JP2012143234A - 高機能化キメラ蛋白質を含有する細胞増殖促進用培地 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】FGF1/FGF2キメラ蛋白質のうちの特定の配列で表されるアミノ酸配列からなるキメラ蛋白質を有効成分とすることで、温度安定性及び蛋白質分解酵素抵抗性の高いFGF1/FGF2キメラ蛋白質を有効成分とする細胞増殖促進用培地。
【選択図】なし
Description
特に、創傷治癒のためのFGF2医薬組成物は、単に患部を消毒して細菌感染を防ぎ自然の皮膚再生機能を待つという、従来一般的に用いられていた「ポピドンヨード・白糖」とは全く異なり、積極的に皮膚細胞を増殖させることで治癒させるという画期的な創傷治癒促進用治療剤として、上市され臨床現場においても広く用いられており、既に一般名トラフェルミン、商品名フィブラストスプレーの名称で市販されている。FGF2医薬組成物は他にも、骨折治療剤(非特許文献5)、歯周病治療剤(非特許文献6)、骨髄の放射線障害防止剤(非特許文献7)、腸管の放射線障害防止剤(非特許文献8)、幹細胞の増殖剤(非特許文献9)などとして有効性が認められている。
一方、FGF2は、ヘパリン非依存性であって真皮の細胞の増殖を促進することができるため、重篤な場合を含め広く創傷治療一般に用いることができる。しかしながら、FGF2はその受容体結合特異性から、上皮細胞に対する反応性が極めて低いため、真皮の治療には有効であるが、表皮の細胞の増殖を直接促進することができなかった。すなわち、真皮の増殖再生を促す間に、表皮細胞の自己修復能を待ち、結果的に皮膚全体の再生を図るというものであったため、治癒にかかる時間が長くなる問題点がある。特に皮膚再生能が極端に落ちている高齢者の重篤な床ずれや糖尿病患者の皮膚潰瘍の治療などでは、なかなか治癒に至らない場合が多く、皮膚用治療薬としては、まだ満足のいくものではなかった。
またFGF2蛋白質は、生体内に存在する蛋白質分解酵素で分解されやすく、室温から体温程度の温度に相当する約20〜40℃の温度領域での活性が不安定なため、生体に投与した際に活性が速やかに失われるという問題点や、保存容器の壁面に吸着しやすく凝集体を形成しやすいため、溶液中から消滅しやすい点も、製剤化後の活性維持が難しく、医薬製剤としての改善も求められていた。
このような背景の下、FGF2の真皮細胞増殖活性及びヘパリン非依存性などFGF2活性としての利点は維持しつつ、表皮細胞などの上皮細胞にも増殖促進活性を有する皮膚の創傷治癒促進剤などとして用いることができ、かつ製剤化も容易で安定性の高いFGF2代替用の医薬組成物の開発が望まれていた。
ところで、本発明者らは、以前(1995年)に、FGF1蛋白質の特定の一部領域を、FGF2蛋白質の対応する領域に置換したキメラ蛋白質を多数作製し(非特許文献1)、その性質を調べていた。その過程で、FGF1蛋白質のアミノ酸配列の41〜83位の部分配列が、FGF2蛋白質のアミノ酸配列における対応する領域の部分配列に置換されたキメラ蛋白質(非特許文献1ではFGF-C(1211)、以下FGF-C1ともいう。)、及び同様に62〜83位の部分配列が、FGF2蛋白質由来の部分配列に置換されたキメラ蛋白質(非特許文献1ではFGF-C(1(1/2)11)、以下FGF-C2ともいう。)が、FGF1と同様の増殖活性を有していながら、ヘパリン非依存性に変化することを見出しており、FGF1アミノ酸配列の62〜83位の領域がFGF1のヘパリン依存性を決定する領域であることを考察した。なお、本発明において、62位、83位などというとき、FGF1の全長のcDNAに対応するアミノ酸配列のN末端を1位のアミノ酸として数えたFGF1アミノ酸配列上の位置を表す。
その後、これらキメラ蛋白質のFGF-C1(FGF-C(1211))について、ヘパリンの非存在下での、FGF1と同様の強い肝臓細胞増殖促進活性及び神経突起伸展促進活性を確認し、肝臓細胞増殖用医薬組成物及び神経細胞増殖用医薬組成物について報告し、同時に特許出願している(非特許文献2、特許文献1)。
しかし、FGF-C1及びFGF-C2のいずれのキメラ蛋白質についても、蛋白質全長の2/3以上がFGF1由来のアミノ酸配列で構成されているため、その医薬組成物用途開発の方向性は、FGF1のヘパリン依存性決定領域をFGF2由来領域に置換することで、ヘパリン依存性が改善された点が着目され、あくまでFGF1代替用としての医薬組成物の域を出るものではなく、FGF2代替用の医薬組成物としての可能性は全く検討がなされていなかった。
本発明のFGF2代替医薬組成物の有効成分となるキメラ蛋白質は、それを構成するアミノ酸配列が、FGF1蛋白質のアミノ酸配列において、41〜83位の配列又はその少なくとも62〜78位の配列を含む部分配列が、FGF2蛋白質のアミノ酸配列における対応する位置の部分配列に置換されており、他の領域はFGF1のアミノ酸配列から構成されている。
そして本発明は、当該キメラ蛋白質の有する下記特徴を利用した、医薬組成物である。
