JP2012152665A - フィッシャー・トロプシュ合成用触媒及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】固定床反応器におけるFT法においても、差圧の発生が無く、CO転化率が高く、ガス成分の生成が少なく、かつ安定してFT合成反応を行うことができる、FT合成用触媒、及びその触媒の製造方法を提供すること。
【解決手段】炭酸マンガンに、シリカを酸化物換算及び触媒基準で10〜25質量%、有機バインダーを触媒基準で6質量%以下、ルテニウムを金属換算及び触媒基準で0.5〜5質量%含有させてなり、かつ表面積が100〜210m/g、細孔容積が0.1〜0.6ml/gであることを特徴とするフィッシャー・トロプシュ合成用触媒。
【選択図】なし

Description

本発明は、水素と一酸化炭素を主成分とする混合ガス(以下「合成ガス」という)から炭化水素類を製造するための、フィッシャー・トロプシュ合成用触媒、及び当該触媒の製造方法に関する。さらに詳しくは、主として炭酸マンガンからなる担体に、フィッシャー・トロプシュ反応に対する活性を有する金属(以下、「FT活性金属」という。)を含有させてなる触媒、及びその触媒の製造方法に関する。
合成ガスから炭化水素類を合成する方法として、フィッシャー・トロプシュ反応(Fischer−Tropsch反応)(以下「FT反応」という。)、メタノール合成反応、C2含酸素(エタノール、アセトアルデヒド等)合成反応などが良く知られている。FT反応は鉄、コバルト、ニッケルの鉄族元素やルテニウム等の白金族元素を活性金属とする触媒で進行し、メタノール合成反応は銅系触媒で進行し、C2含酸素合成反応はロジウム系触媒で進行することが知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
ところで、近年、大気環境保全の観点から、低硫黄分の軽油が望まれている。また、原油資源は有限であるとの観点やエネルギーセキュリティーの面から、石油代替燃料の開発が望まれている。これらの要望に応える技術として、エネルギー換算で原油に匹敵する可採埋蔵量があるといわれる天然ガス(主成分メタン)から灯軽油等の液体燃料を合成する技術であるGTL(gas to liquids)がある。天然ガスは、硫黄分を含まないか、含んでいても脱硫が容易な硫化水素(HS)等であるため、得られる灯軽油等の液体燃料には、殆ど硫黄分を含んでおらず、またセタン価の高い高性能ディーゼル燃料に利用できるなどの利点があるため、このGTLは近年ますます注目されるようになってきている。
上記GTLの一環として、合成ガスからFT反応によって炭化水素類を合成する方法(以下「FT法」という)が盛んに研究されている。FT法において炭化水素類の収率を高めるためには、炭化水素類の合成能力、すなわち活性が高く、ガス成分の生成が少なく、長時間安定した活性を示すといった優れた性能を有するFT合成用触媒を用いることが有効と考えられる。
そして、従来から、種々のFT合成用触媒が提案されており、例えば、コバルトや鉄といったFT活性金属種を、アルミナやシリカ、シリカ−アルミナ、チタニアなどの金属酸化物担体に担持した触媒が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。また、オレフィン類への高選択性を目的とした触媒として、マンガン酸化物担体にルテニウムを担持させた触媒や、当該ルテニウム担持触媒にさらに第三成分を加えた触媒などのルテニウム系触媒が提案されている(例えば、特許文献4及び5参照。)。
これらの従来提案されている触媒は、それを用いたFT法において、相応に優れたオレフィン類の選択性や、相応の触媒活性を示すが、更なる触媒活性の向上が望まれる。一般に、触媒の活性が高いほど、触媒重量当たりの目的物の生産性が高く、同じ量の目的物を得るための触媒使用重量は少なくて済み、それに伴い反応器を小型化できるなど、触媒費用や装置費用の軽減が期待できる。
