JP2012172056A - 半芳香族ポリアミド - Google Patents

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Abstract

【課題】ポリアミド中に含まれるトリアミン量が少なく、耐熱性、高結晶性に優れ、しかも成形性に優れた半芳香族ポリアミドを提供する。
【解決手段】本発明の半芳香族ポリアミドは、芳香族ジカルボン酸成分とジアミン成分とからなる半芳香族ポリアミドであって、ジアミン成分が1,7−ヘプタンジアミン、1,9−ノナンジアミンまたは1,11−ウンデカンジアミンのいずれかであり、かつ半芳香族ポリアミド中のジアミン単位に対するトリアミン単位が0.3モル%以下であることを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、芳香族ジカルボン酸成分およびジアミン成分からなる半芳香族ポリアミドに関するものである。
半芳香族ポリアミドは、ナイロン6、ナイロン66などの脂肪族ポリアミドと比較すると耐熱性に優れており、さらに低吸水性であるため寸法安定性においても優れている。そのため、半芳香族ポリアミドは、このような特性を利用して、特に電気・電子部品、自動車部品用成形品の分野において広く使用されている。
近年、これらの分野において、さらなる耐熱性の向上、および成形生産性の向上に対する要求が強まってきている。耐熱性向上のためには、一般的には、高い融点を有するポリマーを用いることが考えられる。しかしながら、半芳香族ポリアミドの場合、融点が分解温度と近接しているため、高い融点を有するポリマーにおいては、溶融加工時にポリアミドが熱分解されることによる製品の性能低下や着色が問題となる場合があった。
例えば、特許文献1には、1,10−デカンジアミンおよびテレフタル酸からなるポリアミド10T樹脂が開示されている。そして、このようなポリアミド樹脂は、高結晶性で耐熱性に優れた成形体に用いられることが開示されている。
一方、非特許文献1には、半芳香族ポリアミドでは、トリアミンの生成が脂肪族ポリアミドより顕著であり、重合時に水を大量に添加すると、得られるポリアミド中に、副生成物であるトリアミン構造が副生し易くなるという問題があると記載されている。
特開平6−239990号公報
高分子化学 第25巻 第277号 第318頁(1968)
特許文献1においては、重合開始時に水を添加してポリアミドを得ている。従って、非特許文献1を参照すれば理解されるように、特許文献1の場合には、水の添加に起因して、重合初期でのトリアミンの生成を抑制することができず、トリアミンが含まれていないポリアミドに比べてゲル化の発現が増大するという問題があった。
本発明は、かかる従来技術を鑑み、ポリアミド中に含まれるトリアミン量が少なく、耐熱性、高結晶性に優れ、しかも成形性に優れた半芳香族ポリアミドを提供することを目的とする。
本発明者等は、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明に到達した。すなわち、本発明の要旨は下記の通りである。
(1)芳香族ジカルボン酸成分とジアミン成分とからなる半芳香族ポリアミドであって、ジアミン成分が1,7−ヘプタンジアミン、1,9−ノナンジアミンまたは1,11−ウンデカンジアミンのいずれかであり、かつ半芳香族ポリアミド中のジアミン単位に対するトリアミン単位が0.3モル%以下であることを特徴とする半芳香族ポリアミド。
(2)芳香族ジカルボン酸成分が、テレフタル酸であることを特徴とする(1)の半芳香族ポリアミド。
(3)ポリアミド中に、主成分である芳香族ジカルボン酸成分およびジアミン成分以外の、芳香族ジカルボン酸成分および/またはジアミン成分が、原料モノマーの総モル数100モル%に対して5モル%以下の割合で共重合されていることを特徴とする(1)または(2)の半芳香族ポリアミド。
(4)示差走査型熱量計を用いて測定される融点が280〜340℃であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかの半芳香族ポリアミド。
