JP2012111978A - 強度ばらつきの小さい高強度冷延鋼板鋼板の製造方法 - Google Patents

強度ばらつきの小さい高強度冷延鋼板鋼板の製造方法 Download PDF

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Abstract


【課題】連続焼鈍ラインにおける熱処理温度の変動に伴う組織ばらつきやその組織ばらつきに起因する機械的特性ばらつきを低減することが可能な高強度鋼板の製造方法を提供する。
【解決手段】フェライトと焼戻しマルテンサイトを主体とする複合組織を有する高強度冷延鋼板を連続焼鈍ラインで製造するに際し、前記連続焼鈍ラインが、加熱工程、焼入れ開始温度Tqまでの緩冷工程、急冷による焼入れ工程、および、再加熱による焼戻し工程を順次経るものであり、前記焼入れ工程の直後(図中の(1)の時点)に磁気的特性により測定した、鋼板のフェライト分率Vfを、予め設定しておいた、製品鋼板の機械的特性の目標値を達成するために必要なフェライト分率の目標値Vf0と比較し、この目標値Vf0からの偏差ΔVf=Vf−Vf0が0に近づくように、前記焼入れ開始温度Tqを調整する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、自動車用等に用いられる高強度鋼板を連続焼鈍により製造する高強度鋼板の製造方法、より詳しくは、組織ばらつきやその組織ばらつきに起因する機械的特性ばらつきを低減することが可能な高強度鋼板の製造方法に関するものである。
自動車用等に用いられる高強度鋼板の代表例として、フェライトおよびマルテンサイトからなる組織を有する複合組織鋼板(DP鋼板)が従来から知られている。このDP鋼板は、軟質なフェライトと硬質なマルテンサイトが混在する組織とすることにより、軟質なフェライトで延性(伸び)を確保し、硬質なマルテンサイトで強度を確保しようというものである。したがって、このDP鋼板は、強度と伸びの両立が可能であることから優れた成形性が要求される高強度自動車鋼板等として近年多く採用されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
しかしながら、近年の技術開発や外観デザインの向上により、自動車等の形状は年々複雑な形状になってきており、このような複雑な形状の自動車部材等をプレス成形により成形不良なく製造するためには、成形後の形状凍結のばらつきを小さくして安定的な成形加工を実現することが必要となる。鋼板に要求される機械的特性(YP、TS、EL、λ等)のうち、降伏強度YP(0.2%耐力σ0.2)は形状凍結性の支配因子として最も重要な特性であるため、上述のような形状凍結性への要求から、降伏強度YSのばらつきの小さい高強度冷延鋼板が求められている。
軟質なフェライトと硬質なマルテンサイトが共存する複合組織鋼板であるDP鋼板において、降伏強度YPを決定する最も重要な組織パラメータはフェライト分率であり、形状凍結性のばらつきを低減するためには、フェライト分率のばらつきを極力小さくする必要がある。しかしながら、このフェライト分率は、鋼板の温度履歴によって大きく変化するため、従来の手法では所望のばらつき範囲に抑えることは非常に難しい事項である。これは、DP組織を形成する熱処理工程でも不可避的な温度変動を生じてしまうことが回避できないからである。
ここで、本出願人は、高強度冷延鋼板コイルを製造するに当り、所定の化学成分組成を有する素地鋼板を加熱してオーステナイト単相領域であるAc3点〜(Ac3点+30℃)の温度Tssで30〜300秒保持した後、平均冷却速度が異なる2段階の制御冷却をおこなって(オーステナイト+フェライト)の二相領域の温度Tqまで冷却するに際し、前段の平均冷却速度CR1と後段の平均冷却速度CR2との間に、CR1>CR2の関係を満足させると共に、CR2<5℃/秒の条件で冷却を行ない、その後前記温度Tqからマルテンサイトの変態開始温度Ms点以下まで100℃/秒以上の平均冷却速度で急冷し、引き続き450〜550℃の温度範囲に30〜600秒の時間、再加熱保持することで、引張強度が980MPa以上でコイル内での強度ばらつきの小さい高強度冷延鋼板コイルが製造できることを見出し、特許出願を行った(特許文献4参照)。
