における先の予備的データと類似である。しかし、卵巣癌とは異なり、ER発現およびAktリン酸化のみを用いる場合、乳癌シグナチャーは、アジュバント抗ホルモン療法後において有意な予測能を保持する。これを、セリン473位でのAKTリン酸化(PI3K経路の活性化の代用物としてのAKT(p)Ser473)およびERαレベル(有意な逆相関に関してp=0.02)を利用して図13に示す。高い(典型的にヒートマップデータディスプレイにおいて赤色)AKT(p)Ser473と共に低い(典型的にヒートマップデータディスプレイにおいて緑色)ERα発現を有するこのシグナチャーはまた、アジュバント抗ホルモン療法後の疾患再発(図13Aにおける黒い線によって記される再発)の強い予測を提供する。図14は、アジュバント抗ホルモン療法後の乳癌再発に最も関連する(リン酸化型)タンパク質を決定するためのピアソン相関、線形識別分析(LDA)およびK最近接近傍(KNN)法を用いたリンサンプリング分析による乳癌RPPAデータの分析に対する代替アプローチを示す。表1において示されるタンパク質の発現/活性化の定量を反映するRPPAデータの教師ありクラスタリングもまた、乳癌再発の他の予測的バイオマーカーシグナチャーを同定し(図15および図16)、いくつかはバリデーションされている(特に、初期ホルモン受容体陽性乳癌を有する抗ホルモン処置患者における予備的なバリデーション)。
キナーゼとステロイド経路シグナル伝達のあいだのこの逆相関はまた、初期ホルモン受容体陽性無処置乳癌患者51人に由来する一次腫瘍セットにおいて再現されるが、この場合、対応するシグナチャーは予後的ではない(すなわち、アジュバントホルモン療法処置の非存在下での転帰を予測しない−図17)。このことは、このシグナチャーが、初期ホルモン受容体陽性乳癌において、予後的有用性よりむしろ予測的有用性を有することを示唆している。図18は、アジュバント抗ホルモン療法を行わなかった後の初期ホルモン受容体陽性乳癌の再発に最も関連する(リン酸化型)タンパク質を決定するためのピアソン相関、線形判別分析(LDA)、およびK最近接近傍(KNN)法を用いたリサンプリング分析による、これらのRPPAデータの分析に対する代替アプローチを示す。明らかに、これらはアジュバント抗ホルモン療法後の乳癌再発に最も関連するそれらの(リン酸化型)タンパク質とは異なる(図14において示される)。よって、RPPAアプローチは明らかに、アジュバント抗ホルモン療法の存在下および非存在下でホルモン受容体陽性乳癌の再発に関連する差示的なバイオマーカーの同定能を有する。そのようなバイオマーカーは、代替の/さらなる治療アプローチに対する患者の選択に関するバリデーションにおいて、およびおそらくこれらの患者における治療標的の決定におけるバリデーションおいて、有用性を有するであろう。
本発明者らは、3分の1を超えるホルモン受容体陽性乳腺腫瘍においてAKT、mTOR、GSK3、およびp70S6Kのリン酸化によって定義されるPI3K/AKT/mTOR経路活性化のプロテオミクスシグナチャーを発見したが、いずれのセットもHER2増幅乳癌を特異的に除外しており、ホルモン受容体陽性乳癌において常習的であるが、まだ決定されていない経路の活性化機構が存在する証拠を提供する。さらに、これらのデータは、アジュバント抗ホルモン療法単独による処置後に不良な転帰を有する数人のホルモン受容体陽性乳癌患者において、キナーゼシグナル伝達の中断が治療的有用性を有する可能性があることを示唆する。
ER発現とPI3K/AKT/mTOR経路との関連。ER発現とPI3K/AKT/mTOR経路活性化のあいだの著しい逆関連は、本発明者らの乳癌および卵巣癌腫瘍セットRPPAデータにおいて一貫して認められている(図19)。これは、RPPAプラットフォームによって発見することができる潜在的に重要な新規タンパク質-タンパク質結合の一例である。
PIK3CAに関する予測機能的プロテオミクスパターン。乳癌におけるPIK3CA変異およびPTEN喪失に関する予測機能的プロテオミクスパターンは、RPPAデータから誘導されており、二つの小さい独立した患者試料セットにおいて確認されている(図20)。これらの知見は、初期ホルモン受容体陽性乳癌を有する均一に処置された患者の独立したセットにおける拡大、ゲノムデータとの統合、およびバリデーションを必要とするが、明らかに多くの潜在的な臨床有用性を有する。
(表1)上皮卵巣癌および乳癌の臨床挙動に対する関連する機能的プロテオミクスパターンを調べるために逆相タンパク質アレイ(RPPA)において用いられるバリデーションされた抗体。(p)はリン酸化を示す。表示のタンパク質に対する抗体を以下の企業から得る:Cell Signaling, Inc.、Epitomics、Santa Cruz、およびBD Pharmingen。
Figure 2010500577
本明細書において開示および請求される組成物および方法は全て、本開示に照らして過度な実験を行うことなく作製および実行することができる。本発明の組成物および方法は、好ましい態様に関して記述してきたが、本明細書において記述される組成物、方法、および方法の段階または段階の順序に変更を適用してもよく、それらも本発明の概念、趣旨、および範囲に含まれることは当業者に明らかである。より具体的に、化学的および生理学的の双方に関連する一定の物質を、本明細書において記述される物質の代わりに置換してもよく、それでも同じまたは類似の結果が達成されることは明らかである。当業者に明らかであるそのような類似の置換および改変は全て、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨、範囲、および概念に含まれるものと考える。
参考文献
以下の参考文献は、本明細書における記述に対して補助的に例示的な技法または他の詳細を提供する程度に、具体的に参照により本明細書に組み入れられる。
米国特許第4,376,110号
米国特許第4,816,567号
米国特許出願第2006/0040338号
Figure 2010500577
Figure 2010500577