(1)FGF受容体の全てのサブタイプを刺激する(FGF1と類似)。その結果、FGF2が刺激することができない上皮系細胞も刺激することができる。
(2)ヘパリンに依存せずに高活性を発揮できる(FGF2と類似)。
(3)容器の器壁などへの吸着性が低い。(FGF1とFGF2は高吸着性)
(4)室温〜体温(約20〜40℃)における活性の安定性が高い(FGF1とFGF2は低安定性)
(5)トリプシン分解に対する抵抗性が高い(FGF1とFGF2は易分解性)
また、キメラ蛋白質FGFCは、FGF1やFGF2に比べて蛋白質分解酵素に対する抵抗性が高い。このため、生体内で速やかに分解されて失活してしまうFGF1に比べて、投与時の有効濃度が長時間維持されることになり、投与時にはより低濃度でも同等の活性を発揮することが期待できる。
このような適用においてFGFCは、室温〜体温(約20〜40℃)の温度条件下での安定性が高く、しかも37℃下での蛋白質分解酵素耐性が高いので、高活性を実現できる。すなわち多様な生体障害における浸出液に含まれる蛋白質分解酵素による不活性化の影響を最小限にすることが出来る。
また、FGFCは、溶液を容器に保存した場合の濃度が低下しにくい、という優れた医薬製剤特性を有しているため、安定した高活性の医薬組成物が提供できる。
〔1〕 酸性繊維芽細胞成長因子(FGF1)蛋白質の特定の一部領域を、塩基性繊維芽細胞成長因子(FGF2)蛋白質の対応する領域に置換したFGF1/FGF2キメラ蛋白質を有効成分とするFGF2代替用医薬組成物であって、
当該キメラ蛋白質を構成するアミノ酸配列が、FGF1蛋白質のアミノ酸配列において、41〜83位の配列又はその少なくとも62〜78位の配列を含む部分配列が、FGF2蛋白質のアミノ酸配列における対応する位置の部分配列に置換されており、他の領域はFGF1のアミノ酸配列から構成されていることを特徴とする、FGF2代替用医薬組成物。
〔2〕 前記キメラ蛋白質を構成するアミノ酸配列が、FGF1蛋白質のアミノ酸配列の41〜78位の部分配列が、FGF2蛋白質のアミノ酸配列における対応する位置の部分配列に置換されており、他の領域はFGF1のアミノ酸配列から構成されていることを特徴とする、前記〔1〕に記載のFGF2代替用医薬組成物。
〔3〕 前記キメラ蛋白質を構成するアミノ酸配列が、配列番号1〜4のいずれかで表されることを特徴とする前記〔1〕に記載のFGF2代替用医薬組成物。
〔4〕 前記キメラ蛋白質を構成するアミノ酸配列が、配列番号5〜8のいずれかで表されることを特徴とする、前記〔2〕に記載のFGF2代替用医薬組成物。
〔5〕 前記キメラ蛋白質が、配列番号5〜8のいずれかで表されるアミノ酸配列をコードするDNAを用いて形質転換された大腸菌を培養し、その破砕物の可溶性画分から直接単離精製されたキメラ蛋白質の活性体であることを特徴とする、前記〔4〕に記載のFGF2代替用医薬組成物。
〔6〕 前記FGF2代替用医薬組成物が、FGF2蛋白質を有効成分とする医薬組成物よりも高い薬理作用を示す医薬組成物である、前記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のFGF2代替用医薬組成物。
〔7〕 FGF2代替用医薬組成物が、創傷治癒促進のための医薬組成物である、前記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のFGF2代替用医薬組成物。
〔8〕 前記創傷治癒促進が、上皮系の細胞増殖促進を伴うものである前記〔7〕に記載のFGF2代替用医薬組成物。
〔9〕 FGF2代替用医薬組成物が、腸管の放射線障害の予防及び/又は治療のための医薬組成物である、前記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のFGF2代替用医薬組成物。
〔10〕 FGF2代替用医薬組成物が、骨髄の放射線障害の予防及び/又は治療のための医薬組成物である、前記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のFGF2代替用医薬組成物。
〔11〕 FGF2代替用医薬組成物が、幹細胞増殖促進のための医薬組成物である、前記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のFGF2代替用医薬組成物。
〔12〕 配列番号5〜8のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるFGF1/FGF2キメラ蛋白質を有効成分として含む、細胞増殖促進用培地。
〔13〕 前記細胞が、表皮細胞、繊維芽細胞、上皮細胞、骨髄細胞、又は幹細胞から選択された細胞である、前記〔12〕に記載の細胞増殖促進用培地。
〔14〕 前記細胞が、創傷障害又は放射線障害を受けた細胞である、前記〔12〕又は〔13〕に記載の細胞増殖促進用培地。
また、当該FGF2代替医薬組成物は、従来のFGF2医薬組成物以上に、温度及び蛋白質分解酵素に対する安定性が高く、溶液を容器に保存した場合の濃度が低下しにくい、という製剤化しやすい点でも優れた特徴を有するものである。
