JP2012177609A - 高分子材料のモデル作成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】変性ポリマーとフィラーとを含有する高分子材料について、結合条件を設定した粗視化分子動力学法に基づいて計算によって、該変性ポリマーと該フィラーとが結合した数値解析モデルを作成する方法であって、計算の収束速度が速く、かつ、不自然な状態が生じないモデル作成方法を提供する。
【解決手段】変性ポリマーとフィラーとを含有する高分子材料のモデルを作成するモデル作成方法において、該変性ポリマーと該フィラーとの間に結合距離を設定せずに、該変性ポリマーと該フィラーとの間の相互作用のみを他の粒子間の相互作用よりも大きくさせた状態で相互作用を働かせる分散工程と、前記変性ポリマーとフィラーとの間の結合距離を設定し、前記変性ポリマーとフィラーとの間の相互作用を前記分散工程よりも小さくさせた状態で粒子間に相互作用を働かせる反応工程とを有することを特徴とするモデル作成方法。
【選択図】図5

Description

本発明は、変性ポリマーにフィラーを配合した高分子材料のモデルの作成方法に関し、特に、結合条件を設定した粗視化分子動力学法に基づく計算によって、該変性ポリマーと該フィラーとが結合した高分子材料の数値解析モデルを作成する方法であって、計算の収束速度が速く、かつ、物理化学的に不自然な状態が生じないモデル作成方法に関するものである。
従来からゴムや樹脂等の高分子ポリマーにカーボンブラックやシリカ等のフィラーを配合すると補強効果があることが知られており、高分子ポリマーにフィラーを配合したゴム材料等の高分子材料が、例えば、自動車用タイヤ等の高分子材料製品に適用されている。前記高分子材料は、高分子を含む材料であれば特に限定されないが、好ましくは天然ゴム、合成ゴム、合成樹脂等を含む有機高分子材料が好適である。このようなフィラー充填ゴム等の高分子材料では、粗視化分子動力学法や第一計算原理に基づくシミュレーション方法等が行われている(下記特許文献1−3参照)。
分子動力学( Molecular Dynamics : MD)計算は、コンピュータ装置を用いたシミュレーションの一種であり、解析の対象となる高分子材料の分子構造に基づいて多数の原子又は分子等の集合体からなる粒子を配置したモデルを設定し、配置した全ての粒子が古典力学に従うものとしてニュートンの運動方程式を適用し、各時刻における全ての粒子の動きを追跡する手法である。該分子動力学計算によれば、粒子の微視的な運動をできる限り正確に追跡することができ、実験結果などに頼らずに、物質の性質や運動を明らかにすることができる。また、追跡時間等を調節することにより、粒子の初期配置に依存しない正確なシミュレーション結果を得ることができる。ただし、カーボンブラックとポリマーとの界面のエネルギー状態は、経験的な原子間相互作用と大規模な分子動力学法で計算可能であるが、計算中に多くの近似を含むため、計算精度が低くなるという問題がある。
粗視化とは、多数の原子からなる系を計算する方法の1つであり、複数の原子又は分子等の集合体を計算単位とする計算方法である。粗視化によって、計算単位数が大幅に減少し、多数の原子からなる系を通常の汎用計算機で扱うことが可能となる。ただし、粗視化が荒すぎると、分子構造の特徴が失われ、すり抜け等の問題を生ずるため、適正な粗視化レベルの選択を要する。たとえば、ゴム材料などの高分子材料では、複数の原子からなるイソプレン等のゴムモノマーが鎖状に多数重合した高分子であり、高分子を構成する原子が互いに絡み合っており、高分子が多数集合して系をなしている。膨大な量の原子の挙動を逐一計算機で扱うことは現実的ではない。そこで、計算機で扱える粗さの計算単位であり、かつ、計算目的である高分子系としての特性が把握できるきめ細かさの計算単位での粗視化が計算に用いられる。
