<発明の実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
<実施形態の構成>
始めに、図1を参照し、本発明の一実施形態に係るハイブリッド車両1の構成について説明する。ここに、図1は、ハイブリッド車両1の構成を概念的に表してなる概略構成図である。
図1において、ハイブリッド車両1は、ECU100、PCU(Power Control Unit)11、バッテリ12、アクセル開度センサ13及び車速センサ14並びにハイブリッド駆動装置10を備えた、本発明に係る「ハイブリッド車両」の一例である。
ECU100は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM等を備え、ハイブリッド車両1の各部の動作を制御することが可能に構成された電子制御ユニットであり、本発明に係る「ハイブリッド車両の制御装置」の一例である。ECU100は、ROMに格納された制御プログラムに従って、後述する変速制御を実行可能に構成されている。
尚、ECU100は、本発明に係る「回転同期制御実行手段」、「トルク調整制御実行手段」、「係合制御手段」、「駆動軸トルク制御手段」、「第1特定手段」及び「第2特定手段」の夫々一例として機能するように構成された一体の電子制御ユニットであり、これら各手段に係る動作は、全てECU100によって実行されるように構成されている。但し、本発明に係るこれら各手段の物理的、機械的及び電気的な構成はこれに限定されるものではなく、例えばこれら各手段は、複数のECU、各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等として構成されていてもよい。
ハイブリッド駆動装置10は、ハイブリッド車両1の車軸たる左車軸SFL(左前輪FLに対応)及び右車軸SFR(右前輪FRに対応)に駆動力としての駆動トルクを供給することによりハイブリッド車両1を駆動するドライブユニットである。ハイブリッド駆動装置10の詳細な構成については後述する。
PCU11は、バッテリ12から取り出した直流電力を交流電力に変換して後述するモータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2に供給すると共に、モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2によって発電された交流電力を直流電力に変換してバッテリ12に供給可能に構成された不図示のインバータを含み、バッテリ12と各モータジェネレータとの間の電力の入出力を、或いは各モータジェネレータ相互間の電力の入出力(即ち、この場合、バッテリ12を介さずに各モータジェネレータ相互間で電力の授受が行われる)を制御可能に構成された制御ユニットである。PCU11は、ECU100と電気的に接続されており、ECU100によってその動作が制御される構成となっている。
バッテリ12は、例えばリチウムイオンバッテリセル等の単位電池セルを複数(例えば、数百個)直列に接続した構成を有し、モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2を力行するための電力に係る電力供給源として機能する電池ユニットであり、本発明に係る「蓄電手段」の一例である。
アクセル開度センサ13は、ハイブリッド車両1の図示せぬアクセルペダルの操作量たるアクセル開度Taを検出可能に構成されたセンサである。アクセル開度センサ13は、ECU100と電気的に接続されており、検出されたアクセル開度Taは、ECU100によって一定又は不定の周期で参照される構成となっている。
車速センサ14は、ハイブリッド車両1の車速Vを検出可能に構成されたセンサである。車速センサ14は、ECU100と電気的に接続されており、検出された車速Vは、ECU100によって一定又は不定の周期で参照される構成となっている。
ここで、図2を参照し、ハイブリッド駆動装置10の詳細な構成について説明する。ここに、図2は、ハイブリッド駆動装置10の構成を概念的に表してなる概略構成図である。尚、同図において、図1と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図2において、ハイブリッド駆動装置10は、エンジン200、動力分割機構300、モータジェネレータMG1(以下、適宜「MG1」と略称する)、モータジェネレータMG2(以下、適宜「MG2」と略称する)、MG2減速機構400、駆動軸500、減速機構600、MG2出力軸700及び係合装置800を備える。
エンジン200は、ハイブリッド車両1の主たる動力源として機能するように構成された、本発明に係る「内燃機関」の一例たるガソリンエンジンである。エンジン200は、公知のガソリンエンジンであり、ここでは、その詳細な構成を割愛するが、エンジン200の出力動力たるエンジントルクTeは、不図示のクランク軸を介して、動力分割機構300の動力入力軸310に伝達される構成となっている。尚、エンジン200は、本発明に係る内燃機関の採り得る実践的態様の一例に過ぎず、本発明に係る内燃機関の実践的態様としては、エンジン200に限らず、公知の各種エンジンを採用可能である。
モータジェネレータMG1は、電気エネルギを運動エネルギに変換する力行機能と、運動エネルギを電気エネルギに変換する回生機能とを備えた電動発電機であり、本発明に係る「第1回転電機」の一例である。
モータジェネレータMG2は、モータジェネレータMG1よりも体格の大きい、本発明に係る「第2回転電機」の一例たる電動発電機であり、モータジェネレータMG1と同様に、電気エネルギを運動エネルギに変換する力行機能と、運動エネルギを電気エネルギに変換する回生機能とを備えた構成となっている。
尚、モータジェネレータMG1及びMG2は、同期電動発電機として構成され、例えば外周面に複数個の永久磁石を有するロータと、回転磁界を形成する三相コイルが巻回されたステータとを備える構成を有するが、無論他の構成を有していてもよい。
動力分割機構300は、本発明に係る「動力伝達機構」の一例たる遊星歯車機構である。
動力分割機構300は、中心部に設けられた、本発明に係る「第1回転要素」の一例たるサンギアS1と、サンギアS1の外周に同心円状に設けられた、本発明に係る「第3回転要素」の他の一例たるリングギアR1と、サンギアS1とリングギアR1との間に配置されてサンギアS1の外周を自転しつつ公転する複数のピニオンギア(不図示)と、これら各ピニオンギアの回転軸を軸支する、本発明に係る「第2回転要素」の更に他の一例たるキャリアC1とを備える。
サンギアS1は、エンジントルクTeに拮抗する反力トルクを負担する反力要素であり、モータジェネレータMG1の出力回転軸たるMG1出力軸320に固定されている。従って、サンギアS1の回転速度は、モータジェネレータMG1の回転速度たるMG1回転速度Nmg1(MG1出力軸320の回転速度を意味する)と等価である。リングギアR1は、動力分割機構300の出力要素であり、動力出力軸330に、その回転軸を共有する形で連結されている。キャリアC1は、先に述べたように、エンジン200のクランク軸に連結された動力入力軸310にその回転軸を共有する形で連結されており、その回転速度は、エンジン200の機関回転速度Neと等価である。
