JP2012251098A - 潤滑剤及びそれを用いた冷間塑性加工方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた潤滑性、防錆性及び焼き付き防止性を発揮することができる潤滑剤及びそれを用いた冷間塑性加工方法を提供する。
【解決手段】四級アンモニウムカチオンと、一般式(2):
Figure 2012251098

で表されるアルキルリン酸エステルアニオンとからなる塩を含有することを特徴とする潤滑剤。さらに、この塩を有機溶剤に溶解すると共に、非イオン界面活性剤を用いて水に乳化分散せしめて、優れた乳化安定性を発揮させる。
【選択図】なし

Description

本発明は、潤滑剤及びそれを用いた冷間塑性加工方法に関する。
潤滑剤は、一般に機械稼働部や、金属の切削加工、研削加工等で発生する摩擦熱及び摩耗の防止を目的に用いられる薬剤である。潤滑剤の基材としては、従来、炭化水素からなる鉱物油や動植物油等の油剤が用いられてきたが、鉱物油には引火のおそれがあるという問題が、動植物油には酸化により粘度が変動しやすいという問題があった。
また、このような油剤によらない潤滑剤として、塑性加工の分野では、金属加工材料の表面にリン酸亜鉛等を用いて化成処理膜を生成し、その被膜上に金属石鹸等で潤滑被膜を形成させる2段階処理が広く採用されている。この方法で得られる潤滑被膜は、焼き付き耐性、潤滑性に優れ、引火のおそれがないものの、加工材料の保温、酸洗、リン酸亜鉛液への浸漬、洗浄、保温、金属石鹸付与、乾燥、と多数の工程を要し、それぞれの工程で液濃度及び液温の管理が必要であること、廃液の処理に多額のコストを要すること等の問題があり、また、工具と加工材料との境界で発生する金属石鹸の粉塵が職場環境を汚染し、欠肉の原因になるという問題も有していた。
そこで、近年では、鉱物油や動植物油に変わり、低揮発性、難燃性及び熱安定性に優れるイオン液体を潤滑剤として利用することが検討されている。例えば特開2009−030056号公報(特許文献1)には、金属部材の非切削成型工程用のイオン液体又はイオン液体の混合物が開示されており、第四級アンモニウム陽イオン、オキソニウム陽イオン、スルホニウム陽イオン及びホスホニウム陽イオン等の陽イオンと、ハロゲン化物、硫酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、亜リン酸塩、カルボン酸塩、ホウ酸塩及びケイ酸塩等の陰イオンとからなるイオン液体又はイオン液体の混合物が、内部高圧成形の外部潤滑剤、圧力媒体、熱媒油として使用できることが開示されている。しかしながら、特許文献1に実際に開示されているイオン性液体を用いた潤滑剤は融点及び/又は粘度が高いという問題や、焼き付き防止性や防錆性が未だ十分ではないという問題を有していた。
また、粘度が低い潤滑剤としては、特開2009−057541号公報(特許文献2)においてイオン液体を含む潤滑油基油が開示されており、カチオン、アニオンのいずれかが有機ケイ素化合物残基を有するイオン液体を含む潤滑油基油は、低粘度であるにもかかわらず耐熱性及び摩擦特性を有し、水が混入されても防錆性を発揮することが報告されている。しかしながら、特許文献2に開示されている潤滑油基油の原料となる有機ケイ素化合物残基を有する化合物は特殊な構造を有するために入手が困難であり、経済的にも不利であるという問題や、焼き付き防止性が未だ十分ではないという問題を有していた。
また、塑性加工の中でも、冷間鍛造、鋼管の冷間抽伸、鋼管の冷間圧延といった、加工度の高い、あるいは摩擦面温度が高い冷間塑性加工においては、より優れた潤滑性、焼き付き防止性、防錆性を有する潤滑剤が必要とされている。前記冷間塑性加工においては、厚い潤滑膜を形成することができる有機溶剤系潤滑剤が広く用いられているが、このように過酷な冷間塑性加工においては、熱伝導率の高い水をベースにした水系潤滑剤も、冷却効果が発揮されるという点で有効である。しかしながら、水系潤滑剤は形成される潤滑膜が薄いため、焼き付きを防止することが困難であるという問題や、錆が発生しやすくなるという問題を有していた。
特開2009−030056号公報 特開2009−057541号公報
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、優れた潤滑性、防錆性及び焼き付き防止性を発揮することができる潤滑剤及びそれを用いた冷間塑性加工方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の四級アンモニウムカチオンと、特定のアルキルリン酸エステルアニオンとからなる塩が、特に優れた潤滑性、防錆性及び焼き付き防止性を発揮することを見出し、優れた潤滑剤として用いることができることを見出した。また、この塩は有機溶剤に溶解すると共に、非イオン界面活性剤を用いて水に乳化分散せしめた際に優れた乳化安定性を発揮することを見出し、さらに、驚くべきことに、溶剤系潤滑剤に含有されても水系潤滑剤に含有されても得られた潤滑剤において優れた潤滑性、防錆性及び焼き付き防止性が発揮されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の潤滑剤は、下記一般式(1):
