JP2012252812A - 負極活物質及びこれを用いたマグネシウムイオン二次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】マグネシウムイオン二次電池の大容量化を図る。
【解決手段】正極及び負極におけるマグネシウムイオンの吸蔵・放出によって作動するマグネシウムイオン二次電池に用いる負極活物質において、炭素原子の結晶格子で形成された板状のグラファイト単原子層11、12を有するグラファイトで形成し、相隣るグラファイト単原子層11、12の間にマグネシウムイオン13、14を立体的に配置可能とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、負極活物質及びこれを用いたマグネシウムイオン二次電池に関する。
リチウムイオン電池は、高エネルギー密度の二次電池として、携帯電話、携帯用情報端末機器、ノートパソコン、電動工具などの民生機器電源として普及している。また、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、さらに夜間電力や再生可能エネルギーの電力貯蔵システムの電源としても期待されている。すなわち、環境負荷の低減のキーデバイスとして大きな期待がもたれている。
しかしながら、将来、大容量の電源用途に二次電池を普及させていくためには、電池に用いられる材料の資源量を考慮し、大量普及のために必要な電池材料を確保可能であることが前提である。さらに、原料供給量がより安定で価格変動の可能性の低い材料を選択していくことが望ましいと考えられている。
リチウムは、塩湖などからリチウム化合物として採掘され、電気自動車等の普及があっても100年以上の埋蔵量を有していると報告されている。今後、リチウムの消費量が増大することが見込まれるため、リチウムイオン電池の次の世代となる二次電池が望まれている。その候補の一つとして、資源量の豊富なマグネシウムが注目され、このマグネシウムを二次電池の材料として利用するマグネシウムイオン二次電池(以下、マグネシウム二次電池とも呼ぶ。)の開発が国内外で徐々に進められている。
マグネシウムは、リチウムより安価であり、現状、リチウムの価格の約2/3である。一方、マグネシウムは、高い電気容量密度(2.21Ah/kg)を有している。これらの点で、マグネシウムは、リチウムに比べて有利である。マグネシウムイオン二次電池を実用化するために、種々の負極活物質が検討されている。
特許文献1には、結晶構造が層状構造を有するマ
グネシウム複合酸化物の正極と、マグネシウム金属あるいはその合金を負極に用いたマグネシウムイオン二次電池が開示されている。
特許文献2には、有機系アルカリ土類金属塩を溶解させた電解液と、遷移金属のカルコゲナイドまたはホウ化物を有する正極と、マグネシウム金属を負極に用いたマグネシウムイオン二次電池が開示されている。
特許文献3には、ハロゲノフェニルマグネシウムを電解質とした電解液中にて、マグネシウム金属負極が可逆的に充放電可能としたマグネシウムイオン二次電池が開示されている。
特許文献4及び5には、マグネシウム塩をイミド塩又はスルホン酸塩とした非水電解質液と、マグネシウム金属、マグネシウム合金、マグネシウム酸化物、珪素、炭素、遷移金属の硫化物の負極を用いたマグネシウムイオン二次電池が開示されている。
特許文献6には、金属マグネシウムを負極として用い、CuxMgyMo6S8(式中、xは0〜1であり、yは0〜2である。)を正極として用い、M'(ZR'aRn-aXq-n)2(式中、M'はMg又はCaであり、ZはAl又はBであり、R及びR'はアルキル基、アルケニル基、アリール基、フェニル基、ベンジル基又はアミド基であり、Xはハロゲン(I,Br,Cl,F)であり、nは0〜3であり、qは4である。)を電解質として用い、300回以上の充放電サイクルを可能とした電気化学電池が開示されている。
特許文献7には、黒鉛の層間にSnをインターカレートすることによりゲスト挿入層の層間距離を1.7nmに拡張したリチウムイオン二次電池用負極が開示されている。
特開2002−025555号公報 米国特許4894302号 特開2004−259650号公報 特開2004−265675号公報 特開2004−265676号公報 米国特許6316141号 特開2007−250390号公報
上記の通り、マグネシウムは、リチウムに比べて有利な特徴を有することから、二次電池としての性能をリチウムイオン電池に近づけることにより、容量当たりの電池コストを削減することが可能となる。
マグネシウムイオン二次電池には、マグネシウム塩を十分な濃度で溶解した電解液と、マグネシウムイオンを可逆的に酸化還元することができる正極及び負極とが必須である。特に、マグネシウムイオンの可逆的な溶解・析出または吸蔵・放出が可能な負極活物質が求められている。
負極に金属マグネシウムまたはその合金を用いた場合、マグネシウムイオンの溶解・析出の反応の過程で負極の表面に不動態化層が形成され、溶解・析出の反応が阻害される問題がある。
従来の技術においては、金属マグネシウムを負極に用いた例が大部分を占めており、一部を除いてマグネシウムの表面の不動態化が問題となっている。
本発明は、マグネシウムイオン二次電池の容量を大きくすることを目的とする。
本発明の負極活物質は、正極及び負極におけるマグネシウムイオンの吸蔵・放出によって作動するマグネシウムイオン二次電池に用いるものであって、グラファイトを含み、このグラファイトは、炭素原子の結晶格子で形成された平面状の単原子層を有し、相隣る単原子層の間には、マグネシウムイオンを立体的に配置可能であることを特徴とする。
本発明によれば、マグネシウムイオン同士の静電気的反発力を緩和して、負極活物質へのマグネシウムイオンの吸蔵量を増加させ、大容量で、かつ、充放電の可逆性に優れたマグネシウムイオン二次電池を製造することができる。
本発明によれば、二次電池を軽量化し、二次電池の設置可能箇所の範囲を拡大することができる。
マグネシウムイオン二次電池の負極活物質の微視的構造を示す模式図である。 マグネシウムイオン二次電池を示す概略断面図である。 マグネシウムイオン二次電池を用いた電池システムの例を示す概略構成図である。 マグネシウムイオン二次電池を用いた電池モジュールを屋内に設置した例を示す概略断面図である。 マグネシウムイオン二次電池を用いた電池システムの設置例を示す概略構成図である。
本発明は、負極活物質及びこれを用いたマグネシウムイオン二次電池並びにこれを用いた電源及び機器システムに関する。
本発明者は、従来技術の内容を詳細に検討した結果、従来にない新規な負極活物質として、グラファイト(黒鉛)の単原子層の間隔を大きくしてマグネシウムイオンの吸蔵及び移動に好適な構成としたものを見出した。そして、この負極活物質を用いた負極、非水溶媒に電解質を溶解した電解液、及び正極を組み合わせることにより、充放電特性に優れたマグネシウムイオン二次電池を提供可能であることに見出し、本発明に至った。