(5)示差走査型熱量計を用いて測定される過冷却度ΔTが40〜75℃であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかの半芳香族ポリアミド。
(6)(1)〜(5)のいずれかにの半芳香族ポリアミドを成形してなる成形体。
本発明によれば、ポリアミド中に含まれるトリアミンが少なく、耐熱性、高結晶性に優れ、しかも成形性に優れた半芳香族ポリアミドを提供することができる。
以下、本発明について説明する。
本発明の半芳香族ポリアミド(以下、単に「ポリアミド」と称する場合がある)は、芳香族ジカルボン酸成分とジアミン成分とからなるポリアミドである。
本発明においては、ジカルボン酸成分として芳香族ジカルボン酸成分を用いることが必要である。芳香族ジカルボン酸を用いると、脂肪族ジカルボン酸や脂環式ジカルボン酸を用いた場合と比較して、高い融点を有し、かつ寸法安定性に優れた半芳香族ポリアミドを得ることができる。芳香族ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などが挙げられる。なかでも、本発明においては、汎用性が高いという観点から、芳香族ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸が好ましい。
本発明においては、半芳香族ポリアミドを構成するジアミン成分が、奇数個の炭素数を有する直鎖脂肪族ジアミンであることが必要である。より具体的には、1,7−ヘプタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、または1,11−ウンデカンジアミンのいずれかである必要がある。ジアミンの炭素数が7未満の場合には、得られるポリアミドの融点が340℃を超えてしまい、分解温度を上回ってしまうため好ましくない。一方、ジアミンの炭素数が11より大きい場合には、得られるポリアミドの融点が280℃未満となり、実用に供する際に、耐熱性が不足してしまうため好ましくない。
用いられるジアミン成分の炭素数は奇数であることが必要である理由について以下に述べる。一般的に、ポリアミドにおいては、いわゆる偶奇効果が発現する。すなわち、用いられるジアミン成分のモノマー単位の炭素数が偶数である場合には、奇数である場合と比較して、より安定な結晶構造をとるため、結晶性が向上するという効果が発現する。しかしながら、ジアミン成分として、炭素数が8、10、12などの偶数である直鎖脂肪族ジアミンを用いた場合は、上記のポリアミドの偶奇効果により、結晶性が高くなりすぎ、後述の過冷却度が40℃未満となる。その結果、固化が速くなり過ぎて成形性が低下するという問題があるため好ましくない。つまり、用いられるジアミン成分の炭素数が7、9または11であることにより、結晶性を好適な範囲に制御することができ、加えて融点を高いものとすることができる。
本発明においては、上記のジアミン成分のなかでも、融点と結晶性のバランスの観点から、ノナンジアミンが最も好ましい。
つまり、本発明の半芳香族ポリアミドは、例えば、ナイロン7T、ナイロン9T、ナイロン11T、などである。ここで、Tはテレフタル酸を示す。
本発明の半芳香族ポリアミドには、主成分となる芳香族ジカルボン酸成分以外の種類のジカルボン酸成分、および/または炭素数が7、9または11である直鎖脂肪族ジアミン成分以外の種類のジアミン成分(以下、「共重合成分」と称する場合がある)が共重合されていてもよい。共重合成分は、原料モノマーとしての芳香族ジカルボン酸成分とジアミン成分の総モル数(100モル%)に対し、5モル%以下であることが好ましく、実質的に共重合成分を含まないことがより好ましい。共重合成分が5モル%を超えると、結晶性が低下することに起因して、加工性が低下する場合があるため好ましくない。
共重合成分として用いることが可能なジカルボン酸成分としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸が挙げられる。