Figure 2012251098
[式(1)中、Rは、炭素数10〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を示し、R、R及びRは、同一でも異なっていてもよく、それぞれメチル基、エチル基及びベンジル基からなる群から選択される1種を示す。]
で表される四級アンモニウムカチオンと、下記一般式(2):
Figure 2012251098
[式(2)中、R及びRは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数4〜10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を示す。]
で表されるアルキルリン酸エステルアニオンとからなる塩を含有することを特徴とするものである。
また、本発明の潤滑剤としては、非イオン界面活性剤と水とをさらに含有することが好ましく、前記塩の含有量が5〜50質量%であり、前記非イオン界面活性剤の含有量が前記塩100質量部に対して5〜30質量部であることがより好ましい。さらに、前記非イオン界面活性剤としては、デイビス法により求められるHLB値の加重平均値が5.5〜6.5であることがさらに好ましい。
また、本発明の潤滑剤としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール及び2−プロパノールからなる群から選択される少なくとも1種の有機溶剤と、前記塩とを含有するものであることも好ましい。
さらに、本発明の潤滑剤としては、冷間塑性加工用潤滑剤であることが好ましい。
本発明の冷間塑性加工方法は、本発明の潤滑剤を用いることを特徴とするものである。
本発明によれば、優れた潤滑性、防錆性及び焼き付き防止性を発揮することができる潤滑剤及びそれを用いた冷間塑性加工方法を提供することが可能となる。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
本発明の潤滑剤は、前記一般式(1)で表される四級アンモニウムカチオンと、前記一般式(2)で表されるアルキルリン酸エステルアニオンとからなる塩を含有することを特徴とするものである。
本発明に係る四級アンモニウムカチオンは、下記一般式(1):
Figure 2012251098
で表わされる。前記式(1)中、Rは、炭素数10〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を示す。前記Rとして炭素数が前記下限未満のアルキル基を有するアンモニウムカチオンを用いると、前記一般式(2)で表されるアルキルリン酸エステルアニオンとからなる塩は室温(25℃)で固体となりやすいために取り扱いが困難となる。また、潤滑剤が発揮する潤滑性が低下する。他方、前記アルキル基の炭素数が多いほど、潤滑剤が発揮する潤滑性は向上するが、炭素数が前記上限を超える場合にはそれ以上の潤滑性の向上は見込めず、さらに、塩の粘度が高くなるために取り扱いが困難になる。
前記炭素数10〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基としては、例えば、デシル基、2−エチルオクチル基、ウンデシル基、ドデシル基、3−エチルデシル基、トリデシル基、2−エチルウンデシル基、テトラデシル基、2−ブチルデシル基、ペンタデシル基、2−ペンチルデシル基、ヘキサデシル基、2−ヘキシルデシル基、ヘプタデシル基、2−ヘプチルデシル基、オクタデシル基、2−オクチルデシル基等が挙げられ、これらの中でも、優れた潤滑性を有する潤滑剤が得られ、入手が容易であるという観点から、炭素数12〜14の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、直鎖状のアルキル基であるドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基がより好ましい。