従来のように負極に金属マグネシウムまたはその合金を用いた場合、マグネシウムイオンの溶解・析出の反応の過程で負極表面に不動態化層が形成され、溶解・析出の反応が阻害される問題がある。
その阻害のメカニズムは十分に解明されているとは言えないが、本発明者は、電解液の分解により生成した被膜がマグネシウムイオンの溶解析出反応を妨害していると考えている。
また、マグネシウムイオンを吸蔵する材料の研究もなされているが、大容量のインターカレーション型負極活物質は見つかっていない。容量が大きくならない原因としては、マグネシウムイオンが2価の陽イオンであるため、負極活物質の内部にてマグネシウムイオン同士の静電的な反発が大きくなることが考えられる。
本発明は、金属マグネシウム又はその合金とは異なるインタカレート型負極活物質を用いることにより、不動態化反応を回避し、大容量のマグネシウムイオン二次電池を提供するものである。
以下、本発明の一実施形態に係る負極活物質並びにこれを用いた負極材料、負極合剤、負極、マグネシウムイオン二次電池、電池システム及び機器について説明する。
前記負極活物質は、グラファイトを含み、このグラファイトは、炭素原子の結晶格子で形成された平面状(板状)の単原子層を有し、相隣る単原子層の間にマグネシウムイオンを立体的に配置可能としている。
前記負極活物質は、グラフェン構造(グラファイトの単原子層)を有する炭素材料を含むものである。ここで、グラフェン(graphene)とは、一原子の厚さを有するsp2結合を構成する炭素原子のシート(二次元構造)をいい、炭素原子が結合して形成された蜂の巣のような六角形格子構造(ハニカム構造)を有する。
前記負極活物質において、相隣るグラファイトの単原子層の間の距離(グラフェンの層間隔)の平均値は、0.7nm以上であることが望ましい。
前記負極活物質において、結晶格子を構成する元素には、ホウ素、リン又はケイ素が含まれることが望ましい。
前記負極材料は、前記負極活物質を用いたものである。
前記負極合剤は、前記負極材料と、バインダとを含む。
前記負極は、前記負極合剤を集電体に塗工した構成を有することが望ましい。
前記マグネシウムイオン二次電池は、正極と、前記負極活物質を含む負極と、電解液とを含む。
前記マグネシウムイオン二次電池において、電解液は、ハロゲン化アニオン又は水を含むことが望ましい。
前記電池システムは、前記マグネシウムイオン二次電池を含み、前記マグネシウムイオン二次電池に電気エネルギーを貯蔵し、又は、利用する構成を有する。
前記機器は、前記電池システムを構成要素として含む。
以下、図を用いて詳細に説明する。
図1は、マグネシウムイオン二次電池の負極活物質の微視的構造を示す模式図である。
本図においては、負極活物質を構成するグラファイト単原子層11、12(単に「単原子層」ともいう。)の間にマグネシウムイオン13、14が吸蔵されている。マグネシウムイオン13は、グラファイト単原子層11の表面に吸着され、マグネシウムイオン14は、グラファイト単原子層12の表面に吸着されている。マグネシウムイオン14は、マグネシウムイオン13が吸着した位置におけるグラファイト単原子層11の法線上ではない位置に吸着している。すなわち、マグネシウムイオン13とマグネシウムイオン14との距離xは、グラファイト単原子層11、12の層間距離よりも離れている。本図の場合、xは、層間距離の1.41倍(層間距離と2の平方根との積)である。層間距離(上下方向を示す矢印として図1の右端に表記されている。)が0.70nmの場合、xは0.99nmである。
すなわち、マグネシウムイオン13とマグネシウムイオン14との位置関係は、マグネシウムイオン13がグラファイト単原子層12の表面に吸着されたマグネシウムイオン14から見て仰角45°の位置にあるといえる。一般に、この場合の仰角は、上記の層間距離に依存するものである。この位置関係を一般化して言い換えると、マグネシウムイオン13はマグネシウムイオン14から見て斜めの位置にあるといえる。本明細書においては、この位置関係について「相隣るグラファイト単原子層11、12の間には、マグネシウムイオン13、14を立体的に配置可能である」と表記することにする。
図2は、マグネシウムイオン二次電池の断面を模式的に示したものである。
本図において、マグネシウムイオン二次電池101は、正極107と、負極108と、正極107と負極108との間に挟まれたセパレータ109とで構成された電極群(積層体とも呼ぶ。)、及びこの電極群を収納した電池容器102を含む。
正極107は、正極活物質とバインダとを含む正極合剤を金属箔、炭素フェルト等で形成された集電体の表面に塗工することにより作製されたものである。正極合剤には、導電剤を添加してもよい。負極108は、負極活物質とバインダとを含む負極合剤を金属箔、炭素フェルト等で形成された集電体の表面に塗工することにより作製されたものである。負極合剤には、導電剤を添加してもよい。ここで、塗工とは、集電体の表面を覆うように膜状に付着させることをいい、集電体の表面に塗布し、乾燥して固定することも含む。
本明細書においては、正極活物質とバインダを除く導電剤等とを混合したものを正極材料と呼ぶ。また、正極材料とバインダとを混合したものを正極合剤と呼ぶ。一方、負極活物質とバインダを除く導電剤等とを混合したものを負極材料と呼ぶ。また、負極材料とバインダとを混合したものを負極合剤と呼ぶ。
電池容器102の上部は、蓋103によって密閉されている。蓋103には、正極外部端子104、負極外部端子105及び注液口106が設けてある。正極107は、正極リード部110を介して正極外部端子104に接続されている。負極108は、負極リード部111を介して負極外部端子104に接続されている。正極外部端子104及び負極外部端子105は、絶縁性シール112を介して蓋103に固定してある。これにより、正極外部端子104と負極外部端子105とが短絡しないようにしている。
絶縁性シール112に用いる材料は、フッ素樹脂、熱硬化性樹脂、ガラスハーメチックシールなどから選択することができる。絶縁性シール112に用いる材料に求められる条件は、正極活物質、負極活物質、電解液および大気中の酸素と反応せず、気密性に優れていることである。
蓋103は、電池容器102に電極群を収納した後、電池容器102に被せ、蓋103の外周を溶接して電池容器102と一体にしてある。電池容器102に蓋103を取り付ける方法としては、溶接の他に、かしめ、接着などがある。
正極リード部110及び負極リード部111に求められる条件は、電気抵抗が小さく、かつ、電解液と反応しないことである。この条件を満たせば、正極リード部110及び負極リード部111の形状及び材質は任意である。
