本発明は高い光電変換効率を有する薄膜太陽電池に関する。
将来の需給が懸念され、かつ地球温暖化現象の原因となる二酸化炭素排出の問題がある石油等の化石燃料の代替エネルギー源として太陽電池が注目されている。
この太陽電池は光エネルギーを電力に変換する光電変換層にpn接合を用いており、このpn接合を構成する半導体として一般的にはシリコンが最もよく用いられている。光電変換効率の点からは単結晶シリコンを用いることが好ましいが原料供給や大面積化、低コスト化の問題が有る。
一方、大面積化および低コスト化を実現するのに有利な材料としてアモルファスシリコンを光電変換層とした薄膜太陽電池も実用化されているが、その光電変換効率は単結晶シリコン太陽電池と比較して劣る。さらにアモルファスシリコンには光を照射するにつれて膜中の欠陥密度が増加するStaebler−Wronski効果と呼ばれる現象が生じるため、アモルファスシリコン太陽電池には光電変換効率の経時劣化という問題が避けられない。
そこで近年、単結晶シリコン太陽電池レベルの高くて安定な光電変換効率と、アモルファスシリコン太陽電池レベルの大面積化、低コスト化を兼ね備えた太陽電池を実現するために、結晶質シリコンの光電変換層への使用が検討されている。特にアモルファスシリコンの場合と同様の化学的気相成長法(以下、CVD法とする)による薄膜形成技術を用いて、結晶質シリコン薄膜を形成した薄膜太陽電池が注目されている。
特開平1−289173号公報は、アモルファスシリコンを活性層とした光電変換素子と、アモルファスシリコンと比較してエネルギーギャップの小さな多結晶シリコンを活性層とした光電変換素子とを積層した多接合型薄膜太陽電池を開示する。そのような太陽電池は、アモルファスシリコンを活性層とした光電変換素子側から太陽光を入射する構成を取ることにより、太陽光エネルギーの利用を単接合型のものより効率的に行うことができるという利点がある。さらに、複数の光電変換素子を直列に接続するので高い電圧を得られることや、活性層としてのアモルファスシリコン層を薄くできるので光電変換効率の経時劣化を抑制できる、アモルファスシリコン層と多結晶シリコン層を同一の装置で製造できるといった利点もあり、高効率化と低コスト化を両立する手段として盛んに研究開発が行われている。
ところが、精力的な研究開発が行われているにも関わらず、現在までのところ上記の多接合型薄膜太陽電池の光電変換効率は、期待されている値に遠く及ばない。その大きな要因として、結晶質シリコン活性層中の欠陥密度が高いことが挙げられる。欠陥密度を低減させるには、結晶粒径を増大させることが有効である。また膜厚方向にキャリアが流れる構造となる太陽電池においては、多結晶粒の存在形態としては膜厚方向を横切るような粒界が存在しない構造、すなわち膜厚方向に対し結晶粒が柱状に成長した構造が望ましく、膜厚方向に対し結晶方位が揃っている場合にそのような構造が得られやすい。
結晶粒径の大きな多結晶シリコン薄膜を得る試みは様々な手法で行われている。例えば、基板上にCVD法等により形成した非晶質シリコン薄膜にレーザー光を照射して溶融させた後、凝固により多結晶シリコン薄膜を得る、いわゆるレーザーアニール法が知られている。また非晶質シリコン膜の一部分にリンあるいはボロン等をドーピングすることにより、選択的に固相成長による結晶化を開始させる、いわゆるパーシャルドーピング法が知られている。ところが、上述のような方法には高い装置コストが必要であったり、数十時間もの熱処理時間を要する等、実用に供する上で困難な問題が存在する。
一方、膜厚方向に対し結晶方位が揃っている結晶シリコン薄膜を得る試みも様々な手法で行われている。例えば、特開平7−240531号公報には、半導体薄膜の堆積中あるいは堆積後に不活性ガスビームを複数の方向から照射することを特徴とする太陽電池および多層薄膜の製造方法が示されている。該方法によると、チャネリングビームとなる不活性ガスビームの照射方向に結晶シリコンの最稠密方向である<111>方向が揃ったシリコン薄膜が得られるとしている。また特開平11−278988号公報には、シリコン膜堆積中に基板に垂直な方向からSiH3ビームを照射し、基板に平行な方向からHビームを照射することを特徴とする単結晶薄膜の製造方法が示されている。該方法によると、分子量が大きいので非チャネリングビームとなるSiH3ビームの照射方向である基板表面に垂直な方向に結晶シリコンの最稠密方向である<111>方向が揃い、分子量が小さいのでチャネリングビームとなるHビームの照射方向に結晶シリコンの<110>方向が揃うことにより、単結晶のシリコン薄膜が得られるとしている。
多接合型薄膜太陽電池が注目されているのは、先述した通り、高効率化や経時劣化の抑制が期待されることに加えて、アモルファスシリコン層および結晶質シリコン層をCVD法により連続して形成できるからである。ところが、H.Yamamoto et al,PVSEC−11,Sapporo,Japan,1999において、ガラス上に酸化錫を積層した表面凹凸によるテクスチャー構造を有する基板上にプラズマCVD法により微結晶シリコンを形成した場合、図2に示すように、個々の凹凸表面に垂直な方向にシリコンの結晶粒が優先的に成長し、異なる凹凸表面から成長した互いに結晶方位の異なる結晶粒同士がぶつかることで多量の欠陥が発生することが報告された。非晶質半導体層ではなく結晶質半導体層であることに起因するこのような欠陥は、キャリアの再結合中心となり、光電変換効率を著しく劣化させるので、極力排除されなければならない。H.Yamamotoらは、表面凹凸を有する酸化錫の上にさらに酸化亜鉛を厚く積層することで凹凸大きさを小さくした場合、酸化錫の場合と同様に酸化亜鉛の表面に垂直な方向にシリコン結晶粒が成長し、異なる凹凸表面から成長した結晶粒同士はぶつかるがそれらの方位差が小さいため、発生する欠陥が少なくなることも同時に報告した。しかるに、結晶質半導体層中の欠陥を低減するためには基板の表面凹凸をできるだけ小さくすればよいのは明らかである。
しかしながら、特許第1681183号公報に示されている通り、表面凹凸を有する透明導電膜には、光の乱反射を生じさせ、シリコン膜中における光路長を大きくするので、光吸収により発生する電流値を増大させる、いわゆる光閉込効果という重要な機能がある。さらに光閉込効果は光電変換効率の向上により光電変換層を薄くできるので、製膜工程を短時間化できるという利点も産み出す。このことは光吸収特性の違いからアモルファスシリコン層の数倍もの光電変換層厚さを要求される結晶質シリコン層を有する多接合型薄膜太陽電池において、スループットの大幅な向上をもたらすことになる。したがって、表面凹凸をなくす、あるいは小さくすることは回避すべきである。
しかし現在のところ、結晶質シリコン薄膜中の欠陥密度低減と凹凸表面による光閉込効果とは両立させることが非常に困難であり、この問題は解決されていない。例えば、先述した特開平7−240531号公報または特開平11−278988号公報に示されている結晶シリコン薄膜の製造方法を用いることで膜中欠陥密度の小さいシリコン薄膜が作製できるが、シリコン薄膜を形成する基板が実質上平坦であり、光閉込効果を発現することができないので高効率化には限界があることが明らかである。
また、特開平10−150209号公報には、基板の法線方向と柱状結晶粒の長手方向あるいは凹凸表面の法線方向との関係がある範囲内に規定されていることを特徴とする光電変換素子が開示されているが、基板の法線方向と柱状結晶粒の長手方向が小さくない傾きを持つ限りは前述した欠陥の発生は不可避である。さらに、特開平10−117006号公報、特開平10−294481号公報、特開平11−214728号公報、特開平11−266027号公報、特開2000−58892号公報には、表面を凹凸化した裏面電極上に多結晶シリコン層から成る光電変換層を有する下部光電変換素子を形成しており、該多結晶シリコン層が基板表面に平行な(110)の優先結晶配向面を有する薄膜太陽電池が示されているが、凹凸形状を有する裏面電極表面近傍での多結晶シリコン層形成にあたっては、前述した多結晶シリコンの成長挙動について全く考慮されていないため、欠陥の発生が避けられないのは明らかである。
本発明の目的は、十分な光閉込効果を有しつつ、欠陥密度の増大が抑制された結晶質半導体層を有する、高効率な多接合型薄膜太陽電池を提供することにある。
本発明により多接合型薄膜太陽電池が提供され、該太陽電池は、基板と、基板上に積層された複数の光電変換素子構造とを備え、そこにおいて、複数の光電変換素子構造の夫々には、第1導電型半導体層、真性半導体層および第2導電型半導体層が順に積層されおり、積層された複数の光電変換素子構造のうち、基板側から数えてN(Nは1以上の任意の整数)番目の光電変換素子構造の第2導電型半導体層側表面は、凹凸間隔Lに対する凹凸大きさRの比R/Lが0.1〜1.5の範囲にあるような凹凸によるテクスチャー構造を有しており、さらに、N番目の光電変換素子構造上に形成されるN+1番目の光電変換素子構造の第1導電型半導体層ならびに真性半導体層は、N番目の光電変換素子構造の第2導電型半導体層側表面に垂直な方向に柱状に成長している結晶粒により主として構成されている結晶質半導体層である。
本発明によりもう一つの形態の多接合型薄膜太陽電池が提供され、該太陽電池は、基板と、基板上に積層された複数の光電変換素子構造とを備え、そこにおいて、複数の光電変換素子構造の夫々には、第1導電型半導体層、真性半導体層および第2導電型半導体層が順に積層されており、積層された複数の光電変換素子構造のうち、基板側から数えてN(Nは1以上の任意の整数)番目の光電変換素子構造とN+1番目の光電変換素子構造との間には、中間層が設けられており、N+1番目の光電変換素子構造を支持する中間層の表面は、凹凸間隔Lに対する凹凸大きさRの比R/Lが0.1〜1.5の範囲にあるような凹凸によるテクスチャー構造を有しており、かつN+1番目の光電変換素子構造の第1導電型半導体層および真性半導体層は、中間層の表面に垂直な方向に柱状に成長している結晶粒により主として構成されている結晶質半導体層である。
本発明において、N+1番目の光電変換素子構造の第1導電型結晶質半導体層は1nm以上200nm未満の厚みを有することが好ましい。また、N+1番目の光電変換素子構造の第1導電型半導体層側表面から高さ200nmまでの部分において、N番目の光電変換素子構造の第2導電型半導体層側表面または中間層の表面に垂直な方向に柱状に成長している結晶粒は、当該部分における結晶粒全体の少なくとも50%以上を占め、かつN番目の光電変換素子構造の第2導電型半導体層側表面または中間層の表面に垂直な方向に100nm以上の長さを有することが、好ましい。
