JP2012182096A - 燃料電池システムおよびその制御方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】燃料電池の発電性能の低下を抑制する技術を提供する。
【解決手段】燃料電池システム1000は、燃料電池100と、制御部200と、アノードガス供給部300と、アノードガス循環部350と、カソードガス供給部400とを備える。燃料電池100では、水素と酸素とが電解質膜1の面に沿って互いに対向し合う方向に流れる。制御部200は、燃料電池100の運転温度が第1の閾値以上であるときに、アノードガス循環部350が不活性ガス排出処理(ステップS20)を実行する頻度を増加させる(ステップS40)。また、制御部200は、燃料電池100の運転温度が、第1の閾値よりも高い第2の閾値以上であるときに、燃料電池100におけるアノードガスの流量を増大させる(ステップS60)。
【選択図】図5

Description

この発明は、燃料電池に関する。
燃料電池システムには、固体高分子形燃料電池を備えるものがある(下記特許文献1等)。固体高分子形燃料電池(以下、単に「燃料電池」とも呼ぶ)では通常、湿潤状態で良好なプロトン伝導性を示す電解質膜が用いられるため、その発電の際には、燃料電池内部の湿潤状態が良好に保持されることが好ましい。ここで、燃料電池の内部の水分が不足する場合には、電解質膜の一部の領域が乾燥してしまい、当該一部の領域が発電不能に陥り、その発電性能が低下してしまう、いわゆるドライアップが発生する場合がある。特に、燃料電池が高温(例えば80℃以上)で運転しているときに、このドライアップが生じて、発電性能が低下した場合には、その回復が困難であった。これまで、こうしたドライアップの発生を抑制し、燃料電池の発電性能の低下を抑制することについて十分な工夫がなされてこなかったのが実情であった。
特開2005−100827号公報 特開2009−032586号公報 特開2006−309977号公報 特開2005−203143号公報
本発明は、電解質膜の乾燥に起因する燃料電池の発電性能の低下を抑制する技術を提供することを目的とする。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
[適用例1]
燃料電池システムであって、電解質膜の両面に電極が配置された膜電極接合体を備え、燃料ガスと酸化ガスとが前記電解質膜の面に沿って互いに対向し合う方向に流れるように供給される燃料電池と、前記燃料電池に燃料ガスを供給する燃料ガス供給部と、前記燃料電池から排出された燃料ガスと不活性ガスとを含む排ガスを前記燃料電池に循環させ、所定の条件に従って、前記排ガスを外部へと排出することにより、前記排ガス中の不活性ガスの濃度を低減させる排ガス排出処理を実行する燃料ガス循環部と、前記燃料電池の運転温度を計測する温度計測部と、前記燃料ガス供給部と前記燃料ガス循環部とを制御して、前記燃料電池における燃料ガスの流量を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、
(i)前記温度計測部の計測値が第1の閾値以上であるときに、前記燃料ガス循環部が前記排ガス排出処理を実行する頻度が、前記計測値が前記第1の閾値よりも小さいときよりも増加するように、前記所定の条件を変更する第1の制御処理と、
(ii)前記計測値が前記第1の閾値よりも大きい第2の閾値以上であるときに、前記燃料電池における燃料ガスの流量が、前記計測値が前記第2の閾値より小さいときよりも増大するように制御する第2の制御処理と、
を実行する、燃料電池システム。
燃料電池において、燃料ガスと酸化ガスとを電解質膜の面に沿って互いに対向し合う方向に流す場合には、燃料ガスの流量を増大させることにより、燃料ガスの上流側(酸化ガスの下流側)の水分を、乾燥しやすい燃料ガスの下流側(酸化ガスの上流側)に誘導することができる。従って、燃料ガスの流量を制御することにより、電解質膜の酸化ガスの上流側の領域が乾燥して、燃料電池の発電性能が低下してしまうことを抑制することができる。
ここで、燃料電池が高温運転をしているときに、電解質膜の酸化ガスの上流側の領域が乾燥してしまうと、その乾燥状態を解消することが困難となる。これに対して、この燃料電池システムでは、燃料電池が高温となる前段階に実行される第1の制御処理において、不活性ガスの濃度を低減させることによって、燃料ガスを供給する際の圧力損失を予め低減させる。従って、燃料電池が高温となったときに実行される第2の制御処理において、圧力損失が低減された状態で燃料ガスの流量を効率的に増大させることができる。即ち、適用例1の燃料電池システムによれば、燃料電池の運転温度が高くなり、回復困難な電解質膜の乾燥が生じる可能性が高くなったときに、迅速に燃料ガスの流量制御を行うことができ、燃料電池の発電性能の低下を抑制することができる。
[適用例2]
適用例1記載の燃料電池システムであって、前記第2の制御処理は、前記燃料電池の運転温度の上昇に応じて前記燃料電池における燃料ガスの流量が増大するように制御する処理を含む、燃料電池システム。
この燃料電池システムによれば、燃料電池の運転温度が高いほど、燃料ガスの流量を増大させて、燃料ガス下流側へと移動する水分量を増大させることができる。従って、より確実に電解質膜の乾燥に起因する燃料電池の発電性能の低下を抑制することができる。
[適用例3]
適用例1または2記載の燃料電池システムであって、前記燃料ガス循環部は、前記排ガス中の燃料ガス濃度を計測する燃料ガス濃度計測部を備え、前記燃料ガス循環部は、前記燃料ガス濃度計測部の計測値が所定の閾値より小さくなったときに、前記排ガス排出処理を実行し、前記第1の制御処理は、前記所定の閾値をより大きい値に再設定する処理を含む、燃料電池システム。
この燃料電池システムによれば、排ガス中の燃料ガス濃度を確実に制御することができる。即ち、燃料電池の運転温度が第1の閾値より低い通常の運転状態では、排ガス排出処理において不活性ガスとともに燃料ガスが排出される量が低減されるように、燃料ガス濃度を、燃料電池の運転に支障がない程度の比較的低い濃度にしておくことができる。また、運転温度が第1の閾値以上となったときには、第2の制御処理に備えて、燃料ガス濃度を確実に低減させておくことができる。
[適用例4]
適用例1〜3のいずれか一項に記載の燃料電池システムであって、前記制御部は、