また、本発明のキメラ蛋白質は、典型的には、これら宿主細胞からの発現産物を精製して医薬製剤化するが、キメラcDNAを作成後、ヒトなど治療対象の動物に投与可能な発現ベクターなどを用いて遺伝子治療することができる。
本発明のキメラ蛋白質を構成するアミノ酸配列は、基本的にはFGF1蛋白質のアミノ酸配列により構成されており、ヘパリン依存性に関与する部分のアミノ酸配列が、FGF2蛋白質の対応部分配列と置換されている。具体的には、FGF1アミノ酸配列の41〜83位の部分配列のうちの少なくとも62〜78位の配列を含む部分配列が、FGF2蛋白質のアミノ酸配列における対応する位置の部分配列に置換されていればよい。好ましくは、FGF1アミノ酸配列中の41〜78位の部分配列すべてが対応するFGF2アミノ酸配列(44〜81位に相当)に置換されたアミノ酸配列を有するものである。また、上記のキメラ蛋白質は、その機能を発揮する限りにおいて、そのアミノ酸配列の一部に、付加、欠失、置換、修飾があってもよい。
非特許文献1においては、非特許文献10に記載のカセット形式の合成方法が採用されており、Fig.1Aによると、上記FGF-C1及びFGF-C2の83位は、FGF2アミノ酸配列との置換であるから、本来の設計ではFGF2の対応位置でのLys(K)となるが、カセット方式での設計によれば、83位に当たる第2カセットと第3カセットの連結部分は制限酵素Nco1部位となり、Glu(E)の変異が導入される設計となる。また、同文献(第126頁左欄13行〜右欄7行)には、Fig.1BのFGF-C(1211)キメラ蛋白質を作製するための「Cassette B(pTI2X,Fig.2)」を構成するオリゴヌクレオチド配列のセットが記載されており、そのオリゴヌクレオチド配列を用いてCassette Bを作成し、これを非特許文献10に記載の方法でFGF1遺伝子の相同的Cassette部分と交換した遺伝子の発現産物として得られるキメラ蛋白質の場合、上記83位のアミノ酸はFGF1の83位と同一アミノ酸のAsp(D)となる。同様に、FGF-C(1(1/2)11)キメラ蛋白質の場合も、Mun1-Nco1カセットを用いることが提案されているから、上記「Cassette B」を用いるFGF-C(1211)キメラ蛋白質の場合と同様に83位アミノ酸としては、それぞれ、Lys(K)、Glu(E)及びAsp(D)の3種類のアミノ酸であるキメラ蛋白質の場合も包含されている。
つまり、非特許文献1においては、FGF-C(1211)及びFGF-C(1(1/2)11)として、83位アミノ酸が、Lys(K)、Glu(E)及びAsp(D)の3通りの場合のキメラ蛋白質が実質的に開示されていることになる。
ただし、同文献1においては、83位アミノ酸がLys(K)又はGlu(E)については提案がなされているだけで、実際に作製されたのは上記オリゴヌクレオチド配列を用いた発現産物としてのキメラ蛋白質であったため、83位がFGF1由来のAsp(D)である。同Fig.3及びFig.4においてヘパリン依存的DNA合成促進活性及びヘパリン結合強度を測定したものもAsp(D)である。なお、この83位アミノ酸がFGF1由来のAsp(D)である場合、その上流配列の79-82位のアミノ酸配列はFGF1もFGF2も共通している(同Fig.1A参照)ため、当該キメラ蛋白質は、FGF1の41〜78位のアミノ酸配列がFGF2由来のアミノ酸配列に置換されたキメラ蛋白質と表現することもできる。
また、これらキメラ蛋白質を作製する際に、FGF1cDNAの全長翻訳産物のN末端〜21位のアミノ酸は、動物組織からFGF1蛋白質抽出時に得られる短縮体アイソフォームと同様に、N末端の21アミノ酸を削除する方が発現量が高く取り扱いやすい。そして、N末側を大腸菌で生産する際の翻訳とメチオニンの翻訳後切断のためにMetAlaを付加するような改変も常套手段である。そしてこれらのN末端の違いによってFGF1としての活性に影響が無いことは、既に知られているので、本発明においてFGF-C(1211)、FGF-C(1(1/2)11)、又は単にFGFCというとき、N末端21アミノ酸を含む全長タイプ、削除した短縮体アイソフォーム及び当該短縮体N末端にMetAla(MA)を付加したトランケート体のいずれのタイプも包含される。ただし、大腸菌宿主での大量発現を意図する場合は、N末端を削除された短縮体又はそのN末端にMetAla(MA)を付加したトランケート体が、発現量が高く溶解性も高いために好ましい。特に83位がAsp(D)のタイプは、形質転換大腸菌を培養し、その菌体破砕物の可溶性画分から、簡単に活性体(封入体でなく正確にフォールディングされたもの)を単離精製できるので(実施例11,図18参照)、最も好ましい。
なお、上述のように、83位アミノ酸がAsp(D)であるキメラ蛋白質(配列番号6,7)は、FGF1の41〜78位のアミノ酸配列がFGF2由来のアミノ酸配列に置換されたキメラ蛋白質ともいう。
本発明のキメラ蛋白質としては、上述のように、(非特許文献1)において開示されたFGF-C(1211)の製造用オリゴヌクレオチドを用いて、(非特許文献10)の手法を適用することができるが、下記の手法も適用できる。