前記式(1)中、R、R及びRは、同一でも異なっていてもよく、それぞれメチル基、エチル基及びベンジル基からなる群から選択される1種を示す。前記R、R及びRとして炭素数が3以上のアルキル基を有するアンモニウムカチオンを用いると、得られる塩が高粘度となり、取り扱いが困難となる。前記R、R及びRとしては、同一でも異なっていてもよく、それぞれメチル基又はベンジル基であることが好ましく、塩の粘度がより取り扱いやすい粘度となるという観点から、前記R、R及びRのうちの少なくともいずれか一つがベンジル基であることがより好ましく、前記R、R及びRのうちのいずれか一つがベンジル基であって、残りの2つがメチル基であることが特に好ましい。
本発明に係るアルキルリン酸エステルアニオンは、下記一般式(2):
Figure 2012251098
で表わされる。前記式(2)中、R及びRは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数4〜10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を示す。前記R及びRとして炭素数が前記下限未満であるアルキル基を有するリン酸エステルアニオンを用いると、常温(25℃)で固体の塩となりやすく取り扱いが困難となる。また、潤滑剤が発揮する防錆性が低下する。他方、前記アルキル基の炭素数が前記上限を超える場合には、塩の粘度が高くなり、取り扱いが困難になる。
前記炭素数4〜10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基としては、特に制限されず、例えば、ブチル基、ペンチル基、1−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、2−メチルブチル基、2−エチルプロピル基、ヘキシル基、1−メチルペンチル基、1−エチルブチル基、2−メチルペンチル基、2−エチルブチル基、ヘプチル基、1−メチルヘキシル基、1−エチルペンチル基、2−メチルヘキシル基、2−エチルペンチル基、3−メチルヘキシル基、3−エチルペンチル基、3−メチルヘキシル基、3−エチルペンチル基、オクチル基、1−メチルヘプチル基、1−エチルヘキシル基、2−メチルヘプチル基、2−エチルヘキシル基、3−メチルヘプチル基、3−エチルヘキシル基、ノニル基、1−エチルヘプチル基、2−エチルヘプチル基、3−メチルオクチル基、3−エチルヘプチル基、デシル基、2−エチルオクチル基等が挙げられ、これらの中でも、優れた潤滑性を有する潤滑剤が得られ、入手が容易であるという観点から、ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基が好ましい。
本発明において、前記四級アンモニウムカチオンと、前記アルキルリン酸エステルアニオンとからなる塩を得る方法としては特に制限されず、例えば、前記四級アンモニウムのハロゲン化物と、前記アルキルリン酸エステル及び/又はそのアルカリ金属塩とを、水又は水と有機溶媒との混合溶媒中でイオン交換反応せしめることにより製造することができる。前記ハロゲン化物としては、塩化物、臭化物、ヨウ化物等が挙げられ、前記アルカリ金属塩としては、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩等が挙げられる。
前記四級アンモニウムのハロゲン化物と、前記アルキルリン酸エステル及び/又はそのアルカリ金属塩とをイオン交換反応せしめる際の混合比としては、高収率で塩が得られるという観点から、モル比(四級アンモニウムのハロゲン化物のモル数:アルキルリン酸エステル及び/又はそのアルカリ金属塩のモル数)が1:0.8〜1:1.2となる混合比であることが好ましく、1:1(等モル)となる混合比であることがより好ましい。
前記イオン交換反応せしめる際に用いる溶媒としては、前記四級アンモニウムカチオン及び前記アルキルリン酸エステルアニオンからなる塩を含有する油相と、他の不純物等を含有する水相とに分離され、精製が容易になるという観点から、水又は水と極性溶媒との混合溶媒を用いることが好ましい。前記極性溶媒としては、例えば、アセトン、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン等が挙げられる。前記水と前記極性溶媒との混合比としては、一般に、体積比(水:極性溶媒)が1:0.5〜1:2となる混合比であることが好ましい。また、前記イオン交換反応において、前記溶媒中の前記四級アンモニウムのハロゲン化物と、前記アルキルリン酸エステル及び/又はそのアルカリ金属塩との合計濃度は、0.1〜2mol/リットル程度であることが望ましい。
前記イオン交換反応において、反応温度としては、室温(25℃程度)以上、且つ、溶媒乾留温度以下とすることが好ましく、反応時間としては、特に制限されず、例えば、30分〜14日程度とすることが好ましい。また、反応する際の圧力としては常圧下(大気圧下)でも加圧下でもよく、反応溶液は撹拌してもよく、静置させておいてもよい。
