JP2011190860A - 複列円筒ころ軸受 - Google Patents
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Abstract
【課題】運転時の摩耗に起因した樹脂製保持器の強度低下の抑制を図り、これにより、高回転精度で耐久寿命に富む複列円筒ころ軸受を提供する。
【解決手段】内輪2および外輪3と、両輪間に転動自在に配置された複列の円筒ころ4と、円筒ころ4の各列を個別に保持する一組の保持器10,10とを備え、各保持器10は、環状部11と、環状部11の一端面11aから軸方向に突設された複数の柱部12とを有すると共に、周方向で隣り合う柱部12,12間に円筒ころを保持するポケット13を画成した樹脂の射出成形品であり、かつ、一組の保持器10,10を、環状部11を突き合わせた状態で配置した複列円筒ころ軸受1である。一組の保持器10,10の少なくとも一方は、環状部11の他端面11bに、型成形された凹部14を有し、この凹部14は、ウェルド部Wの径方向一部領域、特に外径側領域を含むように設けられている。
【選択図】図3
【解決手段】内輪2および外輪3と、両輪間に転動自在に配置された複列の円筒ころ4と、円筒ころ4の各列を個別に保持する一組の保持器10,10とを備え、各保持器10は、環状部11と、環状部11の一端面11aから軸方向に突設された複数の柱部12とを有すると共に、周方向で隣り合う柱部12,12間に円筒ころを保持するポケット13を画成した樹脂の射出成形品であり、かつ、一組の保持器10,10を、環状部11を突き合わせた状態で配置した複列円筒ころ軸受1である。一組の保持器10,10の少なくとも一方は、環状部11の他端面11bに、型成形された凹部14を有し、この凹部14は、ウェルド部Wの径方向一部領域、特に外径側領域を含むように設けられている。
【選択図】図3
Description
本発明は、複列円筒ころ軸受に関するものである。
周知のように、マシニングセンタ、CNC旋盤、フライス盤等の工作機械において、その主軸は軸受で回転自在に支持されるのが通例であり、主軸支持用の軸受として円筒ころ軸受が好適に用いられている。この円筒ころ軸受は、円筒ころを単列配置した単列円筒ころ軸受と、円筒ころを複列配置した複列円筒ころ軸受とに大別され、用途・要求特性等に応じて適宜使い分けられている。
円筒ころ軸受は、内輪および外輪と、両輪の軌道間に転動自在に配置された円筒ころと、円筒ころを保持するポケットが画成された保持器とを主要な構成部材として備える。保持器は、主に金属製と樹脂製とに大別され、金属製の保持器は高強度であるが、比重が高いために、工作機械の主軸支持用等の高速回転用途には不適である。また、金属製の保持器は摩耗粉が発生し易く、この摩耗粉によって潤滑剤が汚染される結果、潤滑性能が低下し易いという問題もある。そこで、近時においては、かかる問題が生じ難く、しかも安価な樹脂製の保持器が重用される傾向にある。
公知の樹脂製保持器のうち、複列円筒ころ軸受に使用されるものの概要を図10に示す。図10(a)(b)に示すように、この保持器101は、環状部102と、環状部102の一端面(内端面)102aから軸方向に突設された複数の柱部103とを有するいわゆる櫛型保持器であり、周方向で隣り合う柱部103,103間に、円筒ころを転動自在に保持するポケット104を画成している。そして、この保持器101は、環状部102の他端面(外端面)102bを互いに対向させた(環状部102を突き合わせた)、いわゆる背面合わせの状態で内外輪間に一組組み込まれる(以上、例えば特許文献1を参照)。
ところで、保持器の精度、特に真円度は、軸受性能を大きく左右する。樹脂製の保持器101の真円度を高める方策の一例として、周方向等間隔に配置した複数のゲートからキャビティ内に溶融樹脂を射出・充填することが考えられる。かかる態様で溶融樹脂を射出した場合、溶融樹脂はキャビティ内を周方向に流動し、隣り合う2つのゲート間で合流する。従って、上記態様で成形された後、離型された保持器101には、ゲート内に残存した樹脂が離型時に分断されることで形成されるゲート跡108と、溶融樹脂の合流跡であるウェルドライン(ウェルド部)107とが周方向で交互に現れる。
