JP2011138043A - プラスチックレンズ及びプラスチックレンズの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】レンズの片面に比較的厚い膜(20μm以上の膜)を設ける場合において、膜形成後のレンズ製造工程中の加熱によって生じる基板の変形を緩和することを目的とする。
【解決手段】プラスチックレンズ用の基板1の一方の面1Aに、少なくともフォトクロミック膜2と、ハードコート層5とが形成され、基板1の他方の面1Bに、フォトクロミック膜2の、レンズ製造工程中の熱変形により生じる応力を緩和する応力緩和層3が少なくとも形成されて成る。
【選択図】図1

Description

本発明は、例えば眼鏡用のプラスチックレンズ、特にフォトクロミック膜等の比較的厚い膜を片面に設けるプラスチックレンズ及びプラスチックレンズの製造方法に関する。
近年、有機フォトクロミック染料を応用したプラスチック製フォトクロミックレンズ(調光レンズともいう)が眼鏡用として市販されている。このフォトクロミックレンズは、明るい屋外で発色して高濃度のカラーレンズと同様な防眩効果を有し、室内に移ると高い透過率を回復する機能をもつ。フォトクロミックレンズには、所定の光が入射するとすばやく応答して高濃度で発色し、かつ上記光がない環境下に置かれると速やかに退色することが求められる。
このフォトクロミックレンズとしては、レンズ基板上にフォトクロミック色素が溶け込んでいる素材から成る膜、即ちフォトクロミック膜を設ける構成のレンズが広く用いられている。フォトクロミック膜については、優れた光応答性(反応速度及び発色濃度)、発色時の色調、及び、レンズ基板やハードコート層との密着性に優れたフォトクロミックレンズを得るための材料構成やその製造方法が種々検討されている。
例えば、下記特許文献1には、レンズの凸面側にフォトクロミック膜を形成する技術として、紫外線硬化型のフォトクロミック膜を形成する方法が記載されている。特許文献1においては、フォトクロミック膜の最適な膜厚は20μmから50μmと記載されており、またこのように20μm以上程度の厚みを有さないと、発色時の濃度、耐久性などが好適に保たれないと記載されている。
また、下記の特許文献2には、レンズの凸面に30μmの厚みのフォトクロミック膜を形成する技術が開示されている。
特開2007−77327号公報 特開2007−77398号公報
ところで、フォトクロミック膜は、その材料がアクリル系マトリックスの場合は紫外線硬化処理が施され、またウレタン系マトリックスの場合は熱硬化処理が施されて、膜として完成する。しかし、フォトクロミック膜の耐久性を高めるに、さらにこの上に保護膜やハードコート層が形成されるので、フォトクロミック膜自体の熱硬化処理工程後にも、他の加熱工程が追加されることになる。
つまり、保護膜やハードコート層を形成する工程でも通常は加熱や紫外線照射等が施され、それに伴いレンズ基板やフォトクロミック膜も加熱されるので、後工程における加熱処理が避けられないこととなる。このため、その熱履歴によりフォトクロミック膜がある程度収縮して変形、基板に働く応力が強くなってしまう場合がある。応力が強くなると、特にレンズの厚みが薄い高屈折率材料基板や、レンズ基板自身に耐衝撃性を有するような比較的剛性の低いレンズの場合、応力による変形が大きくなる恐れがある。また、レンズ外周から中央に向けてレンズの厚みが薄くなるいわゆるマイナスレンズ(凹レンズ)の場合も、変形量が著しくなってしまう恐れがある。
以上の問題に鑑みて、本発明は、レンズの片面にフォトクロミック膜等のように20μm程度以上の比較的厚い膜を設ける場合において、膜形成後のレンズ製造工程における熱履歴によって生じる基板の変形を抑制することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明によるプラスチックレンズは、プラスチックレンズ用の基板の一方の面に、少なくともフォトクロミック膜と、ハードコート層とが形成され、この基板の他方の面に、フォトクロミック膜形成後のレンズ製造工程におけるフォトクロミック膜の熱変形により生じる基板への応力を緩和する応力緩和層が少なくとも形成されて成る構成とする。
また、本発明によるプラスチックレンズの製造方法は、プラスチックレンズ用の基板の一方の面に、フォトクロミック膜を形成する工程と、この基板の他方の面に、フォトクロミック膜形成後のレンズ製造工程におけるフォトクロミック膜の熱変形により生じる基板への応力を緩和する応力緩和層を形成する工程と、フォトクロミック膜の上に、他の層を形成するための加熱又は熱の発生を伴う処理工程と、を含む。そして、応力緩和層を形成する工程を、この他の層を形成するための加熱又は熱の発生を伴う処理工程の前に行うことを特徴とする。
上述したように、本発明のプラスチックレンズにおいては、プラスチックレンズの片面にフォトクロミック膜を設けると共に、他方の面に応力緩和層を設け、フォトクロミック膜がレンズ製造工程中に熱変形することで生じる基板への応力を、この応力緩和層を設けることで緩和する。このように、フォトクロミック膜形成後の、ハードコート層等の他の材料層の製造工程におけるフォトクロミック膜から基板に作用する応力を緩和することで、基板の変形やフォトクロミック膜自体の熱変形を抑制することができる。このため、ハードコート層や他の材料層の表面に基板の変形によりクラック等が生じることを抑制ないしは回避することも可能となる。
また、本発明のプラスチックレンズの製造方法においては、上述した応力緩和層を形成する工程を、フォトクロミック膜が熱変形を生じるような、他の層を形成するための加熱又は熱の発生を伴う処理工程の前に行うものであり、例えばフォトクロミック膜の上に形成するプライマー層やハードコート層を熱硬化や光硬化により形成する場合、その工程の前に行うものである。この製造方法によれば、応力緩和層を予め形成しておくので、後工程におけるフォトクロミック膜の熱変形、これによる基板やハードコート層等に作用する応力を確実に抑制することが可能である。
また、本発明において、基板の屈折力と、フォトクロミック膜及び応力緩和層を形成した状態での加熱処理後の屈折力との差が、0.025D(ディオプトリー)未満となるようにすることが好ましい。具体的には、フォトクロミック膜及び応力緩和層形成後のレンズ製造工程中の熱履歴を予め設定し、この熱履歴に対して、基板の屈折力が上記の範囲となるように、フォトクロミック膜材料に合わせて応力緩和層の材料や厚さを選定することが好ましい。このように応力緩和層を構成することで、基板の変形量を確実に抑え、基板変形による度数不良の発生を回避することができる。