複数の原子又は分子等をまとめた粗視化ユニットが多数集合した系としてシミュレーション対象の系を表し、粗視化ユニット間の相互作用を計算することによってシミュレーションを実行する粗視化分子動力学が利用されており、大規模な系を長時間にわたってシミュレーションできる。例えば、イソプレンが重合したゴム分子の場合、所定数のイソプレンが鎖状に重合したポリイソプレンを粗視化ユニットとし、この粗視化ユニットを複数鎖状に結合させてゴム分子を表し、多数のゴム分子を集合させてゴム材料を表すことができる。数個のモノマーユニットからなる集合体を1粒子(1粗視化ユニット)とする場合、粒子数はおよそ1/10〜1/100となり、粒子数の二乗に比例する粒子間相互作用の計算時間は1/102〜1/104、質量も1/102〜1/103と短時間化でき、質量の平方根に反比例するタイムステップは10-30倍と高速化でき、結合サイズも5-10倍、空間スケールも5-10倍に拡大できる。
粗視化分子動力学法に基づくシミュレーションとしては、粒子間に働く力として、レナード・ジョーンズポテンシャルに基づくものが一般的に用いられている。
レナード・ジョーンズポテンシャルU(r)は、式1で表される。
式1 U(r)=4ε[(σ0/r)12−(σ0/r)6]
ここで、rは、粒子間の距離である。σ0は、基準長であり、粒子間の結合長と同じ1(単位長さ)とすることが多い。εは、粒子間力を反映した係数である。-6乗の引力項は、二つの原子の間の分散力、すなわち双極子−双極子間の相互作用によるものであり、-12乗の斥力項は、電子雲の重なりによって反発力、すなわちパウリの排他律によるものである。図1に示すように、rが所定のパラメーターσ0以下では、U(r)は0以上の非常に大きな値となり、r>σ0では、U(r)は0以下となる。r=21/6σ0でU(r)は極小値をとる。粒子間に働く力は、ポテンシャルの微分で表わされるため、レナード・ジョーンズポテンシャルU(r)の下では、r≦21/6σ0の状態では粒子間に大きな斥力が発生し、r>21/6σ0の状態では粒子間に引力が発生する。即ち、レナード・ジョーンズポテンシャルU(r)のパラメーターσ0は、隣接する粒子の半径の和に相当し、同種類の粒子間では粒子の直径に相当すると解釈できる。
また、引力、斥力を調整するには、これらのポテンシャルを計算する上限距離(カットオフ距離)を変更する方法が一般的に行われている。斥力のみとする場合には、21/6σ0=1.122σ0を上限距離(カットオフ距離)とし、引力を考慮する場合には、一般に上限距離(カットオフ距離)を2.5σ0とするものである。
また、分子動力学法計算において、計算モデル内で粒子同士が、所定の距離(この距離を結合距離という)よりも近づいた場合に、粒子同士を結合させるという化学反応を模擬した計算手法がある。例えば、ゴム分子間の架橋のモデル化に用いられている。
特開2007−107968号公報 特開2006−064658号公報 特開2007−233859号公報
フィラー充填ゴム系において、特にフィラーにシリカを用いたものにおいては、変性ポリマーなどが用いられ、これらをモデル化する必要がある。ここで、変性ポリマーとは、ポリマーの一部、好適にはその末端部がフィラーと化学結合する若しくは親和性が高い性質を有する材料成分をいう。例えば、末端にカーボンブラックと化学結合する若しくは親和性が高いアミン官能基を有する変性ポリマー、末端にシリカと化学結合する若しくは親和性が高いアルコキシ官能基やシラノール官能基を有する変性ポリマー、アミン官能基とアルコキシ官能基やシラノール官能基を同時に有する変性ポリマーが挙げられる。
フィラーと変性ポリマーの反応に関しても、上述の分子動力学法に基づき、距離に応じて結合させる計算方法の適応が考えられる。分子動力学法で計算した両者の距離が、設定した結合距離よりも短い場合に、両者に結合反応が起こり、結合が生ずるという条件を設定する計算方法である。