なお、蓋103を省略し、電池容器102の上部に絶縁性シール112、正極外部端子104及び負極外部端子105を設置して固定してもよい。
また、正極107と正極外部端子104との間、又は負極108と負極外部端子105との間に正温度係数抵抗素子(PTC:Positive Temperature Coefficient)を利用した電流遮断機構を設けると、電池内部の温度が高くなったときに、マグネシウムイオン二次電池101の充放電を停止させ、マグネシウムイオン二次電池101を保護することが可能となる。
さらに、マグネシウムイオン二次電池101の内部の圧力が所定の値よりも大きくなったときにその内部の圧力を解放する圧力弁を蓋103に設けてもよい。
電池容器102の材質は、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼製など、非水電解質に対して耐食性を有する材料から選択される。
対向する正極107と負極108との間においては、充放電時にマグネシウムイオンが移動する。電極群(積層体)の構造は、本図に示す短冊状電極の積層したものに限定されるものではなく、円筒状、扁平状などの任意の形状に捲回したものなど、種々の形状にすることができる。電池容器102の形状は、電極群の形状に合わせ、円筒型、偏平長円形状、角型などの形状を選択してもよい。
セパレータ109には、非水電解液(以下、単に「電解液」とも呼ぶ。)が含浸されている。この電解液には、マグネシウムを構成要素として含む電解質が溶解されている。
電解質の例としては、過塩素酸マグネシウム、トリフロロメタンスルホン酸マグネシウム及びハロゲン化マグネシウムを挙げることができる。
負極活物質としてマグネシウムイオンを吸蔵放出可能な炭素を用いるため、グリニャール試薬等の不安定なマグネシウム化合物を使う必要がなくなる。したがって、負極の表面においてマグネシウムイオンの溶解析出反応が生じない。このため、金属マグネシウムを負極材料として用いた場合に生じる金属マグネシウムの表面における不動態化反応を回避することができる。
有機酸マグネシウム塩も電解質に用いることができる。例としては、安息香酸マグネシウム、サリチル酸マグネシウム、フタル酸マグネシウムなどの芳香族系化合物や酢酸マグネシウム、プロピオン酸マグネシウムなどを用いることができる。さらに、o-フルオロ安息香酸マグネシウム(Magnesium di(o-fluorobenzoate))、m-フルオロ安息香酸マグネシウム(Magnesium di(m-fluorobenzoate))、p-フルオロ安息香酸マグネシウム(Magnesium di(p-fluorobenzoate))、o-クロロ安息香酸マグネシウム(Magnesium di(o-chlorobenzoate))、m-クロロ安息香酸マグネシウム(Magnesium di(m-chlorobenzoate))、p-クロロ安息香酸マグネシウム(Magnesium di(p-chrorobenzoate))、2,3-ジクロロ安息香酸マグネシウム(Magnesium di(2,3-dichlorobenzoate))、3,4,5-トリクロロ安息香酸マグネシウム(Magnesium di(3,4,5-trichlorobenzoate))、o-ブロモ安息香酸マグネシウム(Magnesium di(o-bromobenzoate))、m-ブロモ安息香酸マグネシウム(Magnesium di(m-bromobenzoate))、p-ブロモ安息香酸マグネシウム(Magnesium di(p-bromobenzoate))、二2,3-ジブロモ安息香酸マグネシウム(Magnesium di(2,3-dibromobenzoate))、o-ヨード安息香酸マグネシウム(Magnesium di(o-iodobenzoate))、 m-ヨード安息香酸マグネシウム(Magnesium di(m-iodobenzoate))、p-ヨード安息香酸マグネシウム(Magnesium di(p-iodobenzoate))、3-クロロフタル酸マグネシウム(Magnesium di(3-chlorophthalate))、3,6-ジクロロフタル酸マグネシウム(Magnesium di(3,6-dichlorophthalate))、テトラクロロフタル酸マグネシウム(Magnesium di(tetrachlorophthalate))、o-フルオロ安息香酸マグネシウム(Magnesium di(o-fluorobenzoate))、m-フルオロ安息香酸マグネシウム(Magnesium di(m-fluorobenzoate))、p-フルオロ安息香酸マグネシウム(Magnesium di(p-fluorobenzoate))、o-クロロ安息香酸マグネシウム(Magnesium di(o-chlorobenzoate))、m-クロロ安息香酸マグネシウム(Magnesium di(m-chlorobenzoate))、 p-クロロ安息香酸マグネシウム(Magnesium di(p-chlorobenzoate))、2,3-ジクロロ安息香酸マグネシウム(Magnesium di(2,3-dichlorobenzoate))、3,4,5-トリクロロ安息香酸マグネシウム(Magnesium di(2,4,5-trichlorobenzoate))、o-ブロモ安息香酸マグネシウム(Magnesium di(o-bromobenzoate))、m-ブロモ安息香酸マグネシウム(Magnesium di(m-bromobenzoate))、p-ブロモ安息香酸マグネシウム(Magnesium di(p-bromobenzoate))、2,3-ジブロモ安息香酸マグネシウム(Magnesium di(2,3-dibromobenzoate))、o-ヨード安息香酸マグネシウム(Magnesium di(o-iodobenzoate))、m-ヨード安息香酸マグネシウム(Magnesium di(m-iodobenzoate))、p-ヨード安息香酸マグネシウム(Magnesium di(p-iodobenzoate))、3-クロロフタル酸マグネシウム(Magnesium di(3-chlorophalate))、3,6-ジクロロフタル酸マグネシウム(Magnesium di(dichlorophalate))、テトラクロロフタル酸マグネシウム(Magnesium di(tetrachlorophalate))、4-ニトロ安息香酸マグネシウム(Magnesium di(p-nitrobenzoate))、3,5-ジニトロサリチル酸マグネシウム(Magnesium di(3,5-dinitrosalicylate))、5-スルホサリチル酸マグネシウム(Magnesium di(5-sulfosalicylate))などが例として挙げられる。これらの他、非水溶媒に溶解するものであれば、複数の芳香族環を有していてもよい。
