JP2012246224A - 抗認知症および学習記憶改善剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】副作用の問題のない、安全性に優れた抗認知症剤、また、学習記憶の改善に有用で、継続的摂取可能な学習記憶改善剤を提供する。
【解決手段】食品中から見出した2,5-ピペラジンジオン,3,6-ビス(フェニルメチル)-,(3R,6S)-(9Cl)が、SERT結合阻害活性を持ち、前頭前野のセロトニン濃度を上昇させ、抗うつ作用があることを発見した。さらに、2,5-ピペラジンジオン,3,6-ビス(フェニルメチル)-,(3R,6S)-(9Cl)がアセチルコリン分解酵素活性を阻害し、学習記憶に最も関連の深い海馬におけるアセチルコリン濃度を増やし、認知症動物モデルとして汎用されているスコポラミン誘発学習障害ラット用いた放射状迷路試験の正答率を上昇させることから、学習記憶改善作用を併せ持つ。
【選択図】なし

Description

本発明は、抗認知症剤および学習記憶改善剤に関する。詳しくは、2,5-ピペラジンジオン,3,6-ビス(フェニルメチル)-,(3R,6S)-(9Cl)を有効成分として含有する抗認知症剤および学習記憶改善剤に関する。
長寿化に伴い認知症が現代社会において重要な問題となってきている。認知症とは、種々の原因で脳細胞が死んだり、働きが悪くなったりすることにより起こる様々な障害が原因となり、継続的に生活に支障が出ている状態を指す。認知症を引き起こす原因のうち、もっとも多いのは、脳の神経細胞がゆっくりと死んでいく変性疾患であり、続いて多いのが、脳血管性認知症である。
変性疾患としては、アルツハイマー病、前頭・側頭型認知症、レビー型小体病などが挙げられる。一方、脳血管性認知症は、脳梗塞、脳出血、脳動脈硬化などが引き金となって脳の神経細胞が死んだり、神経のネットワークが壊れたりしてしまうことにより起こる。これら脳の神経細胞が壊れることによって直接起こる症状として、記憶障害、見当識障害、理解・判断力の低下、実行機能の低下などが挙げられる。
変性疾患の代表例であるアルツハイマー病は、原因が未だはっきりと解明されていないが、患者脳内で神経の伝達物質であるアセチルコリンレベルの低下が認められることから、コリン作動性神経の機能低下が原因の一つであると考えられている。そこで、アルツハイマー病では、アセチルコリンの濃度を高めてコリン作動性神経の機能低下を防ぐことを目的とする治療方法が主流となっている。すなわち、患者脳で認められるアセチルコリン減少に対して、アセチルコリン分解酵素であるアセチルコリンエステラーゼ(AChE)酵素活性を阻害することによりアセチルコリンの分解を抑制し、相対的にアセチルコリン濃度の上昇を図るものである。本方法では、症状を完全に治療することはできないものの、症状を改善したり、症状の進行を遅らせたりすることができることが分かっている。現在、アルツハイマー病の治療剤として、AChE酵素阻害作用を示すタクリン、ドネペジル(アリセプト)、リバスチグミン、ガランタミンが市販されている(非特許文献1)。しかしながら、タクリンは、肝毒性などの強い副作用が認められることから、長期間服用できないという問題がある。一方、ドネペジルは、タクリンに比べ副作用が少ないものの、嘔吐、食欲減退・食欲不振、下痢などの副作用が報告されている(非特許文献2)。
一方、アルツハイマー病の40−50%に抑うつ気分が認められ、10−20%にうつ病が合併し(非特許文献3)、また、血管性認知症では60%にうつ症状が認められ、27%にうつ病が合併していることが報告されている(非特許文献4)。すなわち、老年期うつ病から認知症に移行することがあることから、うつ病がアルツハイマー病を始めとする認知症のリスクファクターであることが指摘されている(非特許文献5)。そこで、アルツハイマー病だけでなくうつ症状にも併せて効く医薬品として、アセチルコリン分解酵素であるAChE酵素活性を阻害し、かつ、セロトニントランスポーター(SERT)への結合を阻害する化合物の開発が進んでいる(非特許文献6)。しかしながら、人工的に合成された食経験のない化合物を長期に渡って飲み続けることは、人体に対する重大な副作用の発現が懸念される。
