JP2012120529A - 骨芽細胞分化誘導用培養基材、骨芽細胞分化誘導方法、及び骨芽細胞製造方法 - Google Patents

骨芽細胞分化誘導用培養基材、骨芽細胞分化誘導方法、及び骨芽細胞製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の課題は、従来法と比較して、効率的且つ強力に骨芽細胞を分化誘導する方法を提供することにある。
【解決手段】本発明の課題は、魚類由来コラーゲンが被覆された、間葉系幹細胞との接触面を有する、骨芽細胞分化誘導用培養基材によって解決できる。また、魚類由来コラーゲンで被覆された細胞培養基材と、間葉系幹細胞とを接触させる魚類由来コラーゲン接触工程を含む、骨芽細胞分化誘導方法、又は魚類由来コラーゲンで被覆された細胞培養基材によって、間葉系幹細胞を培養する魚類由来コラーゲン培養工程を含む、骨芽細胞製造方法によって解決できる。
【選択図】図1

Description

本発明は、骨芽細胞分化誘導用培養基材、骨芽細胞分化誘導方法、骨芽細胞製造方法及び前記製造方法によって得られた骨芽細胞に関する。本発明によれば、間葉系幹細胞から骨芽細胞を誘導することができる。
骨芽細胞は、骨組織において骨形成を行う細胞であり、タンパク質等を産生及び分泌して、骨基質をつくる。具体的には、骨芽細胞は、生体内でコラーゲンなどの基質タンパク質を分泌し、そこにMatrix Vesicleと呼ばれる基質小胞を作製する。そして、この基質小胞の周囲にリン酸カルシウムが沈着して、骨の基質が完成し、骨芽細胞は、最終的には、この基質の中で骨細胞となる。
この骨芽細胞は、間葉系幹細胞から分化するものであり、非特許文献1には、間葉系幹細胞にデキサメタゾン、β−グリセロリン酸、及びアスコルビン酸を作用させることにより分化誘導できることが開示されている(非特許文献1)。また、特許文献1は、(+)−トランス−4−(1−アミノエチル)−1−(4−ピリジルカルバモイル)シクロヘキサン等のRhoキナーゼ阻害活性を有する化合物と骨誘導因子を併用することにより、間葉系細胞が骨芽細胞に分化誘導されることを開示している。更に、特許文献2には、カルシウム拮抗薬が、間葉系細胞を骨芽細胞に分化誘導することが開示されている(特許文献2)。
しかしながら、前記の化合物による骨芽細胞の分化誘導活性、特に初期分化誘導活性は、十分なものではなかった。また、デキサメタゾンや(+)−トランス−4−(1−アミノエチル)−1−(4−ピリジルカルバモイル)シクロヘキサンは、本来生体内に存在するものではなく、得られた骨芽細胞へのこれらの合成された化合物の影響については、十分には調べられていなかった。更に、間葉系幹細胞を骨芽細胞に分化する際に、10%程度のウシの胎児血清などを用いて培養を行っており、ウシ血清中にプリオンなどの人獣共通感染症の病原体が存在する可能性も考えられた。
国際公開第2001/017562号 国際公開第2006/123699号 特開2006−257014号公報
「サイエンス(Science)」、1999年、284巻、p.143−147
本発明の目的は、従来法と比較して、効率的且つ強力に骨芽細胞を分化誘導する方法を提供することであり、特には、初期分化誘導が可能な方法を提供することである。また、低濃度の血清存在下、又は血清非存在下において、間葉系幹細胞を骨芽細胞に分化させることのできる骨芽細胞分化誘導方法、又は骨芽細胞製造方法を提供することである。更に、前記製造方法によって製造された骨芽細胞を提供することである。
本発明者は、効率的且つ強力に間葉系幹細胞を骨芽細胞に分化させることのできる骨芽細胞分化誘導方法、又は骨芽細胞製造方法について、鋭意研究した結果、驚くべきことに、魚類由来コラーゲンで被覆された細胞培養基材と、間葉系幹細胞とを接触させることにより、間葉系幹細胞を骨芽細胞に分化させることができることを見出した。
本発明は、こうした知見に基づくものである。
すなわち、本発明は、
[1]魚類由来コラーゲンが被覆された、間葉系幹細胞との接触面を有する、骨芽細胞分化誘導用培養基材、
[2]前記魚類由来コラーゲンが、テラピア鱗由来のコラーゲンである、[1]に記載の骨芽細胞分化誘導用培養基材、
[3]前記間葉系幹細胞が、骨髄間葉系幹細胞、脂肪組織由来間葉系幹細胞、滑膜組織由来間葉系幹細胞、歯髄由来間葉系幹細胞、歯胚由来間葉系幹細胞、耳介軟骨膜由来間葉系幹細胞、末梢血由来間葉系幹細胞、臍帯血由来間葉系幹細胞、靭帯由来間葉系幹細胞、腱由来間葉系幹細胞、ES細胞由来間葉系幹細胞、又はiPS細胞由来間葉系幹細胞である、[1]又は[2]に記載の骨芽細胞分化誘導用培養基材、
[4]前記間葉系幹細胞が、ヒト由来である、[1]〜[3]のいずれかに記載の骨芽細胞分化誘導用培養基材、
[5]前記被覆された第1の魚類由来コラーゲン以外の第2のコラーゲン少なくとも1つが被覆された間葉系幹細胞との接触面を有する、[1]〜[4]のいずれかに記載の骨芽細胞分化誘導用培養基材、
[6]前記第2のコラーゲンが、哺乳類由来コラーゲン、鳥類由来コラーゲン、爬虫類由来コラーゲン、両生類由来コラーゲン、魚類由来コラーゲン、無脊椎動物由来コラーゲン及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるコラーゲンである、[1]〜[5]のいずれかに記載の、骨芽細胞分化誘導用培養基材、
[7][1]〜[6]のいずれかに記載の骨芽細胞分化誘導用培養基材を含む、骨芽細胞分化誘導キット、
[8]骨芽細胞分化誘導因子を更に含む、[7]に記載の骨芽細胞分化誘導キット、
[9]魚類由来コラーゲンで被覆された細胞培養基材と、間葉系幹細胞とを接触させる魚類由来コラーゲン接触工程を含む、骨芽細胞分化誘導方法、
[10]前記間葉系幹細胞が、骨髄間葉系幹細胞、脂肪組織由来間葉系幹細胞、滑膜組織由来間葉系幹細胞、歯髄由来間葉系幹細胞、歯胚由来間葉系幹細胞、耳介軟骨膜由来間葉系幹細胞、末梢血由来間葉系幹細胞、臍帯血由来間葉系幹細胞、靭帯由来間葉系幹細胞、腱由来間葉系幹細胞、ES細胞由来間葉系幹細胞、又はiPS細胞由来間葉系幹細胞である、[9]に記載の骨芽細胞分化誘導方法、
[11]前記間葉系幹細胞が、ヒト由来である、[9]又は[10]に記載の骨芽細胞分化誘導方法、
[12]前記被覆された第1の魚類由来コラーゲン以外の第2のコラーゲン少なくとも1つが被覆された細胞培養基材と、間葉系幹細胞とを接触させる第2コラーゲン接触工程を更に含む、[9]〜[11]のいずれかに記載の骨芽細胞分化誘導方法、
[13]前記第2のコラーゲンが、哺乳類由来コラーゲン、鳥類由来コラーゲン、爬虫類由来コラーゲン、両生類由来コラーゲン、魚類由来コラーゲン、無脊椎動物由来コラーゲン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるコラーゲンである、[9]〜[12]のいずれかに記載の骨芽細胞分化誘導方法、
[14]前記間葉系幹細胞を骨芽細胞分化誘導因子に接触させる骨芽細胞分化誘導因子接触工程を更に含む、[9]〜[13]のいずれかに記載の骨芽細胞分化誘導方法、
[15]前記第1の魚類由来コラーゲンが、テラピア鱗由来のコラーゲンである、[9]〜[14]のいずれかに記載の骨芽細胞分化誘導方法、
[16]前記接触工程が、5%以下の血清の存在下、又は血清の非存在下で行われる、[9]〜[15]のいずれかに記載の骨芽細胞分化誘導方法、
[17]魚類由来コラーゲンで被覆された細胞培養基材によって、間葉系幹細胞を培養する魚類由来コラーゲン培養工程を含む、骨芽細胞製造方法、
[18]前記間葉系幹細胞が、骨髄間葉系幹細胞、脂肪組織由来間葉系幹細胞、滑膜組織由来間葉系幹細胞、歯髄由来間葉系幹細胞、歯胚由来間葉系幹細胞、耳介軟骨膜由来間葉系幹細胞、末梢血由来間葉系幹細胞、臍帯血由来間葉系幹細胞、靭帯由来間葉系幹細胞、腱由来間葉系幹細胞、ES細胞由来間葉系幹細胞、又はiPS細胞由来間葉系幹細胞である、[17]に記載の骨芽細胞製造方法、
[19]前記間葉系幹細胞が、ヒト由来である、[17]又は[18]に記載の骨芽細胞製造方法、
[20]前記細胞培養基材が、前記被覆された第1の魚類由来コラーゲン以外の第2のコラーゲン少なくとも1つが被覆された間葉系幹細胞との接触面を有する、[17]〜[19]のいずれかに記載の骨芽細胞製造方法、
[21]前記第2のコラーゲンが、哺乳類由来コラーゲン、鳥類由来コラーゲン、爬虫類由来コラーゲン、両生類由来コラーゲン、魚類由来コラーゲン、無脊椎動物由来コラーゲン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるコラーゲンである、[17]〜[20]のいずれかに記載の骨芽細胞製造方法、
[22]前記間葉系幹細胞の培養培地が、5%以下の血清を含む培地又は無血清培地である、[17]〜[21]のいずれかに記載の骨芽細胞製造方法、
[23]前記間葉系幹細胞の培養培地が、骨芽細胞分化誘導因子を含む培地である、[17]〜[20]のいずれかに記載の骨芽細胞製造方法、
[24]前記魚類由来コラーゲンが、テラピア鱗由来のコラーゲンである、[17]〜[23]のいずれかに記載の骨芽細胞製造方法、
[25][17]〜[24]のいずれかに記載の骨芽細胞製造方法により得られる骨芽細胞、
[26]骨芽細胞分化誘導のための、魚類由来コラーゲンの細胞培養基材への使用、
[27]骨芽細胞の製造のための、魚類由来コラーゲンの細胞培養基材への使用、
に関する。
本発明の骨芽細胞分化誘導方法、又は骨芽細胞製造方法によれば、効率的且つ強力に間葉系幹細胞を骨芽細胞に分化させることができる。特には、骨芽細胞の初期分化誘導を強力に引き起こすことが可能である。また、低濃度の血清存在下、又は血清非存在下において、間葉系幹細胞を骨芽細胞に分化させることができる。
