JP2012508221A - ワクチン組成物 - Google Patents
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Abstract
インフルエンザA型ウイルスに対する防御免疫応答を被験体において誘導するのに有用な本発明のワクチン組成物は、インフルエンザA型ウイルス抗原と細菌シアリダーゼとを含む。家禽を処置するための、高病原性H5N1亜型ウイルスの鼻腔内ワクチンは、不活性化H5N1抗原と、ウェルシュ菌A株107由来シアリダーゼと、キトサンとを含むことが好ましい。インフルエンザウイルス抗原ワクチンを増強する細菌シアリダーゼの使用も開示される。
Description
本発明は、インフルエンザA型ウイルスに対する防御免疫応答を被験体において誘導するのに有用なワクチン組成物に関する。本発明は、さらに、高病原性鳥インフルエンザH5N1のワクチン接種を家禽や他の鳥類に行うのに有用な組成物に関する。
インフルエンザは、オルソミクソウイルス科のRNAウイルスによって引き起こされる、哺乳動物および鳥類の感染症である。一般的に、インフルエンザは、感染動物からはウイルスを含む霧状物を飛散させる咳やくしゃみを介して、鳥類からは糞を介して伝播する。また、インフルエンザは、感染体の体液や体液で汚染された物の表面と接触することによっても伝播しうる。
「鳥インフルエンザウイルス」は、通常、インフルエンザA型ウイルスを指すが、これは、インフルエンザA型ウイルスの自然宿主が野鳥であることによる。A型株には、概して毒性が弱いことから低病原性とされるもの(LPAIウイルス)も含まれるが、そのような低病原性株が高病原性株(HPAIウイルス)の前駆体となることもある。高病原性株であるインフルエンザA型H5N1亜型は、東南アジアの鳥類に特有であり、パンデミックを引き起こしうる長期的脅威であると考えられている。このウイルス株は、ニワトリや七面鳥のような家禽において感染性が強い。家禽が互いに接触する状態で集約的に飼育されることが多い家禽飼育場において、インフルエンザが大発生した場合、致死率は100%に達する。
インフルエンザウイルスは、赤血球凝集素(HA)とノイラミニダーゼ(NA)(シアリダーゼとしても知られている)という、2種の主要な抗原性糖タンパク質を表面に有する。HAは、上気道の細胞膜および赤血球の表面に存在するシアル酸レセプター部位に結合すること、ならびにウイルスゲノムの宿主内標的細胞への侵入を促進することを主な機能とする。NAは、感染細胞からの子孫ウイルスの放出を補助し促進する機能を有し、また、ウイルスの宿主細胞への侵入を促進する。
製薬業界においては、インフルエンザ感染症治療用ノイラミニダーゼ阻害薬が製造されてきた。これらの阻害薬は、インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼの機能を妨害したり阻害することにより作用する。このようなノイラミニダーゼ阻害薬としては、ザナミビルやオセルタミビル(「タミフル」)が挙げられ、これらは、感染細胞からの子孫ウイルス粒子の放出の際に、インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼ活性をブロックすることにより作用する。残念ながら、インフルエンザに罹患したことが臨床的に認められた後では、既にウイルスが定着しているため、このような化合物を使用した薬物療法を行っても効果的ではない場合が多い。また、家禽の取り扱いにおいてこのような化合物を予防的に使用することは、家禽農家、特にH5N1が流行している地域に住む家禽農家にとって、通常、膨大な費用負担となる。
本発明の目的は、大規模免疫処置プログラムにおいて、インフルエンザA型感染症の予防療法に使用することができる、費用効率の高いワクチンを提供することである。
したがって、本発明は、不活性化したインフルエンザA型ウイルス抗原と細菌シアリダーゼとを含むワクチン組成物を提供する。
驚いたことに、細菌シアリダーゼをワクチン組成物に組み込むことによって、ワクチンの作用強度を高める効果を得られることが判明した。いかなる理論にも縛られることを望むものではないが、細菌シアリダーゼの増強効果は、シアリダーゼが宿主の上皮表面に存在するシアル化膜糖脂質からシアル酸を選択的に除去することによってもたらされ、この効果により、インフルエンザウイルスがシアル酸レセプター部位へ結合するのを妨害すると考えることができる。感受性の宿主細胞へのウイルスの侵入をブロックすることによって、ワクチン組成物中の抗原により誘導された宿主の免疫応答がインフルエンザウイルスによる攻撃に抵抗する時間をより多く確保することができる。さらに、細菌シアリダーゼ自体が宿主に対して抗原性を有することから、宿主の免疫システムにおいて抗細菌性シアリダーゼ抗体の産生が誘導され、この抗体はインフルエンザのノイラミニダーゼに対しても作用すると考えられる。
