本発明の実施例を以下に説明する。
本発明の実施例である沸騰水型原子炉に設置されたジェットポンプを、図1、図2及び
図3を用いて以下に説明する。本実施例のジェットポンプの構造を説明する前に、このジ
ェットポンプが適用される沸騰水型原子炉の概略の構造を、図1及び図4を用いて以下に
説明する。
沸騰水型原子炉(BWR)は、原子炉圧力容器(原子炉容器)1を有し、原子炉圧力容器1内に炉心シュラウド3を設置している。原子炉圧力容器は、以下、RPVと称する。複数の燃料集合体(図示せず)が装荷された炉心2が、炉心シュラウド3内に配置される。気水分離器4及び蒸気乾燥器5がRPV1内で炉心2の上方に配置される。複数のジェットポンプ11が、RPV1と炉心シュラウド3の間に形成された環状のダウンカマ6内に配置される。RPV1に設けられる再循環系は、再循環系配管7及び再循環系配管7に設置された再循環ポンプ8を有する。再循環系配管7の一端はダウンカマ6に連絡される。再循環系配管7の他端は、ダウンカマ6内に配置されたライザ管9の下端に接続される。ライザ管9の上端は分岐管27に接続される。分岐管27に取り付けられたエルボ管(曲り管)10が、ジェットポンプ11のノズル装置12に接続される。主蒸気配管27及び給水配管28がRPV1に接続される。ノズル装置12は、複数の支持板33によってベルマウス21に取り付けられ、ベルマウス21と一体になっている。
RPV1内の上部に存在する被駆動水である冷却水(被駆動流体、冷却材)は、給水配管28からRPV1に供給された給水と混合されてダウンカマ6内を下降する。この冷却水は、再循環ポンプ8の駆動によって再循環系配管7内に吸引され、再循環ポンプ8によって昇圧される。この昇圧された冷却水を、便宜的に、駆動水(駆動流体)30という。この駆動水30は、再循環系配管7、ライザ管9、分岐管27及びエルボ管10内を流れてジェットポンプ11のノズル装置12内に達し、ノズル装置12から噴出される。ノズル装置12の周囲に存在する被駆動水である冷却水32(図3参照)は、駆動水30の噴出流31(図3参照)の作用によって、ベルマウス21からスロート22内に吸い込まれる。この冷却水32は、駆動水30と共にスロート22内を下降し、ディフューザ25の下端から吐出される。ディフューザ25から吐出された冷却水(被駆動水32及び駆動水30を含む)を、便宜的に冷却水34と称する。冷却水34は、下部プレナム29を経て炉心2に供給される。冷却水34は、炉心2を通過する際に加熱されて水及び蒸気を含む気液二相流となる。気水分離器4は気液二相流を蒸気と水に分離する。分離された蒸気は、更に蒸気乾燥器5で湿分を除去されて主蒸気配管27に排出される。この蒸気は、蒸気タービン(図示せず)に導かれ、蒸気タービンを回転させる。蒸気タービンに連結された発電機が回転し、発電が行われる。蒸気タービンから排出された蒸気は、復水器(図示せず)で凝縮されて水となる。この凝縮水は、給水として給水配管28によりRPV1内に供給される。気水分離器4及び蒸気乾燥器5で分離された水は、落下して冷却水としてダウンカマ6内に達する。
ノズル装置12、ベルマウス21、スロート22及びディフューザ25を主要な構成要素とする本実施例のジェットポンプ11は、ノズル装置12の周囲に存在するダウンカマ6内の冷却水を吸込むことにより、少ない駆動水30で多くの冷却水34を炉心に供給することができる。再循環ポンプ8によって与えられた駆動水30の運動エネルギーが冷却水32に有効に作用すると、より多くの冷却水32が吸引されて冷却水34の流量が更に増加する。ジェットポンプ11は、ノズル装置12から噴出される駆動水30(噴出流31)をスロート22内に高速で噴出させることによってスロート22内の静圧を低下させる。これにより、冷却水32をスロート22に吸い込むことができ、少ない動力で必要な炉心流量を確保することができる。ディフューザ25は流れが剥離を起こさない程度に流路断面積が下流に向かうほど徐々に拡大しており、このディフューザ25で冷却水の運動エネルギーが圧力に変換される。ディフューザ25において、被駆動水32は、ベルマウス21に吸い込まれた位置における圧力よりもその圧力が高められる。なお、ベルマウス21の流路断面積は、上流に向かって増大している。
ベルマウス21、スロート22及びディフューザ25は、この順に、上流より下流に向って配置されている。ベルマウス21、スロート22及びディフューザ25は、ジェットポンプ本体を構成する。ノズル装置12はベルマウス21の上方に配置される。
本実施例のジェットポンプ11における滑り継手26の構造を、図2を用いて説明する。この滑り継手26は、スロート22の下端部(下流端部)にディフューザ25側の端面に向って流路断面積が徐々に減少している流路縮小部23を形成している。流路縮小部23の下流端の内径D6は流路縮小部23の上流端の内径D5よりも小さくなっている。この流路縮小部23の一部が、ディフューザ25の上端部(上流端部)内に嵌め込まれている。流路縮小部23の外面には厚肉部24が形成される。この厚肉部24の形成によって、流路縮小部23とディフューザ25の間に形成される間隙27のスロート22の半径方向における幅が、狭くなっている。
ジェットポンプ11におけるノズル装置12の詳細な構成を、図3、図5及び図6を用いて以下に説明する。ノズル装置12は、ノズル台座(ノズル台座部材)13及び6本のノズル14を有する。ノズル装置12のノズル台座13は、支持板33によってベルマウス21に取り付けられて一体化され、そしてエルボ管10に接続される。ノズル装置12はベルマウス21の上方に配置される。ノズル台座13は、軸心の位置に下方に伸びる突起部36を有する。6本のノズル14は、環状にノズル台座13に取り付けられて、突起部36の周囲に配置されている。これらのノズル14はノズル台座13からベルマウス21に向かって伸びている。
ノズル装置12に設けられた6本のノズル14の詳細な構成を、図6を用いて説明する。ノズル14は、内部に形成される噴出通路35の通路径となるノズル内径をノズル14の上流端から下流端に向ってD1,D2及びD3と順次定義した場合、これら内径はD1>D2>D3の関係を有している。
