JP2012207298A - 疲労特性に優れた容器用フェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】質量%で、C:0.01%以下、Si:1%以下、Mn:1%以下、P:0.04%以下、S:0.005%以下、Mo:0.1%以下、Cr:11%〜19%、Ti:10×(C+N)以上0.3%以下、Al:0.02〜0.2%、N:0.015%以下、B:0.0004%〜0.0015%、をそれぞれ含有し、かつ固溶Bを0.0003%以上含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼組成を有し、JIS G0571規定のシュウ酸電解エッチングを行った際に、ボライドを起因とするエッチピットが、粒界上に2×10−5個/μm以下であることを特徴とする疲労特性に優れた容器用フェライト系ステンレス鋼板を採用する。
【選択図】なし
Description
しかし、このような高純度フェライト系ステンレス鋼板を自動車用燃料タンク等の容器用として適用する場合、使用中にタンクに繰り返し応力がかかるため、優れた疲労特性が要求されることが想定される。
例えば、特許文献1には、Bを0.0003〜0.0050質量%、また特許文献2には、Bを0.0002〜0.005質量%含有させる方法が開示されている。
また、特許文献3には、Bを添加するとともに、高純度フェライト系ステンレス鋼板を製造する際に、各工程条件、特に冷延板の焼鈍工程の最適化を図ることにより、二次加工性を向上させる技術が開示されている。
その結果、ボライドの粒界への析出に大きく影響する因子は、冷延板の焼鈍温度および焼鈍温度から600℃までの平均冷却速度にあることを見出した。焼鈍温度が850℃以上900℃以下と比較的低い場合は、焼鈍温度から600℃までの平均冷却速度が10℃/s以上であれば、ボライドが析出する600℃までの温度帯を通過する時間が短く、ボライドの析出を抑制できる。しかし、焼鈍温度が900℃を超えると、焼鈍温度が比較的低い場合と比較して、600℃までの温度帯を通過する時間が相対的に長くなるため、より速い冷却速度が必要となる。そして、本発明者らは、焼鈍温度が900℃を超える場合には、平均冷却速度を15℃/s以上とすることで、ボライド析出を抑制できることを明らかにした。また、600℃以下での平均冷却速度はボライド析出にほとんど影響を与えないことも明らかとなった。
図1は、加減圧耐久試験での耐久寿命(破断寿命)を示したものである。使用した材料は、一般的である、製鋼−熱間圧延−酸洗−冷間圧延―焼鈍・酸洗の工程を経て作製した、板厚0.8mmのフェライト系ステンレス鋼板である。また、その組成は17Cr−0.2Ti鋼で、Bの添加量のみ変化させて試験を行った。なお、本発明において重要なパラメータである焼鈍温度は920℃とし、600℃までの平均冷却速度は、25℃/sを主とし、一部10℃/sとした。
図1より明らかなように、Bを添加していない鋼板と比較して、Bを5ppm、12ppm程度添加した鋼板は、その耐久寿命が30%以上向上していることが分かる。しかし、Bを同じ12ppm添加した鋼でも、焼鈍の平均冷却速度が10℃/sと遅い場合は、耐久寿命は低い値となっている。これは、焼鈍温度を920℃と高温にした一方、平均冷却速度が遅かったため、粒界へのボライド析出が進行してしまい、結果、耐久寿命が低下し疲労特性が劣化したものと考えられる。
また、平均冷却速度を25℃/sとした場合において、耐久寿命は、Bの添加量が12ppm程度までは上昇しているが、それ以降は低下している。これは、Bの添加量が多すぎたため、ボライドの析出を十分に抑制することができず、結果、耐久寿命が低下してしまったと考えられる。
C:0.01%以下、
Si:1%以下、
Mn:1%以下、
P:0.04%以下、
S:0.005%以下、
Mo:0.1%以下、
Cr:11%〜19%、
Ti:10×(C+N)以上0.3%以下、
Al:0.02〜0.2%、
N:0.015%以下、
B:0.0004%〜0.0015%、
をそれぞれ含有し、かつ固溶Bを0.0003%以上含有し、
残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼組成を有し、