MG2減速機構400は、動力分割機構300の動力出力軸330に連結された第1ギア410、ハイブリッド駆動装置10の動力出力軸たる駆動軸500に連結され、第1ギア410及び第3ギア430と噛合する第2ギア420及び後述する駆動軸側係合要素822に連結され、第2ギア420と噛合する第3ギア430を備えた減速装置である。第2ギア420の回転速度は、駆動軸500の回転速度と等価であり、即ち、ハイブリッド駆動装置10の出力回転速度Noutである。
一方、第3ギア430の歯数は、第2ギア420の歯数よりも多くなっており、駆動軸500の回転速度は、減速された状態で駆動軸側係合要素822に伝達される。他方、第3ギア430の回転速度は、駆動軸側係合要素822が後述するMG2側係合要素821と係合した状態において、モータジェネレータMG2の回転速度たるMG2回転速度Nmg2と等価となる。従って、MG2回転速度Nmg2は、出力回転速度Noutに対し減速される。
尚、MG2減速機構400の構成は、モータジェネレータMG2を減速する機構の採り得る一形態に過ぎず、この種の減速機構は、多様な形態を有し得る。例えば、この種の減速機構は、駆動軸に固定された回転要素と、固定要素に固定された回転要素と、MG2のロータに固定された回転要素とを含む相互に差動回転可能な複数の回転要素を含む一種の差動ギア機構として構成されていてもよい。また、この種の減速機構は、必ずしもハイブリッド駆動装置に備わっておらずともよい。
減速機構600は、先述した左車軸SFL及び右車軸SFRと、駆動軸500との間のトルク伝達を行うギア機構である。
MG2出力軸700は、モータジェネレータMG2のロータに固定された、モータジェネレータMG2の出力回転軸である。
係合装置800は、係合状態においてモータジェネレータMG1をロックする第1係合機構810と、係合状態においてMG2出力軸700を駆動軸500に間接的に接続し、係合解除状態においてMG2出力軸700を駆動軸500から切り離す第2係合機構820と、これら第1及び第2係合機構の状態によって規定される係合装置800の動作状態を選択的に切り替える係合制御機構830とを備えた、本発明に係る「係合装置」の一例である。
第1係合機構810は、MG1側係合要素811、ブレーキ側係合要素812及び第1スリーブ813を備えた、本発明に係る「第1係合機構」の一例たる回転同期噛合式のドグクラッチ機構である。
MG1側係合要素811は、先述したMG1出力軸320に固定され、MG1出力軸320と一体回転する円板状の係合部材である。MG1係合要素811の外周面には、噛合用の歯状部材たる外歯(不図示)が等間隔に配設されている。
ブレーキ側係合要素812は、ハイブリッド車両1のシャシ等、回転速度ゼロの回転要素、即ち、固定要素に固定された、MG1側係合要素811と対向配置された円板状の係合部材である。ブレーキ側係合要素812の外周面には、噛合用の歯状部材たる外歯(不図示)が等間隔に配設されている。尚、MG1側係合要素811及びブレーキ側係合要素812は、本発明に係る「複数の係合要素」の一例である。
第1スリーブ813は、所定のストローク方向(紙面左右方向)に所定量ストローク可能に構成された環状部材である。第1スリーブ813の内周面には、噛合用の歯状部材たる内歯(不図示)が等間隔で配設されている。この内歯は、MG1側係合要素811及びブレーキ側係合要素812に夫々形成された上述の外歯と、回転同期状態において噛合可能に構成されている。図2には、第1スリーブ813がMG1側係合要素811のみと噛合している状態が例示されている。
このように第1スリーブ813がMG1側係合要素811とのみ係合している状態では、MG1側係合要素811とブレーキ側係合要素812とは係合しておらず、MG1側係合要素811はブレーキ側係合要素812の状態に関係なく回転可能である。即ち、この状態は、本発明に係る「係合解除状態」の一例である。一方、第1スリーブ813が上記ストローク方向(より具体的には、紙面左方向)に所定量ストロークした状態では、第1スリーブ813に形成された内歯は、MG1側係合要素811の外歯と共にブレーキ側係合要素812の外歯とも噛合する。この状態では、MG1側係合要素811とブレーキ側係合要素812とは間接的に係合していることになり、モータジェネレータMG1の回転は、ブレーキ側係合要素812によって阻まれ、モータジェネレータMG1はゼロ回転にロックされる。即ち、この状態は、本発明に係る「係合状態」の一例である。
第2係合機構820は、MG2側係合要素821、駆動軸側係合要素822及び第2スリーブ823を備えた、本発明に係る「第2係合機構」の一例たる回転同期噛合式のドグクラッチ機構である。
MG2側係合要素821は、MG2出力軸700に固定され、MG2出力軸700と一体回転する円板状の係合部材である。MG2係合要素821の外周面には、噛合用の歯状部材たる外歯(不図示)が等間隔に配設されている。
駆動軸側係合要素822は、MG2減速機構400の第3ギア430と回転軸を共有する円板状の係合部材である。駆動軸側係合要素822の外周面には、噛合用の歯状部材たる外歯(不図示)が等間隔に配設されている。
第2スリーブ823は、所定のストローク方向(紙面左右方向)に所定量ストローク可能に構成された環状部材である。第2スリーブ823の内周面には、噛合用の歯状部材たる内歯(不図示)が等間隔で配設されている。この内歯は、MG2側係合要素821及び駆動軸側係合要素822に夫々形成された上述の外歯と、回転同期状態において噛合可能に構成されている。図2には、第2スリーブ823がMG2側係合要素821及び駆動軸側係合要素822と噛合している状態が例示されている。
このように第2スリーブ823がMG2側係合要素821及び駆動軸側係合要素822の双方と係合している状態では、MG1側係合要素811とブレーキ側係合要素812とは間接的に係合していることになり、モータジェネレータMG2は、駆動軸500との間でトルクの伝達を行うことが可能である。即ち、この状態は、本発明に係る「係合状態」の他の一例である。一方、第2スリーブ823が上記ストローク方向(より具体的には、紙面左方向)に所定量ストロークした状態では、第2スリーブ823に形成された内歯は、MG2側係合要素821の外歯から解放され、駆動軸側係合用822のみと噛合する。この状態では、MG2側係合要素821と駆動軸側係合要素822とは係合しておらず、モータジェネレータMG2と駆動軸500との間のトルクの伝達は遮断される。即ち、この状態は、本発明に係る「係合解除状態」の他の一例である。
係合制御機構830は、フォーク831、ロッド832及びアクチュエータ833を備える。
フォーク831は、一方の端部が第1係合機構810における第1スリーブ813に固定され、他方の端部が第2係合機構820における第2スリーブ823に固定された駆動部材である。フォーク831とこれら各スリーブとは、上述したストローク方向に一体に往復運動可能に構成される。
ロッド832は、フォーク831に固定され、フォーク831にアクチュエータ833からの動力を伝達する動力伝達部材である。ロッド832は、上述のストローク方向に所定量ストローク可能であり、ロッド832のストローク運動は、ロッド832に連結された上述のフォーク831の往復運動に変換される構成となっている。