本発明の半芳香族ポリアミドの共重合成分として用いることが可能なジアミン成分としては、1,2−エタンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミンなどの脂肪族ジアミン、シクロヘキサンジアミンなどの脂環式ジアミン、キシリレンジアミンなどの芳香族ジアミンが挙げられる。
本発明の半芳香族ポリアミドは高融点を有するものである。具体的には、その融点は280〜340℃であることが好ましい。得られるポリアミドの融点が280℃未満の場合は耐熱性が不足するため好ましくない。また、融点が340℃より高い場合は、実使用において、得られる半芳香族ポリアミドを成形などに付する場合に、ポリアミドの分解が促進され、成形性が低下するため好ましくない。
本発明のポリアミド中に含まれるトリアミン単位は、ジアミン単位の0.3モル%以下であることが必要であり、さらに好ましくは0.2モル%以下である。ポリアミド中のトリアミン構造がジアミン単位の0.3モル%を超える場合には、結晶性の低下やゲル化が発生するため好ましくない。
ゲル化を抑制する観点からは、ポリアミド中に含まれるトリアミン単位は少なければ少ないほうがよい。
上記のトリアミン単位をジアミン単位の0.3モル%以下とするためには、ジカルボン酸成分とジアミン成分とから塩を生成するに際し、水の含有量を、原料モノマーの合計100質量部に対して5質量部以下に制御し、かつ重合開始から終了するまでの温度を生成するポリアミドの融点未満の温度とすることが肝要である。これらについて以下に述べる。
ナイロンの加熱重合反応を均一的に進行させるために、水の共存下、原料を混合し、加熱して脱水反応を進行させる方法が用いられている。しかしながら、このような方法においては、重合時の水分量が、原料モノマーの合計100質量部に対して5質量部を超えて多くなると、重合度の上昇が抑制されるという問題がある。その場合、アミン末端が多い状態での重合装置中の滞留時間が長くなり、ジアミン同士の縮合反応により副生成するトリアミン量が増加する。その結果、ポリアミドの一部が架橋構造をとり、ゲル化を促進する。そして、非特許文献1にも示されるとおり、半芳香族ポリアミドでは、トリアミンの生成が脂肪族ポリアミドより顕著である。従って、本発明の半芳香族ポリアミドのように、トリアミン単位がジアミン単位の0.3モル%以下であるポリアミドを得るためには、水の含有量を、原料モノマーの合計100質量部に対して5質量部以下とすることが好ましく、実質的に水を配合させないことがより好ましい。
一般的なポリアミドを製造する方法としては、溶融重合法、溶融押出法、固相重合法などの加熱重合法や、溶液重合法などが挙げられる。しかしながら、本発明の半芳香族ポリアミドの融点は、280℃〜340℃と高く分解温度に近いものである。そのため、アミド結合が熱分解され、トリアミン量が増加する原因となる生成ポリマーの融点以上の温度で反応させる溶融重合法や溶融押出法は不適当である。したがって、本発明の半芳香族ポリアミドは、生成するポリアミドの融点未満の温度で重合をおこなう固相重合によって得ることが好ましい。
本発明の半芳香族ポリアミドにおいては、その結晶性が特定の範囲に制御されていることが好ましい。本発明における結晶性の指標としては、示差走査熱量計を用いて測定した過冷却度ΔTを用いることができる。この過冷却度ΔTは40〜75℃であることが好ましく、45〜70℃であることがより好ましい。過冷却度ΔTが40℃未満である場合は、結晶性が高くなりすぎるため、成形性が低下する場合がある。一方、75℃を超える場合は、結晶性に劣るものなり、成形性が低下する場合がある。なお、この過冷却度ΔTは、当該ポリアミドの融点(以下、「Tm」と略称する場合がある。)と降温結晶化温度(以下、「Tcc」と略称する場合がある。)との差、つまり、(Tm−Tcc)であると定義される。過冷却度ΔTが小さい程、ポリマー溶融状態からの結晶化が速く、高結晶性を有するポリアミドを得ることができる。
なお、上述のようにΔTを40〜75℃とするためには、炭素数が7、9または11であるジアミン成分を用いることが肝要である。
上記のようにして得られたポリアミドの相対粘度は、特に限定されず、目的に応じて適宜設定すればよい。例えば、成形加工が容易なポリアミドを得ようとすれば、相対粘度を1.80以上とすることが好ましい。