ゴム分子間の架橋のモデル系では、ゴム分子や架橋剤の濃度(密度)が高く、架橋剤も低分子であるため、動きが速く、実際の架橋現象を計算でシミュレーションできる。しかしながら、フィラーと変性ポリマーの反応系では、変性ポリマーの変性部が、フィラー近傍に必ずしも近づかない。実際の現象と同じように反応させるには、極めて長い計算時間が必要となる。現在の市販汎用型計算機能力では、1年以上を要するため、実質上計算不可能といえる。分子動力学法数値解析での時間スケールは、数ナノ秒刻みであり、計算時間が累積でもマイクロ秒オーダーが現実的な範囲であり、数分から数十分という現実の反応時間にくらべて桁違いに短い時間しかシミュレーションをなしえない。
これは、ゴム分子間の架橋のモデルと比べると、変性ポリマー等の濃度(密度)が低く、かつ、変性ポリマーの変性部の動きが遅いためと推定される。
特に、変性ポリマーの変性部は、分子量の大きなポリマーの一部であるため、特に動きが遅い。通常のポテンシャルを用いて距離が近づいた場合に反応する条件では、オリゴマー規模の系ではまだしも、高分子系においては、結合すら生じない。
また、フィラーと変性ポリマー等の反応系で、親和性の高さを反映させるため、大きな結合距離を設定する(結合反応を活性化する)計算方法も考えられる。確かに、オリゴマー系などにおいては、マイクロ秒オーダーで現実系を反映したような結合の形成が起こるシミュレーション結果も見られた。しかし、このような大きな結合距離を用いた場合には、系全体のポテンシャルエネルギーが異様に高くなる、計算が収束しなくなる、分子内に無理な応力が働くなどの問題が生じる。これは、図2に示したような、化学結合を構成する変性ポリマーの変性部等とフィラー間に、変性部でない部分の同一ポリマー鎖の分子や他のポリマー鎖の分子が入る、ポリマー鎖を超えてフィラーと変性ポリマー末端部等の間に結合が生ずるなどの不自然な状態、実際にはありえない構成が、モデル計算されているためと想定される。
このように、原理的には、粒子の微視的な運動をできる限り正確に追跡することができ、実験結果などに頼らずに、物質の性質や運動を明らかにすることができ、粒子の初期配置に依存しない正確なシミュレーション結果を得ることができる粗視化分子動力学法をフィラーと変性ポリマー等の反応系に実際に適用するには、依然として課題が存在している。
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、結合距離法で化学反応を模擬した粗視化分子動力学法に基づく計算によって、該変性ポリマーと該フィラーとが結合した高分子材料の数値解析モデルを作成する方法であって、計算の収束速度が速く、かつ、物理化学的に不自然な状態が生じないことが可能なモデル作成方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、特定の分散工程を組み合わせたモデル作成方法を見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明のモデル作成方法は、変性ポリマーとフィラーとを含有する高分子材料のモデルを作成するモデル作成方法において、該変性ポリマーと該フィラーとの間に結合距離を設定せずに、該変性ポリマーと該フィラーとの間の相互作用のみを他の粒子間の相互作用よりも大きくさせた状態で相互作用を働かせる分散工程と、前記変性ポリマーとフィラーとの間の結合距離を設定し、前記変性ポリマーとフィラーとの間の相互作用を前記分散工程よりも小さくさせた状態で粒子間に相互作用を働かせる反応工程とを有することを特徴とする。
ここで、前記変性ポリマーとフィラーとの間の結合距離とは、ポリマー端変性部とフィラー粒子が、分子動力学計算により近接した場合、結合を作成したと判定する閾値を言う。前記変性ポリマーとフィラーとの間の相互作用とは、ポリマー端変性部とフィラー粒子との相互作用を言う。前記他の粒子間の相互作用とは、前記変性ポリマーとフィラー以外の他の粒子間の相互作用を言う。例えば、ポリマー端変性部同士間の相互作用、ポリマー端変性部と変性部以外のポリマー構成部間の相互作用、変性部以外のポリマー構成部同士間の相互作用、フィラーと変性部以外のポリマー構成部間の相互作用などが挙げられる。