一方、これまで、食品としてのジペプチド関連化合物が脳機能に影響を与えることが報告されている。Cyclo(Pro-Gly)は、シナプトノイロゾームの膜電位を変化させることから、記憶改善効果があることが示されている(非特許文献7)。βアラニルヒスチジン (カルノシン)は、オープンフィールド試験における自発運動を低下させることから、記憶改善作用があることが示されている(非特許文献8)。一方、βアラニルロイシン、βアラニルイソロイシンおよびカルノシンに自発運動促進作用があることが報告されている(特許文献1)。従って、カルノシンについては、自発運動を低下させる報告と促進させる報告があり、一定の見解が得られていない。また、Cyclo(His-Pro)は、自発運動を低下させることから、記憶改善作用が記載されている(非特許文献9)。しかしながら、Cyclo(His-Pro)が自発運動を低下させたからという根拠でCyclo(His-Pro)に記憶改善作用がある断定することは困難である。実際、Cyclo(His-Pro)に記憶改善作用があることは、これまで確認されていない。さらに、Tyr-Leuには、セロトニン5-HT1A、ドーパミンD1およびGABAAの活性化を介して抗不安様作用を示すことが報告されている(非特許文献10)。
このように、ジペプチド関連化合物には、脳機能に一定の影響を与えることが明らかになってきているものもあるが、うつ症状を改善させることにより認知症への移行を防止することや、学習記憶を改善するという報告はない。
特開2008−255087号公報
Neurochem. Int. 32, 413-419, 1998 独立行政法人医薬品医療機器総合機構:審査報告書(一般名ドネペジル)、平成19年7月10日 Am J Psychiatry 146(5), 577-87, 1989 Arch Neurol. 44(4), 389-93, 1987 J Neurol Neurosurg Psychiatry 75, 1662-1666, 2004 Chem Pharm Bull 58(3), 273-287, 2010 Bulletin of Experimental Biology and Medicine 135(6), 559-562, 2003. Proceeding of 53rd ICoMST, 375-376, 2007. Acta Pharmaceutica Sinica, 26(7), 546-547, 1991. FEBS Letters 584, 599-604, 2010.
我々が日常において摂取している食品中にAChE酵素活性を阻害し、SERTへの結合を阻害する成分を見出すことができれば、極めて安全かつ有効に認知症症状およびうつ症状を改善できることが期待される。すなわち、日常の抑うつ症状を改善して認知症への移行を遅らせることができれば、認知症発症を予防することが可能となり、さらに、うつ病が合併したアルツハイマー病に対しては、学習記憶能力低下の改善が期待される。また、病気に至らない場合においても、日常生活における物忘れなどの健忘症候群に見られるような老化に伴う学習記憶障害を少しでも遅らせたいという社会的な要望も大きいことから、安全で長期間摂取可能なSERTへの結合を阻害し、AChE酵素活性を阻害する食品由来成分が望まれている。
本発明の目的は、副作用の問題のない、安全性に優れた抗認知症剤を提供することである。また、本発明の目的は、学習記憶の改善に有用で、継続的摂取可能な学習記憶改善剤を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、食品中から見出した2,5-ピペラジンジオン,3,6-ビス(フェニルメチル)-,(3R,6S)-(9Cl)が、SERT結合阻害活性を持ち、前頭前野のセロトニン濃度を上昇させ、うつ状態にしたマウスを用いたモリス水迷路試験において、逃避台潜時を用量依存的に有意に短縮することから、抗うつ作用があることを発見した。さらに、本発明者らは、上記2,5-ピペラジンジオン,3,6-ビス(フェニルメチル)-,(3R,6S)-(9Cl)がアセチルコリン分解酵素活性を阻害し、学習記憶に最も関連の深い海馬におけるアセチルコリン濃度を増やし、認知症動物モデルとして汎用されているスコポラミン誘発学習障害ラット用いた放射状迷路試験の正答率を上昇させることから、学習記憶改善作用を併せ持つことを発見し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は下記に限定されるわけではないが、次の[1]〜[8]である。
[1] 2,5-ピペラジンジオン,3,6-ビス(フェニルメチル)-,(3R,6S)-(9Cl)を有効成分として含有する抗認知症剤。
