JP2012209189A - 酸化物超電導線材及びその製造方法 - Google Patents

酸化物超電導線材及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】線材の全体の厚さを必要以上に厚くすることなく、酸化物超電導層への水分の浸入を抑えることができる酸化物超電導線材及びその製造方法の提供。
【解決手段】本発明の酸化物超電導線材10は、基材1と中間層2と酸化物超電導層3と銀層7がこの順に積層されてなる超電導積層体5が、銀層7から基材1まで達する溝加工部11を介し、はんだ層12を挟んで二つ折りにされてなることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、超酸化物超電導線材及びその製造方法に関する。
近年になって発見されたRE−123系酸化物超電導体(REBaCu7−X:REはYを含む希土類元素)は、液体窒素温度以上で超電導性を示し、電流損失が低いため、実用上極めて有望な素材とされており、これを線材に加工して電力供給用の導体あるいは磁気コイル等として使用することが要望されている。この酸化物超電導体を線材に加工するための方法として、金属基材テープ上に酸化物超電導層を形成する方法が研究されている。
酸化物超電導線材にあっては、酸化物超電導層上に薄い銀の安定化層を形成し、その上に銅などの良導電性金属材料からなる厚い安定化層を設けた2層構造の安定化層を積層する構造が採用されている。前記銀の安定化層は、酸化物超電導層を水分から保護する目的のためにも設けられており、銅の安定化層は、酸化物超電導層が超電導状態から常電導状態に遷移しようとしたとき、該酸化物超電導層の電流を転流させるバイパスとして機能させ、酸化物超電導線材を電気的に保護するための目的で設けられている。
2層構造の安定化層を形成する技術の一例として、酸化物超電導層が積層された超電導積層体の外周全面にスパッタリングにより薄い銀の安定化層を設けた後、線材全体を硫酸銅水溶液のめっき浴に浸漬し、電気めっきにより銀の安定化層上に銅の安定化層を形成する技術が知られている(特許文献1参照)。
特開平7−335051号公報
RE−123系酸化物超電導層の特定組成のものは水分により劣化しやすく、線材を水分の多い環境に保管した場合や、線材に水分が付着した状態のまま放置した場合に、酸化物超電導層に水分が浸入すると、結晶構造が乱れ、超電導特性が低下する要因となる。
しかしながら、特許文献1のようにめっき処理して銅の安定化層を形成した構造では、銅めっき部にピンホールといった欠陥があると、めっき欠陥部から水分が浸入して酸化物超電導層に達し、酸化物超電導層が劣化してしまうおそれがある。
また、特許文献1のように、酸化物超電導層が積層された超電導積層体の外周全面に銀の安定化層を設け、さらに外周全面に厚い銅の安定化層を設けた構造では、線材の全体の厚さが厚くなり、臨界電流密度が低くなってしまうおそれがある。
本発明は、以上のような従来の実情に鑑みなされたものであり、線材の全体の厚さを必要以上に厚くすることなく、酸化物超電導層への水分の浸入を抑えることができる酸化物超電導線材及びその製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明の酸化物超電導線材は、基材と中間層と酸化物超電導層と銀層がこの順に積層されてなる超電導積層体が、銀層から基材まで達する溝加工部を介し、はんだ層を挟んで二つ折りにされてなることを特徴とする。
本発明の酸化物超電導線材は、酸化物超電導層が基材に挟まれるように、溝加工部を介して、基材を二つ折りにしてなる構成である。そのため、線材の全体の厚さを厚くすることなく、酸化物超電導層が外部から遮蔽された構成を実現できる。
従って、酸化物超電導層への水分の浸入を抑えるので、酸化物超電導層が水分によりダメージを受けることがなく、超電導特性が劣化することを防止できる。
また、本発明の酸化物超電導線材において、前記はんだ層と前記銀層との間に金属安定化層が介在されてなることもできる。
この場合、酸化物超電導層のはんだ層側の面に銀層と金属安定化層を備える構成となるため、酸化物超電導層を安定化する効果が更に高まる。また、酸化物超電導層のはんだ層側の面が銀層、および金属安定化層により積層される構成となり、さらに効果的に酸化物超電導層への水分の浸入を抑えるので、酸化物超電導層が水分によりダメージを受けることがなくなり、超電導特性が劣化することをより確実に防止できる。
また、本発明の酸化物超電導線材において、前記金属安定化層が、金属テープの貼り合わせ、又はめっきにより形成されてなることもできる
金属安定化層が金属テープの貼り合わせにより形成されている場合、金属テープの厚さを調整することで容易に金属安定化層の厚さを調整できるので、酸化物超電導層を安定化するに充分な厚さを確保しやすく、安定化効果が高い酸化物超電導線材となる。また、金属安定化層がめっきにより形成されている場合、銀層の表面を覆うように金属安定化層が形成される構成となる。そのため、酸化物超電導層を外部からより効果的に遮蔽することができるので、水分による酸化物超電導層の劣化をさらに確実に抑制できる。
上記課題を解決するため、本発明の酸化物超電導線材の製造方法は、基材と中間層と酸化物超電導層と銀層がこの順に積層されてなる超電導積層体を準備する第1工程と、前記超電導積層体の銀層側を、該超電導積層体の幅方向の中間部から長手方向に沿って銀層から基材に達するように溝加工して溝加工部を設ける第2工程と、前記溝加工部が設けられた前記銀層側の上面にはんだ層を形成する第3工程と、前記はんだ層が内側となるように、前記溝加工部を介して前記超電導積層体を二つ折りにする第4工程と、二つ折りにされた前記超電導積層体を加熱して前記はんだ層を溶融凝固させて前記超電導積層体を固定する第5工程と、を備えることを特徴とする。