ヒト骨髄由来間葉系幹細胞を、魚類由来コラーゲン被覆細胞培養プレートで培養(接触)した場合の、アルカリホスファターゼの活性を示したグラフである。コントロールとして、豚由来コラーゲン被覆細胞培養プレート及び非被覆細胞培養プレートを用いた。 ヒト骨髄由来間葉系幹細胞を、デキサメタゾン存在下(Dex +)又は非存在下(Dex −)において、魚類由来コラーゲン被覆細胞培養プレートで、3日(A)又は7日(B)培養した場合の、アルカリホスファターゼの活性を示したグラフである。コントロールとして、豚由来コラーゲン被覆細胞培養プレート及び非被覆細胞培養プレートを用いた。「Dex+3%」は、デキサメタゾン10nM及びFBS3%を、「Dex−3%」は、デキサメタゾン0nM及びFBS3%を、「Dex+15%」は、デキサメタゾン10nM及びFBS15%を、「Dex−15%」は、デキサメタゾン0nM及びFBS15%を示す。 ヒト骨髄由来間葉系幹細胞を、デキサメタゾン存在下(Dex +)又は非存在下(Dex −)において、魚類由来コラーゲン被覆細胞培養プレートで、培養した場合の、細胞のDNA量の増加を示したグラフである。ヒト骨髄由来間葉系幹細胞は、ウシ胎児血清(FBS)3%又は15%の存在下で培養した。コントロールとして、豚由来コラーゲン被覆細胞培養プレート及び非被覆細胞培養プレートを用いた。 テラピア鱗由来コラーゲンで被覆されたウェルの表面(A)又は豚由来のコラーゲンで被覆されたウェルの表面(B)を、位相差顕微鏡で観察した写真である。 ヒト骨髄由来間葉系幹細胞を、魚類由来コラーゲン被覆細胞培養プレートで培養(接触)した場合の、BMP2(A)又はSPP1(B)の発現を示したグラフである。それぞれのmRNAの発現は、GAPDHの発現量で補正した。また、コントロールとして、豚由来コラーゲン被覆細胞培養プレート及び非被覆細胞培養プレートを用いた。 ヒト骨髄由来間葉系幹細胞を、デキサメタゾン存在下(Dex +)又は非存在下(Dex −)において、魚類由来コラーゲン被覆細胞培養プレートで、3日間培養(接触)した場合の、BMP2(A)又はSPP1(B)の発現を示したグラフである。それぞれのmRNAの発現は、GAPDHの発現量で補正した。「Dex+3%」は、デキサメタゾン10nM及びFBS3%を、「Dex−3%」は、デキサメタゾン0nM及びFBS3%を、「Dex+15%」は、デキサメタゾン10nM及びFBS15%を、「Dex−15%」は、デキサメタゾン0nM及びFBS15%を示す。コントロールとして、豚由来コラーゲン被覆細胞培養プレート及び非被覆細胞培養プレートを用いた。 ヒト骨髄由来間葉系幹細胞を、魚類由来コラーゲン被覆細胞培養プレートで培養(接触)した場合の、アルカリホスファターゼの活性を示したグラフ(A)及びヒト骨髄由来間葉系幹細胞を、デキサメタゾン存在下(Dex+)又は非存在下(Dex−)において、魚類由来コラーゲン被覆細胞培養プレートで、3日培養した場合の、アルカリホスファターゼの活性を示したグラフ(B)である。コントロールとして、豚由来コラーゲン被覆細胞培養プレート(0.3wt%の濃度で被覆)及び非被覆細胞培養プレートを用いた。「Dex+」は、デキサメタゾン10nM及びFBS3%を、「Dex−」は、デキサメタゾン0nM及びFBS3%を示す。 ヒト骨髄由来間葉系幹細胞を、魚類由来コラーゲン被覆細胞培養プレートで培養(接触)した場合の、BMP2(A)又はSPP1(B)の発現を示したグラフ(Day0)、及び10nMデキサメタゾン存在下において、魚類由来コラーゲン被覆細胞培養プレートで、3日間(Day3)又は7日間(Day7)培養(接触)した場合の、BMP2(A)又はSPP1(B)の発現を示したグラフである。それぞれのmRNAの発現は、GAPDHの発現量で補正した。また、コントロールとして、豚由来コラーゲン被覆細胞培養プレート(0.3wt%の濃度で被覆)及び非被覆細胞培養プレートを用いた。
〔1〕骨芽細胞分化誘導用培養基材
本発明の骨芽細胞分化誘導用培養基材は、魚類由来コラーゲンが被覆された、間葉系幹細胞との接触面を有するものである。
(魚類由来コラーゲン)
本発明の骨芽細胞分化誘導用培養基材に用いる魚類由来コラーゲンは、I型コラーゲンであれば、特に限定されるものではない。例えば、魚類の種類としては、テラピア、ゴンズイ、ラベオ・ロヒータ、カトラ、コイ、雷魚、ピラルク、タイ、ヒラメ、サメ、及びサケなどを挙げることができるが、後述の変性温度の観点から、水温の高い川、湖沼、又は海に生息する魚類が好ましい。このような魚類として、具体的には、オレオクロミス属の魚類を挙げる事ができ、特にはテラピアが好ましい。オレオクロミス属の魚類からは、変性温度が比較的高いコラーゲンを取得でき、例えば日本や中国で食用として養殖されているナイルテラピア(Oreochromis niloticus)は入手が容易であり、大量のコラーゲンを取得することができる。
魚類由来コラーゲンを取得する魚の部位も、限定されるものではない。例えば、鱗、皮、骨、軟骨、ひれ、及び臓器等を挙げることができるが、鱗が好ましい。鱗は、魚臭の原因となる脂質が少ないからである。また、魚類の鱗由来のコラーゲンは、他のコラーゲンと比較して線維化しやすく、線維形成速度が著しく速いからである。
魚類のI型コラーゲンは、分子量約10万のポリペプチド鎖が3本集まって「3重らせん構造」を作っており、分子量は約30万である。長さ300nmで、直径1.5nmの1本の硬い棒のような形態をしている。魚類のI型コラーゲンが特異な「3重らせん構造」を作るのは、ポリペプチド鎖のアミノ酸の配列が関与している。ポリペプチド鎖は3個のアミノ酸が並んだユニット「G−X−Y」のつながりからできている。Gはグリシンを表し、Xはプロリン、そしてYはヒドロキシプロリンであることが多い。ヒドロキシプロリンは、通常のタンパク質に含まれておらず、コラーゲンに特有のアミノ酸であるが、ヒドロキシプロリンの水酸基と水和水との水素結合によって3重らせん構造が安定すると考えられている。
コラーゲンは、温度が上昇すると3本のポリペプチドからなる「3重らせん構造」が解けて、3本のポリペプチドがばらばらになり、ゼラチンとなる。コラーゲンからゼラチンへの変化を変性と呼び、一度変性が起きると、再び温度を低下させても「3重らせん構造」に戻すことは困難である。コラーゲンの変性温度は、通常そのコラーゲンが由来する生物の棲息温度より、若干高い程度であり、従って、水中に生息している魚類の鱗のコラーゲンの変性温度は、それほど高くない。
本発明に用いる魚類由来コラーゲンは、その変性温度によって、限定されるものではないが、変性温度の高い魚類由来コラーゲンが好ましく、具体的には20℃以上が好ましく、25℃以上がより好ましく、28℃以上が更に好ましく、30℃以上が最も好ましい。本発明の骨芽細胞分化誘導方法において、魚類由来コラーゲンと間葉系幹細胞とを接触させる温度は、37℃前後のことが多く、「3重らせん構造」が破壊されたゼラチンでは、間葉系幹細胞の骨芽細胞への分化誘導は起こらないと考えられるからである。
しかしながら、変性温度が20℃未満の魚類由来コラーゲンであっても、間葉系幹細胞との接触を20℃未満で行うことにより、コラーゲンの変性を起こさずに、間葉系幹細胞を骨芽細胞へ分化させることができる。
本発明に用いるコラーゲンの変性温度は、International Journal of Biological Macromolecules,32,199(2003)に記載の方法に従って、CD分光計(Jasco model 725 spectrometer)を使用してコラーゲン水溶液の温度を段階的に上昇させることによって求める。即ち、コラーゲン水溶液をpH3の希塩酸で希釈し、0.03wt%となるように調整し、光路長1mmの石英セルに入れる。セルの温度を1℃/minで上昇させ、221nmにおける旋光度を0.2℃ごとに測定する。各温度における旋光度を温度に対してプロットすると、旋光度の値がコラーゲン螺旋の値からランダムコイルの値へと急激に変化する変性曲線が得られる。それらの旋光度値の中間値を与える温度、すなわち、螺旋率(Helicity;%)が50%になるときの温度を変性温度とする。
魚類由来コラーゲンの取得方法は、コラーゲンの3重らせん構造が破壊されない方法であれば、特に限定されないが、例えば、前記特許文献3に開示された取得方法によって得ることができる。以下に、代表例として、鱗由来のコラーゲンの製造方法について説明する。
まず、集めた鱗から魚皮や鰭などの不要物を水洗により取り除く。必要に応じて、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類やアセトンなどの親水性有機溶剤、界面活性剤、塩化ナトリウムなどの塩類、水酸化ナトリウムなどのアルカリ溶液などを用いて、鱗表面に付着したコラーゲン以外のたんぱく質や脂質など、臭気の原因とされている物質を鱗から除去してもよい。
更に、脱灰処理溶液中で、1〜48時間、攪拌羽根を用いて緩やかに攪拌し、鱗に含まれる無機成分(リン酸カルシウム)を除去する。処理溶液は、無機成分を溶解できればよく、塩酸やリン酸などの無機酸、酢酸、クエン酸などの有機酸、エチレンジアミン4酢酸などの水溶液を用いればよいが、汎用的に利用されている塩酸や酢酸が好ましく用いられる。使用量は、特に制限する必要はなく、脱灰終了後の鱗を水洗すれば良い。
このようにして夾雑物を除去した鱗を、プロテアーゼを添加した酸性溶液中で2時間〜72時間、攪拌羽根などを用いて緩やかに攪拌することでコラーゲン分子間の架橋が切断されて可溶化したコラーゲンが抽出される。この抽出工程以降の操作は、コラーゲンの変性を防ぐため、変性温度以下、望ましくは変性温度−5℃以下で行うべきである。
プロテアーゼの種類は、酸性溶液中で高い活性を有する、ペプシン、プロクターゼ、パパインなどが好ましく用いられる。溶液のpHは、プロテアーゼの活性が高くなる範囲を用いればよく、一般に2〜5程度である。プロテアーゼの使用量は、特に限定する必要はないが、通常は魚鱗の乾燥重量に対して1〜15%程度であり、鱗が均一に攪拌できる程度の液量となるように濃度を決定すれば良い。使用する酸は、特に制限されないが、塩酸や酢酸、クエン酸、リンゴ酸など、生物に対して安全性の高いものから選ぶことが望ましく、特に塩酸や酢酸が好ましく用いられる。このような方法により、コラーゲン分子の両末端に存在する非螺旋領域(テロペプチド)が分解されたコラーゲン(アテロコラーゲン)を抽出することができる。
このようにして可溶化したコラーゲンは、遠心分離、濾過などによって可溶化していない魚鱗残渣と分離する。魚鱗残渣は、プロテアーゼを添加した酸性溶液中で処理することで、再度、可溶化したコラーゲンを抽出することができるため、2〜4回程度繰り返して収率を高めてもよい。
このようにして得られたコラーゲン溶液には、プロテアーゼやコラーゲン以外のたんぱく質、ゼラチン(変性コラーゲン)などを含むため、必要に応じて精製する。精製方法について述べると、可溶化したコラーゲン溶液に、塩化ナトリウムなどの塩類を加え、塩濃度を上昇させることで、コラーゲンを析出させる。例えば、可溶化したコラーゲン水溶液中に塩化ナトリウムを終濃度1Mになるように添加し、5分〜24時間程度静置することで、コラーゲンが析出する。