本発明において、N+1番目の光電変換素子構造の第1導電型結晶質半導体層は1nm以上50nm以下の厚みを有することが、好ましい。
本発明において、N+1番目の光電変換素子構造の第1導電型結晶質半導体層および真性結晶質半導体層は主としてシリコンから成ることが好ましい。また、N+1番目の光電変換素子構造の第1導電型結晶質半導体層および真性結晶質半導体層において、N番目の光電変換素子構造の第2導電型半導体層側表面または中間層の表面に平行に配向する結晶面は、主として(110)であることが好ましい。
本発明において、N+1番目の光電変換素子構造の真性結晶質半導体層について得られる、(220)面のX線回折ピークの積分強度I220と(111)面のX線回折ピークの積分強度I111との比I220/I111が3以上であることが、好ましい。
本発明において、N+1番目の光電変換素子構造の第1導電型結晶質半導体層はホウ素を不純物として含有することが、特に好ましい。
本発明において、中間層は、主として酸化亜鉛からなる透明導電体であることが、好ましい。
なお、本明細書において、特に言及しない限り、「結晶質半導体層」という用語は、方位の異なる複数の結晶粒を構成要素として含むあらゆる形態の半導体層を包含する。したがって、「結晶質半導体層」という用語は、たとえば、複数の結晶子の集合体である半導体層のみならず、微結晶あるいはマイクロクリスタルと呼ばれる結晶成分と非晶質成分が混在した状態の半導体層も含む。
本発明による多接合型薄膜太陽電池の基板側から数えてN(Nは1以上の任意の整数)番目の光電変換素子構造の第2導電型半導体層側表面、あるいはN+1番目の光電変換素子構造を支持する中間層の表面には、凹凸によるテクスチャー構造が設けられている。この凹凸の大きさは代表的には0.01〜10μm、好ましくは0.05〜2μmの範囲であり、目視ではその凹凸形状を判別できない。すなわち、目視ではそれらの表面は平滑な面として認識される。そこで、本明細書において「N番目の光電変換素子構造の第2導電型半導体層側表面または中間層の表面に垂直」あるいは「N番目の光電変換素子構造の第2導電型半導体層側表面または中間層の表面に平行」というとき、特に断りのない限り、「垂直」および「平行」の基準は、この目視により平滑であるとみなされる表面(巨視的表面)である。
一方、微視的にみれば、光電変換素子構造を支持する表面は凹凸によるテクスチャー構造を形成している。この凹凸形状は、原子間力顕微鏡により測定することができ、凹凸大きさRおよび凹凸間隔Lは次のように定義される。すなわち、表面の任意の領域において、原子間力顕微鏡により長さ5μmにわたって表面凹凸形状の線測定を行い、測定により得られた表面形状波形について、日本工業規格JISB0602−1994で規定された表面凹凸の算術平均値Raを凹凸大きさRとし、日本工業規格JISB0602−1994で規定された表面凹凸の平均間隔Smを凹凸間隔Lとする。
本発明により、凹凸を有する表面においても巨視的表面に垂直な方向に柱状に成長した第1導電型結晶質半導体層および真性結晶質半導体層を有する多接合型薄膜太陽電池が提供される。該構造により、光閉込効果による光吸収量の増大と、結晶質半導体層中の欠陥が低減されることによる膜厚方向に対する良好なキャリア輸送特性との両立が可能となる。したがって、本発明による多接合型薄膜太陽電池は、高い光電変換効率を有することができる。
巨視的表面に垂直な方向に柱状に成長したシリコン結晶質半導体層を示す模式図。
個々の凹凸表面に垂直な方向に柱状に成長したシリコン結晶質半導体層を示す模式図。
本発明による薄膜太陽電池構造の一例を示す模式図。
実施例1におけるサンプル断面の透過型電子顕微鏡観察像を示す模式図。
比較例1におけるサンプル断面の透過型電子顕微鏡観察像を示す模式図。
比I220/I111とR/Lとの関係を示す図。
本発明者は、平滑な表面を有するガラス板に被覆された酸化亜鉛をエッチングすることで凹凸大きさRと凹凸間隔Lとの比R/Lを適宜変化させた基板上に、プラズマCVD法によりシリコン結晶質半導体層を形成する検討を行った。その結果、チャネリング粒子が少ない条件においては、図6の曲線61に示すように、R/Lの平均値が小さい、言い換えれば表面凹凸が小さい場合のみシリコン結晶質半導体層の配向性を強めることができるのに対して、チャネリング粒子が多い条件においては、図6の曲線62に示すように、R/Lの平均値が小さい場合、すなわち表面凹凸が小さい場合だけでなく、R/Lが0.1〜1.5の範囲にある場合に、(220)面のX線回折ピークの積分強度I220と(111)面のX線回折ピークの積分強度I111との比I220/I111を3以上とすることが可能となることを発見した。
この発見により初めて、光閉込効果による光吸収量の増大と、結晶質半導体層中の欠陥が増大しないことによる膜厚方向に対する良好なキャリア輸送特性との両立が可能となり、高い光電変換効率を有する多接合型薄膜太陽電池が実現できた。
本発明の多接合型薄膜太陽電池に用いる基板材料としては、ガラス、金属、あるいはポリイミドやポリビニルといった200℃程度の耐熱性を有する樹脂、さらにはそれらが積層されたもの等、種々のものが使用できる。また、それらの表面に金属膜、透明導電膜、あるいは絶縁膜等を被覆したものも含まれる。また、基板厚さは特に限定されるものではないが、構造を支持し得るよう適当な強度や重量を有するように、例えば0.1〜30mm程度である。
基板の表面には凹凸があってもよい。凹凸を設ける手段としては、例えば、平滑な表面を有する基板上に、堆積すると同時に表面に凹凸が形成されるような膜を形成してもよい。該表面に凹凸が形成される膜は基板と同じ材料であっても、または異なる材料であっても構わない。また、基板表面に対してサンドブラストのような機械加工、あるいはエッチングといった化学的加工処理を行って凹凸を形成することもできる。
本発明の多接合型薄膜太陽電池において、基板に積層された複数の光電変換素子構造のうち、基板側から数えてN(Nは1以上の任意の整数)番目の光電変換素子構造の第2導電型半導体層側表面は、凹凸間隔Lに対する凹凸大きさRの比R/Lが0.1〜1.5の範囲にあるような凹凸によるテクスチャー構造を有している。さらに、N+1番目の光電変換素子構造は、図1に示すようなテクスチャーを有する表面上においても、巨視的表面に垂直な方向に柱状に成長している結晶粒により主として構成されている第1導電型結晶質半導体層および真性結晶質半導体層を有する。これらの特徴により、光閉込効果を奏しかつ光電変換素子構造中の欠陥増大が抑制された、高い光電変換効率をもたらす多接合型薄膜太陽電池を得ることができる。
本発明によるもう一つの形態の多接合型薄膜太陽電池において、基板に積層された複数の光電変換素子構造のうち、基板側から数えてN(Nは1以上の任意の整数)番目の光電変換素子構造とN+1番目の光電変換素子構造との間に設けられた中間層の表面は、凹凸間隔Lに対する凹凸大きさRの比R/Lが0.1〜1.5の範囲にあるような凹凸によるテクスチャー構造を有する。さらに、N+1番目の光電変換素子構造は、図1に示すようなテクスチャーを有する表面上においても、巨視的表面に垂直な方向に柱状に成長している結晶粒により主として構成されている第1導電型結晶質半導体層および真性結晶質半導体層を有する。これらの特徴は、十分な光閉込効果を生じさせるとともに、光電変換素子構造中の欠陥増大を抑制する。したがって、本発明による多接合型薄膜太陽電池は、高い光電変換効率をもたらすことができる。
本発明において、中間層は、隣り合う光電変換素子構造の互いに異なる導電型を有する層の間に設けられる層である。中間層は、互いに異なる導電型層が直接接合する場合に生じる逆方向の接合形成、あるいは不純物の混合による接合不良等を防止するために設けられる。
中間層として、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛等からなる透明導電膜が好適である。また、中間層は、これらのうちの単一の材料から成るものであってもよいし、あるいはこれらの材料を含む層を複数積層したものであっても構わないが、中間層の両表面、特に基板に対向しない側の表面は透明導電膜から成ることが、より好ましい。特に、主として酸化亜鉛からなる透明導電膜には、安価である、耐プラズマ性が高く変質しにくいという利点があるので、より好ましい。
これらの透明導電膜は、例えばスパッタリング法、常圧CVD法、減圧CVD法、電子ビーム蒸着法、ゾルゲル法、電析法等の公知の方法により作製できる。その中でも特に、スパッタリング法は、透明導電膜の透過率や抵抗率を薄膜太陽電池に適したものに制御することが容易であるので望ましい。
これらの透明導電膜中に微量の不純物が添加されていてもよい。例えば、酸化亜鉛の場合、5×1020〜5×1021cm-3程度のガリウムやアルミニウムといった第3B族元素あるいは銅のような第1B族元素が含有されることにより抵抗率が低減するので、中間層として使用するのに好ましい。また、これらの透明導電膜(中間層)の厚さは薄すぎると特性の均一性に問題が生じ、厚すぎると透過率の減少および直列抵抗の増加による光電変換効率の低下やコストの増大を引き起こすため、好ましくは1〜50nm程度である。
中間層の表面に凹凸を設ける手段として、例えば、堆積すると同時に表面に凹凸が形成されるような条件により中間層を形成してもよい。この際、中間層表面の凹凸形状が下地となる光電変換素子の凹凸形状の影響を受けることを考慮して、中間層の形成条件を決定すればよい。また、中間層表面に対してサンドブラストのような機械加工、あるいはエッチングといった化学的加工処理を行うことで凹凸を形成することも可能である。
中間層表面が透明導電膜から成る場合、エッチャントの種類、濃度あるいはエッチング時間等を適宜変更することにより、透明導電膜の表面形状を容易に制御できるので、凹凸を作製する手段としてエッチングを行うことが、特に好ましい。エッチャントとして酸またはアルカリ溶液を用いることは、より安価に製造できるので、さらに好ましい。この場合、酸溶液には、塩酸、硫酸、硝酸、フッ酸、酢酸、蟻酸、過塩素酸等の1種または2種以上の混合物を用いることができる。中でも、塩酸、酢酸が好ましい。これらの酸溶液は、例えば0.05〜5重量%程度の濃度で使用できる。特に酢酸のような比較的弱い酸の場合には、0.1〜5重量%程度の濃度で使用することが好ましい。また、アルカリ溶液には、水酸化ナトリウム、アンモニア、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム等の1種または2種以上の混合物を用いることができる。なかでも水酸化ナトリウムが好ましい。これらのアルカリ溶液は1〜10重量%程度の濃度で使用することが好ましい。