アクチュエータ833は、ロッド832に対し、フォーク831をストローク方向にストローク運動させるための駆動力を付与可能な、公知の直動式電磁アクチュエータである。アクチュエータ833は、その駆動力源としてソレノイド(電磁石)を備えており、このソレノイドに対し、駆動電流たる励磁電流が供給されることにより、ロッド832をストローク方向に変位させる電磁力を発生させる仕組みとなっている。尚、アクチュエータ833は、PCU11と電気的に接続されており、PCU11からの電力供給により駆動電流を供給可能である。従って、アクチュエータ833の動作状態もまた、ECU100により制御される構成となっている。尚、ロッド832のストローク方向は、駆動電流の符合を反転させることによって反転する。
このように、係合装置800においては、アクチュエータ833が第1係合機構810と第2係合機構820との間で共有されており、ロッド832のストローク運動により、第1係合機構810及び第2係合機構820の状態が同時に切り替えられる。
ここで特に、図示するように、第1係合機構810が、係合要素たるMG1側係合要素811とブレーキ側係合要素812との係合が解除された係合解除状態にある場合には、第2係合機構820は、係合要素たるMG2側係合要素821と駆動軸側係合要素822とが係合した係合状態となる。反対に、第1係合機構810が、係合要素たるMG1側係合要素811とブレーキ側係合要素812とが係合した係合状態にある場合には、第2係合機構820は、係合要素たるMG2側係合要素821と駆動軸側係合要素822との係合が解除された係合解除状態となる。即ち、係合装置800は、その動作状態が、第1係合機構810が係合状態にあり且つ第2係合機構820が係合解除状態にある第1動作状態と、第1係合機構810が係合解除状態にあり且つ第2係合機構820が係合状態にある第2動作状態との間で選択的に切り替えられる構成となっている。
尚、ハイブリッド駆動装置10においては、図示破線枠A1、A2及びA3に相当する部位に、レゾルバ等の回転センサが付設されており、検出部位の回転速度を検出可能な構成となっている。これら回転センサは、ECU100と電気的に接続された状態にあり、検出された回転速度は、夫々ECU100に対し一定又は不定の周期で送出されている。補足すると、図示破線枠A1に相当する部位の回転速度とは、即ちMG1回転速度Nmg1であり、図示破線枠A2に相当する部位の回転速度とは、即ちMG2回転速度Nmg2である。また、図示破線枠A3に相当する部位の回転速度とは、即ち、出力回転速度Noutである。
動力分割機構300は、上述した構成の下で、エンジン200から動力入力軸310に供給されるエンジントルクTeを、キャリアC1によってサンギアS1及びリングギアR1に所定の比率(各ギア相互間のギア比に応じた比率)で分配し、エンジントルクTeを2系統に分割することが可能である。この際、動力分割機構300の動作を分かり易くするため、リングギアR1の歯数に対するサンギアS1の歯数としてのギア比ρを定義すると、エンジン200からキャリアC1に対しエンジントルクTeを作用させた場合に、サンギアS1に作用するトルクTesは下記(1)式により、また動力出力軸330に現れるエンジン直達トルクTerは下記(2)式により、夫々表される。
Tes=−Te×ρ/(1+ρ)・・・(1)
Ter=Te×1/(1+ρ)・・・(2)
尚、本発明に係る「動力伝達機構」に係る実施形態上の構成は、動力分割機構300のものに限定されない。例えば、本発明に係る動力伝達機構は、複数の遊星歯車機構が組み合わされた複合型遊星歯車機構であってもよい。
<実施形態の動作>
<変速モードの詳細>
本実施形態に係るハイブリッド車両1は、変速モードとして、固定変速モード及び無段変速モードを選択可能である。
ここで、図3を参照し、ハイブリッド車両1の変速モードについて説明する。ここに、図3は、ハイブリッド駆動装置10の一動作状態を例示する動作共線図である。尚、同図において、図2と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図3(a)において、縦軸は回転速度を表しており、横軸には、左から順にサンギアS1(一義的にモータジェネレータMG1)、キャリアC1(一義的にエンジン200)及びリングギアR1(一義的にモータジェネレータMG2及び駆動軸500)が表されている。
ここで、動力分割機構300は、相互に差動関係にある複数の回転要素により構成された回転二自由度の遊星歯車機構であり、サンギアS1、キャリアC1及びリングギアR1のうち二要素の回転速度が定まった場合に、残余の一回転要素の回転速度が必然的に定まる構成となっている。即ち、動作共線図上において、各回転要素の動作状態は、ハイブリッド駆動装置10の一動作状態に一対一に対応する一の動作共線によって表すことができる。
図3(a)において、車速V及び出力回転速度Noutと一義的な回転関係にあるリングギアR1が、図示白丸m1に相当する回転速度で回転しているとする。この場合、モータジェネレータMG1が、図示白丸g1に相当する回転速度で回転していれば、残余の回転要素たるキャリアC1に連結されたエンジン200の回転速度(即ち、機関回転速度Ne)は、必然的に図示白丸e1に相当する回転速度となる。この際、リングギアR1の回転速度を維持したまま(即ち、一義的に出力回転速度Nout及びMG2回転速度Nmg2を維持したまま)モータジェネレータMG1の回転速度を図示白丸g2及び白丸g3に相当する回転速度に夫々変化させれば、エンジン200の回転速度は、夫々図示白丸e2及び白丸e3に相当する回転速度へと変化する。
即ち、この場合、モータジェネレータMG1を回転速度制御機構として機能させることによって、エンジン200を所望の動作点(ここでは、機関回転速度NeとエンジントルクTeの組み合わせにより規定される一動作条件を意味する)で動作させることが可能となる。この状態に対応する変速モードが、無段変速モードである。無段変速モードでは、エンジン200の動作点は、基本的にエンジン200の燃料消費率が最小となる最適燃費動作点に制御される。
無段変速モードにおいては、当然ながらMG1回転速度Nmg1は可変である必要がある。このため、無段変速モードが選択される場合、係合装置800は、第1係合機構810が係合解除状態且つ第2係合機構820が係合状態となる先述した第2動作状態に制御される。
動力分割機構300において、駆動軸500に先に述べたエンジントルクTeに対応するトルクTerを供給するためには、MG1トルクTmg1として、エンジントルクTeに応じてサンギアS1の回転軸たるMG1出力軸320に現れる先述のトルクTesと大きさが等しく且つ符合が反転した(即ち、負トルクである)反力トルクを、モータジェネレータMG1からこのMG1出力軸320に供給する必要がある。この場合、上記白丸g1或いは白丸g2といった正回転領域の動作点において、MG1は正回転負トルクの電力回生状態(即ち、発電状態)となる。このように、無段変速モードにおいては、モータジェネレータMG1を反力要素として機能させることにより、駆動軸にエンジントルクTeの一部を供給しつつ、サンギア軸に分配されるエンジントルクTeの一部で電力回生(発電)が行われる。駆動軸500に対し要求されるトルク(即ち、ハイブリッド車両1の要求トルク)が、エンジン200からの直達トルクで不足する場合には、この回生電力を利用する形で、或いは適宜バッテリ12から電力を持ち出して、モータジェネレータMG2から駆動軸に対し適宜アシストトルクとしてのMG2トルクTmg2が供給される。