(a)FGF1およびFGF2cDNA、あるいはこれらの人工的な一部改変物について、一方のFGFcDNAより適当な制限酵素を用いてDNA断片を切り出し、あるいはPCRなどの方法によって新規にDNA断片を作成した後、制限酵素末端を切り出し、他方のFGFcDNAの適当な部位にDNAリガーゼを用いて結合させればよい。この場合、読み取り枠を合わせるためにオリゴヌクレオチドを挿入させたり、同じ制限酵素部位を創製するために一部の塩基配列を改変してもよい。例えば、(b)一方のFGFcDNAより適当な制限酵素を用いてDNA断片を切り出し、これを他方のcDNAの相同部位を同じ制限酵素で切断した部位にDNAリガーゼを用いて結合させることができる。すなわち、アミノ酸相同性でFGF1とFGF2の配列を並べた場合に相当する領域をコードするDNA断片を入れ換えることになる。制限酵素として、1種あるいは2種以上の制限酵素が用いられる。PCRによる部位特異的変異処理についての基本的な操作は発明者らの既に発表した方法による[Imamura, T. et al.,Science 249, 1567-1570 (1990)]。
プラスミドに組み込む方法としては、例えばT.Maniatisら、Molecular Cloning, Cold Spring Harbor Laboratory, p. 239 (1982) に記載の方法などが挙げられる。
クローン化された遺伝子は、発現に適したベクター中のプロモーターの下流に連結して発現型ベクターを得ることができる。ベクターとしては、上記の大腸菌由来のプラスミド(pBR322、pBR325、pUC12、pUC13、pET-3)、枯草菌由来のプラスミド(pUB110、pTP5、pC194)、酵母由来のプラスミド(pSH19、pSH15)由来のプラスミド、あるいはλファージなどのバクテリオファージやこの誘導体およびレトロウイルス、ワクシニアウイルスなどの動物ウイルス、あるいは昆虫ウイルスなどが挙げられる。
Aプロモーター、λPLプロモーター、lppプロモーター、T7プロモーターなどが、宿主が枯草菌である場合には、SP01プロモーター、SP02プロモーター、penPプロモーターなど、宿主が酵母である場合には、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーターなどが好ましい。また、宿主が動物細胞である場合には、SV40由来のプロモーター、レトロウイルスのプロモーターが挙げられる。
形質転換体を培養する場合、培養に使用される培地としては、それぞれの宿主について一般的に用いられているものを用いる。または一般的でなくとも適用可能な培地ならば良い。例としては、宿主が大腸菌ならばLB培地などを用いる。宿主が酵母であればYPD培地などを用いる。宿主が動物細胞であれば、Dulbecco's MEMに動物血清を加えたものなどを用いる。培養は、それぞれの宿主について一般的に用いられている条件で行う。また一般的でなくとも適用可能な条件ならばよい。例としては、宿主が大腸菌ならば約30〜37℃で、約3〜24時間行い、必要により通気や攪拌を加えることができる。宿主が酵母であれば約25〜37℃で、約12時間〜2週間行い、必要により通気や攪拌を加えることができる。宿主が動物細胞であれば約32〜37℃で、5% CO2、100%湿度の条件で約24時間〜2週間行い、必要により気相の条件を変えたり攪拌を加えることができる。
上記上澄み液からキメラ蛋白質を精製するには、公知の分離・精製法を適切に組み合わせて行うことができる。これらの公知の分離、精製法としては、塩析、溶媒沈殿、透析、限外濾過、ゲル濾過、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、逆相高速液体クロマトグラフィー、等電点電気泳動などが使用されうる。さらに、多くのFGFキメラ蛋白質については、ヘパリンセファロースを担体としたアフィニティークロマトグラフィー法が適用できる。
そして、特に上皮細胞の増殖が問題となったり期待されている各種疾病の治療、例えば皮膚創傷受傷後の皮膚や皮下組織再生促進や皮膚の自然治癒機能低下時の創傷治癒改善などに有効である。このキメラ蛋白質はまた、放射線被ばくにより腸管や骨髄の細胞が障害を受けた場合の障害改善にも有効である。このキメラ蛋白質は腸管上皮細胞や骨髄細胞の生存や増殖の促進作用を発揮するので、これら細胞の生存や増殖の機能が問題となったり期待されている各種疾患の治療、例えば癌の放射線治療の副作用としての腸管炎、原発事故などの被爆者に起こる腸管や骨髄の重篤な障害の予防や治療などに有効である。
〔実施例1〕細胞増殖促進活性により測定できるキメラ蛋白質の受容体特異性(ヘパリン存在下)
(1−1) FGFCの受容体特異性をFGF1とFGF2の受容体特異性と比較した。内在性のFGF受容体を持たず、内在性のヘパラン硫酸も持たない細胞株BaF3細胞を親株とし、これに、FGF受容体の代表的7サブタイプ(FGFR1c、FGFR1b、FGFR2c、FGFR2b、FGFR3c、FGFR3b、FGFR4)をそれぞれ強制発現させた細胞株を作製した。これら細胞は、強制発現させたFGF受容体を刺激すると、増殖反応を起こすので、増えた細胞数を測定することで、受容体刺激活性を測定することができる。尚、細胞数は、細胞数に比例するミトコンドリア酵素の活性を比色定量することで測定した。