(iii)前記第1の制御処理を実行した後に、前記温度検出部の計測値が前記第1の閾値よりも小さくなったときには、前記燃料ガス循環部が前記排ガス排出処理を実行する頻度が、前記第1の制御処理を実行しているときよりも増加するように、前記所定の条件を変更する第3の制御処理と、
(iv)前記第2の制御処理を実行した後に、前記温度検出部の計測値が前記第2の閾値よりも小さくなったときには、前記第2の制御処理を実行していたときよりも、前記燃料電池における燃料ガスの流量が低下するように制御する第4の制御処理と、
を実行する、燃料電池システム。
この燃料電池システムによれば、燃料電池の運転温度が上下に変動する場合に、燃料電池が高温に近づいたときにのみ、燃料ガスの供給制御の態様が、第1と第2の制御処理に切り替えられる。従って、より効率的に燃料ガスの供給制御が行われ、燃料電池の発電性能の低下が抑制される。
[適用例5]
燃料電池システムにおいて、電解質膜の両面に電極が配置された膜電極接合体を備える燃料電池に対する燃料ガスの供給を制御する方法であって、
(a)前記燃料電池の前記膜電極接合体に、燃料ガスと酸化ガスとを供給し、前記電解質膜の面に沿って互いに対向し合う方向に流す工程と、
(b)前記燃料電池から排出された燃料ガスと不活性ガスとを含むアノード排ガスを前記燃料電池に循環させ、所定の条件に従って、前記アノード排ガスを外部へと排出することにより、前記アノード排ガス中の不活性ガスの濃度を低減させる排ガス排出処理を実行する工程と、
(c)前記燃料電池の運転温度を計測する工程と、
(d)前記運転温度の計測値が第1の閾値以上であるときに、前記排ガス排出処理が実行される頻度を、前記計測値が前記第1の閾値よりも小さいときよりも増加するように、前記所定の条件を変更する工程と、
(e)前記運転温度の計測値が前記第1の閾値よりも大きい第2の閾値以上であるときに、前記燃料電池における燃料ガスの流量を、前記計測値が前記第2の閾値より小さいときよりも増大させる工程と、
を備える、方法。
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、燃料電池システム、その燃料電池システムを搭載した車両、その燃料電池システムを制御するための制御装置や制御プログラム、その制御プログラムが記録された記録媒体等の形態で実現することができる。
燃料電池システムの構成を示す概略図。 燃料電池が備える膜電極接合体の構成を示す概略図。 燃料電池の発電性能と燃料電池のアノード側における水素の体積流量との関係を示す説明図。 電解質膜における3つの湿潤状態を説明するための模式図。 燃料電池に対するアノードガスの供給制御の処理手順を示す説明図。 インジェクタの駆動周期を決定するためのマップの一例を示す説明図。 アノードガス中における不活性ガス(窒素)の濃度と、燃料電池におけるアノードガスの圧力損失との関係を説明するための説明図。 アノード排ガスの循環流量を決定するためのマップの一例を示す説明図。
A.実施例:
図1は本発明の一実施例としての燃料電池システムの構成を示す概略図である。この燃料電池システム1000は、燃料電池100と、制御部200と、アノードガス供給部300と、アノードガス循環部350と、カソードガス供給部400と、カソードガス排出部450と、冷媒供給部500とを備える。
燃料電池100は、反応ガスとして、水素(燃料ガス)を含有するアノードガスと、酸素(酸化ガス)を含有するカソードガスとの供給を受けて発電する固体高分子形燃料電池である。燃料電池100は、複数の単セル110が積層されたスタック構造を有する。各単セル110は、発電体である膜電極接合体10と、膜電極接合体10を狭持する2枚のセパレータ21,22とを有する。
制御部200は、中央処理装置と主記憶装置とを備えるマイクロコンピュータによって構成されている。制御部200は、外部からの出力要求を受け付け、その要求に応じて、以下に説明する燃料電池システム1000の各構成部を制御し、燃料電池100に発電させる。
アノードガス供給部300は、水素タンク301と、アノードガス配管302と、開閉弁311と、レギュレータ312と、インジェクタ313と、圧力計測部320とを備える。水素タンク301は、アノードガス配管302を介して燃料電池100のアノード側の供給用マニホールドと接続されており、タンク内に充填された高圧水素をアノードガスとして燃料電池100に供給する。なお、燃料電池システム1000は、水素タンク301に換えて、炭化水素系の燃料を改質して水素を生成する改質部と、改質部によって生成された水素リッチガスを送り出すポンプとを水素の供給源として備えているものとしても良い。
開閉弁311と、レギュレータ312と、インジェクタ313と、圧力計測部320とはそれぞれ、アノードガス配管302の途中に、上流側(水素タンク301側)から、この順序で設けられている。開閉弁311は、制御部200からの指令により開閉し、水素タンク301からインジェクタ313の上流側への水素の流入を制御する。レギュレータ312は、インジェクタ313の上流側における水素の圧力を調整するための減圧弁であり、その開度が制御部200によって制御されている。
インジェクタ313は、制御部200によって設定された駆動周期に応じて、弁体が電磁的に駆動する電磁駆動式の開閉弁である。制御部200は、インジェクタ313の駆動周期を制御することによって、燃料電池100に供給される水素量を制御する。圧力計測部320は、燃料電池100のアノード側の圧力を計測して、制御部200に送信する。制御部200は、この圧力の計測値を用いて、燃料電池100に対するアノードガスの供給量を調整する。
アノードガス循環部350は、アノード排ガス配管351と、循環配管352と、排水配管353と、気液分離部360と、ポンプ362と、水素濃度センサ370と、排出弁380とを備える。アノード排ガス配管351は、燃料電池100のアノード側の排出用マニホールドと気液分離部360とを接続する配管である。アノード排ガス配管351は、発電反応に用いられることのなかった水素や、不活性ガスである窒素、発電反応によって生じた水分などを含むアノード排ガスを気液分離部360へと誘導する。
気液分離部360は、アノード排ガス中の気体成分と水分とを分離する。気液分離部360は、循環配管352と、排水配管353とに接続されており、分離した気体成分については循環配管352側へと誘導し、水分については排水配管353側へと誘導する。循環配管352は、アノードガス配管302のインジェクタ313より下流に接続されている。また、循環配管352の途中には、ポンプ362が設けられている。