例えば、FT合成用触媒には、生成物中のメタン等のガス成分の生成が少なく、灯油や軽油といった有用な液状の炭化水素類の得率が高いことも望まれる。そこで、本発明者らは、炭酸マンガン担体を用い、FT反応においてCO転化率が高く、ガス成分の生成が少なく、安定してFT合成反応を行うことができるFT合成用触媒に関して提案している(例えば、特許文献6参照。)。当該触媒は、非常に活性が高く、流動床、懸濁床、スラリー床で用いる場合などに最適である。
一方で、反応器の種類に応じて、触媒が備えるべき好ましい物性が異なる場合が多い。例えば、スラリー床反応器用の微粉末状触媒を固定床反応器に用いる場合には、差圧の発生が懸念される。その他にも、固定床反応器用の触媒には、活性を維持するとともに、固定床反応器における反応に特有な触媒強度が必要とされるなど、スラリー床反応器とは異なる触媒物性が要求される。
米国特許第5733839号明細書 米国特許第5545674号明細書 欧州特許第0167215号明細書 特公平3−70691号公報 特公平3−70692号公報 国際公開第2009/157260号パンフレット
「C1ケミストリー」、触媒学会編、講談社、1984年4月1日、第25頁
そこで、本発明は、前記課題に鑑み、固定床反応器におけるFT法においても、差圧の発生が抑制され、CO転化率が高く、ガス成分の生成が少なく、かつ、安定してFT合成反応を行うことができるFT合成用触媒、及び当該FT合成用触媒の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究をした結果、炭酸マンガンに所定量の有機バインダーを含有させてなる成型担体に、FT活性金属を含有させ、さらに触媒の表面積や細孔容積を所定の範囲にすることにより、活性が高く、特に固定床反応器に好適なFT合成用触媒が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の触媒の活性向上やガスの生成の低下の詳細なメカニズムについては解明されておらず、現在、鋭意検討中ではあるが、FT反応に対しては不活性である担体主成分の炭酸マンガンが何らかの形でFT活性金属種に作用し、活性を向上させるとともに、ガスの生成を抑制する作用を有するものと推察している。
すなわち、本発明は、上記目的を達成するために、下記構成のFT合成用触媒、及び当該触媒の製造方法を提供する。
(1) 炭酸マンガンに、シリカを酸化物換算及び触媒基準で10〜25質量%、有機バインダーを触媒基準で6質量%以下、ルテニウムを金属換算及び触媒基準で0.5〜5質量%含有させてなり、かつ表面積が100〜210m/g、細孔容積が0.1〜0.6ml/gであることを特徴とするフィッシャー・トロプシュ合成用触媒。
(2) 前記有機バインダーがメチルセルロースであることを特徴とする前記(1)に記載のフィッシャー・トロプシュ合成用触媒。
(3) 炭酸マンガンに、少なくとも、シリカの含有量が酸化物換算及び触媒基準で10〜25質量%となるようにシリカゾルを、触媒基準で6質量%以下となるように有機バインダーを、それぞれ含有させた混合物を混練りした後、得られた混練物を成形することにより担体を調製し、
次いで、前記担体を250℃以下で乾燥させることにより触媒前駆体を調製し、
さらに、前記触媒前駆体に、ルテニウムを金属換算及び触媒基準で0.5〜5質量%となるように含有させた後に、250℃以下で乾燥させることを特徴とするフィッシャー・トロプシュ合成用触媒の製造方法。
本発明のFT合成用触媒は、従来のアルミナやシリカを担体とする触媒に比較してCO転化率が高く、また、ガス成分であるCHなどの生成割合を低下させることができる。特に、本発明のFT合成用触媒は、炭酸マンガンに所定量の有機バインダーを含有させてなる担体に、FT活性金属を含有させていることに加えて、所定の表面積や細孔容積を有するため、優れたFT合成活性と、固定床反応において必要とされる触媒強度とを共に有している。
本発明のFT合成用触媒の製造方法により、優れたFT合成活性と、固定床反応において必要とされる触媒強度とを共に備えるFT合成用触媒を製造することができる。