一方、例えば高速軽負荷走行時等、出力回転速度Noutが比較的高い割に機関回転速度Neが比較的低い運転条件においては、モータジェネレータMG1が、例えば図示白丸g3の如き負回転領域の動作点となる。モータジェネレータMG1は、エンジントルクTeの反力トルクとして負トルクを出力しているから、この場合、MG1は、負回転負トルクの状態となって力行状態となる。即ち、この場合、モータジェネレータMG1から出力されるMG1トルクTmg1は、ハイブリッド車両1の駆動トルクとして駆動軸に伝達される。
他方で、ハイブリッド駆動装置10では、エンジン直達トルクTerとMG2トルクTmg2との総和がドライバ要求トルクに合致するように、エンジン200、MG1及びMG2が相互に協調的に制御されており、このようにMG1が力行状態に陥った場合、モータジェネレータMG2は、駆動軸500に供給される、要求トルクに対し過剰なトルクを吸収するため負トルク状態となる。この場合、モータジェネレータMG2は、正回転負トルクの電力回生状態となる。このような状態においては、MG1からの駆動力をMG2での電力回生に利用し、この回生電力によりMG1を力行駆動する、といった所謂動力循環と称される非効率な電気パスが生じることとなる。動力循環が生じた状態では、ハイブリッド駆動装置10のシステム効率が低下する。
そこで、ハイブリッド車両1では、予め、例えばこのような動力循環が生じ得るものとして定められた運転領域において、係合装置800の動作状態が、第1係合機構810が係合状態且つ第2係合機構820が係合解除状態となる先述した第1動作状態に制御され、モータジェネレータMG1がロックされる。その様子が図3(b)に示される。第1係合機構810の一方の係合要素は、ゼロ回転固定のブレーキ側係合要素812であるから、第1係合機構810によりモータジェネレータMG1がロック状態に移行すると、モータジェネレータMG1は、図示白丸g4に相当するゼロ回転にロックされる。
この場合、出力回転速度NoutとMG1回転速度Nmg1(Nmg1=0)とにより、残余の機関回転速度Neは、図示白丸e4に相当する回転速度に一義的に決定される。即ち、モータジェネレータMG1がロックされた場合、機関回転速度Neは、車速Vと一義的な出力回転速度Noutにより一義的に決定される(即ち、変速比が一定となる)。この状態に対応する変速モードが固定変速モードである。
固定変速モードでは、本来モータジェネレータMG1が負担すべきエンジントルクTeの反力トルクを、第1係合機構810の物理的な係合力により代替させることができる。即ち、この場合、モータジェネレータMG1を電力回生状態にも力行状態にも制御する必要はなくなり、モータジェネレータMG1を停止させることが可能となる。従って、基本的には、モータジェネレータMG2を稼動させる必要もなくなり、MG2は、言わば空転状態となる。結局、固定変速モードでは、駆動軸に現れる駆動トルクが、エンジントルクTeのうち、動力分割機構300により駆動軸側に分割される直達トルクTerのみとなり、ハイブリッド駆動装置10は、機械的な動力伝達を行うのみとなって、その伝達効率が向上する。
ここで、係合装置800が第1動作状態に移行した場合、第2係合機構820は、MG2側係合要素821と駆動軸側係合要素822との係合が解除された係合解除状態となる。モータジェネレータMG2は、非稼動空転状態にある場合において、そのフリクションや回転慣性により駆動軸500の回転を妨げる単なる慣性体に過ぎなくなるが、このように第1動作状態においてモータジェネレータMG2は駆動軸500から切り離されるから、ハイブリッド駆動装置10における燃料消費率は可及的に抑制される。特に、係合装置800は、係合制御機構830の構成により、第1係合機構810と第2係合機構820とを同時に駆動することができる。そのため、係合装置800は、第1動作状態から第2動作状態への動作状態の切り替え及び第2動作状態から第1動作状態への動作状態の切り替えを効率的に行うことが出来る。更には、各係合機構を単一のアクチュエータ833で駆動することができるため、電力消費率の面においても、車両搭載性の面においても、またコスト面においても、係合機構毎にアクチュエータが設けられる構成と較べて有利である。
<変速制御の概要>
ところで、第1係合機構810及び第2係合機構820は、共に回転同期噛合式のドグクラッチ機構であり、係合要素同士を係合させるにあたっては係合要素同士の回転同期が必要となる。係合要素同士が回転同期していない状態で、スリーブに形成された内歯と係合先の係合要素に形成された外歯とを噛合させることは出来ない、或いは出来たとして、ギア歯同士の接触による物理衝撃及び衝撃音の発生は避けられず、場合によってはギア歯の欠損等を生じかねないからである。また、これら係合機構において、係合要素同士の係合を解除するためには係合要素相互間の伝達トルクを低減する必要がある。回転方向にトルクが伝達されている状態では、アクチュエータ833の駆動力が不足して、スリープをストロークさせることが出来ない、或いは出来たとして、ギア歯同士の接触による物理衝撃及び衝撃音の発生は避けられず、場合によってはギア歯の欠損等を生じかねないからである。
従って、係合装置800において動作状態を選択的に切り替えるにあたっては、実際に各係合機構のスリーブをストロークさせる以前に、係合解除状態から係合状態へ移行する一方の係合機構における係合要素同士の回転同期制御と、係合状態から係合解除状態へ移行する他方の係合機構における係合要素同士の伝達トルク調整制御とが完了している必要がある。
本実施形態に係る回転同期制御とは、係合機構における係合要素の相対回転速度をゼロ回転(即ち、本発明に係る「基準値未満」の一例である)に収束させる制御を意味する。実践的に言えば、この相対回転速度の調整は、各モータジェネレータに接続された係合要素の回転速度の制御により実現される。何故なら、第1係合機構における一方の係合要素は、回転速度がゼロ固定のブレーキ側係合要素812であり、また第2係合機構における一方の係合要素は、回転速度が、その時点のハイブリッド車両1の車軸の回転速度(一義的に車速Vである)に連動した駆動軸側係合要素822だからである。
本実施形態に係るトルク調整制御とは、係合機構において係合要素同士で伝達するトルクを表す伝達トルクをゼロトルクまで低減する制御を意味する。実践的に言えば、この伝達トルクの調整は、各モータジェネレータに接続された係合要素のトルクの制御により実現される。何故なら、第1係合機構における一方の係合要素は、能動的なトルク調整が不可能なゼロ回転固定のブレーキ側係合要素812であり、また第2係合機構における一方の係合要素は、トルクが、その時点のハイブリッド車両1の駆動軸500の出力トルク(即ち、駆動軸トルク)に律束される駆動軸側係合要素822だからである。
