JP2012156202A - グラフェン/高分子積層体およびその利用 - Google Patents

グラフェン/高分子積層体およびその利用 Download PDF

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Abstract

【課題】効率的に、かつ低コストで、優れた物性値をもち、表面が平滑な、グラフェン/高分子積層体を製造する方法を提供する。
【解決手段】金属基板上に形成された、グラフェンを複数層有する多層グラフェン10のうち少なくとも1層を、多層グラフェン10の層間で剥がして、高分子フィルム3に貼り付ける、グラフェン転写工程を含む。
【選択図】図2

Description

本発明は、グラフェン/高分子積層体およびその利用に関し、例えば、エッチングプロセスを用いない、グラフェン/高分子積層体の製造方法、および、その製造方法によって製造される、透明導電体等の積層体に関するものである。
近年、グラフェンは、種々の優れた電気的特性、熱的特性、並びに光学的特性を有するため、エレクトロニクス分野、燃料電池分野等をはじめとして、広範な分野での利用が期待されている。すなわち、グラフェンはカーボンナノチューブに匹敵、もしくはそれを超えるナノ材料として国内外を問わず注目される炭素材料である。
従来、グラフェンを製造する方法としては、CVD(Chemical Vapor Deposition、化学蒸着)法、グラファイトからの化学的剥離法、グラファイトからの機械的剥離法、等が用いられている。CVD法は、所定の条件下で、銅等の基板上にメタン等のガスを接触させることによって、銅等の基板上に主に1層のグラフェン(以下、「単層グラフェン」という。)を形成する手法である。
CVD法を用いて形成された単層グラフェンは、高分子フィルムに転写される場合、接着している銅等とともに転写され、転写後に銅等をエッチングで除去することによって、グラフェンを積層した高分子フィルムが得られる。CVD法を用いて形成された単層グラフェンを、高分子フィルムに転写させる技術として、例えば、非特許文献1には、熱CVD法によって銅基板上に形成されたグラフェン層を、銅のエッチングプロセスを含むロール・to・ロール方式によって、単層グラフェンを高分子フィルムに転写させる方法が示されている。
また、CVD法を用いずにグラフェンを製造する方法として、例えば、非特許文献2には、銅基板上に形成された有機高分子化合物薄膜に熱処理を施すことによって、グラフェンを製造する方法が示されている。
Sukang Bae et. al., Roll-to-roll production of 30-inch graphene films for transparent electrodes, Nature Nanotechnology, Volume:5, p.574-578, 2010 Zhengzong Sun et. al., Growth of graphene from solid carbon sources, Nature, Volume:468, p.549-552, 2010
しかしながら、CVD法を用いてグラフェンを製造する方法では、主に単層グラフェンが製造され、良質な複数層のグラフェンを製造することはできない。それは、CVD法では順に炭素源が基板上に積み重なるので、単層グラフェンの上に積み重なった炭素源には触媒としての銅が働かなくなるため、2層目以上のグラフェン層の性質は著しく悪いものとなるからである。透明導電体として利用するために単層グラフェンを高分子フィルムに転写させる場合、単層グラフェンと銅基板とを剥離することが困難であるために、高分子フィルムと単層グラフェンとを接着後、銅等をエッチングで除去する必要があり、このエッチングプロセスに時間およびコストがかかるという問題がある。さらに、エッチングした銅等を再利用することができないという問題もある。
一方、非特許文献2に示されている方法で製造されたグラフェンを、高分子フィルムに転写させる際の転写方法についても、特に優れた手法は編み出されていない。
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、効率的に、かつ低コストで、優れた物性値をもつ単層グラフェンあるいは多層グラフェンを製造する方法、グラフェン/高分子積層体を製造する方法、およびその利用を提供することにある。