本発明の酸化物超電導線材の製造方法は、はんだ層のみが積層された超電導積層体を、二つ折りにして酸化物超電導層が基材に挟まれるようにする構成である。
そのため、線材の全体の厚さを厚くすることなく、酸化物超電導層が外部から遮蔽された構成の酸化物超電導線材を製造できる。従って、酸化物超電導層への水分の浸入を抑えるので、酸化物超電導層が水分によりダメージを受けることがなく、超電導特性の劣化を防止する酸化物超電導線材を提供できる。
また、本発明の酸化物超電導線材の製造方法は、前記第1工程において、前記銀層を積層した後に、前記銀層上に金属安定化層を積層し、前記第2工程において、前記超電導積層体の金属安定化層側を、該超電導積層体の幅方向の中間部から長手方向に沿って金属安定化層から基材に達するように溝加工して溝加工部を設け、前記第3工程において、前記溝加工部が設けられた前記金属安定化層側の上面にはんだ層を形成することもできる。
この場合、酸化物超電導層のはんだ層側の面に銀層と金属安定化層を形成する構成となるため、酸化物超電導層を安定化する効果が更に向上した酸化物超電導線材を製造できる。また、酸化物超電導層のはんだ層側の面が銀層、および金属安定化層により積層される構成の酸化物超電導線材が製造できるため、さらに効果的に酸化物超電導層への水分の浸入を抑えるので、酸化物超電導層が水分によりダメージを受けて超電導特性が劣化することをより確実に防ぐことができる酸化物超電導線材を提供できる。
また、本発明の酸化物超電導線材の製造方法は、前記第1工程において、前記銀層上に金属テープを貼り合わせることにより、又は前記銀層を金属でめっきするにより前記銀層上に金属安定化層を積層することもできる。
金属安定化層を金属テープの貼り合わせにより形成する場合、金属テープの厚さを調整することで容易に金属安定化層の厚さを調整できるので、酸化物超電導層を安定化するに充分な厚さを確保しやすく、安定化効果が高い酸化物超電導線材を製造することができる。また、金属安定化層をめっきにより形成する場合、銀層の表面を覆うように金属安定化層を形成する構成となる。そのため、超電導積層体を外部からより効果的に遮蔽することができるので、水分による酸化物超電導層の劣化をさらに確実に抑制する酸化物超電導線材を提供できる。
また、本発明の酸化物超電導線材の製造方法は、前記第2工程において、レーザー又は回転刃により前記溝加工部を設けることもできる。
この場合、レーザーの出力や回転刃の厚さを調整することで容易に溝加工部の幅及び深さを調整できるため、超電導積層体を二つ折りにする際、酸化物超電導層にクラックが生じないので、超電導特性の劣化を抑制した酸化物超電導線材を提供することができる。
本発明によれば、線材の全体の厚さを必要以上に厚くすることなく、酸化物超電導層への水分の浸入を抑えることができる酸化物超電導線材及びその製造方法が提供される。
本発明に係る酸化物超電導線材の第1実施形態を示す断面斜視図である。 本発明に係る酸化物超電導線材の第1実施形態に用いられる超電導積層体の断面斜視図である。 本発明に係る酸化物超電導線材の第1実施形態の製造方法の一例を説明する図である。 本発明に係る酸化物超電導線材の製造装置の一例を示す構成図である。 本発明に係る酸化物超電導線材の第2実施形態に用いられる超電導積層体の断面斜視図である。 本発明に係る酸化物超電導線材の第2実施形態を示す断面斜視図である。 本発明に係る酸化物超電導線材の第2実施形態の製造方法の一例を説明する図である。
以下、本発明に係る酸化物超電導線材及びその製造方法の実施形態について図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
図1は、本発明に係る酸化物超電導線材の第1実施形態を示す断面斜視図である。図1に示すように、酸化物超電導層3が基材1に挟まれるように、溝加工部11を介して、基材1を二つ折りにしてなる構造となっている。
図2は、本発明に係る酸化物超電導線材の第1実施形態に用いられる超電導積層体5の断面斜視図である。
図2に示す超電導積層体5は、基材1の上に中間層2と酸化物超電導層3と銀層7が順次積層された構造となっている。
基材1は、通常の超電導線材の基材として使用し得るものであれば良く、長尺のプレート状、シート状又はテープ状であることが好ましく、耐熱性の金属からなるものが好ましい。耐熱性の金属の中でも、合金が好ましく、ニッケル(Ni)合金又は銅(Cu)合金がより好ましい。中でも、市販品であればハステロイ(商品名、ヘインズ社製)が好適であり、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、コバルト(Co)等の成分量が異なる、ハステロイB、C、G、N、W等のいずれの種類も使用できる。また、基材1としてニッケル(Ni)合金などに集合組織を導入した配向金属基材を用い、その上に中間層2および酸化物超電導層3を形成してもよい。
基材1の厚さは、目的に応じて適宜調整すれば良く、通常は、10〜500μmであることが好ましく、20〜200μmであることがより好ましい。下限値以上とすることで強度が一層向上し、上限値以下とすることでオーバーオールの臨界電流密度を一層向上させることができる。