気液分離部360において分離された水素を含む気体成分は、ポンプ362の駆動によって、アノードガス配管302へと循環される。このように、この燃料電池システム1000では、アノード排ガスに含まれる水素を循環させて、再び燃料電池100に供給することにより、水素の利用効率を向上させている。
排水配管353は、気液分離部360において分離された水分を燃料電池システム1000の外部へと排出するための配管である。排水配管353には、制御部200からの指令に応じて開閉する排出弁380が設けられている。制御部200は、通常、排出弁380を閉じておき、アノード排ガスから分離された水分を気液分離部360の貯水部(図示せず)に貯水させる。そして、予め設定された所定の排水タイミングや、アノード排ガス中の不活性ガスの排出タイミングで排出弁380を開き、それらの排出処理を実行する。
カソードガス供給部400は、カソードガス配管401と、エアコンプレッサ410と、開閉弁430とを備える。エアコンプレッサ410は、カソードガス配管401を介して、燃料電池100のカソード側の供給用マニホールドに接続されている。カソードガス供給部400は、エアコンプレッサ410が外気を取り込んで圧縮した空気を、カソードガスとして燃料電池100に供給する。
開閉弁430は、カソードガス配管401のエアコンプレッサ410と燃料電池100との間に設けられている。開閉弁430は、通常、閉じた状態であり、エアコンプレッサ410から所定の圧力を有する空気がカソードガス配管401に供給されたときに開く。なお、エアコンプレッサ410の上流側には、エアコンプレッサ410が取り込む外気の量を計測して、制御部200に送信するエアフロメータが設けられているが、その図示および説明は省略する。
カソードガス排出部450は、カソード排ガス配管451と、調圧弁460と、圧力計測部470とを備える。カソード排ガス配管451は、燃料電池100のカソード側の排出用マニホールドに接続されており、カソード排ガスを燃料電池システム1000の外部へと排出する。調圧弁460は、制御部200からの指令に応じて、カソード排ガス配管451におけるカソード排ガスの圧力(燃料電池100の背圧)を調整する。圧力計測部470は、調圧弁460の上流側に設けられており、カソード排ガスの圧力を計測し、その計測値を制御部200に送信する。
冷媒供給部500は、冷媒用配管501と、ラジエータ510と、冷媒循環用ポンプ520と、2つの温度計測部531,532とを備える。冷媒用配管501は、燃料電池100に設けられた冷媒の供給用マニホールドと排出用マニホールドとを連結する配管であり、燃料電池100を冷却するための冷媒を循環供給させるための配管である。ラジエータ510は、冷媒用配管501の途中に設けられており、冷媒用配管501を流れる冷媒を、外気と熱交換させることによって冷却する。
冷媒循環用ポンプ520は、冷媒用配管501において、ラジエータ510より下流側に設けられており、ラジエータ510において冷却された冷媒を燃料電池100に送り出す。2つの温度計測部531,532はそれぞれ、冷媒用配管501において、燃料電池100の冷媒出口の近傍と、冷媒入口の近傍とに設けられており、計測値を制御部200へと送信する。
制御部200は、2つの温度計測部531,532のそれぞれの計測値の差から燃料電池100の運転温度を検出する。制御部200は、検出された燃料電池100の運転温度に基づき、冷媒循環用ポンプ520が送り出す冷媒量を制御し、燃料電池100運転温度を調整する。また、制御部200は、検出された燃料電池100の運転温度に基づき、燃料電池100におけるアノードガスの供給制御も行うが、その詳細については後述する。
図2(A),(B)は、燃料電池100が備える膜電極接合体10の構成および膜電極接合体10における反応ガスの流れを示す概略図である。図2(A)は、膜電極接合体10のアノード側の面を示す正面図であり、図2(B)は、図2(A)に示すB−B切断における膜電極接合体10の概略断面図である。膜電極接合体10は、電解質膜1の両面に2つの電極(アノード2およびカソード3)が配置された発電体である。
電解質膜1は、例えば、フッ素樹脂系のイオン交換膜など、湿潤状態で良好なプロトン伝導性を示す固体高分子の薄膜によって構成することができる。アノード2およびカソード3は、ガス拡散性およびガス透過性を有する導電性部材によって構成することができる。なお、アノード2およびカソード3の電解質膜1側には、燃料電池の発電反応を促進するための触媒(例えば白金(Pt))が配置されている。
ここで、膜電極接合体10には、反応ガスなどの流体の漏洩を防止するシール部12が、アノード2およびカソード3の外周を囲むように形成されている。シール部12は、例えば樹脂部材を電解質膜1の外周に射出成形することによって形成することができる。膜電極接合体10では、このシール部12に囲まれた領域11に反応ガスが供給され、発電が行われる。以後、本明細書では、膜電極接合体10において、このシール部12によって囲まれた領域11を「発電領域11」と呼ぶ。
シール部12には、燃料電池100に供給される反応ガスや冷媒などの流体のためのマニホールド131〜136が貫通孔として形成されている。ここで、膜電極接合体10では、各流体の供給用マニホールド131,133,135と排出用マニホールド132,134,136とは、発電領域11を挟んで互いに反対の側に設けられている。具体的に、各マニホールド131〜136の形成位置は以下の通りである。
アノードガス(水素)の供給用マニホールド131と、冷媒の供給用のマニホールド135と、カソードガス(酸素)の排出用マニホールド134とは、発電領域11に対して同じ側に、この順序で直列に配列されている。そして、アノードガスの排出用マニホールド132およびカソードガスの供給用マニホールド133はそれぞれ、アノードガスの供給用マニホールド131およびカソードガスの排出用マニホールド134と、発電領域11を挟んで対角する位置に形成されている。冷媒の排出用マニホールド136は、カソードガスの供給用マニホールド133とアノードガスの排出用マニホールド132との間に形成されている。
