JP2012184125A - 炭素材料の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】緻密かつ変形のない、極めて灰分濃度の低い高純度の炭素材料を、経済的に得ることができる炭素材料の製造方法を提供する。
【解決手段】鉄または非鉄金属精錬用の還元用炭素材、構造用炭素材、電気材料用炭素材、または、これらの原料として用いる炭素材料の製造方法であって、溶剤を用いて石炭を改質して、改質炭である無灰炭を製造する無灰炭製造工程S1と、無灰炭製造工程S1で製造された無灰炭を加熱処理して、揮発分(VM)が40質量%以下である改質無灰炭を製造する無灰炭加熱工程S2と、無灰炭加熱工程S2で製造された改質無灰炭を成形原料の主成分として、この改質無灰炭を成形して見掛比重0.9g/cm以上の成形体を製造する成形工程S3と、成形工程S3で製造された成形体を炭素化処理して炭素材料とする炭素化工程S4と、を含むことを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、鉄または非鉄金属精錬用の還元用炭素材、構造用炭素材、電気材料用炭素材、または、これらの原料として使用される炭素材料、特に、アルミニウム電解製造用アノードの骨材として使用される炭素材料の製造方法に関する。
アルミニウム電解製造用アノードの主原料としては、一般に石油精製プロセスの残渣から製造される石油コークスが使用される。しかし、石油コークスには、ガソリン等の輸送用燃料と併産されるために、原料供給量に制約があることや、原油に含まれる硫黄等の不純物がアルミニウム純度に悪影響を及ぼすことがある等の問題点がある。
一方、高炉法製鉄に使われる石炭コークスは、炭素としては石油コークスに近い性質を有しており、アルミニウム電解製造用アノードの主原料としては十分すぎるほどの量が市場に出回っている。しかし、石炭由来の灰分を10質量%程度含むことから、品質面で問題があるため、この用途には使用されていない。
そこで、低灰分の炭素材料の原料という観点で、最近、活発に開発が進められている、いわゆる、無灰炭(ハイパーコール)を挙げることができる(例えば、特許文献1参照)。ここで、無灰炭とは、石炭を溶剤で抽出処理し、この溶剤に溶ける成分だけを分離して、その後、溶剤を除去することによって、製造されたものである。この無灰炭は、構造的には、縮合芳香環が2ないし3個の比較的低分子量の成分から、5、6環程度の高分子量成分まで広い分子量分布を有する。また、無灰炭は、灰分が溶剤には溶けないため、実質的に灰分を含まず、加熱下で高い流動性を示し、熱流動性に優れる。石炭の中には粘結炭のように400℃前後で熱可塑性を示すものもあるが、無灰炭は、一般的に、原料石炭の品位に関わらず200〜300℃で溶融する(軟化溶融性がある)。そこで、この特性を生かしてコークス製造用バインダーとしての応用開発が進められており、また、近年においては、この無灰炭を炭素材料原料として用いることで炭素材料を製造することが試みられている。
特開2001−26791号公報
しかしながら、従来の炭素材料の製造方法では、以下に示す問題がある。
前記のとおり、無灰炭は、灰分を含まず、軟化溶融性を有するという特長があり、製鉄用コークスを製造するときの粘結性補填材として有効なことがわかっている。また、灰分を含まないことは、アルミニウム電解製造用アノードの骨材(主原料)として好ましい性質である。しかし、無灰炭は、揮発分(VM)が通常40質量%を超える高い値となり、自己焼結性に劣り、200℃程度で軟化する。それによって、無灰炭は、成形できても、成形体を加熱処理して炭素材料とする炭素化(炭化)時に変形が生じ、アルミニウム電解製造用アノードの主原料コークス(炭素材料)(以下、適宜、アノード用コークスという)としては使用できないという問題がある。また、成形体の炭素化時に、非常に大きく膨張し、成形体が発泡し、アノード用コークスの製造上は問題になる。すなわち、製造したままの無灰炭を炭素化すると、炭素化時に生成する低分子化合物ガス(水蒸気、CO、CO、炭化水素等)による気孔がそのまま残るため、アノード用コークスとして適当な、緻密なコークスは生成しない。具体的には、塊状のコークスが得られず、粉状のコークスになる。なお、鉄または非鉄金属精錬用の還元用炭素材、構造用炭素材、アノード用コークス以外の電気材料用炭素材等に使用する場合も、同様の問題が生ずる。