中間層2は、酸化物超電導層3の結晶配向性を制御し、基材1中の金属元素の酸化物超電導層3への拡散を防止するものである。さらに、基材1と酸化物超電導層3との物理的特性(熱膨張率や格子定数等)の差を緩和するバッファー層として機能し、その材質は、物理的特性が基材1と酸化物超電導層3との中間的な値を示す金属酸化物が好ましい。中間層2の好ましい材質として具体的には、GdZr、MgO、ZrO−Y(YSZ)、SrTiO、CeO、Y、Al、Gd、Zr、Ho、Nd等の金属酸化物が例示できる。
中間層2は、単層でも良いし、複数層でも良い。例えば、前記金属酸化物からなる層(金属酸化物層)は、結晶配向性を有していることが好ましく、複数層である場合には、最外層(最も酸化物超電導層3に近い層)が少なくとも結晶配向性を有していることが好ましい。
さらに、本発明において、中間層2は、基材1側に拡散防止層とベッド層が積層された複数層構造でもよい。この場合、基材1とベッド層との間に拡散防止層が介在された構造となる。拡散防止層は、基材1の構成元素拡散を防止する目的で形成されたもので、窒化ケイ素(Si)、酸化アルミニウム(Al)、あるいは希土類金属酸化物等から構成され、その厚さは例えば10〜400nmである。なお、拡散防止層の結晶性は問われないので、通常のスパッタ法等の成膜法により形成すればよい。
このように基材1とベッド層との間に拡散防止層を介在させることにより、中間層2を構成する他の層や酸化物超電導層3等を形成する際に、必然的に加熱され、又は熱処理される結果として熱履歴を受ける場合に、基材1の構成元素の一部がベッド層を介して酸化物超電導層3側に拡散することを効果的に抑制することができる。基材1とベッド層との間に拡散防止層を介在させる場合の例としては、拡散防止層としてAl、ベッド層としてYを用いる組み合わせを例示することができる。
また中間層2は、前記金属酸化物層の上に、さらにキャップ層が積層された複数層構造でも良い。キャップ層は、酸化物超電導層3の配向性を制御する機能を有するとともに、酸化物超電導層3を構成する元素の中間層2への拡散や、酸化物超電導層3積層時に使用するガスと中間層2との反応を抑制する機能等を有するものである。
キャップ層は、前記金属酸化物層の表面に対してエピタキシャル成長し、その後、横方向(面方向)に粒成長(オーバーグロース)して、結晶粒が面内方向に選択成長するという過程を経て形成されたものが好ましい。このようなキャップ層は、前記金属酸化物層よりも高い面内配向度が得られる。
キャップ層の材質は、上記機能を発現し得るものであれば特に限定されないが、好ましいものとして具体的には、CeO、Y、Al、Gd、Zr、Ho、Nd等が例示できる。キャップ層の材質がCeOである場合、キャップ層は、Ceの一部が他の金属原子又は金属イオンで置換されたCe−M−O系酸化物を含んでいても良い。
キャップ層は、PLD法(パルスレーザ蒸着法)、スパッタリング法等で成膜することができるが、大きな成膜速度を得られる点でPLD法を用いることが好ましい。
中間層2の厚さは、目的に応じて適宜調整すれば良いが、通常は、0.1〜5μmである。
中間層2が、前記金属酸化物層の上にキャップ層が積層された複数層構造である場合には、キャップ層の厚さは、通常は、0.1〜1.5μmである。
中間層2は、スパッタ法、真空蒸着法、レーザ蒸着法、電子ビーム蒸着法、イオンビームアシスト蒸着法(以下、IBAD法と略記する)等の物理的蒸着法;化学気相成長法(CVD法);塗布熱分解法(MOD法);溶射等、酸化物薄膜を形成する公知の方法で積層できる。特に、IBAD法で形成された前記金属酸化物層は、結晶配向性が高く、酸化物超電導層3やキャップ層の結晶配向性を制御する効果が高い点で好ましい。IBAD法とは、蒸着時に、結晶の蒸着面に対して所定の角度でイオンビームを照射することにより、結晶軸を配向させる方法である。通常は、イオンビームとして、アルゴン(Ar)イオンビームを使用する。例えば、GdZr、MgO又はZrO−Y(YSZ)からなる中間層2は、IBAD法における配向度を表す指標であるΔΦ(FWHM:半値全幅)の値を小さくできるため、特に好適である。
酸化物超電導層3は通常知られている組成の酸化物超電導体からなるものを広く適用することができ、REBaCu(REはY、La、Nd、Sm、Er、Gd等の希土類元素を表す)なる材質のもの、具体的には、Y123(YBaCu)又はGd123(GdBaCu)を例示することができる。また、その他の酸化物超電導体、例えば、BiSrCan−1Cu4+2n+δなる組成等に代表される臨界温度の高い他の酸化物超電導体からなるものを用いても良いのは勿論である。
酸化物超電導層3は、スパッタ法、真空蒸着法、レーザ蒸着法、電子ビーム蒸着法等の物理的蒸着法;化学気相成長法(CVD法);塗布熱分解法(MOD法)等で積層でき、なかでもレーザ蒸着法が好ましい。
酸化物超電導層3の厚みは、0.5〜5μm程度であって、均一な厚みであることが好ましい。
酸化物超電導層3の上面を覆うように形成されている銀層7は、スパッタ法などの気相法により成膜されており、その厚さを1〜30μm程度とされる。なお、気相法により成膜された銀層7は、銀の粒子が酸化物超電導層3の表面に被着して膜を形成している。そのため、銀層7は全体的に均一な膜ではなく、膜厚や膜表面形状にバラつきがある場合もありうる。銀層7の形成方法の詳細については、後述する。
銀層7を備える構成とする理由としては、銀は良導電性かつ酸化物超電導層3と接触抵抗が低くなじみの良い点、及び、酸化物超電導層3に酸素をドープするアニール工程においてドープした酸素を酸化物超電導層3から逃避し難くする性質を有する点を挙げることができる。