ノズル装置12では、ノズル14は、ノズル直管部15、ノズル絞り部16、ノズル直管部17、ノズル絞り部18及びノズル下端部19を有する。最も上流に位置するノズル直管部15は、内径がD1で一定になっている。ノズル直管部15の下流端に接続された第一段のノズル絞り部16は、内部の流路断面積が下流に向って減少し、上端の内径がD1で下端の内径がD2であり、長さがL1になっている。ノズル絞り部16の下流端に接続されるノズル直管部17は、内径がD2で一定になっている。ノズル直管部17の下端に接続される第2段のノズル絞り部18は、内部の流路断面積が下流に向って減少し、上端の内径がD2で下端の内径がD3であり、長さがL2になっている。ノズル絞り部18の下端に接続されてノズル14の最も下流に位置するノズル下端部19は、内径がD3で内部に噴出口20が形成される。
ノズル14は、ノズル絞り部が先端部の一箇所しか形成されていない特開昭59−188100号公報のノズルとは異なり、噴出通路35をノズル絞り部16及び18の二箇所で絞っている。ノズル絞り部16の絞り角θ1及びノズル絞り部18の絞り角θ2はそれぞれ次の(1)式及び(2)式でそれぞれ計算できる。
θ1=tan−1((D1−D2)/2/L1) ……(1)
θ2=tan−1((D2−D3)/2/L2) ……(2)
噴出口20に近いノズル絞り部18のノズル絞り角θ2がノズル絞り部16の絞り角θ1よりも大きくなっている(θ2>θ1)。流路断面積が大きいノズル直管部15がノズル絞り部16の上流に、流路断面積が小さいノズル直管部17がノズル絞り部16の下流にそれぞれ配置される。
ノズル14の最も下流に位置する下端部には、内径D3で先端に噴出口20を形成した直管のノズル下端部19を配置することが望ましい。しかしながら、噴出口20から噴出する噴出流31の流速を向上させるために、直管のノズル下端部19に替えて流路断面積が下流端に向って緩やかに減少するノズル絞り部を用いても良い。
ノズル下端部19に流路断面積が下流端に向って緩やかに減少するノズル絞り部を用いる場合には、ノズル下端部19の噴出口20からの噴出流31の広がりを所望の範囲内に抑えるために、このノズル絞り部18の絞り角θは2度未満程度の小さな角度にすることが望ましい。
沸騰水型原子炉の運転中において再循環ポンプ8から吐出された駆動水30は、ライザ管9及びエルボ管10を経てノズル装置12のノズル台座13内に流入する。この駆動水30は、それぞれのノズル14内の噴出流路35に導かれる。噴出通路35の流路断面積は、上流から下流に向って配置されたノズル直管部15、ノズル絞り部16、ノズル直管部17、ノズル絞り部18及びノズル下端部19の内径に応じて変化している。噴出通路35内に流入した駆動水30は、ノズル直管部15、ノズル絞り部16、ノズル直管部17及びノズル絞り部18を通り、ノズル下端部19に到達する。噴出通路35内を下降する駆動水30は、ノズル絞り部16で徐々に加速され、ノズル絞り部18でノズル絞り部16よりも急速に加速される。加速された駆動水30は噴出口20からスロート22内に向って噴出される。
ノズル絞り部18においてノズル14の中心軸に向かう速度成分が駆動水30に与えられる。しかしながら、流体は壁面に沿って流れる性質があるため、噴出流31がノズル下端部19の先端に形成された噴出口20から直径D3で噴出される。ノズル絞り部18の絞り角θ2が大きいほどノズル中心軸に向かう運動量が存在するため、噴出口20から噴出される噴出流31の拡がりが抑えられて、噴出流31が噴出口20から下流へ距離L3だけ進んだ時点での噴出流31の直径D4を、所望の範囲内に抑えて小さくすることができる。噴出流31の直径D4は噴出流31の流路幅であり、噴出流31の直径D4が小さいほど、噴出流31の速度が大きくなる。
噴出流31の拡がりを抑えて速度を維持したまま、ノズル14から噴出流31がスロート22内に噴出されると、スロート22内の静圧がより低下するため、ノズル装置12の周囲でダウンカマ6内に存在するより多くの被駆動水32がベルマウス20内に吸込まれる。
ノズル下端部19がノズル絞り部18の下流に配置されていない場合を想定する。この場合には、ノズル絞り部18で与えられたノズル14の中心軸に向かう駆動水30の運動量により噴出流31の直径が噴出後も小さくなる。すなわち、ノズル下端部19の直管部が存在しないので、ノズル14の下端に形成された噴出口20から噴出される噴出流31は、ノズル絞り部18の影響を受ける。このため、噴出口20からの距離L3での噴出流31の直径D4が、噴出口20の内径D3よりも小さくなり、噴流速度が上昇して加速損失が増大するので、駆動水30の流量が減少する。
このため、ノズル絞り部18の下流側に直管部であるノズル下端部19を設置することにより、噴出口20から噴出する噴出流31の直径が、直管であるノズル下端部19の内径D3よりも小さくならないようにして、加速損失増大による駆動水30の流量減少を防いでいる。
また、ノズル絞り部をノズル14に2箇所以上設けることにより、ノズル14内の圧力損失を低減しつつ、ノズル14相互間に形成される被駆動水32の流路を広くすることができる。
次に、噴出口20の内径をD3で固定してノズル絞り部16を直管とし、ノズル直管15及び直管にしたノズル絞り部16のそれぞれの内径をD2とし、ノズル14に形成したノズル絞り部をノズル絞り部18の一箇所にした場合を考える。ノズル絞り部18の長さL2を変更しない場合、ノズル直管部15及び直管にしたノズル絞り部16の流路断面積が狭くなって内部を流れる駆動水30の流速が増加するため、摩擦損失が増大して駆動水30の流量が減少する。また、ノズル絞り部18の長さL2を長くしてノズル絞り部18における上流側の流路断面積を大きくした場合は、ノズル14の外径が大きくなり、複数のノズル14相互間に形成される被駆動水32の流路断面積が狭くなるので、被駆動水32のベルマウス21内への吸い込み量が減少してしまう。
したがって、二箇所以上のノズル絞り部をノズル14に設けることによって、ノズル14内の噴出通路35の流路断面積が噴出口20側で狭くなり、噴出通路35内を流れる駆動水30の流速が増加する。これによって、噴出通路35内で摩擦損失が増大する領域を小さくすることができる。さらに、ノズル14においてノズル絞り部16より下方で外径を小さくすることができるので、ノズル14相互間に形成される間隙37(図5参照)の幅をより広くすることができ、6本のノズル14よりも内側の領域38(図3参照)に吸い込まれる被駆動水32の流量を増大できる。結果として、スロート21内に吸込まれる被駆動水32の流量が増大する。
前述したように噴出通路35内に流入した駆動水30は、ノズル絞り部16,18により噴出通路35内で加速され、噴出口20から噴出流31となってスロート22内に噴出される。本実施例では、噴出流31の拡がりを抑えることができるため、スロート22内に到達した噴出流31の速度が大きくなってスロート22内の静圧がより低下する。この結果、被駆動水32をスロート22内により多く吸込むことができる。