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、その課題は、緻密かつ変形のない、極めて灰分濃度の低い高純度の炭素材料を、経済的に得ることができる炭素材料の製造方法を提供することにある。
本発明者らが種々検討した結果、無灰炭の揮発分(以下、適宜、VMという)を所定範囲に調整することが、アノード用コークスをはじめ、鉄または非鉄金属精錬用の還元用炭素材、構造用炭素材、アノード用コークス以外の電気材料用炭素材等の原料とするのに好ましいことを本発明者らは見出した。
具体的には、無灰炭を加熱処理することで、アルキル基の分解、芳香族化反応、含酸素官能基の分解、低分子量成分の除去等、水素含有率が低下するような化学・物理的変化が進行して、VMが徐々に低下し、無灰炭のVMを所定範囲に調整することができる。また、無灰炭を炭素化処理することで、VMを所定範囲に調整することができる。これにより、無灰炭の膨張性を抑制すると共に、自己焼結性を向上させることができ、その結果、炭素化時の発泡および変形を抑制できることを見出し、本発明に到達するに至った。
すなわち、本発明に係る鉄または非鉄金属精錬用の還元用炭素材、構造用炭素材、電気材料用炭素材、または、これらの原料として用いる炭素材料の製造方法は、石炭と溶剤とを混合したスラリーを加熱して前記溶剤に可溶な石炭成分を抽出し、抽出後のスラリーを液部と非液部に分離し、前記液部から前記溶剤を分離することで石炭を改質して、改質炭である無灰炭を製造する無灰炭製造工程と、前記無灰炭製造工程で製造された無灰炭を加熱処理して、揮発分(VM)が40質量%以下である改質無灰炭を製造する無灰炭加熱工程と、前記無灰炭加熱工程で製造された改質無灰炭を成形原料の主成分として、この改質無灰炭を成形して見掛比重0.9g/cm以上の成形体を製造する成形工程と、前記成形工程で製造された成形体を炭素化処理して炭素材料とする炭素化工程と、を含むことを特徴とする。
このような製造方法によれば、無灰炭製造工程において、石炭が改質されることで、灰分濃度が極めて低い改質炭である無灰炭が製造される。次に、無灰炭加熱工程において、この無灰炭が加熱処理されることで、VMが40質量%以下の改質無灰炭が製造される。次に、成形工程において、この改質無灰炭が見掛比重0.9g/cm以上に成形されることで、次工程の炭素化工程での膨張が抑制されると共に、強度も維持される。次に、炭素化工程において、この改質無灰炭からなる成形体が炭素化処理されることで、VMが調整された炭素材料が得られる。そして、加熱処理後の無灰炭のVMが40質量%以下であることで、無灰炭の膨張性が抑制されると共に、自己焼結性が十分となり、炭素化処理の際、改質無灰炭からなる成形体の発泡が抑制されて、緻密かつ変形のない、灰分濃度の極めて低い炭素材料となる。
また、本発明に係る炭素材料の製造方法では、前記無灰炭加熱工程において、前記無灰炭の加熱処理を、前記石炭の改質に使用した溶剤と同じ溶剤の存在下で行うことが好ましい。
このような製造方法によれば、溶剤を用いることで、伝熱効率が高くなり、無灰炭の加熱が均一となる。さらに、石炭の改質に使用した溶剤と同じ溶剤を用いるため、経済性が向上する。
また、本発明に係る炭素材料の製造方法では、前記炭素化工程において、前記成形体の炭素化処理を、ロータリーキルンを用いて行うことが好ましい。
このような製造方法によれば、ロータリーキルンを用いることで、VM調整が容易となり、炭素材料の自己焼結性がより一層向上し、変形がより一層抑制できる。また、連続的炭素化処理が可能となり、より一層経済性が向上する。