エッチングにより中間層の少なくとも基板に対向しない側の表面に設けられる凹凸の少なくとも一部は、略球面状あるいは略円錐状の穴とすることができる。該穴の直径が200〜2000nmの範囲にある場合、高さの二乗平均値RMSおよび傾斜角をθとしたときのtanθについて上述した好適な範囲の凹凸が再現性よく得られるので、好ましい。さらに、該穴の直径は、400〜1200nmの範囲にあることが、より好ましい。
光閉込効果を向上させるためにはR/Lの値が大きい方が望ましく、光電変換素子中の欠陥増大を抑制するためにはR/Lの値が小さい方が望ましい。したがって、この両者を満足させることのできる凹凸テクスチャー構造は、R/Lの値が0.2〜1.2の範囲にあるものが好ましく、0.25〜0.8の範囲にあるものがより好ましい。
本発明の特に好ましい態様において、N+1番目の光電変換素子構造の第1導電型結晶質半導体層は1nm以上200nm未満の厚みを有し、基板の表面から高さ200nmまでの部分において、基板に垂直な方向に柱状に成長している結晶粒は、当該部分における結晶粒全体の少なくとも50%以上を占め、かつN番目の光電変換素子構造の第2導電型半導体層側表面(巨視的表面)または中間層の表面(巨視的表面)に垂直な方向に100nm以上の長さを有する。この場合、同一の結晶粒内に第1導電型結晶質半導体層と真性結晶質半導体層との接合界面が形成されている傾向が強く、特に好ましい。
さらに、第1導電型結晶質半導体層の膜厚を1nm以上50nm以下とすることにより、直列抵抗の低減、または導電型層における光吸収量の低減といった効果が得られるので光電変換効率の向上に効果的である。
N+1番目の光電変換素子構造の第1導電型結晶質半導体層および真性結晶質半導体層を主としてシリコンから成るものとすることにより、アモルファスシリコンでは光電変換に利用できない波長700nm以上の長波長光も光電変換に利用できる。これにより、高い光電変換効率が得られるとともに、光劣化が抑制された安定な太陽電池を得ることができる。なお主としてシリコンから成る半導体層には、実質的にシリコンのみからなるものの他、シリコンと他の元素との組み合わせからなるもの、例えばシリコンに錫が添加されたSixSn1-xおよびゲルマニウムが添加されたSixGe1-x等も含まれる。
また、N+1番目の光電変換素子構造における第1導電型シリコン結晶質半導体層および真性シリコン結晶質半導体層において、N番目の光電変換素子構造の第2導電型半導体層側表面または中間層の表面に平行に配向する結晶面を(110)とすることで、配向面が(111)や(100)である場合のように、シリコン層形成の際にシリコン層がエッチングされる傾向が強く、膜損傷の恐れがある条件を用いることなく、N+1番目の光電変換素子構造の第1導電型シリコン結晶質半導体層を形成できる。これにより、第1導電型シリコン結晶質半導体層の下に位置するN番目の光電変換素子構造の第2導電型層あるいは中間層との界面を良好に形成することができる。
さらに、N+1番目の光電変換素子構造の第1導電型シリコン結晶質半導体層上に形成される真性シリコン結晶質半導体層において、N番目の光電変換素子構造の第2導電型半導体層側表面または中間層の表面に平行に配向する結晶面を(110)とすることができる。これにより、N+1番目の光電変換素子構造における第1導電型シリコン結晶質半導体層と真性シリコン結晶質半導体層との界面を良好に形成することができる。
また、上述した(110)配向により、形成速度が遅くなる条件を用いることなく真性シリコン結晶質半導体層を形成できるので、高効率な薄膜太陽電池を短時間で安定に製造することが可能となる。特に、N+1番目の光電変換素子構造における第1導電型シリコン結晶質半導体層上に形成された真性シリコン結晶質半導体層の(220)X線回折ピークの積分強度I220と(111)X線回折ピークの積分強度I111の比I220/I111が3以上、好ましくは5以上である場合、良好な光電変換特性が得られる。
N+1番目の光電変換素子構造における第1導電型シリコン結晶質半導体層にホウ素が不純物として含有されている場合、特に(110)配向の傾向が強くなるので望ましい。その理由は明らかではないが、参考文献(1)〜(4)には、面方位が(100)あるいは(111)である単結晶シリコンの表面にボロンが存在するとシリコンの反応性が低下するという報告がある。したがって、同様の現象により(100)あるいは(111)の配向が抑制されることが原因として考えられる。ホウ素の含有量として0.01〜10原子%の範囲であれば、(110)配向が強められる効果が得られる。ホウ素含有量の好ましい範囲は0.05〜9原子%であり、より好ましい範囲は0.2〜8原子%である。
以下、実施例により本発明をさらに説明する。
(実施例1)
図3に作製した薄膜太陽電池の構造を示す。平滑な表面を有するガラス板31a上にテクスチャー構造を有する酸化錫31bを形成した上に、通常の電子ビーム蒸着法により厚さ50nmの酸化亜鉛層31cを形成したものを基板31として用いた。原子間力顕微鏡により測定した基板表面の凹凸大きさRと凹凸間隔Lとの比R/Lの平均値は0.8であった。
続いて、基板31の上にp型アモルファスシリコン層32a、i型アモルファスシリコン層32b、n型アモルファスシリコン層32cをプラズマCVD装置により順に積層することで第1の光電変換素子構造32を形成した。プラズマCVD装置には上記各層ごとの形成室が設けられており、各形成室およびロードロック室間は真空を破ることなく基板を搬送できるようになっている。各形成室内部には平行平板型の電極が設けられている。電極は、カソード電極とそれに対向するアノード電極からなる。カソード電極にプラズマ励起用高周波電力が導入される。各形成室において、基板は、温度制御機能を有するアノード電極側に、テクスチャー構造を有する表面側がカソード電極に対向するように設置される。
13.56MHzの高周波電力を投入して、基板31上にp型アモルファスシリコン層32a、i型アモルファスシリコン層32b、n型アモルファスシリコン層32cを順に積層し、アモルファスシリコン光電変換層32を形成した。p型アモルファスシリコン層32aは、SiH4ガス12SCCM、H2ガス30SCCM、H2ガスにより5000ppmに調整されたB2H6ガス1SCCM、製膜室圧力20Pa、放電電力25W、基板温度180℃の条件で製膜し、15nmの厚さとした。i型アモルファスシリコン層32bは、SiH4ガス30SCCM、H2ガス70SCCM、製膜室圧力30Pa、放電電力30W、基板温度180℃の条件で製膜し、350nmの厚さとした。n型アモルファスシリコン層32cは、SiH4ガス10SCCM、H2ガスにより1000ppmに調整されたPH3ガス100SCCM、製膜室圧力27Pa、放電電力30W、基板温度180℃の条件で製膜し、30nmの厚さとした。
第1の光電変換素子32を形成した後、中間層33として、Gaがドープされた酸化亜鉛からなる膜を通常のスパッタリング法により50nmの厚みで形成した。このとき、原子間力顕微鏡により測定した中間層33表面の凹凸大きさRと凹凸間隔Lとの比R/Lの平均値は0.6であった。
中間層33を形成した後、第1の光電変換素子32を形成するのに使用したプラズマCVD装置を用いて、p型シリコン結晶質半導体層34a、i型シリコン結晶質半導体層34b、n型シリコン半導体層34cの順に積層することで、第2の光電変換素子34を形成した。p型シリコン結晶質半導体層34aはSiH4、H2およびB2H6の混合ガスを用い、ガス混合比はp型シリコン結晶質半導体層中のボロン濃度が0.5原子%となるように調整した。投入する高周波の周波数は40.68MHz、形成室圧力は25Pa、基板温度は150℃とした。また、膜厚は20nmとした。
i型シリコン結晶質半導体層34bはSiH4およびH2の混合ガスを用い、ガス混合比はi型シリコン層が十分に結晶化されるように調整した。投入する高周波の周波数は40.68MHz、形成室圧力は40Pa、基板温度は150℃とした。また、膜厚は2μmとした。この条件を用いてi型シリコン結晶質半導体層を平坦なガラス基板上に製膜した場合、(220)X線回折ピークの積分強度I220と(111)X線回折ピークの積分強度I111の比I220/I111は、図6に示すように10.0であり、このi型シリコン結晶質半導体層33自体が平坦な表面の法線方向に強い(220)配向を示すものであった。
n型シリコン結晶質半導体層34cはSiH4、H2およびPH3の混合ガスを用い、ガス混合比はn型シリコン半導体層中のリン濃度が0.5原子%となるように調整した。投入する高周波の周波数は40.68MHz、形成室圧力は25Pa、基板温度は150℃とした。また、膜厚は20nmとした。
その後、プラズマCVD装置から基板を取り出し、通常の電子ビーム蒸着法により酸化亜鉛を蒸着して裏面反射層35を形成した。そしてレーザースクライブ法により1cm角の大きさに分離した。その後、通常の電子ビーム蒸着法により銀からなる裏面電極36を形成して、基板31側から光を入射するスーパーストレート構造の多接合型薄膜太陽電池を得た。
図4にこの多接合型薄膜太陽電池の中間層付近の断面を透過型電子顕微鏡により観察した像を模式的に示す。中間層41の凹凸表面上に形成された第2の光電変換素子のp型シリコン結晶質半導体層42は複数の結晶粒から成り、そのうち約50%の結晶粒は個々の凹凸表面にほぼ垂直な方向に成長しているのに対して、残りの約50%の結晶粒は中間層の表面(巨視的表面)に垂直な方向に成長していた。そして、中間層の表面(巨視的表面)に垂直な方向に成長している結晶粒のほとんどは、中間層の表面(巨視的表面)に垂直な方向に100nm以上の長さを有する柱状結晶粒であり、膜厚が増えるにつれて中間層の表面(巨視的表面)に平行な方向の粒径が増大しながら、当該部分においてその割合を増していた。
さらに、ほぼi型層全体に相当する領域の結晶方位に関する情報を得るため、直径0.8μmの制限視野しぼりを入れて制限視野電子線回折を行った。得られた回折像から、このi型シリコン結晶質半導体層43は中間層の表面(巨視的表面)に平行に(110)面が配向していることが分かった。すなわち中間層の表面(巨視的表面)に垂直な方向に成長しているp型シリコン結晶質半導体層42の結晶粒において、中間層の表面(巨視的表面)に平行に(110)面が配向しており、その上に形成されたi型シリコン結晶質半導体層43は下地となるp型シリコン結晶質半導体層42の結晶方位を引き継ぐ形で成長していることが分かった。