水酸化ナトリウムなどを添加して、pHを中性以上にすることでも析出することができる。例えば、pH7〜9程度になるまで水酸化ナトリウム溶液を添加し、5分〜24時間程度静置することで、コラーゲンが析出する。このようなコラーゲンの析出は、溶液が白濁することで容易に確認できる。
析出したコラーゲンは遠心分離や濾過など、一般的な固液分離方法により回収し、これを酸性溶液中で緩やかに攪拌して再溶解する。例えば、pH2〜4程度の塩酸溶液中で1〜48時間程度ゆるやかに攪拌すればよい。このようにして、コラーゲンを精製することができ、繰り返すことで更に純度を高めることができる。精製工程で使用した塩類は、透析膜などを用いて純水に対して脱塩することで除去することができる。
細胞を培養する際、細菌などが共存することは重大な問題となるため、得られたコラーゲン溶液は、ろ過滅菌などコラーゲンの構造を壊さない方法で無菌化して用いることが望ましい。
(細胞培養基材)
前記魚類由来コラーゲンを被覆する細胞培養基材は、通常細胞培養用に使用される基材であれば、限定されることなく使用することが可能である。材質としては、ガラス、多孔質体(例えば、ポリカーボネート)、又はプラスチック(例えばポリスチレン、又はポリプロピレン)の基材を使用することができ、形状としては、フラスコ、シャーレ、マルチカルチャープレート(例えば6ウェルマルチカルチャープレート、12ウェルマルチカルチャープレートなど)、又はビーズなどの形状の基材を使用することができる。但し、コラーゲン溶液が親水性であるため、親水性の材質基材あるいは親水化処理を施した表面を有する基材が好ましい。
(間葉系幹細胞との接触面)
間葉系幹細胞との接触面は、細胞培養基材の中で魚類由来コラーゲンが被覆される部分である。例えば、フラスコの細胞培養面、シャーレの細胞培養面、マルチカルチャープレートのウェルの底面、ビーズの表面、又は多孔質体の表面などを挙げることができる。これらの部分を、魚類由来コラーゲンを用いて被覆し、間葉系幹細胞との接触面として用いる。
(細胞培養基材へのコラーゲンの被覆)
前記細胞培養基材への魚類コラーゲンの被覆は、常法に従って行うことができる。
コラーゲンを溶解する溶液のpHは、コラーゲンの等電点以下であるpH2〜5が好ましい。溶液の酸源は特に制限されないが、塩酸、酢酸、クエン酸、又はリンゴ酸など、生物に対して安全性の高いものから選ぶことが好ましく、乾燥時に気化する塩酸や酢酸がより好ましい。pHについては、低すぎるとコラーゲンの構造を破壊する場合があり、また高すぎると溶解性が低下し、増粘、ゲル化する場合がある。
使用するコーティング溶液のコラーゲン濃度は、特に限定されないが、一般的には0.01〜1重量%であり、より好ましくは0.03〜0.3重量%である。濃度が低いと、1回のコーティングで基材を被覆できるコラーゲン量が少なくなる。濃度が高いと、基材を被覆するコラーゲン量を増やすことができるが、厚みが増すだけである。本発明の効果を発揮するのは、表層部分が主であるため、被覆したコラーゲンの厚さが増しても、コラーゲン量に見合った効果を期待できない。
コーティング方法としては、酸性溶液を用いて適度な濃度に調整したコラーゲン溶液を、あわ立たないようにディシュなどの細胞培養基材上に流し込み、基材上に均一に塗り広げた後、余剰のコラーゲンを除去する。これを乾燥させることで、基材上に線維化したコラーゲンが均一に被覆される。これは魚鱗由来コラーゲン特有の現象であり、従来から使用されている哺乳類由来のコラーゲンでは達成されない。
細菌が混入することは細胞培養時に重大な問題となるため、コラーゲンの被覆作業は、清浄な無菌基材を用い、クリーンルームやクリーンベンチなどの無菌環境で行うことが望ましい。必要に応じて、エチレンオキサイドやUV照射など、コラーゲンの構造を壊さない滅菌工程を加えてもよい。
コーティング及び乾燥時の温度について言えば、変性温度以下、望ましくは変性温度−5℃以下で行う。変性温度を上回る温度で処理すると、基材間結合やコラーゲン線維を形成する前にコラーゲンが変性することにより線維化機能が失われ、コラーゲンとしての特性を発揮できない場合がある。
乾燥時間は湿度などにより異なるが、クリーンベンチ内のような通風下であれば、5分〜2時間程度で乾燥する。乾燥が不十分な場合は、コラーゲンの線維化や基材との接着が不十分となる場合があり、細胞培養液を添加したとき、被膜の再溶解や剥離などにより本発明の効果を十分発揮しない場合がある。十分乾燥し、線維化した状態であれば、数ヶ月保存してもその効果を発揮することができる。保存は変性温度以下の温度、望ましくは冷蔵保存が好ましい。
本発明の骨芽細胞分化誘導用培養基材は、前記被覆された第1の魚類由来コラーゲン以外の第2のコラーゲン少なくとも1つが被覆された間葉系幹細胞との接触面を有してもよい。すなわち、本発明の骨芽細胞分化誘導用培養基材は、異なる由来のコラーゲンが被覆された複合材料とすることも可能である。
(第2のコラーゲン)
前記第2のコラーゲンは、被覆された第1の魚類由来コラーゲンと由来の異なるものであれば、特に制限されるものではなく、例えば第1の魚類由来コラーゲン以外の魚類由来コラーゲンを用いることも可能である。第2のコラーゲンとして、具体的には、哺乳類由来コラーゲン(例えば、ウシ由来コラーゲン、ブタ由来コラーゲン、ヒツジ由来コラーゲン、ヤギ由来コラーゲン、又はサル由来コラーゲン)、鳥類由来コラーゲン(例えば、ニワトリ由来コラーゲン、ガチョウ由来コラーゲン、アヒル由来コラーゲン、又はダチョウ由来コラーゲン)、爬虫類由来コラーゲン(例えば、ワニ由来コラーゲン)、両生類由来コラーゲン(例えば、カエル由来コラーゲン)、魚類由来コラーゲン(例えば、テラピア由来コラーゲン、タイ由来コラーゲン、ヒラメ由来コラーゲン、サメ由来コラーゲン、又はサケ由来コラーゲン)、無脊椎動物由来コラーゲン(例えば、クラゲ由来コラーゲン)、及びそれらの組み合わせを挙げることができる。第2のコラーゲンの組み合わせとしては、哺乳類由来コラーゲン及び鳥類由来コラーゲンを組み合わせてもよく、由来の異なる哺乳類由来コラーゲン同士、例えばウシ由来コラーゲン及びブタ由来コラーゲンを組み合わせてもよい。また、第2のコラーゲンは、従来公知の方法に従って製造することができる。
(第2のコラーゲンの細胞培養基材への被覆)
第2のコラーゲンは、第1の魚類由来コラーゲンと同じように、細胞培養基材の間葉系細胞との接触面に被覆することができる。第1の魚類由来コラーゲン及び第2のコラーゲンを混合して、接触面に被覆してもよく、また別々に順番に接触面に被覆してもよい。また、第1の魚類由来コラーゲンと、第2のコラーゲンとを同じ接触面に被覆してもよく、異なる接触面に被覆してもよい。
例えば、第1の魚類由来コラーゲン及び第2のコラーゲンを、異なる接触面に被覆する場合、マルチカルチャープレートのウェルの底面を2つ以上に分割して、第1の魚類由来コラーゲン及び第2のコラーゲンをそれぞれ、被覆してもよい。また、マルチカルチャープレートのウェルの底面に第1の魚類由来コラーゲンを被覆し、ビーズの表面に第2のコラーゲンを被覆して、マルチカルチャープレート及びビーズを組み合わせて、細胞培養基材として用いてもよい。
(間葉系幹細胞)
魚類由来コラーゲンで被覆された細胞培養基材と接触させる間葉系幹細胞としては、髄骨芽細胞に分化誘導することのできる細胞であれば、限定されないが、例えば、骨髄間葉系幹細胞、脂肪組織由来間葉系幹細胞、滑膜組織由来間葉系幹細胞、歯髄由来間葉系幹細胞、歯胚由来間葉系幹細胞、耳介軟骨膜由来間葉系幹細胞、末梢血由来間葉系幹細胞、臍帯血由来間葉系幹細胞、靭帯由来間葉系幹細胞、腱由来間葉系幹細胞、ES細胞由来間葉系幹細胞、又はiPS細胞由来間葉系幹細胞を挙げることができる。また、前記間葉系幹細胞の由来する動物種も、特に限定されず、哺乳類としては、例えばヒト、サル、イヌ、ネコ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマ、ウサギ、モルモット、ラット、及びマウスを挙げることができる。また、鳥類としては、ニワトリ、ウズラ、アヒル、ガチョウ、ダチョウ、及びホロホロチョウを挙げることができ、爬虫類としては、ワニ、カメ、及びトカゲを挙げることができ、両生類としては、カエル、及びイモリを挙げることができ、魚類としては、テラピア、タイ、ヒラメ、サメ、及びサケを挙げることができる。更に、無脊椎動物としては、カニ、貝類、クラゲ、及びエビを挙げることができる。
前記間葉系幹細胞は骨芽細胞、脂肪細胞、筋細胞、又は軟骨細胞などの間葉系に属する細胞への分化能を持つ細胞であり、骨、血管、又は心筋を構成することのできる細胞となるものである。
前記間葉系幹細胞は、株化細胞を用いてもよく、また、常法に従って調整することも可能であり、更には市販されている細胞を用いることもできる。また、生体から分離した間葉系幹細胞(例えば、骨髄間葉系幹細胞、脂肪組織由来間葉系幹細胞、滑膜組織由来間葉系幹細胞、歯髄由来間葉系幹細胞、歯胚由来間葉系幹細胞、耳介軟骨膜由来間葉系幹細胞、末梢血由来間葉系幹細胞、臍帯血由来間葉系幹細胞、靭帯由来間葉系幹細胞、腱由来間葉系幹細胞、ES細胞由来間葉系幹細胞、又はiPS細胞由来間葉系幹細胞)を、本発明の骨芽細胞分化誘導方法により骨芽細胞に分化誘導することができる。この場合、生体から採取された細胞は、常法に従って結合組織等を除去して調製することが好ましい。更に、生体から採取された細胞は、初代培養細胞を用いることが好ましい。継代して用いることも可能であるが、継代数は少ないほうが好ましく、10回以下が好ましく、5回以下が更に好ましく、2回以下であることが、最も好ましい。
(骨芽細胞)
本発明の方法により分化誘導される骨芽細胞は、骨組織において骨形成を行う細胞であり、細胞質は好塩基性を示し、アルカリホスファターゼ活性を有している。また、骨芽細胞はアンドロゲンとエストロゲンのレセプターを持っていてもよく、アンドロゲンは骨芽細胞の活動性を低下させ、エストロゲンは骨芽細胞を刺激する。間葉系幹細胞から、骨芽細胞への分化誘導は、アルカリホスファターゼの活性を測定することによって確認することができる。アルカリホスファターゼの測定は、後述の実施例に示すように、常法に従って行うことができる。
〔2〕骨芽細胞分化誘導キット及び骨芽細胞製造装置
本発明の骨芽細胞分化誘導キットは、骨芽細胞分化誘導用培養基材を含む。骨芽細胞分化誘導用培養基材は、魚類由来コラーゲンが被覆された、間葉系幹細胞との接触面を有するものである。具体的には、本発明の前記骨芽細胞分化誘導用培養基材を含むことができる。また、前記骨芽細胞分化誘導方法〔1〕に記載の魚類由来コラーゲン、及び細胞培養基材を用いて、「細胞培養基材へのコラーゲンの被覆」に記載の方法、及び公知の方法に従って、骨芽細胞分化誘導用培養基材を製造することが可能である。