本発明者らは、上記課題に鑑み、エッチングプロセスを用いることなく、透明高分子フィルム上に優れた物性値を有する単層グラフェンおよび多層グラフェンを製造する方法を鋭意検討した。その結果、有機高分子化合物の熱処理法によって金属基板上に形成されるグラフェンは、単層グラフェンのみでなく2層以上の複数層のグラフェンでも優れた物性値をもち、さらに、このような方法で得られた複数層のグラフェンからは単層あるいは複数層のグラフェンを物理(機械)的に剥離することができるということを見出し、本発明を完成させるに至った。通常、グラファイトから物理的剥離によってグラフェンを作製する場合には、グラファイトのどの部分で剥離が起きるかが決められないために、どのような厚さのグラファイト薄膜が剥離されるかは分からず、部分的に層数の異なるグラファイト薄膜(あるいはグラフェン)としてしか得られない、という問題がある。しかしながら、本発明の方法では、驚くべきことに、剥離部分のほとんどで層数が一定のグラフェンを剥離することができる。これは、金属上に形成されたグラフェン層数が極めて少ないために、剥離されるグラフェン層の数も限定され、剥離を行うための母材として極めて優れていることを示している。
さらに、このときの金属基板としては、銅のみでなく、鉄、ニッケル、クロム、または少なくとも銅、鉄、ニッケルもしくはクロムを含む合金、さらに、これらの金属の酸化物、あるいは酸化シリコン、が有効に使用できることも分かった。すなわち、本発明の基本原理は、複数層のグラフェン間の層間剥離性に着目し、接着性を有する高分子フィルムをグラフェン層に接着後、複数層のグラフェンのうち少なくとも1層を層間で剥がして、優れた物性値をもつ平滑なグラフェン/高分子積層体を製造できることを独自に見出したことにある。
ここで、複数層のグラフェンは、層間で剥離しやすく、剥離させたグラフェンは平滑であり、かつ優れた物性値をもっている。また、本発明の方法によれば、エッチングプロセスを用いる必要がなく、さらに、エッチングしていない銅等の基板を再利用することもできる。
すなわち、本発明のグラフェン/高分子積層体の製造方法は、上記の課題を解決するために、金属基板上に形成された、グラフェンを複数層有する多層グラフェンのうち少なくとも1層を、該多層グラフェンの層間で剥がして高分子フィルムに転写(貼り付ける)する、グラフェン転写工程を含むことを特徴としている。
上記の構成によれば、多層グラフェンが剥離前に銅等の基板と接着している場合でも、高分子フィルムに貼り付けられたグラフェンには銅等が付着しない。これにより、グラフェンが高分子フィルムに貼り付けられた後に、エッチングプロセスを用いる必要がない。さらに、グラフェンが高分子フィルムに貼り付けられた後に、エッチングしていない銅等を再利用することもできる。
また、本発明のグラフェン/高分子積層体の製造方法は、上記多層グラフェンが、上記金属基板上に形成した有機高分子化合物の層を、水素の存在下で800℃以上、1700℃以下の範囲内の温度にて熱処理して得られたものであることが好ましい。
これにより、本発明のグラフェン/高分子積層体の製造方法は、上記グラフェン形成工程にて、多層グラフェンを効率的に形成することができる。
また、上記金属基板は、銅、鉄、ニッケル、クロム、シリコンもしくはこれらを少なくとも1種含む合金、またはその酸化物を有するものであることが好ましく、より品質の高い複数グラフェン層を該金属基板上に形成するためには、800℃以上のできる限り高温で熱処理することが好ましい。基板金属の融点を考慮すると、銅では1000℃、鉄では1500℃、ニッケルでは1400℃、ステンレスでは1700℃が有効な温度範囲の最大値となる。
また、本発明のグラフェン/高分子積層体の製造方法は、上記多層グラフェンを形成するグラフェン形成工程において、有機高分子化合物に対して、水素ガス流を接触させる処理を行い、水素ガスの流量が、1sccm以上、100sccm以下の範囲内であることが好ましい。
これにより、本発明のグラフェン/高分子積層体の製造方法は、上記グラフェン形成工程にて、多層グラフェンを効率的に形成することができる。
また、本発明のグラフェン/高分子積層体の製造方法は、上記有機高分子化合物が、少なくとも酸素原子を含む置換基を有している、すなわち、少なくとも酸素原子を有する有機高分子化合物から選択されることが好ましく、具体的には、水酸基、カルボニル基、カルボキシル基等の置換基を含む有機高分子化合物であることが好ましい。
これにより、本発明のグラフェン/高分子積層体の製造方法は、上記グラフェン形成工程にて、多層グラフェンを形成しやすくなる。
また、本発明のグラフェン/高分子積層体の製造方法は、上記金属基板の表面粗さ(Ra)が、0.01μm以下であることが好ましい。
これにより、本発明のグラフェン/高分子積層体は、多層グラフェンのうち少なくとも1層を該多層グラフェンの層間で剥がしやすくなると考えられる。
また、本発明のグラフェン/高分子積層体の製造方法は、上記グラフェン転写工程では、上記金属基板上に形成された多層グラフェン上に、接着性を有する高分子フィルムを圧着し、その後に、該多層グラフェンのうち少なくとも1層を、該多層グラフェンの層間で剥がして、該高分子フィルムに貼り付けることが好ましい。