[2] アルツハイマー型認知症の症状を改善または症状の進行を遅らせる、[1]記載の抗認知症剤。
[3] さらに抗うつ作用を有する、[1]または[2]記載の抗認知症剤。
[4] 抑うつ症状の改善または症状の進行を遅らせる、[3]の抗認知症剤。[5] さらに学習意欲の改善作用を有する、[1]記載の抗認知症剤。
[6] 経口剤である、[1]〜[5]のいずれかに記載の抗認知症剤。
[7] 2,5-ピペラジンジオン,3,6-ビス(フェニルメチル)-,(3R,6S)-(9Cl)を有効成分として含有する学習記憶改善剤。
[8] アルツハイマー型認知症の症状を改善または症状の進行を遅らせる、[7]記載の学習記憶改善剤。
[9] 経口剤である、[7]又は[8]記載の学習記憶改善剤。
本発明は、2,5-ピペラジンジオン,3,6-ビス(フェニルメチル)-,(3R,6S)-(9Cl)を有効成分とする抗認知症剤および学習記憶改善剤を提供する。本発明の剤は、抗うつ効果および学習意欲改善作用に加え、認知症への移行予防効果を有するばかりでなく、認知症における学習記憶低下を改善することから認知症予防/治療効果を併せて有しており、かつ、極めて安全性が高いため、長期間服用することが可能である。
図1は、2,5-ピペラジンジオン,3,6-ビス(フェニルメチル)-,(3R,6S)-(9Cl)を正常ラットに2週間経口投与した時の前頭前野におけるセロトニン濃度を示す。 図2は、2,5-ピペラジンジオン,3,6-ビス(フェニルメチル)-,(3R,6S)-(9Cl)をうつ状態にしたマウスに経口投与した時のモリス水迷路における逃避台への潜時を示す。 図3は、2,5-ピペラジンジオン,3,6-ビス(フェニルメチル)-,(3R,6S)-(9Cl)を正常ラットに経口投与した時の海馬アセチルコリン濃度を示す。 図4は、2,5-ピペラジンジオン,3,6-ビス(フェニルメチル)-,(3R,6S)-(9Cl)をあらかじめ学習させたラットに経口投与した時のスコポラミン誘発学習障害ラットを用いた放射状迷路試験の正答率を示す。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
<抗認知症剤および学習記憶促進剤>
本発明は、2,5-ピペラジンジオン,3,6-ビス(フェニルメチル)-,(3R,6S)-(9Cl)を有効成分として含有する抗認知症剤、および2,5-ピペラジンジオン,3,6-ビス(フェニルメチル)-,(3R,6S)-(9Cl)を有効成分として含有する学習記憶改善剤である。
本発明の剤は、2,5-ピペラジンジオン,3,6-ビス(フェニルメチル)-,(3R,6S)-(9Cl)を有効成分として含有し、抑うつ症状を改善し、学習意欲改善作用を有し、老化に伴う学習記憶障害である健忘症候群の予防・治療効果、アルツハイマー型認知症をはじめとする各種認知症の予防・治療効果および認知症のリスクファクターであるうつ症状を改善することにより認知症への移行を予防する作用を有する。即ち、本発明剤の有効成分は、抗うつ作用、学習意欲改善作用、抗認知症作用および学習記憶促進作用を併せ持つ。
現在、うつ病の治療薬、または、予防薬として、三環系抗うつ薬および四環系抗うつ薬に加えて、選択的セロトニン再取込み阻害剤(SSRI)とセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI)が臨床に導入されている。SSRIとSNRIは、従来の三環系抗うつ薬の副作用を大幅に改善した抗うつ薬である。SSRIは、SERTへの結合を阻害してシナプス間隙におけるセロトニンの再吸収を阻害し、シナプス間隙のセロトニン濃度を増加させることにより、うつ症状を改善することが知られている。本発明剤の有効成分は、SERTへの結合を阻害する。
SERT結合阻害活性は、例えば、既報(Eur J Pharmacol, 368, 277-283, 1999)に記載の方法で測定することができる。すなわち、3Hラベルしたイミプラミン(imipramine)がCHO細胞で発現させたヒトSERTへの結合を阻害するかどうかで測定することができる。
また、本発明剤の有効成分は、SERT結合阻害活性を介して、シナプス間隙のセロトニン濃度を上昇させる作用を有する。2,5-ピペラジンジオン,3,6-ビス(フェニルメチル)-,(3R,6S)-(9Cl)を正常ラットに2週間経口投与したときの前頭前野におけるセロトニン濃度をマイクロダイアリシス法で測定したところ、用量依存的に、かつ、有意に上昇させることが確認された。