また本発明のプラスチックレンズは、応力緩和層の膜厚がフォトクロミック膜の厚さの40%以上120%以下であることが好ましい。応力緩和層の厚みがフォトクロミック膜の厚さ対して上記範囲である場合に、フォトクロミック膜形成後の加熱工程における基板の変形が抑制される。応力緩和層の厚みが上記範囲より薄い場合には、フォトクロミック層による変形効果が少ない。また、応力緩和層の厚みが上記範囲よりも厚い場合には、応力緩和層自身の応力が過多になる場合がある。
さらに、フォトクロミック層のポリマー成分と応力緩和層のポリマー成分が同一種であることが好ましい。ここで、同一種とは、ポリマーを構成するモノマー骨格が類似するものであり、モノマーの側鎖やモノマーを構成する元素(具体的には炭素)の個数など、詳細に一致する必要はない。たとえば、フォトクロミック層のポリマー成分が何らかの官能基を修飾したアクリルモノマーを使用している場合、応力緩和層のポリマー成分が修飾官能基を有さないアクリルモノマーからなるアクリル層である場合も、本構成に含まれる。
主体となるポリマー成分を一致させることにより、フォトクロミック層と応力緩和層の熱的作用や膨張等が実質的に等しくなり、フォトクロミックレンズの時間経過による変形が抑制される。
本発明のプラスチックレンズ及びその製造方法によれば、フォトクロミック膜形成後の加熱工程におけるフォトクロミック膜の熱変形を抑制して基板の変形を抑制することができる。
本発明の実施の形態に係るプラスチックレンズの概略断面構成図である。 比較例によるプラスチックレンズの加熱工程前後の基板変形量を示す図である。 参考例によるプラスチックレンズの加熱工程前後の基板変形量を示す図である。 本発明の実施の形態に係るプラスチックレンズの製造方法の工程を示すフローチャートである。 本発明の実施例及び比較例における製造工程ごとの変形量を示す図である。 本発明の実施例及び比較例におけるフォトクロミック膜の厚さに対する変形量を示す図である。
以下本発明の実施の形態に係るプラスチックレンズ及びその製造方法について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。なお、下記の各実施の形態においては眼鏡用のフォトクロミックレンズ及びその製造方法に適用した例について説明するが、眼鏡用以外の目的でフォトクロミック機能を付与する各種の光学レンズを製造する際にも適用可能である。説明は以下の順序で行う。
1.プラスチックレンズの実施の形態
(1)レンズ構成
(2)基板
(3)フォトクロミック膜
(4)応力緩和層
(5)ハードコート層
(6)反射防止膜
2.プラスチックレンズの製造方法の実施の形態
3.実施例及び比較例
1.プラスチックレンズの実施の形態
(1)レンズ構成
先ず、本発明の実施の形態に係るプラスチックレンズの構成について説明する。本実施の形態に係るプラスチックレンズは、図1にその概略断面図を示すように、例えば凸面より成る第1の面1Aと凹面より成る第2の面1Bとをそれぞれ表裏の光学面として構成される基板1上に、フォトクロミック膜2等の各層が形成されて構成される。図1に示す例では、第1の面1A上にフォトクロミック膜2が形成され、第2の面1B上に、応力緩和層3が形成される。フォトクロミック膜2及び応力緩和層3と基板1との間には、図示しないが必要に応じて密着性を高める下地層が形成されていてもよい。第1の面1A上のフォトクロミック膜2の上には、密着性を高めるプライマー層4が必要に応じて形成され、その上にハードコート層5と反射防止膜6が形成される。また、応力緩和層3の上にも同様に、必要に応じてプライマー層7が形成され、更にその上にハードコート層8が形成される。なお、図示しないが例えば第1の面1A上の反射防止膜6の上等に、撥水性や防汚性等の他の機能を有する機能層を設けてもよい。
応力緩和層3は、フォトクロミック膜2の形成後に、この上に各層を形成する際の加熱に際して、基板1の変形をある程度抑える機能を有する材料構成とする。前述したように、フォトクロミック膜2が20μm程度以上と比較的厚い場合、フォトクロミック膜2形成後のハードコート層等の形成工程における熱硬化等の加熱の際に、フォトクロミック膜2内においてもある程度重合が進むなどの理由により、フォトクロミック膜2が収縮する。熱硬化の際の温度上昇は一般的に70℃〜120℃程度であるが、紫外線等の光硬化型樹脂を用いる場合の光照射時にも70℃程度の温度上昇がある。したがって、熱硬化性及び光硬化性材料の層を形成する場合にはともに、フォトクロミック膜2の収縮がある程度生じることとなる。このようにフォトクロミック膜2が収縮した状態でハードコート層5等が硬化すると各層の形状が保持されてしまい、最終的に基板1が変形してしまう。このような変形が生じると、例えば基板1の材料が高屈折率で厚さが比較的薄く、また曲率の小さい(曲率半径の大きい)メニスカスレンズの場合、加熱工程前と比べて曲率がより小さく(曲率半径がより大きく)、フラットに近い形状となってしまう場合があり、逆向きの曲率となってしまうこともある。
比較例として、このような応力緩和層3を設けない従来構成のフォトクロミックレンズにおいて、加熱工程前後の基板の変形量の一例を測定した結果を図2に示す。この例においては、基板としてポリチオール系の屈折率1.67の材料を用い、片面に凸面の光学面を形成した状態でフォトクロミック膜を形成し、その後他方の面を光学研磨して凹面とし、両面で球面度数−1.25の度数が得られる構成とした。その後、フォトクロミック膜上にハードコート層を形成する工程の前後に基板の各位置における凸面の高さを測定して、基板の変形量として求めたものである。図2において、実線aはハードコート層(HC)形成前、実線bはハードコート層(HC)形成後の基板の形状を示す。図2から明らかなように、ハードコート層形成時の加熱処理によりフォトクロミック膜が収縮し、基板の凸面が凹面状に変形していることがわかる。