JIS G0571規定のシュウ酸電解エッチングを行った際に、ボライド起因のエッチピットが、粒界上に2×10-5個/μm以下であることを特徴とする疲労特性に優れた容器用フェライト系ステンレス鋼板。
[2] さらに、質量%で、
V:0.005〜0.2%、
Nb:0.005〜0.2%、
の1種以上を含むことを特徴とする上記[1]に記載の疲労特性に優れた容器用フェライト系ステンレス鋼板。
[3] さらに、質量%で、
Ni:0.005〜0.5%、
Cu:0.005〜0.5%、
Sn:0.005〜0.3%、
の1種以上を含むことを特徴とする上記[1]または[2]に記載の疲労特性に優れた容器用フェライト系ステンレス鋼板。
[4] 上記[1]から[3]の何れか一項に記載の鋼組成を有するフェライト系ステンレス鋼を製造する際に、冷延板の焼鈍温度を850℃以上950℃以下とし、600℃までの平均冷却速度を、前記焼鈍温度850℃以上900℃以下の場合は10℃/s以上、前記焼鈍温度が900℃超950℃以下の場合は15℃/s以上として冷却することを特徴とする疲労特性に優れた容器用フェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
以下に、本実施形態のフェライト系ステンレス鋼板の鋼組成を限定した理由について詳細に説明する。なお、ここで、下限のないものについては、不可避的不純物レベルまで含むことを示す。また、%は特に断りがない場合は質量%を意味する。
Cは加工性と耐食性を劣化させるため、その含有量は少ないほど良いため、その上限を0.01%とする。ただし、Cの過度の低減は精錬コストを増大させるため、その下限は、0.003%が望ましい。
Siは脱酸材として有用な元素であるが、多量に添加すると加工性が低下するため、その含有量は少ないほど好ましい。そのため、Siの上限は1%とする。なお、加工性を重視する場合、0.2%以下が好ましい。
MnもSiと同様に脱酸材として有用な元素であるが、多量に添加すると加工性が低下するため、その含有量は少ないほど好ましい。そのため、Mnの上限は1%とする。なお、加工性を重視する場合、0.2%以下が好ましい。
Pは、鋼中に不可避的に含まれる成分であるが、0.04%を越えて含有すると靭性および加工性が低下するために、その含有量は可能な限り少ないほうが好ましい。そのため、Pの含有量は、0.04%を上限とする。
Sは、鋼中に不可避的に含まれる成分であるが、本発明では0.005%を越えて含有すると、加工性が低下するだけでなく、CaSが生成しやすくなり、耐食性を劣化させるため、その含有量は可能な限り少ないほうが好ましい。そのため、Sの含有量は、0.005%を上限とする。また、Sを0.0005%未満とすることは製鋼コストの非常な増大を招くため、0.0005%を下限とすることが好ましい。
Crは耐食性を発現するための必須な元素である。その効果を発現するためには、11%以上の添加が必要である。しかし、過度の添加は加工性が低下するため、19%を上限とする。耐食性と加工性のバランスを考慮すると、好ましくは、16〜18.5%である。
Moは耐食性を向上させる元素であり、また、本実施形態においては、ボライドの析出を抑制する効果を持つ元素である。一方で、Moは非常に高価であり、加工性を低下させるおそれがあるため、本発明ではMo含有量を抑制し、上限を0.1%とする。なお、好ましくはMo含有量を0.05%以下とする。
Alは脱酸元素として非常に有用であるため、0.002%以上添加する。しかし、多量に添加すると加工性が低下するため、その上限は0.2%とする。
Tiは、C、Nを炭窒化物として固定し、耐食性、加工性を向上させる元素である。そのため、10×(C+N)以上を添加する。しかし、Tiの過剰の添加は、粗大析出物により表面欠陥が増大したり、加工性が低下したりするため、その上限を0.3%とする。
Nは、Cと同様に加工性と耐食性を劣化させるため、その含有量は少ないほど良いため、その上限を0.015%とする。ただし、過度に低減することは精錬コストを増大させるため、その下限は、0.002%%が望ましい。
固溶B:0.0003%以上