本発明に係る炭素材料の製造方法によれば、低灰であり、緻密かつ変形のない炭素材料を得ることができる。また、このような炭素材料を経済的に得ることができる。
本発明に係る炭素材料の製造方法の手順を示す工程フローである。 ロータリーキルンの構成の概略を示す正面図である。 図2のA−A線に沿った断面図である。
次に、本発明に係る炭素材料の製造方法ついて詳細に説明する。
図1に示すように、炭素材料の製造方法は、無灰炭製造工程S1と、無灰炭加熱工程S2と、成形工程S3と、炭素化工程S4と、を含むものである。
以下、各工程について説明する。
<無灰炭製造工程(S1)>
無灰炭製造工程S1は、溶剤を用いて石炭を改質して、改質炭である無灰炭を製造する工程である。
なお、本発明でいう無灰炭とは、いわゆるハイパーコールのことであり、石炭を溶剤抽出し、灰分と非溶解性の石炭成分を除去することにより製造されたものである。この無灰炭は、灰分が極めて少なく(灰分濃度1.0質量%以下)、水分は概ね0.5質量%以下である。
無灰炭を溶剤抽出で得る方法は、公知の方法を用いることができ、溶剤種や製造条件は、石炭の性状や炭素材料の原料としての設計を鑑みて、適宜選択されるものである。典型的な方法は、石炭に対して大きな溶解力を持つ溶媒、多くの場合、芳香族溶剤(水素供与性あるいは非水素供与性の溶剤)と石炭を混合して、それを加熱し、石炭中の有機成分を抽出する、という方法である。しかし、より高効率、かつ安価に無灰炭を得るため、例えば、次の方法により無灰炭を製造することが好ましい。その方法では、まず、石炭と非水素供与性溶剤とを混合した混合物(スラリー)を加熱して、非水素供与性溶剤に可溶な石炭成分を抽出する。次に、抽出後のスラリーを液部と非液部に分離し、前記液部から、前記非水素供与性溶剤を分離することで無灰炭を製造する。
無灰炭の原料とする石炭(以下、原料石炭ともいう)は、瀝青炭を使用することが好ましい。しかし、用いる石炭は、瀝青炭に限るものではなく、必要に応じて、劣質炭を使用することができる。安価な劣質炭を使用することにより、炭素材料を安価に製造することができるため、経済性が向上する。また、原料石炭の水分含有量が高い場合には、溶剤抽出に先立って脱水を行うことが好ましい。
なお、ここでの劣質炭とは、非微粘結炭、一般炭、低品位炭(褐炭、亜瀝青炭等)等の石炭をいう。低品位炭には、例えば、褐炭、亜炭、亜瀝青炭等がある。また、例えば、褐炭には、ビクトリア炭、ノースダコタ炭、ベルガ炭等があり、亜瀝青炭には、西バンコ炭、ビヌンガン炭、サマランガウ炭等がある。低品位炭は前記例示のものに限定されず、多量の水分を含有し、脱水することが望まれる石炭は、いずれも本発明のいう低品位炭に含まれる。なお、石炭はできるだけ小さい粒子に粉砕しておくのが好ましく、粒径1mm以下とするのが好ましい。
非水素供与性溶剤は、主に石炭の乾留生成物から精製した、2環芳香族を主とする溶剤である石炭誘導体である。この非水素供与性溶剤は、加熱状態でも安定であり、石炭との親和性に優れているため、溶剤に抽出される可溶成分(ここでは石炭成分)の割合(以下、抽出率ともいう)が高く、また、蒸留等の方法で容易に回収可能な溶剤である。非水素供与性溶剤の主たる成分としては、2環芳香族であるナフタレン、メチルナフタレン、ジメチルナフタレン、トリメチルナフタレン等が挙げられ、その他、非水素供与性溶剤の成分としては、脂肪族側鎖をもつナフタレン類、アントラセン類、フルオレン類、また、これにビフェニルや長鎖脂肪族側鎖をもつアルキルベンゼンが含まれる。
非水素供与性溶剤を使用して加熱抽出することにより、石炭の抽出率を高めることができる。また、極性溶剤とは違い、容易に溶剤を回収することができるため、溶剤を循環使用しやすい。さらに、高価な水素や触媒等を用いる必要がないため、安価なコストで石炭を可溶化して無灰炭を得ることができ、経済性の向上を図ることができる。