一方、参考例として、同じ基板を用いてフォトクロミック膜を省略してハードコート層を形成した場合の基板の変形量を同様に求めた。この結果を図3に示す。図3において実線cはハードコート層形成前、実線dはハードコート層形成後の基板形状を示す。図3から明らかなように、フォトクロミック膜を設けない場合は、ハードコート層形成時の加熱工程によっても基板の変形が殆ど生じないことがわかる。また図3及び図4の結果を比較すると、フォトクロミック膜を設ける場合に、基板材料の屈折率が比較的高く、また球面度数が比較的小さい場合、フォトクロミック膜の変形が顕著となることがわかる。図2に示すように基板が変形して凸面側が凹面状となってしまうと、場合によっては、眼鏡レンズとしてフレームに装着する場合に、レンズの表裏を取り違えるなどの事態も発生し得る。
これに対し、本実施の形態のプラスチックレンズにおいては、上述したように基板1の第2の面1B側に応力緩和層3が設けられる。このためこの応力緩和層3において、ハードコート層5等の形成時における加熱工程時に、フォトクロミック膜2と同程度に収縮することで、フォトクロミック膜2の収縮により基板1にかかる応力を緩和し、確実に基板1の変形を抑制することができる。したがって、度数等の光学特性のばらつき、変動を抑えてプラスチックレンズを製造することが可能となる。また、基板1の変形を抑制することによってフォトクロミック膜2上に形成するハードコート層5等の各層の割れや剥れも抑制し、生産性よくフォトクロミック機能を有するプラスチックレンズを製造することが可能となる。
なお、このような応力緩和層3を設ける場合に、他の層を省略して層数の増加を抑えることも可能である。例えば、応力緩和層3の上のプライマー層7はこの上のハードコート層8との密着性及び耐衝撃性を得るために形成されるが、応力緩和層3として例えばアクリル系樹脂やウレタン系樹脂を用いることで目的とする耐衝撃性が得られ、且つ、応力緩和層3とハードコート層8との密着性が十分得られる場合はこのプライマー層7を省略し、すなわち第2の面1B側のプライマー層7を応力緩和層3で代替することが可能である。
また、応力緩和層3の膜厚はフォトクロミック膜2の膜厚と同程度のオーダーの厚さ、例えば10μm以上程度とすることが好ましい。このように膜厚を比較的厚くする場合は、一般的なアクリル系樹脂やウレタン系樹脂を用いることができると共に、ハードコート層等の材料の選択条件を緩和することができるという利点も有する。これについて説明すると、基板1として例えば屈折率1.65程度以上の比較的高屈折率の材料を用いる場合は、この上に形成するハードコート層5等の屈折率が低いと干渉縞が発生し、外観が悪くなってしまう。この干渉縞の発生を抑えるためには、ハードコート層5等の材料を高屈折率とする必要がある。一方、フォトクロミック膜2を設ける場合は、このフォトクロミック膜2を前述したように20μm程度と可視光の波長と比べて格段に厚く形成するので、このような干渉縞が発生せず、ハードコート層5等の材料を基板1と同程度の高屈折率とする必要はなくなる。しかしながら、例えばディップ法等によってハードコート層5及び8の材料をコーティングする場合は、第2の面1B側にも同じ材料のハードコート層8が形成されるので、第2の面1B側での干渉縞を抑えるために、やはり高屈折率材料を用いる必要がある。
これに対し、本実施の形態において、応力緩和層3の厚さをフォトクロミック膜2と同程度、または10μm以上程度に厚くする場合は、基板1の屈折率が高い場合でも干渉縞を抑える必要がなくなる。したがって、ハードコート層5及び8をディップ法により形成する場合においても、その材料として比較的低い屈折率の材料も用いることが可能となる。このため、高屈折率を得るためにハードコート層のコーティング液に添加する酸化チタン微粒子等の材料が不要となるなど材料選択の自由度が得られ、コストの低減化を図ることが可能となる。
次に、このプラスチックレンズ10の各部の材料及び形成方法について説明する。
(2)基板材料
本実施の形態に係るプラスチックレンズに適用可能な基板の材料としては、例えばメチルメタクリレートと一種以上の他のモノマーとの共重合体、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートと一種以上の他のモノマーとの共重合体、ポリウレタンとポリウレアの共重合体、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、不飽和ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリチオウレタン、エン−チオール反応を利用したスルフィド樹脂、硫黄を含むビニル重合体等が挙げられる。これら材料に、必要に応じて各種添加剤が含まれていてもよい。その中でも、比較的屈折率が高く、1.65程度以上の屈折率をもつ基板材料は、同じ度数を得るための曲率を小さく、すなわち薄型となるので基板の変形が問題となりやすい。したがって、本発明を適用することが特に好ましい。
なお、一般的に眼鏡用のプラスチックレンズとしては予め表裏の光学面が完成されてから各種コーティング膜を形成するフィニッシュドレンズや、一方の面、例えば凸面側のみに光学面が形成されており、他方の面、例えば凹面側には受注後に光学面を形成してからコーティングを施すいわゆるセミフィニッシュドレンズがあるが、本発明はいずれにも適用可能である。フィニッシュドレンズ、セミフィニッシュドレンズ共に、後述する製造方法の実施の形態において説明するように、所定の工程順序で応力緩和層を形成することで、基板の変形を抑える効果を得ることができる。なお、光学面の形成方法は機械的加工、成形加工等特に限定されず、いずれの加工法による場合も利用可能である。
(3)フォトクロミック膜
フォトクロミック膜は、フォトクロミック色素を有するコーティング液を基板の一方の面、例えば凸面側に塗布及び硬化することにより成膜される。
コーティング液は、硬化性成分、フォトクロミック色素、重合開始剤、及び、任意に添加される添加剤から構成することができる。コーティング液の調製方法は特に限定されず、また、各成分の添加順序は特に限定されず全ての成分を同時に添加してもよいし、モノマー成分のみを予め混合し、重合させる直前にフォトクロミック色素や他の添加剤を添加・混合してもよい。
またこのコーティング液は、25℃での粘度が20〜500cpであることが好ましく、50〜300cpであることがより好ましく、60〜200cpであることが特に好ましい。この粘度範囲とすることにより、コーティング液の塗布が容易となり、所望の厚さのフォトクロミック膜を容易に得ることができる。
以下、コーティング液の各成分について詳述する。
(3−1)硬化性成分