成形条件や用いる樹脂種によっても程度は異なるが、ウェルド部107は、図10(c)に示すように、環状部102や柱部103の表面から隆起した盛り上がり状(突起状)に形成される。従って、上記態様で射出成形された保持器101を背面合わせの状態で組み込んだ軸受の運転時には、一方の保持器101のウェルド部107と他方の保持器101のウェルド部107とが優先的に摺動接触(摺接)する。樹脂で射出成形された保持器101の表層部には、ウェルド部107の形成領域も含めてスキン層と称される高密度・高強度の層が形成されるが、上記のようにウェルド部107同士が優先的に摺接すると、一般に強度最弱部とされるウェルド部107のスキン層が優先的に摩耗するために保持器101の強度低下が顕著となり、軸受の耐久寿命に悪影響が及ぶという問題がある。
例えば、ウェルド部107のうち、外端面102bに現れた部分を研削・研磨等の機械加工で除去すれば、運転時におけるウェルド部107の摩耗問題は回避することができる。しかしながら、機械加工を施すと、スキン層は、運転時に摺接して摩耗する場合と同様に薄層化若しくは除去されるため、保持器の強度低下、ひいては軸受の耐久寿命低下を回避することはできない。また、加工工程が増すために樹脂化によるコストメリットが減少する。以上で述べた各種問題は、保持器101の精度(特に真円度)向上を目的としてゲート数を増加させるほど、一層顕在化する。
本発明の目的は、運転時の摩耗に起因した樹脂製保持器の強度低下の抑制を図り、これにより、高回転精度で耐久寿命に富む複列円筒ころ軸受を提供することにある。
上記の目的を達成するため、本願では、第1の発明として、内輪および外輪と、両輪間に転動自在に配置された複列の円筒ころと、円筒ころの各列を個別に保持する一組の保持器とを備え、各保持器は、環状部と、環状部の一端面から軸方向に突設された複数の柱部とを有すると共に、周方向で隣り合う柱部間に円筒ころを保持するポケットを画成した樹脂の射出成形品であり、かつ、一組の保持器を、環状部を突き合わせた状態で配置した複列円筒ころ軸受において、一組の保持器の少なくとも一方が、環状部の他端面に、型成形された凹部を有し、この凹部は、ウェルド部の径方向一部領域を含むように設けられていることを特徴とする複列円筒ころ軸受を提供する。
このような構成によれば、少なくとも一方の保持器においては、保持器の相互摺接面となる環状部他端面上へのウェルド部の露出量が図10に示す従来品に比べて減じられる。そのため、保持器表層部に形成されるスキン層のうち、ウェルド部の形成領域が軸受運転時に優先的に摩耗することによって生じる保持器強度の低下を、図10に示す従来品を一組用いる場合に比べて抑制することができる。また、上記の凹部は、軸受内部に充填される潤滑剤(例えばグリース)の保持部としても機能することから、優れた潤滑性能が安定的に維持される。これにより、摩耗の進行速度が効果的に抑えられる。
加えて、上記の凹部を型成形したことから、これを機械加工で形成する場合のようなスキン層の薄層化、ひいては保持器強度の低下は起こり得ず、しかも保持器の精度(特に真円度)向上を目的としてゲート数を増加させた場合でも量産コストは変化しない。そのため、特段のコスト増を招くことなく保持器の高精度化を達成することができ、しかも保持器の強度低下を抑制することができる。以上から、本発明によれば、高回転精度で耐久寿命に富む複列円筒ころ軸受を低コストに提供することができる。
ここで、一組の保持器間の接触面圧は、運転時に作用する遠心力のために径方向外側(外径側)領域ほど高くなる傾向にある。言い換えると、運転時における保持器の摩耗は、環状部の他端面の外径側領域で最も早く進行する。そのため、上記の凹部は、ウェルド部の少なくとも半径方向外側領域を含むように設けるのが望ましい。これにより、保持器強度の早期低下を効果的に抑制することができる。もちろん、上記の凹部は、ウェルド部の径方向全領域を含むように設ける(環状部他端面を径方向に横断するような放射溝状に形成する)ことも可能であり、この場合には、運転時の摩耗に起因した保持器強度の低下を一層効果的に抑制することができる。