これにより、本発明のグラフェン/高分子積層体の製造方法は、上記グラフェン転写工程にて、グラフェンを高分子フィルムに転写しやすくなる。
また、本発明のグラフェン/高分子積層体の製造方法は、上記グラフェン転写工程では、ロール状の上記高分子フィルムを用い、ロール状の上記高分子フィルムを回転させることによって、上記多層グラフェンのうち少なくとも1層を該多層グラフェンの層間で剥がして、該高分子フィルムに貼り付けることが好ましい。
これにより、本発明のグラフェン/高分子積層体の製造方法は、上記グラフェン転写工程にて、グラフェンを高分子フィルムに転写しやすくなる。
また、本発明のグラフェン/高分子積層体は、上記グラフェン/高分子積層体の製造方法によって製造され得ることを特徴としている。
これにより、本発明のグラフェン/高分子積層体は、上記グラフェンの表面を平滑にすることができる。
また、本発明のグラフェン/高分子積層体は、上記高分子フィルムが、透明であることが好ましい。
グラフェンは透明性と電気伝導性とを有しているので、上記高分子フィルムが透明であることによって、本発明のグラフェン/高分子積層体は透明導電体となる。その結果、本発明のグラフェン/高分子積層体は、ITO(Indium Tin Oxide)等の代替品として用いることが可能となる。
また、本発明の透明導電体は、上記グラフェン/高分子積層体の製造方法によって製造され得ることを特徴としている。
グラフェンは極めて薄く、しかも高い伝導性を有しているので、本発明の透明導電体は、光透過性が向上する。その結果、本発明の透明導電体は、ITO等の代替品として用いることが可能となる。
また、本発明のデバイスは、上記透明導電体を備えていることを特徴としている。
これにより、本発明のデバイスは、ITOからなる電極等の部材を備えている装置に適用することができる。
本発明のグラフェン/高分子積層体の製造方法は、以上のように、金属基板上に形成された、グラフェンを複数層有する多層グラフェンのうち少なくとも1層を、該多層グラフェンの層間で剥がして、高分子フィルムに貼り付ける、グラフェン転写工程を含む方法である。
それゆえ、本発明のグラフェン/高分子積層体の製造方法は、効率的に、かつ低コストで、優れた物性値をもち、表面が平滑な、グラフェン/高分子積層体を製造することができるという効果を奏する。
本発明の一実施形態におけるグラフェン/高分子積層体の製造方法の工程を示す断面図である。 本発明の一実施形態におけるグラフェン/高分子積層体の製造方法の工程を示す断面図である。
本発明の一実施形態について、以下に詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更して実施し得るものである。
(I)本実施形態におけるグラフェン/高分子積層体の製造方法
本実施形態におけるグラフェン/高分子積層体の製造方法は、金属基板上に形成された多層グラフェンのうち少なくとも1層を、該多層グラフェンの層間で剥がして、高分子フィルムに貼り付ける、グラフェン転写工程を含む方法である。
また、本実施形態におけるグラフェン/高分子積層体の製造方法は、さらに、上記多層グラフェンを形成する、グラフェン形成工程を含み、上記グラフェン形成工程では、有機高分子化合物(炭素を含有する高分子化合物)に対して、水素ガスを接触させる処理を行い、かつ加熱処理を行うことが好ましい。
また、本実施形態におけるグラフェン/高分子積層体の製造方法は、上記グラフェン転写工程では、接着性を有する高分子フィルムを多層グラフェンに圧着し、しかる後に上記多層グラフェンのうち少なくとも1層を該多層グラフェンの層間で剥がして、該高分子フィルムに貼り付けることを特徴としている。このときさらに、ロール状の上記高分子フィルムを用い、ロール状の上記高分子フィルムを回転させることによって、上記多層グラフェンのうち少なくとも1層を該多層グラフェンの層間で剥がして、該高分子フィルムに貼り付けることが好ましい。
<グラフェン>
本明細書において、グラフェンとは、ベンゼン環が二次元的につながった、炭素原子1原子分の厚さのシートをいう。具体的には、グラフェンは、グラファイトの形態の2次元結晶であり、その中で原子は六角形構造の規則的秩序に従って配置されている。このシートの厚みは、炭素原子の厚みに相当し、結果的にナノメートル未満の厚みに相当する。グラフェンは、平面状六角形格子の形態であり、各炭素原子が3つの炭素原子に結合され、その結果、化学結合に用いられる4つの外殻電子のうち1つの電子を自由な状態にしている。その結果、これらの自由電子は、結晶格子に沿って移動することができるため高い電気伝導性を有している。