フォトクロミック膜形成のために使用可能な硬化性成分は、特に限定されず、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニル基、アリール基、スチリル基等のラジカル重合性基を有する公知の光重合性モノマーやオリゴマー、それらのプレポリマーを用いることができる。これらのなかでも、入手のし易さ、硬化性の良さから(メタ)アクリロイル基又は(メタ)アクリロイルオキシ基をラジカル重合性基として有する化合物が好ましい。なお、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイルとメタクリロイルの両方を示す。
具体的な硬化性成分としては、特開2008−33223号公報、特開2007−77327号公報等に記載されている成分を使用することができる。
(3−2)フォトクロミック色素化合物
フォトクロミック色素化合物としては、公知のものを使用することができ、例えば、フルギミド化合物、スピロオキサジン化合物、クロメン化合物等のフォトクロミック色素化合物が挙げられ、本発明においては、これらのフォトクロミック色素化合物を特に制限なく使用することができる。
フルギミド化合物、スピロオキサジン化合物及びクロメン化合物としては、例えば、特開平2−28154号公報、特開昭62−288830号公報、WO94/22850号明細書、WO96/14596号明細書などに記載されている化合物が好適に使用できる。
優れたフォトクロミック性を有する化合物として、例えば、特開2001−114775号公報、特開2001−031670号公報、特開2001−011067号公報、特開2001−011066号公報、特開2000−347346号公報、特開2000−344762号公報、特開2000−344761号公報、特開2000−327676号公報、特開2000−327675号公報、特開2000−256347号公報、特開2000−229976号公報、特開2000−229975号公報、特開2000−229974号公報、特開2000−229973号公報、特開2000−229972号公報、特開2000−219687号公報、特開2000−219686号公報、特開2000−219685号公報、特開平11−322739号公報、特開平11−286484号公報、特開平11−279171号公報、特開平10−298176号公報、特開平09−218301号公報、特開平09−124645号公報、特開平08−295690号公報、特開平08−176139号公報、特開平08−157467号公報等に開示された化合物も好適に使用することができる。
これらフォトクロミック色素化合物の中でも、クロメン系フォトクロミック色素化合物は、フォトクロミック特性の耐久性が他のフォトクロミック色素化合物に比べ高く、さらにフォトクロミック特性の発色濃度及び退色速度の向上が他のフォトクロミック色素化合物に比べて特に大きいため特に好適に使用することができる。さらに、これらクロメン系フォトクロミック色素化合物中でもその分子量が540以上の化合物は、本発明によるフォトクロミック特性の発色濃度及び退色速度の向上が他のクロメン系フォトクロミック色素化合物に比べて特に大きいため好適に使用することができる。
(3−3)光重合開始剤
光重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ベンゾフェノール、アセトフェノン、4,4'−ジクロロベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−イソプロピルチオオキサントン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォシフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニル−フォスフィンオキサイド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1等が挙げられ、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−イソプロピルチオオキサントン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォシフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニル−フォスフィンオキサイドが好ましい。
これら光重合開始剤は、複数の種類のものを適宜混合して使用することができ、光重合開始剤の硬化性組成物全量に対する配合量としては、ラジカル重合性単量体100重量部に対して、通常0.001〜5重量部であり、0.1〜1重量部であると好ましい。
なお、光重合以外の方法で硬化させる場合には、例えば、熱重合開始剤として、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド;t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシジカーボネート、クミルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のパーオキシエステル;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルオキシカーボネート等のパーカーボネート類;2,2'−アゾピスイソプチロニトリル、2,2'−アゾピス(4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カーボニトリル)等のアゾ化合物等が挙げられる。
これら熱重合開始剤の使用量は、重合条件や開始剤の種類、重合性単量体の種類や組成によって異なるが、通常、全重合性単量体100重量部に対して0.01〜10重量部の範囲で用いるのが好適である。上記熱重合開始剤は単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。
(3−4)添加剤
コーティング液には、フォトクロミック色素の耐久性の向上、発色速度の向上、退色速度の向上や成形性の向上のために、さらに界面活性剤、酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色防止剤、帯電防止剤、蛍光染料、染料、顔料、香料、可塑剤等の添加剤を添加してもよい。これら添加剤としては、公知の化合物が何ら制限なく使用される。
