JP2012201718A - グリース組成物 - Google Patents

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徹彦 棚橋
Yusuke Matsumura
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Abstract

【課題】 優れた潤滑性を付与し、温度上昇によるトルクの減少を防止することができるグリース組成物を提供する。
【解決手段】 グリース組成物は、少なくともフッ素油と、窒化硼素とからなり、混和ちょう度が220〜340である。また、グリース組成物は、ダイラタンシー性を有するもの、すなわち、温度の上昇に伴って粘性が高くなるものが好ましい。
【選択図】 図1

Description

本発明は、特定の温度域において粘性が高くなるグリース組成物に関する。
高衝撃吸収型のダンパーは、油圧やバネで構成され、自動車や建設機械、大型作業機械などに搭載される。一方、フィーリング調整、振動の抑制、軽度の衝撃の吸収を目的として、ビデオデッキ、DVD、車などのインジェクトダンパー、洗濯機の防振用にダンパーグリースが用いられる。
ダンパーグリースとしては、主に、シリコーン油などの高粘度オイルに充填剤を配合したものが挙げられる。近年は、シリコーン油などの媒体に微粒子磁性粉末を分散し、磁気または電気により、揺変性流体を作り出す技術もある。
ダンパーグリースに要求される性能は、目的とする温度域においてグリースや機構部品により一定のトルクを与えること、すなわち、様々な条件下においてトルクを増減させないことである。トルクを変動させる要因として、例えば温度が挙げられ、基油の温度−粘度特性に大きく左右される。例えば、摺動速度や荷重により、ダンパーグリースにせん断が与えられると温度が上昇するため、このせん断によりダンパーグリースが大きく軟化する、すなわち、トルクが減少する。
低トルク用のダンパーグリースの場合には、元来有するグリース粘性が小さく、温度による粘度変化が起こってもその変化量の絶対値が小さいため、見掛け上のトルク変化が少ない。一方、携帯電話やノートパソコンなどのヒンジ部品に使用されるダンパーグリースは、高粘性のものが多く、温度によるトルク変化が大きいという問題がある。
レオロジー的な解釈によると、ほとんどのグリースは、チキソトロピー性を有する。チキソトロピー性とは、攪拌・振動により固体が液体に変わる現象である。これは、系全体に広がる大きい凝集構造、すなわち、増ちょう剤ネットワークがせん断により破壊され、グリースの基油に近い特性を示すことである。
また、チキソトロピー性の対の言葉としてダイラタンシー性がある。ダイラタンシー性とは、液体を含む粒子にせん断を加えた際に固くなり、流動性を失う現象である。ダイラタンシー性を有する物質例として、例えば、片栗粉と水との分散体が挙げられる。水中に片栗粉の粒子が最密充填することで、容易にこのような現象が起こる流体(ダイラタンシー流体)を作製することが可能である。
ダイラタンシー流体では、せん断が加わることで微粒子の配置関係が変化して、微粒子間に存在する自由空間が増大し、その増大した自由空間に流体が吸い込まれ、微粒子が擦れ合うため、トルクが増大する。しかし、ダイラタンシー流体は、非常に限られた条件下でしか発現することができない。
グリースにおいては、組成の組み合わせによって、独創的な粘弾性特性を与えることが可能と考えられ、特に、増ちょう剤の選択、増ちょう剤の構造の制御、増ちょう剤を分散させる処理法が重要と考えられる。
特許文献1には、現存のダンパーグリースに関する技術が記載されている。この特許文献1には、シリコーン油およびポリイソブデンを基油とし、様々な増ちょう剤を組み合わせたグリース組成物について記載されている。しかし、ポリイソブテンは、シリコーン油に比べて基油粘度指数が低いため、ポリイソブテンがリッチとなる組成においては温度変化によるトルク変化が大きくなり、ダンパーグリースの要求仕様を達成することができない。また、ポリイソブデンは、耐熱性にも乏しいため、高温下において使用することができない。
特許文献2には、ポリオレフィンと各種増ちょう剤とを組み合わせたグリースについて記載されている。しかし、基油であるポリオレフィンは、基油粘度指数が低く、低温流動性も乏しいため、ダンパーグリースの要求仕様を完全に満足することができない。
特許文献3〜特許文献5には、シリコーン油をシリカ等の無機増ちょう剤で増ちょうしたグリースについて記載されている。シリコーン油は、合成油の中で最も粘度指数に優れるため、基油としては最適である。しかし、シリコーン油は、シリカとの組み合わせでは、摺動によるグリースの軟化が起こりやすい、すなわち、せん断安定性に乏しいため、意図しないトルク減少を伴う場合がある。