本発明のモデル作成方法の好適例においては、前記分散工程で、前記変性ポリマーとフィラーとの間の相互作用が一定値になるまで順次、前記変性ポリマーとフィラーとの間の相互作用を小さくすることを特徴とする。
本発明によれば、計算の収束速度が速く、かつ、物理的、化学的に不自然な状態が生じないモデル作成が可能となる。
一般的な粒子間の非結合ポテンシャルを示す特性図である。 比較例に見られる現実にはありえない不自然な状態を示す説明図である。 本発明のモデル作成方法の一例となるモデル作成システムの構成を示す図である。 モデル作成システムを構成するコンピュータの電気系要部構成の説明図である。 本発明のモデル作成方法の一例となるフローチャートである。 従来技術のフローチャートである。
以下に、図を参照しながら、本発明のモデル作成方法を詳細に説明する。図3は、本発明のモデル作成方法の一例となるモデル作成システムの構成を示す図であり、図4は、図3に示すモデル作成システムを構成するコンピュータの電気系要部構成の説明図である。
図3に示すモデル作成システム1は、コンピュータ2から構成されている。
コンピュータ2は、予め記憶された処理プログラムに従ってモデル作成の演算等をするコンピュータ本体3と、解析を行う際の各種条件を入力するためのキーボード等の入力装置4と、コンピュータ本体3の演算結果等を表示するディスプレイ5とから構成されている。また、コンピュータ本体3には、記録媒体7が挿抜等可能な記録媒体駆動ユニット6(以下、駆動ユニット6という)を具えている。
また、コンピュータ2は、図4に示す通り、装置全体の動作を司るCPU(中央処理装置)3aと、コンピュータ2を制御する制御プログラムを含む各種プログラムや各種パラメーター等が予め記憶されたROM3bと、各種データを一時的に記憶するRAM3cと、各種データや各処理プログラムを記憶するHDD(ハードディスクドライブ)3dと、入力装置4への操作を検出する操作入力検出部3eと、ディスプレイ5への各種情報の表示を制御するディスプレイドライバ3fと、駆動ユニット6に装着された記録媒体7とのデータの入出力を行う記録媒体I/F部3gとを具えている。
CPU3a、ROM3b、RAM3c、HDD3d、操作入力検出部3e、ディスプレイドライバ3f及び記録媒体I/F部3gは、システムバスBUS3hを介して相互に接続されている。従って、CPU3aは、ROM3b、RAM3c、HDD3dへのアクセス、ディスプレイドライバ3fを介したディスプレイ5への各種情報の表示、記録媒体I/F部3gを介しての駆動ユニット6に装着された記録媒体7へのアクセスを各々行うことができる。また、CPU3aは、入力装置4に対するキー操作を常時把握できる。
なお、各種処理プログラム及びデータ等は、駆動ユニット6を用いて記録媒体7に対して読み書き可能である。従って、各種処理プログラム及びデータ等を予め記録媒体7に記録しておき、駆動ユニット6を介して記録媒体7に記録された各処理プログラムを実行してもよい。また、記録媒体7に記録された各処理プログラムをHDD3dへ格納(インストール)して実行するようにしてもよい。さらに、シミュレーション装置1に接続された図示しない外部のサーバ装置とのデータやプログラム等をやりとりして実行するようにしてもよい。
また、入力装置4としては、キーボード、マウス、タッチパネル等がある。記録媒体7としては、記録テープ、フロッピー(登録商標)ディスク、CD−ROMやDVD等の光ディスクや、MD、MO等の光磁気ディスクがあり、これらを用いるときには、上記駆動ユニット6に代えてまたはさらに対応する読み書き装置を用いればよい。
ここで、図3に示すモデル作成システム1の構成は一例であり、公知の構成を必要に応じて適宜変更することができる。