次に本発明の半芳香族ポリアミドの製造方法について説明する。
本発明の半芳香族ポリアミドは、たとえば、以下の工程(i)、(ii)、(iii)を含む製造方法により製造することが好ましい。
工程(i):モノマーとしての芳香族ジカルボン酸とジアミンを、融点の低い方のモノマーの融点以上で混合し、混合液を得る工程。
工程(ii):工程(i)で得られた混合液を、生成するポリアミドの融点未満の温度で、芳香族ジカルボン酸とジアミンとの反応による塩の生成反応と、前記塩の重合による低重合体の生成反応とをおこない、塩および低重合体の混合物を得る工程。
工程(iii):工程(ii)で得られた混合物を、生成するポリアミドの融点未満に保ち、固相重合する工程。
まず、工程(i)について説明する。
工程(i)は、モノマーとしての芳香族ジカルボン酸とジアミンとを、融点の低い方のモノマーの融点以上で混合し、混合液を得る工程である。混合温度を融点の低い方のモノマーの融点以上とすることで、ジカルボン酸とジアミンは、一方のモノマーが他方のモノマーを溶媒として溶解している状態となるか、あるいは両方のモノマーが液状で混合している状態となる。
工程(i)において、混合温度が、融点の低い方のモノマーの融点未満の温度である場合、両モノマーがいずれも固体の状態で存在するため、ジアミンと芳香族ジカルボン酸を均一に混合することが困難となる。そのため、続く工程(ii)において塩が生成されないか、もしくは塩が生成されたとしても物性等が不均一な塩が得られてしまう。その結果、この塩の重合により得られたポリアミドの低重合体においては、重合度の斑が大きくなり、物性等が不均一な低重合体が得られるので好ましくない。
工程(i)において、混合温度は、80〜150℃とすることが好ましく、80〜120℃とすることがより好ましい。混合温度が80℃未満であると、混合が不十分となるため好ましくない。一方、混合温度が150℃を超えると、塩の生成が始まってしまうため好ましくない。
工程(i)において、混合する時間は、十分な混合の観点から、混合すべき温度に達してから、0.1〜2時間が好ましく、0.1〜1.0時間がより好ましい。
なお、工程(i)においては、系内の熱斑を小さくすることを目的として、原料とともに、水および/または有機溶剤を用いてもよい。その添加量は、原料モノマーである芳香族ジカルボン酸とジアミンの合計100質量部に対して、5質量部以下とすることが好ましく、2質量部以下がより好ましく、全く使用しないことが特に好ましい。添加する水および/または有機溶剤の含有量をこの範囲に抑制することで、水および/または有機溶剤を留去する工程を設けることなくポリアミドを生成することができる。また、結晶性の低下やゲル化の原因となる副生成物であるトリアミンの生成量を3モル%以下に抑制することができる。
次に、工程(ii)について説明する。
工程(ii)は、最終的に生成するポリアミドの融点未満の温度で、芳香族ジカルボン酸とジアミンの反応による塩の生成と、前記塩の重合による低重合体の生成を行い、塩および低重合体の混合物を得る工程である。
工程(ii)においては、塩が生成されるにともない芳香族ジカルボン酸とジアミンが徐々に減少する。同時に、低重合体が生成されるにともない塩が徐々に減少する。そして、工程(ii)の終了時には、塩と低重合体のポリアミドとすることができる。なお、工程(ii)の終了は、モノマーの反応率が90%以上になることを目安とすることができ、モノマー反応率の求め方は、後述の実施例において説明する。
工程(ii)において、反応温度は、生成するポリアミドの融点未満とすることが必要である。該温度が生成するポリアミドの融点以上の場合、アミド結合の熱分解が促進され、色調が悪くなったり、重合途中に副生するトリアミンの生成量が多くなったりするという問題がある。
工程(ii)の反応温度は、150〜270℃が好ましく、150〜250℃がより好ましい。この温度が150℃未満であると、反応が進行しない場合があり、一方、270℃を超えると、アミド結合の熱分解が促進されて、得られるポリアミド中のトリアミン量が多くなる場合がある。