アノードガスおよびカソードガスは、それぞれの供給用マニホールド131,133から、アノードセパレータ21またはカソードセパレータ22(図1)に形成されたガス流路を介して発電領域11へと流入し発電に用いられる。また、アノード排ガスおよびカソード排ガスは、発電領域11からアノードセパレータ21またはカソードセパレータ22に形成されたガス流路を介して、それぞれの排出用マニホールド132,134へと流出する。冷媒は、供給用マニホールド135から、アノードセパレータ21とカソードセパレータ22との間に形成された発電領域11を跨ぐ冷媒流路を介して、排出用マニホールド136へと流れる。なお、各セパレータ21,22に形成された各流体のための流路の構成の詳細については、説明を省略する。
ここで、図2(B)には、発電領域11における水素および酸素のそれぞれの流れ方向を示す矢印を図示してある。燃料電池100では、その発電の際に、各膜電極接合体10の発電領域11において、アノード側の水素の流れ方向と、カソード側の酸素の流れ方向とが、電解質膜1の面に沿って互いに対向し合う。このように、発電領域11における水素の流れ方向と酸素の流れ方向とを互いに対向させることにより、発電領域11における反応ガスの供給量分布の偏りを改善し、発電分布の偏りを低減することができる。
ところで、前記したとおり、膜電極接合体10の電解質膜1は、湿潤状態で良好なプロトン伝導性を示す。そのため、燃料電池100の発電時には、各膜電極接合体10の発電領域11における水分が適切に保持されていることが好ましい。一般に、固体高分子形燃料電池の運転では、加湿部によって加湿された反応ガスを燃料電池に供給することにより、電解質膜の湿潤状態を良好に保持する場合がある。しかし、本実施例の燃料電池システム1000では、アノードガス供給部300やカソードガス供給部400に、そうした反応ガスを加湿するための構成部が設けられていない。
そのため、本実施例の燃料電池システム1000では、電解質膜1を湿潤状態は、燃料電池100における発電反応により生じる水分と、アノードガス循環部350によって燃料電池100に再循環されるアノード排ガス中の水分とで保持されることとなる。即ち、本実施例の燃料電池システム1000では、電解質膜1の湿潤状態は、その発電状態や、アノード2側におけるアノード排ガスの循環流量(即ち、アノードガスの流量)の影響を大きく受けることとなる。
図3は、本発明の発明者の実験によって得られた燃料電池100の発電性能と、燃料電池100のアノード側におけるアノードガスの体積流量との関係を示す説明図である。図3には、横軸をアノード平均体積流量とし、紙面左右の2つの縦軸をそれぞれセル電圧および抵抗とするグラフが図示されている。ここで、「アノード平均体積流量」とは、各単セル110ごとのアノード2側の発電領域11における単位面積あたりのアノードガスの体積流量を平均した値を意味する。また、「セル電圧」は、燃料電池100における各単セル110の電圧の平均であり、「抵抗」は、燃料電池100の内部抵抗である。
本願発明の発明者は、燃料電池システム1000と同様な反応ガスの供給方法により、燃料電池100に一定電流(1.0〜1.2A/cm2程度)での出力を、一定の運転温度(80〜90℃)で継続させた。そして、燃料電池100のアノード平均体積流量を変化させ、燃料電池100のセル電圧と抵抗とを測定した。
なお、アノード平均体積流量は、燃料電池100のアノード側に再循環されるアノード排ガスを流入させるために用いたポンプの駆動力(回転数)に基づいて求めた。燃料電池100の抵抗は、いわゆる交流インピーダンス法によって計測した。なお、図3のグラフでは、セル電圧についてのグラフGVを実線で示し、抵抗についてのグラフGRを破線で図示してある。
燃料電池100のセル電圧についてのグラフGVは、アノード平均体積流量の増加に従ってセル電圧が上昇する領域と、アノード平均体積流量の増加に伴ってセル電圧が下降する領域とを有する、上に凸の変化を示す曲線グラフとなった。一方、燃料電池100の抵抗についてのグラフGRは、アノード平均体積流量が比較的少ない領域では、下降と上昇の変動を示し、アノード平均体積流量が比較的多い領域では、なだらかに上昇する曲線グラフを示した。
ここで、この実験から、本願発明の発明者は、アノード平均体積流量に対して、電解質膜1の湿潤状態が、概ね以下の3つの状態WS1〜WS3に区分けできることを見出した。なお、図3のグラフでは、それらの状態WS1〜WS3のときのアノード平均体積流量の領域を破線により区分けして図示してある。より具体的には、アノード平均体積流量が小さい紙面左側から順に第1の湿潤状態WS1と、第2の湿潤状態WS2と、第3の湿潤状態WS3とに区分けして図示してある。
図4(A)〜(C)は、電解質膜1における3つの湿潤状態WS1〜WS3をそれぞれ説明するための模式図である。図4(A)は、第1の湿潤状態WS1のときの膜電極接合体10の様子を示す模式図である。図4(A)は、膜電極接合体10における水分の移動を模式的に示す矢印が追加されている点と、電解質膜1が乾燥している領域(「乾燥領域DA」と呼ぶ)が破線で図示されている点以外は、図2(B)とほぼ同じである。
なお、図4(A)では、アノード2側における水分移動を示す矢印を一点鎖線で図示し、カソード3側における水分の移動を示す矢印を実線で図示してある。また、図4(A)では、アノード2側においてアノード排ガスとして外部に排出された水分が再循環されていることを破線矢印によって図示してある。
この第1の湿潤状態WS1のときには、アノード2における水素の入口側(紙面左側)では、発電反応によってカソード側において生成された水分が電解質膜1へと移動する。また、アノード排ガスの再循環によって水素とともにアノード2側に供給される水分も電解質膜1へと移動する。そのため、電解質膜1のアノードガスの上流側(カソードガスの下流側)では、電解質膜1は良好な湿潤状態となる。
しかし、第1の湿潤状態WS1では、アノード平均体積流量が少ないため、アノードガスの流れによって、水素の出口側(紙面右側)まで十分な水分を到達させることができない。そのため、膜電極接合体10では、水素の出口側の領域での発電量が減少し、水分の生成量が減少する。そして、カソード3における排気に伴って、カソード3における酸素の出口側(紙面右側)が乾燥し始め、乾燥領域DAが生じる。即ち、第1の湿潤状態WS1では、カソード3の下流側で、いわゆるドライアップが生じる。