次に、モデル作成システム1が実行するモデル作成方法の内容を説明する。図5は、モデル作成システム1が行うモデル作成計算処理の手順を示すフローチャートであり、図6は従来のモデル作成システムが行うモデル作成計算処理の手順を示すフローチャートである。CPU3aは、必要に応じてRAM3cにロードした各処理プログラムに従って、以下の処理を実行する。
[初期配置]
初期配置(S1)としては、たとえば、粗視化分子動力学法に基づくシミュレーションとして、粗視化モデルの設定(粒子数、分子数、計算ステップ数など)、ポリマー分子(分子量、分岐など)やフィラー(形状、サイズなど)などの構成要素の配置や設定、ポリマー−ポリマー間やポリマー−フィラー間などの相互作用(粒子間に働く力として、レナード・ジョーンズポテンシャルU(r)、粒子間の距離、基準長などや結合距離など)等の各種計算パラメーターのデータ設定がある。入力装置4または記録媒体7等からコンピュータ2へ初期配置データが送信され、開始信号を受けて、CPU3a等で演算処理等が行われる。本実施形態の1事例では、変性ポリマー分子については、粒子数を500、分子数を15分子、末端の2粒子は、フィラーとの距離が所定の結合距離よりも近づいた場合に、フィラーを構成する粒子と結合する粒子とし、フィラー粒子については、フィラー数を10として、半径4の球面内に収まるように、一辺が長さ1の立方体格子状に粒子を配置し、それぞれを立方体の辺でつなぎ固定する初期設定とした。変性ポリマーの分子数は多い程、実際に近づくが、計算が遅くなるため、10〜200が好ましい。また、変性ポリマーの粒子数は、想定するポリマーの分子量に応じて適宜設定でき、例えば、500〜5,000が好ましい。また、フィラーの粒子数は、想定するフィラーの粒径等に応じて適宜設定でき、例えば、5〜100が好ましい。
[平衡化計算]
シミュレーションでは、先ず、平衡化計算(S2)が行われる。所定の温度、密度(圧力)で、初期設定された構成要素について、平衡状態に到達できる所定の時間(本実施形態では、30,000τ)、分子動力学計算を行うことにより、初期構造の影響を無くして、ポリマーを絡ませる計算作業である。安定化ないし準安定化した平衡状態をモデル作成計算の出発点とする。この平衡化計算の条件として、積分の時間ステップや温度等は任意に定めることができる。本実施形態では、積分の時間ステップは0.006τ、温度は1.0εに制御される。
[分散工程(ポリマー端変性部−フィラーの近接化)]
ポリマー端粒子フィラー間相互作用のみを他の粒子間の相互作用よりも大きな値に変更することにより、ポリマー端とフィラーを近接化させる工程(S3)である。
変性ポリマー端とフィラーとの間に結合距離を設定せずに、変性ポリマー端とフィラーとの間の相互作用のみを他の粒子間よりも大きくさせた状態で相互作用を働かせ、分子動力学計算を行う。相互作用を調整する計算パラメーターとしては、レナード・ジョーンズポテンシャルのσ0、εを調整する。変性ポリマーとフィラーとの間のみで大きくし、最初に、遠距離まで引力を作用させる。また、該ポテンシャルを計算する上限距離(カットオフ距離)を大きくすることで、該遠距離まで働いた引力、斥力を調整する。σ0の初期に与える値としては、{(システム体積/粒子数)の三乗根−フィラー直径}/2で求められる平均粒子間距離をカットオフ倍率で除した値が適切である。なお、具体的には、σ0は、1.2〜5.0が好ましく、上限距離(カットオフ距離)は、1.5〜2.5σ0が好ましい。また、計算時間は、10τ〜10,000τが好ましい。また、ポリマー−フィラー間相互作用が一定値になるまで順次、ポリマー−フィラー間相互作用パラメーターを小さくするのが好ましい。順次小さくする段数は1〜3段が好ましい。レナード・ジョーンズポテンシャルのσ0、εを大きな値から徐々に本来の値に近づけることにより、分子を不自然な状態に導かない穏やかな速度で粒子の接近を行うことができる。また、該ポテンシャルを計算する上限距離(カットオフ距離)も徐々に小さくすることで、適正な範囲で引力、斥力を調整する。
