JP2012207255A - 鋳造用無鉛快削黄銅合金 - Google Patents

鋳造用無鉛快削黄銅合金 Download PDF

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Abstract

【課題】一定量のSiを含有し熱処理を必要とせず耐脱亜鉛腐食性や耐エロージョン・コロージョン性を高めつつ、鋳造組織において機械的性質や被削性を向上させた鋳造用無鉛快削性黄銅合金の提供。
【解決手段】Zn:25.0〜33.0wt%、Sn:0.60〜1.50wt%、Bi:0.30〜3.0wt%、Si:0.40〜1.00wt%、Al:0.35〜1.50wt%、Sb:0.02〜0.20wt%、B:0.0005〜0.010wt%及び不純物としてPb:0.20wt%以下を含有し、残余がCuと不可避不純物から成る鋳造用無鉛快削性黄銅合金。
【選択図】なし

Description

本発明は、熱処理を施すことなく製造可能な、耐エロージョン・コロージョン性・耐脱亜鉛腐食性に優れ、鋳造組織での機械的性質及び被削性に優れた鋳造用無鉛快削黄銅合金に関するものである。
日本国内においては、接水部品の多くにJIS H5120 CAC406又はCAC902等の青銅が使用されている。これは、日本の多くの地域が軟水である為、通水部に炭酸カルシウム等のスケールが付着し難く、脱成分腐食を受けやすい為である。特に、脱亜鉛腐食が進行する為に黄銅ではなく青銅が使用されている。青銅の耐食性が良いのは、Snを添加することによって青銅の表面に生成した皮膜中にSnO2が増し、その保護作用による。銅合金の主な耐食性には耐脱亜鉛腐食性と耐エロージョン・コロージョン性があるが、青銅はその両方共に非常に優れており、流動海水中でも使用されている。
ところが、近年高価な青銅に代わってより安価な黄銅への材質転換が進む傾向にある。そこで、青銅と同様の耐食性を持つためにCAC804のような耐脱亜鉛黄銅が実用化されている。このCAC804はSiを含む黄銅でありSiによって耐脱亜鉛腐食性を向上させているが、もう一つの耐食性である耐エロージョン・コロージョン性を具備しておらず、青銅の代替材とはなり得ない。
また、近年、水道用水栓金具や一般配管用接水器具、あるいは各種バルブに含有されるPbは、合金の溶解・鋳造工程における蒸発、あるいは接水部品として使用した際の飲料水への溶出などにより、人体や環境衛生へ悪影響を及ぼす有害元素との認識が高まり、その含有は厳しく制限される傾向にある。
しかしながら、被削性が良いJIS H5120 CAC406等の青銅系合金は、Pbを4〜6wt%、JIS H3250 C3604やC3771等の黄銅系合金は、Pbを1〜4wt%程含有されることにより、工業的に満足しうる被削性を確保したものであるため、Pbを実質的に含有しない快削性黄銅合金の開発が望まれている。
また、Pbを実質的に含有せずに、Si添加により快削性を与えた銅合金として、JIS H5120に、シルジン青銅と称されるCAC801〜CAC804のCu−Zn−Si系銅合金がある。このCAC804に代表されるCu−Zn−Si系銅合金の被削性はPbを含有したものに比べて劣る為、被削性を改善した合金の開発が望まれている。
これらのCu−Zn−Si系銅合金は、優れた機械的性質と耐食性を具備しているとされているが、耐食性は耐脱亜鉛腐食性と耐エロージョン・コロージョン性のうち、前者しか性能的に満足したものが得られておらず、水道用接水部品等として流速を持つ水中では使用できずに、用途を限定せざるを得ない。また、スクラップのリサイクルを考慮した場合、市場に出回っているCAC804等のSi系黄銅のスクラップが混入することが十分に予想され、一定程度Siを含有した合金組成を有する耐エロージョン・コロージョン性、耐脱亜鉛腐食性、機械的性質、被削性に優れた鋳造用無鉛快削性黄銅合金の開発が求められている。