さらに、本発明剤の有効成分は、抗うつ作用を有する。SSRIとしての抗うつ作用は、既報(Exp Anim, 59(2), 191-197, 2010)に記載の方法で測定することができる。すなわち、先ず、マウスを用いたモリス水迷路試験を8日間施行し、60秒以内に逃避台へ到達できなかったマウスを選択する(Loserマウス、上記文献では、inferiorと記載)。本発明の有効成分である2,5-ピペラジンジオン,3,6-ビス(フェニルメチル)-,(3R,6S)-(9Cl)をモリス水迷路試験施行前にLoserマウスに経口投与することにより、逃避台潜時が用量依存的に、かつ、有意に短縮したことから、抗うつ作用があることが確認された。
さらに、本発明剤の有効成分は、学習意欲改善作用を有する。上記モリス水迷路試験は、空間認識の記憶学習を測定する方法として報告された(Learn. Motiv. 12, 239-260 (1981))。マウスは周囲の風景を記憶し、その記憶を頼りにゴールの逃避台の場所を探して水を張ったプール内を泳ぎ回り、逃避台に到着することから、逃避台までの到達時間(逃避潜時)を評価のパラメータとする。本試験におけるマウスは、モリス水迷路試験を8日間施行し、60秒以内に逃避台に逃避台に到着できない個体を選択していることから、逃避台への時間を短縮させることは、すなわち学習意欲を改善しているとみなすことができる。本発明の有効成分である2,5-ピペラジンジオン,3,6-ビス(フェニルメチル)-,(3R,6S)-(9Cl)をモリス水迷路試験施行前にLoserマウスに経口投与することにより、逃避台潜時が用量依存的に、かつ、有意に短縮したことから、学習意欲改善作用があることが確認された。
本発明剤の有効成分は、AChE酵素阻害作用を有する。AChE酵素阻害作用は、AChEに高い選択性を持つ基質であるMATP+(1,1-ジメチル-4-アセチルチオメチルピペリジン)で測定することができる(Biol Pharma Bull, 33(4), 702-706, 2010)。すなわち、AChEにMATP+を反応させ、検出試薬であるDNTB(5,5’-ジチオビス(2−ニトロ安息香酸))の反応に伴う412nmの吸光度変化を指標に測定することができる。本発明剤の有効成分である2,5-ピペラジンジオン,3,6-ビス(フェニルメチル)-,(3R,6S)-(9Cl)のAChE酵素活性を50%阻害する濃度(IC50)は、1μMである。
コリン作動性ニューロンが関与することが知られている脳の海馬領域は、学習および記憶に関連する機能を有すると考えられている。学習および記憶の低下などの症状を有する変性疾患は、コリンニューロン作動性が損失していることから、海馬におけるアセチルコリン濃度の上昇は、学習および記憶の低下などの症状を改善する。本発明剤の有効成分は、マイクロダイアリシス法でラット海馬のアセチルコリン濃度を約2.5倍に上昇させた。
さらに、スコポラミンは、ムスカリン性アセチルコリンレセプターの非選択的な競合性アンタゴニストで、スコポラミン誘発学習障害実験動物は記憶障害のモデルとして広く用いられている。本発明剤の有効成分は、スコポラミン誘発学習障害ラットを用いた放射状迷路試験において、正答率を有意に改善したことから、学習記憶促進作用を有することが明らかとなった。
本発明剤の有効成分である2,5-ピペラジンジオン,3,6-ビス(フェニルメチル)-,(3R,6S)-(9Cl)は、マウスを用いた単回投与急性毒性試験において、2g/kg投与しても毒性を示さず、ラットを用いた28日間反復投与毒性試験において、最大無差用量が10mg/kg/day以上であり、さらに、Ames試験、染色体異常試験およびマウス小核試験においても変異原性を示さない、極めて安全性に優れた抗うつ剤(認知症への移行予防剤)および学習記憶促進剤(認知症治療剤)である。
有効成分である2,5-ピペラジンジオン,3,6-ビス(フェニルメチル)-,(3R,6S)-(9Cl)は、市販の合成試薬を用いてもよいが、安全性の観点からは天然物から抽出より得る方が好ましい。天然物から得る方法として、例として、以下の工程を含む方法を挙げることができる:
(1)獣畜肉類、魚介類、または、貝類を原料とし、液体中にて加熱することにより、それらに含有される水溶性タンパク質を除去する前処理工程;