また、i型シリコン結晶質半導体層の(110)配向性の度合いを定量的に調べるために、この多接合型薄膜太陽電池と同じプロセスで第2の光電変換素子のi型シリコン結晶質半導体層まで形成したものについてX線回折を行ったところ、(220)X線回折ピークの積分強度I220と(111)X線回折ピークの積分強度I111の比I220/I111が7.0であり、平坦なガラス基板上に製膜した場合に近い値であった。
この薄膜太陽電池のAM1.5(100mW/cm2)照射条件下における電流−電圧特性の測定を行ったところ、セル面積1cm2において開放電圧1.205V、短絡電流12.8mA/cm2、形状因子0.695、光電変換効率10.72%という値が得られた。
なお、本実施例においては、第1の光電変換素子のp、i、n全ての層をアモルファスシリコンにより形成しているが、i層については第2の光電変換素子のi層となる結晶シリコンよりエネルギーギャップが大きい材料であればよく、例えばa−SiC:H等を用いてもよい。導電型層についてもp、nともにアモルファスシリコン層である必要はなく、いずれもシリコン結晶質半導体層等で形成しても構わない。また本実施例では中間層を設けているが、基板面に垂直な方向に柱状に成長した第2の光電変換素子の第1導電型シリコン結晶質半導体層を形成する点においては必ずしも必要ではない。
(比較例1)
凹凸形状の効果を検証するために、平滑な表面を有するガラス板上にテクスチャー構造を有する酸化錫を形成した後、液温25℃の0.5%塩酸水溶液に30秒間浸してエッチングを行うことで表面凹凸を尖鋭化し、その上に通常の電子ビーム蒸着法により厚さ50nmの酸化亜鉛層を形成したものを基板として用いた。原子間力顕微鏡により測定した、この基板表面の凹凸大きさRと凹凸間隔Lとの比R/Lは1.65であった。この基板作製工程以外は、実施例1と同様に薄膜太陽電池を作製した。
図5にこの薄膜太陽電池の断面を透過型電子顕微鏡により観察した像を模式的に示す。ただし図4と同様に、n型シリコン半導体層、裏面反射層、裏面電極は省略している。凹凸表面上には複数の結晶粒が生成しており、そのほとんどが、個々の凹凸表面に垂直な方向に成長している。これら凹凸表面に垂直な方向に成長している結晶粒は、やがて隣接する凹凸表面から成長してきた結晶粒と衝突した後、中間層の表面(巨視的表面)に垂直な方向へと成長方向を徐々に変化させていた。しかし、中間層の表面(巨視的表面)に垂直な方向に顕著に成長している結晶粒は確認されなかった。
さらに、i型層全体に相当する領域の結晶方位に関する情報を得るため、直径0.8μmの制限視野しぼりを入れて制限視野電子線回折を行った。得られた回折像から、このi型シリコン結晶質半導体層は中間層の表面(巨視的表面)に平行な配向面を明確には有していないことが分かった。このように、凹凸形状が適切でない場合、p型シリコン結晶質半導体層の結晶粒が中間層の表面(巨視的表面)に平行な配向面を有しておらず、そのため、その上に形成されたi型シリコン結晶質半導体層も中間層の表面(巨視的表面)に平行な配向面を有することなく成長を開始している。
また、i型シリコン結晶質半導体層の(110)配向性の度合いを定量的に調べるため、この薄膜太陽電池と同じプロセスでi型層まで形成したものについてX線回折を行ったところ、(220)X線回折ピークの積分強度I220と(111)X線回折ピークの積分強度I111の比I220/I111が2.0であり、実施例1の場合と比較して著しく配向性が劣っていた。
この薄膜太陽電池のAM1.5(100mW/cm2)照射条件下における電流−電圧特性の測定を行ったところ、セル面積1cm2において開放電圧1.080V、短絡電流10.6mA/cm2、形状因子0.670、光電変換効率7.67%という値が得られた。実施例1の結果と比較して、開放電圧、短絡電流、形状因子の全てにおいて特性の低下が生じていた。さらに、実施例1および比較例1の素子について分光感度測定を行った結果から、比較例1の素子は特に長波長側での感度が劣ることが判明した。これは、光入射側から離れて位置する光電変換素子構造に問題があることを意味しており、透過型電子顕微鏡観察結果により矛盾なく説明できる。
(比較例2)
凹凸形状の効果を検証するために、ガラス板上の酸化亜鉛層31cを厚さ500nmとなるように形成したこと以外は、実施例1と同様に多接合型薄膜太陽電池を作製した。実施例1と比較して酸化亜鉛層31cを厚く積層することにより表面の凹凸形状はより緩やかなものとなった。中間層33表面の微視的な凹凸構造について原子間力顕微鏡により測定を行った結果、凹凸大きさRと凹凸間隔Lとの比R/Lの平均値は0.05であった。
i型シリコン結晶質半導体層の(110)配向性の度合いを定量的に調べるために、この薄膜太陽電池と同じプロセスでi型層まで形成したものについてX線回折を行ったところ、(220)X線回折ピークの積分強度I220と(111)X線回折ピークの積分強度I111の比I220/I111が8.5であり、平坦なガラス基板上に製膜した場合と同等の値であった。
この薄膜太陽電池のAM1.5(100mW/cm2)照射条件下における電流−電圧特性の測定を行ったところ、セル面積1cm2において開放電圧1.208V、短絡電流10.6mA/cm2、形状因子0.690、光電変換効率8.84%という値が得られた。実施例1の結果と比較して、開放電圧、形状因子の値はほぼ同じであるのに対し、光閉込効果が小さいので短絡電流が低下していた。
(実施例2)
チャネリング粒子の効果を検証するため、凹凸表面を有する中間層33上に第2の光電変換素子34のp型シリコン結晶質半導体層32を形成する際、原料ガスとしてSiH4、H2およびB2H6の混合物にArガスを添加したものを使用した。それ以外は、実施例1と同様に薄膜太陽電池を作製した。このときのSiH4、H2およびB2H6の混合比は実施例1と同じであり、Arの添加量は全混合ガスの5%となるように調整した。
得られた薄膜太陽電池の断面を透過型電子顕微鏡により観察すると、実施例1の場合と同様に、凹凸表面上には複数の結晶粒が生成していたが、実施例1の場合よりも結晶粒密度が低減されており、なおかつ約80%の結晶粒は中間層の表面(巨視的表面)に垂直な方向に成長していた。そして、中間層の表面(巨視的表面)に垂直な方向に成長している結晶粒のほとんどは、中間層の表面(巨視的表面)に垂直な方向に100nm以上の長さを有する柱状結晶粒であり、膜厚が増えるにつれて中間層の表面(巨視的表面)に平行な方向の粒径が増大しながら、当該部分においてその割合を増すという傾向は同様であった。
さらに、ほぼi型層全体に相当する領域の結晶方位に関する情報を得るため、直径0.8μmの制限視野しぼりを入れて制限視野電子線回折を行った。得られた回折像から、このi型シリコン結晶質半導体層は中間層の表面(巨視的表面)に平行に(110)面が配向していることが分かった。すなわち中間層の表面(巨視的表面)に垂直な方向に成長しているp型層の結晶粒は、中間層の表面(巨視的表面)に平行に(110)配向しており、その上に形成されたi型シリコン結晶質半導体層は下地となるp型層の結晶方位を引き継ぐ形で成長していることが分かった。
また、i型シリコン結晶質半導体層の(110)配向性の度合いを定量的に調べるために、この薄膜太陽電池と同じプロセスでi型層まで形成したものについてX線回折を行ったところ、(220)X線回折ピークの積分強度I220と(111)X線回折ピークの積分強度I111の比I220/I111は8であった。
Ar添加により中間層の表面(巨視的表面)に垂直な方向に<110>配向している結晶粒が優先的に成長する理由は未だ明らかではないが、シースポテンシャルにより巨視的表面にほぼ垂直な方向に加速されたプラズマ中のAr+が、シリコンのチャネリング方向である<110>への成長を促進する効果、および、巨視的表面にほぼ垂直な方向に<110>が向いていない結晶粒をスパッタする効果によるものと考えられる。
なお、本実施例では添加する希ガスとしてArを用いたが、HeあるいはNeなどであってもよい。
この薄膜太陽電池のAM1.5(100mW/cm2)照射条件下における電流−電圧特性の測定を行ったところ、セル面積1cm2において開放電圧1.242V、短絡電流13.1mA/cm2、形状因子0.714、光電変換効率11.62%という値が得られた。実施例1の素子と比較して、さらに開放電圧、形状因子の向上が成された。これはp型層とi型層との界面近傍の構造がさらに適切なものとなったためであり、透過型電子顕微鏡観察結果により矛盾なく説明できる。
以上の実施例では、平滑な表面を有するガラス板上にテクスチャー構造を有する酸化錫膜を形成し,さらにその上に酸化亜鉛膜を形成した基板を用いるスーパーストレート型の多接合型薄膜太陽電池を説明した。しかし、上述した実施例以外に、本発明による実施の形態が多く存在することは、当業者に明らかである。例えば、多接合型薄膜太陽電池の構造は、ガラス基板や金属製基板上に光電変換層として形成したシリコン結晶質半導体層側より光を入射するサブストレート型であってもよい。
11…凹凸表面
12…目視による仮想的な表面(巨視的表面)
13…N+1番目の光電変換素子の第1導電型シリコン結晶質半導体層
14…N+1番目の光電変換素子の真性シリコン結晶質半導体層
15、24…凹凸大きさR
16、25…凹凸間隔L
31…基板
21、31a…ガラス板
22、31b…酸化錫層
31c…酸化亜鉛層
32…第1の光電変換素子
32a…p型アモルファスシリコン層
32b…i型アモルファスシリコン層
32c…N型アモルファスシリコン層
33、41、51…中間層
34…第2の光電変換素子
34a、42、52…p型シリコン結晶質半導体層
34b、43、53…i型シリコン結晶質半導体層
34c…N型シリコン半導体層
35…裏面反射層
36…裏面電極
61…チャネリング粒子が少ない条件における、基板凹凸形状の指標R/Lに対するI220/I111曲線
62…チャネリング粒子が多い条件における、基板凹凸形状の指標R/Lに対するI220/I111曲線
本発明は高い光電変換効率を有する薄膜太陽電池およびその製造方法に関する。
将来の需給が懸念され、かつ地球温暖化現象の原因となる二酸化炭素排出の問題がある石油等の化石燃料の代替エネルギー源として太陽電池が注目されている。
この太陽電池は光エネルギーを電力に変換する光電変換層にpn接合を用いており、このpn接合を構成する半導体として一般的にはシリコンが最もよく用いられている。光電変換効率の点からは単結晶シリコンを用いることが好ましいが原料供給や大面積化、低コスト化の問題が有る。
一方、大面積化および低コスト化を実現するのに有利な材料としてアモルファスシリコンを光電変換層とした薄膜太陽電池も実用化されているが、その光電変換効率は単結晶シリコン太陽電池と比較して劣る。さらにアモルファスシリコンには光を照射するにつれて膜中の欠陥密度が増加するStaebler−Wronski効果と呼ばれる現象が生じるため、アモルファスシリコン太陽電池には光電変換効率の経時劣化という問題が避けられない。