[反応工程(ポリマー端変性部−フィラーと反応)]
結合距離を設定し、ポリマー−フィラー間相互作用を分散工程よりも小さくさせた状態で粒子間にポリマー−フィラー間相互作用を働かせ、分子動力学計算を行う(S4)。なお、本工程にかかるσ0は、1〜1.1が好ましく、上限距離(カットオフ距離)は、1.12〜2.5σ0が好ましい。また、計算時間は、10τ〜10,000τが好ましい。十分な接近が行われた計算ステップの後に、ポリマー端とフィラーが、分子動力学計算により、閾値(結合距離)より近接した場合、結合を作成したと判定する。結合距離が小さすぎると反応が生じなくなり、大きすぎると不自然な状態となる等問題が生じる。そこで、結合距離としては、1.1〜1.5が好ましい。
[モデル作成終了工程]
判定基準の充足(計算の収束など)又は計算終了条件の満了をもって、CPU3a等が行った計算結果であるモデル作成の数値データをRAM3cから記録媒体7等へ記録することでモデル作成を終了する。さらに、生成させたモデルを用いて、力学物性等の解析計算を行うことができる。例えば、終了の判定基準として末端30粒子中、15粒子が結合を作成する、計算終了条件として、計算時間20000ステップが挙げられる。
[評価]
終了の判定基準として、例えば、末端30粒子中、15粒子が結合を作成することを設定し、判定基準を充足するのに要したステップ数、および、結合した際の結合エネルギーの変化を測定することで評価を行った。
ステップ数が少ないほど、速く計算が収束していることを意味しており、また、結合エネルギーに変化がなければ、不適切な結合が生じていないことを意味している。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
実施例1においては、まず、変性ポリマー分子については、粒子数を500、分子数を15分子、末端の2粒子は、フィラーとの距離が所定の結合距離よりも近づいた場合に、フィラーを構成する粒子と結合する粒子とし、フィラー粒子については、フィラー数を10として、半径4の球面内に収まるように、一辺が長さ1の立方体格子状に粒子を配置し、それぞれを立方体の辺でつなぎ固定する初期設定(S1)とした。次に、平衡化計算(S2)を行い、ポリマーが絡んだ状況を計算空間に数値データで表現した。次に分散工程(S3)においては、まず、レナード・ジョーンズポテンシャルのパラメーターを、フィラー粒子と変性ポリマー端粒子間については、基準長σ0=2.0、上限距離(カットオフ距離)=5.0σ0に設定し、他の粒子間については、基準長σ0=1.0、上限距離(カットオフ距離)=1.112σ0に設定した。10,000ステップの計算により、フィラー粒子と変性ポリマー端粒子を近づけた。その後、フィラー粒子と変性ポリマー端粒子間について、基準長σ0=1.0、上限距離(カットオフ距離)=2.5σ0、結合距離=1.2σ0に設定し、結合の作成を数値計算した。ここで、レナード・ジョーンズポテンシャルのパラメーター値を変化させているのは、変性ポリマー粒子とフィラー粒子との間の相互作用のみである。他の粒子間の相互作用については、一定値に固定されている。つまり、初期の段階では、変性ポリマー粒子とフィラー粒子との間の相互作用のみを大きくし、その状態では結合を起こらないようにしておく。その後、変性ポリマー粒子とフィラー粒子との間の相互作用を元の状態に戻し、結合を含めた計算(S4)を行う。
反応工程(S4)において終了の判定基準である末端30粒子中、15粒子が結合を作成するのに要したステップ数は3,800ステップである。また、結合作成前の結合エネルギーは、4,900であり、結合作成後の結合エネルギーは、4,900と変化はなかった。計算時間が総計13,800ステップであったことから、速く計算が収束していることを意味し、結合エネルギーに変化がなかったことから、不適切な結合が生じていないことが分かる。一連の設定値、計算結果とその評価を表1にまとめて示した。