溶剤に対する石炭濃度は、原料石炭の種類にもよるが、乾燥炭基準で3〜50質量%の範囲が好ましく、3〜10質量%の範囲がより好ましい。溶剤に対する石炭濃度が3質量%未満であると、溶剤の量に対し、溶剤に抽出する石炭成分の割合が少なくなり、経済的ではない。一方、石炭濃度は高いほど好ましいが、50質量%を超えると、調製したスラリーの粘度が高くなり、スラリーの移動や後記する液部と非液部との分離が困難となりやすい。
スラリーの加熱温度は、300〜450℃の範囲とするのが好ましい。加熱温度をこの範囲とすることにより、石炭を構成する分子間の結合が緩み、緩和な熱分解が起こり、抽出率が最も高くなる。加熱温度が300℃未満であると、石炭を構成する分子間の結合を弱めるのに不十分となりやすく、抽出率が向上しにくい。一方、450℃を超えると、石炭の熱分解反応が非常に活発になり、生成した熱分解ラジカルの再結合が起こるため、抽出率が向上しにくく、また、石炭の変質が起こりにくくなる。なお、好ましくは、300〜400℃である。
加熱時間(抽出時間)は、溶解平衡に達するまでの時間が規準であるが、それを実現することは経済的に不利である。従って、石炭の粒子径、溶剤の種類等の条件によって異なるので一概には言えないが、通常は10〜60分程度である。加熱時間が10分未満であると、石炭成分の抽出が不十分となりやすく、一方、60分を超えても、それ以上抽出が進行しないため、経済的ではない。
非水素供与性溶剤に可溶な石炭成分の抽出は、不活性ガスの存在下で行うことが好ましい。酸素に接触すると、発火する恐れがあるため危険であり、また、水素を用いた場合には、コストが高くなるためである。
用いる不活性ガスとしては、安価な窒素を用いることが好ましいが、特に限定されるものではない。また、圧力は、抽出の際の温度や用いる溶剤の蒸気圧にもよるが、1.0〜2.0MPaが好ましい。圧力が溶剤の蒸気圧より低い場合には、溶剤が揮発して液相に閉じ込められず、抽出できない。溶剤を液相に閉じ込めるには、溶剤の蒸気圧より高い圧力が必要となる。一方、圧力が高すぎると、機器のコスト、運転コストが高くなり、経済的ではない。
このようにして石炭成分を抽出した後のスラリーを液部と非液部に分離する。
ここで、液部とは、溶剤に抽出された石炭成分を含む溶液をいい、非液部とは、溶剤に不溶な石炭成分(灰分を含む石炭すなわち灰炭)を含む溶質をいう。
スラリーを液部と非液部とに分離する方法としては、各種の濾過方法や遠心分離による方法が一般的に知られている。しかしながら、濾過による方法ではフィルタの頻繁な交換が必要であり、また、遠心分離による方法では未溶解石炭成分による閉塞が起こりやすく、これらの方法を工業的に実施するのは困難である。従って、流体の連続操作が可能であり、低コストで大量の処理にも適している重力沈降法を用いることが好ましい。これにより、重力沈降槽の上部からは、溶剤に抽出された石炭成分を含む溶液である液部(以下、上澄み液ともいう)を、重力沈降槽の下部からは溶剤に不溶な石炭成分を含む溶質である非液部(以下、固形分濃縮液ともいう)を得ることができる。
そして、この液部から、非水素供与性溶剤を分離することにより、無灰炭を得る。
上澄み液(液部)から溶剤を分離する方法は、一般的な蒸留法や蒸発法(スプレードライ法等)等を用いることができ、上澄み液からは、実質的に灰分を含まない無灰炭を得ることができる。この無灰炭は、灰分含有量が1.0質量%以下と、灰分をほとんど含まず、水分は概ね0.5質量%以下であり、また原料石炭よりも高い発熱量を示す。従って、この無灰炭を炭素化することで、極めて灰分濃度の低い高純度の炭素材料を得ることができる。
<無灰炭加熱工程(S2)>
無灰炭加熱工程S2は、前記無灰炭製造工程S1で製造された無灰炭を加熱処理する工程である。