前記間葉系細胞との接触面には、魚類由来コラーゲンが被覆されているが、具体的にはフラスコ、又はシャーレの細胞培養面、マルチカルチャープレートのウェルの底面、ビーズの表面、又は多孔質体の表面などであり、間葉系細胞が接触することのできるものである。
また、本発明の骨芽細胞分化誘導キットは、骨芽細胞分化誘導因子を含んでもよい。骨芽細胞分化誘導因子としては、デキサメタゾン、FK−506又はシクロスポリン等の免疫抑制剤、BMP2、BMP4、BMP5、BMP6、BMP7又はBMP9等の骨形成タンパク質(BMP:Bone Morphogenic Proteins)、TGFβ等の骨形成液性因子を挙げることができる。本発明の骨芽細胞分化誘導キットは、これらの骨芽細胞分化誘導因子から選択される1種又は2種以上を含むことができる。
また、本発明の骨芽細胞分化誘導キットは、間葉系幹細胞からの骨芽細胞の分化誘導用であることを明記した使用説明書を含んでもよい。間葉系幹細胞からの骨芽細胞の分化誘導用である旨の記載は、キットの容器等に付されていてもよい。
本発明の骨芽細胞製造装置は、骨芽細胞分化誘導用培養基材を含むものである。骨芽細胞分化誘導用培養基材は、魚類由来コラーゲンが被覆された、間葉系幹細胞との接触面を有するものであり、本発明の骨芽細胞分化誘導キットに含まれるものと同じものを用いることができる。
また、本発明の骨芽細胞製造装置は、細胞培養用のCOインキュベータを含んでもよい。COインキュベータ中で、骨芽細胞分化誘導用培養基材を用いて、間葉系幹細胞からの骨芽細胞を製造することができる。
〔3〕骨芽細胞分化誘導方法
本発明の骨芽細胞分化誘導方法は、魚類由来コラーゲンで被覆された細胞培養基材と、間葉系幹細胞とを接触させる工程(以下、魚類コラーゲン接触工程と称することがある)を含むことを特徴とするものである。
本発明の骨芽細胞分化誘導方法においては、前記骨芽細胞分化誘導用培養基材に記載の魚類由来コラーゲン、及び細胞培養基材を用いることができ、そして細胞培養基材に魚類由来コラーゲンを、前記「細胞培養基材へのコラーゲンの被覆」の記載、及び公知の方法にしたがって被覆することができる。しかしながら、魚類由来コラーゲンが被覆された細胞培養基材は、特に骨芽細胞分化誘導用の用途に限定されたものを用いる必要はない。
また、骨芽細胞分化誘導方法に用いる間葉系幹細胞も、骨芽細胞分化誘導用培養基材に記載の間葉系幹細胞を用いることができ、分化誘導される骨芽細胞の特徴は、前記のとおりである。
(接触)
骨芽細胞分化誘導方法において、前記細胞培養基材と、間葉系幹細胞との接触に用いる培地は、間葉系幹細胞が維持できる培地であれば限定されないが、通常その間葉系幹細胞の培養に用いる培地を用いればよい。例えば、MEM培地、α−MEM培地、又はDMEM培地等の公知の培地を、培養する細胞に合わせて適宜選んで用いることができる。
接触時間は、間葉系幹細胞の骨芽細胞への分化誘導が起きる限りにおいて、限定されないが、実質的には、下限は10分以上であり、好ましくは1時間以上であり、より好ましくは1日以上である。接触時間の上限も限定されないが、30日以下であり、好ましくは15日以下であり、より好ましくは7日以下である。
接触温度は、間葉系幹細胞の最適な培養温度に従って、適宜決定することができる。例えば、哺乳類の間葉系幹細胞の場合、30℃〜40℃であり、35℃〜37℃が好ましい。しかしながら、培養温度よりも高い温度、又は低い温度で接触させることも可能である。例えば、変性温度が低い魚類由来コラーゲンを用いた場合、培養温度よりも低い接触温度で、細胞培養基材と、間葉系幹細胞との接触を行い、最適な培養温度に上昇させて、間葉系幹細胞の培養を行うことも可能である。
通常、骨芽細胞分化誘導は、10〜15%程度の血清の存在下で行う。本発明の骨芽細胞分化誘導方法においても、10〜15%程度の血清の存在下で分化誘導を行うことが可能であるが、低濃度の血清の存在下、又は血清の非存在下でも骨芽細胞分化誘導を行うことが可能である。間葉系幹細胞から骨芽細胞分化誘導する場合の、血清中の様々な因子の影響を排除するためには、低濃度の血清の存在下で接触させるのが好ましい。例えば、10%以下の血清存在下が好ましく、5%以下の血清存在下がより好ましく、3%以下の血清存在下が更に好ましく、血清非存在下が最も好ましい。
骨芽細胞分化誘導において用いることのできる血清は、哺乳動物の血清であれば、特に限定されないが、ヒト、ウシ、ウマ、ヒツジ、又はヤギなどの血清を用いることができる。しかしながら、間葉系幹細胞を生体から分離した場合、その間葉系幹細胞を採取した個体の血清を用いることが最も好ましい。その個体自体の血清を用いることにより、ウシなどの血清に含まれる可能性のある人畜共通感染症の病原体との接触を防ぐことが可能である。
(骨芽細胞分化誘導因子)
本発明の骨芽細胞分化誘導方法は、前記間葉系幹細胞を骨芽細胞分化誘導因子に接触させる工程(以下、骨芽細胞分化誘導因子接触工程と称することがある)を、含むことができる。骨芽細胞分化誘導因子接触工程は、魚類コラーゲン接触工程と同時に行ってもよく、魚類コラーゲン接触工程の前又は後に行ってもよい。骨芽細胞分化誘導因子接触工程は、骨芽細胞分化誘導因子を、間葉系幹細胞が含まれている培地に添加することによって行うことができる。
骨芽細胞分化誘導因子は、間葉系幹細胞を骨芽細胞に分化誘導できる限り、限定されるものではないが、例えば、デキサメタゾン、FK−506又はシクロスポリン等の免疫抑制剤、BMP2、BMP4、BMP5、BMP6、BMP7又はBMP9等の骨形成タンパク質(BMP:Bone Morphogenic Proteins)、TGFβ等の骨形成液性因子を挙げることができる。これらの骨芽細胞分化誘導因子から選択される1種又は2種以上を、培地に添加することにより、骨芽細胞分化誘導因子接触工程を行うことができる。
骨芽細胞分化誘導因子の濃度は、用いる骨芽細胞分化誘導因子の種類に応じて、適宜決めることができる。例えば、デキサメタゾンを用いる場合、1〜100nMの濃度で用いることができ、特には10nMが好ましい。
本発明の骨芽細胞分化誘導方法においては、第1の魚類由来コラーゲン以外の第2のコラーゲン少なくとも1つが被覆された細胞培養基材と、間葉系幹細胞とを接触させる第2コラーゲン接触工程を更に含んでもよい。
第2コラーゲン接触工程において用いる第2のコラーゲンとしては、本発明の骨芽細胞分化誘導用培養基材に記載の第2のコラーゲンを用いることができる。また、第2のコラーゲンの細胞培養基材への被覆も、本発明の骨芽細胞分化誘導用培養基材に記載の方法に従って、被覆することができる。
本発明の骨芽細胞分化誘導方法における魚類コラーゲン接触工程、第2コラーゲン接触工程、及び骨芽細胞分化誘導因子接触工程は、同時に行ってもよく、別々に行ってもよい。それぞれの工程を別に行う場合、3つの工程を別に行ってもよく、2つの工程を同時に行い、もう1つの工程を別に行うこともできる。
それぞれの工程を行う順番も、特に限定されないが、魚類コラーゲン接触工程により、骨芽細胞の初期分化誘導が強く惹起されるため、魚類コラーゲン接触工程、及び第2コラーゲン接触工程を別に行う場合は、魚類コラーゲン接触工程を行い、次に2コラーゲン接触工程を行うことが好ましい。第2コラーゲン接触工程により、魚類コラーゲン接触工程により分化した骨芽細胞が、更に分化誘導されるからである。
本発明の骨芽細胞分化誘導用培養基材は、上述の本発明の骨芽細胞分化誘導方法に使用することができる。
〔4〕骨芽細胞製造方法及び骨芽細胞
本発明の骨芽細胞製造方法は、魚類由来コラーゲンで被覆された細胞培養基材によって、間葉系幹細胞を培養する工程を含むことを特徴とするものである。
前記骨芽細胞分化誘導方法を用いて、骨芽細胞を製造することができる。すなわち、本発明の骨芽細胞製造方法においては、前記骨芽細胞分化誘導用培養基材に記載の魚類由来コラーゲン、及び細胞培養基材を用いることができ、そして細胞培養基材に魚類由来コラーゲンを、前記「細胞培養基材へのコラーゲンの被覆」の記載にしたがって被覆することができる。しかしながら、魚類由来コラーゲンが被覆された細胞培養基材は、特に骨芽細胞分化誘導用の用途に限定されたものを用いる必要はない。
また、骨芽細胞分化誘導方法に用いる間葉系幹細胞も、骨芽細胞分化誘導用培養基材に記載の間葉系幹細胞を用いることができる。
(培養)
本発明の骨芽細胞製造方法における培地は、用いる間葉系幹細胞、例えば骨髄間葉系幹細胞、脂肪組織由来間葉系幹細胞、滑膜組織由来間葉系幹細胞、歯髄由来間葉系幹細胞、歯胚由来間葉系幹細胞、耳介軟骨膜由来間葉系幹細胞、末梢血由来間葉系幹細胞、臍帯血由来間葉系幹細胞、靭帯由来間葉系幹細胞、腱由来間葉系幹細胞、ES細胞由来間葉系幹細胞、又はiPS細胞由来間葉系幹細胞に合わせて、適宜選択することができる。例えば、骨髄間葉系幹細胞の場合、MEM培地、α−MEM培地、又はDMEM培地等を用いることができる。また、前記の培地には、抗生物質等を添加してもよい。
培養時間は、間葉系幹細胞の骨芽細胞への分化誘導が起きる限りにおいて、限定されないが、1日〜30日であり、好ましくは1日〜14日であり、より好ましくは3日〜10日である。
培養温度は、間葉系幹細胞の最適な培養温度に従って、適宜決定することができるが、哺乳類の間葉系幹細胞の場合、30℃〜40℃が好ましく、35℃〜37℃がより好ましい。しかしながら、変性温度が低い魚類由来コラーゲンを用いた場合、間葉系幹細胞の培養の最適温度よりも低い温度で培養することも可能である。また、培養は、3〜10%のCO存在下で行うことが好ましく、5%CO存在下で行うことがより好ましい。
通常、間葉系幹細胞の培養は、10〜15%程度の血清の存在下で行い、骨芽細胞を製造する。本発明の骨芽細胞製造方法においても、10〜15%程度の血清の存在下で骨芽細胞を製造することが可能であるが、低濃度の血清の存在下、又は血清の非存在下でも骨芽細胞の製造を行うことが可能である。間葉系幹細胞から骨芽細胞を製造する場合の、血清中の様々な因子の影響を排除するためには、低濃度の血清の存在下で製造するのが好ましい。例えば、10%以下の血清存在下が好ましく、5%以下の血清存在下がより好ましく、3%以下の血清存在下が更に好ましく、血清非存在下が最も好ましい。