本実施形態の酸化物超電導線材の製造方法の詳細は後述するが、図1に示されるように、酸化物超電導線材10は、超電導積層体5の銀層7側に、該超電導積層体5の幅方向の中間部から長手方向に沿って銀層7から基材1に達するように溝加工部11が設けられ、溝加工部11が設けられた銀層7側の上面に被着するようにはんだ層12が積層され、はんだ層12が内側となるように前記溝加工部11を介して前記超電導積層体5が二つ折りにされてなる。
すなわち、酸化物超電導線材10は、基材1と中間層2と酸化物超電導層3と銀層7がこの順に積層されてなる超電導積層体5が、銀層7から基材1まで達する溝加工部11を介し、はんだ層12を挟んで二つ折りにされてなる構造となっている。
次に図3を参照して、本実施形態の酸化物超電導線材10の製造方法について説明する。
本実施形態の酸化物超電導線材10の製造方法は、基材1と中間層2と酸化物超電導層3と銀層7がこの順に積層されてなる超電導積層体5を準備する第1工程と、前記超電導積層体5の銀層7側を、該超電導積層体5の幅方向の中間部から長手方向に沿って銀層7から基材1に達するように溝加工して溝加工部11を設ける第2工程と、前記溝加工部11が設けられた前記銀層7側の上面にはんだ層12を形成する第3工程と、前記はんだ層12が内側となるように、前記溝加工部11を介して前記超電導積層体5を二つ折りにする第4工程と、二つ折りにされた前記超電導積層体5を加熱して前記はんだ層12を溶融凝固させて前記超電導積層体5を固定する第5工程と、を備える。
まず、前述した超電導積層体5を準備する(第1工程)。一例として、基材1上にスパッタ法で拡散防止層とベッド層を形成した後、このベッド層の上にIBAD法で中間層2を形成し、さらにPLD法でキャップ層と酸化物超電導層3を形成し、次に、酸化物超電導層3の上面に銀層7を形成して超電導積層体5を作製する。
銀層7の形成方法は特に限定されず従来公知の方法を適用できるが、気相法により形成することが好ましい。気相法としては、スパッタ法、真空蒸着法、レーザ蒸着法、電子ビーム蒸着法等の物理的蒸着法、化学気相成長法(CVD法)が挙げられるが、比較的簡便に成膜が可能であり、コストも安価であるため、スパッタ法が特に好ましい。スパッタ法としては、イオンビームスパッタ法、DC(直流)スパッタ法、RF(高周波)スパッタ法、マグネトロンスパッタ法のいずれの方法でもよい。
形成する銀層7の厚さは、1〜30μm程度とされ、上記の如くスパッタ法等の気相法により形成された場合は、0.5〜26μm程度とされる。なお、気相法により成膜された銀層7は、銀の粒子が超電導積層体5の表面(成膜面)に被着して膜を形成している。そのため、銀層7は全体的に均一な膜ではなく、膜厚や膜表面形状にバラつきがある場合もありうる。
次に、超電導積層体5の銀層7側を、超電導積層体5の幅方向の中間部から長手方向に沿って銀層7から基材1に達するように溝加工して溝加工部11を設ける(第2工程)。溝加工部11の形成方法は特に限定されず従来公知の方法を適用できるが、レーザー又は回転刃により形成することが好ましい。図3に示すように、レーザー加工機13を用いる場合には、加工時に超電導積層体5が応力や圧力により変形するおそれがない。レーザーの出力や回転刃の厚さを調整することで容易に溝加工部11の幅及び深さを調整できる。また、超電導積層体5の搬送速度を変えることにより、更に正確な調節が可能となる。
溝加工部11の幅は、20〜100μm程度とされ、溝加工部11の深さは、基材1の厚さの1/3〜1/2程度の深さに達する程度とされる。
溝加工部11を設けずに基材1を二つ折りにすると、酸化物超電導層3の折り曲げ部分に不定形のクラックが多数生じてしまうので、酸化物超電導線材10の超電導特性が劣化してしまう。一方、溝加工部11を設けることにより、超電導積層体5を二つ折りにする際、酸化物超電導層3に不用なクラックが生じないので、超電導特性の劣化を抑制した酸化物超電導線材10を提供することができる。
次に溝加工部11が設けられた銀層7側の上面にはんだ層12を形成する(第3工程)。はんだ層12の厚さは、20〜30μm程度とされる。はんだ層は、はんだテープを被着させたものであっても、はんだ付けによって形成したものであってもよい。また、はんだ層の材料として錫、錫−銀系合金や錫−ビスマス系合金等を適宜用いることができる。
次にはんだ層12が内側となるように、溝加工部11を介して超電導積層体5を二つ折りにする(第4工程)。溝加工部11を介することにより超電導積層体5を折り曲げやすくすることができる。尚、上述したように、折り曲げの観点から基材1の厚さの1/3〜1/2程度の深さに達するように溝加工部11を設けることが好ましい。
次に二つ折りにされた超電導積層体5を加熱してはんだ層12を溶融凝固させて超電導積層体5を固定する(第5工程)。
以上の工程により、酸化物超電導線材10を製造できる。
さらに本実施形態の酸化物超電導線材10の製造方法を、酸化物超電導線材の製造装置30(以下、「製造装置30」と称する。)を用いて説明する。
図4に示すように、製造装置30は、超電導積層体5を溝加工するレーザー加工機構13と、超電導積層体5にはんだテープ20を沿わせてはんだ層を積層するはんだ沿わせ機構50と、超電導積層体5を溝加工部を介して二つ折りにする折り曲げ機構40と、折り曲げられた超電導積層体5を固定する固定機構60とを備えている。
詳しくは、製造装置30は、超電導積層体5を巻き付けて備え、超電導積層体5を送り出し可能な第1リール装置31と、はんだテープ20を巻き付けて備え、はんだテープ20を送り出し可能な第2リール装置32と、送り出された超電導積層体5およびはんだテープ20を、はんだ沿わせ機構50に案内する搬送ローラ51と、固定機構60により形成された酸化物超電導線材1を巻き取る巻き取り装置33とを備えている。