ここで、この乾燥領域DAは発電不能な領域である。そのため、第1の湿潤状態WS1のときには、各単セル110では、発電領域11における発電分布が不均一となり、図3のグラフに示されたように、セル電圧が比較的低い状態となる。なお、図3のグラフでは、第1の湿潤状態WS1のときには、燃料電池100のセル電圧は、アノード平均体積流量の増加にともなって急激に増大し、燃料電池100の抵抗は下降したのちに上昇を示している。
図4(B)は、第2の湿潤状態WS2のときの膜電極接合体10の様子を示す模式図である。図4(B)は、水分の移動を模式的に示す矢印が異なる点と、電解質膜1の乾燥領域DAが図示されていない点以外は、図4(A)とほぼ同じである。第2の湿潤状態WS2のときには、第1の湿潤状態WS1のとき(図4(A))よりもアノード平均体積流量が多い。そのため、アノード2におけるアノードガスの流れによって、水分を水素の出口側まで十分に到達させることができる。
その結果、乾燥領域DAの発生が抑制され、発電反応による生成水分と、アノード排ガスの再循環によってアノード2に流入する水分とで、電解質膜1の湿潤状態が適切に保持される。即ち、この第2の湿潤状態のときに、電解質膜1は、発電領域11の全体に渡って良好な湿潤状態となる。なお、図3のグラフでは、第2の湿潤状態WS2のときには、燃料電池100のセル電圧は、緩やかな上に凸の変化を示しており、燃料電池100の抵抗は緩やかな上昇を示している。
図4(C)は、第3の湿潤状態WS3のときの膜電極接合体10の様子を示す模式図である。図4(C)は、水分の移動を模式的に示す矢印が異なる点と、電解質膜1の乾燥領域DAが図示されている点以外は、図4(B)とほぼ同じである。第3の湿潤状態WS3のときには、第2の湿潤状態WS2のとき(図4(B))よりもアノード平均体積流量がさらに多い。そのため、アノード2における水素の入口側の領域でのアノードガスの流速が高く、アノード2における水素の入口側の領域が乾燥傾向となって乾燥領域DAが生じる。
ここで、この乾燥領域DAの電解質膜1を挟んだ反対側の領域(カソード3における酸素の出口側の領域)には、カソード3側の排水が十分に存在する。そのため、そのカソード3の下流側の水分によって、乾燥領域DAの乾燥の度合いは低減されやすい。なお、図3のグラフでは、第3の湿潤状態WS3のときには、燃料電池100のセル電圧は下降を示しているが、第1の湿潤状態WS1のときよりも変化の度合いが緩やかである。また、燃料電池100の抵抗はほぼ一定の値を示している。
ところで、図3で説明した実験では、燃料電池100の運転温度を一定にして行った。しかし、燃料電池100を、例えば80℃以上の高い運転温度で運転したとき(以下、「高温運転時」とも呼ぶ)には、図3のグラフに示されたアノード平均体積流量とセル電圧との関係が変化してしまう。より具体的には、燃料電池100の高温運転時には、第1の湿潤状態WS1のときに、アノード平均体積流量を増大させても、図3のグラフのようにセル電圧は上昇せず、セル電圧が上昇しない状態が継続されてしまう。
即ち、燃料電池100の高温運転時に、膜電極接合体10において、カソード3の酸素の入口側が乾燥してセル電圧が低下したときには、その回復が困難となる。そこで、本実施例の燃料電池システム1000では、アノードガス供給部300およびアノードガス循環部350によるアノードガスの供給制御を、以下に説明する処理手順で実行し、そうした発電性能の低下を抑制する。
図5は、制御部200が実行する燃料電池100に対するアノードガスの供給制御の処理手順を示すフローチャートである。ここで、本実施例の燃料電池システム1000では、制御部200は、冷媒供給部500における2つの温度計測部531,532の計測値に基づいて、燃料電池100の運転温度を検出する。そして、燃料電池100の運転温度が通常の運転温度(例えば、50〜70℃程度)のときと、それより高い運転温度のときとで異なる基準でアノードガスの供給制御を実行する。以下では、まず、通常の運転温度のときのアノードガスの供給制御を説明する。
ステップS10では、制御部200は、外部負荷ELの要求に応じて、燃料電池100が出力する目標電流値を決定する。そして、制御部200は、その目標電流値に対するアノードガスの供給量を決定し、その供給量に応じてアノードガス供給部300のインジェクタ313の駆動周期を決定する。
図6は、ステップS10において制御部200がインジェクタ313の駆動周期を決定するために用いるマップの一例を示す説明図である。本実施例では、インジェクタ313の駆動周期を決定するためのマップMIT(「駆動周期決定マップMIT」とも呼ぶ)は、横軸を目標電流値Itとし、縦軸をインジェクタ313の駆動周期Tとするグラフによって表される。具体的には、駆動周期決定マップMITは、目標電流値Itの増加に対して、駆動周期Tの値が略階段状に増加するように設定されている。なお、駆動周期決定マップMITは、目標電流値Itと駆動周期Tとが他の対応関係を有するように設定されているものとしても良い。
制御部200は、アノードガス供給部300に、駆動周期決定マップMITによって決定された駆動周期Tでインジェクタ313を駆動させる。そして、アノードガス循環部350には、ポンプ362を所定の一定の駆動力で駆動させ、アノード排ガスを燃料電池100に循環させる。なお、このときのポンプ362は、燃料電池100の膜電極接合体10の湿潤状態が第2の湿潤状態WS2となる程度のアノード平均体積流量(図3,図4(B))が得られるように駆動されることが好ましい。
ステップS20では、制御部200は、所定の条件が満たされたときに、アノードガス循環部350に窒素の排出処理を実行させる。ここで、本実施例の燃料電池システム1000では、カソードガス供給部400がエアコンプレッサ410によって外気を取り込んだ圧縮空気をカソードガスとして燃料電池100に供給している。そのカソードガスに含まれる窒素などの不活性ガスの一部は、電解質膜1を介してアノード2へと移動する。
そのため、アノードガス循環部350によってアノード排ガスの再循環を繰り返していると、アノードガス中における不活性ガスの濃度が増大し、アノードガス中における水素の濃度が低下してしまう。そこで、制御部200は、水素濃度センサ370が検出するアノード排ガス中の水素濃度が所定の値より低くなったときに、排出弁380を開弁し、気液分離部360に貯水された排水とともに、アノード排ガス中の不活性ガスも排出する。なお、制御部200は、気液分離部360における貯水量が所定の量より多くなったときにも排出弁380を開弁するものとしても良い。