特許文献6には、シリコーン油と疎水性微粉末シリカゲルとを組み合わせたグリースについて記載されている。このようにシリコーン油と疎水性微粉末シリカゲルとを組み合わせたグリースは、せん断安定性に優れている。しかし、このシリコーングリースは、潤滑性に乏しく、特に、金属同士の摺動には不向きであるため、部材が制限されてしまう。
このような問題点を解決するためには、基油の温度−粘度特性、低温流動性、せん断安定性、潤滑性等が重要となる。現存する技術では、基油粘度指数が高くても温度が上昇するとトルクが減少してしまうため、温度上昇によるトルクの減少が最大の問題点と考えられる。
このような問題点を解決するために、例えば、グリースのダイラタンシー性を利用することが考えられる。ダイラタンシー流体に関する技術は、例えば、特許文献7〜特許文献9に記載されている。特許文献7〜特許文献9に記載されたダイラタンシー流体は、いずれもシリコーン油を微粒子のシリカ等の無機充填剤で増粘し、分散剤などの添加剤を加えたものである。しかし、特許文献7〜特許文献9に記載された組成物は、いずれもダイラタンシー特性を有するものの、金属間での潤滑性が乏しいため、使用箇所が制限されてしまう。
特公昭56−16195号公報 特公平5−34394号公報 特公昭53−776号公報 特公昭60−45240号公報 特開2007−211070号公報 特開2010―275384号公報 特開平8−281095号公報 特開2006−2027号公報 特許第3922370号公報
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、優れた潤滑性を付与し、温度上昇によるトルクの減少を防止することができるグリース組成物を提供することを目的とする。
本件発明者らは、鋭意検討を行った結果、混和ちょう度を調整し、グリースのダイラタンシー性を利用することにより、温度上昇によるトルクの減少を防止することができることを見出した。
すなわち、本発明に係るグリース組成物は、少なくともフッ素油と、窒化硼素とからなり、混和ちょう度が220〜340であることを特徴とする。
本発明によれば、優れた潤滑性を付与することができ、また、特定の温度域においてグリース組成物の粘性が高くなるため、温度上昇によるトルクの減少を防止することができる。
グリース組成物のせん断粘度と温度との関係を示すグラフである。 グリース組成物のせん断粘度と温度との関係を示すグラフである。 グリース組成物のせん断粘度と温度との関係を示すグラフである。
以下、本発明に係るグリース組成物に関する具体的な実施の形態(本実施の形態)について、以下の順序で詳細に説明する。
1.グリース組成物
2.グリース組成物の製造方法
3.実施例
<1.グリース組成物>
本実施の形態に係るグリース組成物は、少なくともフッ素油と、窒化硼素とからなり、混和ちょう度が220〜340である。ここで、混和ちょう度とは、例えば、グリース組成物を規定の混和器で25℃に保ってから60回混和した直後のちょう度をいう。
フッ素油は、グリース組成物の基油として用いられる。フッ素油としては、直鎖状のフッ素油や側鎖状のフッ素油を使用することができ、例えば、パーフルオロポリエーテルを使用することができる。特に、潤滑性、対腐食性、対樹脂性、対ゴム性に優れ、中でも温度−粘度特性に優れる直鎖状のフッ素油を使用することが好ましい。
フッ素油は、その動粘度については特に限定されず、いずれの動粘度のものであっても使用することができるが、40℃における動粘度が60〜400mm/sであるものが好ましい。40℃における動粘度を60mm/s以上とすることにより、耐熱性を十分に付与することができ、40℃における動粘度を400mm/s以下とすることにより、トルクが過大になることを防止することができる。
窒化硼素(BN)は、増ちょう剤として用いられる。窒化硼素は、種々の固体潤滑剤に匹敵する程、潤滑性に優れている。また、窒化硼素は、他の添加剤と比べて耐熱性が優れており、約900℃まで構造が破壊されずに一定の摩擦係数を示すため、広い温度範囲で使用することができる。さらに、窒化硼素は、熱伝導率が高く電気伝導率が低いといった特別な性能を有する。
窒化硼素としては、広範囲の粒子径においてグリース組成物の粘性を高くすることができるが、例えば、一次粒子径が4〜70μmであるものを用いることができる。窒化硼素は、得たい特性値および粘性を得るために、一次粒子径が異なる二種類以上の窒化硼素を組み合わせて使用するようにしてもよい。
なお、一次粒子径とは、例えば、凝集粒になっていない粒子(一次粒子)について、走査電子顕微鏡(SEM)5000倍写真の視野において100個の粒子径を計測し、平均を求めた値をいう。