しかしながら、上記特許文献4に記載の製造方法も、あらかじめ目標の熱処理温度(板温)を設定し、その目標温度に制御することを前提とするものである。したがって、実際の連続焼鈍ライン(CAL)を用いた操業においては、熱処理条件(ヒートパターン)を一定にしていても、鋼板のサイズ(板幅、板厚等)や通板速度、加熱炉の状態変化により板温変動が不可避的に生じる。オーステナイト単相域温度で加熱する場合には、板温が変動するとオーステナイト粒径が変化し、その結果としてフェライト分率が変動する。(オーステナイト+フェライト)2相域温度で加熱する場合には、板温が変動すると直接フェライト分率が変動するため、オーステナイト単相域加熱よりもさらに板温変動の影響が大きい。このため、オーステナイト単相域加熱、2相域加熱のいずれにおいても上記板温変動に起因する機械的特性(特に降伏強度YS)のばらつきは必然的に残ってしまうという問題があった。
また、熱処理完了後の最終製品鋼板の機械的特性または材料組織を、逐次オフラインでまたはオンラインで測定し、この測定結果に基づき板温をフィードバック制御する方法が考えられる(材料組織のオンライン測定方法として、例えば、特許文献5〜8参照)。しかしながら、すでに通板が完了した部分には機械的特性のばらつきは残る。このため、このような機械的特性のばらつきが残る部分を含めて製品化すると、製品鋼板の機械的特性(特に降伏強度YP)に必然的にばらつきが残ってしまう。いっぽう、上記機械的特性のばらつきが残る部分を除いて(カットして)残りのばらつきの少ない部分だけを製品化することも考えられるが、この場合には製品鋼板の製造歩留が低下し、製造コストが増大する問題がある。
特開2009−215571号公報 特開2009−215572号公報 特開2004−18911号公報 特開2010−159453号公報 特開昭61−62856号公報 特開平3−123853号公報 特開平5−107229号公報 特許第3755403号公報
本発明は、上記従来の問題を解決せんとしてなされたもので、その目的は、実際の連続焼鈍ラインにおける熱処理温度の変動に伴う組織ばらつきやその組織ばらつきに起因する機械的特性ばらつきを低減することが可能な高強度鋼板の製造方法を提供することにある。
請求項1に記載の発明は、
質量%で(以下、化学成分について同じ。)、C:0.05〜0.3%、Si:0.01〜3.0%、Mn:0.5〜3%、Al:0.01〜0.1%、残部Feおよび不可避的不純物からなる成分組成を有するとともに、フェライトと焼戻しマルテンサイトを主体とする複合組織を有する高強度冷延鋼板を連続焼鈍ラインで製造する高強度冷延鋼板の製造方法であって、
前記連続焼鈍ラインが、加熱工程、焼入れ開始温度Tqまでの緩冷工程、急冷による焼入れ工程、および、再加熱による焼戻し工程を順次経るものであり、
前記焼入れ工程の直後に鋼板のフェライト分率Vfを磁気的特性により測定し、このフェライト分率Vfを、予め設定しておいた、製品鋼板の機械的特性の目標値を達成するために必要なフェライト分率の目標値Vf0と比較し、このフェライト分率の目標値Vf0からの偏差ΔVf=Vf−Vf0が0に近づくように、前記焼入れ開始温度Tqを調整することを特徴とする強度ばらつきの小さい高強度冷延鋼板鋼板の製造方法である。
請求項2に記載の発明は、
上記連続焼鈍ラインにより高強度冷延鋼板を製造するに際し、あらかじめ、この連続焼鈍ラインによる試験操業により、または、この連続焼鈍ラインの熱処理条件を模擬したラボ試験により、前記焼入れ開始温度Tqと前記焼入れ直後の鋼板のフェライト分率Vfとの関係式を求めておき、この関係式を用いて、前記焼入れ開始温度Tqの調整量を決定する請求項1に記載の製造方法である。
請求項3に記載の発明は、
成分組成が、さらに、Ti、Nb、VおよびZrよりなる群から選ばれる1種または2種以上を合計で0.01〜1%含むものである請求項1または2に記載の製造方法である。
請求項4に記載の発明は、
成分組成が、さらに、Niおよび/またはCuを合計で1%以下(0%を含まない)含むものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の成形性に優れた高強度鋼板である。
請求項5に記載の発明は、
成分組成が、さらに、Cr:2%以下(0%を含まない)および/またはMo:1%以下(0%を含まない)を含むものである請求項1〜4のいずれか1項に記載の成形性に優れた高強度鋼板である。
請求項6に記載の発明は、
成分組成が、さらに、B:0.0001〜0.005%を含むものである請求項1〜5のいずれか1項に記載の成形性に優れた高強度鋼板である。
請求項7に記載の発明は、
成分組成が、さらに、Caおよび/またはREMを合計で0.003%以下(0%を含まない)含むものである請求項1〜6のいずれか1項に記載の成形性に優れた高強度鋼板である。