上記の構成において、一組の保持器のうち、少なくともウェルド部を含む凹部を有する側の一方が、環状部の他端面に、ゲート跡を含むように型成形された凹部をさらに有するものとすることができる。このようにすれば、ゲート跡が環状部の他端面上に突起状に形成されたとしても、ゲート跡同士の摺接による摩耗、またこれに起因した保持器強度の低下を、ゲート跡の除去加工を施すことなく抑制することが可能となる。
ゲート跡を含む凹部を設ける場合において、この凹部の深さ寸法と、ウェルド部を含むように設けた凹部の深さ寸法とは同等にしても構わないが、各凹部の深さ寸法を大きくするほど体積減少量が大きくなるため、必要とされる保持器強度を確保できなくなるおそれがある。本願発明者が検証したところ、ゲート跡の隆起量は、ウェルド部のそれよりも小さいことが判明した。そのため、ウェルド部を含む凹部の深さ寸法をh1、ゲート跡を含む凹部の深さ寸法をh2としたときに、h1>h2の関係式を満たすように各凹部の深さ寸法を設定するのが望ましい。これにより、体積減少量を必要最小限に留めつつ、運転時の摩耗に起因した保持器強度の低下を効果的に抑制することができる。
ところで、保持器を樹脂の射出成形品とする場合においては、成形収縮に伴う形状(寸法)変化も考慮した設計を行う必要がある。詳述すると、環状部および環状部の一端面から突設された複数の柱部を備えた保持器を樹脂で射出成形する場合において、環状部の他端面を図10(a)に示すような凹凸のない平坦面とすると、環状部他端面の径方向中間部の成形収縮量(ひけ量)が大きくなる傾向にある。このような成形収縮が生じた保持器を背面合わせの状態で内外輪間に組み込むと、他端面間の接触が局所的となるために接触面圧が上がり、その結果摩耗が生じ易くなる。このような問題は、各保持器の環状部他端面の外径端部および内径端部に、型成形された環状の凹部をさらに有するものとすることによって、逆を言えば、環状部の径方向において、その中間部をその両端部よりも厚肉に成形することによって緩和することが可能である。成形収縮後における環状部他端面内での高低差を小さくすることができるからである。
また、上記の目的を達成するため、本願では、第2の発明として、内輪および外輪と、両輪間に転動自在に配置された複列の円筒ころと、円筒ころの各列を個別に保持する一組の保持器とを備え、各保持器は、環状部と、環状部の一端面から軸方向に突設された複数の柱部とを有すると共に、円周方向で隣り合う柱部間に円筒ころを保持するポケットを画成した樹脂の射出成形品であり、かつ、一組の保持器を、環状部を突き合わせた状態で配置した複列円筒ころ軸受において、一組の保持器の少なくとも一方が、環状部の他端面の外径端部に、型成形された環状の凹部を有することを特徴とする複列円筒ころ軸受を提供する。
このような構成によれば、上記したとおり、運転時の接触面圧が最も高くなる外径側領域において、保持器同士の摺接を回避することができる。そのため、図10に示す保持器を用いる場合に比べ、スキン層、特にウェルド部形成領域のスキン層が運転に伴う摺接で摩耗し、保持器強度が低下するような事態を効果的に抑制することができる。なお、その他の作用効果は、上記した本願の第1発明に準ずるのでここでは説明を割愛する。
上記本願の第2発明においても、成形収縮に伴う環状部他端面の精度低下に起因して、運転時における摩耗の進行速度が速まるのを可及的に防止すべく、各保持器が、環状部他端面の外径端部および内径端部に、型成形された環状の凹部を有するものとするのが望ましい。
上記した本発明に係る複列円筒ころ軸受は、例えば工作機械の主軸支持用として好ましく用いることができる。
以上のように本発明によれば、運転時の摩耗に起因した樹脂製保持器の強度低下を効果的に抑制することができる。これにより、高回転精度で耐久寿命に富む複列円筒ころ軸受を低コストに提供することが可能となる。