工程(ii)の反応時間としては、十分に反応を進行させる観点から、前記反応温度に達してから、0.1〜10時間が好ましく、0.1〜5時間がより好ましい。
工程(ii)において、生成する塩および低重合体は、固体状である。本発明においては、その後の反応を均一に進行させる観点から、固体状の塩および低重合体を破砕してもよい。破砕をおこなう場合には、一旦反応物を取り出し、破砕してから固相重合を行ってもよいし、反応させながら破砕を行ってもよい。工程(ii)にて存在する物質は、塩または低重合体の状態であるため、容易に破砕を行うことができる。
次に、工程(iii)について説明する。
工程(iii)は、工程(ii)で得られた塩と低重合体の混合物を、生成するポリアミドの融点未満の温度に保ったまま固相重合し、所定の分子量まで高分子量化させ、ポリアミドを得る工程である。
工程(iii)においては、生成するポリアミドの融点未満の温度に保って、固相重合温度を行うことが必要である。反応温度(固相重合温度)が生成するポリアミドの融点以上の温度である場合、ゲル化の原因となるトリアミン量が多くなり、また、熱分解が促進され、ポリアミドの色調が悪くなるので好ましくない。
なかでも、固相重合温度は、180〜270℃とすることが好ましく、200〜250℃とすることがより好ましい。固相重合温度が180℃未満であると、重合が進行しない場合がある。一方、270℃を超えるとアミド結合の熱分解が促進されて、得られるポリアミド中のトリアミン量が多くなる場合がある。
工程(iii)における固相重合反応は、窒素などの不活性ガス気流中でおこなってもよく、減圧下でおこなってもよい。また、静置しておこなってもよく、攪拌しながらおこなってもよい。
工程(iii)における固相重合反応の反応時間としては、重合度と生産性の観点から、反応温度に達してから0.5〜100時間の範囲であることが好ましく、0.5〜24時間がより好ましく、0.5〜10時間がさらに好ましい。
本発明の半芳香族ポリアミドを製造するに際し、重合触媒を用いてもよい。触媒は、工程(i)、工程(ii)、工程(iii)いずれの工程で添加してもよいが、重合反応の速度を増大させ、重合効率を向上させる観点から、工程(i)で添加することが好ましい。
重合触媒としては、特に限定されないが、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸またはそれらの塩等を用いることができる。触媒の使用量は、生成するポリアミドの品質向上の観点から、原料モノマーである芳香族ジカルボン酸とジアミンの合計のモル数(100モル%)に対して、2モル%以下が好ましく、1モル%以下がより好ましい。
本発明の半芳香族ポリアミドを製造するに際し、重合度の調整、分解や着色の抑制等を目的として、ポリアミドの末端基を封鎖するための末端封鎖剤を加えることが好ましい。末端封鎖剤は、工程(i)、工程(ii)、工程(iii)いずれの工程で添加してもよい。
末端封鎖剤としては、ポリアミドの末端基との反応性の観点から、モノカルボン酸、モノアミンが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。モノカルボン酸としては、酢酸、ラウリン酸、安息香酸等が挙げられる。モノアミンとしては、オクチルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン等が挙げられる。
末端封鎖剤の使用量は、生成するポリマーの分子量の観点から、原料モノマーである芳香族ジカルボン酸とジアミンの合計のモル数(100モル%)に対して、5モル%以下が好ましく、2モル%以下がより好ましい。
本発明の半芳香族ポリアミドを製造するに際し、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、重合触媒や末端封鎖剤以外の添加剤を加えてもよい。添加剤としては、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤等が挙げられる。これらの添加剤は任意の段階で添加することができる。