無灰炭は、製造されたままの状態では、一般に膨張性が激しく、変形もしやすいので、それを抑制するために加熱処理を行う。その際、加熱処理後の無灰炭の揮発分(VM)が40質量%以下、好ましくは25〜40質量%の範囲となるように、加熱処理することが必要である。なお、VMの測定は、JISM8812に準じて行う。また、加熱処理後の無灰炭の水素と炭素の原子数比(以下、適宜、H/C原子数比という)を、0.68以下の範囲にすることが好ましく、0.5〜0.65の範囲にすることがさらに好ましい。
ここで、何も処理しない、製造されたままの状態の無灰炭のVMは、原料炭種や、無灰炭の製造条件によって異なるが、概ね、VMが40質量%を超える高い値となる。しかし、この無灰炭に加熱処理を施すと、アルキル基の分解、芳香族化反応、含酸素官能基の分解、低分子量成分の除去等、水素含有率が低下するような化学・物理的変化が進行し、VMは徐々に低下していく。そこで、加熱処理によって、VMが40質量%以下の範囲になるように調整する。また、製造されたままの無灰炭のH/C原子数比は、概ね0.7〜1.0であり、H/C原子数比も加熱処理による化学・物理的変化によって徐々に低下していく。そこで、加熱処理によって、H/C原子数比が0.68以下の範囲になるように調整することが好ましい。
VMが40質量%を超えた高い値であることは、200℃程度で軟化し、自己焼結性が低いことを示している。そのため炭素化工程S4における炭素化時に、改質無灰炭からなる成形体に発泡および変形が生じ、改質無灰炭を後工程の炭素化工程S4で炭素化しても、粉状の炭素材料しか得ることができない。このように、無灰炭の加熱処理により、VMを40質量%以下の範囲に調整することで、成形体の発泡および変形を抑制することができる。また、VMが小さすぎると、改質無灰炭が硬すぎることとなり、粉砕や成形が難しくなる恐れがある。したがって、VMは25質量%以上であることが好ましい。
H/C原子数比が0.68より大きいということは、加熱処理が不十分なことを示しており、無灰炭には比較的多くの水素が含まれている。そのため、H/C原子数比が0.68を超えると、後記する炭素化工程S4における炭素化時に、無灰炭(改質無灰炭)が発泡してしまう。このように、無灰炭の加熱処理により、H/C原子数比を0.68以下の範囲に調整することで、無灰炭(改質無灰炭)の炭素化時の発泡を抑制することができる。また、H/C原子数比が小さいということは、加熱処理が過剰である可能性があり、自己焼結性が不十分となり、改質無灰炭を後工程の炭素化工程S4で炭素化しても、粉状の炭素材料しか得ることができない恐れがある。したがって、H/C原子数比は0.5以上であることが好ましい。
無灰炭の加熱処理の方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法で行うことができる。そして、減圧、常圧、加圧や、不活性雰囲気中で、無灰炭を350〜500℃、好ましくは、350〜450℃に加熱する。必要な処理時間は、無灰炭の性状や、処理温度により異なるが、概ね10分から5時間、好ましくは、10分から2時間の範囲である。
そして、無灰炭加熱工程S2におけるVM、好ましくは、H/C原子数比の制御は、予備実験等で、VMが40質量%以下、好ましくは、H/C原子数比が0.68以下となる処理温度、処理時間を前記範囲から設定し、その設定された処理温度、処理時間で行う。
また、無灰炭の加熱処理は、無灰炭を単独で加熱処理してもよいし、無灰炭製造工程で石炭の改質に使用した溶剤と同じ溶剤の存在下で行うことが好ましい。
すなわち、無灰炭を溶剤と混合し、スラリー状にして加熱処理する。無灰炭に対する溶剤の量は特に限定されるものではないが、適度な粘度のスラリーとする観点から、例えば、溶剤に対する無灰炭濃度が、乾燥炭基準で10〜50質量%、好ましくは、20〜35質量%の範囲とすればよい。また、前記溶剤に抽出された石炭成分である液部を、それから溶剤を分離することなく、そのまま加熱することによって、ここで言う無灰炭の加熱処理を行ってもよい。なお、加熱処理後の無灰炭から溶剤を分離する方法は、一般的な蒸留法や蒸発法(スプレードライ法等)等を用いることができる。