骨芽細胞の製造において用いることのできる血清は、哺乳動物の血清であれば、特に限定されないが、ヒト、ウシ、ウマ、ヒツジ、又はヤギなどの血清を用いることができる。しかしながら、間葉系幹細胞を生体から分離した場合、その間葉系幹細胞を採取した個体の血清を用いることが最も好ましい。その個体自体の血清を用いることにより、ウシなどの血清に含まれる可能性のある人畜共通感染症の病原体との接触を防ぐことが可能である。
(骨芽細胞分化誘導因子)
本発明の骨芽細胞製造方法において、培養用の培地に骨芽細胞分化誘導因子を含むことができる。骨芽細胞分化誘導因子は、培養の開始から添加してもよく、培養の途中で添加してもよい。
骨芽細胞分化誘導因子は、間葉系幹細胞を骨芽細胞に分化誘導できる限り、限定されるものではないが、例えば、デキサメタゾン、FK−506又はシクロスポリン等の免疫抑制剤、BMP2、BMP4、BMP5、BMP6、BMP7又はBMP9等の骨形成タンパク質(BMP:Bone Morphogenic Proteins)、TGFβ等の骨形成液性因子を挙げることができる。これらの骨芽細胞分化誘導因子から選択される1種又は2種以上を、培地に添加することにより、骨芽細胞分化誘導因子接触工程を行うことができる。
骨芽細胞分化誘導因子の濃度は、用いる骨芽細胞分化誘導因子の種類に応じて、適宜決めることができる。例えば、デキサメタゾンを用いる場合、1〜100nMの濃度で用いることができ、特には10nMが好ましい。
本発明の骨芽細胞製造方法においては、細胞培養基材が前記被覆された第1の魚類由来コラーゲン以外の第2のコラーゲン少なくとも1つが被覆された間葉系幹細胞との接触面を有してもよい。すなわち、本発明の骨芽細胞製造方法においては、第2のコラーゲンが被覆された細胞培養基材による培養を、更に行ってもよい。
第2のコラーゲンとしては、本発明の骨芽細胞分化誘導用培養基材に記載の第2のコラーゲンを用いることができる。また、第2のコラーゲンの細胞培養基材への被覆も、本発明の骨芽細胞分化誘導用培養基材に記載の方法に従って、被覆することができる。
第2のコラーゲンが被覆された細胞培養基材による培養は、第1の魚類由来コラーゲンが被覆された細胞培養基材による培養と同時に行ってもよく、別々に行ってもよい。第1の魚類由来コラーゲン及び第2のコラーゲンが、同じ接触面に被覆された細胞培養基材を用いる場合は、それぞれの培養は同時に行われる。一方、第1の魚類由来コラーゲン及び第2のコラーゲンが異なる接触面に被覆されている場合は、それぞれの培養は、同時に行うこともでき、また別々に行うこともできる。培養を同時に行う場合は、例えばマルチカルチャープレートのウェルの底面に第1の魚類由来コラーゲンを被覆し、ビーズの表面に第2のコラーゲンを被覆して、マルチカルチャープレート及びビーズを組み合わせた、細胞培養基材を用いればよい。更に、それぞれの培養は、骨芽細胞分化誘導因子の存在下で行ってもよく、骨芽細胞分化誘導因子の非存在下で行ってもよい。
本発明の骨芽細胞分化誘導用培養基材は、上述の本発明の骨芽細胞製造方法に使用することができる。
(骨芽細胞)
本発明の骨芽細胞は、本発明の製造方法により得ることのできる骨芽細胞であり、骨組織において骨形成を行うことができる。前記骨芽細胞は、間葉系幹細胞から、骨芽前駆細胞に分化し、更に骨芽細胞へと分化されたものである。また、骨芽細胞の細胞質は好塩基性を示し、アルカリホスファターゼ活性を有している。更に、本発明の骨芽細胞は、アンドロゲンとエストロゲンのレセプターを持っていてもよい。アンドロゲンは骨芽細胞の活動性を低下させ、エストロゲンは骨芽細胞を刺激するものである。
〔5〕魚類由来コラーゲンの使用
本発明の魚類由来コラーゲンの使用は、骨芽細胞分化誘導、又は骨芽細胞の製造を目的とするものである。具体的には、細胞培養基材に使用するものであり、より具体的には、細胞培養基材に被覆するものである。魚類由来コラーゲンとしては、前記前記骨芽細胞分化誘導方法〔1〕に記載の魚類由来コラーゲンを用いることができる。また、細胞培養基材への魚類由来コラーゲンの被覆は、前記骨芽細胞分化誘導方法〔1〕の「細胞培養基材へのコラーゲンの被覆」に記載の方法及び公知の方法に従って、行うことが可能である。
更に、魚類由来コラーゲンは、本発明の骨芽細胞分化誘導キットの製造に使用することができる。また、本明細書は本発明の骨芽細胞分化誘導キットの使用を開示している。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
《アルカリホスファターゼ活性の測定》
実施例で得られた骨芽細胞のアルカリホスファターゼの測定は以下のように行った。
細胞をPBS(−)(pH7.4)で洗浄後、スクレイパーで回収し、200μLの100mM Tris−HCl(pH7.5)、5mM MgCl、0.2%Triton X−100に懸濁して超音波破砕した。破砕後、6,000gで10分間遠心して上清を回収した。上清20μL(適宜100mM Tris−HCl(pH7.5),5mM MgClにて希釈)を使用し、LabAssay ALP(Wako)を用いてアルカリホスファターゼ活性を測定した。
《製造例1:魚類由来コラーゲンの製造》
テラピアの鱗からのコラーゲンの製造方法を以下に記載する。
テラピアの鱗を水で十分洗浄し、更に10%塩化ナトリウム溶液で十分洗浄し、鰭などの夾雑物を除去した後、室温にて乾燥した。含水率は18.5%であった。
このテラピア鱗1kgをpH2の塩酸溶液9kgに分散し、1Mの塩酸溶液を添加しながらpHを2に保った状態で、25℃、2時間穏やかに攪拌し、鱗に含まれる無機成分を溶出した。これをザルにあげて、十分水洗した後、総重量が4kgとなるようにpH2の塩酸溶液を添加した。
これに、ペプシン(和光純薬 1:10000)24gを添加し、攪拌羽根を用いて25℃、24時間、穏やかに攪拌して、鱗からコラーゲンを溶出した。これをザルにあげて、鱗残渣と分離した後、更に遠心分離(10000G、60min)により上澄を回収して微細な鱗残渣と分離した。これに、ペプシンを0.5g添加し、25℃、24時間保持した。
得られた溶液(2.4kg)を0.45μmのメンブレンフィルターでろ過した後、終濃度が1.0Mになるように塩化ナトリウムを加えて緩やかに攪拌した。25℃、30min静置して塩析した後、遠心分離(10000G,20min)により上澄を除去し、コラーゲンの沈殿物を回収した。この沈殿物にpH2の塩酸溶液400mLを加え、5℃、24時間緩やかに攪拌して溶解した。この塩析精製工程を3回繰り返し、コラーゲン塩酸水溶液を得た。
《製造例2:魚鱗由来のコラーゲンで被覆した細胞培養基材の製造》
前記製造例1で得られたテラピア鱗由来のコラーゲン溶液を、pH3の0.01M酢酸溶液を用いて0.3wt%に希釈した。アイスプレート上で、ポリスチレン製12ウェル細胞培養プレート(FALCON社製)に、前記コラーゲン溶液500μLを薄く広げて、25℃で60分静置した。余分なコラーゲン溶液を除去し、クリーンベンチ内で25℃、60分間乾燥した。
テラピア鱗由来コラーゲンの被覆されたウェルの表面を、位相差顕微鏡で観察した写真を図4Aに示す。50〜200nm程度の太さのコラーゲン線維が、基材と接合し、均一に被覆されていた。
《比較製造例1:豚由来のコラーゲンで被覆した細胞培養基材の製造》
テラピア鱗由来のコラーゲン溶液(0.3wt%)に代えて、豚由来のコラーゲン(新田ゼラチン製、Cellmatrix Type I−C)溶液(0.03wt%、)を使用したことを除いては、製造例2の操作を繰り返し、豚由来のコラーゲンを被覆したウェルを作成した。
豚由来コラーゲンの被覆されたウェルの表面を、位相差顕微鏡で観察した写真を図4Bに示す。コラーゲン線維は見られず、いくつかの凝集体が見られた。
《実施例1及び比較例1:ヒト骨髄由来間葉系幹細胞からの骨芽細胞への分化》
本実施例では、製造例1で得られた魚類由来コラーゲンで被覆された細胞培養プレートを用いて、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞からの骨芽細胞への分化を行った。
(1)実施例1
ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hMSC;Lonza,Lot.No.6F3974)を1.0×10cells/wellで、魚類由来コラーゲンで被覆された細胞培養プレートに播種した。培地は、15%FBS添加α−MEMを用い、37℃、5%CO雰囲気下で、20時間培養を行った。細胞を回収し、アルカリホスファターゼの活性を測定した。結果を図1に示す。
なお、回収した細胞は、Quant−iTTM Pico Green ds DNA assay kit(invitrogen社)を用いてDNA量を定量し、測定したDNA量によりアルカリホスファターゼの活性を補正した。
(2)比較例1
比較例として、比較製造例1で得られた豚由来のコラーゲンで被覆された細胞培養プレート、又はコラーゲンを被覆していない細胞培養プレートを用いて、骨髄由来間葉系幹細胞を骨芽細胞へ分化を試みた。
魚鱗由来のコラーゲンを被覆した細胞培養プレートに代えて、豚由来のコラーゲンで被覆した細胞培養プレート、又はコラーゲンを被覆していない細胞培養プレートを用いたことを除いては、前記実施例1の操作を繰り返した。結果を図1に示す。
図1に示すように、豚由来コラーゲン被覆プレート又は非被覆プレートで培養したヒト骨髄由来間葉系幹細胞は、アルカリホスファターゼの活性が非常に低かった。一方、テラピアの鱗由来のコラーゲンを被覆したプレートによって培養したヒト骨髄由来間葉系幹細胞は、アルカリホスファターゼの活性が高く、テラピアの鱗由来のコラーゲンを被覆したプレートと接触することによって、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞は骨芽細胞へ分化した。
《実施例2及び比較例2:ヒト骨髄由来間葉系幹細胞からの骨芽細胞への分化》
本実施例では、魚類由来コラーゲンで被覆された細胞培養プレートを用いて、3%又は15%のFBS存在下における、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞からの骨芽細胞への分化を行った。
(1)実施例2
ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hMSC;Lonza,Lot.No.6F3974)を1.0×10cells/wellで、プレートに播種した。15%FBS添加α−MEMを用い、37℃、5%CO雰囲気下で、20時間前培養した。