本発明によれば、焼入れの直後(すなわち焼戻し前)に鋼板のフェライト分率Vfを磁気的特性により測定し、このフェライト分率Vfを、予め設定しておいた、製品鋼板の機械的特性の目標値を達成するために必要なフェライト分率の目標値Vf0と比較し、このフェライト分率の目標値Vf0からの偏差ΔVf=Vf−Vf0が0に近づくように、前記焼入れ開始温度Tqを逐次変更するようにしたことで、すでに通板が完了した、ばらつきが残る部分を可及的に少なくすることが可能となり、焼戻し後の最終製品鋼板の機械的特性のばらつきをさらに小さくできるようになった。
DP鋼板を連続焼鈍ラインで製造する際の基本的なヒートパターンを示すグラフ図である。 実施例における、連続焼鈍ラインを模擬したヒートパターンを示すグラフ図である。 フェライト分率Vfと各機械的特性(YP、TSおよびEL)との関係を示すグラフ図である。 フェライト分率Vfと焼入れ開始温度Tqとの関係を示すグラフ図である。
上述したように、DP鋼板の強度ばらつきを小さくするためには、フェライト分率のばらつきを低減することが重要である。しかしながら、上述のようにDP鋼板を実際(実機)の連続焼鈍ラインで製造する際には、連続焼鈍時の温度条件に変動が生じることは避けられないのが実情である。そこで、本発明者らは、連続焼鈍時の温度条件に変動が生じても最終的に製造されたDP鋼板の強度ばらつきを小さくする方法について鋭意検討を行った。その結果、連続焼鈍により鋼板の組織が形成される途中である、水焼入れ(急冷による焼入れ工程)の直後にフェライト分率を測定し、この測定結果に基づいて焼入れ開始温度Tqをフィードバック制御することが有効であり、これにより最終製品の機械的特性のばらつき、特に降伏強度YPのばらつきが大幅に低減できることを見出した。
フェライトと焼戻しマルテンサイトを主体とする複合組織鋼板(DP鋼板)を連続焼鈍ラインで製造する際には、図1に示すように、加熱工程、焼入れ開始温度Tqまでの緩冷工程、急冷による焼入れ工程、および、再加熱による焼戻し工程を順次経ることとなる。各工程においては以下の条件が推奨される。
〔加熱工程〕
まず、加熱工程において、例えば、オーステナイト単相域温度である860〜940℃まで昇温して、その温度(加熱温度)で30〜300s保持(均熱)することで、鋼板の組織はオーステナイト単相組織となる。
〔緩冷工程〕
つぎの緩冷工程において、例えば、上記加熱温度から焼入れ開始温度Tq:500〜700℃までを3〜20℃/sの平均冷却速度で緩冷(徐冷)することで、鋼板の組織中にフェライトが析出する。
〔焼入れ工程〕
そして、その後の急冷による焼入れ工程において、例えば、焼入れ開始温度Tqから常温までを50℃/s以上の冷却速度で急冷することで、鋼板は主としてフェライトとマルテンサイトからなる組織となる。
〔焼戻し工程〕
さらに、再加熱による焼戻し工程において、250〜550℃まで再加熱し、その温度(再加熱温度)で30〜120s保持した後、常温まで冷却することで、マルテンサイトが焼き戻され(焼戻しマルテンサイトとなり)、鋼板の強度が調整される。
上記連続焼鈍ラインでの熱処理により得られた最終製品の組織については、鋼板の成分組成や熱処理条件等によっては、フェライトおよび焼戻しマルテンサイトの他、ベイナイト、パーライト、セメンタイト等の他の組織を含有する場合があるが、これらの組織が少量含まれる場合においても本発明の効果はされるものであり、したがって、これらは本発明の範疇に含まれる。なお、フェライトおよび焼戻しマルテンサイト以外の組織の許容範囲は、面積率で10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下である。
〔磁気的特性によるフェライト分率の測定〕
そして、焼入れ工程の直後(すなわち焼戻し工程の前;図1の(1)の時点)に、鋼板のフェライト分率Vfを磁気的特性により測定する。ここに、フェライト分率Vfは、鋼板の全組織に対する面積率で定義される値である。なお、製品鋼板のフェライト分率は、焼入れ工程までで決定され、その後の焼戻し(再加熱)工程では変化しないので、焼入れ直後の鋼板のフェライト分率Vfを測定することで、製品鋼板のフェライト分率を予測することができる。
ここで、DP鋼板中の主要組織であるフェライトとマルテンサイトは、ともに磁性体であるが、フェライトの方がマルテンサイトより強磁性を有することから、フェライト分率Vfが高くなるほどDP鋼板の磁性が強くなり、鋼板中のフェライト分率Vfと鋼板全体の磁性との間には一定の相関関係が存在する。