(2)該前処理後に液体を交換し、再度加熱する工程;および
(3)得られた液サンプルをろ過する工程。
上記前処理工程(1)で用いる原料は、有効成分である2,5-ピペラジンジオン,3,6-ビス(フェニルメチル)-,(3R,6S)-(9Cl)を多く含む天然物、特に、獣鳥肉類、魚介類、または、貝類が好ましい。獣鳥肉類には、畜肉である牛、豚、馬、羊およびやぎ、獣肉である畜肉以外の肉、例えば、イノシシやシカ、家畜肉である鶏、七面鳥、ウズラ、アヒルおよび合鴨、野鳥肉である家畜肉以外の鳥類の肉、例えば、鴨、キジ、スズメおよびツグミなどが含まれる。また、一般の食生活で食される魚介類および貝類を用いることができる。その他、植物体として、コーヒーやココア等を用いることもできる。これらの獣鳥肉、魚介類および貝類の中でも、2,5-ピペラジンジオン,3,6-ビス(フェニルメチル)-,(3R,6S)-(9Cl)を効率的に高濃度で得ることができる鶏肉を用いるのが好ましい。
前処理工程(1)としては、蓄肉中に含有される水溶性タンパク質を低減させる工程であればよく、例えば、100℃〜160℃で30分〜数時間(好ましくは3〜8時間程度)ボイルすればよい。加熱装置としては、圧力鍋、オートクレーブなどを条件に合わせて用いることができる。
また、加熱工程(2)は、高温高圧(100℃以上、1気圧以上)で行うことが好ましく、例えば、100℃度以上、さらに好ましくは120℃以上が好ましい。同様に、加熱装置としては、圧力鍋、オートクレーブなどを条件に合わせて用いることができる。
前処理工程(1)および加熱工程(2)は、連続する工程であっても、前処理工程の後、一旦蓄肉を取り出し、液交換を行った後にさらに加熱工程を行ってもよい。前処理工程(1)の後に液交換を行い、その後に加熱工程(2)を行った方が、よりブリックスが低いサンプルが得られことから、分離して行った方が好ましい。
なお、工程(1)および工程(2)における加熱処理は、植物体および動物体の焦げを防止するため、溶媒中で行うのが好ましい。溶媒としては、水、エタノール、または、これらの混合物等を用いるのが好ましい。すなわち、タンパク質を含有する植物体、または、動物体に溶媒を混合して加熱処理を施し、この溶媒を採取することで、2,5-ピペラジンジオン,3,6-ビス(フェニルメチル)-,(3R,6S)-(9Cl)を高含有する溶液が得られる。2,5-ピペラジンジオン,3,6-ビス(フェニルメチル)-,(3R,6S)-(9Cl)の濃度は、種々の方法で定量することができるが、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により定量することができる。
得られた2,5-ピペラジンジオン,3,6-ビス(フェニルメチル)-,(3R,6S)-(9Cl)を含む溶液をそのまま本発明の剤として用いてもよいし、必要に応じて、精製、または、濃縮して、有効成分濃度を高めて用いてもよい。濃縮は、エバポレーターや凍結乾燥などにより実施することができる。
ろ過工程は、剤の形態に応じて、適宜、濾過強度を決めればよく、当業者によく知られた方法にて行うことができる。
本発明の抗認知症剤および学習記憶改善剤には、適宜、好ましい担体、賦形剤、安定化剤、酸化防止剤、防腐剤、界面活性剤等の添加物を加えてもよい。正確な投与量は、疾患およびその重症度、年齢、性別、体重等により異なるので適宜選択すればよいが、ヒトの場合、例えば、有効成分を1回あたり0.002〜20mg/kg、また、1日数回投与する。好ましくは1日1から3回投与するが、投与の時期は特に限定されない。
投与方法は、経口投与或いは非経口投与等いずれの投与方法でもよいが、投与の容易さから経口剤とするのが好ましい。経口剤としては、錠剤、カプセル剤、粉剤、顆粒剤、液剤、エリキシル剤等、いずれの形態であってもよい。また、経口剤の場合は、通常有効成分を賦形剤と共に、あるいは、それなしに錠剤等に製剤化される。この際に用いられる賦形剤としては、ゼラチン、乳糖、グルコース等の糖類、小麦澱粉、米澱粉、とうもろこし澱粉等の澱粉類、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸塩、タルク、植物油、ステアリルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール、ガム、ポリアルキレングリコール等が挙げられる。