本実施例は、2つのノズル絞り部16,18を有するノズル14を備えているので、ノズル14の上記した作用によって、特開昭59−188100号公報に記載された、一段で絞られた絞り部と直管部を有する5本のノズルを備えた従来のジェットポンプよりもスロート22内に吸込まれる被駆動水32の流量を増大することができる。このため、ジェットポンプ11から排出される冷却水34の流量が増大し、M比が高い領域でのジェットポンプ11の効率が従来のジェットポンプのそれよりも向上する。
スロートの入口からディフューザの出口までの、ジェットポンプの軸方向におけるジェットポンプの内部とダウンカマ6の間における差圧の変化の一例を、図7に示す。図7において、破線は100万kW級の沸騰水型原子炉に用いられている5本のノズルを有する従来のジェットポンプの特性である。この特性から明らかであるように、ノズルから駆動水を高速で噴出することによって、スロート内の静圧がダウンカマ6の静圧より低下するため、スロート入口部での内外の差圧が負圧になる。ジェットポンプの内部とダウンカマ6の間の差圧は滑り継手の位置で正圧になり、この正圧の大きさがディフューザの出口に向って増大する。従来のジェットポンプは、スロートの下部では流路断面積をスロートの下流端に向って緩やかに増大させることによって、スロート内の静圧を回復させている。滑り継手の位置でジェットポンプの内部の静圧がその位置でのダウンカマ6の静圧よりも大きくなると、滑り継手の間隙を通してジェットポンプの内部からダウンカマ6に向って冷却水の漏洩流が発生する。この漏洩流の量が過剰になった場合には、ジェットポンプに望ましくない振動が発生する可能性がある。
本実施例のジェットポンプ11の滑り継手26は、前述したように、スロート22の下端部に形成された流路縮小部23をディフューザ25の上流端部内に挿入しているので、流路縮小部23からディフューザ25内に流入する冷却水の流速が増大して流路縮小部23の下流端近傍でのディフューザ25内の静圧が低下する。このため、滑り継手26の設置位置でのジェットポンプ11の内部、すなわち、ディフューザ25の内部の静圧とダウンカマ6の静圧との差を小さくすることができる。これらの静圧の差を低減できる方法を用いることにより、滑り継手26の間隙27を通してダウンカマ6に漏洩する冷却水の流量を、特公昭59−48360号公報のように漏洩流低減効果が加工できる範囲に制限されるラビリンスシールを設けた場合よりも確実に減少させることができる。したがって、ジェットポンプ11の振動を抑制することができる。
図7に示された実線は、流路縮小部23を形成することによってスロート22の下流端の内径を、流路縮小部23を形成していない、従来のジェットポンプにおけるスロートの下流端の内径よりも6%小さくした本実施例のジェットポンプ11に対するジェットポンプ11の内部とダウンカマ6の間における差圧の変化を示している。本実施例では、流路縮小部23の開始点から静圧が低下し始め、滑り継手26の位置でのジェットポンプ11の内部とダウンカマ6の間における差圧が破線で示す従来例に比べて約半分にまで低下している。その後、ディフューザ25内の流路断面積が増加するにつれて冷却水の速度エネルギーが圧力に変換され、ディフューザ25内の圧力が回復していく。滑り継手26の位置におけるジェットポンプ11の内部とダウンカマ6の間の差圧が減少することによって、前述したように、ジェットポンプ11の振動が抑制される。
しかしながら、本実施例は、流路縮小部23の形成によって、従来のジェットポンプよりも圧力損失が増大する。この結果、実線で示す本実施例では、ディフューザ25の出口における圧力が、破線で示す従来例よりも低くなる(図7参照)。このため、ジェットポンプから炉心2に供給される冷却水34の流量が減少する。すなわち、流路縮小部23の形成は、ジェットポンプの効率を低減させる。
本実施例のジェットポンプ11は、前述したように、ノズル絞り部を二段にした6本のノズル14を有するノズル装置12を設置してジェットポンプの効率向上を図っている。ジェットポンプ11では、流路縮小部23の形成によるジェットポンプ効率の低減が、ノズル装置12の採用によるジェットポンプ効率の向上幅の一部によって相殺することができる。したがって、ジェットポンプ11は、ジェットポンプの振動を抑制でき、且つ、ジェットポンプの効率を従来のジェットポンプよりも向上させることができる。
本実施例のジェットポンプにおける効率向上を、図8を用いて詳細に説明する。図8において、破線は、5本のノズルを有するノズル装置を備えた従来のジェットポンプ(図7に示した破線の特性を有する従来のジェットポンプ)のジェットポンプ効率を示している。この従来のジェットポンプは、このスロートの下流端における流路断面積を従来比100%にしており、特開昭59−188100号公報に示されたジェットポンプのように、1段の絞り部を各ノズルに形成している。図8に示された一点鎖線は、破線で示す特性を有する従来のジェットポンプにおいて、スロートを、本実施例と同様な流路縮小部23を下端部に形成したスロートに替えた、比較例のジェットポンプにおけるジェットポンプの効率を示している。比較例のジェットポンプにおいて、流路縮小部23の下流端における流路断面積は、破線の特性を有する従来のジェットポンプのその流路断面積の90%である。このジェットポンプは、スロートに流路縮小部23を形成したことによる圧力損失の増加により、破線に比べてジェットポンプの効率が低下している。スロートに流路縮小部を形成した従来のジェットポンプにおけるその効率の低下は、0.7%程度である。
図8において、実線は本実施例のジェットポンプ11のジェットポンプ効率を示している。ジェットポンプ11では、スロート22の流路縮小部23の下流端における流路断面積も、90%である。ジェットポンプ11は、スロート22に形成した流路縮小部23によるジェットポンプ効率の低下を、ノズル装置12の採用によるジェットポンプ効率の増大でカバーすることができ、結果的にジェットポンプ効率を、破線で示された従来のジェットポンプのジェットポンプ効率よりも向上させることができる。本実施例では、ジェットポンプの効率が、スロートに流路縮小部を形成していない従来のジェットポンプのそれよりも、ピーク効率で3%程度向上する。