また、本発明によれば、FT活性が高く、炭化水素類の生産性が高いFT合成用触媒が提供され、触媒コストや反応器のサイズダウン等の効果が見込まれる。
以下、本発明の触媒、及びその調製からそれを用いた炭化水素類の製造方法までを順次詳しく説明する。
<触媒及びその調製>
本発明のFT合成用触媒(以下「本発明の触媒」とも言う。)は、炭酸マンガンを主成分とし、シリカと有機バインダーを含有した担体(以下「炭酸マンガン担体」とも言う。)に、FT活性金属種を含有させてなるものである。
本発明の触媒における炭酸マンガン担体の主成分である炭酸マンガンとしては、工業的に生産販売されているものを用いることもできるし、また、従来公知の方法で製造することもできる。炭酸マンガンを公知方法で得る場合、例えば、可溶性マンガン塩溶液と炭酸アンモニアあるいはアルカリの炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム)を反応させることで得られる。また、二価のマンガンイオンと炭酸イオンあるいは重炭酸イオンとの反応によっても得ることができる。
本発明の触媒におけるシリカの含有量は、酸化物換算及び触媒基準で10〜25質量%、好ましくは10〜20質量%である。触媒におけるシリカの含有量を10質量%以上とすることにより、触媒強度が向上し、かつFT反応に適した表面積や細孔容積が得られる。また、触媒におけるシリカの含有量を25質量%以下とすることにより、所期の炭酸マンガンの効果への阻害を抑制できる。炭酸マンガンに含有させるシリカとしては、シリカゾルであることが好ましい。シリカゾルを用いることにより、粉末状のシリカをそのまま含有させる場合よりも、炭酸マンガン担体の成形が容易となる。
本発明の触媒に用いられる有機バインダーとしては、カルボキシメチルセルロースやメチルセルロース等が挙げられ、好ましくはメチルセルロースが選択される。本発明の触媒における有機バインダーの含有量は、触媒基準で6質量%以下、好ましくは0.5〜4質量%である。シリカとともに有機バインダーを含有させることにより、担体の成形が容易になるだけでなく、十分な強度を得ることができる。特に、有機バインダーの含有量を0.5質量%以上とすることにより、より十分な強度を備える触媒を製造することができる。また、有機バインダーの含有量を6質量%以下とすることにより、表面積や細孔容積の低下を抑制することができ、さらにまた、炭酸マンガン含有量の低下によるFT反応活性の低下を抑制することができる。
本発明の触媒に用いられる炭酸マンガン担体は、炭酸マンガン、シリカ、及び有機バインダーのみからなるものであってもよく、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、その他の成分を含んでいても良い。この他の成分としては、アルミナなどの通常担体として用いられる無機酸化物等が挙げられる。
本発明の触媒に用いられる炭酸マンガン担体は、炭酸マンガンに、少なくともシリカと有機バインダーと(必要に応じてその他の成分と)を含有させた混合物を混練りした後、得られた混練物を成形することにより調製される。混練の方法としては、特に限定されず、乳鉢等を用いて手動で混練してもよく、触媒の製造において通常用いられている混練機を用いて行ってもよい。
また、成形の方法としては、特に限定されず、押出し成形や打錠成形によって成形することができる。これらのうち、押出し成形が成形時に与える圧力が低く、簡便に表面積100〜210m/g、細孔容積0.1〜0.6ml/gの触媒を調製し得るとの観点から最も好ましい。
成形された炭酸マンガン担体の形状は特に限定されず、通常の円柱品や、四葉状やリング状といった特殊形状押出し品を用いることができる。また、炭酸マンガン担体のサイズは特に限定されず、反応器のサイズに合わせて、差圧の発生を抑制できる範囲で適宜選択される。
成形された炭酸マンガン担体は、その後乾燥される。この時の乾燥温度は、250℃以下が好ましく、120〜220℃がより好ましい。乾燥温度を120℃以上とすることにより、水分の蒸散を十分に促進することが可能であり、担体の強度が増加する。また、乾燥温度が250℃以下であれば、担体成分の炭酸マンガンがマンガン酸化物と炭酸ガスに分解することを抑制することができ、また有機バインダーが熱分解することを抑制できる。