図4に示すように、固定機構60は、はんだ層が積層され、二つ折りにされた超電導積層体5をはんだ層の融点以上の温度に加熱する本加熱機構(加熱部)61と、二つ折りにされた超電導積層体5を固定するように押し付けながら徐々に冷却する一対の加圧ローラ62とを有している。
二つ折りにされた超電導積層体5は、本加熱機構61内を挿通することにより所定の温度に加熱される。加圧ローラ62は、不図示のヒータ、および加圧ローラ62の外周面上に取付けられた不図示のブラシを有している。
以上の工程により、酸化物超電導線材10が製造される。
本実施形態の酸化物超電導線材10は、はんだ層12のみが積層された超電導積層体5を、酸化物超電導層3が基材1に挟まれるように二つ折りにしてなる構成である。そのため、線材の全体の厚さを厚くすることなく、酸化物超電導層3が外部から遮蔽された構成を実現できる。
従って、酸化物超電導層3への水分の浸入を抑えるので、酸化物超電導層3が水分によりダメージを受けることがなく、超電導特性が劣化することを防止できる。
また、本実施形態の酸化物超電導線材10は、基材1が酸化物超電導層3より外側に位置した構成である。
従って、酸化物超電導層3が基材1により外部から遮蔽された構成を実現できるので、外部からの衝撃によりダメージを受けることがなく、超電導特性が劣化することを防止できる。
また、本実施形態の酸化物超電導線材10は、基材1と中間層2と酸化物超電導層3と銀層7がこの順に積層されてなる超電導積層体5が、銀層7から基材1まで達する溝加工部11を介し、はんだ層12を挟んで二つ折りにされてなる構成である。そのため、酸化物超電導層3は、酸化物超電導線材10の中立軸の近くに位置し、引張応力及び圧縮応力を受けにくい。従って、線材を巻胴などに巻回してコイル加工して超電導コイルとする際に、線材の表裏を考慮する必要がないため、本実施形態の酸化物超電導線材10を超電導コイルとして好適に用いることができる。
さらに、本実施形態の酸化物超電導線材10は、上記の如くはんだ層12のみが積層された超電導積層体5を、二つ折りにしてなる構成であるため、線材の小型化が可能であり、線材をコイル加工して超電導コイルとする際にも巻回しに要する時間を短縮でき、取り扱い性が良好である。
本発明の酸化物超電導線材10の製造方法は、はんだ層12のみが積層された超電導積層体5を、二つ折りにして酸化物超電導層3が基材1に挟まれるようにする構成である。
そのため、線材の全体の厚さを必要以上に厚くすることなく、酸化物超電導層3を外部から遮蔽した構成の酸化物超電導線材10を製造できる。従って、酸化物超電導層3への水分の浸入を抑えるので、酸化物超電導層3が水分によりダメージを受けることがなく、超電導特性の劣化を防止する酸化物超電導線材10を製造できる。
本実施形態の酸化物超電導線材10の製造方法は、超電導積層体5の銀層7側を、該超電導積層体5の幅方向の中間部から長手方向に沿って銀層7から基材1に達するように溝加工して溝加工部11を設ける工程(第2工程)を有する構成である。
超電導積層体5の銀層7側に溝加工部11を設けることにより、超電導積層体5を二つ折りにする際、酸化物超電導層3に不用なクラックが生じないので、超電導特性の劣化を抑制した酸化物超電導線材10を製造することができる。
また、本実施形態の酸化物超電導線材の製造方法は、第2工程において、レーザー又は回転刃により前記溝加工部11を設ける工程を有する構成とすることもできる。この場合、レーザーの出力や回転刃の厚さを調整することで容易に溝加工部11の幅及び深さを調整できる。
本実施形態の酸化物超電導線材10の製造方法は、二つ折りにされた超電導積層体5を加熱してはんだ層12を溶融凝固させて超電導積層体5を固定する工程(第5工程)を有する構成である。そのため、万一、銀層7の一部が剥離して剥離部が形成され、酸化物超電導層3の一部が露出している場合にも、溶融したはんだ層12により銀層7の剥離部が埋められ、酸化物超電導層3を外部から遮蔽する構造を実現できる。そのため、銀層7に剥離部がある場合にも、酸化物超電導層3への水分の浸入および超電導特性の劣化を抑制できる。
このような銀層7の剥離部は頻繁に形成されるものではないが、製造工程中に銀層7の一部が僅かに剥離してしまう場合に形成されうる。例えば、中間層2や酸化物超電導層3の成膜等の製造工程途中に混入した異物が除去されず酸化物超電導層3に付着した状態で銀層7を成膜した場合には、該異物の剥離に伴い銀層7の一部も剥離してしまう場合がある。異物の混入を防ぐためには、線材の洗浄が有効であるが、線材に付着した異物はエアー洗浄などでは除去しにくく、また、線材表面をブラッシングして洗浄すると、表面の膜を傷つけてしまい、特性が劣化するおそれがある。線材の長尺化や製造本数の増加により銀層7に剥離部が形成される可能性が高くなるため、銀層7への剥離部の導入を完全に無くすことより、銀層7形成後に剥離部を修復する方がより現実的である。
本実施形態の酸化物超電導線材10の製造方法によれば、製造工程の簡略化、不良品率の低下、生産性の向上が望める。
[第2実施形態]
図5は本発明に係る酸化物超電導線材の第2実施形態に用いられる超電導積層体の断面斜視図である。
図5に示す超電導積層体5Bは、基材1の上に中間層2と酸化物超電導層3と銀層7とを順次積層し、この銀層7上に金属安定化層8が積層された構造となっている。
また、図6は、本発明に係る酸化物超電導線材の第2実施形態(酸化物超電導線材10B)を示す断面斜視図である。