ところで、複数の係合機構相互間でアクチュエータ833を共有することにより上述した各種の利益をもたらす一方で、変速装置800は、動作状態が二値的に切り替わる構成に起因して、動作状態切り替え期間の長大化並びに動作状態切り替え期間における振動及び騒音の発生等、各種の実践的問題点を有している。例えば、係合状態へ移行する一方の係合機構における回転同期制御と係合解除状態に移行する他方の係合機構における伝達トルク調整制御とを、時間軸上で双方が重複しないシリーズ制御とすると、動作状態の切り替えに要する期間としての動作状態切り替え期間が無用に長大化する可能性がある。
また、モータジェネレータの回転速度を変化させる過程においては、回転速度の時間微分値に応じたイナーシャトルクが発生する。回転速度を変化させるべくモータジェネレータから出力されるトルクの一部は、このイナーシャトルクと相殺するが、モータジェネレータMG1は、第2動作状態においてMG1出力軸320を介して間接的に駆動軸500に連結されており、このイナーシャトルクは、駆動軸500のトルク変動を招来する。
ここで、この種のトルク変動は、第2動作状態において駆動軸500と間接的に連結されたモータジェネレータMG2から、アシストトルクとしてのMG2トルクTmg2を出力することにより補償可能であるが、伝達トルク調整制御が開始されてしまえば、伝達トルクはゼロトルクへ向けて収束するため、このアシストトルクは駆動軸500のトルク変動の抑制に寄与しない。従って、伝達トルク調整制御と回転同期制御との時間軸上の位置関係が何ら考慮されない場合、駆動軸のトルク変動が無用に継続する可能性がある。
更には、この種の駆動軸のトルク変動は、駆動軸500と間接的に連結された駆動軸側係合要素822のトルク変動を招くから、第2動作状態においてこの駆動軸側係合要素822と係合しているMG2側係合要素821との間の伝達トルクも変化する。この伝達トルクの変化も、トルク調整制御の開始以前においてはMG2トルクTmg2により補償可能であるが、トルク調整制御が開始されてしまえば、その実践は著しく制約を受ける。
このように、実践的見地から言えば、係合装置800の動作状態の切り替え、とりわけ第2動作状態から第1動作状態への切り替え(即ち、MG1非ロック→MG1ロックの切り替え)に際しては、第1係合機構810における回転同期制御と第2係合機構820におけるトルク調整制御との時間軸上の位置関係を最適化する必要がある。本実施形態では、その点に想到し、ECU100により実行される変速制御により、変速装置800における迅速且つ円滑な動作状態の切り替えが実現される。
<変速制御の詳細>
ここで、図4を参照し、変速制御の詳細について説明する。ここに、図4は、変速制御のフローチャートである。
図4において、ECU100は、係合装置800が第2動作状態にあるか否かを判定する(ステップS101)。尚、既に述べたように、第2動作状態とは、第1係合機構810が係合解除状態にあり且つ第2係合機構820が係合状態にある、モータジェネレータMG1がロックされない状態を意味する。係合装置800の動作状態は、アクチュエータ833の動作状態を制御するECU100自身が制御情報として保持している。
係合装置800が第2動作状態にある場合(ステップS101:YES)、ECU100は、ハイブリッド車両1の運転条件が、予めモータジェネレータMG1をロックすべきものとして定められたMG1ロック領域に該当するか否かを判定する(ステップS102)。尚、ステップS102において判定に供される運転条件は一義的でないが、例えば、好適には、ハイブリッド車両1の車速V及び要求駆動力Ft(車軸に供給すべき駆動力)等が採用され得る。また、MG1ロック領域の定義も、実験的、経験的又は理論的に適宜設定可能であるが、例えば、上述したように高速軽負荷走行時に対応する領域に設定されていてもよい。
ハイブリッド車両1の運転条件がMG1ロック領域に該当する場合(ステップS102:YES)、ECU100は、第1係合制御を実行する(ステップS200)。第1係合制御は、第1係合機構810を係合解除状態から係合状態へ切り替える一方で第2係合機構820を係合状態から係合解除状態へ切り替える制御であり、即ち、第2動作状態から第1動作状態へ係合装置800の動作状態を切り替える制御である。第1係合制御が実行されると、処理はステップS101に戻される。尚、第1係合制御については後述する。
ステップS101において、係合装置800が第2動作状態でない場合(ステップS101:NO)、即ち、第1動作状態である場合、ECU100は、MG1ロックの解除要求があるか否かを判定する(ステップS103)。尚、MG1ロックの解除要求は、基本的に、ハイブリッド車両1の運転条件が先のMG1ロック領域以外の領域に該当する場合に発生する。MG1ロックの解除要求がない場合(ステップS103:NO)、ECU100は、処理をステップS101に戻す。即ち、係合装置800は、従前の状態に維持される。
一方、MG1ロックの解除要求がない場合(ステップS103:YES)、ECU100は、第2係合制御を実行する(ステップS300)。第2係合制御は、第1係合機構810を係合状態から係合解除状態へ切り替える一方で第2係合機構820を係合解除状態から係合状態へ切り替える制御であり、即ち、第1動作状態から第2動作状態へ係合装置800の動作状態を切り替える制御である。第2係合制御が実行されると、処理はステップS101に戻される。尚、第2係合制御については後述する。
<第1係合制御の詳細>
次に、図4を参照し、第1係合制御の詳細について説明する。ここに、図4は、第1係合制御のフローチャートである。
図4において、ECU100は、第1相対回転速度フィードバック(以下、適宜「F/B」と略す)制御を開始する(ステップS201)。
ここで、第1相対回転速度F/B制御とは、第1係合機構810における係合要素同士(即ち、ブレーキ側係合要素812とMG1側係合要素811)の相対回転速度たる第1相対回転速度Nr1を、目標値Nr1tgに収束させる制御を意味する。
ここで特に、本実施形態においては、ブレーキ側係合要素812はゼロ回転固定の固定要素であるから、第1相対回転速度Nr1とは、MG1側係合要素812の回転速度、即ち、MG1回転速度Nmg1を意味する。即ち、第1相対回転速度F/B制御とは、MG1回転速度Nmg1を目標値Nr1tgに収束させる制御である。尚、本実施形態において、目標値Nr1tgはゼロである(即ち、本発明に係る「基準値未満」の一例である)。
ECU100は、ステップS201において、第1相対回転速度Nr1(即ち、ここでは、MG1回転速度Nmg1)を偏差とし、係る偏差に基づいて、例えば、比例項(P項)、積分項(I項)及びD項(微分項)等からなる第1相対回転速度F/B制御トルクTfb1を演算し、PCU11の制御を介してモータジェネレータMG1から、この第1相対回転速度F/B制御トルクTfb1を出力させる。尚、ここでは、第1相対回転速度F/B制御のみにより、第1相対回転速度Nr1が目標値Nr1tgに収束せしめられるが、これは一例であって、例えば、この種のF/B制御に加えて、予め設定されたフィードフォワード(以下、適宜「F/F」と略す)制御項に従ったF/F制御が適宜実行されてもよい。
第1相対回転速度F/B制御が開始されると、ECU100は、第1相対回転速度変化率dNr1を算出する(ステップS202)。第1相対回転速度変化率dNr1は、第1相対回転速度Nr1の時間微分値であり、本発明に係る、「第1係合機構における複数の係合要素の相対回転速度の変化率」の一例である。