様々な種類の細菌シアリダーゼが精製されており、その特性が明らかになっている。本発明のワクチン組成物に使用する細菌シアリダーゼは、通常、活性に金属イオンを必要としないシアリダーゼであって、好適な細菌源由来であってよい。細菌シアリダーゼの分子量は、菌種にもよるが、通常、67〜90kDである。シアリダーゼの好適な細菌源としては、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)、ショウベイ菌(Clostridium chauvoei)、および悪性水腫菌(Clostridium septicum)が挙げられる。細菌シアリダーゼは、ウェルシュ菌より得ることが好ましく、シアリダーゼを多く含むウェルシュ菌A型株107より得ることがより好ましい。ウェルシュ菌シアリダーゼなどの細菌シアリダーゼの製造/精製は、James T. Cassidy et al; Purification and Properties of sialidase from Clostridium perfringens; J. Biol. Chem; Vol 240, No. 9, September 1965, 3501-3506に記載されている。ウェルシュ菌A型株107からのシアリダーゼ精製試料の調製については、本明細書中の実施例において後述する。本明細書中で使用される方法によれば、精製酵素は、培養した細菌細胞を処理してホルマリン処理ウェルシュ菌トキソイドを製造し、次いで得られたトキソイドを硫酸アンモニウムで処理した後、透析により濃縮して製造する。上述したように、本発明の好ましい実施形態における製造で使用されるウェルシュ菌シアリダーゼ成分はトキソイドを含んでいる。無毒化していないウェルシュ菌α毒素は、溶血性および壊死性を示し、ニワトリの感染性壊死性腸炎の原因であることが知られている。本発明のワクチン組成物にウェルシュ菌シアリダーゼを用いることにより、本発明のワクチン組成物を投与したニワトリにおいて、感染性壊死性腸炎に対する抵抗性を改善するという付加的効果が得られると考えられる。
本発明のワクチン組成物に使用される不活性化インフルエンザA抗原としては、不活性化されたインフルエンザAウイルスに由来するものであればどのような抗原物質でもよい。たとえば、不活性化インフルエンザA抗原は、不活性化されたウイルス粒子全体を含んでもよい。あるいは、不活性化インフルエンザA抗原は、たとえば、M2イオンチャネルタンパク質や糖タンパク質などの免疫原性蛋白質を保持した、破壊されたウイルス(スプリットウイルス)を含んでもよい。ワクチン組成物中の抗原物質として、インフルエンザA膜糖タンパク質、赤血球凝集素(HA)、および/またはノイラミニダーゼ(NA)の精製調製物を使用してもよい。本発明によるワクチン組成物は、これらの抗原物質を1種以上含んでもよい。言うまでもなく、ワクチン組成物を調製するために使用するインフルエンザA型ウイルスは、ワクチンの被接種体が防御されるべきインフルエンザAに応じて決定される。H5N1による脅威を考慮すると、ワクチン組成物は、少なくとも1種のインフルエンザA型H5N1亜型株に由来する不活性化抗原物質を含むことが好ましい。ワクチン組成物は、伝播している種々のH5N1株に対してより広範囲な防御を被験体において誘導するために、2種以上のH5N1株に由来する不活性化抗原物質を含むことがより好ましい。
当該技術分野で従来行われているように、ワクチン組成物は、1種以上の好適な担体、賦形剤、安定剤、または他の添加剤を含んでもよい。インフルエンザウイルスは主に上気道の粘膜表面を介して宿主へ侵入するため、本発明の一実施形態として、ワクチン組成物が粘膜投与に適合していることが好ましく、鼻腔内投与に適合していることがより好ましい。言うまでもなく、鼻腔内投与用ワクチンはよく知られており、鼻腔内投与用ワクチンの調製方法については、当業者の技術常識から明らかである。
ワクチンの抗原成分とともにアジュバントを使用することもワクチン技術においてよく知られている。アジュバントは、被験体の抗原への免疫応答を増強する物質である。粘膜投与、特に鼻腔内投与に適合したワクチンは、抗原物質に加えてキトサンを使用して調製されるが、これは、粘膜上皮全体にわたって経細胞輸送および傍細胞輸送を増加させるキトサンの機能を利用したものである。キトサンは、キチンを脱アセチル化することによって調製されるカチオン性多糖類を指す一般名である。キチンは、海産甲殻類の外骨格に豊富に見出される天然の生体高分子である。キトサンは、無毒、生物分解性、かつ生体適合性の線状カチオン性高分子電解質であり、希有機酸に可溶な、白色または灰白色の無定形半透明固体である。キトサンとして、キトサンよりも溶けやすい無毒な酸付加塩の形態のもの、たとえば、キトサンHClを有利に使用してもよい。このような酸付加塩は、NovaMatrix社から入手可能である。特に好ましい実施形態によれば、本発明は、不活性化インフルエンザA抗原と、細菌シアリダーゼと、キトサンとを含む鼻腔内投与用ワクチン組成物を提供する。通常、キトサンは、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%脱アセチルされたキチンである。キトサン(脱アセチル化度:75%以上)は、シグマアルドリッチ社から入手可能である。キトサンの使用量は、鼻腔内投与されたインフルエンザA抗原の免疫応答を刺激するのに有効な量であればどのような量でもよい。本発明のワクチン組成物に使用されるキトサンの濃度は、通常、水性ワクチン組成物の容積当たり、0.05〜5重量%、好ましくは0.1〜2.0重量%、より好ましくは0.2〜1.0重量%である。
鼻腔内投与用に調剤されたものを含む、本発明のワクチン組成物は、当該技術分野で公知の手順に従い液剤または乾燥粉末として調剤することができる。ワクチン組成物は、滴剤またはエアゾール剤として投与される、液剤、特に水分散液、水性懸濁液または水溶液として調剤することが好ましい。本発明のワクチン組成物を、水溶液系で使用することが特に好ましい。これにより、多数の鳥を点滴投与またはエアゾール投与によって迅速かつ比較的安価に処置できる、効果的な集団ワクチン接種プログラムを実施することが可能となる。鼻腔内投与、たとえば、処置を受ける鳥の片方の鼻孔に水液ワクチンを1滴投与することは、現場において未熟練技術者が実施することも容易である。さらに、鼻腔内ワクチン接種により粘膜IgAレベルが上昇するのに伴い、自然感染経路に対して防御することが可能となる。本発明の水性ワクチン組成物にアジュバントとしてキトサンを使用する場合、ワクチンの抗原性成分に悪影響を及ぼすことなく、水性溶媒中のキトサンの溶解性を維持するためには、水性ワクチン組成物のpHは約5.0〜6.5、好ましくは約5.0であれば有利である。