したがって、上記原理を利用して、たとえば、連続焼鈍ラインの焼入れ工程の直後(すなわち焼戻し工程の前)の鋼板が磁場内を通過するように構成し、その鋼板の透磁率をオンラインで測定することで、この透磁率から、焼入れ直後の鋼板のフェライト分率Vfを推定(測定)することができ、すなわち製品鋼板のフェライト分率を予測することができる(例えば、特許文献5〜8参照)。なお、透磁率とフェライト分率との相関関係は、あらかじめ、たとえば以下のようにして求めておくとよい。
連続焼鈍ラインの熱処理条件(加熱工程から焼戻し(再加熱)工程までの全工程)を模擬したラボ試験において、焼入れ開始温度Tqを種々変更してフェライトとマルテンサイトの存在比率が異なる複数の製品鋼板を作製し、それらの製品鋼板のそれぞれについて所定の磁場を掛けて透磁率を測定するとともに、周知の方法でミクロ組織の定量化を行うことによりフェライト分率を求める。そして、このようにして得られた透磁率とフェライト分率のデータを統計解析することにより両者の相関関係を求めることができる。
〔焼入れ開始温度Tqの調整〕
つぎに、上記のようにして推定(測定)した、焼入れ直後の鋼板のフェライト分率Vfを、あらかじめ設定しておいた、製品鋼板の機械的特性の目標値を確保するために必要なフェライト分率の目標値Vf0と比較し、このフェライト分率の目標値Vf0からの偏差ΔVf=Vf−Vf0が0に近づくように、焼入れ開始温度Tqを調整する。
ここで、「製品鋼板の機械的特性」としては、形状凍結性の支配因子として最も重要な特性である降伏強度YPを選択することが最も推奨されるが、降伏強度YPよりも精度が劣るものの、測定が迅速に行える引張強度TSを選択してもよい。以下、製品鋼板の機械的特性として降伏強度YPを選択した場合を例に挙げて説明を進める。
また、「製品鋼板の降伏強度YPの目標値YP0を達成するために必要なフェライト分率の目標値Vf0」は、たとえば以下のようにして設定すればよい。
上記ラボ試験で作製した複数の製品鋼板について、さらに降伏強度YPを測定し、上記ミクロ組織の定量化により求めたフェライト分率との関係式をあらかじめ求めておく。そして、このあらかじめ求めた関係式を用いて目標とする降伏強度YP0が得られるフェライト分率の目標値Vf0を設定すればよい。
そして、磁気的特性により測定された焼入れ直後の鋼板のフェライト分率Vfを、上記のようにしてあらかじめ設定しておいた、製品鋼板の機械的特性の目標値を達成するために必要なフェライト分率の目標値Vf0と比較し、このフェライト分率の目標値Vf0からの偏差ΔVf=Vf−Vf0が0に近づくように焼入れ開始温度Tqを調整する。
ここで、焼入れ開始温度Tqの調整はたとえば以下のように行えばよい。
上記ラボ試験の結果より、焼入れ開始温度Tqとフェライト分率Vfとの関係式をあらかじめ求めておく。そして、この関係式を用いて、上記偏差ΔVfに相当する、焼入れ開始温度Tqの調整量ΔTqを求める。たとえば、上記関係式がTq=a・Vf+bのような1次式で表現できる場合は、ΔTq=a・ΔVfが得られる。そして、この調整量ΔTqの分だけ焼入れ開始温度Tqを変更(調整)することにより、調整後の製品鋼板のフェライト分率Vfを目標値Vf0に一気に近づけ、ほぼ一致させる(許容範囲内で一致させる)ことができる。なお、偏差ΔVfが大きく1回の焼入れ開始温度Tqの調整だけでは製品鋼板のフェライト分率Vfを目標値Vf0に十分に一致させることができない場合でも、この調整を繰り返すことにより、すぐに目標値Vf0にほぼ一致させることができる。
上記のように、連続焼鈍ラインの途中の焼入れ直後に磁気的特性によりフェライト分率Vfをオンラインで測定し、これに基づいて焼入れ開始温度Tqをフィードバック制御することで、温度制御の時間遅れがほとんど発生しない。この結果、連続焼鈍ラインの出口(図1の(2)の時点)でフェライト分率を測定する場合に比べて、すでに通板が完了した、機械的特性のばらつきが残る部分をほとんどなくせるので、製品鋼板のばらつきを大幅に低減できるようになった。
次に、本発明の製造方法で製造される高強度冷延鋼板の化学成分組成について説明する。本発明の製造方法で製造される高強度冷延鋼板は先に説明した製造方法が適切であっても、それぞれの化学成分(元素)の含有量が適正範囲内でなければ、所望の作用効果を奏することができない。したがって、本発明の製造方法で製造される高強度冷延鋼板は、それぞれの化学成分の含有量が、以下に説明する範囲内にあることも要件とする。なお、下記の化学成分の含有量(%)は全て質量%を示す。