このような方法により本発明に係る塩を製造した場合には、得られる塩は水に溶解しないため、前記イオン交換反応後に反応溶液を油相と水相とに分離せしめ、前記水相を除去することにより、容易に本発明の塩を得ることができる。さらに、ハロゲン化金属塩、未反応の四級アンモニウム化合物、アルキルリン酸エステルアルカリ金属塩、及び前記極性溶媒は、水に溶解するため、水と共に除去することができ、本発明に係る塩を容易に高純度で得ることができる。また、このような本発明に係る塩を製造する方法としては、得られる塩をより高純度にすることを目的として、精製工程(純水による洗浄等)及び/又は乾燥工程(例えば、減圧下(約40mmHg以下)において80〜100℃で数時間減圧乾燥をする工程等)をさらに含んでいてもよい。
前記四級アンモニウムカチオンと、前記アルキルリン酸エステルアニオンとからなる塩は、優れた潤滑性、防錆性及び焼き付き防止性を発揮するため、塩そのものを本発明の潤滑剤として用いることができる。特に、機械稼働部の摩耗防止用潤滑剤;切削加工、研削加工時の摩耗防止用潤滑剤;金属の錆防止剤;冷間塑性加工用潤滑剤として用いることが好ましく、優れた焼き付き防止性を発揮するという観点から、冷間塑性加工用潤滑剤として用いることがより好ましい。
また、本発明の潤滑剤において、前記四級アンモニウムカチオンと、前記アルキルリン酸エステルアニオンとからなる塩としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。さらに、本発明の潤滑剤としては、有機溶剤をさらに添加して溶剤系潤滑剤とすることもでき、前記塩を水中に乳化せしめた水系潤滑剤とすることもできる。
(溶剤系潤滑剤)
前記四級アンモニウムカチオンと、前記アルキルリン酸エステルアニオンとからなる塩は有機溶剤に溶解するため、本発明の潤滑剤としては、有機溶剤をさらに添加することにより、前記塩と前記有機溶剤とを含有する溶剤系潤滑剤とすることもできる。前記有機溶剤を添加することにより、潤滑剤の粘度を任意に調整することができるため取り扱いが容易となる傾向にあり、また、潤滑剤の濃度を任意に調整することができるため金属表面への付与量を容易に調整することが可能となる傾向にある。
前記有機溶剤としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。これらの中でも、容易に乾燥するため、作業時間の短縮を図ることができるという観点から、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等の炭素数3以下の低級アルコールからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。また、これらの有機溶剤としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記溶剤系潤滑剤においては、前記有機溶剤によって濃度を任意に調整することにより、金属表面への付与量を容易に調整することができるが、本発明に係る塩の含有量としては、5質量%以上であることが好ましい。前記塩の含有量が前記下限未満である場合には、十分な潤滑性が発揮されない傾向にある。
前記溶剤系潤滑剤も、機械稼働部の摩耗防止用潤滑剤;切削加工、研削加工時の摩耗防止用潤滑剤;金属の錆防止剤;冷間塑性加工用潤滑剤として用いることが好ましく、優れた焼き付き防止性を発揮するという観点から、冷間塑性加工用潤滑剤として用いることがより好ましい。また、機械稼働部の摩耗防止用潤滑剤として用いる場合には、機械稼働部を停止した上で前記溶剤系潤滑剤を付与し、乾燥せしめた後に再度稼働させることが好ましい。
(水系潤滑剤)
前記四級アンモニウムカチオンと、前記アルキルリン酸エステルアニオンとからなる塩は水中に乳化せしめたときの安定性に優れるため、本発明の潤滑剤としては、非イオン界面活性剤と水とをさらに含有せしめて水系潤滑剤とすることも好ましい。このような構成とすることにより、乳化安定性に優れた水系潤滑剤を得ることができ、焼き付き防止性に特に優れた潤滑剤を得ることができる。