本明細書において、「多層グラフェン」とは、グラフェンを複数層有するものをいい、グラファイト超薄膜とも言えるものである。また、本明細書において、「グラフェン/高分子積層体」とは、少なくとも1層のグラフェンと、高分子フィルム等のグラフェン以外の材料と、の混合物をいう。「グラフェン/高分子積層体」としては、例えば、「グラフェン及び高分子フィルムの積層体」などが挙げられる。
<グラフェン形成工程>
本実施形態のグラフェン形成工程では、多層グラフェンを形成する。具体的には、図1に示すように、基板2上に、有機高分子化合物1を配置し、以下の条件で処理することによって、多層グラフェン10を得る。図1において、多層グラフェン10は2層のグラフェンであるが、これに限定されず、2層以上20層以下の範囲内のものであれば本実施形態に含まれ、特に2層以上10層以下であることが好ましい。本実施形態のグラフェン形成の条件等について、以下に説明する。
《基板》
本実施形態の上記グラフェン形成工程では、上記高分子化合物を金属基板上に配置しておくことが好ましい。
本実施形態に用いられる金属基板は、ケイ素を含む基板上に形成されたものでもよい。ケイ素を含む基板としては、結晶シリコン基板、ポリシリコン基板、アモルファスシリコン基板、エピタキシャルシリコン基板、二酸化シリコン基板、シリコンカーバイド基板、シリコンオキシカーバイド基板、窒化シリコン基板、炭窒化シリコン基板(SiCN)、ケイ素、酸素、炭素、およびフッ素を含む基板(SiOCFで表される)、ホウ窒化シリコン基板等が挙げられる。
また、上記金属は、銅(Cu)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、イットリウム(Y)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、金(Au)、モリブデン(Mo)および銀(Ag)、のいずれか1種の純金属、またはこれらの2種以上を含む合金、あるいはこれらの金属酸化物で構成することができる。また、上記金属は、銅、鉄、ニッケル、あるいはこれらの金属酸化物であることが特に好ましい。
《有機高分子化合物》
本実施形態に用いられる「有機高分子化合物」としては、皮膜形成能に優れた有機高分子であること、少なくとも酸素原子を含む置換基を有していることが好ましい。具体的な有機高分子としては、ポリメチルメタアクリレート(PMMA、poly methyl methacrylate)、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール、ポリメタアクリレート、ポリ−L−リシン、スルホン化ポリスチレン、グリシジル変性ポリエステル、ポリエステル、スルホン酸変性ポリエステル、カルボン酸変性ポリエステル、カルボキシメチルセルロース、エポキシ樹脂、サッカロース、およびこれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1つを有する高分子化合物または共重合体、等を例示することができる。また、N−ドープを行うためには、メラミン等の含窒素有機物をさらに含有すること、例えば、メラミンとPMMAとの混合物を用いること、が好ましい。
《水素ガス》
本実施形態のグラフェン形成工程は水素の存在下で行うことが好ましく、水素ガス流の下で行うことがより好ましい。2層から10層の多層グラフェンを得るためには、水素ガス流量は、1sccm以上、100sccm以下の範囲内であることが好ましく、2sccm以上、40sccm以下の範囲内であることがより好ましく、3sccm以上、20sccm以下の範囲内であることが特に好ましい。
《水素ガス以外のガス》
本実施形態のグラフェン形成工程には、水素ガス以外の、アルゴンガス、窒素ガス、ヘリウムガス等のガスを水素ガスと混合して用いてもよい。
《加熱処理》
本実施形態の多層グラフェン形成工程における加熱処理の温度の上限は、用いる金属基板の融点によって制限されるが、良質なグラフェン作製のためには、800℃以上であることが好ましく、できるだけ高温度であることがより好ましい。例えば、銅基板の場合には1000℃、鉄基板の場合には1500℃、ニッケル基板の場合には1400℃、ステンレス基板の場合には1700℃、モリブデン基板の場合には2600℃、タングステン基板の場合には3000℃であることが好ましい。実用的な観点からは、銅、鉄、ニッケル、ステンレス、シリコン、あるいはこれらの金属の酸化物が重要であり、この点を考慮すると、望ましい加熱温度の範囲は、800℃〜1700℃である。
《その他の処理条件》