C:0.05〜0.3%
Cは、マルテンサイトの分率およびその硬さに影響し、降伏強度および伸びフランジ性に影響する重要な元素である。0.05%未満ではマルテンサイトの分率が不足して十分な降伏強度を確保することができなくなる。一方、0.3%を超えるとマルテンサイトの硬さが硬くなりすぎて伸びフランジ性が確保できなくなるほか、溶接性にも悪影響を及ぼすようになる。したがって、Cの含有量は0.05〜0.3%とする必要がある。Cの含有量の好ましい下限は0.07%、好ましい上限は0.2%である。
Si:0.01〜3.0%
Siは、鋼を溶製する際に脱酸性元素として有効に作用するほか、固溶強化元素として伸びを劣化させずに降伏強度を高めるとともに、焼戻し時におけるマルテンサイト中に存在するセメンタイト粒子の粗大化を抑制する作用も有し、このように粗大なセメンタイト粒子の生成を抑制することで、伸びフランジ性を向上させる効果も有する有用な元素である。0.01%未満ではこのような作用を有効に発揮させることができない。しかしながら、Siによる添加効果は約3%で飽和するので、上限を3%と定めた。Siの含有量の好ましい下限は0.1%、好ましい上限は2.5%である。
Mn:0.5〜3.0%
Mnは、Siと同様に、固溶強化元素として伸びを劣化させずに降伏強度を高めると共に、焼戻し時におけるマルテンサイト中に存在するセメンタイト粒子の粗大化を抑制する作用も有し、粗大なセメンタイト粒子の生成を抑制することで、伸びフランジ性を向上させる効果も有する有用な元素である。また、焼入れ性を高めてマルテンサイトの分率の確保に寄与することで、降伏強度と伸びフランジ性を向上させる効果も有する。0.5%未満ではこのような作用を有効に発揮させることができない。しかしながら、Mn含有量が過剰になると、延性を低下させて加工性に悪影響を及ぼすようになるので、3%を上限とする。Mnの含有量の好ましい下限は0.7%、好ましい上限は2.5%である。
Al:0.01〜0.1%
Alは脱酸作用を有する元素であり、Al脱酸を行う場合は0.01%以上のAlを添加する必要がある。しかしAl含有量が多すぎると、上記効果が飽和するばかりか、非金属系介在物源となって物性や表面性状を劣化させるので、0.1%を上限とする。Alの含有量の好ましい上限は0.03%、好ましい下限は0.08%である。
以上が本発明で規定する必須の含有元素であって、残部は鉄および不可避的不純物である。また、さらに以下に示す元素を積極的に含有させることも有効であり、含有される化学成分(元素)の種類によって本発明の製造方法で製造される高強度鋼板の特性がさらに改善される。
本発明の製造方法で製造される高強度冷延鋼板には、Ti、Nb、VおよびZrよりなる群から選ばれる1種または2種以上を合計で0.01〜0.1%含有させることが有効である。さらには、Niおよび/またはCuを合計で1%以下(0%を含まない)含有させることが有効である。またさらには、Cr:2%以下(0%を含まない)および/またはMo:1%以下(0%を含まない)含有させることが有効である。またさらには、Bを0.0001〜0.005%含有させることが有効である。またさらには、Caおよび/またはREMを合計で0.003%以下(0%を含まない)含有させることが有効である。これらの元素を含有させるときの範囲設定理由は以下の通りである。
Ti、Nb、VおよびZrよりなる群から選ばれる1種または2種以上を合計で0.01〜1%
これらの元素は、CやNと炭化物、窒化物、炭窒化物などの析出物を形成し、強度向上に寄与するほか、熱延時における結晶粒を微細化して伸びを高める作用も有している。こうした効果は、これらの合計(1種または2種以上)で0.01%以上含有させることによって有効に発揮される。より好ましい含有量は0.03%以上である。しかし、多すぎると伸びおよび伸びフランジ性をかえって劣化させるので、これらの合計含有量は1%以下、より好ましくは0.7%以下に抑えるべきである。
Niおよび/またはCuを合計で1%以下(0%を含まない)
これらの元素は、強度−延性バランスを高く維持したまま、高強度化を実現するのに有効な元素である。こうした効果はそれらの含有量が増加するにつれて増大するが、合計(1種または2種)で1%を超えて含有させても上記効果が飽和してしまうほか、熱延時に割れが生じるおそれがある。なお、これらの合計含有量のより好ましい下限は0.05%、より好ましい上限は0.7%である。