本実施形態の酸化物超電導線材10Bに用いられる超電導積層体5Bは、前記第1実施形態の酸化物超電導線材10に用いられる超電導積層体5の構成に加え、酸化物超電導層3の上面に形成された銀層7の上に金属安定化層8が積層された構成となっている。図5において、上記第1実施形態の酸化物超電導線材10と同一の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
金属安定化層8は、良導電性の金属材料からなり、酸化物超電導層3が超電導状態から常電導状態に遷移しようとした時に、銀層7とともに、酸化物超電導層3の電流が転流するバイパスとして機能する。
金属安定化層8を構成する金属材料としては、良導電性を有するものであればよく、特に限定されないが、銅、黄銅(Cu−Zn合金)、Cu−Ni合金等の銅合金、ステンレス等の比較的安価な材質からなるものを用いることが好ましく、中でも高い導電性を有し、安価であることがら銅製が好ましい。
なお、酸化物超電導線材10Bを超電導限流器に使用する場合は、金属安定化層8は抵抗金属材料より構成され、Ni−Cr等のNi系合金などを使用できる。
金属安定化層8の形成方法は特に限定されず、例えば、銅などの良導電性材料よりなる金属テープをはんだなどの接合剤を介して銀層7上に積層することにより形成できる。
金属安定化層8の厚さは特に限定されず、適宜調整可能であるが、10〜300μmとすることが好ましい。下限値以上とすることにより酸化物超電導層3を安定化する一層高い効果が得られ、上限値以下とすることにより酸化物超電導線材10Bを薄型化できる。
図6は、本発明に係る酸化物超電導線材の第2実施形態を示す断面斜視図である。本実施形態の酸化物超電導線材の製造方法の詳細は後述するが、酸化物超電導線材10Bは、超電導積層体5Bの金属安定化層8側に、該超電導積層体5Bの幅方向の中間部から長手方向に沿って金属安定化層8から基材1に達するように溝加工部11Bが設けられ、溝加工部11Bが設けられた金属安定化層8側の上面に被着するようにはんだ層12が積層され、はんだ層12が内側となるように前記溝加工部11Bを介して前記超電導積層体5Bが二つ折りにされてなる。
すなわち、酸化物超電導線材10Bは、はんだ層12と銀層7との間に金属安定化層8が介在されてなる構造となっている。
従って、本実施形態の酸化物超電導線材10Bは、酸化物超電導層が積層された超電導積層体の外周全面に銀の安定化層を設け、さらに銅の安定化層を設けた構造と比較して、線材の全体の厚さが厚くならず、臨界電流密度が低くなってしまうおそれがない。
次に、本実施形態の酸化物超電導線材10Bの製造方法について説明する。
本実施形態の酸化物超電導線材10Bの製造方法は、まず、前述の第1実施形態の酸化物超電導線材10の製造方法の第1工程において、銀層7を積層した後に、銀層7上に金属安定化層8を積層して超電導積層体5Bを準備する。
次いで、前述の第1実施形態の酸化物超電導線材10の製造方法の第2工程において、超電導積層体5Bの金属安定化層8側を、該超電導積層体5Bの幅方向の中間部から長手方向に沿って銀層7から基材1に達するように溝加工して溝加工部11Bを設ける。
次いで、前述の第1実施形態の酸化物超電導線材10の製造方法の第3工程において、溝加工部11Bが設けられた金属安定化層8側の上面にはんだ層12を形成する。
その後、前述の第1実施形態の酸化物超電導線材10の製造方法の第4工程及び第5工程と同様の工程を行う。
以上の工程により、本実施形態の酸化物超電導線材10Bを製造できる。
第1工程において、金属安定化層8を金属テープの貼り合わせにより形成することができる。金属テープの厚さを調整することで容易に金属安定化層8の厚さを調整できるので、酸化物超電導層3を安定化するに充分な厚さを確保しやすく、安定化効果が高い酸化物超電導線材10Bとなる。
次いで、第2工程において、超電導積層体5Bの金属安定化層8側を溝加工して溝加工部11Bを設けるが、前述の第1実施形態の第2工程と第3工程の間に、折り曲げ後の超電導積層体5Bの幅と同じ幅の金属テープ2枚を、溝加工部11Bを覆わないように銀層7に貼り合わせてもよい。
また、第1工程において、金属安定化層8は、電気めっきによりすることもできる。金属安定化層8を構成する材質としては、良導電性の金属が好ましく、Cu、Alなどが挙げられ、高い導電性を有するためCuが特に好ましい。金属安定化層8の厚さは特に限定されず、適宜変更可能であるが、10〜100μm程度とすることができ、20μm以上100μm以下とすることが好ましく、20μm以上50μm以下とすることがより好ましい。
金属安定化層8の厚さを10μm以上とすることにより酸化物超電導層3を安定化する一層高い効果が得られ、100μm以下とすることにより酸化物超電導線材10Bを薄型化できる。
本実施形態の酸化物超電導線材10Bは、上記第1実施形態の酸化物超電導線材10の構成に加え、銀層7のはんだ層12側の面に金属安定化層8を備える構成である。従って、本実施形態の酸化物超電導線材10Bによれば、上記第1実施形態の酸化物超電導線材10の効果に加え、酸化物超電導層3を安定化する効果が更に高まる。また、酸化物超電導層3のはんだ層12側の面が銀層7および金属安定化層8により被覆されているため、上記第1実施形態の酸化物超電導線材10よりも、さらに確実に酸化物超電導層3への水分の浸入を抑え、酸化物超電導層3が水分によりダメージを受けて超電導特性が劣化することを防ぐことができる。
また、本実施形態の酸化物超電導線材10Bは、金属安定化層8が、金属テープの貼り合わせ、又はめっきにより形成されてなる構成とすることもできる。