本発明の触媒におけるFT活性金属種としては、ルテニウムが好ましく選択される。また、ルテニウム単独で用いるだけでなく、ニッケル、コバルト、鉄等と、複合させて用いることも可能である。
成形後乾燥された担体(触媒前駆体)に、FT活性金属種を含有させることにより、本発明の触媒が調製される。炭酸マンガン担体にFT活性金属種を含有させる方法の一つに、FT活性金属種を炭酸マンガン担体に含浸担持させる方法がある。以下、この含浸担持について、説明する。
この含浸担持は、通常の含浸担持方法で行うことができる。例えば、炭酸マンガン担体にルテニウム塩の水溶液を含浸させ、その後、乾燥、焼成することによって行うことができる。このとき、FT活性金属種として2種以上の金属を担持する場合、例えばルテニウム塩とコバルト塩の両方含む水溶液を調製し、ルテニウム塩とコバルト塩を同時に含浸させ、その後、乾燥、焼成することもできるし、各々を別途に順次含浸させ、その後、乾燥、焼成しても良い。炭酸マンガン担体へのFT活性金属種の含浸担持方法は、特に限定されない。
上記含浸担持に用いるルテニウム塩としては、塩化ルテニウム、硝酸ルテニウム、酢酸ルテニウム、塩化六アンモニアルテニウムなどの水溶性ルテニウム塩が挙げられる。また、硝酸ルテニウム溶液などの既にルテニウムが溶解しているように調製されている溶液も用いることが可能である。さらに、含浸担持に用いるルテニウム塩の溶液の溶媒に、水ではなく、アルコール、エーテル、ケトンなどの有機溶媒を用いることも可能であり、この場合は、これらの塩として各種有機溶媒に可溶な塩を選択する。
本発明の触媒におけるルテニウムの含有量は、触媒基準、金属量換算で好ましくは0.5〜5質量%、より好ましくは0.8〜4.5質量%、特に好ましくは1〜4質量%である。ルテニウムの担持量は活性点数と関連する。ルテニウムの担持量を0.5質量%以上とすることにより、活性点数がより良好に保たれ、十分な触媒活性を得ることができる。また、ルテニウムの担持量を5質量%以下とすることにより、ルテニウムの分散性の低下や、担体成分と相互作用を持たないルテニウム種が発現するのをより効果的に抑制できる。
FT活性金属種を炭酸マンガン担体に含浸した後は、乾燥を行う。このときの乾燥は、水を蒸散させ、FT活性金属種の活性化を図る目的で行う。この乾燥時の温度は250℃以下が好ましく、70〜220℃がより好ましい。乾燥温度を70℃以上とすることで、水の蒸散を十分に促進することが可能である。一方で、乾燥温度が250℃以下であれば、急激な水の蒸散による活性金属成分の不均一化を抑制し、有機バインダーの熱分解を抑制することができる。また、FT活性金属種の活性化を図るためには、相応の温度が必要である。この点からも、乾燥温度は上記範囲が好ましい。
乾燥の処理時間は、処理量によって一概には決まらないが、通常1〜10時間である。処理時間を1時間以上とすることにより、水分の蒸散を確実に行い、FT活性金属種の活性化が希薄となることを抑制できる。また、処理時間が10時間を超えても、触媒活性は、10時間以下の場合とほとんど変わらないため、作業性や生産性を考慮すると10時間以下が好ましい。なお、この乾燥は空気中で行うことも、あるいは窒素やヘリウムといった不活性ガス雰囲気でも、水素などの還元ガス雰囲気でもよく、特に限定はされない。
上述の含浸担持法以外にも、例えば、炭酸マンガン担体をFT活性金属種の水溶液に浸漬し担体上へ活性金属を吸着させる方法(平衡吸着)や、担体をFT活性金属種の水溶液に浸漬させた後、アンモニア水等のアルカリ性の沈殿剤溶液を加えて担体上に活性金属を沈殿させる方法(沈着法)等により、炭酸マンガン担体にFT活性金属種を含有させて本発明の触媒を調製することもできる。
このようにして得られた本発明の触媒の表面積は、100〜210m/g、好ましくは100〜190m/gである。また、本発明の触媒の細孔容積は、0.1〜0.6ml/g、好ましくは0.1〜0.5ml/gである。表面積と細孔容積がこれらの範囲内にあることにより、高いFT活性が実現される。