溶剤を用いることで、無灰炭をそのまま加熱するよりも伝熱効率が高くなり、均一な加熱が可能となる。さらに、石炭の改質に使用した溶剤と同じ溶剤を使用することで、製造コストを下げることができる。なお、無灰炭の加熱処理に用いる溶剤としては、アルキルナフタレンやアントラセン油等が好適なものとして挙げられる。
<成形工程(S3)>
成形工程S3は、前記無灰炭加熱工程S2で製造された改質無灰炭を成形原料の主成分として、この改質無灰炭を成形して見掛比重0.9g/cm以上の成形体を製造する工程である。
改質無灰炭の成形は公知の方法により行うことができる。例えば、圧縮成形、押し出し成形、ダブルロール式タブレット成形等である。ダブルロール式タブレット成形が好ましい。なお、成形前の改質無灰炭が塊状である場合には、成形前に粒径1mm以下程度に粉砕する。微粉砕して高圧プレスすれば比較的容易に成形体を得ることができる。
成形工程S3では、成形体の見掛比重が0.9g/cm以上となるように成形し、圧密化させることが好ましい。このような成形により、次工程の炭素化工程S4での成形体の膨張、および、強度低下を抑えることができる。見掛比重が0.9g/cm未満では、炭素化工程S4において、成形体が膨張すると共に、強度が低下して壊れる。具体的には、成形体から製造される炭素材料が塊状ではなく粉状となる。また、見掛比重の上限値は特に限定するものではなく、1.5g/cm程度にすることもできる。なお、生産性や経済性等を考慮すると、見掛比重の好ましい上限値は1.2g/cmである。
なお、見掛比重の測定は、「コークス・ノート2001年版(社団法人日本コークス協会編集、78〜79頁)」に記載された少量法に準じて行う。
そして、成形工程S3における見掛比重の制御は、予備実験等で予め設定した成形圧力で行い、その成形圧力は成形方法にもよるが、0.1〜5トン/cmが好ましい。
また、成形工程では、必要に応じて調湿したり、適当なバインダー化合物を用いてもよい。バインダー化合物としては、タール、ピッチ、無灰炭そのもの、樹脂等、公知のものを使用することができる。このうち、無灰炭そのものは、灰分含有率が小さいため最も好ましい。さらに炭素繊維等の適当な充填材や、無灰炭製造工程S1で副生する軽質分や残渣炭等を添加混合して用いてもよい。
バインダー化合物を配合する場合には、成形体中における改質無灰炭の割合が80質量%以上であることが好ましい。改質無灰炭の割合が80質量%未満では、改質無灰炭を成形しにくく、成形しても、次工程の炭素化工程S4での炭素化処理により、成形体が膨張したり、気孔が生成したりするため、気孔率の小さい炭素材料を高い収率で得ることが難しい。また、炭素材料の見掛け比重が低くなりやすい。さらに、炭素材料の強度の維持も難しい。従って、成形体中における改質無灰炭の割合が80質量%以上を占めるように配合して、成形原料とする。より好ましくは、90質量%以上、さらに好ましくは、100質量%、すなわち前工程の無灰炭加熱工程S2で製造された改質無灰炭にバインダー化合物を添加せずに、そのまま成形する。
<炭素化工程(S4)>
炭素化工程S4は、前記成形工程S3で製造された成形体を炭素化処理して炭素材料とする工程である。この炭素化工程により、改質無灰炭が炭素化され、炭素材料が得られる。また、この炭素化工程により、改質無灰炭に残留する溶媒を除去、回収できる。
炭素化処理の方法や条件は、特に限定されるものではなく、公知の技術を用いて行うことができる。典型的には、窒素やアルゴン等の不活性雰囲気中で、550〜1200℃で蒸し焼きにして加熱処理し、改質無灰炭を炭素に変えると共に、改質無灰炭のVMが40%未満に調整される。また、昇温速度は、0.1〜5℃/分、処理時間は5〜60分であることが好ましい。この炭素化処理は熱間静水圧プレス装置等を用いて、加圧下で行ってもよい。また、必要により、アスファルトピッチやタール等のバインダー成分を添加してもよい