ECU100は、算出された第1相対回転速度変化率dNr1が基準値X(本発明に係る「基準値」の一例である)未満であるか否かを判定する(ステップS203)。第1相対回転速度変化率dNr1が基準値X以上である場合(ステップS203:NO)、処理はステップS202に戻される。
ここで、モータジェネレータMG1の回転速度を変化させるにあたっては、MG1回転速度Nmg1の時間変化率に比例するイナーシャトルクTintが発生する。MG1トルクTmg1の一部は、このイナーシャトルクTintと相殺されるため、第1相対回転速度F/B制御の実行期間、特に、偏差(即ち、この場合、MG1回転速度Nmg1)が比較的大きい制御開始〜初期等においては顕著に、駆動軸500のトルクたる駆動軸トルクが変動し易い。
また、駆動軸500のトルク変動は、ハイブリッド車両1の走行性能に直接影響するのは勿論であるが、それに加えて、第2係合機構820における係合要素相互間、即ち、駆動軸側係合要素822とMG2側係合要素821との間に伝達されるトルクである第2伝達トルクTtr2の変動を招く要因ともなる。第2伝達トルクTtr2が変動すると、第2スリーブ823に形成された内歯と、一方の係合要素に形成された外歯との接触状態が変化するため、例えば、歯打ち音と称される衝撃音や、ガタ打ちショックと称される物理衝撃が発生し、快適性が低下する要因となる。
このような走行性能及び快適性の低下を防止するため、ECU100は、駆動軸トルク及び第2伝達トルクTtr2の急激な変化が抑制されるように、モータジェネレータMG2の出力トルクたるMG2トルクTmg2を補正する(以下、係るMG2トルクTmg2の制御を適宜「イナーシャトルク補償制御」と称する)。
一方、先に述べたように、最終的にアクチュエータ833を駆動して係合装置800の動作状態を第2動作状態から第1動作状態へ切り替えるにあたっては、第2係合機構820における第2伝達トルクTtr2が、少なくとも係合要素同士の係合を円滑に解除し得る程度に低減されなければならない。このような状態としてのトルク非伝達状態においては、上述したイナーシャトルク補償制御の実行は困難であるか、少なくとも著しい制約を受けることとなる。そこで、上述の基準値Xは、予め実験的に、経験的に又は理論的に、走行性能及び快適性の低下が実践上顕在化しないと判断される程度に小さい値に設定されている。
第1相対回転速度変化率dNr1が基準値X未満である場合(ステップS203:YES)、ECU100は、それ以降の期間における、上述した第1相対回転速度F/B制御トルクTfb1を、その時点の第1相対回転速度F/B制御トルクTfb1の値を上限値として制限する(ステップS204)。即ち、これ以降の期間においては、その時点で発生しているイナーシャトルクTintより大きいイナーシャトルクは基本的に発生しない(尚、F/F制御が並行して実行される場合は、必ずしもその限りでないが、基本的にこの時点のF/F制御項は十分に小さいので問題がない)。
ECU100は、続いて、第2伝達トルクTtr2の指令値である第2伝達トルク指令値Ttr2cmを設定する(ステップS205)と共に、第2伝達トルクTtr2がこの指令値Ttr2cmとなるようにMG2トルクTmg2を調整する、本発明に係る「トルク調整制御」の一例たる第2トルク調整制御を開始する。尚、第2伝達トルクTtr2は、第2係合機構820において係合要素相互間に作用するトルクであり、いずれの係合要素からトルクが供給されるかにより正負の符号が変化し得るトルクであるが、正負の設定基準は、どのように設定されていてもよい。
尚、上述したイナーシャトルク補償制御の概念に鑑みれば、少なくともステップS205の開始時点においては、MG2側係合要素821から駆動軸側係合要素822へトルクが伝達されている(即ち、MG2トルクTmg2は正トルクである)。従って、ステップS205以降のトルク調整制御において、MG2トルクTmg2は、減少側に制御される。
ここで、第2トルク調整制御における、第2伝達トルクTtr2の目標値Ttr2tgはゼロであり(即ち、本発明に係る「基準値未満」の一例)、ステップS205において設定される指令値Ttr2cmは、第2伝達トルクTtr2を係る目標値Ttr2tgに至らしめる過程における、言わば段階的な目標値である。このような段階的な低減措置を講じることによって、第2伝達トルクTtr2或いは駆動軸トルクの急激な変動を抑制することができる。
第2伝達トルク指令値Ttr2cmが設定されると、ECU100は、第2伝達トルク指令値Ttr2cmが最終的な目標値であるゼロに設定されたか否かを判定する(ステップS206)。指令値Ttr2cmが未だ目標値でない場合(ステップS206:NO)、処理はステップS205に戻される。尚、ここでは、トルク指令値による判定としたが、駆動軸トルクとMG2トルクTmg2との差分を計算して、実際の第2伝達トルクTtr2を算出し、判定基準値として利用してもよい。
一方、第2伝達トルク指令値Ttr2cmがゼロである場合(ステップS206:YES)、ECU100は、第1相対回転速度Nr1が基準値Y未満であるか否かを判定する(ステップS207)。尚、基準値Yを設ける代わりに、第1相対回転速度Nr1が目標値Nr1tg(即ち、ゼロ)であるか否かの判定がなされてもよいが、F/B制御の性質上、完全にゼロ回転状態を維持することが困難な場合があるため、この基準値Yは、予め適合された微小な幅を有するゼロ相当値に設定されている。第1相対回転速度Nr1が未だ基準値Y以上である場合には(ステップS207:NO)、処理はステップS205に戻される。
第1相対回転速度Nr1が、既に基準値Y未満であるか、或いは相応の待機時間の末に基準値Y未満まで低下すると(ステップS207:YES)、ECU100は、アクチュエータ833を稼動させ、ロッド832及びフォーク831をストロークさせることによって、第1係合機構810の第1スリーブ813をブレーキ側係合要素812に係合させると同時に、第2係合機構820の第2スリーブ823をMG2側係合要素821から切り離す。即ち、係合装置800の動作状態を第2動作状態から第1動作状態へと切り替える(ステップS208)。動作状態が切り替えられると、第1係合制御は終了する。
次に、図6を参照し、第1係合制御の効果について、視覚的に説明する。ここに、図6は、第1係合制御の実行時におけるハイブリッド駆動装置の一動作特性を例示するタイミングチャートである。
図6において、上段から順に、第1相対回転速度Nr1、イナーシャトルクTint、第1相対回転速度F/B制御トルクTfb1、第2伝達トルクTtr2及び第2相対回転速度Nr2の各時間推移が例示される。尚、第2相対回転速度Nr2とは、第2係合機構820における係合要素同士(即ち、駆動軸側係合要素822及びMG2側係合要素821)の相対回転速度である。
図示時刻T1において、MG1ロック要求に応じた第1係合制御における、第1相対回転速度F/B制御が開始されたとする。第1相対回転速度F/B制御が開始されると、第1相対回転速度Nr1は、目標値であるゼロ回転へ向けて低下し始める。
この第1相対回転速度Nr1がゼロ回転へ向けて収束する過程、特に、その開始〜初期においては、モータジェネレータMG1の回転変化に伴うイナーシャトルクTintが顕著に大きくなる。それに伴い、第1相対回転速度F/B制御トルクTfb1の絶対値も大きくなる。