ステップS30では、制御部200は、検出された燃料電池100の運転温度の判定を実行する。制御部200は、燃料電池100の運転温度が予め設定された第1の基準値T1(例えば75℃程度)より低い場合には、燃料電池100が通常の運転温度であるものとして、上述したステップS10〜S30の処理を繰り返す。
ここで、燃料電池100の運転温度が第1の基準値T1以上であるときには、制御部200は、通常の運転温度のときと異なる基準での制御を開始する。ステップS30において、燃料電池100の運転温度が第1の基準値T1以上であった場合には、燃料電池100が高温運転となる温度領域に近づいているものとして、まずステップS40を実行する。
ステップS40では、制御部200は、上述したアノードガス循環部350における不活性ガスの排出処理(ステップS30)が実行される頻度が増加するように、その処理の開始条件を緩やかにする。より具体的には、不活性ガスの排出処理の実行開始条件となる水素濃度の閾値をより高い値に再設定する。なお、以下では、ステップS40で再設定される前の閾値を「通常基準の閾値」とも呼び、再設定された閾値を「高温運転時基準の閾値」とも呼ぶ。
ステップS50では、制御部200は、再度、燃料電池100の運転温度の判定を実行する。制御部200は、燃料電池100の運転温度が予め設定された第2の基準値T2(例えば80℃程度)より低い場合には、燃料電池100がまだ高温運転を行っていないものとして、上述したステップS10〜S30の処理を繰り返す。
ここで、ステップS40を経た後に、ステップS10〜S30が繰り返される際には、ステップS40で、高温運転時基準の閾値が設定されているため、ステップS20における不活性ガスの排出処理が実行される頻度が増大する。そして、燃料電池100に供給されるアノードガス中の不活性ガスの濃度が低減する。
図7は、アノードガス中における不活性ガス(窒素)の濃度と、燃料電池100におけるアノードガスの圧力損失との関係を説明するための説明図である。図7には、横軸を燃料電池100におけるアノードガスの流量とし、縦軸を燃料電池100に供給されるアノードガスの圧力損失とするグラフが、アノードガスに含まれる窒素濃度ごとに図示されている。具体的には、窒素濃度が20%であるときのグラフG1を実線で示し、窒素濃度が10%であるときのグラフG2を一点鎖線で示し、窒素濃度が0%のときのグラフG3を二点鎖線で示してある。
各グラフG1〜G3は、アノードガスの流量が増大すると、燃料電池100におけるアノードガスの圧力損失が比例的に増大することを示している。そして、アノードガスに含まれる不活性ガスである窒素の濃度が高いほど、流量の増大に伴って圧力損失が増大する度合い(各グラフG1〜G3の勾配)が大きくなることを示している。これは、窒素は水素に比較して流量係数が大きいため、その濃度が増大すると、燃料電池100におけるアノードガスの圧力損失が顕著に増大してしまうためである。
ここで、図7のグラフには、ポンプ362の出力流量に対する最大圧力(定格圧力)を示すグラフの一例が破線グラフGPとして図示してある。破線グラフGPの上側の領域は、ポンプ362によって出力不能な流量を示す領域である。即ち、燃料電池100に流量Qtのアノード排ガスを循環させる場合を想定したときに、アノード排ガス中の窒素の濃度によっては、ポンプ362がその目標値である流量Qtを出力できない場合が生じる。なお、図7には、アノードガス中の窒素の濃度が20%以上であるときには、ポンプ362によって出力できない流量Qtが例示してある。
図7のグラフが示すように、アノードガスにおける不活性ガスの濃度が低いほど、燃料電池100におけるアノードガスの圧力損失を低減することができる。従って、ステップS40(図5)以降のアノードガスの供給処理では、燃料電池100におけるアノードガスの流量の制御の効率が向上する。
なお、アノードガス循環部350における不活性ガスの排出処理では、不活性ガスとともに水素も排出されることになる。従って、無駄に水素が排出されてしまうことを抑制するために、燃料電池100が通常の運転温度であるときには、アノードガス中の不活性ガスの濃度が20〜30%程度となる頻度で、不活性ガスの排出処理が実行されていることが好ましい。
ステップS50(図5)において、燃料電池100の運転温度が第2の基準値T2以上であった場合には、制御部200は、燃料電池100が高温運転をしているものとして、ステップS60の処理を実行する。ステップS60では、制御部200は、燃料電池100におけるアノードガスの流量が通常より増大するように、以下に説明するマップを用いて燃料電池100に循環されるアノード排ガスの流量を増大させる。
図8は、ステップS60において制御部200がアノード排ガスの循環流量を決定するために用いるマップの一例を示す説明図である。本実施例では、アノード排ガスの循環流量を決定するためのマップMQR(「循環流量決定マップMQR」とも呼ぶ)は、横軸を運転温度TFCとし、縦軸をアノード排ガスの循環流量QRとするグラフによって表される。なお、図8のグラフでは、運転温度が第2の基準値T2以下であるときには、アノード排ガスの循環流量が一定量QRSに保持されていることを破線で図示してある。以後、運転温度がT2以下の時のアノード排ガスの循環流量QRSを「通常基準の循環流量QRS」と呼ぶ。
循環流量決定マップMQRでは、燃料電池100の運転温度TFCが第2の基準値T2以上となったときに、アノード排ガスの循環流量が通常基準の循環流量QRSよりも増大するように設定されている。具体的には、本実施例の循環流量決定マップMQRでは、アノード排ガスの循環流量QRが、通常基準の循環流量QRSから、運転温度TFCの上昇に伴って増大するように設定されている。
制御部200は、この循環流量決定マップMQRによって、燃料電池100に循環されるアノード排ガスの循環流量QRを決定し、その流量QRに基づいてポンプ362を駆動する。そして、アノード排ガスの循環流量が増大された状態で、再び、ステップS10以降のアノードガスの供給制御処理を繰り返す。
ここで、前記したとおり、燃料電池100の高温運転時に膜電極接合体10の湿潤状態が第1の湿潤状態WS1(図4(A))となり、カソード3の酸素の入口側が乾燥してセル電圧が低下したときには、その回復が困難となる。そこで、本実施例の燃料電池システム1000では、燃料電池100が高温運転の状態であるときには、運転温度が高温に到達していない通常の運転状態のときよりも燃料電池100におけるアノードガスの流量を増大させる。