また界面活性剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系の何れも使用できる。コーティング液への溶解性を考慮するとノニオン系界面活性剤を用いるのが好ましい。
酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤としては、ヒンダードアミン光安定剤、ヒンダードフェノール酸化防止剤、フェノール系ラジカル補足剤、イオウ系酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物等を好適に使用できる。これら酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤は、2種以上を混合して使用してもよい。さらにこれらの非重合性化合物の使用に当たっては、界面活性剤と酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤を併用して使用してもよい。
安定剤の中でも、硬化させる際のフォトクロミック色素の劣化防止、または得られたフォトクロミック膜の耐久性向上の観点から好ましい安定剤としては、ヒンダードアミン光安定剤が挙げられる。ヒンダードアミン光安定剤としては、公知の化合物を何ら制限なく用いることができる。
また、コーティング液においては、成膜時の均一性を向上させるために、界面活性剤、レベリング剤等を含有させることが好ましく、特にレベリング性を有するシリコーン系・フッ素系レベリング剤を添加することが好ましい。
さらに、コーティング液に、密着性を向上させるためにカップリング剤等の密着剤、またはカップリング剤の重合触媒を添加してもよい。
(3−5)硬化条件
コーティング液を基板の表面に塗布する方法としては、例えば、スピンコート法、ディップ法、スプレー法等が通常行われる方法として適用することができる。組成物の粘性、面精度の面からスピンコート法が好ましい。スピンコート法による場合は特に、膜厚をより精度良く制御できる点や、セミフィニッシュドレンズに適用する場合は基板の片面のみに塗膜されるため他方の面を光学研磨してもコーティング液に無駄が生じないという利点を有する。
また、基板の一方の面にコーティング液を塗布する前に、後述する密着性向上の下地層を形成すると好ましい。また、被塗膜面を酸、アルカリ、オゾン等の酸化還元処理及び各種有機溶媒による化学的処理、プラズマ、紫外線等の物理的処理、各種洗剤を用いる洗剤処理を行うことによって基板1とフォトクロミック膜2用のコーティング液との密着性等を向上させることができる。
コーティング液の硬化条件は特に限定されず、用いるラジカル重合性単量体の種類に応じた公知の重合方法を採用することができる。重合開始手段としては、熱、もしくは紫外線、α線、β線、γ線等の照射あるいは両者の併用によって行うことができ、好ましくは紫外線を照射し、硬化させた後、さらに加熱硬化させることが好ましい。
紫外線による硬化に用いる光源としては公知の光源を何ら制限無く用いることができ、具体例としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、キセノンランプ、カーボンアーク、殺菌灯、無電極ランプ等が挙げられる。
また、光照射時間は紫外線重合開始剤の種類、吸収波長、感度、さらには所望のフォトクロミック膜2の膜厚等によって適宜決めることができる。
フォトクロミック膜2の膜厚は、発色時の濃度、耐久性及び耐熱性、及び膜の均一性を考慮すると、10μm〜100μmであると好ましく、20μm〜50μmであるとさらに好ましい。特に20μm以上とする場合は、フォトクロミック形成後の加熱工程における基板の変形が顕著となるので、本発明を適用することがより好ましい。
(3−6)フォトクロミック膜用下地層
フォトクロミック膜2と基板1の間には、図1においては図示しないが、下地層を設けると好ましい。この下地層は、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、又は、ポリウレタンアクリレート樹脂を使用することができる。下地層の形成方法は特に限定されないが、下地層を形成可能なコーティング液を調製して第1の面1Aに塗布した後に硬化処理を施すことによって得ることができる。塗布方法は特に限定されないが、ディップ法又はスピン法での塗布が好ましい。フォトクロミック膜が一方の面のみに形成されるので、一方の面にのみ成膜可能なスピン法が特に好ましい。
下地層の厚みは、第1の面1Aとフォトクロミック膜2との接合状態を改善できる厚みであればよく、特に限定されない。好ましい膜厚は、1μm〜20μmであり、3μm〜10μmがより好ましい。膜厚が0.5μmよりも薄くなるとフォトクロミック膜2と基板1との密着性を確保しにくい。下地層の厚みが25μmを超えると、フォトクロミック膜2を含めた膜構成が軟質になってしまうので、25μm未満とすることが好ましい。
(4)応力緩和層
応力緩和層3の材料としては、後の加熱工程において収縮等によって生じる応力がフォトクロミック膜2側から発生する応力をある程度抑制し得るものであれば特に限定されず、その膜厚は、用いる材料によって、基板1の変形を抑える機能が得られる程度に選定することが好ましい。
応力緩和層は、フォトクロミック膜2の応力を相殺または吸収する能力を有する皮膜であれば限定されない。例えば、ヤング率が高く容易に弾性変形をしない材質であれば、フォトクロミック層の応力を吸収することが可能である。また、応力緩和層を形成する材料とフォトクロミック層の応力変化がほぼ等しい場合には、表裏両面で等しい応力が加わるためレンズ基材の変形は抑制される。
特に好ましい材料の一例としては、温度変化に対してフォトクロミック膜2の材料と同様の特性、すなわちフォトクロミック膜2のマトリックスであるポリマー成分が同様の性質であるものがあげられる。たとえば、フォトクロミック膜2のマトリックス成分がアクリルである場合には、アクリル系の応力緩和層3を適用し、フォトクロミック膜2のマトリックス成分がポリウレタン系であれば、ポリウレタン系の応力緩和層3を適用すればよい。両者を構成するポリマー成分がほぼ同じであれば、収縮率の変化が等しくなり、種々の状況下(たとえば温度や湿度)における変形が相殺される。