特開2000−119775号公報 特開平7−310133号公報
上述したようにCu−Zn−Si系合金の耐エロージョン・コロージョン性は必ずしも工業的に満足し得ないものであり、水道用接水部品として流速の大きな水中では使用できず、用途を限定せざるを得なかった。
耐食性の改善にはSnの添加効果が一般的に知られているが、特許文献1のCu−Zn−Si系銅合金には、Snを0.3〜3.5wt%の範囲で添加することで脱亜鉛腐食と選択腐食の防止に効果があると述べられているが、実施例には脱亜鉛腐食に関する調査結果はあるものの、耐エロージョン・コロージョン性についてのデータは示されていない。
また、Snは3.5wt%を超えると効果が飽和すると共に硬くて脆い相が生じ、材料の延性を損なう。特に0.5〜2.0wt%の範囲で好ましく作用するとも述べられているが、これについても延性がどの程度損なわれるかの機械的性質のデータは示されていない。
また、特許文献2では無鉛快削性黄銅合金のCu−Zn−Bi系合金にSnを0.2〜3wt%含有させることで耐脱亜鉛腐食性に優れる合金としている。さらに、そこへNiやSi、Al、Sb等を含有させ、耐脱亜鉛腐食性と耐摩耗特性に優れた合金としている。ここでの各主成分元素の範囲は極めて広く設定されており、部分的には当該性能を満足するかどうか疑問である。また、耐エロージョン・コロージョン性については全く触れられていない。
例えば、Znが45wt%、Biが1.5wt%、Snが0.2wt%で残部がCuという組成では耐脱亜鉛腐食性及び耐エロージョン・コロージョン性は全く無いと考えられる。そこへ、Snを3.0wt%含有させれば、耐脱亜鉛腐食性及び耐エロージョン・コロージョン性の改善は見られるが、延性の低下を招き、実用に耐えられない合金となってしまう。これはZnとSnによって形成される硬くて脆いγ相が析出し、そこを起点に破断が起こることが原因である。ここへ、SiやAl等の元素がさらに加わることで、γ相の形成はより一層促進されて延性の低下を招来する。
優れた耐エロージョン・コロージョン性を確保するにはSnが最も有効な元素であるが、黄銅合金において、Snを高含有率で含む場合に、延性が低下することも事実である。特に、Siを含む黄銅合金では硬くて脆い相が析出し、延性の劣化が著しい。
本発明は、上記の実情に鑑み、これらの不具合を解決するために開発されたものであり、一定量のSiを含有し熱処理を必要とせず耐脱亜鉛腐食性や耐エロージョン・コロージョン性を高めつつ、鋳造組織において機械的性質や被削性を向上させた鋳造用無鉛快削性黄銅合金を提供することを目的としている。
本発明の要旨を説明する。
Zn:25.0〜33.0wt%、Sn:0.60〜1.50wt%、Bi:0.30〜3.0wt%、Si:0.40〜1.00wt%、Al:0.35〜1.50wt%、Sb:0.02〜0.20wt%、B:0.0005〜0.010wt%及び不純物としてPb:0.20wt%以下を含有し、残余がCuと不可避不純物から成ることを特徴とする鋳造用無鉛快削黄銅合金に係るものである。
また、Zn:25.0〜33.0wt%、Sn:0.60〜1.50wt%、Bi:0.30〜3.0wt%、Si:0.40〜1.00wt%、Al:0.35〜1.50wt%、Sb:0.02〜0.20wt%、B:0.0005〜0.010wt%及び不純物としてPb:0.20wt%以下を含有し、残余がCuと不可避不純物から成り、亜鉛当量が36〜39の範囲内にあることを特徴とする鋳造用無鉛快削黄銅合金に係るものである。
また、x軸にSnのwt%、y軸にSbのwt%をプロットしたグラフにおいて、下式(a)〜(d)で表される直線で囲まれた範囲となるように、Sn及びSbの含有量並びに亜鉛当量を設定したことを特徴とする請求項2に記載の鋳造用無鉛快削黄銅合金に係るものである。