培地を除去し、3%FBS又は15%FBSを含むα−MEM培地に交換した。37℃、5%CO雰囲気下で、7日間培養した。3日後及び7日後に細胞を回収し、アルカリホスファターゼの活性を測定した。結果を図2A及びB(Dex−3%及びDex−15%)に示す。
なお、回収した細胞について、Quant−iTTM Pico Green ds DNA assay kit(invitrogen社)を用いてDNA量を定量し、測定したDNA量によりアルカリホスファターゼの活性を補正した。また、図3A(Dex−3%及びDex−15%)に培養開始3日、7日、及び10日の細胞の増殖をDNA量により示した。
(2)比較例2
比較例として、比較製造例1で得られた豚由来のコラーゲンで被覆された細胞培養プレート、又はコラーゲンを被覆していない細胞培養プレートを用いて、骨髄由来間葉系幹細胞を骨芽細胞へ分化を試みた。
魚鱗由来のコラーゲンを被覆した細胞培養プレートに代えて、豚由来のコラーゲンで被覆した細胞培養プレート、又はコラーゲンを被覆していない細胞培養プレートを用いたことを除いては、前記実施例2の操作を繰り返した。結果を図2A及びB(Dex−3%及びDex−15%)に示す。
なお、回収した細胞について、Quant−iTTM Pico Green ds DNA assay kit(invitrogen社)を用いてDNA量を定量し、測定したDNA量によりアルカリホスファターゼの活性を補正した。また、図3B及びC(Dex−3%及びDex−15%)に培養開始3日、7日、及び10日の細胞の増殖をDNA量により示した。
図2Aに示すように、豚由来コラーゲン被覆プレート又は非被覆プレートで培養したヒト骨髄由来間葉系幹細胞は、血清濃度3%および15%のいずれも骨芽細胞分化誘導3日後のアルカリホスファターゼの活性が非常に低かった。一方、テラピアの鱗由来のコラーゲンを被覆したプレートによって培養したヒト骨髄由来間葉系幹細胞は、血清濃度3%および15%のいずれも骨芽細胞分化誘導3日後のアルカリホスファターゼの活性が高く、テラピアの鱗由来のコラーゲンを被覆したプレートと接触することによって、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞は骨芽細胞へ分化した。
また、図2Bに示すように、豚由来コラーゲン被覆プレート又は非被覆プレートで培養したヒト骨髄由来間葉系幹細胞は、特に血清濃度3%で骨芽細胞分化誘導7日後のアルカリホスファターゼの活性が非常に低かった。一方、テラピアの鱗由来のコラーゲンを被覆したプレートによって培養したヒト骨髄由来間葉系幹細胞は、特に血清濃度3%で骨芽細胞分化誘導7日後のアルカリホスファターゼの活性が高く、テラピアの鱗由来のコラーゲンを被覆したプレートと接触することによって、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞は骨芽細胞へ分化した。
《実施例3及び比較例3:ヒト骨髄由来間葉系幹細胞からの骨芽細胞への分化》
本実施例では、魚類由来コラーゲンで被覆された細胞培養プレート及び骨芽細胞分化誘導因子(デキサメタゾン)を用いて、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞からの骨芽細胞への分化を行った。
(1)実施例3
ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hMSC;Lonza,Lot.No.6F3974)を1.0×10cells/wellで、プレートに播種した。15%FBS添加α−MEMを用い、37℃、5%CO雰囲気下で、20時間培養した。
培地を除去し、3%FBS又は15%FBS、及び10nM デキサメタゾン、50μg/mL L−アスコルビン酸、10mM β−グリセロリン酸を含むα−MEM培地に交換した。37℃、5%CO雰囲気下で、7日間培養した。3日後及び7日後に細胞を回収し、アルカリホスファターゼの活性を測定した。結果を図2A及びB(Dex+3%及びDex+15%)に示す。
なお、回収した細胞について、Quant−iTTM Pico Green ds DNA assay kit(invitrogen社)を用いてDNA量を定量し、測定したDNA量によりアルカリホスファターゼの活性を補正した。また、図3A(Dex+3%及びDex+15%)に培養開始3日、7日、及び10日の細胞の増殖をDNA量により示した。
(2)比較例3
比較例として、比較製造例1で得られた豚由来のコラーゲンで被覆された細胞培養プレート、又はコラーゲンを被覆していない細胞培養プレートを用いて、骨髄由来間葉系幹細胞の骨芽細胞への分化を試みた。
魚鱗由来のコラーゲンを被覆した細胞培養プレートに代えて、豚由来のコラーゲンで被覆した細胞培養プレート、又はコラーゲンを被覆していない細胞培養プレートを用いたことを除いては、前記実施例3の操作を繰り返した。結果を図2A及びBに示す。
なお、回収した細胞について、Quant−iTTM Pico Green ds DNA assay kit(invitrogen社)を用いてDNA量を定量し、測定したDNA量によりアルカリホスファターゼの活性を補正した。また、図3B及びC(Dex+3%及びDex+15%)に培養開始3日、7日、及び10日の細胞の増殖をDNA量により示した。
図2Aに示すように、豚由来コラーゲン被覆プレート又は非被覆プレートで培養したヒト骨髄由来間葉系幹細胞は、血清濃度3%および15%のいずれも骨芽細胞分化誘導3日後のアルカリホスファターゼの活性が非常に低かった。一方、テラピアの鱗由来のコラーゲンを被覆したプレートによって培養したヒト骨髄由来間葉系幹細胞は、血清濃度3%および15%のいずれも骨芽細胞分化誘導3日後のアルカリホスファターゼの活性が高かった。
また、図2Bに示すように、豚由来コラーゲン被覆プレート又は非被覆プレートで培養したヒト骨髄由来間葉系幹細胞は、血清濃度3%および15%のいずれも骨芽細胞分化誘導7日後のアルカリホスファターゼの活性が非常に低かった。一方、テラピアの鱗由来のコラーゲンを被覆したプレートによって培養したヒト骨髄由来間葉系幹細胞は、血清濃度3%および15%のいずれも骨芽細胞分化誘導7日後のアルカリホスファターゼの活性が高かった。
(実施例2及び3の結果)
図2Aに示すように、3%FBS存在下又は15%FBS存在下(実施例2)において、魚類由来コラーゲン被覆細胞培養プレートとの接触により、培養開始3日後のヒト骨髄由来間葉系幹細胞のアルカリホスファターゼの活性が上昇しており、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞は骨芽細胞へ分化したことが確認された。特に、3%FBS存在下でのアルカリホスファターゼの活性の上昇が大きかった。しかしながら、豚由来コラーゲン被覆プレート又は非被覆プレートとの接触では、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞のアルカリホスファターゼの活性は、3%FBS存在下又は15%FBS存在下においても実施例2の1/6以下であり、骨芽細胞への分化は確認できなかった。
更に骨芽細胞分化誘導因子であるデキサメタゾンを添加した実施例3においても、培養開始3日後及び7日後に、魚類由来コラーゲン被覆細胞培養プレートとの接触により、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞のアルカリホスファターゼの活性が上昇した(図2A及びB)。デキサメタゾンを添加しない場合と同じように、3%FBS存在下でのアルカリホスファターゼの活性の上昇が大きかった。しかしながら、デキサメタゾンを添加した場合においても、豚由来コラーゲン被覆プレート又は非被覆プレートとの接触では、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞のアルカリホスファターゼの活性の上昇は少なく、3日後においても実施例3の1/6以下であり、7日後において、若干アルカリホスファターゼの活性が上昇したのみであった。
すなわち、本発明の方法によれば、魚類由来コラーゲン被覆細胞培養プレートとの接触の初期段階で、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞は骨芽細胞への強力な初期分化誘導が起こることがわかった。豚由来のコラーゲンで被覆した細胞培養プレートでは、骨芽細胞への分化は、観察されなかった。更に、魚類由来コラーゲン被覆細胞培養プレートとの接触による間葉系幹細胞の骨芽細胞への分化は、代表的な骨芽細胞分化誘導因子であるデキサメタゾンと比較しても強いものであった。
なお、図3に示すように、細胞の増殖(DNA量)は、魚類由来コラーゲン被覆細胞培養プレート、豚由来コラーゲン被覆プレート又は非被覆プレートのいずれを用いた場合においても、大きな差は見られなかった。従って、魚類由来コラーゲン被覆細胞培養プレートとの接触によるヒト骨髄由来間葉系幹細胞は骨芽細胞へ分化は、細胞の増殖とは関係なく起きているものであると考えられる。
《実施例4及び比較例4:骨分化マーカー遺伝子の発現》
本実施例では、実施例1におけるヒト骨髄由来間葉系幹細胞の骨芽細胞へ分化を、骨分化マーカー遺伝子のmRNAの検出によって確認した。
(1)実施例4
ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hMSC;Lonza,Lot.No.6F3974)を1.0×10cells/wellで、製造例2で得られたプレートに播種した。培地は、15%FBS含有α−MEMを用い、37℃、5%CO雰囲気下、20時間前培養を行った。細胞からRNeasy Micro Kit(QIAGEN社)を用い、添付のプロトコールに従ってトータルRNAを回収した。Transcriptor First Strand cDNA Synthesis Kit(Roche)を用いて、得られたトータルRNAからcDNAを合成した。合成されたcDNAを鋳型として、bone morohogenetic protein 2(BMP2)、及びOsteopontin(SPP1)の発現を、THUNDERBIRD SYBR qPCR Mix(TOYOBO)を用い、リアルタイムPCRで測定した。用いたプライマーは、以下のとおりである。なお、骨芽細胞の分化において発現が変動しないGlyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase(GAPDH)を、コントロールとして測定した。結果を図5A及びBに示す。
BMP2