そこで近年、単結晶シリコン太陽電池レベルの高くて安定な光電変換効率と、アモルファスシリコン太陽電池レベルの大面積化、低コスト化を兼ね備えた太陽電池を実現するために、結晶質シリコンの光電変換層への使用が検討されている。特にアモルファスシリコンの場合と同様の化学的気相成長法(以下、CVD法とする)による薄膜形成技術を用いて、結晶質シリコン薄膜を形成した薄膜太陽電池が注目されている。
特開平1−289173号公報は、アモルファスシリコンを活性層とした光電変換素子と、アモルファスシリコンと比較してエネルギーギャップの小さな多結晶シリコンを活性層とした光電変換素子とを積層した多接合型薄膜太陽電池を開示する。そのような太陽電池は、アモルファスシリコンを活性層とした光電変換素子側から太陽光を入射する構成を取ることにより、太陽光エネルギーの利用を単接合型のものより効率的に行うことができるという利点がある。さらに、複数の光電変換素子を直列に接続するので高い電圧を得られることや、活性層としてのアモルファスシリコン層を薄くできるので光電変換効率の経時劣化を抑制できる、アモルファスシリコン層と多結晶シリコン層を同一の装置で製造できるといった利点もあり、高効率化と低コスト化を両立する手段として盛んに研究開発が行われている。
ところが、精力的な研究開発が行われているにも関わらず、現在までのところ上記の多接合型薄膜太陽電池の光電変換効率は、期待されている値に遠く及ばない。その大きな要因として、結晶質シリコン活性層中の欠陥密度が高いことが挙げられる。欠陥密度を低減させるには、結晶粒径を増大させることが有効である。また膜厚方向にキャリアが流れる構造となる太陽電池においては、多結晶粒の存在形態としては膜厚方向を横切るような粒界が存在しない構造、すなわち膜厚方向に対し結晶粒が柱状に成長した構造が望ましく、膜厚方向に対し結晶方位が揃っている場合にそのような構造が得られやすい。
結晶粒径の大きな多結晶シリコン薄膜を得る試みは様々な手法で行われている。例えば、基板上にCVD法等により形成した非晶質シリコン薄膜にレーザー光を照射して溶融させた後、凝固により多結晶シリコン薄膜を得る、いわゆるレーザーアニール法が知られている。また非晶質シリコン膜の一部分にリンあるいはボロン等をドーピングすることにより、選択的に固相成長による結晶化を開始させる、いわゆるパーシャルドーピング法が知られている。ところが、上述のような方法には高い装置コストが必要であったり、数十時間もの熱処理時間を要する等、実用に供する上で困難な問題が存在する。
一方、膜厚方向に対し結晶方位が揃っている結晶シリコン薄膜を得る試みも様々な手法で行われている。例えば、特開平7−240531号公報には、半導体薄膜の堆積中あるいは堆積後に不活性ガスビームを複数の方向から照射することを特徴とする太陽電池および多層薄膜の製造方法が示されている。該方法によると、チャネリングビームとなる不活性ガスビームの照射方向に結晶シリコンの最稠密方向である<111>方向が揃ったシリコン薄膜が得られるとしている。また特開平11−278988号公報には、シリコン膜堆積中に基板に垂直な方向からSiH3ビームを照射し、基板に平行な方向からHビームを照射することを特徴とする単結晶薄膜の製造方法が示されている。該方法によると、分子量が大きいので非チャネリングビームとなるSiH3ビームの照射方向である基板表面に垂直な方向に結晶シリコンの最稠密方向である<111>方向が揃い、分子量が小さいのでチャネリングビームとなるHビームの照射方向に結晶シリコンの<110>方向が揃うことにより、単結晶のシリコン薄膜が得られるとしている。
多接合型薄膜太陽電池が注目されているのは、先述した通り、高効率化や経時劣化の抑制が期待されることに加えて、アモルファスシリコン層および結晶質シリコン層をCVD法により連続して形成できるからである。ところが、H.Yamamoto et al,PVSEC−11,Sapporo,Japan,1999において、ガラス上に酸化錫を積層した表面凹凸によるテクスチャー構造を有する基板上にプラズマCVD法により微結晶シリコンを形成した場合、図2に示すように、個々の凹凸表面に垂直な方向にシリコンの結晶粒が優先的に成長し、異なる凹凸表面から成長した互いに結晶方位の異なる結晶粒同士がぶつかることで多量の欠陥が発生することが報告された。非晶質半導体層ではなく結晶質半導体層であることに起因するこのような欠陥は、キャリアの再結合中心となり、光電変換効率を著しく劣化させるので、極力排除されなければならない。H.Yamamotoらは、表面凹凸を有する酸化錫の上にさらに酸化亜鉛を厚く積層することで凹凸大きさを小さくした場合、酸化錫の場合と同様に酸化亜鉛の表面に垂直な方向にシリコン結晶粒が成長し、異なる凹凸表面から成長した結晶粒同士はぶつかるがそれらの方位差が小さいため、発生する欠陥が少なくなることも同時に報告した。しかるに、結晶質半導体層中の欠陥を低減するためには基板の表面凹凸をできるだけ小さくすればよいのは明らかである。
しかしながら、特許第1681183号公報に示されている通り、表面凹凸を有する透明導電膜には、光の乱反射を生じさせ、シリコン膜中における光路長を大きくするので、光吸収により発生する電流値を増大させる、いわゆる光閉込効果という重要な機能がある。さらに光閉込効果は光電変換効率の向上により光電変換層を薄くできるので、製膜工程を短時間化できるという利点も産み出す。このことは光吸収特性の違いからアモルファスシリコン層の数倍もの光電変換層厚さを要求される結晶質シリコン層を有する多接合型薄膜太陽電池において、スループットの大幅な向上をもたらすことになる。したがって、表面凹凸をなくす、あるいは小さくすることは回避すべきである。
しかし現在のところ、結晶質シリコン薄膜中の欠陥密度低減と凹凸表面による光閉込効果とは両立させることが非常に困難であり、この問題は解決されていない。例えば、先述した特開平7−240531号公報または特開平11−278988号公報に示されている結晶シリコン薄膜の製造方法を用いることで膜中欠陥密度の小さいシリコン薄膜が作製できるが、シリコン薄膜を形成する基板が実質上平坦であり、光閉込効果を発現することができないので高効率化には限界があることが明らかである。
また、特開平10−150209号公報には、基板の法線方向と柱状結晶粒の長手方向あるいは凹凸表面の法線方向との関係がある範囲内に規定されていることを特徴とする光電変換素子が開示されているが、基板の法線方向と柱状結晶粒の長手方向が小さくない傾きを持つ限りは前述した欠陥の発生は不可避である。さらに、特開平10−117006号公報、特開平10−294481号公報、特開平11−214728号公報、特開平11−266027号公報、特開2000−58892号公報には、表面を凹凸化した裏面電極上に多結晶シリコン層から成る光電変換層を有する下部光電変換素子を形成しており、該多結晶シリコン層が基板表面に平行な(110)の優先結晶配向面を有する薄膜太陽電池が示されているが、凹凸形状を有する裏面電極表面近傍での多結晶シリコン層形成にあたっては、前述した多結晶シリコンの成長挙動について全く考慮されていないため、欠陥の発生が避けられないのは明らかである。
本発明の目的は、十分な光閉込効果を有しつつ、欠陥密度の増大が抑制された結晶質半導体層を有する、高効率な多接合型薄膜太陽電池およびその製造方法を提供することにある。
本発明により基板上に積層された複数の光電変換素子構造を備える多接合型薄膜太陽電池の製造方法が提供され、光電変換素子構造は、第1導電型半導体層、真性半導体層および第2導電型半導体層が順に積層されており、基板上に光電変換素子構造を2個積層する光電変換素子構造積層工程と、光電変換素子構造積層工程の後に中間層を形成する中間層形成工程と、中間層形成工程の後に結晶質の第1導電型半導体層、真性半導体層を形成する結晶質半導体層形成工程を有し、中間層の表面は、凹凸間隔Lに対する凹凸大きさRの比R/Lが0.1〜1.5の範囲にあるような凹凸によるテクスチャー構造を有し、結晶質半導体層形成工程は、中間層の表面に垂直な方向に柱状に成長している結晶粒により主として構成されている第1導電型半導体層および真性半導体層よりなる結晶質半導体層を形成する工程である多接合型薄膜太陽電池の製造方法である。
本発明により多接合型薄膜太陽電池が提供され、該太陽電池は、基板と、基板上に積層された複数の光電変換素子構造とを備え、そこにおいて、複数の光電変換素子構造の夫々には、第1導電型半導体層、真性半導体層および第2導電型半導体層が順に積層されており、積層された複数の光電変換素子構造のうち、基板側から数えて2番目の光電変換素子構造と3番目の光電変換素子構造との間にのみ、中間層が設けられており、3番目の光電変換素子構造を支持する中間層の表面は、凹凸間隔Lに対する凹凸大きさRの比R/Lが0.1〜1.5の範囲にあるような凹凸によるテクスチャー構造を有しており、かつ3番目の光電変換素子構造の第1導電型半導体層および真性半導体層は、3番目の光電変換素子構造を支持する中間層の表面に垂直な方向に柱状に成長している結晶粒により主として構成されている結晶質半導体層である。
本発明において、3番目の光電変換素子構造の光電変換素子構造の第1導電型結晶質半導体層は、1nm以上200nm未満の厚みを有することが好ましい。また、3番目の光電変換素子構造の第1導電型半導体層側表面から高さ200nmまでの部分において、2番目の光電変換素子構造の第2導電型半導体層側表面または中間層の表面に垂直な方向に柱状に成長している結晶粒は、当該部分における結晶粒全体の少なくとも50%以上を占め、かつ2番目の光電変換素子構造の第2導電型半導体層側表面または中間層の表面に垂直な方向に100nm以上の長さを有することが好ましい。
本発明において、3番目の光電変換素子構造の第1導電型半導体層は1nm以上50nm以下の厚みを有することが、好ましい。
本発明において、3番目の光電変換素子構造の第1導電型半導体層および前記真性半導体層は、主としてシリコンから成ることが好ましい。また、3番目の光電変換素子構造の第1導電型半導体層および真性半導体層において、2番目の光電変換素子構造の第2導電型半導体層側表面または中間層の表面に平行に配向する結晶面は、主として(110)であることが好ましい。
本発明において、3番目の光電変換素子構造の真性結晶質半導体層について得られる、(220)面のX線回折ピークの積分強度I220と(111)面のX線回折ピークの積分強度I111との比I220/I111が3以上であることが、好ましい。