金属安定化層8が金属テープの貼り合わせにより形成されている場合、金属テープの厚さを調整することで容易に金属安定化層8の厚さを調整できるので、酸化物超電導層3を安定化するに充分な厚さを確保しやすく、安定化効果が高い酸化物超電導線材10Bとなる。また、金属安定化層8がめっきにより形成されている場合、銀層の表面を覆うように金属安定化層8が形成される構成となる。そのため、超電導積層体5Bを外部からより効果的に遮蔽することができるので、水分による酸化物超電導層10Bの劣化をさらに確実に抑制できる。
本実施形態の酸化物超電導線材10Bの製造方法は、酸化物超電導層3のはんだ層12側の面に銀層7と金属安定化層8を形成する工程を有する構成とあるため、酸化物超電導層3を安定化する効果が更に向上した酸化物超電導線材10Bを製造できる。また、酸化物超電導層3のはんだ層12側の面が銀層7、および金属安定化層8により積層される構成の酸化物超電導線材10Bが製造できるため、さらに効果的に酸化物超電導層3への水分の浸入を抑えるので、酸化物超電導層3が水分によりダメージを受けて超電導特性が劣化することをより確実に防ぐことができる酸化物超電導線材10Bを提供できる。
また、本発明の酸化物超電導線材10Bの製造方法は、前述した第1の実施形態の第1工程において、銀層7上に金属テープを貼り合わせることにより、又は銀層7を金属でめっきするにより銀層7上に金属安定化層8を積層する工程を有する構成とすることもできる。
金属安定化層8を金属テープの貼り合わせにより形成する場合、金属テープの厚さを調整することで容易に金属安定化層8の厚さを調整できるので、酸化物超電導層3を安定化するに充分な厚さを確保しやすく、安定化効果が高い酸化物超電導線材10Bを製造することができる。また、金属安定化層8をめっきにより形成する場合、銀層7の表面を覆うように金属安定化層8を形成する工程を有する構成となる。そのため、超電導積層体5Bを外部からより効果的に遮蔽することができるので、水分による酸化物超電導層3の劣化をさらに確実に抑制する酸化物超電導線材10Bを提供できる。
本実施形態の酸化物超電導線材10Bの製造方法は、超電導積層体5Bの金属安定化層8側を、該超電導積層体5Bの幅方向の中間部から長手方向に沿って銀層7から基材1に達するように溝加工して溝加工部11Bを設ける工程(第2工程)を有する構成である。
超電導積層体5Bの金属安定化層8側に溝加工部11Bを設けることにより、超電導積層体5Bを二つ折りにする際、酸化物超電導層3にクラックが生じないので、超電導特性の劣化を抑制した酸化物超電導線材10Bを製造することができる。
また、本実施形態の酸化物超電導線材の製造方法は、第2工程において、レーザー又は回転刃により前記溝加工部11Bを設ける工程を有する構成とすることもできる。この場合、レーザーの出力や回転刃の厚さを調整することで容易に溝加工部11Bの幅及び深さを調整できる。
本実施形態の酸化物超電導線材10Bの製造方法は、二つ折りにされた超電導積層体5Bを加熱してはんだ層12を溶融凝固させて超電導積層体5Bを固定する工程(第5工程)を有する構成である。万が一、銀層に数十μm程度の大きな剥離部が形成され、金属安定化層8により該剥離部が充分に埋められないような場合にも、はんだ層12により金属安定化層8を被覆する構成であることにより、酸化物超電導層3を外部から完全に遮蔽し、酸化物超電導層3が水分により劣化することを抑制できる。
さらに、万が一、めっき法により形成された金属安定化層8にピンホールがあった場合にも、ピンホールをはんだ層12により塞ぐことができる。
このような銀層7の剥離部は頻繁に形成されるものではないが、稀に、製造工程途中に銀層7の一部が僅かに剥離してしまう場合などがある。例えば、製造工程中に混入した異物が除去されず酸化物超電導層3に付着した状態で銀層7を成膜した場合には、該異物の剥離に伴い銀層7の一部も剥離してしまう場合がある。
異物の混入を防ぐためには、線材の洗浄が有効であるが、線材に付着した異物はエアー洗浄などでは除去しにくく、また、線材表面をブラッシングして洗浄すると、表面の膜を傷つけてしまい、特性が劣化するおそれがある。線材の長尺化や製造本数の増加により銀層7に剥離部が形成される可能性が高くなるため、銀層7への剥離部の導入を完全に無くすことより、銀層7形成後に剥離部を修復する方が、より現実的である。
本実施形態の酸化物超電導線材10Bおよびその製造方法によれば、万が一異物が混入して銀層に剥離部が導入され、この剥離部がめっき法により形成された金属安定化層8でも埋め切れないような場合にも、はんだ層12により被覆する構成であることにより、該剥離部を被覆して酸化物超電導層3が外部から完全に遮蔽された構造を実現できる。従って、本実施形態の酸化物超電導線材10Bの製造方法によれば、製造工程の簡略化、不良品率の低下、生産性の向上が望める。
以上、本発明の酸化物超電導線材およびその製造方法について説明したが、上記実施形態において、酸化物超電導線材の各部、酸化物超電導線材の製造方法に使用する装置を構成する各部は一例であって、本発明の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
「実施例1」
幅10mm、厚さ100μmのハステロイC276(米国ヘインズ社製商品名)製のテープ状の金属基材の上に、IBAD法により1.0μm厚のGdZr(GZO)なる組成の中間層を形成し、さらにこの配向層の上にPLD法により1.0μm厚のCeOなる組成のキャップ層を成膜した。次に、このキャップ層の上にPLD法により1.0μm厚のGdBaCu7−xなる組成の酸化物超電導層を形成し、酸化物超電導層の上に、スパッタ法により厚さ2μmの銀層を成膜し、超電導積層体を作製した。