Forward primer:5’- TCA AGC CAA ACA CAA ACA GC -3’
Reverse primer:5’- ACG TCT GAA CAA TGG CAT GA -3’
増幅されるPCR産物の長さは、200bpである。
Osteopontin (SPP1)
Forward primer:5’- TTC GCA GAC CTG ACA TCC AGT ACC C -3’
Reverse primer:5’- GGG GAT GGC CTT GTA TGC ACC ATT C -3’
増幅されるPCR産物の長さは、98bpである。
GAPDH
Forward primer:5’- CAT GGA GAA GGC TGG GGC TCA TTT G -3’
Reverse primer:5’- GTT CAC ACC CAT GAC GAA CAT GGG G -3’
増幅されるPCR産物の長さは、97bpである。
(2)比較例4
比較例として、比較製造例1で得られた豚由来のコラーゲンで被覆された細胞培養プレート、又はコラーゲンを被覆していない細胞培養プレートを用いて、BMP2及びSPP1の発現を確認した。
魚鱗由来のコラーゲンを被覆した細胞培養プレートに代えて、豚由来のコラーゲンで被覆した細胞培養プレート、又はコラーゲンを被覆していない細胞培養プレートを用いたことを除いては、前記実施例4の操作を繰り返した。結果を図5A及びBに示す。
図5に示すように、豚コラーゲン被膜プレート及び被膜無プレートに比べて、テラピアコラーゲン被膜プレートで培養したhMSCにおけるBMP2及びSPP1の遺伝子発現は、培養(接触)20時間において、極めて高かった。すなわち、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞は、テラピアの鱗由来のコラーゲンを被覆したプレートとの接触の初期に、骨芽細胞へ分化した。
《実施例5及び比較例5:骨分化マーカー遺伝子の発現》
本実施例では、実施例2及び3におけるヒト骨髄由来間葉系幹細胞の骨芽細胞へ分化を、骨分化マーカー遺伝子のmRNAの検出によって確認した。
ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hMSC;Lonza,Lot.No.6F3974)を1.0×10cells/wellで、製造例2で得られたプレートに播種した。培地は、15%FBS含有α−MEMを用い、37℃、5%CO雰囲気下、20時間前培養を行った。培地を除去し、骨分化誘導因子(10nM デキサメタゾン),50μg/mL L−アスコルビン酸及び10mM β−グリセロリン酸を添加したもの及び骨分化誘導因子を添加していない3%FBS又は15%FBS含有α−MEMに置換した。3日目に細胞を回収し、細胞からRNeasy Micro Kit(QIAGEN社)を用い、添付のプロトコールに従ってトータルRNAを回収した。Transcriptor First Strand cDNA Synthesis Kit(Roche)を用いて、得られたトータルRNAからcDNAを合成した。合成されたcDNAを鋳型として、bone morohogenetic protein 2(BMP2)、及びOsteopontin(SPP1)の発現を、THUNDERBIRD SYBR qPCR Mix(TOYOBO)を用い、リアルタイムPCRで測定した。プライマーは、前記実施例4に記載のプライマーを用いた。結果を図6A及びBに示す。
(2)比較例5
比較例として、比較製造例1で得られた豚由来のコラーゲンで被覆された細胞培養プレート、又はコラーゲンを被覆していない細胞培養プレートを用いて、BMP2及びSPP1の発現を確認した。
魚鱗由来のコラーゲンを被覆した細胞培養プレートに代えて、豚由来のコラーゲンで被覆した細胞培養プレート、又はコラーゲンを被覆していない細胞培養プレートを用いたことを除いては、前記実施例4の操作を繰り返した。結果を図6A及びBに示す。
図6に示すように、テラピアの鱗由来のコラーゲンを被覆したプレートとの培養(接触)の初期と比較するとBMP2及びSPP1のmRNAの発現は減少した。しかしながら、豚由来コラーゲン被覆プレート又は非被覆プレートで培養したヒト骨髄由来間葉系幹細胞と比較して、テラピアの鱗由来のコラーゲンを被覆したプレートによって培養したヒト骨髄由来間葉系幹細胞は、BMP2及びSPP1のmRNAの発現が高かった。特に、3%FBS存在下で培養した場合、MP2及びSPP1のmRNAの発現が高かった。
BMP2及びOsteopontinは骨芽細胞への分化の初期段階で高発現する遺伝子であることから、魚類由来コラーゲン被膜培養プレートとの接触初期段階で、hMSCは骨芽細胞へ分化することが骨分化マーカー遺伝子の発現からも示された。
《製造例3:魚鱗由来のコラーゲンで被覆した細胞培養基材の製造》
本製造例では、テラピア由来のコラーゲンを塩酸で希釈し、骨芽細胞分化誘導用培養基材を製造した。
テラピア鱗由来のコラーゲン溶液(0.3重量%/0.01M HCl)500μLを、ポリスチレン製12ウェル細胞培養プレート(FALCON社製)に薄く広げて、25℃で60分静置した。余分なコラーゲン溶液を除去し、クリーンベンチ内で25℃、60分間乾燥した。
《比較製造例2:豚由来のコラーゲンで被覆した細胞培養基材の製造》
本比較製造例では、豚由来のコラーゲンを塩酸で希釈し、0.3wt%の濃度で被覆し、細胞培養基材を製造した。
テラピア鱗由来のコラーゲン溶液(0.3wt%)に代えて、豚由来のコラーゲン(新田ゼラチン製、Cellmatrix Type I−C)溶液(0.3wt%、)を使用したことを除いては、製造例3の操作を繰り返し、豚由来のコラーゲンを被覆したウェルを作成した。
《実施例6及び比較例6:ヒト骨髄由来間葉系幹細胞からの骨芽細胞への分化》
本実施例では、製造例3で得られた魚類由来コラーゲンで被覆された細胞培養プレートを用いて、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞からの骨芽細胞への分化を行った。
(1)実施例6
製造例2で得られたプレートに代えて製造例3で得られたプレートを用いたこと、15%FBS含有α−MEMに代えて10%FBS添加D−MEM(high−glucose)を用いたこと、を除いては、実施例1の操作を繰り返した。結果を図7Aに示す。
(2)比較例6
比較例として、比較製造例2で得られた豚由来のコラーゲンで被覆された細胞培養プレート、又はコラーゲンを被覆していない細胞培養プレートを用いて、骨髄由来間葉系幹細胞を骨芽細胞へ分化を試みた。
製造例3で得られたプレートに代えて、比較製造例2で得られたプレート又はコラーゲンを被覆していない細胞培養プレートを用いたことを除いては、実施例6の操作を繰り返した。結果を図7Aに示す。
図7Aに示すように、豚由来コラーゲン被覆プレート又は非被覆プレートで培養したヒト骨髄由来間葉系幹細胞は、アルカリホスファターゼの活性が非常に低かった。一方、テラピアの鱗由来のコラーゲンを被覆したプレートによって培養したヒト骨髄由来間葉系幹細胞は、アルカリホスファターゼの活性が高く、テラピアの鱗由来のコラーゲンを被覆したプレートと接触することによって、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞は骨芽細胞へ分化した。
《実施例7及び比較例7:ヒト骨髄由来間葉系幹細胞からの骨芽細胞への分化》
本実施例では、魚類由来コラーゲンで被覆された細胞培養プレートを用いて、3%FBS存在下における、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞からの骨芽細胞への分化を行った。
(1)実施例7
製造例2で得られたプレートに代えて製造例3で得られたプレートを用いたこと、15%FBS含有α−MEMに代えて10%FBS添加D−MEM(high−glucose)を用いたこと、3%又は15%FBSを含むα−MEM培地に代えて3%FBSを含むD−MEM(high−glucose)培地を用いたことを除いては、実施例2の操作を繰り返した。細胞の回収は3日後に行った。結果を図7B(Dex(−))に示す。
(2)比較例7
比較例として、比較製造例2で得られた豚由来のコラーゲンで被覆された細胞培養プレート、又はコラーゲンを被覆していない細胞培養プレートを用いて、骨髄由来間葉系幹細胞を骨芽細胞へ分化を試みた。
製造例3で得られたプレートに代えて、比較製造例2で得られたプレート又はコラーゲンを被覆していない細胞培養プレートを用いたことを除いては、実施例7の操作を繰り返した。結果を図7B(Dex(−))に示す。
《実施例8及び比較例8:ヒト骨髄由来間葉系幹細胞からの骨芽細胞への分化》
本実施例では、魚類由来コラーゲンで被覆された細胞培養プレート及び骨芽細胞分化誘導因子(デキサメタゾン)を用いて、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞からの骨芽細胞への分化を行った。
(1)実施例8
製造例2で得られたプレートに代えて製造例3で得られたプレートを用いたこと、15%FBS含有α−MEMに代えて10%FBS添加D−MEM(high−glucose)を用いたこと、3%又は15%FBSを含むα−MEM培地に代えて3%FBSを含むD−MEM(high−glucose)培地を用いたことを除いては、実施例3の操作を繰り返した。細胞の回収は3日後に行った。結果を図7B(Dex(+))に示す。
(2)比較例8
比較例として、比較製造例2で得られた豚由来のコラーゲンで被覆された細胞培養プレート、又はコラーゲンを被覆していない細胞培養プレートを用いて、骨髄由来間葉系幹細胞の骨芽細胞への分化を試みた。
製造例3で得られたプレートに代えて、比較製造例2で得られたプレート又はコラーゲンを被覆していない細胞培養プレートを用いたことを除いては、実施例8の操作を繰り返した。結果を図7B(Dex(+))に示す。
(実施例7及び8の結果)
図7(B)に示すように、3%FBS存在下(実施例)において、魚類由来コラーゲン被覆細胞培養プレートとの接触により、培養開始3日後のヒト骨髄由来間葉系幹細胞のアルカリホスファターゼの活性が上昇しており、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞は骨芽細胞へ分化したことが確認された。しかしながら、豚由来コラーゲン被覆プレートとの接触では実施例7の1/2以下、非被覆プレートとの接触では、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞のアルカリホスファターゼの活性は実施例7の1/5以下であった。