そして、炭素化工程S4におけるVMの調整は、予備実験等で予め設定した、VMが40質量%以下となる処理温度で制御する。
炭素化に用いる熱処理炉の形式にも特に制約はなく、公知のものを用いることができる。例えば、ポット炉、リードハンマー炉、キルン、ロータリーキルン、シャフト炉、あるいは室炉等を挙げることができる。好ましくは、連続的炭素化処理が可能な点でロータリーキルンである。また、ロータリーキルンは、回転しながら製品(炭素材料)を熱処理するため、製品の固着がなく、粒状製品を容易に得ることができる。さらに、粉砕処理も行う必要がない。シャフト炉、特に縦型のシャフト炉は製品が固着しやいという問題があり、室炉はバッチ処理のため生産効率が低いという問題がある。なお、これらの炉形式に限定されるものではなく、この他の炉形式を用いてもよい。
ロータリーキルンは、図2、図3に示すような構成を備えたものが使用される。
ロータリーキルンは、内部に被処理物、具体的には、改質無灰炭からなる成形体が供給される円筒状の回転ドラム1と、回転ドラム1の両端部2、3以外の外周部分に設けられ、回転ドラム1の外周面との間に加熱室5を形成する外筒4とを備える。そして、回転ドラム1の外周面の一端2には、被処理物が供給される供給口6が備えられ、他端3には、加熱処理された被処理物、具体的には、炭素化処理によって製造された炭素材料が排出される排出口7が備えられている。また、外筒4の外周面には、加熱室5に加熱媒体(例えば、熱風)を供給する加熱媒体供給路11と、その加熱媒体供給路11と金属板10によって隔てられ、加熱媒体を外部に排出する加熱媒体排出路13とが備えられている。なお、ロータリーキルンの回転速度は、特に制約はないが、1〜60rpmが好ましい。
ロータリーキルンでは、加熱媒体供給路11に設けた複数の開口12から加熱室5へ加熱媒体が供給される。そして、供給された加熱媒体は回転ドラム1の外周に沿って回転ドラム1の周囲を略1周し、加熱媒体排出路13に設けた複数の開口14から外部へ排出される。このように加熱媒体を通流させ、加熱媒体の熱を回転ドラム1へ伝熱することで、回転ドラム1内部が加熱される。一方、被処理物は、供給口6より回転ドラム1内へ供給され、回転ドラム1の回転によって、供給口6側から排出口7側に攪拌しながら移送される。このとき、被処理物は加熱室5の間接加熱によって加熱され、被処理物が炭素化処理される。なお、金属板10と回転ドラム1の間には隙間16が設けられ、金属板10が回転ドラム1の回転の障害とならないようにしている。また、外筒4の内周面は耐火材15で覆われている。
そして、本発明の製造方法で得られた炭素材料は、アルミニウム電解製造用アノードの主原料コークスとして、好適に使用することができる。また、この他、鉄または非鉄金属精錬用の還元用炭素材、構造用炭素材またはアルミニウム電解製造用アノード以外の電気材料用炭素材として用いることもでき、あるいは、還元用炭素材、構造用炭素材または電気材料用炭素材の原料として用いることもできる。ここで、非鉄金属精錬用の還元用炭素材とは、シリコンやチタン等の非鉄金属の精錬(還元)に用いる還元用炭素材をいい、構造用炭素材とは、例えば、炭素製断熱材や、るつぼ等の炭素製の構造材の原料として用いる炭材をいい、電気材料用炭素材とは、アルミニウム電解製造用アノードの他、炭素製電極等の炭素製の電気材料の原料として用いる炭素材をいう。なお、これらの原料として用いるとしたのは、例えば、炭素材料に、熱処理等の二次的な処理を施すことが必要な場合があるためである。
以上説明したように、本発明の炭素材料の製造方法は、無灰炭製造工程S1、無灰炭加熱工程S2、成形工程S3、炭素化工程S4を含むものである。しかし、本発明を行うにあたり、前記各工程に悪影響を与えない範囲において、前記各工程の間あるいは前後に、例えば、原料石炭を粉砕する石炭粉砕工程や、ごみ等の不要物を除去する除去工程や、無灰炭を乾燥させる無灰炭乾燥工程等、他の工程を含めてもよい。