また、特に好ましい材料としては、フォトクロミック膜2の材料として用いるコーティング液からフォトクロミック色素を除いた材料が挙げられる。この材料を用いる場合は、厚さをフォトクロミック膜2と同程度の厚さとすることで、フォトクロミック膜2と同程度の応力を生じさせることができるので、応力を適度に緩和するための厚さの範囲を容易に予測でき、基板1の形状変化を効果的に抑制することができる。
また、応力緩和層3のコーティング液の成膜方法は、フォトクロミック膜2の成膜方法と同様に、基板1の第2の面1Bのみに塗布されるスプレー法又はスピンコート法が好ましく、膜厚を均一に形成するためにはスピンコート法が好ましい。コーティング液の硬化条件もフォトクロミック膜2と同様に特に限定されず、熱、もしくは紫外線、α線、β線、γ線等の照射、或いはその併用が可能であり、その光源も種々の光源を用いることが可能であり、特に限定されない。
上述したアクリル系やウレタン系の材料や、またフォトクロミック膜2の材料から色素を除いた材料を用いる場合の応力緩和層3の好ましい厚さとしては、フォトクロミック膜2の膜厚の40%以上とすることが好ましい。一方、応力緩和層3の膜厚をフォトクロミック膜2の膜厚の100%を超えて厚くすると、応力緩和層3による緩和効果がフォトクロミック膜2の応力分を超えてしまい、応力緩和層3に起因する変形が生じる場合も想定される。したがって、応力緩和層3の膜厚の上限としては、フォトクロミック膜2の膜厚の120%以下とすることが好ましい。
更に、この応力緩和層3と基板1との間には、フォトクロミック膜2と同様に、図1においては図示しないが下地層を設けてもよい。下地層の材料及び膜厚はフォトクロミック膜2に下地層を設ける場合の下地層と同様の材料、すなわちポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタンアクリレート樹脂、又は、これらの樹脂成分のモノマー骨格に各種官能基が修飾されている樹脂等を用い得る。またその膜厚も、応力緩和層3と基板1との接合状態を改善できる厚さであればよく、1μm〜20μm、好ましくは3μm〜10μmとし得る。
(5)ハードコート層
本実施の形態に係るプラスチックレンズにおいて、フォトクロミック膜2の上面に形成されるハードコート層5の材料としては、特に限定されず、公知の有機ケイ素化合物及び金属酸化物コロイド粒子よりなるコーティング液を使用することができる。コーティング液を塗布した後、硬化処理によってハードコート層5を得ることができる。
有機ケイ素化合物としては、例えば下記一般式(I)で表される有機ケイ素化合物又はその加水分解物が挙げられる。
(R(RSi(OR4−(a+b)・・・(I)
(式中、Rは、グリシドキシ基、エポキシ基、ビニル基、メタアクリルオキシ基、アクリルオキシ基、メルカプト基、アミノ基、フェニル基等を有する有機基、Rは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアシル基又は炭素数6〜10のアリール基、R9は炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基、a及びbはそれぞれ0又は1の整数を示す。)
の炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、直鎖又は分岐のメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。
の炭素数1〜4のアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、オレイル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
の炭素数6〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基、キシリル基、トリル基等が挙げられる。
の炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、直鎖又は分岐のメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
の炭素数1〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基、キシリル基、トリル基等が挙げられる。
金属酸化物コロイド粒子としては、例えば、酸化タングステン(WO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化チタニウム(TiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化スズ(SnO)、酸化ベリリウム(BeO)、酸化アンチモン(Sb)等が挙げられ、単独又は2種以上を併用することができる。
コーティング液をフォトクロミック膜2上へ塗布する方法としては、例えば、ディッピング法、スピンコート法、スプレー法等が通常行われる方法として適用されるが、組成物の粘性、面精度の面からディッピング法やスピンコート法が好ましい。特に、フォトクロミック膜2上に硬質膜としてハードコート層5を形成し、その後他の面すなわち第2の面1Bの光学面形成する場合は、片面への塗布が可能なスピンコート法が好ましい。また、硬質膜を形成するよりも前に他の面の光学面形成を行う場合には、両面への塗布が可能なディッピング法を適用することが好ましい。コーティング液をフォトクロミック膜2上へ塗布する前に、酸、アルカリ、各種有機溶媒による化学的処理、プラズマ、紫外線、オゾン等による物理的処理、各種洗剤を用いる洗剤処理を行うことによってフォトクロミック膜2とハードコート層5との密着性等を向上させることができる。
なお、フォトクロミック膜2とハードコート層5との間に、耐衝撃性を向上させるプライマー層4を形成しても良い。プライマー層4の材料は特に限定されるものではなく、ハードコートの密着性を損なうことなく耐衝撃性を向上させるものであればよい。
(6)反射防止膜
本発明においては、ハードコート層5の上に反射防止膜6を形成することも可能である。反射防止膜6の材質及び形成方法は特には限定されず、公知の無機酸化物により成る単層、多層膜を使用することができる。
この無機酸化物としては、例えば、二酸化ケイ素(SiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ニオブ(Nb)酸化イットリウム(Y)等が挙げられる。