96 wellマイクロタイタープレートに、ウェルあたり1×104個のBaF3細胞を、10% FBS、RPMI1640培地に懸濁して播種した。さらにヘパリンを5μg/mlとなるように添加した。FGF試料を様々な濃度で添加し、44時間培養後、TetraColorOne試薬を加えてさらに4時間培養を行い、450nmにおける吸光度を測定した。結果を図1に示す。各点は3重の試料の平均+/−標準偏差(S.D.)を表す。
FGFCはヘパリン存在下で、FGF1と同様に、全てのFGF受容体サブタイプ(FGFR1c、FGFR1b、FGFR2c、FGFR2b、FGFR3c、FGFR3b、FGFR4)を刺激できる活性を持つこと、その強さは、FGF1と同等もしくはやや強いことが示された。一方、FGF2は、特に上皮系細胞の増殖促進に重要である受容体FGFR2bに対する活性が非常に弱く、FGF1の1000分の1程度であることが示された。(図1)
すなわち、図1からみて、FGFCはFGF1と同等またはそれ以上に、FGF2が刺激することのできないFGFR2bを含む全てのサブタイプのFGF受容体を活性化することができることであり、このことは、これまでFGF2によって直接細胞増殖を効果的に促進することが出来なかったFGFR2b刺激を必要とする表皮角化細胞や小腸上皮細胞などの増殖を必要とする用途に対して有効な医薬組成物となりうることを示すものである。
図2によれば、FGFC(MA/41-83/83K)、FGFC(MA/41-83/83E)、FGFC(MA/41-78/83D)、FGFC(M/41-78/83D)は外来ヘパリン存在下で、FGF1と同等もしくはやや強く、受容体FGFR1cを刺激できる活性を持つことが示された。
図3によれば、FGFC(MA/41-83/83E)とFGFC(M/41-78/83D)は外来ヘパリン存在下で、FGF1と同様の強さでもしくはやや強く、受容体FGFR2bを刺激できる活性を持つことが示された。一方、FGF2は、受容体FGFR2bに対する活性が非常に弱く、FGF1の数十分の1程度であることが示された。
FGFC、FGF1とFGF2について、受容体特異性を調べた。実施例(1−1)とほぼ同じ条件で実験を行った。ただし、この実験ではヘパリンは添加しなかった。各点は3重の試料の平均+/−標準偏差(S.D.)を表す。
FGFCはヘパリン非存在下であっても、ほとんど全てのFGF受容体サブタイプ(FGFR1c、FGFR1b、FGFR2c、FGFR2b、FGFR3c、FGFR4)に対しこれらを刺激できる活性を持つことが示された。また、FGF2には、調べたどの受容体サブタイプ(FGFR1c、FGFR2b)についても活性はほとんど無い。(図4)
図4のデータを図1とスケールをあわせて各受容体に対して比較してみると、FGF1が、ヘパリンを添加しないと受容体刺激活性が大きく失われるのに対して、FGFCはR3b受容体以外は高い活性を保っている。特に、FGF2にはヘパリン非存在、存在にかかわらず備わっていないR2b受容体刺激活性が、FGFCがヘパリン非存在下でも極めて高い点は注目に値する。すなわち、R2b受容体は上皮細胞に多く存在することから、FGF2には上皮細胞増殖活性が無いのに対して、FGFCには上皮細胞増殖活性が存在することを示すものである。
なお、FGF1は、ヘパリン非存在下であっても、たとえば1mg/kg以上という高濃度で投与することで受容体刺激活性が残る場合があるが、このような高濃度で生体内に投与することはポリペプチド製剤を高濃度で投与した際に起こる免疫系刺激の問題、及び腎臓機能への悪影響などのため現実的ではない。
(3−1) FGFCとFGF1について、トリプシンによる分解に対する抵抗性を調べた。それぞれ500ngのFGFを含む30μlのPBS溶液中に、トリプシンを様々な最終濃度になるよう添加し、37℃で1時間インキュベートして、蛋白質分解を許容した。その後、試料をSDSポリアクリルアミドを用いて電気泳動で分離した。泳動後のゲルを、蛋白質をその量に比例して染色するCBB染色液で処理し、光学スキャンすることにより、分解されていない残存FGF蛋白質の量を定量した。(図5)
図5からみて、FGFCでは0.01%トリプシンによる処理でも80%程度残存していたのに対し、FGF1では完全に分解されてしまった。また0.001%トリプシンによる処理ではFGFCは90%程度残存していたのに対し、FGF1では30%程度しか残存していなかった。このことは、FGFCが多様な生体障害における浸出液に含まれる蛋白質分解酵素による不活性化の影響を最小限にすることができることを示すものである。
図6によると、FGFCでは0.01%トリプシンによる処理でも70%程度残存していたのに対し、FGF2では35%程度しか残存しなかった。このことは、FGFCが多様な生体障害における浸出液に含まれる蛋白質分解酵素による不活性化の影響を最小限にすることができることを示すものである。