通常、これらの経口剤では、0.01〜80重量%、好ましくは0.01〜60重量%の有効成分を含む例が挙げられる。液剤の場合、0.01〜20重量%の有効成分を含む懸濁剤またはシロップが例示される。この場合の担体としては、香料、シロップ、製剤学的ミセル体等の水様賦形剤を用いる。
本発明の抗認知症剤および学習記憶改善剤について以下の実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1 SERT結合阻害活性
SERT阻害活性は、既報(Eur J Pharmacol, 368, 277-283, 1999)に従って、3Hラベルしたイミプラミン(imipramine)がCHO細胞に発現させたヒトSERTへの結合を阻害するかを測定した。その結果、2,5-ピペラジンジオン,3,6-ビス(フェニルメチル)-,(3R,6S)-(9Cl)は、ヒトSERTへの結合を阻害することがわかった。2,5-ピペラジンジオン,3,6-ビス(フェニルメチル)-,(3R,6S)-(9Cl)のヒトSERTへの結合を50%阻害する濃度(IC50)は、8.1μMであった。
実施例2 ラット前頭前野におけるセロトニン濃度に及ぼす影響
10-12週齢の雄性SD系ラットを使用した。ラット前頭前野におけるセロトニン濃度は、既報 ( Kehr J., and Yoshitake T. (2006) Monitoring brain chemical signals by microdialysis. In: Encyclopedia of Sensors, Vol. 6. (Eds. C.A. Grimes, E.C. Dickey and M.V. Pishko) American Scientific Publishers, USA. 287-312.)の方法で、マイクロダイアリシス法で測定した。すなわち、イソフルラン麻酔下で透析プローブをラット前頭前野に埋め込んだ。埋め込み手術の5日後、無麻酔自由行動下で人工的脳脊髄液(148 mM NaCl, 4 mM KCl, 0.8 mM MgCl2, 1.4 mM CaCl2, 1.2 mM Na2HPO4, 0.3 mM NaH2PO4, pH 7.2))を1μl/minの流速で灌流した。2,5-ピペラジンジオン,3,6-ビス(フェニルメチル)-,(3R,6S)-(9Cl)は、0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)に懸濁して、2、20および200 mg/kgを14日間連続経口投与した。最終経口投与直前および経口投与後30分毎に採取した灌流液15μl中のアセチルコリン量をHPLC−ECD法により定量した。被検サンプルの経口投与直前を0分とし、経口投与1時間前から経口投与3時間後までの結果を図1に示す。その結果、2,5-ピペラジンジオン,3,6-ビス(フェニルメチル)-,(3R,6S)-(9Cl)を20および200 mg/kg経口投与することにより、有意に前頭前野のセロトニン濃度が上昇した。
実施例3 モリス水迷路試験に及ぼす影響
抗うつ作用は、既報(Exp Anim, 59(2), 191-197, 2010)に従って測定した。すなわち、直径90 cm、高さ35 cmの円筒状のタンクに水温22±1℃の水を水深20 cmになるように入れ、タンク内に直径10 cmの逃避台を設置した。タンクの水に酸化チタニウムを入れて白濁させ、逃避台の位置を隠した。先ず、10-11週齢の雄性C57BL/6マウスを用いてモリス水迷路試験を8日間実施し、60秒以内に逃避台に到達できないマウスを選択した(Loserマウス、上記文献では、inferiorと記載)。次に、0.5%CMC-Naに懸濁した2,5-ピペラジンジオン,3,6-ビス(フェニルメチル)-,(3R,6S)-(9Cl)0.02、0.2、2および20 mg/kgをモリス水迷路試験の施行前に経口投与した。その結果、2,5-ピペラジンジオン,3,6-ビス(フェニルメチル)-,(3R,6S)-(9Cl)の経口投与により、用量依存的に逃避台潜時が短縮し、0.2 mg/kg以上の経口投与で有意に短縮した(図2)。以上の結果から、2,5-ピペラジンジオン,3,6-ビス(フェニルメチル)-,(3R,6S)-(9Cl)は抗うつ作用および学習意欲改善作用を有することが明らかになった。
実施例4 AChE阻害作用