本発明において、3番目の光電変換素子構造の第1導電型結晶質半導体層はホウ素を不純物として含有することが、特に好ましい。
本発明において、中間層は、主として酸化亜鉛からなる透明導電体であることが、好ましい。
本発明により多接合型薄膜太陽電池の製造方法が提供され、該多接合型薄膜太陽電池は、基板と、基板上に積層された複数の光電変換素子構造とを備え、複数の光電変換素子構造の夫々において、第1導電型半導体層、真性半導体層および第2導電型半導体層が順に積層されており、基板型から数えてN(Nは1以上の任意の整数)番目の光電変換素子構造の第2導電型半導体層側表面は、凹凸間隔Lに対する凹凸大きさRの比R/Lが0.1〜1.5の範囲にあるような凹凸によるテクスチャー構造を有し、N番目の光電変換素子構造上に形成されるN+1番目の光電変換素子構造の第1導電型半導体層を製膜する際に、SiH
4
、H
2
、B
2
H
6
及び希ガスを原料ガスとして用いる多接合型薄膜太陽電池の製造方法である。
本発明により多接合型薄膜太陽電池の製造方法が提供され、該多接合型薄膜太陽電池は、基板と、基板上に積層された複数の光電変換素子構造とを備え、複数の光電変換素子構造の夫々において、第1導電型半導体層、真性半導体層および第2導電型半導体層が順に積層されており、基板型から数えてN(Nは1以上の任意の整数)番目の光電変換素子構造とN+1番目の光電変換素子構造との間には、中間層が設けられており、N+1番目の光電変換素子を支持する中間層の表面は、凹凸間隔Lに対する凹凸大きさRの比R/Lが0.1〜1.5の範囲にあるような凹凸によるテクスチャー構造を有し、中間層上に形成されるN+1番目の光電変換素子構造の第1導電型半導体層を製膜する際に、SiH
4
、H
2
、B
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H
6
及び希ガスを原料ガスとして用いる多接合型薄膜太陽電池の製造方法である。
なお、本明細書において、特に言及しない限り、「結晶質半導体層」という用語は、方位の異なる複数の結晶粒を構成要素として含むあらゆる形態の半導体層を包含する。したがって、「結晶質半導体層」という用語は、たとえば、複数の結晶子の集合体である半導体層のみならず、微結晶あるいはマイクロクリスタルと呼ばれる結晶成分と非晶質成分が混在した状態の半導体層も含む。
本発明による多接合型薄膜太陽電池の基板側から数えてN(Nは1以上の任意の整数)番目の光電変換素子構造の第2導電型半導体層側表面、あるいはN+1番目の光電変換素子構造を支持する中間層の表面には、凹凸によるテクスチャー構造が設けられている。この凹凸の大きさは代表的には0.01〜10μm、好ましくは0.05〜2μmの範囲であり、目視ではその凹凸形状を判別できない。すなわち、目視ではそれらの表面は平滑な面として認識される。そこで、本明細書において「N番目の光電変換素子構造の第2導電型半導体層側表面または中間層の表面に垂直」あるいは「N番目の光電変換素子構造の第2導電型半導体層側表面または中間層の表面に平行」というとき、特に断りのない限り、「垂直」および「平行」の基準は、この目視により平滑であるとみなされる表面(巨視的表面)である。
一方、微視的にみれば、光電変換素子構造を支持する表面は凹凸によるテクスチャー構造を形成している。この凹凸形状は、原子間力顕微鏡により測定することができ、凹凸大きさRおよび凹凸間隔Lは次のように定義される。すなわち、表面の任意の領域において、原子間力顕微鏡により長さ5μmにわたって表面凹凸形状の線測定を行い、測定により得られた表面形状波形について、日本工業規格JISB0602−1994で規定された表面凹凸の算術平均値Raを凹凸大きさRとし、日本工業規格JISB0602−1994で規定された表面凹凸の平均間隔Smを凹凸間隔Lとする。
本発明により、凹凸を有する表面においても巨視的表面に垂直な方向に柱状に成長した第1導電型結晶質半導体層および真性結晶質半導体層を有する多接合型薄膜太陽電池が提供される。該構造により、光閉込効果による光吸収量の増大と、結晶質半導体層中の欠陥が低減されることによる膜厚方向に対する良好なキャリア輸送特性との両立が可能となる。したがって、本発明による多接合型薄膜太陽電池は、高い光電変換効率を有することができる。
巨視的表面に垂直な方向に柱状に成長したシリコン結晶質半導体層を示す模式図。
個々の凹凸表面に垂直な方向に柱状に成長したシリコン結晶質半導体層を示す模式図。
本発明による薄膜太陽電池構造の一例を示す模式図。
実施例1におけるサンプル断面の透過型電子顕微鏡観察像を示す模式図。
比較例1におけるサンプル断面の透過型電子顕微鏡観察像を示す模式図。
比I220/I111とR/Lとの関係を示す図。
本発明者は、平滑な表面を有するガラス板に被覆された酸化亜鉛をエッチングすることで凹凸大きさRと凹凸間隔Lとの比R/Lを適宜変化させた基板上に、プラズマCVD法によりシリコン結晶質半導体層を形成する検討を行った。その結果、チャネリング粒子が少ない条件においては、図6の曲線61に示すように、R/Lの平均値が小さい、言い換えれば表面凹凸が小さい場合のみシリコン結晶質半導体層の配向性を強めることができるのに対して、チャネリング粒子が多い条件においては、図6の曲線62に示すように、R/Lの平均値が小さい場合、すなわち表面凹凸が小さい場合だけでなく、R/Lが0.1〜1.5の範囲にある場合に、(220)面のX線回折ピークの積分強度I220と(111)面のX線回折ピークの積分強度I111との比I220/I111を3以上とすることが可能となることを発見した。
この発見により初めて、光閉込効果による光吸収量の増大と、結晶質半導体層中の欠陥が増大しないことによる膜厚方向に対する良好なキャリア輸送特性との両立が可能となり、高い光電変換効率を有する多接合型薄膜太陽電池が実現できた。
本発明の多接合型薄膜太陽電池に用いる基板材料としては、ガラス、金属、あるいはポリイミドやポリビニルといった200℃程度の耐熱性を有する樹脂、さらにはそれらが積層されたもの等、種々のものが使用できる。また、それらの表面に金属膜、透明導電膜、あるいは絶縁膜等を被覆したものも含まれる。また、基板厚さは特に限定されるものではないが、構造を支持し得るよう適当な強度や重量を有するように、例えば0.1〜30mm程度である。
基板の表面には凹凸があってもよい。凹凸を設ける手段としては、例えば、平滑な表面を有する基板上に、堆積すると同時に表面に凹凸が形成されるような膜を形成してもよい。該表面に凹凸が形成される膜は基板と同じ材料であっても、または異なる材料であっても構わない。また、基板表面に対してサンドブラストのような機械加工、あるいはエッチングといった化学的加工処理を行って凹凸を形成することもできる。
本発明の多接合型薄膜太陽電池において、基板に積層された複数の光電変換素子構造のうち、基板側から数えてN(Nは1以上の任意の整数)番目の光電変換素子構造の第2導電型半導体層側表面は、凹凸間隔Lに対する凹凸大きさRの比R/Lが0.1〜1.5の範囲にあるような凹凸によるテクスチャー構造を有している。さらに、N+1番目の光電変換素子構造は、図1に示すようなテクスチャーを有する表面上においても、巨視的表面に垂直な方向に柱状に成長している結晶粒により主として構成されている第1導電型結晶質半導体層および真性結晶質半導体層を有する。これらの特徴により、光閉込効果を奏しかつ光電変換素子構造中の欠陥増大が抑制された、高い光電変換効率をもたらす多接合型薄膜太陽電池を得ることができる。
本発明によるもう一つの形態の多接合型薄膜太陽電池において、基板に積層された複数の光電変換素子構造のうち、基板側から数えてN(Nは1以上の任意の整数)番目の光電変換素子構造とN+1番目の光電変換素子構造との間に設けられた中間層の表面は、凹凸間隔Lに対する凹凸大きさRの比R/Lが0.1〜1.5の範囲にあるような凹凸によるテクスチャー構造を有する。さらに、N+1番目の光電変換素子構造は、図1に示すようなテクスチャーを有する表面上においても、巨視的表面に垂直な方向に柱状に成長している結晶粒により主として構成されている第1導電型結晶質半導体層および真性結晶質半導体層を有する。これらの特徴は、十分な光閉込効果を生じさせるとともに、光電変換素子構造中の欠陥増大を抑制する。したがって、本発明による多接合型薄膜太陽電池は、高い光電変換効率をもたらすことができる。
本発明において、中間層は、隣り合う光電変換素子構造の互いに異なる導電型を有する層の間に設けられる層である。中間層は、互いに異なる導電型層が直接接合する場合に生じる逆方向の接合形成、あるいは不純物の混合による接合不良等を防止するために設けられる。
中間層として、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛等からなる透明導電膜が好適である。また、中間層は、これらのうちの単一の材料から成るものであってもよいし、あるいはこれらの材料を含む層を複数積層したものであっても構わないが、中間層の両表面、特に基板に対向しない側の表面は透明導電膜から成ることが、より好ましい。特に、主として酸化亜鉛からなる透明導電膜には、安価である、耐プラズマ性が高く変質しにくいという利点があるので、より好ましい。
これらの透明導電膜は、例えばスパッタリング法、常圧CVD法、減圧CVD法、電子ビーム蒸着法、ゾルゲル法、電析法等の公知の方法により作製できる。その中でも特に、スパッタリング法は、透明導電膜の透過率や抵抗率を薄膜太陽電池に適したものに制御することが容易であるので望ましい。
これらの透明導電膜中に微量の不純物が添加されていてもよい。例えば、酸化亜鉛の場合、5×1020〜5×1021cm-3程度のガリウムやアルミニウムといった第3B族元素あるいは銅のような第1B族元素が含有されることにより抵抗率が低減するので、中間層として使用するのに好ましい。また、これらの透明導電膜(中間層)の厚さは薄すぎると特性の均一性に問題が生じ、厚すぎると透過率の減少および直列抵抗の増加による光電変換効率の低下やコストの増大を引き起こすため、好ましくは1〜50nm程度である。
中間層の表面に凹凸を設ける手段として、例えば、堆積すると同時に表面に凹凸が形成されるような条件により中間層を形成してもよい。この際、中間層表面の凹凸形状が下地となる光電変換素子の凹凸形状の影響を受けることを考慮して、中間層の形成条件を決定すればよい。また、中間層表面に対してサンドブラストのような機械加工、あるいはエッチングといった化学的加工処理を行うことで凹凸を形成することも可能である。