本発明のワクチンは、インフルエンザAウイルスに対する免疫応答を誘導するのに効果的な量で被験体に投与される。被験体に対して好適かつ有効な投与量を決定することは、当業者の技術常識の範囲内である。ワクチンを投与する被験体はヒトでもよいが、本発明の好ましい実施形態においては、鳥類、特に家禽へ投与するためにワクチンを調剤することが好ましい。以下の実施例で述べるように、水性ワクチン1滴(1回量0.03ml中に、0.5w/v%キトサン溶液中に懸濁したウイルスHA100ユニットとウェルシュ菌シアリダーゼ122ユニットとを含む)を片方の鼻孔へ鼻腔内投与することにより、家禽にH5N1 AIウイルスのワクチン接種を成功裏に行うことができた。
本発明によれば、不活性化インフルエンザ抗原を含むワクチンに細菌シアリダーゼを組み込むことによって、ワクチンの作用強度の増強効果が得られる。したがって、さらなる態様によれば、本発明は、不活性化インフルエンザ抗原を含むワクチン、特に鼻腔内投与ワクチンの作用強度を改善するための細菌シアリダーゼの使用に関する。本発明は、さらに、細菌シアリダーゼを添加することによってこのようなワクチンの作用強度を改善する方法に関する。
<実験方法>
1.不活化ウイルス抗原の調製
感染したニワトリから単離・同定した高病原性H5N1同種株を、11日間培養した特定病原体不在発育鶏卵で増殖させた。HAを128ユニット/25μL含むワーキングシードウィルスを用い、鶏卵への接種を行った。このワーキングシードウィルスは、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(pH7.4)+20mg/mlカナマイシンで1000倍に希釈した後、その0.2mlをそれぞれの鶏卵の尿嚢へ注射した。次いで、鶏卵を37℃で72時間培養した。胚死は25〜27時間以内に確認した。死亡した胚を4℃で冷却した後、尿膜腔液を採取し、不要な残屑を除去するために3000rpmで15分間遠心分離することによって精製した。遠心分離後、沈殿物を廃棄した。ウイルスを含む上清は、試験により赤血球凝集活性を有することが確認できた(ニワトリ赤血球の凝集を引き起こした)。ウイルスを不活性化するため、上清に0.1%ホルマリンを添加し、37℃で18時間培養した。次いで、0.5v/v%クロロホルムを用い、4℃で18時間連続攪拌してウイルスを分解した。100mbarの減圧下、28℃で2時間処理して残留クロロホルムを除去し、赤血球凝集活性を調べるために試料を再試験した。11日間培養した発育鶏卵に不活化ウイルス懸濁液0.2mlを接種することにより、毒性の消失を証明できた。37℃で5日間さらに培養したところ、胚はすべて生存していた。ウイルス液を濾過により精製し、−20℃で保存した。
1.不活化ウイルス抗原の調製
感染したニワトリから単離・同定した高病原性H5N1同種株を、11日間培養した特定病原体不在発育鶏卵で増殖させた。HAを128ユニット/25μL含むワーキングシードウィルスを用い、鶏卵への接種を行った。このワーキングシードウィルスは、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(pH7.4)+20mg/mlカナマイシンで1000倍に希釈した後、その0.2mlをそれぞれの鶏卵の尿嚢へ注射した。次いで、鶏卵を37℃で72時間培養した。胚死は25〜27時間以内に確認した。死亡した胚を4℃で冷却した後、尿膜腔液を採取し、不要な残屑を除去するために3000rpmで15分間遠心分離することによって精製した。遠心分離後、沈殿物を廃棄した。ウイルスを含む上清は、試験により赤血球凝集活性を有することが確認できた(ニワトリ赤血球の凝集を引き起こした)。ウイルスを不活性化するため、上清に0.1%ホルマリンを添加し、37℃で18時間培養した。次いで、0.5v/v%クロロホルムを用い、4℃で18時間連続攪拌してウイルスを分解した。100mbarの減圧下、28℃で2時間処理して残留クロロホルムを除去し、赤血球凝集活性を調べるために試料を再試験した。11日間培養した発育鶏卵に不活化ウイルス懸濁液0.2mlを接種することにより、毒性の消失を証明できた。37℃で5日間さらに培養したところ、胚はすべて生存していた。ウイルス液を濾過により精製し、−20℃で保存した。
2.細菌シアリダーゼの調製
(a)以下のものを合わせて培地を調製した。
Oxoid L37 ペプトン 2%
ラクトアルブミン加水分解物 1%
酵母エキス 0.5%
NaCl 1.0%
全量が4.0リットルとなるように加えた水
(a)以下のものを合わせて培地を調製した。
Oxoid L37 ペプトン 2%
ラクトアルブミン加水分解物 1%
酵母エキス 0.5%
NaCl 1.0%
全量が4.0リットルとなるように加えた水
上記培地成分(pH7.4)を10Lのパイレックス(登録商標)ボトルに仕込み、121℃で30分間オートクレーブ滅菌した。最終培地中のグルコース含有量が1.0%となるように、グルコース水溶液(50w/v%滅菌グルコース水溶液)をオートクレーブ滅菌した培地成分に添加した。次いで、還元状態を維持するために、培地を37℃に急速冷却した。
接種材料であるウェルシュ菌A株107は、凍結乾燥品をロバートソンのクックドミートブロスで再構築することにより調製した。この接種材料を上記培地400mlに加え、全量が4.0Lになるように上記バルク培地に戻した。3.5時間の増殖期間中、5N NaOHを添加して培地のpHを7.0に維持し、温度は37℃に維持した。増殖期後、培地を冷却し、細胞や他の固形物を除去するために遠心分離した。回収した上清に0.6v/v%ホルマリンを加えた。ホルマリンを加えたこの溶液を37℃で18時間培養してトキソイドを生成させた。