本発明の半芳香族ポリアミドは、射出成形、押出成形、ブロー成形等の公知の成形方法により、本発明の成形体とすることができる。成形加工する場合、繊維状補強材、充填材、顔料等を添加してもよい。繊維状補強材としては、ガラス繊維や炭素繊維等が挙げられる。充填材としては、タルク、膨潤性粘土鉱物、シリカ、アルミナ、ガラスビーズ、グラファイト等が挙げられる。顔料としては、酸化チタン、カーボンブラック等が挙げられる。
本発明の成形体は、耐熱性、機械強度、成形性に優れているため、トランスミッション周り、エンジン周り、ランプ周りで使用する自動車部品や電気・電子部品として使用できる。トランスミッション周りの自動車部品としては、シフトレバー、ギアボックス等の台座に用いるベースプレート等が挙げられる。エンジン周りの自動車部品としては、シリンダーヘッドカバー、エンジンマウント、エアインテークマニホールド、スロットルボディ、エアインテークパイプ、ラジエータタンク、ラジエータサポート、ラジエータホース、ウォーターポンプレンレット、ウォーターポンプアウトレット、サーモスタットハウジング、クーリングファン、ファンシュラウド、オイルパン、オイルフィルターハウジング、オイルフィルターキャップ、オイルレベルゲージ、タイミングベルトカバー、エンジンカバー等が挙げられる。ランプ周りの自動車部品としては、ランプリフレクタ、ランプハウジング、ランプエクステンション、ランプソケット等が挙げられる。また、電気・電子部品としては、コネクタ、LEDリフレクタ、スイッチ、センサー、ソケット、コンデンサー、ジャック、ヒューズホルダー、リレー、コイルボビン、抵抗器、ICやLEDのハウジング等が挙げられる。
また、本発明の半芳香族ポリアミドは、Tダイ押出、インフレーション成形により各種フィルム、シートなどの成形体とすることができる。これらのフィルムやシートは、スピーカー振動版、フィルムコンデンサ、絶縁フィルムとして使用できる。
また、本発明の半芳香族ポリアミドは、溶融紡糸法、フラッシュ紡糸法、エレクトロスピニング法により各種繊維などの成形体とすることができる。これらの繊維は、高耐熱産業資材用繊維として、エアーバッグ基布、耐熱フィルター等として使用できる。
次に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
各種の物性測定は以下の方法によっておこなった。
(1)ポリアミドの相対粘度
96%硫酸を溶媒とし、濃度1g/dL、25℃で測定した。
(2)降温結晶化温度、融点、過冷却度
パーキンエルマー社製示差走査型熱量計DSC−7を用い、昇温速度20℃/分で350℃まで昇温した後、350℃で5分間保持した。その後、降温速度20℃/分で25℃まで降温した際の発熱ピークのトップを与える温度を降温結晶化温度(Tcc)、さらに25℃で5分間保持後、再び昇温速度20℃/分で昇温測定した際の吸熱ピークのトップを融点(Tm)とした。融点と降温結晶化温度の差(Tm−Tcc)を過冷却度(ΔT)とした。
(3)トリアミン量
ポリアミド10mgに47%臭化水素酸を3mL加え、130℃で16時間加熱後、室温まで放冷した。そこに20%水酸化ナトリウム水溶液を5mL加えて試料溶液をアルカリ性にした後、分液ロートに移してクロロホルムを8mL加えて撹拌した後静置した。その後、クロロホルム相を採り、濃縮した。これにクロロホルム1.5mLを加え、これをメンブランフィルターで濾過したものを測定試料とした。この測定試料を、質量分析計を備えたガスクロマトグラフィー装置(アジレント・テクノロジー社製、商品名「Agilent 6890N」)で分析した。ジアミンとトリアミンを標準試料として作成した検量線を用いて、ポリアミド中のジアミンとトリアミンを定量し、ジアミンに対するトリアミンのモル比を算出した。ジアミンの標準物質は、重合に用いたジアミンを用いた。また、トリアミンの標準物質は、酸化パラジウムを触媒として用いて、オートクレーブ中にて重合に用いたジアミンを240℃で3時間加熱攪拌して反応させて得たトリアミン化合物を用いた。
(4)荷重たわみ温度