Bは本発明において、疲労特性を向上させるために非常に重要な元素である。Bを固溶Bとして粒界に偏析させることにより粒界強化を図ることができる。その結果として、疲労特性が向上する。その効果を発現させるためには、0.0004%以上の添加が必要である。しかし、0.0015%を超えて添加すると、粒界上へのボライド析出が抑制できず、疲労特性向上の効果が消滅するため、上限を0.0015%とする。
また、このようなB添加による効果発現は、固溶B量に左右される。そのため、固溶Bを0.0003%以上含有する必要がある。なお、疲労特性の向上とボライド析出の抑制とのバランスを考慮すると、B含有量を0.0008〜0.0012%とすることが好ましい。
まず、鋼板に対して、JIS G0571規定のシュウ酸電解エッチングを行ってから、光学顕微鏡で観察を行い、ボライドに起因するエッチピットを測定する。その結果、粒界上に観察されるエッチピット数が2×10−5個/μm以下であれば疲労特性に悪影響を及ぼさないことが分かったため、これを上限とする。なお、粒界上にエッチピットが2×10−5個/μm超観察される場合、つまり、ボライドが粒界上に2×10−5個/μm超析出している場合は、疲労特性が劣化した。これは、ボライドが疲労破壊の起点になっている可能性を示している。もちろん、粒界上にボライドが析出していない、つまり、エッチピットが生じないことが最も望ましい。しかし、本発明者らによると、ボライドが粒界ではなく、粒内に存在する場合は、疲労特性に影響をほとんど及ぼさないことも見いだしている。これは粒内に析出したボライドが破壊起点とならないことを示唆している。
Vは、固溶Vとして粒界に偏析することにより、疲労特性を向上させる効果を有する。その効果は、0.005%以上の添加で発現する。しかし、過度に添加すると加工性が低下するため、Vの含有量を0.005〜0.2%とすることが好ましい。
Nbは、Vと同様に、固溶Nbして粒界に偏析することにより、疲労特性を向上させる効果を有する。その効果は、0.005%以上の添加で発現する。しかし、過度に添加すると加工性が低下するため、Nbの含有量を0.005〜0.2%とすることが好ましい。
Ni、Cu、Snはそれぞれ、耐食性を向上させる元素であり、耐食性の向上が必要な場合添加できる。その効果を発現させるためには、0.005%以上の添加が望ましい。しかし、Ni、Cu、Snは多量に添加すると、加工性を著しく低下させるため、その上限を、Ni、Cuは0.5%、Snは0.3%とすることが望ましい。
具体的に説明すると、製鋼においては、上記鋼組成を有するフェライト系ステンレス鋼を転炉にて溶製し、続いて二次精錬を行って得る方法が望ましい。
次に、溶製した鋼を、連続鋳造等の公知の鋳造方法でスラブとする。そしてこのスラブを熱間圧延により所定板厚まで圧延する。なお、その後、必要に応じて、熱延板焼鈍を行っても良い。熱間圧延後、酸洗した後、冷間圧延を行い、最終板厚とする。そして、焼鈍を施し、酸洗して最終製品とする。なお、必要に応じて、冷間圧延と焼鈍・酸洗は繰り返し行っても良い。
本実施形態では、この冷延後の焼鈍において、その焼鈍温度を850℃以上950℃以下とする。また、このような焼鈍温度から600℃までの平均冷却速度を、焼鈍温度850℃以上900℃以下の場合は、10℃/s以上、焼鈍温度が900℃超950℃以下の場合は、15℃/s以上の冷却速度で冷却する。
以下に、本実施形態における焼鈍温度および冷却速度の限定理由について説明する。
しかし、焼鈍温度が850℃未満では鋼板の再結晶が不十分となり、加工性が低下するおそれがある。一方、焼鈍温度が950℃を超えると、ボライドの粒界への偏析が顕著となり、粒界へのボライド析出を抑制できなくなるおそれがある。従って、本実施形態において、焼鈍温度を850℃以上950℃以下とする。
しかし、焼鈍温度から600℃までの平均冷却速度が、焼鈍温度850℃以上900℃以下の場合、10℃/s未満、および焼鈍温度が900℃超950℃以下の場合、15℃/s未満では、粒界へのボライド析出を抑制できなくなるおそれがある。従って、本実施形態において、平均冷却速度を、焼鈍温度が850℃以上900℃以下の場合は、10℃/s以上、焼鈍温度が900℃超950℃以下の場合は、15℃/s以上とする。