上記ウェルシュ菌トキソイド中に含まれる受容体破壊酵素(receptor destroying enzyme:RDE)、すなわちシアリダーゼの力価は以下の手順により測定した。
96ウェル(U底)マイクロプレートを使用し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(pH5.5)で上記トキソイドを2倍段階希釈し、各ウェル当たり25μlの希釈検体を12ウェルに作製した。各ウェルの希釈検体に、洗浄した1%ニワトリ赤血球25μl(pH7.4、PBS中)を添加し、各ウェルの内容物を緩やかに混和した。28℃で1.5時間静置し、赤血球上にシアリダーゼを吸着させた。HAを4ユニット含む、ホルマリンで不活性化したH5N1赤血球凝集素25μlを各ウェルに加え、温度を28℃に維持しながら各内容物を3時間静置した。次いで、ニワトリ赤血球の凝集を抑制したトキソイドの最高希釈倍数を確認して、各ウェルの内容物を評価した。凝集を抑制したトキソイドの最高希釈倍数の逆数を、凝集抑制度(すなわち酵素力価)として記録した。RDEの最高希釈倍数は1024ユニット/25μl(40960ユニット/ml)であった。
上記のように調製したウェルシュ菌トキソイドは、以下の手順により精製・濃縮した。50w/v%硫酸アンモニウムをトキソイドに加えた。生成した沈殿を廃棄し、上清をさらなる処理に使用した。35w/v%硫酸アンモニウムを(飽和するまで)上清に加え、12時間静置した。静置後、混合液は褐色固体を含んでいた。液面に浮いた固体をすくい取って回収した。回収した固体を蒸留水に溶解し、蒸留水で8時間透析して残留硫酸アンモニウムを除去した。次いで、公知の技術に従い、ポリエチレングリコール(PEG)(分子量20,000)を使用して、透析物をさらに透析して濃縮し、−20℃で保存した。上述したRDE力価の測定方法を使用して、上記のように調製した精製・濃縮物質のRDE力価を測定した。
3.キトサンストック液
85%脱アセチル化カニ由来キトサン(NovaMatrix)を、1v/v%酢酸/酢酸ナトリウム緩衝水溶液(pH5.0)に溶解して、0.5w/v%キトサン溶液を調製し、ボトルに入れてしっかりと密封し、121℃で20分間オートクレーブ滅菌した。
85%脱アセチル化カニ由来キトサン(NovaMatrix)を、1v/v%酢酸/酢酸ナトリウム緩衝水溶液(pH5.0)に溶解して、0.5w/v%キトサン溶液を調製し、ボトルに入れてしっかりと密封し、121℃で20分間オートクレーブ滅菌した。
4.ワクチンの調製
上記で調製した不活化ウイルスのHA100,000ユニットに、ウェルシュ菌シアリダーゼ(非精製・非濃縮)調製物3.0ml(RDE:122880ユニット)を添加した。不活化ウイルスと細菌シアリダーゼを4℃で1時間攪拌して混和した。次いで、この混合物に、0.5w/v%滅菌酢酸/酢酸塩緩衝キトサン(pH5.0)を加えて全量30mlとし、4℃で1時間さらに攪拌した。
上記で調製した不活化ウイルスのHA100,000ユニットに、ウェルシュ菌シアリダーゼ(非精製・非濃縮)調製物3.0ml(RDE:122880ユニット)を添加した。不活化ウイルスと細菌シアリダーゼを4℃で1時間攪拌して混和した。次いで、この混合物に、0.5w/v%滅菌酢酸/酢酸塩緩衝キトサン(pH5.0)を加えて全量30mlとし、4℃で1時間さらに攪拌した。
最終的に得られたバルクワクチンの無菌性を確認した後、1滴当たり0.03mlを吐出できる滴下ノズルが組み込まれた30ml滅菌ポリプロピレンボトルに移した。投与量0.03mlには、0.5w/v%滅菌キトサン(pH5.0)中に懸濁したウイルスHA100ユニットと細菌シアリダーゼ(RDE)約122ユニットとが含まれる。
<実施例1>
A.細菌シアリダーゼを含まない単味ワクチンの使用によるIgA応答
血清学的IgA応答は、水性ワクチン1滴(30μl)を片方の鼻孔へ滴下して鼻腔内投与することによりワクチン接種した、一群のニワトリを用いて評価した。水性ワクチンは、(a)発育鶏卵において調製され、次いでホルマリンで不活性化した同種のH5N1と、(b)市販キトサン(85%脱アセチル化)とを含んでいた。投与量30μl当たりの不活化ウイルスレベルは、0.4w/v%の85%脱アセチル化キトサンを結合させたHAが100ユニットであった。このように、本実施例において使用された鼻腔内ワクチンは細菌シアリダーゼを含んでいなかった。このワクチンのpHは5.0であった。
A.細菌シアリダーゼを含まない単味ワクチンの使用によるIgA応答
血清学的IgA応答は、水性ワクチン1滴(30μl)を片方の鼻孔へ滴下して鼻腔内投与することによりワクチン接種した、一群のニワトリを用いて評価した。水性ワクチンは、(a)発育鶏卵において調製され、次いでホルマリンで不活性化した同種のH5N1と、(b)市販キトサン(85%脱アセチル化)とを含んでいた。投与量30μl当たりの不活化ウイルスレベルは、0.4w/v%の85%脱アセチル化キトサンを結合させたHAが100ユニットであった。このように、本実施例において使用された鼻腔内ワクチンは細菌シアリダーゼを含んでいなかった。このワクチンのpHは5.0であった。
合計30羽の9週齢産卵鶏を実験に使用した。これらのニワトリに対する最初のワクチン接種は、鼻腔内ワクチンにより12日齢において実施した。2回目のワクチン接種は、同一のワクチンを使用して、9週齢において実施した。これらのニワトリを、1群当たり5羽のニワトリからなる6群に分けた。9週齢におけるワクチン接種の前に、第I群より気管スワブを採取した。以下に示すように、他の群からの気管スワブは、9週齢におけるワクチン接種後に種々の時期において採取した。