x=1.50・・・(a)
y=0.02・・・(b)
y=0.20・・・(c)
y={−0.2÷(3.9−0.1×亜鉛当量)}×x+0.2×(亜鉛当量−36)2+0.6・・・(d)
本発明は上述のように構成したから、一定量のSiを含有し熱処理を必要とせず耐脱亜鉛腐食性や耐エロージョン・コロージョン性を高めつつ、鋳造組織において機械的性質や被削性を向上させた鋳造用無鉛快削性黄銅合金となる。
Sn,Sb及び亜鉛当量の関係を説明するグラフである。 耐エロージョン・コロージョン試験片形状の概略説明図である。 亜鉛当量変動による各種特性を示すチャートである。 耐エロージョン・コロージョン性とSn、Sb及び亜鉛当量の関係を説明する説明図である。 伸びとSn、Sb及び亜鉛当量の関係を説明する説明図である。 耐脱亜鉛腐食性とSn、Sb及び亜鉛当量の関係を説明する説明図である。 耐エロージョン・コロージョン供試材成分及び試験結果を示す表である。 機械的性質供試材成分及び試験結果を示す表である。 耐脱亜鉛腐食試験供試材成分及び最大脱亜鉛腐食深さ測定結果を示す表である。 切削性評価供試材成分及び切削抵抗測定結果を示す表である。 耐エロージョン・コロージョン試験条件を示す表である。 切削条件を示す表である。 亜鉛当量変動供試材成分を示す表である。 評価基準を示す表である。 亜鉛当量変動による各種試験結果を示す表である。
好適と考える本発明の実施形態を、本発明の作用を示して簡単に説明する。
本発明は、Siを含有させた黄銅中にSnとSbを含有させて耐エロージョン・コロージョン性と耐脱亜鉛腐食性を確保しつつ、鋳造組織において良好な機械的性質と被削性を確保している。一般に亜鉛当量が低いとマトリクスは柔らかくなり、エロージョン・コロージョンを起こし易くなるが、脱亜鉛腐食は起こり難くなる。一方、亜鉛当量が高いとマトリクスは硬くなり、エロージョン・コロージョンは起こり難くなるが、脱亜鉛腐食が起こり易くなる。
そこで、請求項1では耐エロージョン・コロージョン性に有効なSnを0.60〜1.50wt%と耐脱亜鉛腐食に有効なSbを0.02〜0.20wt%同時に含有させることにより、それらの相乗効果を発揮させている。
さらに、請求項2では亜鉛当量を36〜39と極めて狭い範囲に限定することにより、耐エロージョン・コロージョン性及び耐脱亜鉛腐食性の両方を同時に満足する合金組成とすることができる。Sbを含まない場合、良好な耐エロージョン・コロージョン性を確保するためにはSnを1.50wt%を超えて含有させなければならないが、これは同時に著しい延性の低下を招き、実用的ではない。また、高価なSnを多く含むことになり、コストアップに繋がってしまう。さらに、SiとSn、Znが作用して硬質相を析出させる為、延性が著しく低下する上に、硬度が上がり、被削性の低下を招く為、Snの添加を1.50wt%以下に抑える必要がある。Siについても1.00wt%以下とすることで被削性の低下を防止することができる。被削性の向上はPbと同様のチップブレーカ効果のあるBiを含有させることによりなされる。被削性向上の為にBiを含有させているが、Biの結晶粒界への凝集による鋳造欠陥を防止すべく、微細化効果のあるBとSbを含有させていることも特徴である。
請求項3では図1における直線(d)の傾きを、つまりは青銅並に優れた耐エロージョン・コロージョン性を発揮させる必要最低限のSn及びSb量の臨界点を示すことにより、延性の確保がより容易になる。これにより、Cuよりも高価なSnとSbの含有量を最小限に抑えつつ、良好な機械的性質及び被削性を具備し、且つ、青銅並に優れた耐エロージョン・コロージョン性及び耐脱亜鉛腐食性を具備する鋳造用無鉛快削黄銅合金とすることができる。