本実施形態のグラフェン形成工程は、上記の処理以外に、加熱後の冷却速度の制御等を行ってもよい。急激な冷却によってより高品質のグラフェンが形成され、さらにグラフェン以外の炭素(無定形炭素など)の析出を防止することができる。大きな冷却速度を得るためには、加熱後同様の雰囲気下で生成したグラフェンを加熱部分から引き離すことが有効である。
<グラフェン転写工程>
本実施形態のグラフェン転写工程では、グラフェンを複数層有する多層グラフェンのうち少なくとも1層を、該多層グラフェンの層間で剥がして、高分子フィルムに貼り付ける。グラフェン転写の条件等について、以下に説明する。
《高分子フィルム》
本実施形態に用いられる高分子フィルムとしては、ポリメチルメタアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール、ポリメタアクリレート、ポリ−L−リシン、スルホン化ポリスチレン、グリシジル変性ポリエステル、ポリエステル、スルホン酸変性ポリエステル、カルボン酸変性ポリエステル、カルボキシメチルセルロース、エポキシ樹脂、サッカロース、およびこれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1つを有する高分子化合物または共重合体を含むフィルムを例示することができる。
ここで、本明細書において、「高分子フィルム」には、上記高分子化合物または上記共重合体を含む高分子シート等も含まれる。
また、本実施形態に用いられる高分子フィルムは、透明であることが好ましい。グラフェンは透明性を有しているので、上記高分子フィルムが透明であることによって、本実施形態のグラフェン/高分子積層体は透明導電体となる。その結果、当該透明導電体は、ITO(Indium Tin Oxide)の代替品として用いることが可能となる。
《転写手法》
グラフェンを高分子フィルムに転写する手法について、図2を参照しながら以下に説明する。
多層グラフェン10の高分子フィルム3への転写は、高分子フィルム3を多層グラフェン10の表面に圧着する(押し付ける)ことによって行う。高分子フィルム3の表面は、粘着剤やポリイミド等の転写剤を塗布したり、酸素プラズマ処理等の活性化処理を行ったりして、多層グラフェン10との密着性を予め高めておくことが好ましい。高分子フィルム3の表面の密着力は、基板2と多層グラフェン10との密着力よりも弱くする。また、高分子フィルム3の表面の密着力は、多層グラフェン10間の層間密着力よりも強くする。これにより、基板2上の多層グラフェン10のうち少なくとも1層を高分子フィルム3に転写して取り出すことができる。
なお、高分子フィルム3がロール状になっている場合には、高分子フィルム3を回転させることによって、多層グラフェン10のうち少なくとも1層を高分子フィルム3に転写する(貼り付ける)ことができる。
転写用のフィルムの一例として、熱硬化型のエポキシ接着剤樹脂と透明ポリエステルフィルムとからなる2層構造の高分子フィルムを挙げることができる。
具体的な熱硬化型エポキシ接着剤の例として、芳香族系エポキシ樹脂ビスフェノールA型(エピコート828)や脂環式エポキシ樹脂(例えば、3,4−エポキシシクロヘキシル・メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート(商品名:セロキサイド2021−P))などを示すことができる。これらの硬化剤としては酸無水物系硬化剤が好ましく用いられる。また、イミダゾール系硬化触媒を用いることはより好ましい。
このような構成の高分子フィルムの接着層を基板上に形成された多層グラフェンに圧着し、ポリエステル側からの赤外光によってエポキシ接着層を硬化させ、グラフェン層をエポキシ層に転写させることができる。
《ロール状の高分子フィルムを用いる手法》
本実施形態におけるグラフェン/高分子積層体の製造方法は、上記グラフェン転写工程では、ロール状の上記高分子フィルムを用い、ロール状の上記高分子フィルムを回転させることによって、多層グラフェンのうち少なくとも1層を該グラフェンの層間で剥がして、該高分子フィルムに貼り付けることが好ましい。
<グラフェン転写工程における処理後の基板>
グラフェン転写工程における処理後の基板は、本実施形態におけるグラフェン/高分子積層体の製造方法に再利用することができる。具体的には、当該処理後の基板に再び有機高分子化合物を配置し、上記の条件で処理することによって、グラフェンを得ることができる。この際、有機高分子化合物を配置する前に、基板表面をより高濃度の水素ガスによって熱処理して、単層グラフェンのみを残してもよいし、あるいは完全にグラフェン層を取り除いてもよい。
(II)本実施形態におけるグラフェン/高分子積層体の構成