以下、本発明の実施の形態を図1〜図9に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態にかかる複列円筒ころ軸受1の概略断面図である。同図に示す複列円筒ころ軸受1は、例えば工作機械の主軸装置に組み込まれて、高速で回転駆動される図示外の主軸を図示外のハウジングに対して回転自在に支持するものであり、複列の内側軌道2a、2aを有する内輪2と、複列の外側軌道3a、3aを有する外輪3と、内輪2の内側軌道2aと外輪3の外側軌道3aの間に転動自在に配された複列の円筒ころ4と、円筒ころ4の各列を個別に保持する一組の保持器10、10とを備える。内輪2の軸方向中央部および軸方向両端部には、径方向外向きに延びた中鍔2bおよび外鍔2cがそれぞれ設けられており、中鍔2bと外鍔2cとの間に内側軌道2aが形成される。保持器10,10は、環状部11同士を突き合わせたいわゆる背面合わせの状態で内外輪間に組み込まれている。複列円筒ころ軸受1の内部空間には、潤滑剤としてのグリースが充填されている。
各保持器10は、図2および図3(a)(b)に示すように、円環状をなす環状部11と、環状部11の一端面(内端面)11aから軸方向に突設された複数(本実施形態では28個。図2を参照)の柱部12とを一体に備える。柱部12は円周方向等間隔で配置されており、円周方向で隣り合う柱部12,12間に円筒ころ4を転動自在に保持するポケット13が画成されている。
保持器10は、例えばポリフェニレンサルファイド(PPS)をベース樹脂とし、これに強化材等の充填材を適宜配合した樹脂(溶融樹脂)の射出成形品とされる。保持器10の射出成形は、周方向に複数配置したゲートを介してキャビティ内に溶融樹脂を射出・充填することによって行われ、本実施形態においては、図3(a)に示すように、周方向等間隔にゲート跡G(ゲート内に残存した樹脂が離型時に分断されることで形成されるもの)が形成されるようにして射出成形される。このように、周方向等間隔で配置した複数のゲートからキャビティ内に溶融樹脂を射出することにより、高い真円度を具備した高精度の保持器10が得られる。図3(b)に示すように、各ゲート跡Gは、柱部12一個おきに柱部12の周方向中間部に設けられている。かかる態様でゲート跡Gが形成されるように保持器10を射出成形したことにより、周方向範囲内にゲート跡Gが形成されていない各柱部12の周方向中間部には、溶融樹脂の合流跡であるウェルド部Wが形成されている。この保持器10の各部に対して研削・研磨等の機械加工は施されておらず、従ってウェルド部Wはその周囲(保持器表面)よりも盛り上がった突起状を呈する。
本実施形態において、各保持器10の相手側との対向面(摺接面)となる環状部11の他端面(外端面)11bには、図3(a)に示すように、周方向等間隔で凹部14が複数設けられている。各凹部14は、環状部11の外端面11bのうち、ウェルド部Wの形成領域にそれぞれ設けられ、ここでは図3(c)にも示すように、ウェルド部Wの径方向外側領域を含むように設けられている。さらに言うと、各凹部14は、外径端部が環状部11の外周面11cに開口した放射溝状に形成され、この凹部14の周方向範囲内にウェルド部Wが個別に設けられている。図3(d)に示すように、凹部14の深さ寸法h1は、ウェルド部Wの隆起量hwよりも大きく設定されている。従って、環状部11の外端面11bに現れているウェルド部Wのうち、凹部14の範囲内に位置する外径側領域は、あたかも凹部14内に収容されるようにして、外端面11b上に露出していない。その一方、環状部11の外端面11bに現れているウェルド部Wのうち、内径側領域は、外端面11b上に露出している。
以上に示す構成は、保持器10を射出成形するのと同時に凹部14を型成形することで得られる。具体的には、保持器10の成形金型のうち、周方向で隣り合うゲートの中間位置、すなわち溶融樹脂が合流してウェルド部Wが形成される位置に、凹部14の形状に対応した所定形状の成形部を設けておけば良い。