更に骨芽細胞分化誘導因子であるデキサメタゾンを添加した実施例8においても、培養開始3日後に、魚類由来コラーゲン被覆細胞培養プレートとの接触により、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞のアルカリホスファターゼの活性が上昇した(図7B)。豚由来コラーゲン被覆プレート又は非被覆プレートとの接触では、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞のアルカリホスファターゼの活性の上昇は少なく、3日後においてもそれぞれ実施例8の約1/2、および1/5以下であった。
すなわち、本発明の方法によれば、魚類由来コラーゲン被覆細胞培養プレートとの接触の初期段階で、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞は骨芽細胞への強力な初期分化誘導が起こることがわかった。豚由来のコラーゲンで被覆した細胞培養プレートでは、骨芽細胞への分化は、観察されなかった。更に、魚類由来コラーゲン被覆細胞培養プレートとの接触による間葉系幹細胞の骨芽細胞への分化は、代表的な骨芽細胞分化誘導因子であるデキサメタゾンと比較しても強いものであった。
《実施例9及び比較例9:骨分化マーカー遺伝子の発現》
本実施例では、実施例6におけるヒト骨髄由来間葉系幹細胞の骨芽細胞へ分化を、骨分化マーカー遺伝子(BMP2及びSPP1)のmRNAの検出によって確認した。
(1)実施例9
製造例2で得られたプレートに代えて製造例3で得られたプレートを用いたこと、15%FBS含有α−MEMに代えて10%FBS含有D−MEM(high−glucose)を用いたことを除いては、実施例4の操作を繰り返した。結果を図8A及びB(Day0)に示す。
(2)比較例9
製造例3で得られたプレートに代えて、比較製造例2で得られたプレート又はコラーゲンを被覆していない細胞培養プレートを用いたことを除いては、実施例9の操作を繰り返した。結果を図8A及びB(Day0)に示す。
図8に示すように、豚コラーゲン被膜プレートおよび被膜無プレートに比べて、テラピアコラーゲン被膜プレートで培養したhMSCにおけるBMP2およびSPP1の遺伝子発現は、培養(接触)20時間において、極めて高かった。すなわち、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞は、テラピアの鱗由来のコラーゲンを被覆したプレートとの接触の初期に、骨芽細胞へ分化した。
《実施例10及び比較例10:骨分化マーカー遺伝子の発現》
本実施例では、実施例7及び8におけるヒト骨髄由来間葉系幹細胞の骨芽細胞へ分化を、骨分化マーカー遺伝子のmRNAの検出によって確認した。
(1)実施例10
製造例2で得られたプレートに代えて製造例3で得られたプレートを用いたこと、3%又は15%FBS含有α−MEMに代えて3%FBS含有D−MEM(high−glucose)を用いたこと、細胞の回収を3日目及び7日目に行ったことを除いては、実施例5(実施例3の10nMデキサメサゾン添加)の操作を繰り返した。結果を図8A及びB(Day3及びDay7)に示す。
(2)比較例10
比較例として、比較製造例2で得られた豚由来のコラーゲンで被覆された細胞培養プレート、又はコラーゲンを被覆していない細胞培養プレートを用いて、BMP2及びSPP1の発現を確認した。
魚鱗由来のコラーゲンを被覆した細胞培養プレートに代えて、豚由来のコラーゲンで被覆した細胞培養プレート、又はコラーゲンを被覆していない細胞培養プレートを用いたことを除いては、前記実施例10の操作を繰り返した。結果を図8A及びB(Day3及びDay7)に示す。
図8A及びBに示すように、テラピアの鱗由来のコラーゲンを被覆したプレートとの培養(接触)の初期と比較するとBMP2及びSPP1のmRNAの発現は減少した。
BMP2およびSPP1は骨芽細胞への分化の初期段階で高発現する遺伝子であることから、魚類由来コラーゲン被膜培養プレートとの接触初期段階で、hMSCは骨芽細胞へ分化することが骨分化マーカー遺伝子の発現からも示された。
本発明の骨芽細胞分化誘導方法を用いて、間葉系幹細胞から骨芽細胞を誘導することができる。また、本発明の骨芽細胞製造方法を用いて、間葉系幹細胞から骨芽細胞を製造することができる。
更に、本発明によれば、骨芽細胞分化誘導キット及び骨芽細胞製造装置を製造することができる。

Claims (25)

  1. 魚類由来コラーゲンが被覆された、間葉系幹細胞との接触面を有する、骨芽細胞分化誘導用培養基材。
  2. 前記魚類由来コラーゲンが、テラピア鱗由来のコラーゲンである、請求項1に記載の骨芽細胞分化誘導用培養基材。
  3. 前記間葉系幹細胞が、骨髄間葉系幹細胞、脂肪組織由来間葉系幹細胞、滑膜組織由来間葉系幹細胞、歯髄由来間葉系幹細胞、歯胚由来間葉系幹細胞、耳介軟骨膜由来間葉系幹細胞、末梢血由来間葉系幹細胞、臍帯血由来間葉系幹細胞、靭帯由来間葉系幹細胞、腱由来間葉系幹細胞、ES細胞由来間葉系幹細胞、又はiPS細胞由来間葉系幹細胞である、請求項1又は2に記載の骨芽細胞分化誘導用培養基材。
  4. 前記間葉系幹細胞が、ヒト由来である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の骨芽細胞分化誘導用培養基材。
  5. 前記被覆された第1の魚類由来コラーゲン以外の第2のコラーゲン少なくとも1つが被覆された間葉系幹細胞との接触面を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の骨芽細胞分化誘導用培養基材。
  6. 前記第2のコラーゲンが、哺乳類由来コラーゲン、鳥類由来コラーゲン、爬虫類由来コラーゲン、両生類由来コラーゲン、魚類由来コラーゲン、無脊椎動物由来コラーゲン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるコラーゲンである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の、骨芽細胞分化誘導用培養基材。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の骨芽細胞分化誘導用培養基材を含む、骨芽細胞分化誘導キット。
  8. 骨芽細胞分化誘導因子を更に含む、請求項7に記載の骨芽細胞分化誘導キット。
  9. 魚類由来コラーゲンで被覆された細胞培養基材と、間葉系幹細胞とを接触させる魚類由来コラーゲン接触工程を含む、骨芽細胞分化誘導方法。
  10. 前記間葉系幹細胞が、骨髄間葉系幹細胞、脂肪組織由来間葉系幹細胞、滑膜組織由来間葉系幹細胞、歯髄由来間葉系幹細胞、歯胚由来間葉系幹細胞、耳介軟骨膜由来間葉系幹細胞、末梢血由来間葉系幹細胞、臍帯血由来間葉系幹細胞、靭帯由来間葉系幹細胞、腱由来間葉系幹細胞、ES細胞由来間葉系幹細胞、又はiPS細胞由来間葉系幹細胞である、請求項9に記載の骨芽細胞分化誘導方法。
  11. 前記間葉系幹細胞が、ヒト由来である、請求項9又は10に記載の骨芽細胞分化誘導方法。
  12. 前記被覆された第1の魚類由来コラーゲン以外の第2のコラーゲン少なくとも1つが被覆された細胞培養基材と、間葉系幹細胞とを接触させる第2コラーゲン接触工程を更に含む、請求項9〜11のいずれか一項に記載の骨芽細胞分化誘導方法。
  13. 前記第2のコラーゲンが、哺乳類由来コラーゲン、鳥類由来コラーゲン、爬虫類由来コラーゲン、両生類由来コラーゲン、魚類由来コラーゲン、無脊椎動物由来コラーゲン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるコラーゲンである、請求項9〜12のいずれか一項に記載の骨芽細胞分化誘導方法。
  14. 前記間葉系幹細胞を骨芽細胞分化誘導因子に接触させる骨芽細胞分化誘導因子接触工程を更に含む、請求項9〜13のいずれか一項に記載の骨芽細胞分化誘導方法。
  15. 前記第1の魚類由来コラーゲンが、テラピア鱗由来のコラーゲンである、請求項9〜14のいずれか一項に記載の骨芽細胞分化誘導方法。
  16. 前記接触工程が、5%以下の血清の存在下、又は血清の非存在下で行われる、請求項9〜15のいずれか一項に記載の骨芽細胞分化誘導方法。
  17. 魚類由来コラーゲンで被覆された細胞培養基材によって、間葉系幹細胞を培養する魚類由来コラーゲン培養工程を含む、骨芽細胞製造方法。
  18. 前記間葉系幹細胞が、骨髄間葉系幹細胞、脂肪組織由来間葉系幹細胞、滑膜組織由来間葉系幹細胞、歯髄由来間葉系幹細胞、歯胚由来間葉系幹細胞、耳介軟骨膜由来間葉系幹細胞、末梢血由来間葉系幹細胞、臍帯血由来間葉系幹細胞、靭帯由来間葉系幹細胞、腱由来間葉系幹細胞、ES細胞由来間葉系幹細胞、又はiPS細胞由来間葉系幹細胞である、請求項17に記載の骨芽細胞製造方法。
  19. 前記間葉系幹細胞が、ヒト由来である、請求項17又は18に記載の骨芽細胞製造方法。
  20. 前記細胞培養基材が、前記被覆された第1の魚類由来コラーゲン以外の第2のコラーゲン少なくとも1つが被覆された間葉系幹細胞との接触面を有する、請求項17〜19のいずれか一項に記載の骨芽細胞製造方法。
  21. 前記第2のコラーゲンが、哺乳類由来コラーゲン、鳥類由来コラーゲン、爬虫類由来コラーゲン、両生類由来コラーゲン、魚類由来コラーゲン、無脊椎動物由来コラーゲン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるコラーゲンである、請求項17〜20のいずれか一項に記載の骨芽細胞製造方法。
  22. 前記間葉系幹細胞の培養培地が、5%以下の血清を含む培地又は無血清培地である、請求項17〜21のいずれか一項に記載の骨芽細胞製造方法。
  23. 前記間葉系幹細胞の培養培地が、骨芽細胞分化誘導因子を含む培地である、請求項17〜20のいずれか一項に記載の骨芽細胞製造方法。
  24. 前記魚類由来コラーゲンが、テラピア鱗由来のコラーゲンである、請求項17〜23のいずれか一項に記載の骨芽細胞製造方法。
  25. 請求項17〜24のいずれか一項に記載の骨芽細胞製造方法により得られる骨芽細胞。
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