本実施形態におけるグラフェン/高分子積層体は、グラフェンを複数層有する多層グラフェンのうち少なくとも1層を、該多層グラフェンの層間で剥がして、高分子フィルムに貼り付ける、グラフェン転写工程を含む製造方法によって製造されるものである。また、本実施形態におけるグラフェン/高分子積層体は、上記多層グラフェンを形成する、グラフェン形成工程をさらに含む製造方法によって製造されるものであることが好ましい。
また、本実施形態におけるグラフェン/高分子積層体は、上記高分子フィルムが透明であることが好ましい。グラフェンは透明性を有しているので、上記高分子フィルムが透明であることによって、本実施形態におけるグラフェン/高分子積層体は透明導電体となる。
<本実施形態におけるグラフェン/高分子積層体の物性等>
《表面粗さ(Ra)》
本実施形態におけるグラフェン作製のための金属基板の表面粗さ(Ra)は、0.01μm以下であることが好ましく、0.002μm以下であることがより好ましく、0.001μm以下であることが特に好ましい。金属基板の表面粗さが0.01μmよりも大きい場合には、本実施形態の方法を用いても多層グラフェンから単層または多層グラフェンを剥離することはできない。
《透過率、表面抵抗値、剥離性等》
本実施形態におけるグラフェンはきわめて良好で、単層グラフェンの場合の透過率(基板の透過率を差し引いた値)はおよそ98%、単位面積あたりの表面抵抗値は1200Ωであった。さらに、本実施形態の方法で剥離されたグラフェン層の層数は剥離面全面で均一であり、グラファイト結晶から剥離を行う場合と比較して極めて優れていた。
(III)本実施形態におけるグラフェン/高分子積層体の製造装置
本実施形態におけるグラフェン/高分子積層体の製造装置は、主として、ヒーター、真空ポンプ、水素流量制御弁を備えていることが好ましい。
(IV)本実施形態における、透明導電体およびこれを備えたデバイスの構成
本実施形態における透明導電体(透明導電膜)は、グラフェンを複数層有する多層グラフェンのうち少なくとも1層を、該多層グラフェンの層間で剥がして、高分子フィルムに貼り付ける、グラフェン転写工程を含む製造方法によって製造され、上記高分子フィルムが透明である。
本実施形態における透明導電体は、ITOの代替品として、画素電極等の電極、タッチパネル、直下型LCD−TVの電磁シールド、無機EL電極、有機EL電極、などに適用することができる。
また、本実施形態におけるデバイスは、上記透明導電体を備えているものである。透明導電体以外の構成は特に限定されず、従来公知の部材を備えていればよい。
(V)本実施形態におけるグラフェン/高分子積層体の製造方法の具体例
以下に、本発明のグラフェン/高分子積層体の製造方法について、代表的な具体例としてPMMA薄膜を用いてグラフェンを作製した場合を取り上げ、より具体的に説明する。ただし、本発明のグラフェン/高分子積層体の製造方法は、以下の具体例にのみ限定されるものではない。
PMMAを100nm程度の厚さとなるようにスピンコート法で銅(Cu)フィルム上に塗る。銅は予め、「SiO/Si基板」上に置かれているものである。そのようにして得られた「PMMA/Cu/SiO/Si基板」を、800℃にて10分間加熱する。その際、「Ar/Hの還元雰囲気」で低圧条件下にてPMMAを熱分解させる。
これにより、銅上に1層のグラフェン(単層グラフェン)を形成することができる。この単層グラフェンのラマンスペクトルは極めて良好である。具体的には、例えば、「I(2D)/I(G)比」は4程度である。また、2Dの線幅は30cm−1程度である。なお、この単層グラフェンでは、1cm−1四方で10箇所以上のラマンスペクトルを確認すればよい。
また、1000℃の条件下にてPMMAを出発物質として、アルゴン(Ar)の流量を一定の500sccmにして水素(H)の流量を変化させて同様の操作を行う。
(a)水素の流量が50sccmの場合、単層グラフェンだけを形成することができる。このときのグラフェンシートの抵抗は1200Ωである。また、透過率は97.1%である。
(b)水素の流量が10sccmの場合、2層グラフェンを形成することができる。このときのグラフェンシートの透過率は94.3%である。
(c)水素の流量が3〜5sccmの場合、数層(6層程度)グラフェンを形成することができる。このときのグラフェンシートの透過率は83%である。すなわち、ゆっくりとした水素のフローによって、多層グラフェンを形成することができる。
上記(a)〜(c)によれば、水素の流量でグラフェンの層数を制御することができることがわかる。
出発物質をPMMAに代えて、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール、ポリメタアクリレート、サッカロース、等としても、PMMAを用いる場合と同様に、単層および複数層グラフェンを形成することができる。