中間層表面が透明導電膜から成る場合、エッチャントの種類、濃度あるいはエッチング時間等を適宜変更することにより、透明導電膜の表面形状を容易に制御できるので、凹凸を作製する手段としてエッチングを行うことが、特に好ましい。エッチャントとして酸またはアルカリ溶液を用いることは、より安価に製造できるので、さらに好ましい。この場合、酸溶液には、塩酸、硫酸、硝酸、フッ酸、酢酸、蟻酸、過塩素酸等の1種または2種以上の混合物を用いることができる。中でも、塩酸、酢酸が好ましい。これらの酸溶液は、例えば0.05〜5重量%程度の濃度で使用できる。特に酢酸のような比較的弱い酸の場合には、0.1〜5重量%程度の濃度で使用することが好ましい。また、アルカリ溶液には、水酸化ナトリウム、アンモニア、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム等の1種または2種以上の混合物を用いることができる。なかでも水酸化ナトリウムが好ましい。これらのアルカリ溶液は1〜10重量%程度の濃度で使用することが好ましい。
エッチングにより中間層の少なくとも基板に対向しない側の表面に設けられる凹凸の少なくとも一部は、略球面状あるいは略円錐状の穴とすることができる。該穴の直径が200〜2000nmの範囲にある場合、高さの二乗平均値RMSおよび傾斜角をθとしたときのtanθについて上述した好適な範囲の凹凸が再現性よく得られるので、好ましい。さらに、該穴の直径は、400〜1200nmの範囲にあることが、より好ましい。
光閉込効果を向上させるためにはR/Lの値が大きい方が望ましく、光電変換素子中の欠陥増大を抑制するためにはR/Lの値が小さい方が望ましい。したがって、この両者を満足させることのできる凹凸テクスチャー構造は、R/Lの値が0.2〜1.2の範囲にあるものが好ましく、0.25〜0.8の範囲にあるものがより好ましい。
本発明の特に好ましい態様において、N+1番目の光電変換素子構造の第1導電型結晶質半導体層は1nm以上200nm未満の厚みを有し、基板の表面から高さ200nmまでの部分において、基板に垂直な方向に柱状に成長している結晶粒は、当該部分における結晶粒全体の少なくとも50%以上を占め、かつN番目の光電変換素子構造の第2導電型半導体層側表面(巨視的表面)または中間層の表面(巨視的表面)に垂直な方向に100nm以上の長さを有する。この場合、同一の結晶粒内に第1導電型結晶質半導体層と真性結晶質半導体層との接合界面が形成されている傾向が強く、特に好ましい。
さらに、第1導電型結晶質半導体層の膜厚を1nm以上50nm以下とすることにより、直列抵抗の低減、または導電型層における光吸収量の低減といった効果が得られるので光電変換効率の向上に効果的である。
N+1番目の光電変換素子構造の第1導電型結晶質半導体層および真性結晶質半導体層を主としてシリコンから成るものとすることにより、アモルファスシリコンでは光電変換に利用できない波長700nm以上の長波長光も光電変換に利用できる。これにより、高い光電変換効率が得られるとともに、光劣化が抑制された安定な太陽電池を得ることができる。なお主としてシリコンから成る半導体層には、実質的にシリコンのみからなるものの他、シリコンと他の元素との組み合わせからなるもの、例えばシリコンに錫が添加されたSixSn1-xおよびゲルマニウムが添加されたSixGe1-x等も含まれる。
また、N+1番目の光電変換素子構造における第1導電型シリコン結晶質半導体層および真性シリコン結晶質半導体層において、N番目の光電変換素子構造の第2導電型半導体層側表面または中間層の表面に平行に配向する結晶面を(110)とすることで、配向面が(111)や(100)である場合のように、シリコン層形成の際にシリコン層がエッチングされる傾向が強く、膜損傷の恐れがある条件を用いることなく、N+1番目の光電変換素子構造の第1導電型シリコン結晶質半導体層を形成できる。これにより、第1導電型シリコン結晶質半導体層の下に位置するN番目の光電変換素子構造の第2導電型層あるいは中間層との界面を良好に形成することができる。
さらに、N+1番目の光電変換素子構造の第1導電型シリコン結晶質半導体層上に形成される真性シリコン結晶質半導体層において、N番目の光電変換素子構造の第2導電型半導体層側表面または中間層の表面に平行に配向する結晶面を(110)とすることができる。これにより、N+1番目の光電変換素子構造における第1導電型シリコン結晶質半導体層と真性シリコン結晶質半導体層との界面を良好に形成することができる。
また、上述した(110)配向により、形成速度が遅くなる条件を用いることなく真性シリコン結晶質半導体層を形成できるので、高効率な薄膜太陽電池を短時間で安定に製造することが可能となる。特に、N+1番目の光電変換素子構造における第1導電型シリコン結晶質半導体層上に形成された真性シリコン結晶質半導体層の(220)X線回折ピークの積分強度I220と(111)X線回折ピークの積分強度I111の比I220/I111が3以上、好ましくは5以上である場合、良好な光電変換特性が得られる。
N+1番目の光電変換素子構造における第1導電型シリコン結晶質半導体層にホウ素が不純物として含有されている場合、特に(110)配向の傾向が強くなるので望ましい。その理由は明らかではないが、参考文献(1)〜(4)には、面方位が(100)あるいは(111)である単結晶シリコンの表面にボロンが存在するとシリコンの反応性が低下するという報告がある。したがって、同様の現象により(100)あるいは(111)の配向が抑制されることが原因として考えられる。ホウ素の含有量として0.01〜10原子%の範囲であれば、(110)配向が強められる効果が得られる。ホウ素含有量の好ましい範囲は0.05〜9原子%であり、より好ましい範囲は0.2〜8原子%である。
以下、実施例により本発明をさらに説明する。
(実施例1)
図3に作製した薄膜太陽電池の構造を示す。平滑な表面を有するガラス板31a上にテクスチャー構造を有する酸化錫31bを形成した上に、通常の電子ビーム蒸着法により厚さ50nmの酸化亜鉛層31cを形成したものを基板31として用いた。原子間力顕微鏡により測定した基板表面の凹凸大きさRと凹凸間隔Lとの比R/Lの平均値は0.8であった。
続いて、基板31の上にp型アモルファスシリコン層32a、i型アモルファスシリコン層32b、n型アモルファスシリコン層32cをプラズマCVD装置により順に積層することで第1の光電変換素子構造32を形成した。プラズマCVD装置には上記各層ごとの形成室が設けられており、各形成室およびロードロック室間は真空を破ることなく基板を搬送できるようになっている。各形成室内部には平行平板型の電極が設けられている。電極は、カソード電極とそれに対向するアノード電極からなる。カソード電極にプラズマ励起用高周波電力が導入される。各形成室において、基板は、温度制御機能を有するアノード電極側に、テクスチャー構造を有する表面側がカソード電極に対向するように設置される。
13.56MHzの高周波電力を投入して、基板31上にp型アモルファスシリコン層32a、i型アモルファスシリコン層32b、n型アモルファスシリコン層32cを順に積層し、アモルファスシリコン光電変換層32を形成した。p型アモルファスシリコン層32aは、SiH4ガス12SCCM、H2ガス30SCCM、H2ガスにより5000ppmに調整されたB2H6ガス1SCCM、製膜室圧力20Pa、放電電力25W、基板温度180℃の条件で製膜し、15nmの厚さとした。i型アモルファスシリコン層32bは、SiH4ガス30SCCM、H2ガス70SCCM、製膜室圧力30Pa、放電電力30W、基板温度180℃の条件で製膜し、350nmの厚さとした。n型アモルファスシリコン層32cは、SiH4ガス10SCCM、H2ガスにより1000ppmに調整されたPH3ガス100SCCM、製膜室圧力27Pa、放電電力30W、基板温度180℃の条件で製膜し、30nmの厚さとした。
第1の光電変換素子32を形成した後、中間層33として、Gaがドープされた酸化亜鉛からなる膜を通常のスパッタリング法により50nmの厚みで形成した。このとき、原子間力顕微鏡により測定した中間層33表面の凹凸大きさRと凹凸間隔Lとの比R/Lの平均値は0.6であった。
中間層33を形成した後、第1の光電変換素子32を形成するのに使用したプラズマCVD装置を用いて、p型シリコン結晶質半導体層34a、i型シリコン結晶質半導体層34b、n型シリコン半導体層34cの順に積層することで、第2の光電変換素子34を形成した。p型シリコン結晶質半導体層34aはSiH4、H2およびB2H6の混合ガスを用い、ガス混合比はp型シリコン結晶質半導体層中のボロン濃度が0.5原子%となるように調整した。投入する高周波の周波数は40.68MHz、形成室圧力は25Pa、基板温度は150℃とした。また、膜厚は20nmとした。
i型シリコン結晶質半導体層34bはSiH4およびH2の混合ガスを用い、ガス混合比はi型シリコン層が十分に結晶化されるように調整した。投入する高周波の周波数は40.68MHz、形成室圧力は40Pa、基板温度は150℃とした。また、膜厚は2μmとした。この条件を用いてi型シリコン結晶質半導体層を平坦なガラス基板上に製膜した場合、(220)X線回折ピークの積分強度I220と(111)X線回折ピークの積分強度I111の比I220/I111は、図6に示すように10.0であり、このi型シリコン結晶質半導体層33自体が平坦な表面の法線方向に強い(220)配向を示すものであった。
n型シリコン結晶質半導体層34cはSiH4、H2およびPH3の混合ガスを用い、ガス混合比はn型シリコン半導体層中のリン濃度が0.5原子%となるように調整した。投入する高周波の周波数は40.68MHz、形成室圧力は25Pa、基板温度は150℃とした。また、膜厚は20nmとした。
その後、プラズマCVD装置から基板を取り出し、通常の電子ビーム蒸着法により酸化亜鉛を蒸着して裏面反射層35を形成した。そしてレーザースクライブ法により1cm角の大きさに分離した。その後、通常の電子ビーム蒸着法により銀からなる裏面電極36を形成して、基板31側から光を入射するスーパーストレート構造の多接合型薄膜太陽電池を得た。
図4にこの多接合型薄膜太陽電池の中間層付近の断面を透過型電子顕微鏡により観察した像を模式的に示す。中間層41の凹凸表面上に形成された第2の光電変換素子のp型シリコン結晶質半導体層42は複数の結晶粒から成り、そのうち約50%の結晶粒は個々の凹凸表面にほぼ垂直な方向に成長しているのに対して、残りの約50%の結晶粒は中間層の表面(巨視的表面)に垂直な方向に成長していた。そして、中間層の表面(巨視的表面)に垂直な方向に成長している結晶粒のほとんどは、中間層の表面(巨視的表面)に垂直な方向に100nm以上の長さを有する柱状結晶粒であり、膜厚が増えるにつれて中間層の表面(巨視的表面)に平行な方向の粒径が増大しながら、当該部分においてその割合を増していた。