尚、亜鉛当量とは黄銅中に亜鉛以外の元素を添加した場合に、その元素含有率をZn(wt%)に換算し、あたかもCu−Znの二元系黄銅合金であるかのような解釈をする各元素に固有の値である。本発明ではGuilletが提唱する亜鉛当量を用い、下記計算式(1)により求めている(参考文献:鋳造技術シリーズ5 銅合金鋳物の生産技術 P58〜59 財団法人素形材センター発行)。
A:合金中の実際のCu含有率(wt%)
B:合金中の実際のZn含有率(wt%)
q:Cu、Zn以外の元素の含有率(wt%)
t:Cu、Zn以外の元素の亜鉛当量
BiはPbと同様銅合金には固溶しないため、Pbと同じく亜鉛当量は1とした。また、Sb、Bは微量である為、無視した。各元素の亜鉛当量を以下に示す。
Zn:1 Si:10 Al:6 Sn:2 Pb:1 Fe:0.9 Mn:0.5 Ni:−1.3
また、請求項2において、亜鉛当量の範囲を36〜39に限定した理由は次の通りである。亜鉛当量は黄銅合金における耐食性、機械的性質に影響を与える基本的なパラメータである。本発明合金系では、亜鉛当量が約35(35以下)の時、α相の増加によりマトリクスの硬度が低下して被削性が増す。また、α相は変形能が大きい為に十分な延性が得られる。さらには、脱亜鉛腐食を起こし易いβ相が殆ど出現しない為、耐脱亜鉛腐食性も良好となる。しかし、マトリクスの軟化に伴って耐エロージョン・コロージョン性が大幅に低下し、併せて引張強さの低下が問題となる。逆に亜鉛当量が約40(40以上)の時、マトリクスの硬化に伴う引張強さの増加が見られるが、硬化したことによって被削性が低下する。さらにはβ相の増加によって、耐脱亜鉛腐食性が大幅に低下してしまう。また、マトリクスの変形能が低下して延性が低下する。従って、亜鉛当量を36〜39に限定することで、バランスの取れた合金となり、これらの弊害を抑えて優れた性能を発揮する。
ZnはCu−Zn−Si系黄銅合金のマトリクスに固溶し、流動性を高めて鋳造性を良化することや機械的強度を高める作用があるが、一方でSn及びSiの含有量との関係で硬質相を出現させるため、延性及び被削性を低下させてしまう。また、耐脱亜鉛腐食性の低下を防止するためZnの含有量を25.0〜33.0wt%とした。特許文献2ではZnの含有量を20〜45wt%、より好ましくは22〜42wt%としているが、α+β、又は、β単相となる黄銅では脱亜鉛腐食が起こり易く、特に40wt%以上の高含有率ともなれば、激しい脱亜鉛腐食を起こす。これは1.0wt%程度のSnの添加では抑止できない。この為、本発明においてはZnの含有量を低く抑えている。
Siは溶解時に脱酸剤として作用して溶解鋳造時の歩留まりを向上させ、溶湯の流動性を高めて鋳造性を良化させる。また、耐脱亜鉛腐食性の向上にも有効である。さらに、一部はマトリクスに固溶し機械的強度を高めると共に、一部はZn及びSnと作用して切削加工時のチップブレーカとして機能する硬質相を出現させ被削性を改善する。一方で、後述するSnとの共存作用により、網目状に析出する硬質相が、著しく延性を低下させるため、延性確保の為にはSi含有量を1.00wt%以下に抑える必要がある。特許文献1ではSiを1.8〜4.5wt%含有させているが、Snと共存する場合、上述したように延性の低下が見られ、特に高Si・高Snにおいてその影響は著しい。よって、本発明では耐食性と被削性及び延性を考慮した最適なバランスとしてSiを0.40〜1.00wt%としている。