本実施例のジェットポンプ11は、ノズル14の本数を6本に増加している。二段に形成したノズル絞り部16,18を用いているので、噴出口20から噴出された噴出流31の拡がりを抑制して、スロート22の入口に到達したときの噴出流31の速度の低下及スロート22内における被駆動水32の吸い込み面積の減少が抑制される。このため、噴出流31の同じ噴出速度でより多くの被駆動水32をスロート22内に吸込むことができる。さらに、本実施例では、6本のノズル14の噴出口20の合計流路断面積を従来の5本のノズルにおけるそれと同じにし、6本のノズル14の濡れぶち長さの合計を従来の5本のノズルのそれよりも約9%大きくしている。このため、噴出口20から噴出された駆動水30の噴出流31と被駆動水32との接触面積が大きくなるので、両方の流体の混合が早くなり混合時の損失が少なくなる。
本実施例のジェットポンプ11は、特開昭59−188100号公報に記載された、1段階で絞られた絞り部と直管部を有する5本のノズルを備えた従来のジェットポンプに比べて、ジェットポンプ効率が向上する。
本実施例は、ノズル絞り部39の絞り角θ2をノズル絞り部37の絞り角θ1よりも大きくしているので、噴出流28の拡がりを抑えてスロート21の入口での駆動水24の速度低下を抑制するとともに、噴出口14を形成するノズル下端部40を設けて、絞りによって過度に駆動水29の速度が上昇してノズル13Aの圧力損失が大きく上昇するのを防いでいる。
スロート21での駆動水24の速度が噴出口14の位置での速度からあまり低下しないため、スロート21内の静圧がより低下して被駆動水29のスロート21内への吸い込み量が多くなり、ジェットポンプのM比と効率を向上させることができる。
沸騰水型原子炉では、再循環ポンプ8の回転数を制御して炉心2に供給する冷却水流量(炉心流量)を調節している。M比及びジェットポンプ効率が向上することにより少ない再循環ポンプ動力で炉心流量を増加することができる。したがって、再循環ポンプ8の駆動に要する消費電力を低減することができる。さらに、米国で実施されている原子炉の出力向上を実施する場合、M比及びジェットポンプ効率が増大する本実施例のジェットポンプ7を既設の原子炉に用いることによって、再循環ポンプ8の容量を増大させずに炉心流量をさらに増加することができる。このため、沸騰水型原子炉の出力向上を容易に実現することができる。
本発明の他の実施例である実施例2のジェットポンプを、以下に説明する。本実施例のジェットポンプ11Aは、実施例1のジェットポンプ11においてノズル装置12をノズル装置12Aに替えた構成を有している。ジェットポン11Aの他の構成は、ジェットポンプ11と同じである。ノズル装置12Aを、図9及び図10を用いて以下に説明する。
ジェットポンプ11Aにおいて、M比及びN比を増大させ、ジェットポンプの効率を高めるためには、圧力損失を極力小さくすること、及び駆動水で誘発される吸引力を最大限利用することが重要となる。そこで、本実施例のジェットポンプ11Aは、上端にダウンカマ6に連通する開口部51を形成する内部冷却水吸引通路50を、ノズル装置12A内に、ノズル装置12Aを軸方向に貫通するように形成している。さらに、ジェットポンプ11Aは、内部冷却水吸引通路50がエルボ管10内を上方に向かって伸びており、開口部51がエルボ管10の頂点TPよりも下方の位置でエルボ管10の外面に形成されている。
ノズル装置12Aは、図9に示すように、ノズル部40及びノズルヘッダー部46を有する。ノズルヘッダー部46は、外部円筒部材47及び外部円筒部材47の内側に配置された内部円筒部材48を有する。同心円状に配置された外部円筒部材47と内部円筒部材48の間に、環状ヘッダー部49が形成される。ノズル部40は、ノズルヘッダー部46の下方に配置され、ノズルヘッダー部46の下端部に取り付けられる。
ノズル部40は、外部円筒部材41、内部円筒部材42、外部漏斗筒部43及び内部漏斗筒部44を有する。外部円筒部材41は内部円筒部材42を取り囲み、外部円筒部材41及び内部円筒部材42は同心円状に配置される。外部漏斗筒部43は内部漏斗筒部44を取り囲み、外部漏斗筒部43と内部漏斗筒部44は同心円状に配置される。外部漏斗筒部43及び内部漏斗筒部44は、それぞれ下方に向かって横断面積が減少する。外部漏斗筒部43は外部円筒部材41の上端に取り付けられ、内部漏斗筒部44は内部円筒部材42の上端に取り付けられる。外部漏斗筒部43は外部円筒部材47の下端に設置される。内部漏斗筒部44は内部円筒部材48の下端に設置される。環状噴出口20Aが外部円筒部材41と内部円筒部材42の間に形成される。
エルボ管10の出口端53が、ノズルヘッダー部46、すなわち、外部円筒部材47の上端に取り付けられる。エルボ管10の入口端52が分岐管27の上端に設置される。エルボ管10及び分岐管27はその固定具によって取り外し可能に結合される。エルボ管10の出口端53の中心は、ノズルヘッダー部46、すなわち、外部円筒部材47の軸心と一致している。ノズル部40、ノズルヘッダー部46及びエルボ管10は、溶接によって接合されて一体化されている。
内部円筒部材48は、出口端53からエルボ管10内に挿入されて上方に向かって伸びている。内部円筒部材48の、上端部に位置する開口部51は、エルボ管10の外面に形成され、ダウンカマ6に連絡される。内部円筒部材48の上端がエルボ管10に溶接されている。内部円筒部材48とエルボ管10の接合部(取り付け部)のうち、最も高い位置に存在する接合部(取り付け部)57は、エルボ管10の外面の、最も高い位置である頂点TPよりも低い位置に配置される。エルボ管10と同じ曲率を有する整流板(整流部材)54が、エルボ管10内に設置され、エルボ管10の入口端52から内部円筒部材48に向ってエルボ管10の軸心に沿って配置される。整流板54は内部円筒部材48の上流に配置されている。整流板54の設置により、上下方向において分離された上部流路55及び下部流路56がエルボ管10内に形成される。接合部57が頂点TPよりも低い位置に存在するので、出口端53に向うエルボ管10内の上部流路55及び下部流路56は、内部円筒部材48の軸心に対して傾斜するように形成されている。換言すれば、上部流路55及び下部流路56は、それらの流路内を流れる駆動水が内部円筒部材48に対し内部円筒部材48の軸方向において出口端53に向かって斜めに当たるように形成されている。