Cr:2%以下(0%を含まない)および/またはMo:1%以下(0%を含まない)
CrとMoは、いずれもオーステナイト相を安定化し、冷却過程での低温変態相の生成を容易にするのに有効な元素であり、その効果は、含有量が増加するにつれて増大するが、過剰に含有されると延性が劣化するので、Crは2%以下(より好ましくは1.5%以下)、Moは1%以下(より好ましくは0.7%以下)に抑えるべきである。
B:0.0001〜0.005%
Bは焼入れ性を向上し、微量で鋼板の強度を高めるのに有効な元素である。こうした効果を発揮させるためには、0.0001%以上含有させることが好ましい。しかしながら、Bの含有量が過剰になって0.005%を超えると、結晶粒界が脆化して圧延時に割れが生じるおそれがある。
Caおよび/またはREMを合計で0.003%以下(0%を含まない)
CaおよびREM(希土類元素)は、鋼中の硫化物の形態を制御し、加工性向上に有効な元素である。こうした効果はその含有量が増加するにつれて増大するが、過剰に含有されると、上記効果が飽和するので合計(1種または2種)で0.003%以下とすべきである。
(変形例)
上記実施形態では、連続焼鈍ラインの加熱工程において、オーステナイト単相域温度で加熱する場合を例示したが、本発明は、(オーステナイト+フェライト)2相域温度で加熱する場合にも当然に適用できるものである。
また、上記実施形態では、焼入れ開始温度Tqとフェライト分率との関係等は、連続焼鈍ラインの熱処理条件を模擬したラボ試験により求める場合を例示したが、実際(実機)の連続焼鈍ラインそのものを用いて焼入れ開始温度Tqを順次変更した試験操業を行い、それぞれの焼入れ開始温度Tqで製造された製品鋼板のフェライト分率を上記ラボ試験と同様にして測定することによって求めてもよい。
本発明の適用性を確証するため、以下のラボ試験を実施した。なお、本発明はもとより本実施例によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
〔試料〕
本発明の実施例では、まず、表1に示す成分組成の鋼(鋼種A)を溶製し、熱間圧延工程、酸洗工程、冷間圧延工程を経て、厚さ1.4mm×幅150mm×長さ1000mmの冷延材を作製し、これを切断して幅150mm×長さ200mmの試料を作製した。
〔Tq、VfおよびYPの間の関係を調査するためのラボ試験〕
上記試料を用い、赤外線加熱炉と窒素ガスまたは水による冷却を組み合わせて、実機の連続焼鈍ラインのヒートパターン(熱履歴)を模擬できる熱処理実験炉を使用してラボ試験を実施した。
まず、上記試料を表2および図2に示す熱処理条件で熱処理し、熱処理後の各試料についてフェライト分率Vfおよび降伏強度YPを測定した。
具体的には、熱処理後の各試料を切断、樹脂埋めして鏡面研磨後にナイタールでエッチングし、光学顕微鏡で1000倍の倍率で10視野を写真撮影し、フェライト分率として全組織に対する面積率を求めた。また、JIS Z 2201に記載の5号試験片を作製し、JIS Z 2241に従って引張試験を行い、降伏強度YPを測定した。これらの測定結果を表2にまとめた。なお表2には参考として、別途測定した焼戻しマルテンサイト硬さHVtm、および、上記引張試験で測定された引張強度TSおよび全伸びELをも併記した。
〔フェライト分率の目標値Vf0の決定〕
上記表2に示す結果より、フェライト分率Vfと各機械的特性との関係としてプロットし直した結果を図3に示す。図中には、回帰分析により得られた回帰直線を併記した。同図に示すように、フェライト分率Vfが大きくなるほど、全伸びELは大きくなるのに対し、降伏強度YPおよび引張強度TSは低下することが明らかである。また、これらの機械的特性は、いずれもフェライト分率Vfと良好な相関性(直線性)を有するが、YPとTSを比べると、YPの方がTSよりも回帰直線からのばらつき度合いが小さく、より良好な相関性(直線性)を有することがわかる。
ここで、本鋼種に対する目標の降伏強度YP0=830MPa(別途、成形性評価試験により決定した値)を確保するのに必要とするフェライト分率の目標値Vf0は、図3中に併記した回帰直線の式である下記式(1)より、32%と求まる。
YP(MPa)=−11.3Vf(%)+1190 …式(1)
〔焼入れ開始温度Tqとフェライト分率Vfとの関係式の決定〕