また、有機ケイ素化合物と無機微粒子によって構成され、無機微粒子の種類により屈折率が調整される単層又は多層の有機反射防止膜も使用することができる。
2.プラスチックレンズの製造方法
次に、本発明の実施の形態に係るプラスチックレンズの製造方法について説明する。図4は、本実施の形態に係るプラスチックレンズの製造方法の各工程を示すフローチャートである。この例においては、基板1の面1A及び第2の面1Bを予め例えば凸面、凹面より成る光学面として形成した後、各面或いは両面に各層を形成するいわゆるフィニッシュドレンズを用いてフォトクロミックレンズを製造する場合を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。図4に示すように、本実施の形態に係る製造方法では、先ず前述したように光学面を形成した基板1の第1の面1Aにフォトクロミック膜2を形成する(ステップS1)。その後、第2の面1Bに応力緩和層3を形成する(ステップS2)。なお、上述したように、フォトクロミック膜2や応力緩和層3を形成する前に、下地層を形成する工程を追加してもよい。
なお、フォトクロミック膜2のコーティング液を形成後に加熱等により硬化し、その後、応力緩和層3のコーティング液を形成して加熱等により硬化して形成するが、この加熱の際に、フォトクロミック膜2の重合がある程度進行して収縮が生じても、応力緩和層3の重合も進むので、基板1の変形を抑えることができる。
次に、応力緩和層3を形成した後、フォトクロミック膜2上に設ける他の層、例えばプライマー層4、ハードコート層5、反射防止膜6を形成する(ステップS3)。このときプライマー層4と同時に応力緩和層3上のプライマー層7を、またハードコート層5と同時に応力緩和層3上のハードコート層8を形成してもよい。この場合は、各層のコーティング液をディップ法により両面に塗布した後、同時に熱硬化又は紫外線硬化等によって形成すればよい。いずれの層の加熱工程や光照射工程においても、応力緩和層3を既に形成しているため、加熱や光照射の際の熱の発生によるフォトクロミック膜2の収縮を抑え、基板1の変形を抑制することができる。
以上のステップS1〜S3を経た後、図示しないが必要に応じて例えば撥水性や防汚性等の他の機能を付与する材料層を形成する工程を経て、基板1上の各層の形成工程が終了する。眼鏡用レンズとして製造する場合は、その後例えば眼鏡フレームの枠入れ用等の周縁加工を行い、検査工程を経て本実施の形態に係るプラスチックレンズが完成する。
なお、図4に示す例においてはフィニッシュドレンズに本実施の形態を適用した場合を示すが、セミフィニッシュドレンズに適用する場合は、第1の面1Aのみを加工形成後にフォトクロミック膜2を形成し、その後応力緩和層3を形成する前に、第2の面1Bを光学研磨等によって加工する工程を挿入すればよい。いずれの場合においても、応力緩和層3の形成工程を、フォトクロミック膜2の形成後の、他の加熱(または熱発生)工程の前に行うことで、上述したようにフォトクロミック膜2の熱収縮を抑えて基板1の変形を確実に抑制することができる。
3.実施例及び比較例
次に、本発明のプラスチックレンズの製造方法を適用して製造したフォトクロミックレンズの評価を行った結果を説明する。
(1)実施例及び比較例におけるレンズ構成
この例においては、基板1として屈折率neが1.7のレンズ基板(EYRY、HOYA株式会社製、商品名)と1.74のレンズ基板(EYVIA、HOYA株式会社製、商品名)を用意し、フォトクロミック膜2を形成した後に応力緩和層3を設けた実施例1〜9(EYRY)及び実施例10〜19(EYVIA)と、応力緩和層3を設けずにフォトクロミック膜2を形成した比較例1及び2(EYRY)、比較例3及び4(EYVIA)を用意した。なお、屈折率1.7の基板には球面度数−2.00の光学面を予め形成し、レンズ径は80mmとした。また、屈折率1.74の基板には球面度数−1.25の光学面を予め形成し、レンズ径は75mmとした。フォトクロミック膜2、応力緩和層3の材料及び形成条件、その後の加熱処理条件を以下説明する。
(i)フォトクロミックコーティング液の調製
プラスチック製容器に、トリメチロールプロパントリメタクリレート20質量部、BPEオリゴマー(2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン)35質量部、EB6A(ポリエステルオリゴマーヘキサアクリレート)10質量部、平均分子量532のポリエチレングリコールジアクリレート10質量部、グリシジルメタクリレート10質量部からなるラジカル重合性単量体100質量部に、フォトクロミック色素3質量部、光安定化剤LS765(ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート)を5質量部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤Irganox245(チバスペシャリティケミカルズ製)を5質量部、紫外線重合開始剤としてCGI−184(チバスペシャリティケミカルズ製)0.6質量部を添加して、十分に撹拌混合を行った。
混合して得られた組成物に、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製KBM503)6重量部を、撹拌しながら滴下した。
その後、さらに、アミン触媒を0.1質量部添加混合した後、自転公転方式撹拌脱泡装置((株)シンキー AR−250)にて2分間脱泡することで、フォトクロミック性を有するコーティング液を得た。
(ii)下地層の調整
基板1とフォトクロミック膜2との間に形成する下地層として、ポリウレタン骨格にアクリル基を導入したポリウレタン分散液を用意した。
(iii)応力緩和層コーティング液
応力緩和層3の材料としては、アクリル系樹脂の被膜を形成するコーティング液を使用した。具体的には、プラスチック製容器に、トリメチロールプロパントリメタクリレート20質量部、BPEオリゴマー(2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン)35質量部、EB6A(ポリエステルオリゴマーヘキサアクリレート)10質量部、平均分子量532のポリエチレングリコールジアクリレート10質量部、グリシジルメタクリレート10質量部からなるラジカル重合性単量体100質量部に、紫外線重合開始剤としてCGI−184(チバスペシャリティケミカルズ製)0.6質量部を添加して、十分に撹拌混合を行った。