前記非イオン界面活性剤としては、特に制限されず、任意の非イオン界面活性剤を採用することができ、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシアルキレンアリールエーテル、ポリオキシアルキレンソルビタン、ポリオキシアルキレンソルビトール等のポリオキシアルキレン系非イオン界面活性剤;ポリオキシアルキレン系非イオン界面活性剤の脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル等が挙げられる。これらの非イオン界面活性剤としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、前記非イオン界面活性剤としては、デイビス法により求められるHLB値の加重平均値が5.5〜6.5であることが好ましい。前記HLB値の加重平均値が前記下限未満である場合及び前記上限を超える場合には、水系潤滑剤の乳化安定性が劣る傾向にある。前記水系潤滑剤において、前記HLB値の加重平均値を上記範囲にするには、非イオン界面活性剤として、HLB値が5.5〜6.5である非イオン界面活性剤を単独で用いてもよく、高HLB値(例えば、HLB値が8以上)を有する非イオン界面活性剤と、低HLB値(例えば、HLB値が5以下)を有する非イオン界面活性剤とを組み合わせて用い、水系潤滑剤に含有される全非イオン界面活性剤のHLB値の加重平均値が上記範囲となるようにしてもよい。前記非イオン界面活性剤としては、水系潤滑剤の乳化安定性がより向上する傾向にあるという観点から、2種以上の非イオン界面活性剤を組み合わせて用いることがより好ましい。なお、前記HLB値とは、水と界面活性剤との親和性の程度を表す値であり、前記デイビス法により求められるHLB値とは、各官能基によって定められた基数を用いて次式:HLB値=7+界面活性剤における親水基の基数の総和−界面活性剤における親油基の基数の総和 により求められる値である。
前記水系潤滑剤において、本発明に係る塩の含有量としては、5〜50質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましい。前記塩の含有量が前記下限未満である場合には、十分な潤滑性が発揮されない傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には、塩を水中に乳化せしめるために多量の非イオン界面活性剤が必要となるため、良好な潤滑性が発揮されなくなる傾向にある。
前記非イオン界面活性剤の含有量としては、前記塩100質量部に対して5〜30質量部であることが好ましく、10〜20質量部であることがより好ましい。前記非イオン界面活性剤の含有量が前記下限未満である場合には、水系潤滑剤の乳化安定性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には、潤滑剤が発揮する潤滑性が低下する傾向にある。
前記塩を水中に乳化せしめる方法としては、特に制限されず、例えば、前記塩と前記非イオン界面活性剤との混合物を攪拌機等により攪拌しながら水を徐々に添加し、ホモジナイザー等を用いて乳化せしめる方法が挙げられる。
また、このような水系潤滑剤としては、有機溶剤をさらに含有するものであってもよい。前記有機溶剤としては、前記溶剤系潤滑剤において有機溶剤として例示したものと同様のものが挙げられる。
前記水系潤滑剤は、水に乳化分散した状態で安定であり、優れた潤滑性、防錆性及び焼き付き防止性を発揮するため、機械稼働部の摩耗防止用潤滑剤;切削加工、研削加工時の摩耗防止用潤滑剤;金属の錆防止剤;冷間塑性加工用潤滑剤として用いることが好ましく、特に優れた焼き付き防止性を発揮するという観点から、冷間塑性加工用潤滑剤として用いることがより好ましい。
本発明の潤滑剤としては、本発明の効果を損なわない範囲において、さらに鉱物油、合成油、動植物油等の他の潤滑油基材が含有されていてもよい。
本発明の潤滑剤を機械稼働部に用いる方法、並びに、切削加工、研削加工及び冷間塑性加工に用いる方法としては特に制限されず、従来公知の方法を適宜採用することができ、機械稼働部や、切削加工、研削加工及び冷間塑性加工をする金属加工面に対して本発明の潤滑剤を付与した後及び/又は付与しつつ、機械を稼働させたり、金属加工を施す方法が挙げられる。前記機械稼働部や金属加工面に対して本発明の潤滑剤を付与する方法としては、特に制限されず、例えば、スプレー、コーティング及び浸漬等の方法が挙げられる。本発明の潤滑剤を適用する金属の材質としては、特に制限されず、例えば、アルミニウム、銅、鉄、鋼、ステンレス鋼、合金等、様々な材質の金属が挙げられる。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、各実施例及び比較例における潤滑性、防錆性、焼き付き防止性、乳化安定性の評価は、それぞれ以下に示す評価方法に従って実施した。
<潤滑性>