上記したように、本発明に係る複列円筒ころ軸受1では、各保持器10が、環状部11の外端面11bに型成形された凹部14を有し、かつこの凹部14は、ウェルド部Wの径方向一部領域を含むように設けられている。このような構成によれば、保持器10,10の相互摺接面である外端面11b上へのウェルド部Wの露出量を、図10に示す従来の保持器を用いる場合に比べて減じることができる。そのため、軸受1の運転時においても、強度最弱部であるウェルド部Wのスキン層が優先的に摩耗し、これによって保持器10の強度が低下するのを抑制することができる。また、凹部14は、軸受1内部に充填されるグリースの保持部(保持溝)としても機能することから、優れた潤滑性能が安定的に維持される。これにより、運転時の相互摺接に起因して生じる摩耗の進行速度が効果的に抑えられる。
上記の凹部14は、保持器10を射出成形した後、研削等の機械加工を施すことで形成することも可能であるが、機械加工を施すとスキン層が削り取られてしまうために強度低下が避けられず、また、保持器10の精度向上を目的としてゲート数を増加させると、その分だけ加工工数も増大する。これに対して、本願発明では凹部14を型成形したことから、ゲート数を増加させても量産コストは変化せず、しかもスキン層が薄層化することも起こり得ない。そのため、特段のコスト増を招くことなく保持器10の高精度化が達成され、しかも保持器10の強度低下を抑制することができる。以上から、本発明によれば、高回転精度で耐久寿命に富む複列円筒ころ軸受1を低コストに提供することができる。
なお、本実施形態において、上記の凹部14は、ウェルド部Wの外径側領域を含むように外径端部を環状部11の外周面11cに開口させたものであって、内径端部は環状部11の内周面11dに開口していない。この場合、上記したとおり、ウェルド部Wの内径側領域は、相手側との対向面(外端面11b)上に露出しているため、運転時のウェルド部W同士の摺接に起因して保持器10の強度低下が起こり得るとも考えられる。しかしながら、軸受運転時には、遠心力の作用によって保持器10が外径側に変形するために、外端面11b,11b間の接触面圧は外径側領域ほど高くなる。言い換えると、運転時における保持器10の摩耗は、環状部外端面11bの外径側領域で最も早く進行する。従って、本実施形態のように、ウェルド部Wの外径側領域を含むように凹部14を設けておけば、保持器強度の早期低下を効果的に抑制することができて、好適である。
強度最弱部であるウェルド部Wのスキン層が摩耗するのをできるだけ遅延・回避するには、凹部14の深さ寸法h1を、ウェルド部Wの隆起量hwよりも十分に大きく設定しておく必要がある。ここでは、図3(d)に示すように、凹部14の深さ寸法h1を、ウェルド部Wの隆起量hwに、寸法hxの余剰分を加えた値に設定している。余剰分の寸法hxは、軸受運転時における環状部11の外端面11bの最大摩耗量を考慮して決定する。
なお、本実施形態に係る複列円筒ころ軸受1は、各保持器10,10が、環状部11の外端面11bに、ウェルド部Wの径方向一部領域を含むように型成形された凹部14を有するものであるが、この凹部14は、少なくとも一方の保持器10の環状部外端面11bに設けられていれば足りる。すなわち、このような構成であっても、図10に示す従来品を一組用いる場合に比べれば、運転時におけるウェルド部Wの摩耗量は抑制されるからである。
以上、本発明の一実施形態について説明を行ったが、本発明の実施の形態は以上に示すものに限定されない。以下、本発明の他の実施形態について説明を行うが、内輪2、外輪3および円筒ころ4の構成に変更点はなく、実質的には保持器10の構成のみが以上で説明したものと異なる。従って、以下では、保持器10を抜き取って示し、複列円筒ころ軸受1の図示は基本的に省略する。
例えば、保持器10の凹部14は、図4(a)(b)に示すように、ウェルド部Wの径方向全領域を含むように型成形されたもの、すなわち、その外径端部が環状部11の外周面11cに、またその内径端部が環状部11の内周面11dに開口するように型成形されたものとすることができる。この場合、運転に伴うウェルド部Wのスキン層の摩耗が一層効果的に抑制される。そのため、複列円筒ころ軸受1の一層の長寿命化を図ることができる。