また、これらの電解質を溶解可能な非水溶媒としては、アセトニトリル、ジメチルアセトアミド、1-メチル-2-ピロリドン(NMP)などの溶媒、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ビニレンカーボネートなどの炭酸エステルなどを用いることができる。
電解液は、化学的に不安定なグリニャール試薬等の電解質ではないため、テトラヒドロフランなどの引火点の低い溶媒を使う必要がない。金属マグネシウムを負極に用いないため、化学的に安定な電解液を使うことができる。
上述の電解質は、一種または二種類以上混合して溶媒に溶解して用いる。電解質の添加量は、電解質が100%電離したと仮定した場合、マグネシウムイオンの濃度が0.1モル/リットル以上とすることが望ましい。更に望ましくは0.5モル/リットル以上であり、特に望ましくは0.8〜1.5モル/リットルである。マグネシウムイオンの濃度が1.5モル/リットル以下であることが望ましいとした理由は、電解質の添加量が多い場合、電解液の粘度が低下し、低温におけるマグネシウムイオンの移動速度が低下するためである。すなわち、マグネシウムイオン二次電池の低温特性が低下する。
後述の実施例においては、過塩素酸マグネシウムをアセトニトリルに溶解した電解液を主に用いるが、これに限定されるものではない。過塩素酸マグネシウムの添加量は、全量が電離したと仮定して、マグネシウムイオン濃度が1モル/リットルになるようにした。なお、以下では、濃度の単位であるモル/リットルは1Mと表記する。
セパレータ109としては、構成する分子中に電解質として作用する官能基を有する固体電解質ポリマーを用いてもよい。例えば、ポリエーテル結合、カルボニル結合又は炭酸エステル結合を分子内に有する炭化水素の高分子材料を用いることができる。これにより、マグネシウムイオン二次電池101の構造を簡易とし、製造コストを削減することが可能となる。また、有機溶媒を含む電解液を用いないため、電解液が着火する危険性を排除することができる。
後述の実施例においては、セパレータ109として厚さ50μmのセルロース系不織布を用いた。電解液が濡れやすい他の材料を用いてもよい。
正極活物質としては、充電時にはマグネシウムイオンを溶解または放出し、放電時にはマグネシウムイオンを析出または吸蔵する機能を有する材料であれば、任意の材料を選択することができる。後述の実施例においては、正極活物質としてスピネル型結晶構造を有するMgMn2O4を用いた。
正極活物質は、微粒子で用いた場合は、粒子間の電子の授受を速やかに行う必要がある。そのため、導電性の材料(導電剤ともいう。)、例えば、炭素粉末や炭素繊維、あるいは耐食性の金属や炭化物からなる粉末や繊維を正極活物質に添加して、正極材料としてもよい。このほか、炭素繊維とともに比表面積が大きい炭素材料、例えば、カーボンブラックや活性炭を用いてもよい。これにより、正極107の導電性を更に向上することができる。
バインダには、フッ素系バインダやゴム系バインダなどの公知の材料を用いることができる。前者の代表例としては、テトラフロロエチレン及びポリフッ化ビニリデンがあり、後者の代表例としては、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、ポリアクリル酸またはそのアルカリ塩などがある。必要に応じて、分散性や粘度を調製するための添加剤(例えば、カルボキシメチルセルロース)を添加してもよい。
正極活物質と、バインダと、必要に応じて導電剤とを十分に混合し、なめらかな正極合剤のスラリを調製する。このスラリを正極集電体に塗布し、乾燥することによって正極107を製造する。
正極集電体には、厚さが10〜100μmの多孔質炭素フェルト、孔径0.1〜10mmの穿孔を有する炭素シートなどを用いることができる。なお、正極集電体の材料は、炭素に限定されるものではなく、アルミニウム、ステンレス鋼、チタンなどの耐食性材料も適用可能である。正極107が作動する電位で、正極集電体の溶解が起こらず、酸化物層が正極集電体の内部を侵食しない材料であれば適用可能である。これらの条件を満たせば、正極集電体は、材質、形状、製造方法などに制限はなく、任意の材料を使用することができる。
正極合剤のスラリの塗布においては、ドクターブレード法、ディッピング法、スプレー法などの既知の方法を採ることができる。また、正極合剤のスラリを正極集電体に塗布した後、有機溶媒を乾燥し、ロールプレスによって正極107を加圧成形することにより、正極107を作製することができる。また、塗布から乾燥までを複数回行うことにより、複数の正極合剤層を重ねて塗工することも可能である。
後述の実施例においては、平均粒径5μmのMgMn2O4(正極活物質)にアセチレンブラックを導電剤として添加し、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)をバインダとした正極を製造した。各材料の重量組成は、MgMn2O4:アセチレンブラック:SBR=85:12:3とした。
負極108は、グラフェン構造を有する炭素材料である負極活物質と、バインダとを含む。負極活物質は、グラフェン構造を有する複数の層が積層された構造を有する炭素材料である。すなわち、この炭素材料は、炭素原子の結晶格子で形成された板状の単原子層を有するグラファイト(黒鉛)を含むものである。これらの層(板状の単原子層)の間隔(層間距離)の平均値が0.6nm以上であれば、マグネシウムイオンを吸蔵・放出することが可能である。充放電効率を高めて可逆的な吸蔵・放出を得るためには、上記の間隔の平均値が0.7nm以上であることが望ましい。そして、上記の間隔の平均値が0.8nm以上の場合、100%に近い充放電効率が得られるので、更に好適である。また、上記の間隔が広がりすぎると、グラフェン層同士の相互作用(引力)が低下し、剥離しやすくなる。そこで、上記の間隔の平均値は10nm以下にすることが望ましい。
従来技術によると、上記の間隔の小さい黒鉛へのマグネシウムイオンの吸蔵・放出を実現することはできていなかった。
通常の黒鉛の層間距離は0.335nm程度と小さいが、リチウムイオンの場合は、リチウムイオンが1価のイオンであるため、6個の炭素原子で囲まれた空間に安定に存在することができる。リチウムイオン電池の負極の作動電位においては、炭素原子6個に対して1個のリチウムイオンが吸蔵される。したがって、いわゆるLiC6の組成になるまで充電することができる。
しかしながら、マグネシウムイオンの場合は、イオン半径はリチウムイオンとほぼ同等であるが、2価の正電荷を有しているため、グラフェンの層間に挿入されたマグネシウムイオン同士の静電的な反発力は、等距離の条件でリチウムイオン同士の反発力に比べて4倍となる。このため、マグネシウムイオンを通常の黒鉛の層間に吸蔵することは困難であった。