以下のリング圧縮試験により潤滑性を評価した。先ず、材質が炭素鋼(S45C)である外径30mm×内径15mm×厚さ10mmのリングを、各実施例及び比較例で得られた潤滑剤に浸漬して取り出した後、150℃の乾燥機中において水分を除いた。これを、材質を工具鋼(SKD61、焼き入れ)とする直径120mm×厚さ10mmの金型2枚の間に挟み、試験温度25℃で、100t油圧プレス機(HAF100、コマツ(株)製)を用いて圧縮率40%で圧縮した。圧縮後のリングの内径と厚さを測定し、内径変化率を「工藤によるエネルギー法」(Proc.5th Japan.Nat.Congr.Appl.Mech.、75頁、1955年)により求められる理想曲線にプロットして摩擦係数を求めた。摩擦係数が小さいほど潤滑性がよいものと認められる。
<防錆性>
前記潤滑性評価に用いた試験片を、恒温恒湿機(70℃、湿度95%)に2週間置き、錆発生の有無を確認し、以下の基準:
錆発生面積が0%:A、
錆発生があり、錆発生面積が1%未満:B、
錆発生があり、錆発生面積が1%以上〜10%未満:C、
錆発生があり、錆発生面積が10%以上:D
に従って評価した。
<焼き付き防止性>
ASTM規格D−3233耐圧荷重試験(ファレックス試験)に従い、ファレックス試験用のピンを各実施例及び比較例で得られた潤滑剤液(250ml)に浸漬し、回転数:200rpm、荷重:222N/minのステップアップ荷重法、 試験温度:25℃の条件において試験し、焼き付き荷重(lbs)を求めた。焼き付き荷重が大きいほど焼き付き防止性がよいものと認められる。
<乳化安定性>
各実施例及び比較例で得られた水系潤滑剤を、60℃の恒温乾燥機に静置し、1週間後の状態を以下の基準;
分離なし:A、
わずかな油浮きが認められる:B、
分離している:C
に従って評価した。
(実施例1)
先ず、ビス(2−エチルヘキシル)リン酸64.4g(0.2mol)と50質量%の塩化ベンジルジメチルドデシルアンモニウム136.0g(0.2mol)とを容量500mLのビーカーの中で攪拌混合し、さらに攪拌しながら1mol/リットルの水酸化ナトリウム水溶液200gを少量ずつ添加して混合溶液(反応液)を得た。次いで、この混合溶液を大気中において室温(25℃程度)で7日間放置して、水相と油相とに分離せしめ、分液ロートを用いて前記水相を除去した。残った油相に対して、1mol/リットルのNaCO水溶液100mLを添加して水洗した後、水相を除去し、次いで蒸留水100mLを添加して水洗した後、水相を除去する精製操作を3回繰り返して行った。精製後の油相を減圧下(約40mmHg)において90℃で4時間静置し、室温(25℃)において液状である塩1(ビス(2−エチルヘキシル)リン酸・ベンジルジメチルドデシルアンモニウム塩)を得た。この塩1の粘度は4500mPa・s(BL型粘度計、3号ローター使用、12rpm、25℃で測定)であった。得られた塩1をそのまま潤滑剤とした。
(実施例2)
ビス(2−エチルヘキシル)リン酸に代えて、ジブチルリン酸(0.2mol)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして室温(25℃)において液状である塩2(ジブチルリン酸・ベンジルジメチルドデシルアンモニウム塩)を得た。この塩2の粘度は5000mPa・s(BL型粘度計、3号ローター使用、12rpm、25℃で測定)であった。得られた塩2をそのまま潤滑剤とした。
(比較例1)
ビス(2−エチルヘキシル)リン酸に代えて、ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム塩(0.2mol)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして室温(25℃)において液状である塩3(ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸・ベンジルジメチルドデシルアンモニウム塩)を得た。この塩3の粘度は6000mPa・s(BL型粘度計、3号ローター使用、12rpm、25℃で測定)であった。得られた塩3をそのまま潤滑剤とした。
(比較例2)
潤滑剤として、鉱物油(ブライトストック)をそのまま用いた。
(比較例3)
潤滑剤として、ソルビタンモノオレエート(デイビス法により求められるHLB値:4.67)をそのまま用いた。
(比較例4)
潤滑剤として、デカノールのEO(エチレンオキシド)14モル付加物(デイビス法により求められるHLB値:8.77)をそのまま用いた。
実施例1〜2及び比較例1〜4で得られた潤滑剤について、潤滑性、防錆性及び焼き付き防止性の評価を行った。結果を表1に示す。
Figure 2012251098
表1に示した結果から明らかなように、本発明の潤滑剤は優れた潤滑性、防錆性及び焼き付き防止性を有することが確認された。
(実施例3)
実施例1で得られた塩1 15gに、ソルビタンモノオレエート(デイビス法により求められるHLB値:4.67)1.45gと、デカノールのEO14モル付加物(デイビス法により求められるHLB値:8.77)0.8gとを添加し、攪拌機により十分攪拌混合した後、さらに攪拌しながら水82.75gを徐々に添加し、これをホモジナイザーを用いて乳化して水系潤滑剤を得た。