Snは0.60wt%以上含有させると、流速の大きな水中でもSnO2皮膜をより生成し易くなり、耐エロージョン・コロージョン性を向上させる。亜鉛当量が38〜39の範囲では脱亜鉛腐食は起こり易いが、マトリクスが硬い為、若干の耐エロージョン・コロージョン性が有り、Sn0.60wt%以上で良好な耐エロージョン・コロージョン性を示す。そこで、Sbを0.02〜0.20wt%添加することにより青銅並に優れた耐エロージョン・コロージョン性と耐脱亜鉛腐食性を発揮できる。亜鉛当量が36〜37の範囲では脱亜鉛腐食は起こり難いが、マトリクスが柔らかい為、耐エロージョン・コロージョン性が劣り、Sn0.60wt%では十分な性能を得られない。しかし、ここにSbを0.02wt%以上共存させることで著しい耐エロージョン・コロージョン性の改善が見られ、青銅並に優れた耐エロージョン・コロージョン性と耐脱亜鉛腐食性を発揮できる。これは、SnとSbの相乗効果によるものと考えられる。特許文献1には耐食性の改善機能を発揮させる為にはSnの添加量を少なくとも0.3wt%とする必要があり3.5wt%を超えて添加しても添加量に見合うだけの効果が得られない。とあるが、0.3wt%程度のSnの含有では殆ど耐エロージョン・コロージョン性と耐脱亜鉛腐食性を改善できない、また1.5wt%以上では延性が低下し、2.0wt%以上では工業的に満足しうる延性を発揮し得ないことから、本発明ではSnの含有率を限定的な範囲としている。特許文献2においてはSnを3wt%程度とSiが3wt%程度共存する場合があるが、本発明者等の調査では黄銅中にこれだけのSnとSiが共存した状態では著しい延性の劣化を招き、実用的ではないことが分かっている。この為、本発明では耐脱亜鉛腐食性、耐エロージョン・コロージョン性、延性を同時に満足するよう亜鉛(亜鉛当量)、Sn、Sb、Si量を狭い範囲に限定している。
Sbは耐脱亜鉛腐食性を向上させる為に含有させる必須元素である。本発明合金組成においては少なくとも0.02wt%の含有でその効果が発現し、ISO方式による最大脱亜鉛腐食深さは最良で10μm未満と極めて優れた耐脱亜鉛腐食性を発揮する。特許文献2ではSbを1wt%以下含有させるとあるが、発明者等の調査では0.20wt%を超えると延性の低下が始まり、さらには粒界腐食を引き起こすので、Sbの上限は0.20wt%とした。
BiはPbと同様に銅合金のマトリクスには固溶せず、粒状にマトリクス中に分散するため、チップブレーカとして機能する。その効果は0.30wt%以上で出現するが、Biは3.0wt%を越えて含有させると、延性の低下や鋳造性の低下を招き、さらには高価なBiの添加に見合う被削性の改善効果が得難くなる。このような理由からBiの含有率を0.30wt%〜3.0wt%とした。
Alは、溶湯の流動性を高めて鋳造性を良化させる。また、Snと同様に多量に含有させると硬質相の成長を促進させ、被削性を低下させる機能を有するものでもあるが、1.50wt%を超えない範囲でZnに代えて添加することにより、耐エロージョン・コロージョン性、耐脱亜鉛腐食性、機械的性質、被削性を損なうことなく鋳造性の改善ができる範囲として0.35〜1.50wt%とした。
Pbは、その含有量を0.20wt%以下とすることにより、合金の溶解・鋳造過程における蒸発、あるいは接水部品として使用した際の飲料水への溶出等による人体や環境衛生への鉛害を、実質的に回避することが可能となる。このような理由から、Pbの含有量を0.20wt%以下に規制した。
Cuは、脱亜鉛腐食感受性を弱め、耐脱亜鉛腐食性や延性を改善する元素であるが、本発明合金においては、その含有率はZn、Sn、Si、Al、Bi及びSb含有率とのバランスにより、残余として決定されるものであり、実質的な含有量は63〜75wt%である。
Bは、黄銅のミクロ組織を微細化するために添加している。この目的は微細化による機械的性質と被削性の改善、及び、耐食性の改善が想定される為である。
本発明の具体的な実施例について説明する。