そこで、本発明者は、マグネシウムイオン同士の静電的反発力を低減し、リチウムイオン電池用負極並みの吸蔵・放出が可能とするグラフェン構造の検討を進めた。そして、通常の黒鉛の層間距離では、多数のマグネシウムイオンを安定に吸蔵するには狭すぎることに着目し、その層間距離を大きくするという着想に至った。
リチウムイオン電池用負極の場合、特許文献7のようにグラフェン層間の距離を大きくすることは、単位体積当たりの負極の充放電量を減少させることになる欠点がある。そのため、従来の研究においては、層間距離を大きくした炭素をマグネシウムイオン二次電池用負極に用いる発想に結びつきにくかったものと想像される。
グラフェンの層間距離の制御は、石油ピッチ、コークスなどの炭素原料の熱処理温度や時間を調整することにより可能となる。石油系ピッチの具体例としては、デカントオイルピッチ及びエチレンタールピッチが知られている。石炭系ピッチとしては、コールタールピッチ及び石油液化ピッチが代表例である。
また、ピッチ系炭素繊維、ポリアクリルアミド系炭素繊維、レイヨン系炭素繊維などを原料として熱処理条件の制御をすることにより、所望のグラフェン層間距離を得ることができる。
ピッチを繊維状に加工すること(一般的に紡糸と言われる。)には、溶融紡糸法が適している。ガス雰囲気は、酸素雰囲気又は不活性ガス雰囲気とし、100〜400℃の範囲の環境下で熱処理をすることにより、炭素繊維を合成する。次いで、合成した炭素繊維に電解処理を施し、グラフェン層に原子、イオン又は分子を吸蔵させて、層間隔を制御する。これらの物質の挿入により、グラフェン層の間隔が膨張する。電解処理は、硝酸、硫酸、リン酸などの無機酸溶液、又はぎ酸、酢酸などの有機酸溶液の中に炭素繊維と対極を浸漬して行う。電解処理時の酸の濃度、電解時間あるいは電気量によって、グラフェン層に取り込まれるイオン等の量を変化する。このため、それらのパラメータを調整することによってグラフェン層間隔も制御可能となる。
電解処理の他に、高圧下で、グラフェン層間にメタン、エタン、アンモニア、カリウムなどの分子または原子を吸蔵させる方法がある。このように、グラフェン層間隔の制御方法は、上述の電解処理方法に限定されず、結果として本発明の構造を有する負極活物質を製造することができれば、任意の制御方法を採ることができる。
上記の電解処理の後、炭素繊維に急速熱処理を行い、層間隔が収縮しないように、吸蔵された原子、イオン、分子を極短時間で脱離させる。温度条件としては、300〜1200℃にて5〜120秒行う。処理時間が短いほど、層間隔の収縮を防止することができるので、500℃以上の高温度で短時間行うことが望ましい。
グラフェンの層間隔は、CuKα線を利用したX線回折パターンよりd002面に相当するピーク位置から計算することができる。これ以外に、透過型電子顕微鏡によるグラフェン断面の観察、原子間力顕微鏡による表面観察、X線吸収微細構造の解析などの公知の分析手法によって、グラフェンの層間隔を測定することが可能である。
所望の層間隔を有する炭素繊維は、公知のミルやカッターミキサーなどを用いて繊維を裁断し、小さな繊維長の炭素繊維を得ることができる。長さ分布をそろえるためには、気流や沈降速度などを利用した公知の分級方法を適用する。
後述の実施例で用いた炭素材料は、石油ピッチから紡糸し、硝酸溶液中で硝酸イオンを炭素繊維に吸蔵させ、その後、800℃の熱処理によって製造した材料である。繊維直径は、5〜10μmであり、繊維長さは、50〜100μmであった。グラフェンの層間隔は、0.6〜10nmの範囲に制御した(後述の表1)。ただし、電解処理条件の変更により、この範囲の値に調整することは可能である。なお、上記の電解処理を行わないで、炭素繊維を不活性ガス雰囲気中にて2000℃以上、望ましくは2000〜3000℃の加熱処理によって、グラフェンの層間隔を収縮させ、天然黒鉛のd002と同じ値(0.34nm)を得ることができる。
本発明者は、上記の層間距離を大きくすることによる欠点がマグネシウムイオン二次電池用負極に当てはまらないと予想した。なぜならば、グラフェンの層間にマグネシウムイオンが吸蔵される際、狭い層間においてはリチウムイオンと同じサイトに吸蔵され、マグネシウムイオン同士の間隔が小さくなるのに対し、層間距離が大きい場合、同じサイトに吸蔵されたマグネシウムイオン同士の間隔を大きくすることができるからである。すなわち、層間距離を大きくすることにより、マグネシウムイオン同士の距離を大きくすることができる。その結果、マグネシウムイオン同士の静電的反発力を低減することができる。
したがって、グラフェンの層間距離を拡大した炭素材料を負極活物質に用いることにより、充放電の可逆性に優れ、かつ、大容量の負極を実現することができることがわかった。
負極活物質は、膨張黒鉛を出発原料とし、それの熱処理により層間隔(層間距離)を調整することができる。また、グラフェンの炭素の一部をホウ素(B)、リン(P)又はケイ素(Si)(以下、「ホウ素等」ともいう。)で置換すると、グラフェン構造の面内における電子の移動が容易となり、マグネシウムイオンの吸蔵・放出を促進することができる。なお、ホウ素等の置換量は、0.1〜50%とすることができ、1〜5%の置換量とすれば負極の充放電容量を高める上で好適である。
負極108は、上述の構成に限定されず、Mg2Si、Mg2B等のマグネシウム化合物を添加してもよい。これにより、更に大容量の負極を得ることができる。充電時にマグネシウムイオンを析出または吸蔵し、放電時にマグネシウムイオンを溶解または放出する機能を有する材料であれば、負極108に用いることが可能である。
また、負極108に導電性材料を添加して、負極108の内部の導電性を高め、大電流の充放電を可能にすると更に望ましい。導電性材料には、天然黒鉛、人造黒鉛、メソフェーズ炭素、膨張黒鉛、炭素繊維、気相成長法炭素繊維、ピッチ系炭素質材料、ニードルコークス、石油コークス、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、カーボンブラックのなどの微粉末、あるいは五員環または六員環の環式炭化水素または環式含酸素有機化合物を熱分解によって合成した非晶質炭素材料の微粉末、炭素繊維やカーボンナノチューブなども使用することができる。また、金属や半導体のような材料を添加してもよい。ポリアセン、ポリパラフェニレン、ポリアニリン、ポリアセチレン等の導電性高分子材料を負極108の導電性材料に用いることもできる。導電性を有し、負極108の充放電時に分解等の副作用を生じなければ、使用可能である。ただし、必要以上に添加すると、負極108の体積が増大し、電池のエネルギー密度が低下するため、適切な量の導電性材料を用いる。