接種前:ワクチン接種前に第I群より気管スワブを採取した。
1:ワクチン接種1週間後に第II群より気管スワブを採取した。
2:ワクチン接種2週間後に第III群より気管スワブを採取した。
3:ワクチン接種3週間後に第IV群より気管スワブを採取した。
4:ワクチン接種4週間後に第V群より気管スワブを採取した。
5:ワクチン接種5週間後に第VI群より気管スワブを採取した。
1:ワクチン接種1週間後に第II群より気管スワブを採取した。
2:ワクチン接種2週間後に第III群より気管スワブを採取した。
3:ワクチン接種3週間後に第IV群より気管スワブを採取した。
4:ワクチン接種4週間後に第V群より気管スワブを採取した。
5:ワクチン接種5週間後に第VI群より気管スワブを採取した。
鼻腔内ワクチン接種したニワトリの粘膜IgA応答は、酵素免疫吸着法(ELISA)を使用して検出した。ELISAで使用した試薬、条件および装置を以下に示す。
<ELISA>
固相抗原 :不活性化AI(H5N1)ウイルス(HA256ユニット)、1:1600
試料 :PBS300μlで希釈した気管スワブ
試料採取 :毎週(ワクチン接種前からワクチン接種5週間後)
ブロックキング :TEN(トリスベース、EDTA、NaCl)+0.2%カゼインで一晩
結合体 :1:1500(ヤギ抗ニワトリIgA−HRP(Bethyl Lab,Inc))
基質 :ABTS
ELISAリーダー:Titertek EX(415nm)
<ELISA>
固相抗原 :不活性化AI(H5N1)ウイルス(HA256ユニット)、1:1600
試料 :PBS300μlで希釈した気管スワブ
試料採取 :毎週(ワクチン接種前からワクチン接種5週間後)
ブロックキング :TEN(トリスベース、EDTA、NaCl)+0.2%カゼインで一晩
結合体 :1:1500(ヤギ抗ニワトリIgA−HRP(Bethyl Lab,Inc))
基質 :ABTS
ELISAリーダー:Titertek EX(415nm)
ELISAによる結果(5試料の平均値)を、405nmにおける吸光度で以下に示す。
第1群(ワクチン接種前) 0.33
第2群(ワクチン接種1週間後)0.44
第3群(ワクチン接種2週間後)0.31
第4群(ワクチン接種3週間後)0.33
第5群(ワクチン接種4週間後)0.37
第6群(ワクチン接種5週間後)0.4
これらの結果を図1のグラフに示す。
第1群(ワクチン接種前) 0.33
第2群(ワクチン接種1週間後)0.44
第3群(ワクチン接種2週間後)0.31
第4群(ワクチン接種3週間後)0.33
第5群(ワクチン接種4週間後)0.37
第6群(ワクチン接種5週間後)0.4
これらの結果を図1のグラフに示す。
これらの結果では、免疫処置を行ったニワトリより採取した鼻腔洗浄液中にIgAが出現したことによって粘膜応答が示され、IgAは、ワクチン接種2週間後から5週間後にかけて漸進的に増加した。ワクチン接種1週間後のIgAの早期産生は、疾患を有する一群にワクチン介入をすることにより見られた、疾患に対する急速な抑制反応であると考えられる。免疫処置を行わなかった群において、恐らく卵内に含まれる母体由来抗体による、バックグラウンドレベルのIgAの存在が認められた。
<実施例2>
本発明のワクチンを鼻腔内接種したニワトリのIgA応答
20週齢のニワトリ24羽(特定病原体不在鶏卵から孵化)を、この実施例において使用した。これらのニワトリを、1群当たり4羽のニワトリからなる6群に分けた。第1群のニワトリにはワクチン接種を行わなかった。他の群のニワトリにはそれぞれ、水性ワクチン1滴(30μl)を片方の鼻孔へ滴下して鼻腔内投与することによりワクチン接種を行った。水性ワクチンは、(a)発育鶏卵において調製され、次いでホルマリンで不活性化し、クロロホルムで分解した同種のH5N1と、(b)市販キトサン(85%脱アセチル化)と、(c)ウェルシュ菌A株107から得られた細菌シアリダーゼとを含んでいた。成分(b)は実施例1で使用したものと同一であった。成分(c)(シアリダーゼ)は、上記した実験方法に従って調製した。この鼻腔内ワクチンは、投与量30μl当たり、0.5w/v%キトサン(85%脱アセチル化)(pH5.0)中に懸濁したウイルスHA100ユニットとウェルシュ菌シアリダーゼ122ユニットとを含んでいた。
本発明のワクチンを鼻腔内接種したニワトリのIgA応答
20週齢のニワトリ24羽(特定病原体不在鶏卵から孵化)を、この実施例において使用した。これらのニワトリを、1群当たり4羽のニワトリからなる6群に分けた。第1群のニワトリにはワクチン接種を行わなかった。他の群のニワトリにはそれぞれ、水性ワクチン1滴(30μl)を片方の鼻孔へ滴下して鼻腔内投与することによりワクチン接種を行った。水性ワクチンは、(a)発育鶏卵において調製され、次いでホルマリンで不活性化し、クロロホルムで分解した同種のH5N1と、(b)市販キトサン(85%脱アセチル化)と、(c)ウェルシュ菌A株107から得られた細菌シアリダーゼとを含んでいた。成分(b)は実施例1で使用したものと同一であった。成分(c)(シアリダーゼ)は、上記した実験方法に従って調製した。この鼻腔内ワクチンは、投与量30μl当たり、0.5w/v%キトサン(85%脱アセチル化)(pH5.0)中に懸濁したウイルスHA100ユニットとウェルシュ菌シアリダーゼ122ユニットとを含んでいた。
ニワトリの気管スワブは、以下のように採取した。
第1群:ワクチン非接種
第2群:ワクチン接種1週間後
第3群:ワクチン接種2週間後
第4群:ワクチン接種3週間後
第5群:ワクチン接種4週間後
第6群:ワクチン接種5週間後
第1群:ワクチン非接種