<炭化水素類の製造>
本発明の触媒は、他のFT合成用触媒と同様に、FT反応による炭化水素類の製造に用いることができる。すなわち、本発明の触媒に水素及び一酸化炭素を主成分とする合成ガスを接触させることにより、炭化水素類を合成することができる。
本発明の触媒を用いて炭化水素類を製造する場合においては、FT反応の反応器の形式に関しては、固定床、流動床、懸濁床、スラリー床などが挙げられるが、本発明の触媒は、固定床に対して最適である。以下に、固定床による炭化水素類の製造方法を説明する。
本発明の触媒を用いた固定床による炭化水素の製造する場合、上記の如くして調製された本発明の触媒は反応器内部に充填され固定される。反応器内部へは、本発明の触媒を単独で充填させてもよく、本発明の触媒とFT反応に不活性な成分とを混合して充填することも可能である。
本発明の触媒は、FT反応に供する前に、予め還元処理(活性化処理)される。この還元処理により、触媒がFT反応において所望の触媒活性を示すように活性化される。この還元処理を行わなかった場合には、FT活性金属種が十分に還元されず、FT反応において所望の触媒活性を示さない。
本発明の触媒の還元処理における処理温度は、140〜250℃が好ましく、150〜240℃がより好ましく、160〜230℃が最も好適である。還元処理の温度が140℃以上であれば、FT活性金属種が十分に還元され、十分な反応活性が得られる。また、還元処理の温度が250℃以下であれば、担体成分等の熱分解を抑制することができる。
この還元処理には、水素を主成分とする還元性ガスが好ましく用いられる。用いる還元性ガスには、水素以外の成分、例えば水蒸気、窒素、希ガスなどを、還元を妨げない範囲である程度の量を含んでいても良い。
また、この還元処理は、上記処理温度と共に、水素分圧及び処理時間にも影響されるが、水素分圧は、0.1〜10MPaが好ましく、0.5〜6MPaがより好ましく、1〜5MPaが最も好ましい。還元処理時間は、触媒量、水素通気量等によっても異なるが、一般に、0.1〜72時間が好ましく、1〜48時間がより好ましく、4〜48時間が最も好ましい。処理時間が0.1時間以上であれば、触媒の活性化が不十分となることを回避できる。また、72時間以下であれば、触媒性能の向上に十分である。
上記の如く還元処理した本発明の触媒がFT反応、すなわち炭化水素類の合成反応に供せられる。反応装置内に充填、固定した触媒に水素と一酸化炭素からなる合成ガスを接触させる。
FT反応に用いる合成ガスは、水素及び一酸化炭素を主成分としていれば良く、FT反応を妨げない他の成分が混入されていても差し支えない。また、FT反応の速度(k)は、水素分圧に約一次で依存するので、水素及び一酸化炭素の分圧比(H/COモル比)が0.6以上であることが望まれる。
この反応は、体積減少を伴う反応であるため、水素及び一酸化炭素の分圧の合計値が高いほど好ましい。水素及び一酸化炭素の分圧比は、その上限は特に制限されないが、現実的なこの分圧比の範囲としては0.6〜2.7が好ましく、より好ましくは0.8〜2.5、特に好ましくは1〜2.3である。この分圧比が0.6以上であれば、生成する炭化水素類の収量が低下することを防ぐことができ、また、この分圧比が2.7以下であれば、生成する炭化水素類においてガス成分や軽質分が増える傾向を抑止することができる。
その他、上記合成ガス中に混入していても差し支えないFT反応を妨げない他の成分としては、二酸化炭素が挙げられる。本発明の触媒を用いて炭化水素類を製造する場合には、天然ガスや石油製品などの改質反応により得られる二酸化炭素の混入している合成ガスも何ら問題なく用いることができる。また、二酸化炭素以外のFT反応を妨げない他の成分が混入されていても差し支えなく、例えば、天然ガスや石油製品等の水蒸気改質反応あるいは自己熱改質反応から得られるようなメタンや水蒸気や部分酸化された窒素等が含有された合成ガスでも良い。また、二酸化炭素は、二酸化炭素の含有されてない合成ガスに積極的に添加することもできる。すなわち、本発明の触媒を用いて炭化水素類を製造するに当たって、天然ガスや石油製品を自己熱改質法あるいは水蒸気改質法等で改質して得られた二酸化炭素を含有する合成ガスを、その中の二酸化炭素を除去するための脱炭酸処理をすることなくそのままFT反応に供すれば、脱炭酸処理に要する設備建設コスト及び運転コストを削減することができ、FT反応で得られる炭化水素類の製造コストを低減することができる。