ASTM D648に従って、荷重1.8MPaで熱変形温度を測定した。成形片は、射出成形機(東芝機械社製、「I100E−i3AS」)を用いて、340℃で作製した。
(5)成形性
(4)の成形片を100個連続して作製した。得られた成形片を目視で観察し、ヒケやバリがない成形片の個数から、以下の基準で評価した。
○:ヒケやバリがない成形片の数が90個以上である。
△:ヒケやバリがない成形片の数が50〜89個である。
×:ヒケやバリがない成形片の数が49個以下である。
(6)耐ゲル性
(4)の成形片を100個連続して作製した。得られた成形片を目視で観察し、ゲル化物のある成形片の個数から、以下の基準で評価した。
○:ゲル化物のある成形片の数が9個以下である。
×:ゲル化物のある成形片の数が10個以上である。
(7)モノマーの反応率
ポリアミド30mgにメタノール10mLを加え、懸濁液を作製した。この懸濁液を1時間放置した後、ディスクフィルターで濾過したものを、試料溶液とした。その後、この試料溶液を質量分析計付帯のガスクロマトグラフィー装置(アジレント・テクノロジー社製、商品名「Agilent 6890N」)で分析した。そして、原料モノマーのジアミンを標準試料として作成した検量線を用いて、ポリアミド中の未反応ジアミンを定量し、ジアミンの反応率を計算した。
実施例および比較例で用いた原料を以下に示す。
(1)ジカルボン酸成分
・テレフタル酸(融点:300℃以上)
・イソフタル酸(融点:343℃)
・2,6−ナフタレンジカルボン酸(融点:300℃以上)
・アジピン酸(融点:152℃)
(2)ジアミン成分
・1,7−ヘプタンジアミン(融点:28℃)
・1,9−ノナンジアミン(融点:36℃)
・1,11−ウンデカンジアミン(融点:45℃)
・1,12−ドデカンジアミン(融点:68℃)
実施例1
[工程(i)]
ジアミン成分として1,7−ヘプタンジアミン(4350質量部)、芳香族ジカルボン酸成分として粉末状テレフタル酸(5540質量部)、末端封鎖剤として安息香酸(97質量部)、重合触媒として次亜リン酸ナトリウム一水和物(11質量部)をオートクレーブに入れ、80℃で、回転数28rpmで撹拌を開始して、1時間加熱した。
[工程(ii)]
工程(i)の混合物を、回転数を28rpmに保ったまま240℃に昇温した。その後240℃で3時間加熱した。加熱を終了し、反応により生じた水蒸気を放圧後冷却した。なお、得られた塩および低重合体の混合物は破砕されていた。
[工程(iii)]
工程(ii)で得られた混合物を、常圧窒素気流下、240℃で5時間加熱し、モノマーの反応率が90%以上になるまで重合した。得られたポリアミドの相対粘度、融点、降温結晶化温度、過冷却度、トリアミン量を表1に示す。さらに、使用したモノマー、製造条件、ポリアミド樹脂の特性値および成形片の特性値を表1に示す。
Figure 2012172056
なお、表1中の略語は以下のものを示す。
TPA:テレフタル酸
IPA:イソフタル酸
NDA:2,6−ナフタレンジカルボン酸
ADA:アジピン酸
HA:1,7−ヘプタンジアミン
NA:1,9−ノナンジアミン
UA:1,11−ウンデカンジアミン
DDA:1,12−ドデカンジアミン
得られたポリアミドを、射出成形機(東芝機械社製、「I100E−i3AS」)を用いて樹脂温度340℃で成形し、試験片を作製した。曲げ強度、弾性率、荷重たわみ温度、成形性、ゲルの有無についての評価結果を表1に示す。
実施例2〜7、比較例1〜3
使用するモノマーの種類、水の添加量および製造条件を表1のように変更する以外は、実施例1と同様にして半芳香族ポリアミドを得、評価を行った。評価結果を表1に示す。
実施例1〜10で得られた半芳香族ポリアミドは、ポリアミド中に含まれるトリアミン単位がジアミン単位の0.3モル%以下であったため、ゲル化が抑制されていた。さらに過冷却度が本発明における好ましい範囲であったため、高い成形性を有するものであった。加えて、実施例1〜10で得られた半芳香族ポリアミドからなる成形体は、耐熱性に優れていた。
実施例1で得られた半芳香族ポリアミドは、ジアミン成分として、1,7−ヘプタンジアミンを用いたため、高い融点を有していた。