PMMAから得られた単層グラフェンのラマンスペクトルを、サンプルの1cmあたり10箇所以上で確認する。このスペクトルにおいて、最も突出した2つのピークは、1,580cm−1のGピークおよび2,690cm−1の2Dピークである。I2D/Iの強度比は約4である。また、2Dピークの線幅における最大値の半分は約30cm−1である。Dピーク(〜1,350cm−1)はノイズレベルである。
本明細書では、PMMAから得られるグラフェンの厚さが、アルゴン(Ar)および水素(H)ガスの流量を変化させることによって制御され得る事、すなわち、単層グラフェン、2層グラフェンまたは数層グラフェンを製造し得ることを示している。典型的な厚さは、グラフェンにおけるラマンスペクトルおよび紫外線透過率によって評価される。PMMAから得られる2層グラフェンは、アルゴンの流量が500cmSTPmin−1および水素の流量が10cmSTPmin−1場合、1000℃の条件下にて得られる。また、PMMAから得られる数層グラフェンは、アルゴンの流量が500cmSTPmin−1および水素の流量が3〜5cmSTPmin−1場合、1000℃の条件下にて得られる。水素の流量が50cmSTPmin−1以上に増加する場合、単層グラフェンが得られる。単層グラフェンは、550nmの波長で97.1%の紫外線透過率を示す。単層グラフェンは、透明電極材料とすることによって、1200Ωのシート抵抗(R)を有する。2層グラフェンは、550nmの波長で94.3%の紫外線透過率を示す。数層グラフェン、6層グラフェンを評価すれば、550nmの波長で83%の紫外線透過率を示す。2Dピークの形状および位置は、単層グラフェンと、2層グラフェンおよび数層グラフェンとでは異なっている。具体的には、単層グラフェンの2Dピークの形状は、1つの鋭いピークであるのに対し、2層グラフェンおよび数層グラフェンの2Dピークの形状は、グラフェン表面の相互作用によって分裂したピークとなる。2Dピークに対するGピークの位置は、グラフェンフィルムの均一性を示している。I/I2Dの強度比が0.4未満の場合、95%以上が単層グラフェンである。I/I2Dの強度比が約0.8の場合、85%以上が2層グラフェンである。
本発明における水素は、還元剤としての働きおよびPMMAから炭素原子を移動させるためのキャリアガスとしての働きを行う。水素のゆっくりとした流れは、多層グラフェンの合成を促す事になる。
さらに、「Ar/H」の流量に応じて、温度を変更することができる。ラマンスペクトル分析におけるD/Gピーク比によって、グラフェンフィルムの品質を評価する。800℃で得られたグラフェンシートのピーク比は0.1未満であり、750℃で得られたグラフェンシートのピーク比は〜0.35である。これにより、PMMAからグラフェンを得るためには、800℃が下限値であるといえる。
また、Ni、Si等の酸化物および200nmの厚さを有するSiOの基板は、PMMAでコーティングされると、グラフェンを生成する。このラマンスペクトルによれば、PMMAを、1,350cm−1のDピークの無い、高品質な結晶性グラフェン材料にするのに、Niが触媒基板としての効果を奏していることがわかる。同じ条件では、SiまたはSiO上にはグラフェンもアモルファス炭素も得られない。このことは、SiまたはSiO上に堆積(蒸着)されたNiまたはCuの薄膜からグラフェンが得られたことを実証している。さらに、温度と水素濃度とを変更することにより、鉄、Ni、ステンレスなどの金属でも多層グラフェンを得ることができる。鉄においては1500℃の高温での多層グラフェン膜作製が可能であり、このときアルゴンの流量が500cmSTPmin−1および水素の流量が10cmSTPmin−1の場合、5層〜10層の多層グラフェンが形成される。また、ニッケルにおいては1400℃での多層グラフェン作製が可能である。このときアルゴンの流量が500cmSTPmin−1および水素の流量が10cmSTPmin−1の場合、4層〜8層の多層グラフェンの作製が可能である。
結論として、本明細書では、固形の炭素源を用いて、一段階の工程にて、初期のグラフェンおよびドーピングされたグラフェンの両方を、制御可能な状態で得ることを示している。これは、CVD法を補完する方法として役立つ。
その後、グラフェン形成工程にて得られたグラフェンを高分子フィルムに転写する。銅基板上に上記条件で形成した6層グラフェン上に熱硬化型の透明エポキシ層(芳香族ビスフェノールA型(エピコート828)を備えたPETフィルムを圧着し、1時間、120℃で加熱後、銅基板より剥離した。なお、用いた硬化剤は、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸/ヘキサヒドロ無水フタル酸、であり、用いた硬化触媒は、2−エチル−4−メチルイミダゾールである。このときPET基板には4層のグラフェンが転写されたが、驚くべき事にこのときPET上に転写されたグラフェンはほぼ全面に渡って4層であり、きわめて均一なグラフェン膜であった。表面抵抗は340Ω/cmであり、基板の透過率を差し引いた透過率はおよそ90%であった。