また、一組の保持器10,10のうち、少なくとも上記凹部14を有する側の一方は、図5(a)に示すように、環状部11の外端面11bに形成されたゲート跡Gを含むような凹部15をさらに型成形したものとすることができる。図示例において、ゲート跡Gを含む凹部15は、図4(a)に示すウェルド部Wを含む凹部14と同様に、環状部11の外端面11bに放射溝状に形成されている。このように、ゲート跡Gを含む凹部15をさらに型成形すれば、環状部11の外端面11b上に突起状のゲート跡Gが形成されるような場合であっても、軸受の運転に伴ってゲート跡Gが相互に摺接して摩耗し、これに起因して保持器強度が低下するような事態を、ゲート跡Gの除去加工を施すことなく抑制することができる。
この場合、図5(b)に示すように、ウェルド部Wを含む凹部14の深さ寸法h1に比べ、ゲート跡Gを含む凹部15の深さ寸法h2を小さく設定する(h1>h2)。これにより、保持器10の体積減少量を必要最小限に留めつつ、運転に伴う摩耗に起因した保持器10の強度低下が効果的に抑制される。
なお、両凹部14,15の寸法関係を上記のように設定したのは、図6に示すサンプル品の実測結果に基づく。すなわち、本願発明者が、周方向等間隔で複数配置したゲートを介してキャビティ内に樹脂を射出し、円環状をなす保持器10のサンプル品を得た場合において、このサンプル品に形成されたゲート跡Gの隆起量hgとウェルド部Wの隆起量hwとの寸法関係は、図6に示すようにhw>hgとなったことによる。さらに言えば、ゲート跡Gの隆起量hgは、ウェルド部Wの隆起量hwの50%未満である。従って、安全率を考慮して、h2>0.5h1の関係式をさらに満たすようにゲート跡Wを含む凹部15の深さ寸法h2を設定するのが一層望ましい。
また、一組の保持器10,10のうち、少なくとも上記凹部14を有する側の一方は、図7(a)に示すように、環状部11の外端面11bの外径端部に、型成形された環状の凹部16をさらに有するものとすることができる。このような構成によれば、保持器10,10間の接触面圧が高い領域での摺接を抑制することが可能となるので、運転時の摩耗に起因した保持器10の強度低下が一層効果的に抑制される。
ところで、以上で説明したような環状部11および環状部11の内端面11aから突設された複数の柱部12を備えた保持器10を樹脂で射出成形した場合、特に環状部11外端面11bの径方向中間部の成形収縮量(ひけ量)が大きくなる傾向にある。このような保持器10を背面合わせの状態で軸受1に組み込むと、外端面11b、11b間の接触が局所的となるために接触面圧が上がり、その結果、軸受運転時に摩耗が生じ易くなる。このような問題は、図7(b)に示すように、各保持器10の環状部11の外端面11bの外径端部および内径端部に、環状の凹部16を型成形することで緩和することができる。言い換えると、成形収縮量が大きくなる環状部11の径方向中間部を他所に比べて厚肉に成形する。このようにすれば、成形収縮後における環状部11の外端面11b内での高低差を小さくすることができるので、接触面圧の過剰な上昇を避け、摩耗抑制に有効となる。
図8は、本発明の他の実施形態にかかる複列円筒ころ軸受1の概略断面図である。同図に示す複列円筒ころ軸受1は、一組の保持器10,10のうちの一方(図示例では左側の保持器10)が、環状部外端面11bの外径端部に、型成形された環状の凹部17を有するものである。この構成において、各保持器10の環状部11の外端面11bには、上記したようなウェルド部Wを含む凹部14やゲート跡Gを含む凹部15は設けられていないが、このようにすれば、図7(a)に示す保持器10を用いる場合と同様に、接触面圧が最も高くなる外径側領域において、保持器10同士の摺接を回避することが可能となる。そのため、スキン層、特にウェルド部W形成領域のスキン層が運転に伴う摺接で摩耗し、保持器10の強度、ひいては軸受1の耐久寿命に悪影響が及ぶような事態が効果的に抑制される。