本発明の触媒を用いて炭化水素類を製造する場合において、FT反応に供する合成ガス(混合ガス)の全圧(全成分の分圧の合計値)は、0.5〜10MPaが好ましく、0.7〜7MPaがさらに好ましく、0.8〜5MPaがなおさらに好ましい。この全圧が0.5MPa以上であれば、連鎖成長が十分となり、ガソリン分、灯軽油分、ワックス分などの収率が低下することを防ぐことができる。平衡上は、水素及び一酸化炭素の分圧が高いほど有利になるが、上記全圧が10MPa以下であれば、プラント建設コスト等が高くなり、また、圧縮に必要な圧縮機などの大型化により運転コストが上昇するなどの産業上の観点からの不利益を相応に抑止することができる。
このFT反応においては、一般に、合成ガスのH/COモル比が同一であれば、反応温度が低いほど連鎖成長確率やC5+選択性(FT反応性生物中の炭素数5以上の生成物の割合)が高くなるが、CO転化率は低くなる。逆に、反応温度が高くなれば、連鎖成長確率、C5+選択性は低くなるが、CO転化率は高くなる。また、H/CO比が高くなれば、CO転化率が高くなり、連鎖成長確率、C5+選択性は低下し、H/CO比が低くなれば、その逆となる。これらのファクターが反応に及ぼす効果は、用いる触媒の種類等によってその大小が異なるが、本発明の触媒を用いる方法においては、反応温度は、200〜350℃が適当であり、210〜310℃が好ましく、220〜290℃がさらに好ましい。なお、CO転化率は下記式で定義されるものである。
〔CO転化率〕
CO転化率=[(単位時間当たりの原料ガス中のCOモル数)−(単位時間当たりの出口ガス中のCOモル数)]/単位時間当たりの原料ガス中のCOモル数×100
以下、実施例、比較例を挙げて本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
以下の実施例において、CO分析は、Active Carbon(60/80mesh)を分離カラムに用いた熱伝導度型ガスクロマトグラフ(TCD−GC)で行った。なお、原料ガスには、Arを内部標準として25体積%添加した合成ガス(HとCOの混合ガス)を用いた。COのピーク位置及びピーク面積をArと比較することにより、定性及び定量分析した。触媒の化学成分の同定はICP(CQM−10000P、島津製作所製)により求めた。また、CH選択率は下記式により算出した。
CH選択率(%)=(単位時間当たりの出口ガス中のCHモル数)/{(単位時間当たりの原料ガス中のCOモル数)−(単位時間当たりの出口ガス中のCOモル数)}×100
[実施例1]
炭酸マンガンとして和光純薬工業製の炭酸マンガン(II)n水和物を使用した。N吸着法で測定した比表面積は46.4m/g、細孔容積は0.15ml/gであった。予め150℃で5時間乾燥した後、炭酸マンガン24gを秤量し、シリカゾルSI−550(日揮触媒化成製、SiO含量:20質量%)を29.1gとメチルセルロース(和光純薬製)0.3gを加えて乳鉢で十分混練りした。
得られた混練り物を押出し成形機によって、直径1.4mm、長さ3〜4mmの円柱状に成形し、空気中200℃で3時間乾燥して炭酸マンガン担体(触媒前駆体)を得た。得られた炭酸マンガン担体19.4gを秤量し、これに、1.5gの塩化ルテニウム(小島化学製、Ru Assay:40.79質量%)を7.7gの水に溶解した塩化ルテニウム水溶液を含浸させ、1時間放置した後、空気中、80℃で5時間乾燥して、触媒Aを得た。