燃料電池100におけるアノードガスの流量を増大させると、アノードガスの流れによってアノード2における水素の出口側の領域に到達する水分量を増大させることができる。そして、その領域の電解質膜1を挟んで反対側の領域であるカソード3における酸素の入口側の領域の湿潤度を向上させることができる。従って、膜電極接合体10の湿潤状態が第1の湿潤状態WS1となり、カソード3における酸素の出口側の領域が乾燥してしまうことを未然に回避することができる。
また、前記したとおり、本実施例の燃料電池システム1000では、燃料電池100の運転温度が、第2の基準値T2よりも低い第1の基準値T1に到達したときに、アノードガス中の不活性ガスの濃度が低減するように制御されている(ステップS40)。そのため、ステップS60において、ポンプ362の駆動力を増大させたときに、圧力損失が低減された状態で、即応的に燃料電池100におけるアノードガスの流量を増大させることができる。従って、より確実に電解質膜1の乾燥が抑制される。
また、本実施例の循環流量決定マップMQRでは、燃料電池100の運転温度TFCが高いほど、アノードガスの循環流量QRが高くなるように設定されている。従って、燃料電池100の運転温度が高くなり、電解質膜1がより乾燥しやすくなっている場合であっても、アノードガスの流量が運転温度に応じて増大するため、電解質膜1の乾燥をより確実に抑制できる。
さらに、本実施例の循環流量決定マップMQRでは、第2の基準値T2近傍の運転温度の領域TNRでは、アノード排ガスの循環流量が急峻に増大し、それより高い運転温度の領域では、アノード排ガスの循環流量の増加の度合いが緩やかとなるように設定されている。ここで、高温運転初期である第2の基準値T2近傍の運転温度では、カソード3における酸素の入口側の領域が急速に乾燥しやすくなる。本実施例の循環流量決定マップMQRによれば、その温度領域TNRにおいてアノードガスの流量が急速に増大するように設定されているため、電解質膜1の乾燥の発生をより確実に回避することができる。なお、運転温度T2近傍の温度領域TNRは、例えば、温度T2〜温度T2+5℃程度の温度領域であるものとしても良い。
なお、ステップS40を実行した後に、燃料電池100の運転温度が、第1の基準値T1より低下した場合には(ステップS30)、制御部200は、不活性ガスの排出処理の開始条件である閾値を通常基準の閾値に戻す(ステップS35)。また、ステップS60を実行した後に、燃料電池100の運転温度が、第2の基準値T2より低下した場合には(ステップS30)、制御部200は、ポンプ362を一定の駆動力での制御に戻し、アノード排ガスの循環流量を通常基準の循環流量QRSに戻す(ステップS35)。
ところで、燃料電池100において電解質膜1が第1の湿潤状態WS1になっているときには、燃料電池100の抵抗値が比較的低下した状態となる(図3のグラフGR)。従って、発電中の燃料電池100の抵抗値に基づいて、電解質膜1が第1の湿潤状態WS1になっていることを検出することも可能である。
しかし、前記したとおり、燃料電池100が高温運転をしているときに、電解質膜1が第1の湿潤状態WS1となったときには、電解質膜1をその状態から回復させることは困難である。これに対し、本実施例の燃料電池システム1000であれば、燃料電池100の運転温度に基づくアノードガスの供給制御により、電解質膜1が第1の湿潤状態WS1となることを未然に回避することができる。従って、より確実に、燃料電池100の性能低下を抑制できる。
このように、本実施例の燃料電池システム1000では、燃料電池100の運転温度が第1の基準値T1以上とり、燃料電池100が高温運転の状態になる可能性が高いときに、アノードガス中の不活性濃度が低減されるように制御する。そして、アノードガス中の不活性濃度を低減させた上で、燃料電池100の運転温度が第2の基準値T2以上となったときに燃料電池100におけるアノードガスの流量を通常よりも増大させる。即ち、本実施例の燃料電池システム1000は、燃料電池100の運転温度に基づいて、電解質膜1の乾燥を抑制するためのアノードガスについてのフィードフォワード制御を実行しているものと解釈することができる。従って、燃料電池100の高温運転時に、電解質膜1の一部領域の乾燥の発生を未然に回避して、より確実に燃料電池100の性能低下の発生を抑制することができる。
B.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
B1.変形例1:
上記実施例では、制御部200は、駆動周期決定マップMITや、循環流量決定マップMQRを用いて、インジェクタ313の駆動周期Tや、アノードガス循環部350が燃料電池100に循環させるアノード排ガスの循環流量QRを決定していた。しかし、制御部は、それらのマップMIT,MQRに換えて、所定の関数や演算式によって、インジェクタ313の駆動周期Tや、アノード排ガスの循環流量QRを決定するものとしても良い。
B2.変形例2:
上記実施例では、アノードガス供給部300やカソードガス供給部400が供給ガスを加湿するための加湿部を備えていなかった。しかし、アノードガス供給部300やカソードガス供給部400は供給ガスを加湿するための加湿部を備えているものとしても良い。ただし、上記実施例の燃料電池システム1000であれば、加湿部のような加湿機構を有していない分だけ小型化することができ、加湿部を駆動するための電力消費量を低減することができる。
B3.変形例3:
上記実施例では、アノードガスの供給制御処理のステップS60(図5)において、燃料電池100の運転温度が高いほど、燃料電池100におけるアノードガスの流量が増加するように制御されていた。しかし、燃料電池100におけるアノードガスの流量は、燃料電池100の運転温度に従って増加されなくとも良い。燃料電池100におけるアノードガスの流量は、燃料電池100の運転温度が第2の基準値T2以下であるときよりも増大されるように制御されていれば良い。
B4.変形例4:
上記実施例では、不活性ガス排出処理(図5のステップS20)は、水素濃度センサ370の計測値に基づいて実行されていた。しかし、不活性ガス排出処理は、他の条件に基づいて実行されるものとしても良い。例えば、不活性ガス排出処理は、一定の時間周期で実行されるものとしても良い。この場合には、ステップS40では、その不活性ガス排出処理が実行される周期を短くする処理が実行されるものとしても良い。
B5.変形例5:
上記実施例では、燃料電池100の運転温度が第1の基準値T1以上となったときに、不活性ガス排出処理の開始条件を変更する第1の制御処理を実行し、さらに、燃料電池100の運転温度が第2の基準値T2以上となったときに、燃料電池100におけるアノードガスの流量が増大するように制御する第2の制御処理とを実行していた。しかし、燃料電池システム1000は、燃料電池100の運転温度が第2の基準値T2以上となったときに、燃料電池100におけるアノードガスの流量を増大させる第2の制御処理を実行しなくとも良い。このような構成であっても、燃料電池100の運転温度に基づいて、第1の制御処理が実行され、アノードガスの圧力損失が低下するため、燃料電池100におけるアノードガスの流量が第1の制御処理が実行される前よりも増大する。従って、膜電極接合体10の湿潤状態が第1の湿潤状態WSとなる可能性が低減され、電解質膜1の乾燥に起因する発電性能の低下が抑制される。
1…電解質膜
2…アノード
3…カソード
10…膜電極接合体
11…発電領域
12…シール部
20…制御部
21…アノードセパレータ
22…カソードセパレータ
100…燃料電池
110…単セル
131〜136…マニホールド
200…制御部
300…アノードガス供給部
301…水素タンク
302…アノードガス配管
311…開閉弁
312…レギュレータ
313…インジェクタ
320…圧力計測部
350…アノードガス循環部
351…アノード排ガス配管
352…循環配管
353…排水配管
360…気液分離部
362…ポンプ
370…水素濃度センサ
380…排出弁
400…カソードガス供給部
401…カソードガス配管
410…エアコンプレッサ
430…開閉弁
450…カソードガス排出部
451…カソード排ガス配管
460…調圧弁
470…圧力計測部
500…冷媒供給部
501…冷媒用配管
510…ラジエータ
520…冷媒循環用ポンプ
531,532…温度計測部
1000…燃料電池システム
DA…乾燥領域

Claims (5)

  1. 燃料電池システムであって、
    電解質膜の両面に電極が配置された膜電極接合体を備え、燃料ガスと酸化ガスとが前記電解質膜の面に沿って互いに対向し合う方向に流れるように供給される燃料電池と、
    前記燃料電池に燃料ガスを供給する燃料ガス供給部と、
    前記燃料電池から排出された燃料ガスと不活性ガスとを含む排ガスを前記燃料電池に循環させ、所定の条件に従って、前記排ガスを外部へと排出することにより、前記排ガス中の不活性ガスの濃度を低減させる排ガス排出処理を実行する燃料ガス循環部と、
    前記燃料電池の運転温度を計測する温度計測部と、
    前記燃料ガス供給部と前記燃料ガス循環部とを制御して、前記燃料電池における燃料ガスの流量を制御する制御部と、
    を備え、
    前記制御部は、
    (i)前記温度計測部の計測値が第1の閾値以上であるときに、前記燃料ガス循環部が前記排ガス排出処理を実行する頻度が、前記計測値が前記第1の閾値よりも小さいときよりも増加するように、前記所定の条件を変更する第1の制御処理と、
    (ii)前記計測値が前記第1の閾値よりも大きい第2の閾値以上であるときに、前記燃料電池における燃料ガスの流量が、前記計測値が前記第2の閾値より小さいときよりも増大するように制御する第2の制御処理と、
    を実行する、燃料電池システム。
  2. 請求項1記載の燃料電池システムであって、
    前記第2の制御処理は、前記燃料電池の運転温度の上昇に応じて前記燃料電池における燃料ガスの流量が増大するように制御する処理を含む、燃料電池システム。
  3. 請求項1または2記載の燃料電池システムであって、
    前記燃料ガス循環部は、前記排ガス中の燃料ガス濃度を計測する燃料ガス濃度計測部を備え、
    前記燃料ガス循環部は、前記燃料ガス濃度計測部の計測値が所定の閾値より小さくなったときに、前記排ガス排出処理を実行し、
    前記第1の制御処理は、前記所定の閾値をより大きい値に再設定する処理を含む、燃料電池システム。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の燃料電池システムであって、
    前記制御部は、
    (iii)前記第1の制御処理を開始した後に、前記温度検出部の計測値が前記第1の閾値よりも小さくなったときには、前記燃料ガス循環部が前記排ガス排出処理を実行する頻度が、前記第1の制御処理を実行しているときよりも減少するように、前記所定の条件を変更する第3の制御処理と、
    (iv)前記第2の制御処理を開始した後に、前記温度検出部の計測値が前記第2の閾値よりも小さくなったときには、前記第2の制御処理を実行しているときよりも、前記燃料電池における燃料ガスの流量が低下するように制御する第4の制御処理と、
    を実行する、燃料電池システム。
  5. 燃料電池システムにおいて、電解質膜の両面に電極が配置された膜電極接合体を備える燃料電池に対する燃料ガスの供給を制御する方法であって、
    (a)前記燃料電池の前記膜電極接合体に、燃料ガスと酸化ガスとを供給し、前記電解質膜の面に沿って互いに対向し合う方向に流す工程と、
    (b)前記燃料電池から排出された燃料ガスと不活性ガスとを含むアノード排ガスを前記燃料電池に循環させ、所定の条件に従って、前記アノード排ガスを外部へと排出することにより、前記アノード排ガス中の不活性ガスの濃度を低減させる排ガス排出処理を実行する工程と、
    (c)前記燃料電池の運転温度を計測する工程と、
    (d)前記運転温度の計測値が第1の閾値以上であるときに、前記排ガス排出処理が実行される頻度を、前記計測値が前記第1の閾値よりも小さいときよりも増加するように、前記所定の条件を変更する工程と、
    (e)前記運転温度の計測値が前記第1の閾値よりも大きい第2の閾値以上であるときに、前記燃料電池における燃料ガスの流量を、前記計測値が前記第2の閾値より小さいときよりも増大させる工程と、
    を備える、方法。
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