図8に示す環状の凹部17は、図9(a)(b)に示すように、両保持器10,10の環状部外端面11bの外径端部および内径端部に型成形するようにしてもよい。このようにすれば、図7(b)に示す実施形態を参照して説明したように、成形収縮に伴う環状部外端面11bの精度低下に起因して、運転時における摩耗の進行速度が速まるのを可及的に防止することができる。なお、この場合、軸受運転時における保持器10,10間の摺接は、環状の凹部17,17間に設けられる凸状部分にて行われる。そのため、図10(a)に示すような環状部外端面が凹凸のない平坦面で構成された保持器101を用いる場合に比べ、保持器10,10の相互摺接領域が限定的となる。これにより、ウェルド部Wの相互接触量が減じられ、その結果スキン層の摩耗量も減じられる。
この場合において、環状部11の外端面11bの表面積を100とすると、環状の凹部17の総面積は80以上とするのが望ましい。言い換えると、環状の凹部17,17間に設けられる凸状部分の相互摺接によって該凸状部分のスキン層が摩耗したとしても、環状部11の外端面11bに80%以上のスキン層が残存するように凹部17の寸法設定を行う。これにより、安定した軸受性能が長期間に亘って確保される。
以上、本発明の実施の形態について説明を行ったが、上記した保持器10には、種々の変更を施すことが可能である。例えば、図3〜図5および図7に示す実施形態において、ウェルド部Wを含むように設けた凹部14の深さ寸法h1は、必ずしも径方向全域に亘って一定とする必要はなく、径方向で異ならせても良い。例えば内径側から外径側に向かって徐々に深さ寸法h1を拡大させることもできる。
また、図示は省略するが、ウェルド部Wを含む凹部14やゲート跡Gを含む凹部15の断面形状は矩形状ではなく、円弧状とするか、又は円弧の組み合わせで構成するのが望ましい。凹部14等の断面が直線の組み合わせで構成されていると、遠心力が作用した場合等に直線の交わる部分に応力が集中し、保持器10の破損起点となる可能性があるからである。
1 複列円筒ころ軸受
2 内輪
3 外輪
4 円筒ころ
10 保持器(円筒ころ軸受用保持器)
11 環状部
11a 一端面(内端面)
11b 他端面(外端面)
12 柱部
13 ポケット
14 凹部
15 凹部
16 環状の凹部
17 環状の凹部
G ゲート跡
W ウェルド部
2 内輪
3 外輪
4 円筒ころ
10 保持器(円筒ころ軸受用保持器)
11 環状部
11a 一端面(内端面)
11b 他端面(外端面)
12 柱部
13 ポケット
14 凹部
15 凹部
16 環状の凹部
17 環状の凹部
G ゲート跡
W ウェルド部
Claims (8)
- 内輪および外輪と、両輪間に転動自在に配置された複列の円筒ころと、円筒ころの各列を個別に保持する一組の保持器とを備え、各保持器は、環状部と、環状部の一端面から軸方向に突設された複数の柱部とを有すると共に、周方向で隣り合う柱部間に円筒ころを保持するポケットを画成した樹脂の射出成形品であり、かつ、一組の保持器を、環状部を突き合わせた状態で配置した複列円筒ころ軸受において、
一組の保持器の少なくとも一方が、環状部の他端面に、型成形された凹部を有し、
この凹部は、ウェルド部の径方向一部領域を含むように設けられていることを特徴とする複列円筒ころ軸受。 - ウェルド部の少なくとも径方向外側領域を含むように前記凹部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の複列円筒ころ軸受。
- 一組の保持器のうち、少なくともウェルド部を含む凹部を有する側の一方が、環状部の他端面に、ゲート跡を含むように型成形された凹部をさらに有することを特徴とする請求項1又は2に記載の複列円筒ころ軸受。
- ウェルド部を含む凹部の深さ寸法をh1、ゲート跡を含む凹部の深さ寸法をh2としたときに、h1>h2の関係式を満たすことを特徴とする請求項3に記載の複列円筒ころ軸受。