つぎに、上記表2に示す結果より、焼入れ開始温度Tqとフェライト分率Vfとの関係としてプロットし直した結果を図4に示す。図中には、回帰分析により得られた回帰直線を併記した。同図に示すように、フェライト分率Vfと焼入れ開始温度Tqとは非常に強い相関関係(直線性)を有しており、その回帰直線の式は下記式(2)のように1次式で表される。そして、この式(2)より、焼入れ開始温度Tfの調整量ΔTqと、フェライト分率Vfのその目標値Vf0からの偏差ΔVfとの関係式として下記式(3)を得た。
Tq(℃)=−1.47Vf(%)+697 …式(2)
ΔTq(℃)=−1.47ΔVf(%) …式(3)
〔CALの熱処理条件の変動を模擬するラボ試験〕
上記試料および熱処理実験炉を使用して、実機の連続焼鈍炉を模擬したヒートパターン(熱履歴)において、加熱温度が変動した場合(通板速度は一定)、通板速度が変動した場合(加熱温度は一定)、および加熱温度と通板速度がともに変動した場合をそれぞれ想定し、それらの変動量を種々変更してラボ試験を実施した。
具体的には、加熱温度および/または通板速度をそれらの標準条件から変動量を種々変更したそれぞれの場合について、比較例として、上記式(2)のVfにその目標値Vf0=32%を代入して求めたTq0=650℃をそのまま焼入れ開始温度Tqとする熱処理実験を行い(すなわち、加熱温度や通板速度が変動しても焼入れ開始温度Tqを変更しない場合に相当)、焼入れ直後のフェライト分率Vfと、熱処理終了後の降伏強度YPを測定し、それぞれの目標値Vf0およびYP0からの偏差を調査した。なお、焼入れ直後のフェライト分率Vfは、上記特許文献6に記載の方法で測定して求めた。
ついで、発明例として、上記比較例の実験結果から得られたそのフェライト分率の測定値Vfとその目標値Vf0=32%との偏差ΔVfを求め、これを上記式(3)に代入して焼入れ開始温度の必要調整量ΔTqを求め、この必要調整量ΔTqの分だけ焼入れ開始温度Tqを変更(調整)した熱処理実験を行い、上記比較例と同様に、焼入れ直後のフェライト分率Vfと、熱処理終了後の降伏強度YPを測定し、それぞれの目標値Vf0およびYP0からの偏差を調査した。
測定結果を熱処理条件とともに表3にまとめた。
なお同表において、YP変化率とは、通板速度LSがその標準条件(本例では100m/min)から変化した場合においては、ΔYPをLSの変化量ΔLSで除して通板速度変化1m/min当りの降伏強度変化で定義したものであり、加熱温度T1がその標準条件(本例では875℃)から変化した場合においては、ΔYPをT1の変化量ΔT1で除して加熱温度変化1℃当りの降伏強度変化で定義したものである。このYP変化率の絶対値が、焼入れ開始温度T1を除いて同じ熱処理条件で行われた比較例におけるYP変化率の絶対値の1/2以下になったときを合格(○)とした。
同表において、試験記号A1およびA2は、ともに加熱温度T1がその標準条件(875℃)より10℃高く変動した場合を想定したものであり、A1は焼入れ温度Tqをその標準条件から変更せずに熱処理を行った比較例に、A2は焼入れ温度Tqをその標準条件からΔTq(−6℃)だけ調整して熱処理を行った発明例に、それぞれ相当する。同表に示すように、焼入れ開始温度Tqの調整を行わない試験記号A1(比較例)では、フェライト分率Vfはその目標値Vf0(32%)より4%低くなり、降伏強度YPはその目標値YP0(830kPa)より39kPaも高くなっている。これに対し、焼入れ開始温度Tqの調整を行った試験番号A2(発明例)では、フェライト分率Vfはその目標値Vf0に一致するとともに、降伏強度YPもその目標値YP0より1kPa低いだけであり、ほぼ一致していることがわかる。
いっぽう、試験記号B1(発明例)およびB2(比較例)は、上記A1およびA2とは逆に、ともに加熱温度T1がその標準条件(875℃)より10℃低く変動した場合を想定したものである。同表に示すように、焼入れ開始温度Tqの調整を行わない試験記号B1(比較例)では、フェライト分率Vfはその目標値Vf0(32%)より2%高くなり、降伏強度YPはその目標値YP0(830kPa)より22kPaも低くなっている。これに対し、焼入れ開始温度Tqの調整を行った試験番号B2(発明例)では、フェライト分率Vfはその目標値Vf0に一致するとともに、降伏強度YPもその目標値YP0より1kPa低いだけであり、ほぼ一致していることがわかる。