さらに、ほぼi型層全体に相当する領域の結晶方位に関する情報を得るため、直径0.8μmの制限視野しぼりを入れて制限視野電子線回折を行った。得られた回折像から、このi型シリコン結晶質半導体層43は中間層の表面(巨視的表面)に平行に(110)面が配向していることが分かった。すなわち中間層の表面(巨視的表面)に垂直な方向に成長しているp型シリコン結晶質半導体層42の結晶粒において、中間層の表面(巨視的表面)に平行に(110)面が配向しており、その上に形成されたi型シリコン結晶質半導体層43は下地となるp型シリコン結晶質半導体層42の結晶方位を引き継ぐ形で成長していることが分かった。
また、i型シリコン結晶質半導体層の(110)配向性の度合いを定量的に調べるために、この多接合型薄膜太陽電池と同じプロセスで第2の光電変換素子のi型シリコン結晶質半導体層まで形成したものについてX線回折を行ったところ、(220)X線回折ピークの積分強度I220と(111)X線回折ピークの積分強度I111の比I220/I111が7.0であり、平坦なガラス基板上に製膜した場合に近い値であった。
この薄膜太陽電池のAM1.5(100mW/cm2)照射条件下における電流−電圧特性の測定を行ったところ、セル面積1cm2において開放電圧1.205V、短絡電流12.8mA/cm2、形状因子0.695、光電変換効率10.72%という値が得られた。
なお、本実施例においては、第1の光電変換素子のp、i、n全ての層をアモルファスシリコンにより形成しているが、i層については第2の光電変換素子のi層となる結晶シリコンよりエネルギーギャップが大きい材料であればよく、例えばa−SiC:H等を用いてもよい。導電型層についてもp、nともにアモルファスシリコン層である必要はなく、いずれもシリコン結晶質半導体層等で形成しても構わない。また本実施例では中間層を設けているが、基板面に垂直な方向に柱状に成長した第2の光電変換素子の第1導電型シリコン結晶質半導体層を形成する点においては必ずしも必要ではない。
(比較例1)
凹凸形状の効果を検証するために、平滑な表面を有するガラス板上にテクスチャー構造を有する酸化錫を形成した後、液温25℃の0.5%塩酸水溶液に30秒間浸してエッチングを行うことで表面凹凸を尖鋭化し、その上に通常の電子ビーム蒸着法により厚さ50nmの酸化亜鉛層を形成したものを基板として用いた。原子間力顕微鏡により測定した、この基板表面の凹凸大きさRと凹凸間隔Lとの比R/Lは1.65であった。この基板作製工程以外は、実施例1と同様に薄膜太陽電池を作製した。
図5にこの薄膜太陽電池の断面を透過型電子顕微鏡により観察した像を模式的に示す。ただし図4と同様に、n型シリコン半導体層、裏面反射層、裏面電極は省略している。凹凸表面上には複数の結晶粒が生成しており、そのほとんどが、個々の凹凸表面に垂直な方向に成長している。これら凹凸表面に垂直な方向に成長している結晶粒は、やがて隣接する凹凸表面から成長してきた結晶粒と衝突した後、中間層の表面(巨視的表面)に垂直な方向へと成長方向を徐々に変化させていた。しかし、中間層の表面(巨視的表面)に垂直な方向に顕著に成長している結晶粒は確認されなかった。
さらに、i型層全体に相当する領域の結晶方位に関する情報を得るため、直径0.8μmの制限視野しぼりを入れて制限視野電子線回折を行った。得られた回折像から、このi型シリコン結晶質半導体層は中間層の表面(巨視的表面)に平行な配向面を明確には有していないことが分かった。このように、凹凸形状が適切でない場合、p型シリコン結晶質半導体層の結晶粒が中間層の表面(巨視的表面)に平行な配向面を有しておらず、そのため、その上に形成されたi型シリコン結晶質半導体層も中間層の表面(巨視的表面)に平行な配向面を有することなく成長を開始している。
また、i型シリコン結晶質半導体層の(110)配向性の度合いを定量的に調べるため、この薄膜太陽電池と同じプロセスでi型層まで形成したものについてX線回折を行ったところ、(220)X線回折ピークの積分強度I220と(111)X線回折ピークの積分強度I111の比I220/I111が2.0であり、実施例1の場合と比較して著しく配向性が劣っていた。
この薄膜太陽電池のAM1.5(100mW/cm2)照射条件下における電流−電圧特性の測定を行ったところ、セル面積1cm2において開放電圧1.080V、短絡電流10.6mA/cm2、形状因子0.670、光電変換効率7.67%という値が得られた。実施例1の結果と比較して、開放電圧、短絡電流、形状因子の全てにおいて特性の低下が生じていた。さらに、実施例1および比較例1の素子について分光感度測定を行った結果から、比較例1の素子は特に長波長側での感度が劣ることが判明した。これは、光入射側から離れて位置する光電変換素子構造に問題があることを意味しており、透過型電子顕微鏡観察結果により矛盾なく説明できる。
(比較例2)
凹凸形状の効果を検証するために、ガラス板上の酸化亜鉛層31cを厚さ500nmとなるように形成したこと以外は、実施例1と同様に多接合型薄膜太陽電池を作製した。実施例1と比較して酸化亜鉛層31cを厚く積層することにより表面の凹凸形状はより緩やかなものとなった。中間層33表面の微視的な凹凸構造について原子間力顕微鏡により測定を行った結果、凹凸大きさRと凹凸間隔Lとの比R/Lの平均値は0.05であった。
i型シリコン結晶質半導体層の(110)配向性の度合いを定量的に調べるために、この薄膜太陽電池と同じプロセスでi型層まで形成したものについてX線回折を行ったところ、(220)X線回折ピークの積分強度I220と(111)X線回折ピークの積分強度I111の比I220/I111が8.5であり、平坦なガラス基板上に製膜した場合と同等の値であった。
この薄膜太陽電池のAM1.5(100mW/cm2)照射条件下における電流−電圧特性の測定を行ったところ、セル面積1cm2において開放電圧1.208V、短絡電流10.6mA/cm2、形状因子0.690、光電変換効率8.84%という値が得られた。実施例1の結果と比較して、開放電圧、形状因子の値はほぼ同じであるのに対し、光閉込効果が小さいので短絡電流が低下していた。
(実施例2)
チャネリング粒子の効果を検証するため、凹凸表面を有する中間層33上に第2の光電変換素子34のp型シリコン結晶質半導体層32を形成する際、原料ガスとしてSiH4、H2およびB2H6の混合物にArガスを添加したものを使用した。それ以外は、実施例1と同様に薄膜太陽電池を作製した。このときのSiH4、H2およびB2H6の混合比は実施例1と同じであり、Arの添加量は全混合ガスの5%となるように調整した。
得られた薄膜太陽電池の断面を透過型電子顕微鏡により観察すると、実施例1の場合と同様に、凹凸表面上には複数の結晶粒が生成していたが、実施例1の場合よりも結晶粒密度が低減されており、なおかつ約80%の結晶粒は中間層の表面(巨視的表面)に垂直な方向に成長していた。そして、中間層の表面(巨視的表面)に垂直な方向に成長している結晶粒のほとんどは、中間層の表面(巨視的表面)に垂直な方向に100nm以上の長さを有する柱状結晶粒であり、膜厚が増えるにつれて中間層の表面(巨視的表面)に平行な方向の粒径が増大しながら、当該部分においてその割合を増すという傾向は同様であった。
さらに、ほぼi型層全体に相当する領域の結晶方位に関する情報を得るため、直径0.8μmの制限視野しぼりを入れて制限視野電子線回折を行った。得られた回折像から、このi型シリコン結晶質半導体層は中間層の表面(巨視的表面)に平行に(110)面が配向していることが分かった。すなわち中間層の表面(巨視的表面)に垂直な方向に成長しているp型層の結晶粒は、中間層の表面(巨視的表面)に平行に(110)配向しており、その上に形成されたi型シリコン結晶質半導体層は下地となるp型層の結晶方位を引き継ぐ形で成長していることが分かった。
また、i型シリコン結晶質半導体層の(110)配向性の度合いを定量的に調べるために、この薄膜太陽電池と同じプロセスでi型層まで形成したものについてX線回折を行ったところ、(220)X線回折ピークの積分強度I220と(111)X線回折ピークの積分強度I111の比I220/I111は8であった。
Ar添加により中間層の表面(巨視的表面)に垂直な方向に<110>配向している結晶粒が優先的に成長する理由は未だ明らかではないが、シースポテンシャルにより巨視的表面にほぼ垂直な方向に加速されたプラズマ中のAr+が、シリコンのチャネリング方向である<110>への成長を促進する効果、および、巨視的表面にほぼ垂直な方向に<110>が向いていない結晶粒をスパッタする効果によるものと考えられる。
なお、本実施例では添加する希ガスとしてArを用いたが、HeあるいはNeなどであってもよい。
この薄膜太陽電池のAM1.5(100mW/cm2)照射条件下における電流−電圧特性の測定を行ったところ、セル面積1cm2において開放電圧1.242V、短絡電流13.1mA/cm2、形状因子0.714、光電変換効率11.62%という値が得られた。実施例1の素子と比較して、さらに開放電圧、形状因子の向上が成された。これはp型層とi型層との界面近傍の構造がさらに適切なものとなったためであり、透過型電子顕微鏡観察結果により矛盾なく説明できる。
以上の実施例では、平滑な表面を有するガラス板上にテクスチャー構造を有する酸化錫膜を形成し,さらにその上に酸化亜鉛膜を形成した基板を用いるスーパーストレート型の多接合型薄膜太陽電池を説明した。しかし、上述した実施例以外に、本発明による実施の形態が多く存在することは、当業者に明らかである。例えば、多接合型薄膜太陽電池の構造は、ガラス基板や金属製基板上に光電変換層として形成したシリコン結晶質半導体層側より光を入射するサブストレート型であってもよい。
11…凹凸表面
12…目視による仮想的な表面(巨視的表面)
13…N+1番目の光電変換素子の第1導電型シリコン結晶質半導体層
14…N+1番目の光電変換素子の真性シリコン結晶質半導体層
15、24…凹凸大きさR
16、25…凹凸間隔L
31…基板
21、31a…ガラス板
22、31b…酸化錫層
31c…酸化亜鉛層
32…第1の光電変換素子
32a…p型アモルファスシリコン層
32b…i型アモルファスシリコン層
32c…N型アモルファスシリコン層
33、41、51…中間層
34…第2の光電変換素子
34a、42、52…p型シリコン結晶質半導体層
34b、43、53…i型シリコン結晶質半導体層
34c…N型シリコン半導体層
35…裏面反射層
36…裏面電極
61…チャネリング粒子が少ない条件における、基板凹凸形状の指標R/Lに対するI220/I111曲線
62…チャネリング粒子が多い条件における、基板凹凸形状の指標R/Lに対するI220/I111曲線