同様の剥離、転写の工程を鉄基板上に形成された6層グラフェンについても行ったが、PET基板に転写されたグラフェンは2層グラフェンであり、表面抵抗は700Ω/cm、基板の透過率を差し引いた透過率は約95%であった。ニッケル基板を用い、形成された8層基板の場合には、4層のグラフェン層が転写され、表面抵抗は320Ω/cm、基板の透過率を差し引いた透過率は90%であった。いずれの場合でもPET高分子フィルムに転写されたグラフェン層の層数はほぼ一定であり、本発明の方法が極めてすぐれた手法であることを示している。
なお、高分子フィルムがロール状になっている場合には、ロールと共に高分子フィルムを回転、圧着させることによって、グラフェンの高分子フィルムへの転写(貼り付け)を同時に実施することができる。
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明は、透明導電体等に適用することができるため、エレクトロニクス分野、燃料電池分野等の広範な分野に利用することができる。
1 有機高分子化合物
2 基板
3 高分子フィルム
10 多層グラフェン

Claims (12)

  1. 金属基板上に形成された、グラフェンを複数層有する多層グラフェンのうち少なくとも1層を、該多層グラフェンの層間で剥がして、高分子フィルムに貼り付ける、グラフェン転写工程
    を含むことを特徴とするグラフェン/高分子積層体の製造方法。
  2. 上記多層グラフェンが、上記金属基板上に形成した有機高分子化合物の層を、水素の存在下で800℃以上、1700℃以下の範囲内の温度にて熱処理して得られたものであることを特徴とする請求項1に記載のグラフェン/高分子積層体の製造方法。
  3. 上記金属基板が、銅、鉄、ニッケル、クロム、シリコンもしくはこれらを少なくとも1種含む合金、またはその酸化物を有するものであることを特徴とする請求項1または2に記載のグラフェン/高分子積層体の製造方法。
  4. 上記多層グラフェンを形成するグラフェン形成工程において、有機高分子化合物に対して、水素ガス流を接触させる処理を行い、
    水素ガスの流量が、1sccm以上、100sccm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のグラフェン/高分子積層体の製造方法。
  5. 上記有機高分子化合物が、少なくとも酸素原子を含む置換基を有していることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載のグラフェン/高分子積層体の製造方法。
  6. 上記金属基板の表面粗さ(Ra)が、0.01μm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のグラフェン/高分子積層体。
  7. 上記グラフェン転写工程では、上記金属基板上に形成された多層グラフェン上に、接着性を有する高分子フィルムを圧着し、その後に、該多層グラフェンのうち少なくとも1層を、該多層グラフェンの層間で剥がして、該高分子フィルムに貼り付けることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のグラフェン/高分子積層体。
  8. 上記グラフェン転写工程では、ロール状の上記高分子フィルムを用い、
    ロール状の上記高分子フィルムを回転させることによって、上記多層グラフェンのうち少なくとも1層を該多層グラフェンの層間で剥がして、該高分子フィルムに貼り付けることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のグラフェン/高分子積層体の製造方法。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載のグラフェン/高分子積層体の製造方法によって製造され得ることを特徴とするグラフェン/高分子積層体。
  10. 上記高分子フィルムが、透明であることを特徴とする請求項9に記載のグラフェン/高分子積層体。
  11. 請求項1〜8のいずれか1項に記載のグラフェン/高分子積層体の製造方法によって製造され得ることを特徴とする透明導電体。
  12. 請求項11に記載の透明導電体を備えていることを特徴とするデバイス。
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