一方、第2伝達トルクTtr2は、時刻T1以前において、その伝達方向が駆動軸側係合要素822からMG2側係合要素821へ向かう方向である(便宜的に正方向とする)が、時刻T1以降、駆動軸500のトルク変動を補償する必要が生じると、MG2側係合要素821から駆動軸側係合要素822へのトルク伝達が必要となるため、その伝達方向が反転する。ここで、駆動軸500のトルク変動を補償する一方で、上述したイナーシャトルク補償制御の一環として、第2係合機構820における係合要素相互間の接触に伴う物理衝撃や衝撃音の発生が抑制される。このため、第2伝達トルクTtr2は、イナーシャトルクTintが第2伝達トルクTtr2に与える影響を補正した値となり、図示実線の如くに推移する。
尚、イナーシャトルクの影響が考慮されない場合、第2伝達トルクTtr2の時間推移は、図示破線の如くになり、イナーシャトルクTintの分だけ第2伝達トルクTtr2の絶対値が本来あるべき値よりも大きくなる。その結果、第2係合機構820におけるトルクショックが発生し、快適性が低下する。
ここで、本実施形態に係る第1係合制御においては、イナーシャトルクTintが十分に低下した時刻T2において、第2伝達トルクTtr2を目標値(ゼロ)にすべく第2トルク調整制御が開始される。そして、時刻T3において、第2伝達トルクTtr2が目標値たるゼロトルクまで減少し、且つ第1相対回転速度Nr1が基準値Y未満にまで低下すると、アクチュエータ833の駆動制御を介して係合装置800の動作状態が切り替えられる。時刻T4において、動作状態の切り替えが完了すると、MG1側係合要素811はブレーキ側係合要素812に固定されるため、第1相対回転速度Nr1はゼロとなる。また、係合装置800の動作状態切り替えに伴って、駆動軸500とモータジェネレータMG2との回転同期が外れるため、時刻T3において、第2相対回転速度Nr2は上昇し始める。
このように、本実施形態に係る第1係合制御によれば、モータジェネレータMG1のロック要求が発生した場合に、第1係合機構810における第1相対回転速度F/B制御が第2係合機構820における第2トルク調整制御に先んじて実行され、第1相対回転速度Nr1が変化する過程における、駆動軸トルク及び第2伝達トルクTtr2の変動を招くイナーシャトルクが十分に低減されるまでの期間については、第2トルク調整制御の開始が禁止され、第1相対回転速度F/B制御のみが実行される。
このため、当該期間については、モータジェネレータMG2と駆動軸500との間のトルク伝達が制限されずに済み、イナーシャトルクTintによる駆動軸500のトルク変動及び第2係合機構820における衝撃音及び物理衝撃の発生を、MG2トルクTmg2によるイナーシャトルク補償制御により好適に抑制することができる。例えば、第1相対回転速度F/B制御に先んじて第2トルク調整制御が実行された場合、或いは両者が殆ど同時に開始された場合、第2伝達トルクTtr2がゼロトルクに維持される期間が長くなるから、駆動軸トルク及び第2伝達トルクのトルク調整が困難となる期間が長くなり、動力性能や快適性能の低下が無用に顕在化してしまうのである。
一方、イナーシャトルクTintの影響が十分に小さいと判断された(本実施形態においては、第1相対回転速度変化率dNr1で判断される)場合には、速やかに第2係合機構820における第2トルク調整制御が開始されるため、第1係合機構810の係合要素同士が回転同期状態(Nr1<Yとなる状態)まで第2係合機構820におけるトルク調整制御を禁止する場合と較べて、係合装置800の動作状態切り替えに要する時間を短縮化することができる。
即ち、本実施形態に係る第1係合制御によれば、第1係合機構810における第1相対回転速度F/B制御と第2係合機構820における第2トルク調整制御との、時間軸上の位置関係が最適化されることによって、第2動作状態から第1動作状態への係合装置800の動作状態の切り替えを好適に行うことが可能となるのである。
<第2係合制御の詳細>
次に、図7を参照し、第2係合制御の詳細について説明する。ここに、図7は、第2係合制御のフローチャートである。
図7において、ECU100は、第2相対回転速度フィードバック(以下、適宜「F/B」と略す)制御を開始する(ステップS301)。
ここで、第2相対回転速度F/B制御とは、第2係合機構820における係合要素同士(即ち、駆動軸側係合要素822とMG2側係合要素821)の相対回転速度たる第2相対回転速度Nr2を、目標値Nr2tgに収束させる制御を意味する。尚、本実施形態において、目標値Nr2tgはゼロである(即ち、本発明に係る「基準値未満」の一例である)。
ここで特に、駆動軸側係合要素822は、駆動軸500と間接的に連結されており、その回転速度の制御は、ハイブリッド車両1の走行状態に顕著に影響する。従って、実践的には、第2相対回転速度F/Bは、モータジェネレータMG2の回転速度たるMG2回転速度Nmg2を駆動軸500の回転速度たる出力回転速度Noutに対応する駆動軸側係合要素822の回転速度に収束させる制御である。
第2相対回転速度F/B制御が開始されると、ECU100は、第2相対回転速度Nr2が基準値Z未満であるか否かを判定する(ステップS302)。ここで、基準値Zは、係合要素同士が回転同期状態にあるか否かを規定する先述した基準値Yよりも大きい、本発明に係る「所定値」の一例である。
係合装置800が第1動作状態にある場合、モータジェネレータMG2は、駆動軸500から切り離されている。従って、第2係合制御においては、モータジェネレータMG2の回転速度を変化させる過程におけるイナーシャトルクが駆動軸500に影響を与えることがなく、第1係合制御のように、イナーシャトルクを考慮した基準値の設定は必要ない。一方で、第1係合機構810において係合要素同士がトルク非伝達状態となる期間は、第1係合制御と同様に短い方がよい。基準値Zの値は、これらの点を考慮し、予め実験的に、経験的に又は理論的に、第1係合機構810において係合要素相互間に伝達されるトルクである第1伝達トルクTtr1をゼロトルクへ向けて調整する第1トルク調整制御と、上記第2相対回転速度F/B制御とが略同時に終了するように決定されている。
次に、ECU100は、第1伝達トルクTtr1の指令値である第1伝達トルク指令値Ttr1cmを設定する(ステップS303)と共に、第1伝達トルクTtr1がこの指令値Ttr1cmとなるようにMG1トルクTmg1を調整する、本発明に係る「トルク調整制御」の一例たる第1トルク調整制御を開始する。尚、第1伝達トルクTtr1は、第1係合機構810において係合要素相互間に作用するトルクであり、いずれの係合要素からトルクが供給されるかにより正負の符号が変化し得るトルクであるが、正負の設定基準は、どのように設定されていてもよい。
ここで、第1トルク調整制御における、第1伝達トルクTtr1の目標値Ttr1tgはゼロであり(即ち、本発明に係る「基準値未満」の一例)、ステップS303において設定される指令値Ttr1cmは、第1伝達トルクTtr1を係る目標値Ttr1tgに至らしめる過程における、言わば段階的な目標値である。