- 各保持器は、環状部の他端面の外径端部および内径端部に、型成形された環状の凹部を有することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の複列円筒ころ軸受。
- 内輪および外輪と、両輪間に転動自在に配置された複列の円筒ころと、円筒ころの各列を個別に保持する一組の保持器とを備え、各保持器は、環状部と、環状部の一端面から軸方向に突設された複数の柱部とを有すると共に、周方向で隣り合う柱部間に円筒ころを保持するポケットを画成した樹脂の射出成形品であり、かつ、一組の保持器を、環状部を突き合わせた状態で配置した複列円筒ころ軸受において、
一組の保持器の少なくとも一方が、環状部の他端面の外径端部に、型成形された環状の凹部を有することを特徴とする複列円筒ころ軸受。 - 各保持器が、環状部の他端面の外径端部および内径端部に、型成形された環状の凹部を有することを特徴とする請求項6に記載の複列円筒ころ軸受。
- 工作機械の主軸支持用である請求項1〜7の何れか一項に記載の複列円筒ころ軸受。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP2010057359A JP2011190860A (ja) | 2010-03-15 | 2010-03-15 | 複列円筒ころ軸受 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP2010057359A JP2011190860A (ja) | 2010-03-15 | 2010-03-15 | 複列円筒ころ軸受 |
Publications (1)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JP2011190860A true JP2011190860A (ja) | 2011-09-29 |
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ID=44795997
Family Applications (1)
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|---|---|---|---|
| JP2010057359A Pending JP2011190860A (ja) | 2010-03-15 | 2010-03-15 | 複列円筒ころ軸受 |
Country Status (1)
| Country | Link |
|---|---|
| JP (1) | JP2011190860A (ja) |
Cited By (3)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JP2014129827A (ja) * | 2012-12-28 | 2014-07-10 | Ntn Corp | 転がり軸受 |
| CN111795067A (zh) * | 2019-04-08 | 2020-10-20 | 斯凯孚公司 | 球面滚子轴承 |
| WO2023048180A1 (ja) * | 2021-09-23 | 2023-03-30 | Ntn株式会社 | 転がり軸受用保持器および転がり軸受 |
-
2010
- 2010-03-15 JP JP2010057359A patent/JP2011190860A/ja active Pending
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| JP2023046361A (ja) * | 2021-09-23 | 2023-04-04 | Ntn株式会社 | 転がり軸受用保持器および転がり軸受 |
| JP7684173B2 (ja) | 2021-09-23 | 2025-05-27 | Ntn株式会社 | 転がり軸受用保持器および転がり軸受 |
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