Claims (29)

  1. 以下の段階を含む、治療に反応する性向に関して癌患者を評価するための方法:
    (a)Eカドヘリン、4EBP、タンパク質キナーゼC(PKC)、p53、エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)、S6、AKT、Her2、Src、PI3K、p38、p27、mTOR、c-jun N-末端キナーゼ(JNK)、MAPK(44/42)、サイクリンD1、またはサイクリンB1に結合する抗体である、少なくとも二つの抗体に、結合条件下で、癌患者からの癌細胞タンパク質を含む試料を接触させる段階;
    (b)抗体結合プロファイルを生成するために、タンパク質に対する抗体の結合を分析する段階;
    (c)抗体結合プロファイルを以下と比較する段階:
    (i)治療に反応する患者を示す抗体結合プロファイル、および/または
    (ii)治療に反応しない患者を示す抗体結合プロファイル;および
    (d)治療に対する反応に関して癌患者の性向を評価する段階。
  2. 癌細胞タンパク質を、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、または少なくとも20個の異なる抗体に接触させる、請求項1記載の方法。
  3. 少なくとも一つの抗体がホルモン受容体に結合する、請求項1記載の方法。
  4. ホルモン受容体がエストロゲン受容体またはプロゲステロン受容体である、請求項3記載の方法。
  5. 少なくとも一つの抗体がキナーゼに結合する、請求項1記載の方法。
  6. キナーゼが、Akt、p38、mTor、PI3K、MAPK、JNK、またはS6である、請求項5記載の方法。
  7. キナーゼ結合抗体がリン酸化特異的抗体である、請求項5記載の方法。
  8. 少なくとも一つの抗体が、Her2経路、PI3K経路、MAPK経路、またはSTAT経路におけるタンパク質に結合する、請求項1記載の方法。
  9. 抗体が少なくともERおよびp38に結合する、請求項1記載の方法。
  10. 抗体が少なくともER、PR、AKT、p38、およびmTORに結合する、請求項9記載の方法。
  11. 抗体が、ER、Eカドヘリン、AKT、MAPK(44/42)、C-jun N-末端キナーゼ(JNK)、またはS6の少なくとも二つに結合する、請求項1記載の方法。
  12. 抗体が、少なくともER、Eカドヘリン、AKT、MAPK(44/42)、C-jun N-末端キナーゼ(JNK)、およびS6に結合する、請求項1記載の方法。
  13. 抗体が、少なくともsrc、AKT、HER2、S6、およびサイクリンD1に結合する、請求項1記載の方法。
  14. 癌患者が肺、乳、脳、前立腺、脾臓、膵臓、子宮頚部、卵巣、頭頚部、食道、肝臓、皮膚、腎臓、白血病、骨、精巣、結腸、または膀胱癌患者である、請求項1記載の方法。
  15. 癌患者が乳癌または卵巣癌患者である、請求項14記載の方法。
  16. 癌患者が乳癌患者であって、抗体パネルが、エストロゲン受容体およびリン酸化p38に結合する抗体を含む、請求項14記載の方法。
  17. 癌患者が卵巣癌患者であって、抗体パネルが、エストロゲン受容体、Eカドヘリン、リン酸化Akt、リン酸化MAPK、リン酸化JNK、およびリン酸化S6に結合する抗体を含む、請求項14記載の方法。
  18. 治療が化学療法、放射線療法、免疫療法、または外科療法である、請求項1記載の方法。
  19. 治療が化学療法である、請求項18記載の方法。
  20. 化学療法がシスプラチン(CDDP)、カルボプラチン、プロカルバジン、メクロレタミン、シクロホスファミド、カンプトテシン、イフォスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、ニトロソ尿素、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン(plicomycin)、マイトマイシン、エトポシド(VP16)、タモキシフェン、ラロキシフェン、エストロゲン受容体結合剤、タキソール、パクリタキセル、ゲムシタビン(gemcitabien)、ナベルビン、ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、トランス型白金製剤(transplatinum)、5-フルオロウラシル、ビンクリスチン、ベルケイド(Velcade)、ビンブラスチン、またはメソトレキセート療法である、請求項19記載の方法。
  21. 抗体の結合を分析する段階が、抗体の結合を定量することによって行われる、請求項1記載の方法。
  22. タンパク質に対する抗体の結合を定量する段階が、タンパク質の濃度または翻訳後修飾を決定するために用いられる、請求項21記載の方法。
  23. タンパク質に対する抗体の結合を定量する段階が、活性化タンパク質の濃度を決定するために用いられる、請求項21記載の方法。
  24. 患者の細胞を、段階(a)の前に細胞増殖を阻害または刺激する組成物によって処置する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
  25. 処置する段階がインビトロである、請求項24記載の方法。
  26. 組成物がホルモンまたは増殖因子を含む、請求項24記載の方法。
  27. 組成物がキナーゼ阻害剤または化学療法剤を含む、請求項24記載の方法。
  28. 方法がマイクロアレイにおいて行われる、請求項1記載の方法。
  29. 一つまたは複数の抗体パネル、タンパク質に対する抗体結合を検出するための組成物、一つもしくは複数の参照抗体結合プロファイル、マイクロアレイスライドガラス、タンパク質抽出緩衝液、細胞増殖阻害剤、細胞増殖刺激剤、または抗体結合プロファイルを比較するためのコンピュータープログラムを含む、治療に対する癌患者の反応を予測するためのキット。
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