上記の導電性材料と、グラフェン構造を有する炭素材料とを組み合わせて、負極108を構成することができる。
負極活物質は、シート状であってもよいし、粉末状であってもよい。一般には、後者の方が反応面積を増大させることが容易であり、高性能な二次電池にすることができる。
粉末状の負極活物質を用いる場合は、それにバインダを混合して、粉末同士を結合させるとともに負極集電体に固定する。
負極108においては、負極活物質の粒径を合剤層の厚さ以下にすることが望ましい。負極活物質の粉末中に合剤層厚さ以上のサイズを有する粗粒がある場合、予めふるい分級、風流分級などにより粗粒を除去する。
負極108の集電体には、厚さ10〜100μmの銅箔、厚さ10〜100μm、孔径0.1〜10mmの銅製穿孔箔、エキスパンドメタル、発泡金属板などが用いられる。集電体の材質は、銅の他に、ステンレス鋼、チタン、ニッケルなども適用可能である。本発明においては、材質、形状、製造方法などに特に制限はなく、任意の集電体を選択することができる。
負極活物質、バインダおよび有機溶媒を混合した負極合剤のスラリは、ドクターブレード法、ディッピング法、スプレー法などによって負極集電体に塗布した後、有機溶媒を乾燥し、ロールプレスによって負極を加圧成形することにより、負極108を作製する。また、塗布から乾燥までを複数回行うことにより、多層合剤層を集電体に形成することも可能である。
後述の実施例で用いた負極活物質は、膨張黒鉛の熱処理で得られた炭素材料であって、層間距離の平均値を調整したものである。
これらの材料を用いた電池は、表1に記載したB1、B2、B3及びB4である。B5は、リチウムイオン二次電池に多用されている黒鉛負極をマグネシウムイオン二次電池である。
上で製作した正極107とセパレータ109と負極108とを順に積層することにより、積層体(電極群)を製作する。対向する正極107と負極108との間で充放電時にマグネシウムイオンが移動する。積層体の構造は、図2に示す短冊状電極の積層したもの、あるいは円筒状、扁平状などの任意の形状に捲回したものなど、種々の形状にすることができる。電池容器の形状は、電極群の形状に合わせ、円筒型、偏平長円形状、角型などの形状を選択する。
以下、実施例について説明する。
(実施例1〜4及び比較例1)
正極活物質としては、スピネル型結晶構造を有するMgMn2O4を用いた。
負極活物質として用いた炭素材料は、炭素原子の結晶格子で形成された板状の単原子層を有するグラファイトを含むものである。なお、ホウ素等の添加元素は加えていない。層間隔(層間距離)の平均値は、実施例1の電池B1の場合、10nmであり、実施例2の電池B2の場合、2nmであり、実施例3の電池B3の場合、0.8nmであり、実施例4の電池B4の場合、0.6nmであり、比較例1の電池B5の場合、0.34nmである。
電解液は、過塩素酸マグネシウム(Mg(ClO4)2)をアセトニトリルに溶解したものである。過塩素酸マグネシウムの添加量は、全量が電離したと仮定して、マグネシウムイオン濃度が1Mになるようにした。電解液をモレキュラーシーブで脱水し、水分量を50ppm以下としたものを、実施例1〜4及び比較例1に用いた。
電池の初期エージングは、室温にて実施した。
まず、開回路の状態より5時間率に相当する電流(0.2A)にて充電を開始し、3.5Vに到達した後、120分の定電圧充電を行った。その後、30分の休止を経て、電池電圧が1.0Vに達するまで0.2Aの定電流放電を行い、30分の休止を設けた。この一連のサイクルを3回行って、初期エージングを終了した。
その後、室温にて10サイクルの充放電試験を行った。開回路の状態より5時間率に相当する電流(0.2A)にて充電を開始し、3.5Vに到達した後に、120分の定電圧充電を行った。その後、30分の休止を経て、電池電圧が1.0Vに達するまで0.2Aの定電流放電を行い、30分の休止を設けた。
この一連のサイクル試験の最後の充電容量及び放電容量を負極活物質の重量当たりの電気量(単位はmAh/g)として算出した。
その結果を表1に示す。
充放電効率は、放電容量を充電容量で除した百分率である。
Figure 2012252812
本表から、実施例1〜4の電池B1、B2、B3及びB4は、比較例1の電池B5に比べて大容量であることがわかる。特に、層間隔(層間距離)が0.7nm以上の負極活物質を用いた電池B1、B2及びB3は、充放電効率にも優れている。
電池B5と電池B4との比較から、層間距離を0.6nm以上とすれば、放電容量が増加することがわかる。よって、層間距離を0.6nm以上とすれば、マグネシウムイオンの吸蔵・放出反応が容易となり、充放電が可能になると結論される。また、層間隔が0.8nm以上である負極活物質を用いた電池B1、B2及びB3は、電池B4よりも更に大きい放電容量を有している。したがって、層間隔が0.6nmと0.8nmとの中間、すなわち0.7nmにおいて放電容量が顕著に増大すると判断され、電池の大容量化には層間隔を0.7nm以上にすればよいことになる。また、充放電効率は、電池B3においてほぼ100%となっていることから、充放電効率の向上の観点からは、層間隔0.8nm以上とすることが望ましいことがわかる。
(実施例5〜7)
電池B3で用いた炭素材料を構成するグラファイトの単原子層に含まれる炭素原子の一部を添加元素であるホウ素、リン又はケイ素で置換した負極活物質を合成した。置換率は、炭素全量に対して0.5%とした。
合成には、石油ピッチにホウ素等の添加元素を添加し、紡糸処理を施して、硝酸溶液中でグラフェン層間隔を拡張させた炭素繊維を合成した。その後、炭素繊維をレーザ加熱炉による急速加熱処理により、添加元素を含むが、硝酸イオンは除去された負極活物質を得た。熱処理温度は、500℃とした。負極活物質以外の条件、すなわち、負極の製法、正極の製法、電解液の種類などは、実施例1〜4と同じ条件とした。
添加元素をホウ素とした電池をB6(実施例5)、添加元素をリンとした電池をB7(実施例6)、添加元素をケイ素とした電池をB8(実施例7)とする。
これらの電池について、実施例1〜4と同じ条件で初期エージングを行い、10サイクル目の放電容量及び充放電効率を測定した。
これらの結果は、表1に示してある。
実施例5〜7の電池B6〜B8はいずれも、放電容量が大きく、特に、実施例6〜7の電池B7〜B8は、電池B3よりも大きくなった。また、充放電効率も比較例1の電池B5よりも優れていた。
(実施例8〜9)
電池B3の電解液を変更した電池B9及びB10を製作した。
実施例8の電池B9の電解液は、過塩素酸マグネシウム及びヨウ化マグネシウムをアセトニトリルに溶解したものである。過塩素酸マグネシウムは0.9Mであり、ヨウ化マグネシウムは0.1Mである。
実施例9の電池B10の電解液は、電池B3の電解液に水を0.1M添加したものである。