第2群:ワクチン接種1週間後
第3群:ワクチン接種2週間後
第4群:ワクチン接種3週間後
第5群:ワクチン接種4週間後
第6群:ワクチン接種5週間後
それぞれのスワブの内容物を、PBS0.4ml+抗生物質(カナマイシン−10mg/ml)に溶出し、4℃で保存した。
ニワトリ(ワクチン非接種および鼻腔内ワクチン接種)の粘膜IgA応答は、ELISAによって検出した。ELISAは、Bethyl Laboratories社による鳥類IgA検出のための試験方法に従って行った。ELISAで使用した試薬、条件および装置を以下に示す。
<ELISA手順>
Nunc社製マイクロプレート・マキシソープ、U底96ウェル
固相抗原:スプリットウイルス:HA4ユニットを炭酸塩緩衝液(pH 9.6)で200倍希釈した。
4℃で一晩保存した。
ブロッキングは0.2%カゼインを使用して一晩行った。
粘膜試料は5倍希釈し、室温で1時間攪拌した。
結合体:アフィニティ精製したHRP結合抗IgA(Bethyl Lab)を2000倍希釈し、室温で1時間攪拌した。
基質:ABTS
415nmで測定した。
Nunc社製マイクロプレート・マキシソープ、U底96ウェル
固相抗原:スプリットウイルス:HA4ユニットを炭酸塩緩衝液(pH 9.6)で200倍希釈した。
4℃で一晩保存した。
ブロッキングは0.2%カゼインを使用して一晩行った。
粘膜試料は5倍希釈し、室温で1時間攪拌した。
結合体:アフィニティ精製したHRP結合抗IgA(Bethyl Lab)を2000倍希釈し、室温で1時間攪拌した。
基質:ABTS
415nmで測定した。
ELISAによる結果(平均値)を、405nmで記録した吸光度で以下に示す。
コントロール結合体の吸光度(試料非添加) 0.065
第1群(ワクチン非接種) 0.674
第2群(ワクチン接種1週間後) 0.7325
第3群(ワクチン接種2週間後) 0.8375
第4群(ワクチン接種3週間後) 0.851
第5群(ワクチン接種4週間後) 0.8385
第6群(ワクチン接種5週間後) 0.7910
これらの結果を、図2のグラフに示す。
コントロール結合体の吸光度(試料非添加) 0.065
第1群(ワクチン非接種) 0.674
第2群(ワクチン接種1週間後) 0.7325
第3群(ワクチン接種2週間後) 0.8375
第4群(ワクチン接種3週間後) 0.851
第5群(ワクチン接種4週間後) 0.8385
第6群(ワクチン接種5週間後) 0.7910
これらの結果を、図2のグラフに示す。
細菌シアリダーゼを含む鼻腔内ワクチン1回量30μlを投与したニワトリの免疫応答においては、スプリットウイルスも細菌シアリダーゼも含まない単味ワクチンを実施例1において倍量投与したニワトリよりも、高レベルのIgAが産生された。ELISAにより測定されたように、免疫応答により高レベルの粘膜IgAが産生されたことから、免疫学的に未感作のニワトリに細菌シアリダーゼを含むワクチンを鼻腔内投与することによって、細菌シアリダーゼを含まない鼻腔内ワクチンを使用した場合よりも強力な防御を提供することが示された。
<実施例3>
高病原性(HP)鳥インフルエンザH5N1の大発生が報告・確認された商業養鶏場で調査を行った。すべての事例おいて、致死率は驚くべき高さに達していた。この疾患は、急速に伝播することを特徴とし、過去の事例から100%が死に至ることが知られていた。
高病原性(HP)鳥インフルエンザH5N1の大発生が報告・確認された商業養鶏場で調査を行った。すべての事例おいて、致死率は驚くべき高さに達していた。この疾患は、急速に伝播することを特徴とし、過去の事例から100%が死に至ることが知られていた。
いずれの群のニワトリにもそれぞれ、本発明のワクチン1滴(30μl)を上記のように片方の鼻孔へ滴下して鼻腔内投与することによりワクチン接種を行った。投与量30μlには、0.5w/v%キトサン(pH5.0)中に懸濁した不活性化スプリットウイルスHA100ユニットと細菌シアリダーゼ(RDE)122ユニットとが含まれていた。
1.A農場
鶏齢:20日
AIワクチン接種:非接種
死亡個体数:1日当たり約500
総個体数:25,000
ワクチン介入時の総死亡個体数:約5000
本発明の鼻腔内ワクチンを投与。
3日以内に死亡が止まった。
鶏齢:20日
AIワクチン接種:非接種
死亡個体数:1日当たり約500
総個体数:25,000
ワクチン介入時の総死亡個体数:約5000
本発明の鼻腔内ワクチンを投与。
3日以内に死亡が止まった。
2.B農場
鶏齢:5ヶ月を超える
ワクチン接種歴:5週齢と15週齢に筋肉内(IM)ワクチンH5N1 RE 1(市販ワクチン)を投与
死亡個体数:約500羽/日
疾患大発生時:IM H5N1 RE 1(市販ワクチン)に加えて、本発明の鼻腔内ワクチンを投与した。
死亡は続き、20%が生存した。
鶏齢:5ヶ月を超える
ワクチン接種歴:5週齢と15週齢に筋肉内(IM)ワクチンH5N1 RE 1(市販ワクチン)を投与
死亡個体数:約500羽/日
疾患大発生時:IM H5N1 RE 1(市販ワクチン)に加えて、本発明の鼻腔内ワクチンを投与した。
死亡は続き、20%が生存した。
3.C1農場
鶏齢:6ヶ月
ワクチン接種歴:6週齢と16週齢にH5N2(市販ワクチン)を筋肉内投与
死亡個体数:約1000/日
疾患大発生時:IM H5N2(市販ワクチン)に加えて、本発明の鼻腔内ワクチンを投与した。
死亡は続き、すべての個体が死亡した。
鶏齢:6ヶ月
ワクチン接種歴:6週齢と16週齢にH5N2(市販ワクチン)を筋肉内投与
死亡個体数:約1000/日
疾患大発生時:IM H5N2(市販ワクチン)に加えて、本発明の鼻腔内ワクチンを投与した。
死亡は続き、すべての個体が死亡した。
4.C2農場
鶏齢:4ヶ月未満