実施例1〜3では、水を添加せずに重合を行なったため、トリアミン量を0.17モル%以下に低減することができ、ゲル化を効果的に抑制することができた。さらに、実施例2および3では、ΔTが45〜70℃の範囲であったため、特に成形性に優れるものとなった。
実施例4および5では、主成分としてのジアミン成分および芳香族ジカルボン酸成分の他に、5モル%以下のその他の共重合成分を用いた。その結果、ΔTが45〜70℃の範囲となり、特に成形性に優れるものとなった。
実施例6においては水が添加されていたが、その添加量がモノマーの合計100質量部に対して5質量部以下であった。そのため、トリアミン量は本発明に規定する範囲となり、十分に実用に耐えうるものであった。
実施例8においては工程(i),(ii),(iii)の温度を本発明の好ましい範囲としたため、トリアミン量は本発明に規定する範囲となり、十分に実用に耐えうるものであった。
実施例9では、主成分としてのジアミン成分および芳香族ジカルボン酸成分の他に、その他の共重合成分を用いたが、ΔTが40〜75℃の範囲となり、十分に実用に耐えうるものであった。
実施例10では、主成分としてのジアミン成分および芳香族ジカルボン酸成分の他に、その他の共重合成分を用いた。その結果、ΔTが40〜75℃の範囲外となり、実用には耐えるものの若干成形性に劣るものであった。
比較例1においては、ジアミン成分として炭素数が偶数個である1,12−ドデカンジアミンを用いた。そのため、結晶性が高くなり過ぎて過冷却度が本発明の好ましい範囲からはずれてしまった。その結果、成形性に劣ってしまい、得られた成形片にバリやヒケが多く見られた。
比較例2は、工程(i)における塩の生成温度、および(ii)における固相重合反応温度が275℃と高いものであった。そのため、アミド結合の熱分解が促進され、ポリアミド中に含まれるトリアミン単位が、ジアミン単位の0.3モル%を超えるものとなった。その結果、連続して成形した場合、ゲル化が発現している成形片が大量に発生した。
比較例3は、原料モノマーの合計100質量部に対して、5質量部を超える水を配合した。そのため、ポリアミド中に含まれるトリアミン単位が、ジアミン単位の0.3モル%を超えるものとなった。そのため、連続して成形した場合、ゲル化が発現している成形片が大量に発生した。
比較例4は、原料ジカルボン酸として脂肪族ジカルボン酸のアジピン酸を用いたため、融点や荷重たわみ温度が非常に低く、耐熱性の樹脂としては到底利用できないものであった。

Claims (6)

  1. 芳香族ジカルボン酸成分とジアミン成分とからなる半芳香族ポリアミドであって、ジアミン成分が1,7−ヘプタンジアミン、1,9−ノナンジアミンまたは1,11−ウンデカンジアミンのいずれかであり、かつ半芳香族ポリアミド中のジアミン単位に対するトリアミン単位が0.3モル%以下であることを特徴とする半芳香族ポリアミド。
  2. 芳香族ジカルボン酸成分が、テレフタル酸であることを特徴とする請求項1に記載の半芳香族ポリアミド。
  3. ポリアミド中に、主成分である芳香族ジカルボン酸成分およびジアミン成分以外の、芳香族ジカルボン酸成分および/またはジアミン成分が、原料モノマーの総モル数100モル%に対して5モル%以下の割合で共重合されていることを特徴とする請求項1または2に記載の半芳香族ポリアミド。
  4. 示差走査型熱量計を用いて測定される融点が280〜340℃であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の半芳香族ポリアミド。
  5. 示差走査型熱量計を用いて測定される過冷却度ΔTが40〜75℃であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の半芳香族ポリアミド。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の半芳香族ポリアミドを成形してなる成形体。
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