本実施例は、Zn:25.0〜33.0wt%、Sn:0.60〜1.50wt%、Bi:0.30〜3.0wt%、Si:0.40〜1.00wt%、Al:0.35〜1.50wt%、Sb:0.02〜0.20wt%、B:0.0005〜0.010wt%及び不純物としてPb:0.20wt%以下を含有し、残余がCuと不可避不純物から成るものであり、一定量のSiを含有し熱処理を必要とせず耐脱亜鉛腐食性や耐エロージョン・コロージョン性を高めつつ、鋳造組織において機械的性質や被削性を向上させた鋳造用無鉛快削性黄銅合金である。
具体的には、亜鉛当量が36〜39の範囲内にあるのが好ましく、更に、x軸にSnのwt%、y軸にSbのwt%をプロットしたグラフにおいて、下式(a)〜(d)で表される直線で囲まれた範囲となるように、Sn及びSbの含有量並びに亜鉛当量を設定するのが好ましい。
x=1.50・・・(a)
y=0.02・・・(b)
y=0.20・・・(c)
y={−0.2÷(3.9−0.1×亜鉛当量)}×x+0.2×(亜鉛当量−36)2+0.6・・・(d)
以下、具体的な実験例に基づいて詳細に説明する。
(1)供試材
本発明合金に関わる供試材の化学成分を図7〜10及び図13のNo.1〜172に示す。比較合金1は特許文献1の合金、比較合金2はJIS H3250 C3604、比較合金3はJIS H5120 CAC902Cで化学成分をそれぞれ図7,8,9及び10に示す。比較合金4は特許文献2の合金で図7及び9に示す。それらは黒鉛坩堝を用いて電気炉にて溶解し、試験用途に応じてNo.1〜54、170〜172、図7の比較合金1〜4、No.109〜164及び図9の比較合金1〜4は直径40mmで高さ100mmの金型に、No.55〜108、170〜172と図8の比較合金1〜3はJIS H5120 B号金型によって各々鋳造し、試験片を採取した。また、No.165〜169、170〜172と図10の比較合金1〜3は横型連続鋳造によって直径30mmの丸棒とし、試験に供した。
耐エロージョン・コロージョン性を評価するために、図7に示す各合金(No.1〜54及び比較合金1〜4)及び図13に示す各合金(No.170〜172)の直径40mm、高さ100mmの金型鋳造材から、図2に示す試験片形状に機械加工し、試験に供した。
機械的性質(引張強さと伸び)を評価するために、図8に示す各合金(No.55〜108及び比較合金1〜3)及び図13に示す各合金(No.170〜172)のB号金型鋳造材からJIS Z2201 4号引張試験片を採取し、試験に供した。
耐脱亜鉛腐食性を評価するために図9に示す各合金(No.109〜164、及び比較合金1〜4)及び図13に示す各合金(No.170〜172)の直径40mm高さ100mmの金型鋳造材から1辺が10mmの立方体に機械加工し、試験に供した。
被削性を評価するために、図10に示す各合金(No.165〜169、比較合金1〜3)の連続鋳造棒及び図13に示す各合金(No.170〜172)の連続鋳造棒から、直径18mm長さ200mmに機械加工し、試験に供した。
(2)耐エロージョン・コロージョン性の評価
耐エロージョン・コロージョン試験は図11に示す条件で、直径30mmの平試験面部に、0.4mm離れたところから勢い良く試験溶液を噴射し、強制的にエロージョン・コロージョンを起こさせ、試験片の最大腐食深さを測定し、耐エロージョン・コロージョン性を評価した。
供試材No.1〜54及び比較合金1〜3について耐エロージョン・コロージョン試験を行った結果を図7に示す。最大腐食深さが0.10mm以下で耐エロージョン・コロージョン性が青銅並に優れている:○、最大腐食深さが0.10mmを超えて0.40mm以下は良い:△、最大腐食深さが0.40mmを超えたものは悪い:×として評価した。
亜鉛当量毎にSn、Sbの含有量と耐エロージョン・コロージョン性との関係を整理したものを図4(a)(亜鉛当量36〜37)、図4(b)(亜鉛当量37〜38)、図4(c)(亜鉛当量38〜39)に示す。珪素入り無鉛黄銅合金である比較合金1は最大腐食深さが1.0mmと非常に激しくエロージョン・コロージョンを起こす。また、一般快削黄銅である比較合金2は0.64mm、比較合金4は0.55mmとこれらも大きなエロージョン・コロージョンを起こす。一方、青銅である比較合金3は0.05mmと非常に優れた耐エロージョン・コロージョン性を示す。