ワクチン接種歴:5週齢にIMワクチンH5N2(市販ワクチン)を投与
疾患大発生時:本発明の鼻腔内ワクチンのみを投与
5日以内に死亡が止まった。
鶏齢:4ヶ月未満
ワクチン接種歴:5週齢にIMワクチンH5N2(市販ワクチン)を投与
疾患大発生時:本発明の鼻腔内ワクチンのみを投与
5日以内に死亡が止まった。
考察:
鳥インフルエンザの大発生中に本発明のワクチンの鼻腔内投与によって介入することにより、集約的飼育システムに収容されたあらゆる日齢・週齢の家禽における疾患の経過にめざましい影響を及ぼすことができることが示された。また、上記の介入による結果から、鼻腔内ワクチンを使用することにより、2〜5日以内に疾患を効果的に抑制できることも示された。
*本発明の鼻腔内ワクチンと市販の筋肉内・皮下ワクチンとを同時に投与した場合、疾患は抑制されずに継続した。
*本発明の鼻腔内ワクチンのみを投与した場合、2〜5日以内に疾患を完全に抑制することができ、死亡を止めることができた。
鳥インフルエンザの大発生中に本発明のワクチンの鼻腔内投与によって介入することにより、集約的飼育システムに収容されたあらゆる日齢・週齢の家禽における疾患の経過にめざましい影響を及ぼすことができることが示された。また、上記の介入による結果から、鼻腔内ワクチンを使用することにより、2〜5日以内に疾患を効果的に抑制できることも示された。
*本発明の鼻腔内ワクチンと市販の筋肉内・皮下ワクチンとを同時に投与した場合、疾患は抑制されずに継続した。
*本発明の鼻腔内ワクチンのみを投与した場合、2〜5日以内に疾患を完全に抑制することができ、死亡を止めることができた。
結論:
家禽における高病原性鳥インフルエンザ疾患は超急性である。感染した群おいては、劇的かつ漸進的な致死率の上昇が見られる。このような疾患の大発生において、一部の鳥類は明白な臨床症状を呈さないが、不顕性感染を起こす。
家禽における高病原性鳥インフルエンザ疾患は超急性である。感染した群おいては、劇的かつ漸進的な致死率の上昇が見られる。このような疾患の大発生において、一部の鳥類は明白な臨床症状を呈さないが、不顕性感染を起こす。
上記B農場およびC1農場について述べる。これら農場は、本発明の鼻腔内ワクチンを単独で使用することの有効性について懸念を持っていたため、本発明の鼻腔内ワクチンと同時に市販の筋肉内または皮下ワクチンをすべてのニワトリにワクチン接種することとした。これを実施した結果、不顕性感染したニワトリからウイルスが群全体にわたって伝播した。本発明の鼻腔内ワクチンは、自然感染経路によるウイルスの侵入を防ぐIgAを高レベルに産生する防壁として主に作用する。したがって、多回用量自動注射器の針で物理的に導入されたウイルスに対しては、短期間のうちに効果を奏することは不可能であった。しかしながら、A農場およびC2農場において本発明の鼻腔内ワクチンを単独で介入させた場合、多回用量自動注射器の使用に伴う生きたウイルスの伝播は見られず、2〜5日以内に自然伝播は抑制され、死亡を完全に止めることができた。
したがって、上記の実地試験により、本発明の鼻腔内ワクチンが、疾患の大発生前および発生中に、共通粘膜免疫系に刺激を与え、ウイルス侵入をブロックし、粘膜IgAの産生を誘導することによって、生きたウイルスが感受性の鳥へと感染することを防ぐ第1防御ラインとして有効であることが明らかとなった。
<実施例4>
総飼育羽数60,000羽のうち、6,700羽の産卵鶏(鶏種:ハイセックス)群において、17羽のニワトリの死骸が発見され、異常な死亡が確認され始めた。この異常な死亡が確認された時点で、この群のニワトリはすべて28週齢であった。17羽のニワトリの死因を迅速診断検査によって確認したところ、HP H5N1感染症であることが判明した。感染症の蔓延によりこの群における死亡が増加するのに伴い、この群における産卵数が落ち始めたことが確認された。異常な死亡が最初に確認された日から6日後に、611羽のニワトリが死亡した。同日に、上記の実験方法に記載の方法により調製したワクチンを使用して、その群において生き残ったすべてのニワトリにワクチン接種を行った。ワクチンは、1滴(30μl)を片方の鼻孔に滴下してそれぞれのニワトリに鼻腔内投与した。この鼻腔内ワクチンは、投与量30μl当たり、0.5w/v%水溶性キトサン(85%脱アセチル化)(pH5.0)中に懸濁したウイルスHA100ユニットとウェルシュ菌A株107シアリダーゼ122ユニットとを含んでいた。ワクチン接種後、死亡は減少し始め、ワクチン接種から5日目(異常な死亡が最初に確認されてから11日目)には、感染症によって死亡したニワトリは3羽のみであった。次いで産卵数の増加が確認された。血清中の赤血球凝集抑制(HI)力価は、ニワトリへワクチンを投与してから20日後にピークに達した。
総飼育羽数60,000羽のうち、6,700羽の産卵鶏(鶏種:ハイセックス)群において、17羽のニワトリの死骸が発見され、異常な死亡が確認され始めた。この異常な死亡が確認された時点で、この群のニワトリはすべて28週齢であった。17羽のニワトリの死因を迅速診断検査によって確認したところ、HP H5N1感染症であることが判明した。感染症の蔓延によりこの群における死亡が増加するのに伴い、この群における産卵数が落ち始めたことが確認された。異常な死亡が最初に確認された日から6日後に、611羽のニワトリが死亡した。同日に、上記の実験方法に記載の方法により調製したワクチンを使用して、その群において生き残ったすべてのニワトリにワクチン接種を行った。ワクチンは、1滴(30μl)を片方の鼻孔に滴下してそれぞれのニワトリに鼻腔内投与した。この鼻腔内ワクチンは、投与量30μl当たり、0.5w/v%水溶性キトサン(85%脱アセチル化)(pH5.0)中に懸濁したウイルスHA100ユニットとウェルシュ菌A株107シアリダーゼ122ユニットとを含んでいた。ワクチン接種後、死亡は減少し始め、ワクチン接種から5日目(異常な死亡が最初に確認されてから11日目)には、感染症によって死亡したニワトリは3羽のみであった。次いで産卵数の増加が確認された。血清中の赤血球凝集抑制(HI)力価は、ニワトリへワクチンを投与してから20日後にピークに達した。