次に、図4で示した装置を用いて、超電導積層体に溝加工を行い、はんだテープを沿わせてはんだ層を積層し、二つ折りにした後、加熱してはんだ層のはんだを溶融し、二つ折りにされた超電導積層体を固定し、酸化物超電導線材を作製した。
超電導積層体の液体窒素温度(77K)における臨界電流値は、Ic=400Aであり、酸化物超電導線材の液体窒素温度(77K)における臨界電流値は、Ic=380Aであり、超電導特性の低下は5%であった。
「比較例1」
実施例1と同様にして超電導積層体を作製し、図4で示した装置を用いて、超電導積層体に溝加工を行わず、はんだテープを沿わせてはんだ層を積層し二つ折りにした後、加熱して、はんだ層のはんだを溶融し、二つ折りにされた超電導積層体を固定し、酸化物超電導線材を作製した。
超電導積層体の液体窒素温度(77K)における臨界電流値は、Ic=400Aであり、酸化物超電導線材の液体窒素温度(77K)における臨界電流値は、Ic=320Aであり、超電導特性の低下は20%であった。
以上の結果により、本発明に係る実施例1の酸化物超電導線材は、基材と中間層と酸化物超電導層と銀層がこの順に積層されてなる超電導積層体が、銀層から基材まで達する溝加工部を介し、はんだ層を挟んで二つ折りにされてなる構成であり、酸化物超電導層の両面を二つ折りにした基材でカバーしているため、超電導特性の低下を5%に抑えることができる。かかる超電導特性の低下は溝加工部を設けたことに起因する。
一方、比較例1の酸化物超電導線材は、溝加工部を介さずに、超電導積層体が二つ折りにされてなる構成であるため、超電導特性の低下が20%であった。かかる超電導特性の低下は、超電導積層体を二つ折りにすることにより、酸化物超電導層にクラックが多方向に生じたことに起因する。
「プレッシャークッカー試験」
実施例1の酸化物超電導線材、及び超電導積層体について、温度120℃、湿度100%、圧力2気圧の雰囲気中に保持するプレッシャークッカー試験を行い、試験時間100時間経過後の各酸化物超電導線材の液体窒素温度(77K)における臨界電流値Icを測定した。
実施例1の酸化物超電導線材について、プレッシャークッカー試験前の臨界電流値は、Ic0=380Aであり、試験後の臨界電流値は、Ic=380Aであり、超電導特性の低下は0%であった。
一方、超電導積層体について、プレッシャークッカー試験前の臨界電流値は、Ic0=400Aであり、試験後の臨界電流値は、Ic=0Aであり、超電導特性の低下は100%であった。
以上の結果により、本発明に係る実施例1の酸化物超電導線材は、酸化物超電導層の両面を二つ折りにした基材でカバーしている構成であるため、酸化物超電導層への水分の浸入を抑えることができ、水分侵入により酸化物超電導層が劣化することを抑制できることが明らかである。
本発明は、例えば超電導モータ、限流器など、各種電力機器に用いられる酸化物超電導線材に利用することができる。
1…基材、2…中間層、3…酸化物超電導層、5、5B…超電導積層体、7…銀層、8…金属安定化層、10、10B…酸化物超電導線材、11、11B…溝加工部、12…はんだ層、13…レーザー加工機、20…はんだテープ、30…酸化物超電導線材の製造装置、31…第1リール装置、32…第2リール装置、33…巻き取り装置、40…折り曲げ機構、50…はんだ沿わせ機構、51…搬送ローラ、60…固定機構、61…本加熱機構(加熱部)、62…加圧ローラ

Claims (7)

  1. 基材と中間層と酸化物超電導層と銀層がこの順に積層されてなる超電導積層体が、銀層から基材まで達する溝加工部を介し、はんだ層を挟んで二つ折りにされてなることを特徴とする酸化物超電導線材。
  2. 前記はんだ層と前記銀層との間に金属安定化層が介在されてなることを特徴とする請求項1に記載の酸化物超電導線材。
  3. 前記金属安定化層が、金属テープの貼り合わせ、又はめっきにより形成されてなることを特徴とする請求項2に記載の酸化物超電導線材。
  4. 基材と中間層と酸化物超電導層と銀層がこの順に積層されてなる超電導積層体を準備する第1工程と、
    前記超電導積層体の銀層側を、該超電導積層体の幅方向の中間部から長手方向に沿って銀層から基材に達するように溝加工して溝加工部を設ける第2工程と、
    前記溝加工部が設けられた前記銀層側の上面にはんだ層を形成する第3工程と、
    前記はんだ層が内側となるように、前記溝加工部を介して前記超電導積層体を二つ折りにする第4工程と、
    二つ折りにされた前記超電導積層体を加熱して前記はんだ層を溶融凝固させて前記超電導積層体を固定する第5工程と、
    を備えることを特徴とする酸化物超電導線材の製造方法。
  5. 前記第1工程において、前記銀層を積層した後に、前記銀層上に金属安定化層を積層し、前記第2工程において、前記超電導積層体の金属安定化層側を、該超電導積層体の幅方向の中間部から長手方向に沿って金属安定化層から基材に達するように溝加工して溝加工部を設け、前記第3工程において、前記溝加工部が設けられた前記金属安定化層側の上面にはんだ層を形成することを特徴とする請求項4に記載の酸化物超電導線材の製造方法。
  6. 前記第1工程において、前記銀層上に金属テープを貼り合わせることにより、又は前記銀層を金属でめっきするにより前記銀層上に金属安定化層を積層することを特徴とする請求項5に記載の酸化物超電導線材の製造方法。
  7. 前記第2工程において、レーザー又は回転刃により前記溝加工部を設けることを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載の酸化物超電導線材の製造方法。
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