これらの電池について、実施例1〜4と同じ条件で初期エージングを行い、10サイクル目の放電容量及び充放電効率を測定した。
これらの結果は、表1に示してある。
実施例8及び9の電池B9及びB10はいずれも、放電容量が大きく、電池B3よりも大きくなった。また、充放電効率も比較例の電池B5よりも優れていた。
容量増大の効果が得られた理由は、マグネシウムイオンがヨウ化物イオンまたは水とともに、グラファイトの単原子層の間に共挿入されたためと考えている。X線光電子分光法、核磁気共鳴スペクトル、元素分析などにより、負極の内部にヨウ化物イオン及び水が存在することを確認した。
以下、マグネシウムイオン二次電池を用いた電池システムについて説明する。
電池B3と同一仕様の角型電池101を多数個製作した。電池の定格容量は、5時間率放電条件にて1Ahであった。
図3は、2個のマグネシウムイオン二次電池を直列に接続した電池システムの例を示したものである。
この電池システムをS1とする。なお、電池の直列数及び並列数は、電池システムS1が要求される電力量に応じて、任意に設定することが可能である。
マグネシウムイオン二次電池201a、201bは、正極207、負極208及びセパレータ209で構成された同一仕様の積層体を有し、その上部に正極外部端子204及び負極外部端子205(以下、まとめて「外部端子」とも呼ぶ。)を設けている。各外部端子と電池容器202との間には、絶縁性シール212を挿入し、外部端子同士が短絡しないようにしている。
マグネシウムイオン二次電池201aの負極外部端子205は、電力ケーブル213により充放電制御部216の負極入力ターミナルに接続されている。マグネシウムイオン二次電池201aの正極外部端子204は、電力ケーブル214を介して、マグネシウムイオン二次電池201bの負極外部端子205に連結されている。別のマグネシウムイオン二次電池201bの正極外部端子204は、電力ケーブル215により充放電制御部216の正極入力ターミナルに接続されている。このような配線構成によって、2個のマグネシウムイオン二次電池201a、201bを充電または放電することができる。
充放電制御部216は、電力ケーブル217、218を介して、外部機器219(外部に設置した機器)との間で電力の授受を行う。外部機器219には、充放電制御部216に給電するための外部電源や回生モータ等の各種電気機器、ならびに電池システムS1が電力を供給するインバータ、コンバータおよび負荷が含まれている。外部機器219が利用する交流又は直流の種類に応じて、インバータ等を設ければよい。これらの外部機器219は、公知のものを任意に適用することができる。
また、再生可能エネルギーを生み出す機器として風力発電機の動作条件を模擬した発電装置222を設置し、電力ケーブル220、221を介して充放電制御部216に接続した。発電装置222が発電する際には、充放電制御部216が充電モードに移行し、外部機器219に給電するとともに、余剰電力をマグネシウムイオン二次電池201a及び201bに充電する。また、発電装置222が風力発電機等のように発電量が安定しないものの場合、外部機器219の要求電力よりも少ないときには、マグネシウムイオン二次電池201a及び201bを放電するように充放電制御部216が動作する。なお、発電装置222は、他の発電装置、すなわち、太陽電池、地熱発電装置、燃料電池、ガスタービン発電機などの任意の装置に置換することができる。充放電制御部216は、上述の動作をするように自動運転可能なプログラムを記憶させておくことが望ましい。
マグネシウムイオン二次電池201a、201bは、定格容量が得られる通常の充電を行う。例えば、5時間率の充電電流にて各電池の電圧が3.5Vの定電圧充電を4時間、実行することができる。充電条件は、二次電池の材料の種類、使用量などの設計で決まるので、電池の仕様ごとに最適な条件とする。
マグネシウムイオン二次電池201a、201bを充電した後には、充放電制御部216を放電モードに切り替えて各電池を放電する。通常は、一定の下限電圧に到達したときに放電を停止する。本実施例での下限電圧は、各電池ともに1.0Vとした。
充電時においては、発電装置222が電力を供給し、放電時においては、外部機器219が電力を消費するようになっている。例えば、1時間率放電まで実施し、2時間率放電時の容量に対して90%の高い容量を得るようにした。
本発明の要旨を変更しない範囲で、具体的な構成材料、部品などを変更してもよい。また、本発明の構成要素を含んでいれば、公知の技術を追加し、あるいは公知の技術で置き換えることも可能であり、発電装置222は、太陽光、地熱、波力エネルギーなどの任意の再生可能なエネルギー発電システムに置き換えることができる。
また、外部機器219は、電気モータなどの駆動装置に置き換えると、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、運搬機器、建設機械、介護機器、軽車両、電動工具、ゲーム機、映像機、テレビ、掃除機、ロボット、携帯端末情報機器などに利用することも可能である。
さらに、マグネシウムイオン二次電池と太陽光発電や燃料電池システムとを電力ケーブルで接続することにより、電力貯蔵システムを製造することができる。また、海底探索潜水艦や宇宙ステーションなどの電源としても利用可能である。
図4は、マグネシウムイオン二次電池を用いた電池モジュールを屋内に設置した例を示す概略断面図である。
本図において、マグネシウムイオン二次電池301を40個直列に接続した電池モジュールは、制御回路324に接続され、充放電電源、発電装置又は負荷に接続可能とした蓄電システムを構成している。
マグネシウムイオン二次電池301は、電池B3と同一の材料を用い、定格容量を10Ahとしている。
マグネシウムイオン二次電池301は、1.0V〜3.5Vの電圧範囲で充放電され、平均電圧を2.4Vとしている。したがって、電池の容量は24Whとなる。重量が0.3kgであることから、重量エネルギー密度は80Wh/kgである。この値は、鉛蓄電池よりも高い。
電池モジュールは、電池ケース323に収納され、床328に設置されている。電池ケース323の上には、制御回路ケース325が取り付けられている。
マグネシウムイオン二次電池301は、4個だけ図示してあるが、図面に垂直な方向に10列並べてあり、隣接する正極外部端子304と負極外部端子305とが電力ケーブル315で連結され、40個の電池が直列に接続されている。本図においては、電池蓋、注液口、絶縁性シール材料、電池の内部に収納されている正極、負極及びセパレータを表示していないが、マグネシウムイオン二次電池301としての必要な部品は、図2に用いたものと同様である。