以上のように、冷延後の焼鈍を施す際の焼鈍条件を最適範囲に制御することにより、粒界上へのボライド析出を抑制することが可能となり、優れた疲労特性を有するフェライト系ステンレス鋼板を得ることができる。
なお、焼鈍雰囲気は特に限定しないが、好ましい条件としては、燃焼ガス雰囲気とするか、又は水素と窒素の混合雰囲気とすることが望ましい。
また、優れた疲労特性を得ることができるため、自動車用燃料タンクのような、使用中に圧力変動を受けるような容器等に適用することができ、部品寿命の延長や、薄肉化によるコスト低減が可能となる。
次に、このようにして得られた製品板から、各種試験片を採取し、評価・測定した。
ボライドの析出は、得られた製品板より圧延方向に平行な断面を観察面として試験片を採取し、JIS G0571規定のシュウ酸電解エッチングを行った後に、光学顕微鏡で観察を行った。観察結果より、粒界上のエッチピットを測定し、線密度を算出した。
加工性の評価は、JIS Z2201に規定されるJIS13B号試験片を使用し、JIS Z2241に準拠した引張試験を行い、その全伸び値を指標とした。また、引張方向は圧延方向と平行である。なお、本発明はプレス成型を行う容器用途を想定しているため、加工性は重要な特性であり、全伸び値30%を合格基準として評価した。
まず、模擬タンクの作製方法を説明する。1辺400mmのブランクからプレスにて1辺200mm、成形高さ30mmの角筒を2個形成した。この時、1個の角筒の稜の1つはR(曲率半径):2mm、その他はR:15mmで成形し、もう1個の角筒の稜は全てR:15mmとした。この2個を拝み形状に合わせて、フランジ部のシーム溶接を行い、タンク形状とした。さらに、タンク底面に空気の出入り口を取り付け、内圧を変動できるようにした。次に、加減圧耐久試験の条件を、正圧40kPa、負圧−40kPaの繰り返しとして試験を行い、破断寿命を評価した。なお、破断部は、応力集中部となるR:2mmで形成した稜となる。この評価法において疲労特性を評価し、破断寿命2万回以上を合格とした。
以上の製造条件及び評価結果を表3に示す。
これに対し、実施例16から実施例33の比較鋼では、伸び値が十分でないか、破断寿命が短かった。
Claims (4)
- 質量%で、
C:0.01%以下、
Si:1%以下、
Mn:1%以下、
P:0.04%以下、
S:0.005%以下、
Mo:0.1%以下、
Cr:11%〜19%、
Ti:10×(C+N)以上0.3%以下、
Al:0.02〜0.2%、
N:0.015%以下、
B:0.0004%〜0.0015%、
をそれぞれ含有し、かつ固溶Bを0.0003%以上含有し、
残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼組成を有し、
JIS G0571規定のシュウ酸電解エッチングを行った際に、ボライドを起因とするエッチピットが、粒界上に2×10−5個/μm以下であることを特徴とする疲労特性に優れた容器用フェライト系ステンレス鋼板。 - 質量%で、さらに
V:0.005〜0.2%、
Nb:0.005〜0.2%、
の1種以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の疲労特性に優れた容器用フェライト系ステンレス鋼板。 - さらに、質量%で、
Ni:0.005〜0.5%、
Cu:0.005〜0.5%、
Sn:0.005〜0.3%、
の1種以上を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の疲労特性に優れた容器用フェライト系ステンレス鋼板。 - 請求項1から3の何れか一項に記載のフェライト系ステンレス鋼板を製造する際に、冷延板の焼鈍温度を850℃以上950℃以下とし、600℃までの平均冷却速度を、前記焼鈍温度が850℃以上900℃以下の場合は10℃/s以上、前記焼鈍温度が900℃超950℃以下の場合は15℃/s以上として冷却することを特徴とする疲労特性に優れた容器用フェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
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