(実施例2)
実施例2において、実施例1と同様の初期設定(S1)、平衡化計算(S2)を行った。次に分散工程(S3)においては、まず、レナード・ジョーンズポテンシャルのパラメーターを、フィラー粒子と変性ポリマー端粒子間については、基準長σ0=2.0、上限距離(カットオフ距離)=5.0σ0に設定し、5,000ステップの計算後、基準長σ0=1.5、上限距離(カットオフ距離)=3.75σ0、と小さくし、さらに5,000〜10,000ステップの計算により、フィラー粒子と変性ポリマー端粒子を近づけた後、基準長σ0=1.0、上限距離(カットオフ距離)=2.5σ0、結合距離=1.2σ0に設定し、結合の作成を数値計算(S4)した。他の粒子間については、基準長σ0=1.0、上限距離(カットオフ距離)=2.5σ0に設定した。ここで、実施例1では1段階でいきなり元の値に戻しているが、実施例2では、2段階で元の値に戻している。
反応工程(S4)において終了の判定基準である末端30粒子中、15粒子が結合を作成するのに要したステップ数は800ステップである。また、結合作成前の結合エネルギーは、4,800であり、結合作成後の結合エネルギーは、4,800と変化はなかった。計算時間が総計10,800ステップであったことから、より速く計算が収束していることを意味し、結合エネルギーに変化がなかったことから、不適切な結合が生じていないことが分かる。基準長σ0、上限距離(カットオフ距離)が大きい値にある時間帯は、実施例1の方が長いにも関わらず、実施例2の方がはやく結合粒子数が増えていることがわかる。
(比較例1)
比較例1において、実施例1と同様の初期設定(S11)、平衡化計算(S12)を行った。次に、結合(反応)工程(S13)では、レナード・ジョーンズポテンシャルのパラメーターを、全ての粒子間について、基準長σ0=1.0、上限距離(カットオフ距離)=1.112σ0、結合距離=1.2σ0に設定し、結合の作成を数値計算(S13)した。
結合工程(S13)における20,000ステップの計算時(計算終了条件の満了時)でも11粒子が結合したのみであり、終了基準を満たせなかった。上限距離(カットオフ距離)=1.112σ0であるため、粒子間には斥力のみしか働かない。そのため、変性ポリマーの分散が遅く、変性ポリマー端がフィラーとの結合距離に入っていないことがわかる。
(比較例2)
比較例2において、実施例1と同様の初期設定(S11)、平衡化計算(S12)を行った。次に、結合工程では、レナード・ジョーンズポテンシャルのパラメーターを、全ての粒子間について、基準長σ0=1.0、上限距離(カットオフ距離)=2.5σ0、結合距離=1.2σ0に設定し、結合の作成を数値計算(S13)した。
結合工程(S13)における5,000ステップの計算後末端30粒子中13粒子、15,000ステップの計算後14粒子、19,000ステップの計算で15粒子が、結合を作成した。また、結合作成前の結合エネルギーは、4,900であり、結合作成後の結合エネルギーは、4,900と変化はなかった。上限距離(カットオフ距離)=2.5σ0であるため、粒子間には斥力だけでなく、引力も働くため、変性ポリマーは比較例1より速く動くことができることがわかる。しかし、フィラーとの結合距離に入っている変性ポリマー端の動きは速くない。このことは計算終了条件の満了時に近い19,000ステップを要することからも理解される。
(比較例3)
比較例3において、実施例1と同様の初期設定(S11)、平衡化計算(S12)を行った。次に、結合工程では、レナード・ジョーンズポテンシャルのパラメーターを、全ての粒子間について、基準長σ0=2.0、上限距離(カットオフ距離)=5.0σ0、結合距離=2.4σ0に設定し、結合の作成を数値計算(S13)した。