開口部51によってダウンカマ6に連絡される内部冷却水吸引通路50が、接合された内部円筒部材48、内部漏斗筒部44及び内部円筒部材42内に形成される。接合された内部円筒部材48、内部漏斗筒部44及び内部円筒部材42は第1管路部材である。内部冷却水吸引通路50は、内部漏斗筒部44において、流路断面積が下方に向かって徐々に減少し、下端がベルマウス21に向って開口している。外部漏斗筒部43と内部漏斗筒部44の間に形成され、環状ヘッダー部49と環状噴出口20Aを連絡する環状通路45は、下方に向かって流路断面積が徐々に減少している。
沸騰水型原子炉の運転中に再循環ポンプ8で昇圧されてライザ管9に到達した駆動水は、エルボ管10内を通って環状ヘッダー部49内に導かれる。エルボ管10内に整流板54が配置されているので、エルボ管10内における圧力損失が低減される。エルボ管10内において、上部流路55及び下部流路56のそれぞれを流れる駆動水の一部が第1管路部材(特に、内部円筒部材48)の軸方向において出口端53に向かって斜めに内部円筒部材48の外面に当たる。環状ヘッダー部49内に導かれた駆動水は、環状通路45を通って環状噴出口20Aよりベルマウス21内に向って高速で噴出される。環状噴出口20Aより噴出された駆動水の噴出流の横断面は、環状になっている。駆動水の噴出流がスロート22内に高速で供給されることによって、スロート22内の静圧が低下し、ノズル装置12Aの周囲でダウンカマ6内に存在する冷却水がベルマウス22内に吸い込まれる。
スロート22内の静圧が低下することによって、ノズル装置12Aの周囲に存在する被駆動水である冷却水がベルマウス22内に吸い込まれる形態が2つ存在する。第1の形態では、エルボ管10より上方に存在する冷却水が、開口部51より内部冷却水吸引通路50内に流入し、内部冷却水吸引通路50を通ってベルマウス22内に達する。この形態では、内部冷却水吸引通路50を通して吸引された冷却水は、環状の噴出流の内側に流入する。第2の形態では、ダウンカマ6内の冷却水は外部冷却水吸引通路58を通って環状の噴出流の外側でベルマウス22内に達する。
環状噴出口20Aから噴出された駆動水とこの駆動水の作用によってベルマウス22内に吸い込まれた冷却水(被駆動水)はスロート22内で運動量の交換を行いながら混合され、スロート22の下方に位置するディフューザ25に導かれる。ディフューザ25から吐出された冷却水34は、下部プレナム29を経て炉心2に導かれる。
本実施例では、接合部57が頂点TPよりも低い位置に存在するので、エルボ管10内において、上部流路55及び下部流路56は、内部冷却水吸引通路50を形成する内部円筒部材48に対し内部円筒部材48の軸方向において出口端53に向かって傾斜するように形成される。このため、内部円筒部材48が存在するエルボ管10内の圧力損失が低減され、環状噴出口20Aから噴出される冷却水の流速が増大する。スロート22内での静圧の減少幅が大きくなり、内部冷却水吸引通路50及び外部冷却水吸引通路58を通ってベルマウス22内に吸引される冷却水の流量が増大する。この冷却水流量の増大は、ジェットポンプ11Aの効率を向上させる。
このジェットポンプ11Aの効率向上について説明する。図11は、ノズル装置12Aを有しスロートに流路縮小部が形成されていないジェットポンプ及び比較例のジェットポンプにおけるM比とジェットポンプの効率の関係を示している。図11において、実線がノズル装置12Aを有しスロートに流路縮小部が形成されていないジェットポンプの特性を示し、破線が比較例のジェットポンプの特性を示している。比較例のジェットポンプは、特開2001−90700号公報の図3に記載されたノズル装置を、USP3,625,820に記載されたBWR用のジェットポンプのノズルとして用いた構造である。比較例では加圧された駆動水がノズル装置の内側円筒に真横から衝突しているのに対し、ノズル装置12Aを有しスロートに流路縮小部が形成されていないジェットポンプは、エルボ管10内の冷却水通路を流れる駆動水が、上記したように、内部円筒部材48に対して斜めに当たっている。このような駆動水の流動の差により、ノズル装置12Aを有しスロートに流路縮小部が形成されていないジェットポンプの圧力損失が比較例のそれよりも減少する。このため、ノズル装置12Aを有しスロートに流路縮小部が形成されていないジェットポンプでは、ノズル内の圧力損失が減少する分、ジェットポンプの効率が比較例の効率よりも増加する。
本実施例のジェットポンプ11Aは、実施例1のジェットポンプ11と同様に、スロート22の下端部に流路縮小部23を形成しているので、この流路縮小部23の影響によりジェットポンプの効率が低下する。しかしながら、この効率の低下は、ノズル装置12Aの作用により増加した効率の一部を用いて相殺される。したがって、ジェットポンプ11Aは、ノズル装置12Aの作用により増加した残りの効率の増加分の貢献により、ジェットポンプの効率を比較例よりも向上させることができる。
本実施例は、スロート22の下端部に流路縮小部23を形成しているので、スリップジョイント26の間隙27からの漏洩流を減少させることができる。このため、ジェットポンプ11Aの振動を抑制することができる。
本実施例は、エルボ管10内に整流板54が設置されているので、エルボ管10内の圧力損失がさらに低減される。この圧力損失の低減によって、ジェットポンプ11Aの効率がさらに増大する。整流板54が内部円筒部材48の上流に配置されるので、エルボ管10内での流れの剥離及び速度分布の偏りを抑制でき、エルボ管10内の圧力損失が低減される。
エルボ管10内に形成される冷却水通路(上部流路55及び下部流路56)が内部円筒部材48に対して上記したように傾斜しているので、その冷却水通路内を流れる駆動水が内部円筒部材48に軸方向において内部円筒部材48の外面に斜めに当たることによって、内部円筒部材48とエルボ管10の接続部に生じる応力が小さくなる。したがって、既設のBWRにノズル装置12Aを適用する場合に、部材の厚みを特別に厚くしてその接合部を補強する必要が無く、ライザ管9及び固定具の改造が不要になる。
本実施例は、ノズル装置12A内に内部冷却水吸引通路50を形成しているので、噴出された環状の噴出流よりも内側の領域に生じる減圧の効果を有効に活用できる。このため、内部冷却水吸引通路50を通ってベルマウス22内に達する冷却水の流れを発生させることができる。したがって、冷却水は内部冷却水吸引通路17及び外部冷却水吸引通路58のそれぞれを通ってベルマウス22内に流入するので、ベルマウス22に流入する冷却水の流量が増加する。