本実施の形態に係るグリース組成物は、少なくとも上述したフッ素油と窒化硼素とからなるものであり、そしてこのフッ素油と窒化硼素とを混和ちょう度が220〜340となる範囲で含有させてなる。
このように、本実施の形態に係るグリース組成物は、フッ素油と窒化硼素とからなり、混和ちょう度が220〜340となるように配合されてなることにより、ダイラタンシー性を有し、せん断力が加わることで固体と流体との配列関係が変化するようになり、トルクを増大させることができる。具体的には、温度が上昇することによって、フッ素油の粘度が低くなり、窒化硼素粒子の集合体の濡れが進行し、窒化硼素粒子の集合体の表面および空間内にフッ素油が進行して窒化硼素粒子同士が擦れ合いトルクが増大することとなる。このように、本実施の形態に係るグリース組成物は、特定の温度域において構造が変化して、グリース組成物の粘性が高くなるため、温度上昇によるトルクの減少を防止することができる。
また、このグリース組成物は、混和ちょう度が220〜340であることにより、固くなりすぎることを防止して、ハンドリング性が乏しくなってしまうことを防止することができ、また、グリースの状態を維持して、油分離が多くなることを防止することができる。さらに、グリース組成物の混和ちょう度を220〜340の範囲内で適宜調整することにより、グリース組成物の粘性が高くなる温度や、グリース組成物の粘度の増加量を制御することが可能となる。
以上説明したように、本実施の形態に係るグリース組成物によれば、優れた潤滑性を付与することができ、また、特定の温度域においてグリース組成物の粘性が高くなるため、温度上昇によるトルクの減少を防止することができる。
また、上述したグリース組成物は、例えば、ダンパーに好適に使用することができる。グリース組成物をダンパーグリースとして使用することにより、ダンパーグリースや機構部品により、温度上昇によるトルクの減少を防止して、一定のトルクを与えることができる。
なお、グリース組成物は、要求される性能を低下させない範囲で、上述したフッ素油および窒化硼素以外にも種々の添加剤が任意に配合されていてもよい。
<2.グリース組成物の製造方法>
上述したグリース組成物は、例えば、混和ちょう度が220〜340となるように、フッ素油と窒化硼素とを秤量し、秤量したフッ素油と窒化硼素とを攪拌機で混合後、三本ロールで仕上げることにより製造することができる。フッ素油と窒化硼素との配合量は、例えば、質量比で65:35〜80:20とすることにより、得られるグリース組成物の混和ちょう度を220〜340にすることができる。
<3.実施例>
以下、実施例を用いて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
本実施例では、以下の実施例1〜実施例7および比較例1〜比較例4に説明するようにグリース組成物を生成し、各グリース組成物について粘弾性の評価を行った。
グリース組成物の粘弾性の評価は、レオメーター(Physica MCR101、Anton Paar GermanyGmbH社製)を使用して行った。レオメーターとしては、コーンの直径が25mmのものを使用した。試料として、実施例1〜実施例7および比較例1〜比較例4で得られたグリース組成物を約0.5ml使用した。せん断速度300s−1で、−20〜100℃の温度範囲について、各温度で3分間測定した。
(実施例1)
実施例1では、フッ素油として、40℃での動粘度が160mm/sである直鎖状のパーフルオロポリエーテル(フォンブリンM30、ソルベイソレクシス社製)を用いた。また、窒化硼素として、一次粒子径が5〜7μmの窒化硼素(HP―4W、水島合金鉄(株)製)を用いた。フッ素油が80質量%、窒化硼素が20質量%となるようにフッ素油と窒化硼素とを秤量し、攪拌機で混合後、3本ロールミルで仕上げ、混和ちょう度が335であるグリース組成物を得た。
(実施例2)
実施例2では、フッ素油が75質量%、窒化硼素が25質量%となるようにフッ素油と窒化硼素とを秤量したこと以外は実施例1と同様にして、混和ちょう度が290であるグリース組成物を得た。
(実施例3)
実施例3では、フッ素油が70質量%、窒化硼素が30質量%となるようにフッ素油と窒化硼素とを秤量したこと以外は実施例1と同様にして、混和ちょう度が240であるグリース組成物を得た。
(実施例4)
実施例4では、フッ素油が65質量%、窒化硼素が35質量%となるようにフッ素油と窒化硼素とを秤量したこと以外は実施例1と同様にして、混和ちょう度が220であるグリース組成物を得た。
(実施例5)
実施例5では、一次粒子径14〜18μmの窒化硼素(HP―1CAW、水島合金鉄(株)製)を使用して、フッ素油が70質量%、窒化硼素が30質量%となるようにフッ素油と窒化硼素とを秤量したこと以外は実施例1と同様にして、混和ちょう度が330であるグリース組成物を得た。