ICPにて触媒Aの化学組成分析を行った結果、シリカの含有量は酸化物換算及び触媒基準で18.7質量%、メチルセルロースの含有量は仕込み量より触媒基準で0.9質量%、ルテニウムの含有量は金属換算及び触媒基準で2.6質量%であった。触媒Aに対して、200℃で3時間の真空排気処理を行った後、窒素吸着測定を行い、BET法とDH法によって触媒物性を測定したところ、表面積115m/g、細孔容積0.19ml/gであった。
触媒A3gを炭酸マンガン担体18gと共に内径15.5mmの反応器に充填し、水素分圧0.9MPa・G、温度170℃、流量100(STP)ml/min(STP:standard temperature and pressure)の条件で、水素を触媒Aに接触させて3時間還元した。還元後、H/CO比約2の合成ガス(Ar約25体積%含む)に切り換え、温度270℃、圧力0.9MPa・GにしてFT反応を行った。W/F(weight/flow)は約13.5g・hr/molであった。成形した触媒Aを用いることにより、差圧の発生は確認されなかった。
FT反応270℃評価開始20時間後のCO転化率は約70%、CH選択率は約9.2%であった。
[実施例2]
メチルセルロースの添加量を0.6gとした以外は実施例1と同様にして、触媒Bを得た。ICPにて触媒Bの化学組成分析を行った結果、シリカの含有量は酸化物換算及び触媒基準で18.6質量%、メチルセルロースの含有量は仕込み量より触媒基準で1.8質量%、ルテニウムの含有量は金属換算及び触媒基準で2.5質量%であった。
また、触媒Aと同様にして触媒物性を測定したところ、触媒Bの表面積は109m/g、細孔容積は0.19ml/gであった。この触媒Bを実施例1と同様の方法でFT反応に供した。FT反応270℃評価開始20時間後のCO転化率は約68.1%、CH選択率は11.7%であった。
[実施例3]
メチルセルロースの添加量を1.8gとした以外は実施例1と同様にして、触媒Cを得た。ICPにて触媒Cの化学組成分析を行った結果、シリカの含有量は酸化物換算及び触媒基準で17.5質量%、メチルセルロースの含有量は仕込み量より触媒基準で5.2質量%、ルテニウムの含有量は金属換算及び触媒基準で2.8質量%であった。
また、触媒Aと同様にして触媒物性を測定したところ、触媒Cの表面積は105m/g、細孔容積は0.18ml/gであった。この触媒Cを実施例1と同様の方法でFT反応に供した。FT反応270℃評価開始20時間後のCO転化率は約57.7%、CH選択率は13.1%であった。
[実施例4]
塩化ルテニウムの添加量を1.0gとした以外は実施例1と同様にして触媒Dを得た。ICPにて触媒Dの化学組成分析を行った結果、シリカの含有量は酸化物換算及び触媒基準で17.5質量%、メチルセルロースの含有量は仕込み量より触媒基準で1.9質量%、ルテニウムの含有量は金属換算及び触媒基準で1.7質量%であった。
また、触媒Aと同様にして触媒物性を測定したところ、触媒Dの表面積は103m/g、細孔容積は0.26ml/gであった。この触媒Dを実施例1と同様の方法でFT反応に供した。FT反応270℃評価開始20時間後のCO転化率は約65.7%、CH選択率は14.1%であった。
[実施例5]
実施例2と同様にして炭酸マンガン担体を得た。成形した炭酸マンガン担体29.1gを秤量し、これに、硝酸ルテニウム(III)溶液(フルヤ金属製、ルテニウム含量:8質量%)11.2gを含浸させ、1時間放置した後、空気中、160℃で8時間乾燥して、触媒Eを得た。
ICPにて触媒Eの化学組成分析を行った結果、シリカの含有量は酸化物換算及び触媒基準で17.2質量%、メチルセルロースの含有量は仕込み量より触媒基準で1.8質量%、ルテニウムの含有量は金属換算及び触媒基準で3.3質量%であった。
また、触媒Aと同様にして触媒物性を測定したところ、触媒Eの表面積は185m/g、細孔容積は0.42ml/gであった。この触媒Eを実施例1と同様の方法でFT反応に供した。FT反応270℃評価開始20時間後のCO転化率は約75.0%、CH選択率は12.7%であった。
[比較例1]