内部冷却水吸引通路50がRPV1の軸方向を向いて配置されて開口部51が上方に向って開口しているため、ダウンカマ6内を下降して内部冷却水吸引通路50に供給される冷却水の流力をジェットポンプ11Aの吸込み力の増大に有効に活用できる。このため、スロート22内に吸引される冷却水の量を増やすことができる。また、ノズル部40に下方に向かって外径が減少する外部漏斗筒部43を用いているので、ノズル装置12Aは、ダウンカマ6内を下降する冷却水を、外部冷却水吸引流路58を通してベルマウス22内に吸込み易い構造となっている。これによっても、ベルマウス22内に流入する冷却水の流量が増加し、ジェットポンプ11Aの効率を増大できる。
ジェットポンプ11Aを設置した沸騰水型原子炉では、実施例1と同様に、再循環ポンプ8の容量を増大させずに炉心流量をさらに増加することができる。このため、沸騰水型原子炉における出力向上を容易に実現することができる。
さらに、本実施例は、ノズル装置12Aに逆U字状をしたエルボ管10を接続しているので、ダウンカマ6内に配置されたで一本のライザ管9に、このライザ管9に隣接する二基のジェットポンプ11Aのそれぞれのノズル装置12Aに接続された各エルボ管10を接続することができる。このため、ジェットポンプ11A相互間の間隔を既設の沸騰水型原子炉のその間隔と同じにすることができる。
本発明の他の実施例である実施例3のジェットポンプを、以下に説明する。本実施例のジェットポンプ11Bは、実施例1のジェットポンプ11においてノズル装置12をノズル装置12Bに替えた構成を有している。ジェットポン11Bの他の構成は、ジェットポンプ11と同じである。ノズル装置12Bを、図12を用いて以下に説明する。
ノズル装置12Bは、図12に示すように、ノズル部61、吸引通路部65及びノズルホルダ78を備えている。吸引通路部65は、ノズル部61の上方に配置されてノズル部61の上端に設置される。ノズルホルダ78は、吸引通路部65の上方に配置され、吸引通路部65の上端に設置される。
吸引通路部65は、円筒部材(第3筒状部材)66、流路形成部材67及び通路部材72を有する。流路形成部材67は、円筒部材66内で円筒部材66の中心に配置される。6個の通路部材72が円筒部材66の中心軸から放射状に周方向に60°間隔配置される(図13参照)。通路部材72の外側の端部は円筒部材66に溶接にて接合され、通路部材72の内側の端部は流路形成部材67に溶接にて接合されている。各通路部材72は、内側に向って(流路形成部材67に向って)下向きに傾斜しており、横断面が楕円形をしている(図15参照)。開口部74が通路部材72の外側の端部に形成される。円筒部材66と流路形成部材67の間に、環状の駆動水流路76が形成されている。各通路部材72はこの駆動水流路76を横切っている。開口部74を介してダウンカマ6に連絡される吸引通路73が各通路部材72内に形成される。各吸引通路73の入口及び出口では、各通路部材72の内面に曲面が形成されている。全ての吸引通路73の流路断面積の合計値は、減圧室(内部領域)77の、ノズル部61の下端での横断面積よりも大きくなっている。各通路部材72は、駆動水流路76の圧力損失を低減するために、上流に向かって横断面積が減少する流線型部材75(図15参照)を設けている。
流路形成部材67は、軸方向のどの位置においても横断面が円形になっており、軸方向に横断面積が異なる上部領域68、中央領域69及び下部領域70を有している。上部領域68は円柱状であり、上部領域68の下端につながる中央領域69は円錐台状をしている。中央領域69の下端につながる下部領域70は逆円錐状をしている。中央領域69では横断面積が下方に向かうにしたがって増大する。このため、駆動水流路76の流路断面積は、円筒部材66と中央領域69の外面の間では、下方に向かって減少している。下部領域70では、横断面積が下方に向かって減少しており、外面が軸方向に向かう曲面71になっている。
ノズル部61は、外部円筒部材(第1筒状部材)62及び外部円筒部材62の内側に配置された内部円筒部材(第2筒状部材)63を有する。外部円筒部材62は円筒部材66の下端に溶接にて接合されており、内部円筒部材63は上端が流路形成部材67に溶接にて接合されている。外部円筒部材62は、上端よりも下端の外径が小さくなっており、内側に向って傾斜している。内部円筒部材63は、中央部で外径が最も大きく上端及び下端の外径が中央部よりも小さくなっている。通路部材72の内側の端部は、内部円筒部材63の中央部よりも上方の部分に溶接にて接合されている。このため、内部円筒部材63の周方向において、隣り合う通路部材72の間には、内部円筒部材63が存在する。環状の噴出通路64が外部円筒部材62と内部円筒部材63の間に形成される。環状の噴出通路64は内側に向って傾斜しており、噴出通路64の流路断面積は下方に向かうほど小さくなっている。噴出通路64は駆動水流路76に連絡される。噴出通路64は、駆動水流路の一部でもある。環状の噴出口20Bが噴出通路64の先端に形成される。減圧室77が内部円筒部材63の内側に形成され、吸引通路73が減圧室77に連絡される。流路形成部材67の下部領域70の曲面71は減圧室77に面している。内部円筒部材63は、駆動水流路76と減圧室77を隔離する。
ノズルホルダ78は、円筒部材81、流線型補強板79及び円錐部材80を有する。円筒部材81は吸引通路部65の円筒部材66の上端に取り付けられる。円錐部材80は、上方に向って横断面が減少しており、円筒部材81の中心に配置される。6本の流線型補強板(図14参照)79が、円筒部材81の中心軸から放射状に周方向に60°間隔に配置され、通路部材72と重なる位置に配置されている。各流線型補強板79の両端が円筒部材81及び円錐部材80に取り付けられる。円錐部材80の下端部は流路形成部材67の上端部に嵌合される。円筒部材81の上端はエルボ管10に接続される。
ノズル部61及び吸引通路部65を一体にしたとき、外部円筒部材62及び円筒部材66が第1筒状部材を構成し、内部円筒部材63が第2筒状部材であるとも言える。これらの第1筒状部材と第2筒状部材の間に、噴出通路64を含む駆動水流路が形成される。
沸騰水型原子炉の運転中に再循環ポンプ8で昇圧された駆動水30は、エルボ管10を経て円筒部材81内に流入し、さらに、駆動水流路76を経て噴出通路64に到達する。この駆動水30は、噴出通路64の先端に位置する噴出口20Bからベルマウス21内に噴出流31Aとなって噴出される。噴出流31Aの作用により、ノズル装置12Bの周囲でダウンカマ6内に存在する冷却水の一部である被駆動水32が、冷却水吸引流路58を通ってベルマウス22内に流入する。この被駆動水32は、ベルマウス22と噴出流31Aの間を通ってスロート22内に導かれる。