AChE阻害作用は、AChEに高い選択性を持つ基質であるMATP+(1,1-ジメチル-4-アセチルチオメチルピペリジン) (Biol Pharma Bull, 33(4), 702-706, 2010)で測定した。すなわち、AChEにMATP+を反応させ、検出試薬であるDNTB(5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸))の反応に伴う412nmの吸光度変化を指標に測定した。その結果、2,5-ピペラジンジオン,3,6-ビス(フェニルメチル)-,(3R,6S)-(9Cl)はAChEを阻害し、50%阻害する濃度(IC50)は、1μMであった。
実施例5 ラット海馬のアセチルコリン濃度に及ぼす影響
透析プローブをラット海馬に埋め込み、実施例1と同様の方法で測定した。2,5-ピペラジンジオン,3,6-ビス(フェニルメチル)-,(3R,6S)-(9Cl)は、0.5%CMC-Naに懸濁して、200 mg/kgを単回経口投与した。経口投与直前および経口投与後30分毎に採取した灌流液15μl中のアセチルコリン量をHPLC−ECD法により定量した。被検サンプルの経口投与直前を0分とし、経口投与1時間前から経口投与3時間後までの結果を図3に示す。その結果、2,5-ピペラジンジオン,3,6-ビス(フェニルメチル)-,(3R,6S)-(9Cl)200 mg/kgの経口投与は、海馬アセチルコリン濃度を2.5倍に上昇させた。
実施例6 スコポラミン誘発学習障害ラットを用いた放射状迷路試験
7週齢のSD系雄性ラットを使用し、ラットは食餌制限下で習得訓練を行った後に本試験を実施した。
習得訓練
8方向放射状迷路の全てのアームの先端に餌を置き、迷路中央のプラットホームに動物を入れ、各アームの餌を全て採るまで、または動物を入れ10分が経過するまでを1試行として、1日1回の訓練を行った。正選択は、その試行において未選択のアームに入ること、誤選択は既に餌を採ったアームに入ることと定義し、最初の8選択中7選択以上の試行を基準試行とし、この成績が3試行連続するまで訓練を行った。
本試験
上記習得訓練試行において基準を達成したラットに2,5-ピペラジンジオン,3,6-ビス(フェニルメチル)-,(3R,6S)-(9Cl)を0.5%CMC-Naに懸濁して、20 および200mg/kg経口投与した。経口投与10分後にスコポラミン0.5 mg/kgを腹腔内投与した。スコポラミンの腹腔内投与30分後に8方向放射状迷路試験を実施し、誤選択数と全ての餌を採り終えるまでに要した時間を計測した。また、陽性対照として、被験サンプルの代わりに塩酸ドネペジル(アリセプト)を2 mg/kg経口投与した。5分間、または、8ヵ所全ての餌を食べるまでの総試行中の正選択率の結果を図4に示す。その結果、2,5-ピペラジンジオン,3,6-ビス(フェニルメチル)-,(3R,6S)-(9Cl)200 mg/kgの経口投与は、正答率を有意に改善した。以上の結果から、2,5-ピペラジンジオン,3,6-ビス(フェニルメチル)-,(3R,6S)-(9Cl)に学習記憶改善作用があることが明らかになった。
本発明は、2,5-ピペラジンジオン,3,6-ビス(フェニルメチル)-,(3R,6S)-(9Cl)を有効成分として含有する抗認知症剤および学習記憶改善剤を提供する。本発明の抗認知症剤および学習記憶改善剤は、それらの作用が優れていることに加え、極めて安全性が高く、しかも精製品は無味無臭で白色を呈しているため、飲食品への配合に適している。

Claims (9)

  1. 2,5-ピペラジンジオン,3,6-ビス(フェニルメチル)-,(3R,6S)-(9Cl)を有効成分して含有する抗認知症剤。
  2. アルツハイマー型認知症の症状を改善または症状の進行を遅らせる、請求項1記載の抗認知症剤。
  3. さらに抗うつ作用を有する、請求項1または2記載の抗認知症剤。
  4. 抑うつ症状の改善または症状の進行を遅らせる、請求項3記載の抗認知症剤。
  5. さらに学習意欲の改善作用を有する、請求項1記載の抗認知症剤。
  6. 経口剤である、請求項1〜5のいずれかに記載の抗認知症剤。
  7. 2,5-ピペラジンジオン,3,6-ビス(フェニルメチル)-,(3R,6S)-(9Cl)を有効成分として含有する学習記憶改善剤。
  8. アルツハイマー型認知症の症状を改善または症状の進行を遅らせる、請求項7記載の学習記憶改善剤。
  9. 経口剤である、請求項7または8記載の学習記憶改善剤。
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