図7によると、FGFCでは0.01%トリプシンによる処理でも30%程度の分解であったのに対し、FGF1では完全に、FGF2では60%以上が分解されてしまった。このことは、FGFCが体液等に含まれる蛋白質分解酵素による不活性化の影響を最小限にすることができることを示し、FGF1やFGF2と比較して体内半減期が長いことを示唆するものである。
実施例3と同様の条件下で、FGFC(MA/41-83/83K)、FGFC(MA/41-83/83E)、FGFC(MA/41-78/83D)、FGFC(M/41-78/83D)、FGF1とFGF2について、トリプシンによる分解に対する抵抗性を時間依存性の観点から調べた。それぞれ500ngのFGFを含む30μlのPBS溶液中に、トリプシンを最終濃度0.015%となるよう添加し、37℃で様々な時間インキュベートして、蛋白質分解を許容した。その後、試料をSDSポリアクリルアミドを用いて電気泳動で分離した。泳動後のゲルを、蛋白質をその量に比例して染色するCBB染色液で処理し。光学スキャンすることにより、分解されていない残存FGF蛋白質の量を定量した。(図8)
図8によると、0.015%トリプシンによる60分間処理で、FGFC(MA/41-78/83D)、FGFC(M/41-78/83D)では60〜70%程度残存していたのに対し、FGFC(MA/41-83/83K)、FGFC(MA/41-83/83E)、FGF1では完全に分解し、FGF2は30%程度しか残存しなかった。0.015%トリプシンによる5分間処理で、FGF1では20%程度しか残存しなかったのに対し、FGFC(MA/41-78/83D)、FGFC(M/41-78/83D)では90%以上残存していた。このことは、FGFC(MA/41-78/83D)、FGFC(M/41-78/83D)が多様な生体障害における浸出液に含まれる蛋白質分解酵素による不活性化の影響を最小限にすることができることを示し、FGF1やFGF2と比較して体内半減期が長いことを示唆するものである。
(5−1) FGFCとFGF1について、37℃での保存における安定性を調べた。蛋白質の吸着によるロスを低減するために10%BSAを含むRPMI1640培地50μlに、5μgのFGFを溶解し、エッペンドルフチューブ中において、37℃で様々な時間、保管した。その後、これを原液として様々な希釈液を調製し、FGFR1c/BaF3細胞に対する生物活性を測定した。測定方法は実施例1と同様に行った。(図9)
図9における横軸の濃度は、当初の濃度として表してある。この結果、FGFCとFGF1は当初ほぼ同じ強さの活性を発揮するが、FGF1が、体温程度の温度条件下(37℃)では、1時間程度でも活性が失われはじめ、6時間もたつとほとんど活性が残らないのに対して、FGFCの場合は、1時間〜6時間ではほとんど影響が無いことが示された。
したがって、(5−1)及び(5−2)の結果から、FGF1やFGF2と比較して高い安定性が得られる点はもちろんのこと、冷蔵保存が必要な従来のFGF2医薬組成物に代替して使用する場合に、室温〜体温という温度条件においても安定性が高いことを示すものであるから、医薬製剤としてみても、きわめてメリットが高い。
FGFCとFGF1それぞれの含有溶液について、37℃保存における保存容器への吸着などにより失われる程度を調べるため、容器保管時の溶液濃度安定性を調べた。それぞれ5μgのFGFを含む50μlのPBS溶液を、ELISA用96 wellマイクロタイタープレートの各ウェルに入れ、37℃に保温して様々な時間インキュベートして、蛋白質の容器への吸着を許容した。その後、ウェル内の試料溶液を全量回収し、SDSポリアクリルアミドを用いて電気泳動で分離した。泳動後のゲルを、蛋白質をその量に比例して染色するCBB染色液で処理し、光学スキャンすることにより、吸着されずに溶液中に残存しているFGF蛋白質の量を定量した。(図11)
一般に、時間の経過と共に溶液中のFGF1又はFGF2の濃度が暫減していく理由としては、FGF1及びFGF2がポリプロピレン(通常の試料容器材料)やポリスチレン(通常の培養容器材料)への吸着性が高いことや、溶液中で凝集体を形成して不溶化し沈殿してしまうことなどが考えられる。図11に示す実験の結果は、FGF1では、24時間で半分近くまで濃度が落ちてしまうのに対し、FGFCの場合は、48時間でも半分以上の濃度を保っており、108時間たっても一部濃度は残存していることが示されている。このことは、FGFCの場合は医薬品製剤の保存時の濃度低下が少ないことであるから、製剤化の際のメリットが高い。
(7−1) FGFCとFGF1それぞれの含有溶液について、実施例6と同様の条件下で室温(25℃)における構造安定性を調べた。0.7Mグアニジウム塩酸、25mMリン酸緩衝液、pH7.3の溶液中で最終濃度2μMに調製したFGF1及びFGFCを、石英キュベットに入れ、温度を25℃に保ったまま、280nmの紫外光で励起し、発生する自家蛍光を調べた。(図12)この測定をすると、FGFの場合、蛋白質が変性して3次元構造が壊れた時に、353nm付近でトリプトファン残基による特徴的な自家蛍光強度が高まることが既に知られている。