噴出流31Aは、噴出通路64が傾斜しているので、スロート22の中心軸に向って噴出口20Bから斜めに噴出される。このため、この噴出流31Aの作用によって減圧室77の圧力が負圧になり、ダウンカマ6内を下降する冷却水の一部である被駆動水32Aが吸引通路73内に流入し減圧室77に達する。この被駆動水32Aは、さらに、ベルマウス22内の、噴出流31Aの内側に形成される減圧領域82内に流入する。
ベルマウス22内に流入した被駆動水32,32A及び駆動水30は、スロート22内で混合され、ディフューザ25(図1及び図4参照)から排出される。ディフューザ25から排出されたこれらの水、すなわち、冷却水34は炉心2に供給される。
以上に述べた本実施例のジェットポンプ11Bは、以下に示す(a)〜(c)の特徴的な構成を有する。
(a)ノズル部61の噴出通路64が内側に向って傾斜している。
(b)吸引通路73が内側に向って傾斜している。
(c)吸引通路73を形成する通路部材72の横断面が楕円形状になっている。
(a)〜(c)の特徴的な構成により得られる作用効果を詳細に説明する。まず、(a)の特徴的な構成によって得られる作用効果について説明する。ノズル部61の噴出通路64が、内側に向って傾斜している、すなわち、スロート22の中心軸に向いかつ下方に向かって傾斜するように、形成されているので、噴出口20Bから噴射される噴出流31Aがスロート22の中心軸に向い、かつ下方に向かって傾斜するように噴出される。このような噴出流31Aによって、流路形成部材67の下方で噴出流31Aの内側に形成される逆円錐形の減圧領域82の体積が小さくなる。減圧領域82の体積の低減によって減圧度合いが相対的に大きくなり、減圧室77内の負圧の度合いが増大する。この結果、吸引通路73を通ってベルマウス22内に吸込まれる被駆動水32Aの流量Qb2が増加する。
さらに、本実施例は、ノズル部61の噴出通路64が内側に向って傾斜しているので、ベルマウス21とノズル部61の外部円筒部材62の先端との間の距離L4を大きくすることができる。この結果、スロート22の内面と噴出流31Aの間の距離L5も増大し、冷却水吸引流路58を通ってベルマウス21と噴出流31Aの間に流入する被駆動水32の流量Qb1が増加する。
被駆動水32の流量Qb1及び被駆動水32Aの流量Qb2の増加は、ディフューザ25から排出される冷却水34の流量を増加させる。すなわち、ジェットポンプ11Bの効率がさらに向上する。
(b)の特徴的な構成によって得られる作用効果について説明する。吸引通路73が内側に向って傾斜しているので、ダウンカマ6内を下降する冷却水が流れの向きを少し変えるだけで、吸引通路73内に流入することができる。このため、被駆動水32Aが吸引通路73内に吸込まれやすくなる。また、吸引通路73が内側に向って傾斜しているので、ダウンカマ6内における冷却水の下降流の流力(流速約2m/s)を有効に利用することができ、被駆動水32Aが吸引通路73内に吸込まれやすくなる。これらの作用によって、被駆動水32Aの流量Qb2がさらに増加し、冷却水34の流量もさらに増加する。
(c)の特徴的な構成によって得られる作用効果について説明する。吸引通路73を形成する通路部材72の横断面が楕円形状になっているので、吸引通路73の横断面積を大きくすることができる。したがって、吸引通路73の圧力損失を低減することができ、被駆動水32Aの流量Qb2を増加させることができる。特に、通路部材72は、長径がノズル装置12Bの軸方向を向いて短径がノズル装置12Bの周方向を向くように配置されているので、駆動水流路76の圧力損失を低減して吸引通路73の横断面積を大きくすることができる。また、そのような長径及び短径の配置は、ノズル装置12Bの周方向に配置する通路部材72の個数を増大することができる。このため、全ての吸引通路72の流路断面積の合計値を増加することができる。これは、被駆動水32Aの流量Qb2の増加に大きく貢献する。
ノズル装置12Bは、(a)〜(c)の特徴的な構成以外によっても新たな作用効果を得ることができる。この作用効果について説明する。ノズル装置12Bは、駆動水30が流れる流路の圧力損失を低減するために、幾つかの工夫を行っている。通路部材72の横断面が楕円形状になっている構成以外でその圧力損失に貢献している構造を説明する。各通路部材72は、上流側に、上流に向かって横断面積が減少する流線型部材75を形成している。この流線型部材75の形成によって、駆動水流路76内を流れる駆動水30の乱れが少なくなり、駆動水流路76の圧力損失が低減される。流線型補強板79も、上流に向かって横断面積が減少する流線型をしている。このため、駆動水流路76の圧力損失が低減される。また、各流線型補強板79が、ノズル装置12Bの周方向において、下流に位置する通路部材72と同じ位置に配置されているので、駆動水流路76の圧力損失が低減される。噴出通路64の流路断面積が上流から噴出口20Bに向かって徐々に減少しているので、噴出通路64の圧力損失も低減される。上流から下流に向かって横断面積が増加する円錐部材80が流路形成部材67の上端に配置されているので、エルボ管10内を流れる駆動水30を円滑に環状の駆動水流路76に導くことができる。このため、ノズル装置12B内の駆動水30が流れる流路の圧力損失を低減することができる。さらに、本実施例は、ノズル装置12B内に、特開2008−82752号公報の図1に示すノズル装置のように駆動水を直角に曲げるような流路を形成していないので、ノズル装置12B内の圧力損失をさらに低減することができる。
ノズル装置12Bは、被駆動水32Aが流れる流路の圧力損失を低減するための工夫を行っている。この圧力損失の低減は、前述したように、通路部材72が入口及び出口に曲面を形成していることによって得られる。全ての吸引通路73の流路断面積の合計値は、減圧室77の、ノズル部61の下端での横断面積よりも大きくなっているので、ノズル装置12B内に形成される被駆動水32Aが流れる流路の圧力損失が低減される。通路部材72の横断面が楕円形状をしておりこの通路部材72がノズル装置12Bの軸心側で下方に向かってに向って傾斜して配置されているので、吸引通路73の入口の開口面積を大きくすることができる。これによっても、吸引通路73の圧力損失を低減することができる。流路形成部材67の下部領域70の、減圧室77に面する表面が曲面71になっているので、吸引通路73から排出される駆動水32Aの流れが、曲面71に沿って円滑に減圧室77内を下向きに向きを変えることができる。このような機能を発揮する曲面71の形成によっても、ノズル装置12B内に形成される被駆動水32Aが流れる流路の圧力損失を低減することができる。