なお、図4においては、電力ケーブル315が3本表示されているが、左から順に左端が奥、中央が手前、右端が奥にある電池に接続されている。平面図の都合により、前後の電池の位置の区別ができないだけであることに留意されたい。
40個に直列に接続された電池モジュールの両末端にある電池の正極外部端子304及び負極外部端子305は、電力ケーブル313、314を介して制御回路324に接続されている。制御回路324は、全てのマグネシウムイオン二次電池301の電圧を計測し、それぞれのマグネシウムイオン二次電池301の充電深度を監視し、正常な充放電ができるように制御している。また、本図には示していないが、各マグネシウムイオン二次電池301に熱電対を設置し、電池の温度を監視することができる。これによって、マグネシウムイオン二次電池301の温度を充電深度の計算に取り入れて、更に高精度な制御が可能となる。また、マグネシウムイオン二次電池301の異常を早期に検出することができ、安全な充放電が可能となる。
制御回路324は、全てのマグネシウムイオン二次電池301の充放電を制御するとともに、外部と外部入出力端子326、327を介して電力の授受を行うようになっている。これは、図3の充放電制御部216に相当する。したがって、図3の構成になるように図4の蓄電システムを外部装置219及び発電装置222に接続し、再生可能エネルギーを外部装置に利用することが可能となる。図4の蓄電システムは、鉛蓄電池よりも高いエネルギー密度を有するため、軽量で、かつ、大容量であり、ビルや一般家庭の屋内、屋上などに設置することが可能である。
図5は、マグネシウムイオン二次電池を用いた電池システムの設置例を示す概略構成図である。
本図においては、ビル401の屋上402に複数個のマグネシウムイオン二次電池403が積み重ねて設置されている。
従来の鉛蓄電池は、電極に用いる鉛の重量(密度)が大きいため、多数個を積み重ねて設置することが困難である。また、従来の鉛蓄電池をビルの屋上等の上階に設置することは、建物の強度や耐震性の観点から問題があった。このため、従来の鉛蓄電池は、地階などに重ねずに設置する必要があった。
また、リチウムイオン二次電池は、1価のイオンであるリチウムイオンを利用する電池であるため、2価のイオンであるマグネシウムイオンを利用するマグネシウムイオン二次電池403に比べて単位重量当たり又は単位体積当たりの理論的な電池容量の限界値が小さい。すなわち、リチウムイオン二次電池をビルの屋上等の上階に設置する場合、同じ電池容量を有するマグネシウムイオン二次電池403に比べて重くなり、鉛蓄電池と同じ問題が生じる。
したがって、マグネシウムイオンを充分に吸蔵できるマグネシウムイオン二次電池403は、他の電池に比べて、電池容量当たりの重量を小さくすることができ、ビル401の屋上402等、重量制限のある場所に設置することが容易となる。
本発明によれば、単位重量当たり又は単位体積当たりの電池容量を大きくすることができるため、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、運搬機器、建設機械、介護機器、軽車両、電動工具、ゲーム機、映像機、テレビ、掃除機、ロボット、携帯端末情報機器などの移動可能な機器、又は電力貯蔵システムなどの電池システムにマグネシウムイオン二次電池を組み込んで使用することができる。
11、12:グラファイト単原子層、13、14:マグネシウムイオン、101:マグネシウムイオン二次電池、102:電池容器、103:蓋、104:正極外部端子、105:負極外部端子、106:注液口、107:正極、108:負極、109:セパレータ、110:正極リード部、111:負極リード部、112:絶縁性シール、201a、201b:マグネシウムイオン二次電池、202:電池容器、204:正極外部端子、205:負極外部端子、207:正極、208:負極、209:セパレータ、212:絶縁性シール、213、214、215:電力ケーブル、216:充放電制御部、217、218:電力ケーブル、219:外部機器、220、221:電力ケーブル、222:発電装置、301:マグネシウムイオン二次電池、304:正極外部端子、305:負極外部端子、313、314、315:電力ケーブル、323:電池ケース、324:制御回路、325:制御回路ケース、326、327:外部入出力端子、328:床、401:ビル、402:屋上、403:マグネシウムイオン二次電池。

Claims (10)

  1. 正極及び負極におけるマグネシウムイオンの吸蔵・放出によって作動するマグネシウムイオン二次電池に用いる負極活物質であって、グラファイトを含み、前記グラファイトは、炭素原子の結晶格子で形成された板状の単原子層を有し、相隣る前記単原子層の間には、前記マグネシウムイオンを立体的に配置可能であることを特徴とする負極活物質。
  2. 前記単原子層の間の距離の平均値は、0.7nm以上であることを特徴とする請求項1記載の負極活物質。
  3. 前記結晶格子を構成する元素には、ホウ素、リン又はケイ素が含まれることを特徴とする請求項1又は2に記載の負極活物質。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の負極活物質を用いたことを特徴とする負極材料。
  5. 請求項4記載の負極材料と、バインダとを含むことを特徴とする負極合剤。
  6. 請求項5記載の負極合剤を集電体に塗工した構成を有することを特徴とする負極。
  7. 正極と、負極と、電解液とを含み、前記負極は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の負極活物質を含むことを特徴とするマグネシウムイオン二次電池。
  8. 前記電解液は、ハロゲン化アニオン又は水を含むことを特徴とする請求項7記載のマグネシウムイオン二次電池。
  9. 請求項7又は8に記載のマグネシウムイオン二次電池を含み、前記マグネシウムイオン二次電池に電気エネルギーを貯蔵し、又は、利用する構成を有することを特徴とする電池システム。
  10. 請求項9記載の電池システムを含むことを特徴とする機器。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2015090897A1 (de) * 2013-12-20 2015-06-25 Varta Micro Innovation Gmbh Magnesiumbatterie und negative elektrode dafür
KR20180003929A (ko) * 2016-07-01 2018-01-10 서울대학교산학협력단 마그네슘 이차 전지용 음극 활물질, 이를 포함하는 음극, 및 이를 포함하는 마그네슘 이차 전지

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