第1伝達トルク指令値Ttr1cmが設定されると、ECU100は、第1伝達トルク指令値Ttr1cmが最終的な目標値であるゼロに設定されたか否かを判定する(ステップS304)。指令値Ttr2cmが未だ目標値でない場合(ステップS304:NO)、処理はステップS303に戻される。尚、ここでは、トルク指令値による判定としたが、ブレーキ側係合要素812が負担する反力トルクを計算し、MG1トルクTmg1との差分として実際の第1伝達トルクTtr1を算出し、判定基準値として利用してもよい。
一方、第1伝達トルク指令値Ttr1cmがゼロである場合(ステップS303:YES)、ECU100は、第2相対回転速度Nr2が第1係合制御と同様の基準値Y(Y<Z)未満であるか否かを判定する(ステップS305)。尚、基準値Yを設ける代わりに、第2相対回転速度Nr2が目標値Nr2tg(即ち、ゼロ)であるか否かの判定がなされてもよいが、F/B制御の性質上、完全にゼロ回転状態を維持することが困難な場合があるため、この基準値Yは、予め適合された微小な幅を有するゼロ相当値に設定されている。第2相対回転速度Nr2が未だ基準値Y以上である場合には(ステップS305:NO)、処理はステップS303に戻される。
第2相対回転速度Nr2が、既に基準値Y未満であるか、或いは相応の待機時間の末に基準値Y未満まで低下すると(ステップS305:YES)、ECU100は、アクチュエータ833を稼動させ、ロッド832及びフォーク831をストロークさせることによって、第2係合機構820の第2スリーブ823をMG2側係合要素821に係合させると同時に、第1係合機構810の第1スリーブ813をブレーキ側係合要素812から切り離す。即ち、係合装置800の動作状態を第1動作状態から第2動作状態へと切り替える(ステップS306)。動作状態が切り替えられると、第2係合制御は終了する。
次に、図8を参照し、第2係合制御の効果について、視覚的に説明する。ここに、図8は、第2係合制御の実行時におけるハイブリッド駆動装置の一動作特性を例示するタイミングチャートである。尚、同図において、図6と重複する箇所には、同一の符合を付してその説明を適宜省略することとする。
図8において、上段から順に、第2相対回転速度Nr2、第2相対回転速度F/B制御トルクTfb2、第1伝達トルクTtr1及び第1相対回転速度Nr1の各時間推移が例示される。尚、第2相対回転速度F/B制御トルクTtb2とは、第2係合機構820におけるMG2側係合要素821の回転速度を駆動軸側係合要素822の回転速度に収束させるための第2相対回転速度F/B制御に使用されるMG2トルクTmg2を意味する。
図示時刻T5において、MG1ロック解除要求に応じた第2係合制御における、第2相対回転速度F/B制御が開始されたとする。第2相対回転速度F/B制御が開始されると、第2相対回転速度Nr2は、目標値であるゼロ回転へ向けて低下し始める。この第2相対回転速度Nr2がゼロ回転へ向けて収束する過程、特に、その開始〜初期においては、モータジェネレータMG2の回転変化に伴うイナーシャトルクTintが顕著に大きくなる。それに伴い、第2相対回転速度F/B制御トルクTfb2の絶対値も大きくなる。尚、このイナーシャトルクは、先述した通り、駆動軸500のトルクに影響しない。
一方、第1係合機構810のブレーキ側係合要素811は、ゼロ回転固定のブレーキ要素であり、また上述した第2相対回転速度F/B制御は、駆動軸500のトルクに影響を与えない。従って、第2相対回転速度F/B制御が先行して実行される過程において、第1伝達トルクTtr1は、固定変速モードにおける反力相当値に維持される。
このように第2相対回転速度F/B制御が先行する過程における時刻T6において、第2相対回転速度Nr2が基準値Z未満となると、第1伝達トルクTtr1を目標値(ゼロ)にすべく第1トルク調整制御が開始される。第1トルク調整制御が開始されると、第1伝達トルクTtr1の絶対値は、ゼロトルクへ向けて減少し始める。
ここで、時刻T7において、第1伝達トルクTtr1が目標値たるゼロトルクまで減少し、且つ第1相対回転速度Nr1が基準値Y未満にまで低下すると、アクチュエータ833の駆動制御を介して係合装置800の動作状態が切り替えられる。時刻T8において、動作状態の切り替えが完了すると、MG2側係合要素821は駆動軸側係合要素822に固定されるため、第2相対回転速度Nr2はゼロとなる。また、係合装置800の動作状態切り替えに伴って、ブレーキ側係合要素812とモータジェネレータMG1との回転同期が外れるため、時刻T7において、第1相対回転速度Nr1は上昇し始める。
このように、本実施形態に係る第2係合制御によれば、モータジェネレータMG1のロック解除要求が発生した場合に、第2係合機構820における第2相対回転速度F/B制御が第1係合機構810における第1トルク調整制御に先んじて実行され、第2相対回転速度Nr2が基準値Z未満の領域に低下するまでの期間については、第1トルク調整制御の開始が禁止され、第2相対回転速度F/B制御のみが実行される。
ここで特に、基準値Zは、予め第1トルク調整制御と第2相対回転速度F/B制御とが略同時に終了するように決定されている。
従って、一方で、第1トルク調整制御の実行過程において、第1係合機構810における第1伝達トルクTtr1がゼロトルクに維持される期間は可及的に短くなり、固定変速モードにおいて必要とされる反力トルクが変化した場合等に第1伝達トルクTtr1が変動することによる、駆動軸500のトルク変動或いは第1係合機構810における衝撃音及び物理衝撃の発生が抑制される。また、他方で、第1トルク調整制御と第2相対回転速度F/B制御とを重複させ得る期間であるにもかかわらず第1トルク調整制御が開始されない事態も防止されるから、係合装置800の動作状態の切り替えに要する期間が無用に長大化することも防止される。
即ち、本実施形態に係る第2係合制御によれば、第2係合機構820における第2相対回転速度F/B制御と第1係合機構810における第1トルク調整制御との、時間軸上の位置関係が最適化されることによって、第1動作状態から第2動作状態への係合装置800の動作状態の切り替えを好適に行うことが可能となるのである。
<第2実施形態>
本発明に係る動力伝達機構の態様は、図2に例示するものに限定されない。ここで、図9を参照し、本発明の第2実施形態に係るハイブリッド駆動装置20の構成について説明する。ここに、図9は、ハイブリッド駆動装置20の構成を概念的に表してなる概略構成図である。尚、同図において、図2と重複する箇所には、同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図9において、ハイブリッド駆動装置20は、MG2減速機構400を備えておらず、第2係合機構820が係合状態を採る第2動作状態において、モータジェネレータMG2の出力回転軸たるMG2出力軸700が、動力分割機構300のリングギアR1に連結された駆動軸500に直結される構成となっている。
このような構成においても、第2係合制御における第2相対回転速度F/B制御実行時における、MG2回転速度Nmg2の目標値がMG2減速機構400のギア比に相当する分変化するだけであって、上述した第1係合制御及び第2係合制御を適用することが可能である。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うハイブリッド車両の制御装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。