流路形成部材67の下部領域70は、通路部材72の出口側の上端よりも下方に突出している。このような形状の採用は、(a)の特徴的な構成によって増大した減圧室77の負圧を吸引通路73に有効に作用させ、吸引通路72に流入する被駆動水32Aの流量Qb2を増加させることができる。すなわち、下部領域70は、吸引通路73から排出される被駆動水32Aによって減圧室77内に減圧止水域が形成されることを防止している。下部領域70は、下部領域70が存在しない場合に減圧室77内に減圧止水域が形成される領域に配置されている。このため、減圧止水域で誘発されるキャビテーションの発生を回避することができ、被駆動水32Aの流量Qb2が増加する。
噴出口20Bが環状になっているので、本実施例は、噴出口20Bから噴射される噴出流31Aも環状になる。このため、噴出流31Aによって発生する渦が周方向に一様に分布するので、流力振動の原因となるランダムな渦の形成を抑えることができ、沸騰水型原子炉の構造物の振動を抑制できる。
ノズル装置12Bが、駆動水30が流れる環状の流路及び噴出口20B、及びこの流路を横切る被駆動水32Aが流れる吸引通路73を有するので、ノズル装置12Bをコンパクト化することができる。したがって、従来のジェットポンプにおいてノズルをノズル装置12Bに替えることによって簡単にかつ短時間にそのジェットポンプをノズル効率が高いジェットポンプ11Bに改造することができる。
ノズル装置12Bを有しスロートに流路縮小部が形成されていないジェットポンプの特性を、従来例のジェットポンプのそれと比較して図16に示す。ここで、従来例のジェットポンプは、特開平7−119700号公報の図2に示すように5本のノズルを有しているジェットポンプ、及び特開2008−82752号公報の図1に示すように軸心に冷却水吸引通路を形成しリングヘッダーを有するノズル装置を備えたジェットポンプである。特開平7−119700号公報及び特開2008−82752号公報のジェットポンプでは、いずれも噴出口がジェットポンプの軸心と平行に配置されて真下を向いている。
図16は、ノズル装置12Bを有しスロートに流路縮小部が形成されていないジェットポンプ及び上記した各従来例におけるM比に対するジェットポンプの効率の変化を示している。ノズル装置12Bを有しスロートに流路縮小部が形成されていないジェットポンプは、前述したように、ノズル装置12Bの圧力損失の低減、及び被駆動水32,32Aの流量Qb1,Qb2の増加、圧力損失の低減によって、いずれの従来例よりも効率が上昇する。原子炉の出力向上のためにM比を大きくした場合には、図16に示すようにノズル装置12Bを有しスロートに流路縮小部が形成されていないジェットポンプの効率が大きくなる。
本実施例のジェットポンプ11Bは、実施例1のジェットポンプ11と同様に、スロート22の下端部に流路縮小部23を形成しているので、この流路縮小部23の影響によりジェットポンプの効率が低下する。しかしながら、この効率の低下は、ノズル装置12Bの作用により増加した効率の一部を用いて相殺される。したがって、ジェットポンプ11Bは、ノズル装置12Bの作用により増加した残りの効率の増加分の貢献により、ジェットポンプの効率を従来例よりも向上させることができる。
本実施例のジェットポンプ11Bは、スロート22の下端部に流路縮小部23を形成しているので、振動が抑制される。
本実施例は、ジェットポンプの効率を増加させることができ、また、炉心2に供給する冷却水34の流量も増加することができる。ノズル装置12Bを有する本実施例のジェットポンプ11Bを備えた沸騰水型原子炉は、炉心流量の増加幅の大きな出力向上にも容易に対応することができる。ノズル装置12Bを用いることによって、既設の沸騰水型原子炉のジェットポンプのノズルを短時間に交換することができる。さらに、ジットポンプの振動を低く抑えることができる。
本発明の他の実施例である実施例4のジェットポンプを、以下に説明する。本実施例のジェットポンプは、実施例1のジェットポンプ11において、滑り継手26の間隙27からダウンカマ6への漏洩流を完全になくしたジェットポンプである。
間隙27からの漏洩流を完全になくすために、滑り継手26の内部とダウンカマ6の差圧をゼロにすればよい。ジェットポンプ揚程をH(Pa)、流体の密度をρ(kg/m3)、速度をv(m/s)としたとき、滑り継手26の静圧Pi(Pa)は、ダウンカマ6の静圧を基準にすると、(3)式で表される。
Pi=H−0.5ρv2 ……(3)
Pi=0のとき、滑り継手26の内部とダウンカマ6との差圧がゼロとなる。速度vは、ジェットポンプ流量Q(m3/s)、スロート22の出口の内径D6を用いて(4)式で表される。
v=Q/(πD62/4) ……(4)
(3)式及び(5)式からPi=0となる内径D6の値は、(5)式のようになる。
D6=(8ρQ2/πH)0.25 ……(5)
したがって、内径D6が(8ρQ2/πH)0.25≦D6<D5の範囲にあれば、滑り継手26の内部とダウンカマ6の差圧を低減することができる。本実施例において、D6=(8ρQ2/πH)0.25としたときにおけるジェットポンプの軸方向における静圧変化を、図7に一点鎖線で示す。滑り継手26の位置でダウンカマ6との差圧がゼロになっており、滑り継手26の間隙27からの漏洩をなくすことができる。
本実施例は、実施例1で生じる各効果を得ることができる。ジェットポンプの振動は、実施例1よりも小さくすることができる。
本発明の他の実施例である実施例5のジェットポンプを、以下に説明する。本実施例のジェットポンプ11Cは、実施例1のジェットポンプ11においてスロート22を図17に示す流路縮小部23の厚肉部24Aの外面にラビリンスシール85を設けたスロート22に替えた構成を有する。ジェットポンプ11Cの他の構成は、実施例1のジェットポンプ11と同じである。
ジェットポンプ11Cは、流路縮小部23の厚肉部24Aの外面にラビリンスシール85を設けているので、間隙27の流路抵抗が増加し滑り継手26内からダウンカマ6への漏洩流を実施例1〜3よりもさらに低減することができる。このため、ジェットポンプ11Cの振動を抑制することができる。ジェットポンプ11Cは、ノズル装置12を有しているので、ジェットポンプ11で生じる各効果を得ることができる。
流路縮小部23の厚肉部24Aの外面にラビリンスシール85を設けたスロート22は、ジェットポンプ11A及び11Bに適用してもよい。