結合工程(S13)における200ステップの計算後、末端30粒子中15粒子が結合を作成した。また、結合作成前の結合エネルギーは、4,900であり、結合作成後の結合エネルギーは、5,300と増加した。σ0、上限距離(カットオフ距離)を非常に大きくしたため、変性ポリマーの動きが速く、変性ポリマー端が、フィラーとの結合距離に非常にはやく入ってきている。しかし、結合エネルギーが1割近く増加している。これは、結合が異常に伸びた状態であることを示している。粒子の間をこえて結合が生じているため、結合エネルギーが大きくなっている。
Figure 2012177609
※1:粒子数:ポリマー分子を構成する粗視化粒子の数
※2:分子数:ポリマー分子の数
※3:分子末端数:ポリマー分子末端の数(直鎖ポリマー系では、両末端であり、※2分子数の2倍)
※4:粒子数:フィラー粒子を構成する粗視化粒子の数
※5:粒子間力係数ε:1(ここでは基準単位量とした)
※6:総合評価:評価結果を総合的に判断した 良:○ 可:△ 不可:×
※7:終了の判定基準充足時のステップ数
※8:総ステップ数
※9:結合生成前の結合エネルギー
※10:結合生成後の結合エネルギー
表1の結果により、変性ポリマーを用いた系について、モデル作成計算の比較を行った。ポリマー−フィラー間の相互作用を小さな値で固定した比較例1および2と比較して、該相互作用を2段階以上の分散工程で計算した実施例1および2は、良好な結合の形成とより短時間の計算収束を示し、変性ポリマー−フィラー系に対して極めて優れたモデル作成性能を発揮することがわかる。また、ポリマー−フィラー間の相互作用を大きな値のまま固定した比較例3と比較すると、比較例3では結合エネルギーが異様に大きな値を示し、不自然な現象(ポリマー粒子を越えて結合が生じている等)を起こしていると評価されるのに対して、実施例1および2は、結合エネルギーの変化がなく、実際の現象に即した良好な結合の形成を示し、質的にも顕著な効果を奏することがわかる。
また、ポリマー−フィラー間の相互作用を1段階の分散工程で計算した実施例1と2段階の分散工程で計算した実施例2を比較すると、分散工程の段数が多く、順次の度合いとして、よりスムーズに相互作用を小さくする実施例2が同等もしくはより良好な結果を示すことがわかる。
つまり、従来の技術では、結合形成の計算速度が遅く、変性ポリマー−フィラー系について結合形成を重視しすぎると不自然な現象を起こし実際の現象に即した良好な結合を計算ができないと評価された。従来の技術では、系全体の相互作用パラメーターを一体に調整することが一般常識とされている。このため、高分子鎖に連結して運動性が束縛されやすい変性ポリマー端とフィラー間の相互作用パラメーターのみを調整することは、容易に想到しえない技術である。さらに、驚くべきことに、該相互作用パラメーターのみの調整により、量的にも質的にも顕著な効果が得られることは、当業者に予想しえない意外なものであり、容易には着想しえないものである。
1 モデル作成システム
2 コンピュータ
3 コンピュータ本体
4 入力装置(キーボード)
5 ディスプレイ
6 記録媒体駆動ユニット
7 記録媒体

Claims (2)

  1. 変性ポリマーとフィラーとを含有する高分子材料のモデルを作成するモデル作成方法において、
    該変性ポリマーと該フィラーとの間に結合距離を設定せずに、該変性ポリマーと該フィラーとの間の相互作用のみを他の粒子間の相互作用よりも大きくさせた状態で相互作用を働かせる分散工程と、
    前記変性ポリマーとフィラーとの間の結合距離を設定し、前記変性ポリマーとフィラーとの間の相互作用を前記分散工程よりも小さくさせた状態で粒子間に相互作用を働かせる反応工程とを有することを特徴とするモデル作成方法。
  2. 前記分散工程で、前記変性ポリマーとフィラーとの間の相互作用が一定値になるまで順次、前記変性ポリマーとフィラーとの間の相互作用を小さくすることを特徴とする請求項1に記載のモデル作成方法。
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