図12によれば、FGF1が、室温(25℃)では、353nm付近に強い蛍光を示し、正しいフォールディングが一部分壊れた構造を取っていることが示される。一方、FGFCにはこの蛍光はほとんど認められないことから、ほとんどの分子が正しいフォールディングをしていることが示される。したがって、FGF1と比較してFGFCは室温において高い構造安定性を有することが分かる。室温条件において安定性が高いことを示すものであるから、医薬製剤としてみても、きわめてメリットが大きい。
(8−1) 創傷治癒の重要なステップとして表皮細胞の増殖があるが、これを直接促進できるものとして上市されているFGF医薬は現在までない。本実施例では、表皮角化細胞MK2細胞の増殖を促進する活性を測定し、FGFCと、FGF1及びFGF2とを比較した。
MK2細胞は、組織培養用マルチウェルプレート(48well)に1×104細胞/0.5ml/wellの割合で播種した。細胞を10%ウシ胎児血清、EGF、を添加した低カルシウムDMEM培地で、5%CO2雰囲気下、37℃で一晩培養した後、0.1%FBSを添加した低カルシウムDMEM培地(0.25ml/well)に交換した。24時間後、培養液にキメラ蛋白質または他の試料を様々な濃度で添加した。その後細胞を46時間培養してから、培養液にTetraColorOne試薬を添加し、さらに4時間培養を行った。培養終了後の培養液の450nmにおける吸光度を測定し、細胞数にほぼ比例するミトコンドリア酵素の活性を測定した。これをもって細胞数の指標とした。図中に示される各点は、2重の試料の平均を表す。(図14)
図14によると、1ng/mlの濃度において、FGFCでは強く細胞増殖を促進したのに対し、FGF1とFGF2では、半分以下の増殖促進が得られたのみであった。また、それぞれが最も高い活性を示す濃度において、FGFCはFGF1よりも強くより多くの細胞数にまで細胞増殖を促進することが示された。FGF2はFGF1よりもさらに低い活性しか示さなかった。これらのことから、FGFCは、表皮細胞に多いFGFR2b刺激活性のないFGF2のみならず、FGF1と比較しても高い促進活性を示しており、このことは優れた創傷治癒用医薬組成物として有用であることを示すものである。
本実験では、繊維芽細胞に対する細胞増殖刺激活性を測定し、FGFC(MA/41-78/83D)、FGFC(M/41-83/83E)、FGF1、及びFGF2を比較した。繊維芽細胞は内在的にヘパラン硫酸糖鎖を合成する能力を有する。また、生体内では、FGFの標的細胞となりうる細胞である。したがって、この実験では、ヘパリンを添加せずに測定した活性により、生体に投与したFGFの繊維芽細胞に対する細胞増殖刺激活性を推定評価することができると考えられる。各点は2重の試料の平均を表す(図16)。
図16に示される結果からみて、FGFC(MA/41-78/83D)、FGFC(M/41-83/83E)は、繊維芽細胞に対して、外来ヘパリンに依存せず、強い増殖促進活性を有することがわかった。その活性は、FGF2と比較して、同等かやや高いことが示された。これに対し、FGF1は、ヘパリン非添加の条件では活性が低いことが示された。これは、FGF1が、構造の安定化のために、外来ヘパリンを必要としていることを示唆している。このことは、FGFC(MA/41-78/83D)、FGFC(M/41-83/83E)が、優れた創傷治癒用医薬組成物として有用であることを示すものである。
本実施例では、放射線による生体障害に対するキメラ蛋白質の予防と治癒促進活性を測定する目的で、マウスの全身放射線被ばくにより引き起こされる小腸上皮細胞の障害とその治癒に対するFGFCの効果を調べた。
マウスを用いた実験はすべて人道的配慮を行い、事前に承認された実験動物計画に基づいて実施された。10μgのFGFCは生理食塩水に5μg/mlヘパリンを含む緩衝液で希釈し,最終量を0.5mlとして、放射線照射の24時間前にC3Hマウスの腹腔に投与した。マウスは、137Csの線源から発生するガンマ線を全身に10グレイ照射され、線量率は約0.57Gy/minであった。その3.5日後に生存したマウスを安楽死させ、組織標本を採取し、10%フォルムアルデヒドによって固定し、パラフィンに包埋し、組織学的検討用に処理した。空腸を10部位に分けてそれぞれから切片を作製し,顕微鏡観察によって、クリプト構造のスコア付けを行った。クリプトは10以上の細胞を含んでいるものを生存と判断した、各群3匹のマウスからクリプトを数え、その平均数を放射線非照射群のマウスと比較した(図17)。
その結果、FGFCを投与したマウス群では生理食塩水を投与した群に比べて有意に高いクリプトの生存率が観察された。これらの結果は、FGFCはクリプトの放射線障害の予防治療に対して優れた効果を有することを示すものである。なお、この実験系では、クリプトの放射線障害の予防治療効果を有することが知られているFGF1の活性を同時に測定してFGFCの活性と比較したが、FGFCはFGF1よりも強い活性を示すことが示された。