この混合液に、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製KBM503)6重量部を、撹拌しながら滴下した。
(iv)各層の形成工程
基板1の第1の面1A及び第2の面Bを、イソプロパノールを主材料とする揮発性溶剤により清浄化した後、反射式レンズメータ(FOCOVISION SR-1)を用いて、各面の曲率半径R1及びR2を測定し、各基板1の屈折率1.53とした場合の屈折力と仮定して換算して得た。
次に、同様に表面を洗浄した後、UVO(オゾン)処理を1分間行い、更に純水洗浄後、上述の下地層用コーティング液をスピンコート法でコーティングした。その後、70℃90分の加熱により下地層を硬化して形成した。
次に、下地層上に前述のフォトクロミック膜2のコーティング液をスピンコート法でコーティングした。その後、熱硬化処理を行って、フォトクロミック膜2を形成した。
次に、基板1の第2の面1Bを、イソプロパノールを主材料とする揮発性溶剤により清浄化した後、第1の面1A側の下地層と同様の材料、塗布条件及び硬化条件にて下地層を形成した。
更に、上記の応力緩和層3用のコーティング液を第2の面1Bの下地層上に塗布した。このとき、塗布時間は12.5秒一定とし、回転数を500〜900rpmに変化させて塗布を行った。その後、加熱処理を行って応力緩和層3を形成した。
応力緩和層3形成後の加熱工程として、プライマー層4及び7、及びハードコート層5及び8の形成工程に対応する加熱処理を行った。プライマー層4及び7対応として70℃90分の第1加熱処理、ハードコート層5及び8対応として100℃60分の第2加熱処理を行った。
(v)結果
これら応力緩和層3を形成した実施例1〜19と、応力緩和層を形成しない比較例1〜4とにおける各基板1の曲率半径を同様に反射式レンズメータにより測定し、基板1の屈折率を1.53と仮定して曲率半径から屈折力を換算し、初期の屈折力に対する差分から屈折力変化量を求めた。また、フォトクロミック膜2及び応力緩和層3の膜厚を下地層との屈折率差から計測する分光干渉膜厚測定法により測定し、フォトクロミック膜2の膜厚に対する応力緩和層3の膜厚の比(%)を計算により求めた。この結果を表1及び表2に示す。表1においては、屈折率1.7の材料より成る基板(EYRY)を用いた実施例1〜9、比較例1及び2の結果を示し、表2においては屈折率1.74の材料より成る(EYVIA)を用いた実施例10〜19、比較例3及び4の結果を示す。なお、応力緩和層3用のコーティング液塗布時の回転数の条件は下記の通りである。
回転数500rpm:実施例1,2,10,11
回転数600rpm:実施例3,4,12,13
回転数700rpm:実施例5,6,14,15
回転数800rpm:実施例7,16,17
回転数900rpm:実施例8,9,18,19
Figure 2011138043
Figure 2011138043
また図5に、基板1上に各層を設ける前、すなわち加熱前の屈折力と、応力緩和層3を形成後、2回の加熱処理後に測定した屈折力を示す。更に、図6においては、応力緩和層3の膜厚に対する屈折力変化量を示す。なお、図6において応力緩和層3の膜厚が0の結果は比較例1〜4を示す。
図5及び図6の結果から、ばらつきはあるものの、応力緩和層3の膜厚が大きいほど、曲率半径の変化に対応する屈折力の変化量は低減される傾向があることがわかる。各例共に、フォトクロミック膜2の厚さを40μm程度としているのに対し、応力緩和層3の膜厚は17.2μmから31.2μmの範囲で屈折力変化量(初期の屈折力との差)を、便宜上基材屈折率を1.53と仮定した場合において0.025D未満に抑える効果が得られている。また、図6の結果から、屈折力変化量は、応力緩和層3の膜厚の増加に対して比例的にではなく、反比例的に低減していることがわかり、このことから、応力緩和層3の膜厚を15μm以上(すなわち、フォトクロミック膜の膜厚に対する応力緩和層の膜厚の割合がおよそ40%以上)とすれば屈折力変化量を0.025D未満に抑えられることがわかる。
なお、上記の実施例においてはフォトクロミック膜2を40μmとしているが、より薄い膜厚、例えば30μmや20μmとする場合は、必ずしも応力緩和層3の膜厚を15μm以上とする必要はなく、フォトクロミック膜2の膜厚のおよそ40%以上の膜厚とすれば、十分に屈折力変化量を低減できることが容易に予測できる。
1.基板、1A.第1の面、1B.第2の面、2.フォトクロミック膜、3.応力緩和層、4,7.プライマー層、5,8.ハードコート層、6.反射防止層

Claims (5)

  1. プラスチックレンズ用の基板の一方の面に、少なくともフォトクロミック膜と、ハードコート層とが形成され、
    前記基板の他方の面に、前記フォトクロミック膜を形成した後のレンズ製造工程における前記フォトクロミック膜の熱変形により生じる前記基板への応力を緩和する応力緩和層が少なくとも形成されて成る
    プラスチックレンズ。
  2. 前記基板の屈折力と、前記フォトクロミック膜及び前記応力緩和層を形成した状態での加熱処理後の屈折力との差が、前記基板の屈折率を1.53と仮定した場合において0.025D(ディオプトリー)未満である請求項1に記載のプラスチックレンズ。
  3. 前記フォトクロミック膜の厚さに対する前記応力緩和層の厚さが40%以上120%以下である請求項1又は2に記載のプラスチックレンズ。
  4. 前記応力緩和層として、フォトクロミック膜を構成するポリマー成分と同種のポリマー成分を用いる請求項1〜3のいずれかに記載のプラスチックレンズ。
  5. プラスチックレンズ用の基板の一方の面に、フォトクロミック膜を形成する工程と、
    前記基板の他方の面に、前記フォトクロミック膜を形成した後のレンズ製造工程における前記フォトクロミック膜の熱変形により生じる前記基板への応力を緩和する応力緩和層を形成する工程と、
    前記フォトクロミック膜の上に、他の層を形成するための加熱又は熱の発生を伴う処理工程と、を含み、
    前記応力緩和層を形成する工程を、前記他の層を形成するための加熱又は熱の発生を伴う処理工程の前に行う
    プラスチックレンズの製造方法。
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