図4(a)〜(c)中の図1の直線(d)に相当する直線付近のデータから、亜鉛当量が増すに従って耐エロージョン・コロージョン性が悪くなる臨界線の傾きが変化していることが分かる。この事から、亜鉛当量が増すに従って良好な耐エロージョン・コロージョン性を確保する為に必要なSnとSbの量が減ると言える。これは延性を阻害し、銅と比較して高価な元素であるSnやSbの含有量の必要最低限の量的関係を明らかにしている。
(3)機械的性質の評価
供試材No.55〜108及び比較合金1〜3について引張試験を行った結果を図8に示す。伸びが15%未満を延性が悪い:×、伸びが15%以上18%未満を延性は中程度:△、18%以上を延性が良い:○と評価した。引張強さは概ね250MPa以上となっており、実用上問題は無い。亜鉛当量毎にSn、Sbの含有率と伸びの関係を図5(a)(亜鉛当量36〜37)、図5(b)(亜鉛当量37〜38)、図5(c)(亜鉛当量38〜39)に示す。何れの亜鉛当量においてもSnが1.50wt%付近又はそれ以上の領域に×が見られた。亜鉛当量が増すに従って、×又は△がSnの低い領域にも増えてくることが分かる。これは、SnがSi及びZnと共に硬く脆い相を形成し、粒界に網目状に析出する為、その部分で破断し易くなるからと考えられる。この事から延性を確保すべくSnの上限を1.50wt%とした。
(4)耐脱亜鉛腐食性の評価
耐脱亜鉛腐食性の評価はISO6509−1981に規定された黄銅の脱亜鉛腐食試験法に準拠して行った。試験方法は、1%塩化第二銅水溶液を75℃に保持し、エメリー紙で#1500まで研磨した試料を24時間浸漬させた後、この試料を取り出して断面を研磨し腐食深さを顕微鏡観察により測定するものである。
供試材No.109〜164及び比較合金1〜4について脱亜鉛腐食試験を行った結果を図9に示す。比較合金1及び3は最大脱亜鉛腐食深さが10μm未満であり、非常に優れた耐脱亜鉛腐食性を示した。比較合金2は615μm、比較合金4は712μmと非常に深い脱亜鉛腐食層が観察された。亜鉛当量毎にSn、Sbの含有率と耐脱亜鉛腐食性の関係を図6(a)(亜鉛当量36〜37)、図6(b)(亜鉛当量37〜38)、図6(c)(亜鉛当量38〜39)に示す。耐脱亜鉛腐食性の評価は最大脱亜鉛深さが100μm未満を非常に良い:○、100μmより深く200μm未満を良い:△、200μm以上を悪い:×と評価した。亜鉛当量が36〜37の範囲ではSbが0.02wt%未満と0.20wt%を超えた場合に△が見られるが、0.02wt%≦Sb≦0.20wt%では全て○であり、良好な耐脱亜鉛腐食性を示す。亜鉛当量37〜38の範囲では36〜37と同様にSbが0.20wt%を超える領域では△が見られ、Sb0.01wt%の添加では×となるが0.02wt%以上添加すると大きく改善され200μm未満となる。亜鉛当量38〜39の範囲ではSbの高い領域でも×が見られ、耐脱亜鉛腐食性の悪化が顕著となる。Sb<0.02wt%は亜鉛当量36〜38と同様の傾向が見られるが、0.02wt%以上添加することにより、改善することができる。
以上のように、本発明合金では0.02wt%≦Sb≦0.20wt%とすることが必要である。
(5)被削性の評価
被削性の評価は図12に示す切削条件で試験片の外径加工を行い、その切削抵抗(主分力)を測定した。図10は供試材No.165〜169及び比較合金1〜3の化学成分と切削抵抗測定結果を示したものである。本発明合金は比較合金1と同等若しくは良好な被削性を保持している。鉛入り快削黄銅である比較合金2には劣るものの、Biを2.5wt%程度まで添加することによってBiのチップブレーカ効果がより高まり、Bi入り青銅の比較合金3と同等の被削性が得られている。