メチルセルロースの添加量を3.5gとした以外は実施例1と同様にして、触媒Fを得た。ICPにて触媒Fの化学組成分析を行った結果、シリカの含有量は酸化物換算及び触媒基準で17.1質量%、メチルセルロースの含有量は仕込み量より触媒基準で9.8質量%、ルテニウムの含有量は金属換算及び触媒基準で2.5質量%であった。
また、触媒Aと同様にして触媒物性を測定したところ、触媒Fの表面積は98m/g、細孔容積は0.18ml/gであった。この触媒Fを実施例1と同様の方法でFT反応に供した。FT反応270℃評価開始20時間後のCO転化率は約48.2%、CH選択率は14.9%であった。
[比較例2]
メチルセルロースの添加量を4.4gとした以外は実施例1と同様にして触媒Gを得た。ICPにて触媒Gの化学組成分析を行った結果、シリカの含有量は酸化物換算及び触媒基準で15.1質量%、メチルセルロースの含有量は仕込み量より触媒基準で12.0質量%、ルテニウムの含有量は金属換算及び触媒基準で3.0質量%であった。
また、触媒Aと同様にして触媒物性を測定したところ、触媒Gの表面積は82m/g、細孔容積は0.16ml/gであった。この触媒Gを実施例1と同様の方法でFT反応に供した。FT反応270℃評価開始20時間後のCO転化率は約42.3%、CH選択率は16%であった。
[比較例3]
炭酸マンガンの添加量を29.4g、シリカゾルの添加量を15.6g、メチルセルロースの添加量を0.6gとした以外は実施例1と同様にして、触媒Hを得た。ICPにて触媒Hの化学組成分析を行った結果、シリカの含有量は酸化物換算及び触媒基準で9.5質量%、メチルセルロースの含有量は仕込み量より触媒基準で1.7質量%、ルテニウムの含有量は金属換算及び触媒基準で2.3質量%であった。
また、触媒Aと同様にして触媒物性を測定したところ、触媒Hの表面積は87m/g、細孔容積は0.18ml/gであった。この触媒Hを実施例1と同様の方法でFT反応に供した。FT反応270℃評価開始20時間後のCO転化率は約51.4%、CH選択率は15.5%であった。
上記実施例1〜5及び比較例1〜3の実験結果を表1及び表2に示す。表1及び表2から、本発明の触媒(触媒A〜E)は、CO転化率が高く、また、ガス成分であるCHの生成割合が低いことが明らかである。特に、メチルセルロースの含有量が6質量%よりも高い触媒F及びGは、触媒A〜Eと同様に、ルテニウム含有量が0.5〜5質量%であり、シリカの含有量が酸化物換算及び触媒基準で10〜25質量%であるにもかかわらず、表面積が100m/gよりも狭かった。また、シリカの含有量が酸化物換算及び触媒基準で10質量%未満である触媒Hも、やはり表面積が100m/gよりも狭かった。このように触媒の表面積が100m/gよりも狭いことが、触媒F〜Hが触媒A〜EよりもFT活性が劣っていた原因と推察された。
Figure 2012152665
Figure 2012152665

Claims (3)

  1. 炭酸マンガンに、シリカを酸化物換算及び触媒基準で10〜25質量%、有機バインダーを触媒基準で6質量%以下、ルテニウムを金属換算及び触媒基準で0.5〜5質量%含有させてなり、かつ表面積が100〜210m/g、細孔容積が0.1〜0.6ml/gであることを特徴とするフィッシャー・トロプシュ合成用触媒。
  2. 前記有機バインダーがメチルセルロースであることを特徴とする請求項1に記載のフィッシャー・トロプシュ合成用触媒。
  3. 炭酸マンガンに、少なくとも、シリカの含有量が酸化物換算及び触媒基準で10〜25質量%となるようにシリカゾルを、触媒基準で6質量%以下となるように有機バインダーを、それぞれ含有させた混合物を混練りした後、得られた混練物を成形することにより担体を調製し、
    次いで、前記担体を250℃以下で乾燥させることにより触媒前駆体を調製し、
    さらに、前記触媒前駆体に、ルテニウムを金属換算及び触媒基準で0.5〜5質量%となるように含有させた後に、250℃以下で乾燥させることを特徴とするフィッシャー・トロプシュ合成用触媒の製造方法。
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