FGFC(MA/41-83/83K)、FGFC(MA/41-83/83E)、FGFC(MA/41-78/83D)、FGFC(M/41-78/83D)を、それぞれインサートとして有するpET-3c発現ベクターを用いて形質変換した大腸菌BL21(DE3)pLysS株を、常法に基づいて同スケールで培養し、蛋白質を発現させ、その後菌体を破壊し、遠心し、可溶性画分に得られた蛋白質をSDSポリアクリルアミドゲルに同規模の培養液由来の蛋白質をロードし、電気泳動(SDS-PAGE)で分析した。結果を図18に示す。それぞれ、レーン1は、未精製の菌体由来可溶性総蛋白質、レーン4は、菌体由来可溶性総蛋白質のうち、ヘパリンアフィニティークロマトカラムに結合した後に高濃度食塩によって溶出されたFGF蛋白質を示す。レーン2は、それぞれ上記カラムの素通り画分、レーン3は、洗浄画分を示す。電気泳動後、ゲルは常法に従ってクーマシーブルー(CBB)で蛋白質を染色した。矢印はFGFCの位置を示す。
FGFC(MA/41-78/83D)、FGFC(M/41-78/83D)のいずれも、FGFC(MA/41-83/83K)、FGFC(MA/41-83/83E)に比べて大量の可溶性蛋白質が生産される事が示されている。FGF1及びFGF2では一般に、ヘパリンへの結合性を有する分子は、活性型の分子フォールディングを持っていると考えられている。従ってこの結果から、FGFC(MA/41-78/83D)とFGFC(M/41-78/83D)は、その活性型としての生産量も高いことが示唆される。また、この結果で、FGFC(MA/41-83/83K)の可溶性蛋白質と比べてもFGFC(MA/41-78/83D)、FGFC(M/41-78/83D)の可溶性蛋白質生産量が大量であることがわかる。このことから、FGFC(MA/41-83/83E)の、83位のアミノ酸(E)をFGF2本来のアミノ酸(K)に変更しただけのFGFC(MA/41-83/83K)では、生産量増加とはならないことが示される。
本実施例では、マウス皮膚の全層欠損創治癒に対するFGFC及びFGF2の効果を調べた。マウス皮膚の全層欠損創の作製とFGFの効果評価を以下のように行った。糖尿病モデルマウスdb/dbを麻酔し、背部に、外科的手技により約3cm2の面積を有する円形の全層皮膚欠損創を作った。そこにFGFC、またはFGF2を10μg含む生理食塩水100μlを滴下投与した。対照群には生理食塩水を滴下投与した。そして清潔なケージでマウスを飼育した。経時的に傷口の大きさを測定し、その面積を算定した。このようにして得られる創面積の経時的減少を比較することにより、FGFの創傷治癒促進活性を評価した。その結果、FGFC及びFGF2のいずれを投与したマウスでも、生理食塩水を投与したマウスに比べ迅速に創面積が減少することが示された(図19)。そして、FGFCの創傷治癒促進効果はFGF2とほぼ同等であり、特に最初の5日間ではFGF2よりも若干効果が高いことが観察された。すなわち、FGFCは、FGF2と同等もしくはそれ以上の創傷の治癒を強く促進する活性を持つことが示された。
本実施例では、幹細胞として神経幹細胞を用いて、神経幹細胞に対するFGFC、FGF1、またはFGF2の効果を調べる。新鮮な中枢神経組織を酵素処理して得られる神経幹細胞を含む懸濁液を、ウシ胎児血清(FBS)を含まない、上皮成長因子(EGF)とFGFC、FGF1、またはFGF2、場合によってはさらに白血病抑制因子(LIF)を含む無血清培地で細胞を浮遊培養する。すると、球状の細胞塊(ニューロスフィア)として神経幹細胞が増殖してくる。ニューロスフィアの細胞をほぐして継代培養することが可能である。このようにして得られる神経幹細胞の数を測定することにより、FGFCが優れた幹細胞増殖活性を有していることが示される。
この後、ニューロスフィアの構成細胞を、コーティングを施した培養皿に接着させ、増殖因子を除いて、ウシ胎児血清等の各種分化誘導因子を加えることにより、神経細胞、アストロサイト、オリゴデンドロサイトなどの細胞に分化を誘導することができることから、ニューロスフィアの構成細胞として神経幹細胞の増殖をFGFCが促進することを証明することができる。
FGFCが増殖促進できる幹細胞としては、神経幹細胞に限定されず、間葉系幹細胞、胎生幹細胞、誘導多能性幹細胞(iPS細胞)など、多くの幹細胞に利用することができる。
Claims (3)
- 配列番号5〜8のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるFGF1/FGF2キメラ蛋白質を有効成分として含む、細胞増殖促進用培地。
- 前記細胞が、表皮細胞、繊維芽細胞、上皮細胞、骨髄細胞、又は幹細胞から選択された細胞である、請求項1に記載の細胞増殖促進用培地。
- 前記細胞が、創傷障害又は放射線障害を受けた細胞である、請求項1又は2に記載の細胞増殖促進用培地。
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