(6)亜鉛当量変動の影響評価
Zn量とCu量のみを変化させて亜鉛当量を35、37.5、40に変動させた供試材成分を図13に示す。これらの合金を上記の評価方法に準じて耐エロージョン・コロージョン性、耐脱亜鉛腐食性、機械的性質及び被削性を評価した。各試験結果は図14の評価基準を元に評価し、図3に示す。なお、各試験結果は図15に示す。全ての評価において5点満点で評価し、5が最も優れている。被削性については、銅合金において最も被削性の良い、快削黄銅の被削性を100%として比較したもので、100%を下回るほど被削性が悪い。これらの結果から、亜鉛当量が35と低い場合は耐エロージョン・コロージョン及び引張強さが劣り、亜鉛当量が40と高い場合は引張強さ以外の性能が劣ることが分かる。それらの中間である亜鉛当量37.5とすることで全ての性能について工業的に十分に満足させることができる。
以上の各種調査結果より、耐エロージョン・コロージョン性を満足させるためにはSnを0.60wt%以上、且つ、Sbを0.02wt%以上含有させる必要があり、耐脱亜鉛腐食性を満足させるためにはSbを0.02wt%以上含有させる必要があるが、0.20wt%より多く含有させると耐脱亜鉛腐食性の低下と延性の劣化が起こるため、上限は0.20wt%とする必要がある。また、良好な延性を確保し耐食性とのバランスを取る為、Snは1.50wt%を、Siは1.00wt%を上限としている。さらに、良好な被削性を備え、延性や鋳造性を損なうことの無いよう、Biは0.30〜3.0wt%とした。これにより、鋳造組織のままで青銅並に優れた耐エロージョン・コロージョン性と耐脱亜鉛腐食性を持ち、従来合金と同等の機械的性質及び被削性を確保することが可能となる。
よって、本実施例は、特許文献1及び2の合金における基本特性を損なうこと無く、良好な被削性を具備することは勿論、SnとSb及び亜鉛当量を極めて狭い範囲内に調整することでそれらの相乗効果を発揮させ、熱処理を施すことなく、青銅並に優れた耐エロージョン・コロージョン性と耐脱亜鉛腐食性と機械的性質を付加した鋳造用無鉛快削黄銅合金となる。

Claims (3)

  1. Zn:25.0〜33.0wt%、Sn:0.60〜1.50wt%、Bi:0.30〜3.0wt%、Si:0.40〜1.00wt%、Al:0.35〜1.50wt%、Sb:0.02〜0.20wt%、B:0.0005〜0.010wt%及び不純物としてPb:0.20wt%以下を含有し、残余がCuと不可避不純物から成ることを特徴とする鋳造用無鉛快削黄銅合金。
  2. Zn:25.0〜33.0wt%、Sn:0.60〜1.50wt%、Bi:0.30〜3.0wt%、Si:0.40〜1.00wt%、Al:0.35〜1.50wt%、Sb:0.02〜0.20wt%、B:0.0005〜0.010wt%及び不純物としてPb:0.20wt%以下を含有し、残余がCuと不可避不純物から成り、亜鉛当量が36〜39の範囲内にあることを特徴とする鋳造用無鉛快削黄銅合金。
  3. x軸にSnのwt%、y軸にSbのwt%をプロットしたグラフにおいて、下式(a)〜(d)で表される直線で囲まれた範囲となるように、Sn及びSbの含有量並びに亜鉛当量を設定したことを特徴とする請求項2に記載の鋳造用無鉛快削黄銅合金。
    x=1.50・・・(a)
    y=0.02・・・(b)
    y=0.20・・・(c)
    y={−0.2÷(3.9−0.1×亜鉛当量)}×x+0.2×(亜鉛当量−36)2+0.6・・・(d)
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