(実施例4)
実施例1で得られた塩1に代えて実施例2で得られた塩2を用いたこと以外は実施例3と同様にして水系潤滑剤を得た。
(比較例5)
実施例1で得られた塩1に代えて比較例1で得られた塩3を用いたこと以外は実施例3と同様にして水系潤滑剤を得た。
(比較例6)
水系潤滑剤として、ジブチルリン酸・2−ヒドロキシエチルドデシルジメチルアンモニウム塩の15質量%水溶液を用いた。この化合物は、前記実施例2で得られた塩(ジブチルリン酸・ベンジルジメチルドデシルアンモニウム塩)のベンジル基に代えて2−ヒドロキシエチル基とした化合物に相当するものであり、常温(25℃)で固体の水溶塩である。
実施例3〜4及び比較例5〜6で得られた水系潤滑剤について、潤滑性、防錆性、焼き付き防止性及び乳化安定性の評価を行った。結果を表2に示す。
Figure 2012251098
表2に示した結果から明らかなように、本発明の潤滑剤は水系潤滑剤とした際に優れた乳化安定性を有し、水系潤滑剤として用いても、優れた潤滑性、防錆性及び焼き付き防止性を発揮することが確認された。他方、アニオン成分がスルホコハク酸である塩を用いた比較例5や、2−ヒドロキシエチル基を有する塩を用いた比較例6においては、防錆性が劣ることが確認された。
以上説明したように、本発明によれば、優れた乳化安定性を有し、優れた潤滑性、防錆性及び焼き付き防止性を発揮することができる潤滑剤及びそれを用いた冷間塑性加工方法を提供することが可能となる。
また、本発明の潤滑剤は、本発明に係る塩をそのまま潤滑剤として用いることも、有機溶剤をさらに添加して溶剤系潤滑剤とすることも、本発明に係る塩を水中に乳化せしめた水系潤滑剤とすることもできる。さらに、本発明の潤滑剤は、優れた乳化安定性を有し、優れた潤滑性、防錆性及び焼き付き防止性を発揮することができるため、機械稼働部や、切削加工、研削加工用の潤滑剤としてだけでなく、冷間塑性加工用潤滑剤として用いることができる。

Claims (7)

  1. 下記一般式(1):
    Figure 2012251098
    [式(1)中、Rは、炭素数10〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を示し、R、R及びRは、同一でも異なっていてもよく、それぞれメチル基、エチル基及びベンジル基からなる群から選択される1種を示す。]
    で表される四級アンモニウムカチオンと、下記一般式(2):
    Figure 2012251098
    [式(2)中、R及びRは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数4〜10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を示す。]
    で表されるアルキルリン酸エステルアニオンとからなる塩を含有することを特徴とする潤滑剤。
  2. 非イオン界面活性剤と水とをさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の潤滑剤。
  3. 前記塩の含有量が5〜50質量%であり、前記非イオン界面活性剤の含有量が前記塩100質量部に対して5〜30質量部であることを特徴とする請求項2に記載の潤滑剤。
  4. 前記非イオン界面活性剤において、デイビス法により求められるHLB値の加重平均値が5.5〜6.5であることを特徴とする請求項2又は3に記載の潤滑剤。
  5. メタノール、エタノール、1−プロパノール及び2−プロパノールからなる群から選択される少なくとも1種の有機溶剤をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の潤滑剤。
  6. 冷間塑性加工用潤滑剤であることを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の潤滑剤。
  7. 請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の潤滑剤を用いることを特徴とする冷間塑性加工方法。
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JP2023522318A (ja) * 2020-04-16 2023-05-30 トタルエナジーズ・ワンテック ホスホニウム系イオン液体およびそれの潤滑剤用添加剤としての使用

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