次に、本発明に係る炭素材料の製造方法の実施例について、具体的に説明する。
まず、豪州産の燃料用石炭(瀝青炭)5kgに対し、4倍量(20kg)の溶剤(1−メチルナフタレン(新日鉄化学社製))を混合してスラリーを調製した。このスラリーを1.2MPaの窒素で加圧して、内容積30Lのオートクレーブ中370℃、1時間の条件で抽出した。このスラリーを同一温度、圧力を維持した重力沈降槽内で上澄み液と固形分濃縮液とに分離し、上澄み液から蒸留法で溶剤を分離・回収して、無灰炭を得た。
次に、無灰炭100gを内容積2Lのオートクレーブに入れ、400℃の窒素気流中で表1に示す処理時間で加熱処理を行って、表1に示すVMを有する改質無灰炭を得た。なお、ここでは、加熱処理を行わない無灰炭も改質無灰炭とする。また、VMの測定はJISM8812に準じて行った。
この改質無灰炭を1mm以下に粉砕して、直径10mmの円柱型キャビティーのある金型に3g充填する。キャビティー内に充填された改質無灰炭を、室温において、表1に示す成形圧力を30秒間かけて成形し、表1に示す見掛比重を有する成形体を得た。なお、見掛比重の測定は前記した少量法に準じて行った。
この成形体を小型ロータリーキルンに入れ、600℃で炭素化処理を行い、炭素材料を得た。
得られた炭素材料について、目視で外観を観察すると共に、前記した少量法に準じて見掛比重を測定し、以下の評価基準で評価した。
外観が塊状で見掛比重が0.5g/cm以上のものを緻密な炭素材料であるとして「良好」、外観が粉状で見掛比重が0.5g/cm未満のものを緻密でない炭素材料であるとして「不可」とした。その評価結果を表1に示す。
Figure 2012184125
表1に示すように、本発明の要件を満たす実施例No.2〜5は、緻密な炭素材料を得ることができた。
一方、本発明の要件を満たさない比較例No.1、6〜8は、緻密な炭素材料を得ることができなかった。
以上、本発明に係る炭素材料の製造方法について、実施の形態および実施例を示して詳細に説明したが、本発明の趣旨は前記した内容に限定されることなく、その権利範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて広く解釈しなければならない。なお、本発明の内容は、前記した記載に基づいて広く改変・変更等することができることはいうまでもない。
S1 無灰炭製造工程
S2 無灰炭加熱工程
S3 成形工程
S4 炭素化工程

Claims (3)

  1. 鉄または非鉄金属精錬用の還元用炭素材、構造用炭素材、電気材料用炭素材、または、これらの原料として用いる炭素材料の製造方法であって、
    石炭と溶剤とを混合したスラリーを加熱して前記溶剤に可溶な石炭成分を抽出し、抽出後のスラリーを液部と非液部に分離し、前記液部から前記溶剤を分離することで石炭を改質して、改質炭である無灰炭を製造する無灰炭製造工程と、
    前記無灰炭製造工程で製造された無灰炭を加熱処理して、揮発分(VM)が40質量%以下である改質無灰炭を製造する無灰炭加熱工程と、
    前記無灰炭加熱工程で製造された改質無灰炭を成形原料の主成分として、この改質無灰炭を成形して見掛比重0.9g/cm以上の成形体を製造する成形工程と、
    前記成形工程で製造された成形体を炭素化処理して炭素材料とする炭素化工程と、を含むことを特徴とする炭素材料の製造方法。
  2. 前記無灰炭加熱工程において、前記無灰炭の加熱処理を、前記石炭の改質に使用した溶剤と同じ溶剤の存在下で行うことを特徴とする請求項1に記載の炭素材料の製造方法。
  3. 前記炭素化工程において、前記成形体の炭素化処理を、ロータリーキルンを用いて行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の炭素材料の製造方法。
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