また、試験記号C1(比較例)およびC2(発明例)、ならびに、試験記号D1(比較例)およびD2(発明例)は、上記A1およびA2、ならびに、B1およびB2とは異なり、通板速度LSがその標準条件から±10%変動した場合を想定したものである。同表に示すように、焼入れ開始温度Tqの調整を行わない試験記号C1、D1(比較例)では、フェライト分率Vfはその目標値Vf0(32%)からそれぞれ−6%、+10%も異なり、降伏強度YPはその目標値YP0(830kPa)からそれぞれ+48MPa、−95MPaも異なっている。これに対し、焼入れ開始温度Tqの調整を行った試験番号C2、D2(発明例)では、フェライト分率Vfはその目標値Vf0からそれぞれ−1MPa、−2MPa異なるだけであるとともに、降伏強度YPもその目標値YP0からそれぞれ+31MPa、−5MPa異なるだけであり、大幅に改善されていることがわかる。なお、本実施例では、各発明例において、焼入れ開始温度Tqの調整を1回だけ行った場合の効果を把握したが、試験番号C2、D2に対しては、さらに2回目の焼入れ開始温度Tqの調整を行うことにより、降伏強度YPをその目標値YP0により近づけることができることが明らかである。
さらに、試験記号E1(比較例)およびE2(発明例)は、通板速度LSがその標準条件から15%低下すると同時に加熱温度もその標準条件から15℃低下した場合を想定したものである。同表に示すように、焼入れ開始温度Tqの調整を行わない試験記号E1(比較例)では、フェライト分率Vfはその目標値Vf0(32%)から3%低くなり、降伏強度YPはその目標値YP0(830kPa)より15MPa高くなっている。これに対し、焼入れ開始温度Tqの調整を行った試験番号E2(発明例)では、フェライト分率Vfはその目標値Vf0より1%低くなっているだけでほぼ一致するとともに、降伏強度YPもその目標値YP0より5MPa低くなっているだけであり、ほぼ一致していることがわかる。
以上の結果から本発明を適用することで、機械的特性(特に降伏強度)のばらつきの少ない、成形性に優れた製品鋼板を確実にかつ安定して得られることが確認できた。

Claims (7)

  1. 質量%で(以下、化学成分について同じ。)、C:0.05〜0.3%、Si:0.01〜3.0%、Mn:0.5〜3%、Al:0.01〜0.1%、残部Feおよび不可避的不純物からなる成分組成を有するとともに、フェライトと焼戻しマルテンサイトを主体とする複合組織を有する高強度冷延鋼板を連続焼鈍ラインで製造する高強度冷延鋼板の製造方法であって、
    前記連続焼鈍ラインが、加熱工程、焼入れ開始温度Tqまでの緩冷工程、急冷による焼入れ工程、および、再加熱による焼戻し工程を順次経るものであり、
    前記焼入れ工程の直後に鋼板のフェライト分率Vfを磁気的特性により測定し、このフェライト分率Vfを、予め設定しておいた、製品鋼板の機械的特性の目標値を達成するために必要なフェライト分率の目標値Vf0と比較し、このフェライト分率の目標値Vf0からの偏差ΔVf=Vf−Vf0が0に近づくように、前記焼入れ開始温度Tqを調整することを特徴とする強度ばらつきの小さい高強度冷延鋼板鋼板の製造方法。
  2. 上記連続焼鈍ラインにより高強度冷延鋼板を製造するに際し、あらかじめ、この連続焼鈍ラインによる試験操業により、または、この連続焼鈍ラインの熱処理条件を模擬したラボ試験により、前記焼入れ開始温度Tqと前記焼入れ直後の鋼板のフェライト分率Vfとの関係式を求めておき、この関係式を用いて、前記焼入れ開始温度Tqの調整量を決定する請求項1に記載の製造方法。
  3. 成分組成が、さらに、Ti、Nb、VおよびZrよりなる群から選ばれる1種または2種以上を合計で0.01〜1%含むものである請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 成分組成が、さらに、Niおよび/またはCuを合計で1%以下(0%を含まない)含むものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の成形性に優れた高強度鋼板。
  5. 成分組成が、さらに、Cr:2%以下(0%を含まない)および/またはMo:1%以下(0%を含まない)を含むものである請求項1〜4のいずれか1項に記載の成形性に優れた高強度鋼板。
  6. 成分組成が、さらに、B:0.0001〜0.005%を含むものである請求項1〜5のいずれか1項に記載の成形性に優れた高強度鋼板。
  7. 成分組成が、さらに、Caおよび/またはREMを合計で0.003%以下(0%を含まない)含むものである請求項1〜6のいずれか1項に記載の成形性に優れた高強度鋼板。
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