(実施例6)
実施例6では、一次粒子径30〜70μmの窒化硼素(FS―1、水島合金鉄(株)製)を使用して、フッ素油が70質量%、窒化硼素が30質量%となるようにフッ素油と窒化硼素とを秤量したこと以外は実施例1と同様にして、混和ちょう度が250であるグリース組成物を得た。
(実施例7)
実施例7では、一次粒子径4μmの窒化硼素(BORONID S3、ESK Chem製)を使用して、フッ素油が70質量%、窒化硼素が30質量%となるようにフッ素油と窒化硼素とを秤量したこと以外は実施例1と同様にして、混和ちょう度が290であるグリース組成物を得た。
(比較例1)
比較例1では、窒化硼素の代わりに、一次粒子径3μmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)(Fluon 173−JE、旭硝子(株)製)を使用して、フッ素油が75質量%、PTFEが25質量%となるようにフッ素油とPTFEとを秤量したこと以外は実施例1と同様にして、混和ちょう度が380であるグリース組成物を得た。
(比較例2)
比較例2では、40℃での動粘度が100mm/sである鉱物油中で脂肪酸(12−ヒドロステアリン酸)と金属水酸化物(水酸化リチウム)とを反応させてリチウム石ケングリースを得た。得られたリチウム石ケングリースの組成は、鉱物油が93%、リチウム石ケンが7%であった。
(比較例3)
比較例3では、40℃での動粘度が160mm/sであるフッ素油(フォンブリンM30、ソルベイソレクシス社製)のみを使用してグリース組成物を得た。
(比較例4)
比較例4では、フッ素油が85質量%、窒化硼素が15質量%となるようにフッ素油と窒化硼素とを秤量したこと以外は実施例1と同様にして、混和ちょう度が385であるグリース組成物を得た。
以下の表1に、実施例1〜実施例7および比較例1〜比較例4における配合量および得られたグリース組成物の混和ちょう度についてまとめたものを示す。
Figure 2012201718
[実施例1〜実施例4]
図1は、実施例1〜実施例4で得られたグリース組成物のせん断粘度と温度との関係を示すグラフである。図1に示すように、フッ素油と窒化硼素との配合量を変化させた実施例1〜実施例4で得られたグリース組成物は、いずれも温度が上昇するとせん断粘度が高くなった。すなわち、温度が上昇すると、グリースの粘性が高くなることが分かった。また、常温以上の温度域において、ほぼ一定のせん断粘度(1000mPa・s)を示した。
[実施例5〜実施例7]
図2は、実施例5〜実施例7で得られたグリース組成物のせん断粘度と温度との関係を示すグラフである。図2に示すように、窒化硼素の一次粒子径を変化させた実施例5〜実施例7で得られたグリース組成物は、いずれも温度が上昇すると、せん断粘度が高くなった。すなわち、温度が上昇すると、グリースの粘性が高くなることが分かった。また、常温以上の温度域において、ほぼ一定のせん断粘度(1000mPa・s)を示した。
[比較例1〜比較例4]
図3は、比較例1〜比較例4で得られたグリース組成物のせん断粘度と温度との関係を示すグラフである。比較例1〜比較例4で得られたグリース組成物は、いずれも温度が上昇すると、せん断粘度が低くなった。すなわち、温度が上昇すると、グリースの粘性が低くなることが分かった。
以上のように、実施例1〜実施例7で得られたグリース組成物は、グリース組成物が、フッ素油と窒化硼素とからなり、混和ちょう度が220〜340であることによって、いずれも高温域において粘性が高くなることが分かった。これは、常温以上の温度域においてグリース組成物の構造が変化して、粘性が高くなったと考えられる。
また、実施例1〜実施例7の結果から、フッ素油と窒化硼素との配合量や、窒化硼素の粒径を選択することにより、粘性が高くなる温度や、粘度の増加量を変化させることが可能であることが分かった。

Claims (5)

  1. 少なくともフッ素油と、窒化硼素とからなり、混和ちょう度が220〜340であることを特徴とするグリース組成物。
  2. ダイラタンシー性を有することを特徴とする請求項1記載のグリース組成物。
  3. 前記フッ素油と前記窒化硼素との配合量が、質量比で65:35〜80:20であることを特徴とする請求項1又は2記載のグリース組成物。
  4. 前記フッ素油は、直鎖状であることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載のグリース組成物。
  5. ダンパーグリースとして用いられることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載のグリース組成物。
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