ニワトリの主群(当初の総計60,000)への疾患の蔓延を防ぐため、主群の残りのニワトリすべてに鼻腔内ワクチン(上記のワクチン組成物および投与量)を接種した。H5N1感染症による死亡はそれ以上確認されなかった。図3に、ニワトリの死亡個体数、産卵数、および赤血球凝集抑制力価をそれぞれ経時的に示す。
図3の結果は、ワクチン接種後のIgAの早期産生によってある程度説明することができる。しかしながら、ワクチン接種に対するこの応答は、細菌シアリダーゼの重要な効果についても示している。細菌シアリダーゼは、標準的な触媒酵素−基質の形態で、ワクチン接種したニワトリの粘膜上皮上のシアル化された細胞レセプターに作用し、これらのレセプターが侵入してくるウイルスによって認識されないように変化させ、これにより、ウイルス付着およびそれに続くエンドサイトーシスを防ぐという効果を有すると考えられる。A. Gottschalk and P.E. Lind, British Journal of Experimental Pathology, Vol. XXX, No. 2, April 1949、およびG.K. Hirst, J. Exp.Med., 1942, August 1; 76(2), 195-209に報告されているように、ニワトリ赤血球に吸着したインフルエンザは、しばらくするとその機能を保ったまま自然に溶出するが、赤血球は不可逆的に変化し、さらなる吸着に対し抵抗性を示す。これと同じことがシアリダーゼでも起こっていると考えられる。シアリダーゼは、酵素/基質反応が完了するとすぐに放出され、次いでその作用を繰り返し発揮する。したがって、ワクチン接種2日後から5日後にわたる死亡個体数の漸減は、このような作用によるものだと考えられる。一部のニワトリはワクチン接種時に既に不顕性感染していたため、ワクチン接種によってその死亡を防ぐことはできなかった。
ワクチン接種したニワトリから糞便スワブを毎月採取し、卵接種法およびPCRにより評価したが、AIウイルスを単離・検出することはできなかった。したがって、ワクチン接種後にウイルスが全身から除去されたことが示された。
<実施例5>
12日齢においてワクチン接種したニワトリの血清学的応答を調査した。以下の調査では、いずれも、上記の実験方法に従って調製したワクチン組成物を使用してワクチン接種を行った。それぞれのニワトリ(12日齢)に、0.5w/v%キトサン(85%脱アセチル化)(pH5.0)中に懸濁したウイルスHA100ユニットとウェルシュ菌A株107由来のシアリダーゼ122ユニットとを含む水性ワクチン組成物を1回量0.03ml鼻腔内投与した。ワクチン接種は、ニワトリの片方の鼻孔へワクチン組成物を1滴(0.03ml)滴下することにより行った。
12日齢においてワクチン接種したニワトリの血清学的応答を調査した。以下の調査では、いずれも、上記の実験方法に従って調製したワクチン組成物を使用してワクチン接種を行った。それぞれのニワトリ(12日齢)に、0.5w/v%キトサン(85%脱アセチル化)(pH5.0)中に懸濁したウイルスHA100ユニットとウェルシュ菌A株107由来のシアリダーゼ122ユニットとを含む水性ワクチン組成物を1回量0.03ml鼻腔内投与した。ワクチン接種は、ニワトリの片方の鼻孔へワクチン組成物を1滴(0.03ml)滴下することにより行った。
<調査No.1>
13羽のブロイラーに対するワクチン接種を、12日齢において実施した。32日齢において血清試料を採取し、HI AI力価を測定した。結果を以下の表1に示す。
13羽のブロイラーに対するワクチン接種を、12日齢において実施した。32日齢において血清試料を採取し、HI AI力価を測定した。結果を以下の表1に示す。
<調査No.2>
6羽の産卵鶏を12日齢においてワクチン接種した。28日齢において血清試料を採取し、HI AI力価を測定した。結果を以下の表2に示す。
6羽の産卵鶏を12日齢においてワクチン接種した。28日齢において血清試料を採取し、HI AI力価を測定した。結果を以下の表2に示す。
<調査No.3>
30羽の産卵鶏を12日齢においてワクチン接種した。21日齢において血清試料を採取し、HI AI力価を測定した。結果を以下の表3に示す。
30羽の産卵鶏を12日齢においてワクチン接種した。21日齢において血清試料を採取し、HI AI力価を測定した。結果を以下の表3に示す。
表1、表2および表3の結果は、赤血球凝集抑制試験によって測定された体液性IgG抗体応答を示す。本発明のワクチンの主作用は、分泌型IgAを迅速に産生することと、共通粘膜免疫機構(CMIS)に刺激を与えることであるが、上記の調査により体液性抗体も産生されることが示された。
セロコンバージョンしたニワトリの抗体価は、O.I.E.(国際獣疫事務局)によって防御抗体レベルと見なされる許容範囲内(すなわち、2 log2)であった。
12日齢においてワクチン接種されたニワトリが、偶発的にHPAIの自然感染に晒された後に生き残ったことからも、免疫記憶が証明された。
実地試験により、投与から2〜5日後(実施例3、実施例4、および図3)に感染症を抑制できることが、本発明のワクチン組成物の作用に共通する特徴であることが判明した。分泌型IgAの産生によって効果的なブロック作用が奏され、また、実施例5で示されたように、全身性IgGも産生される。しかしながら、これらの作用だけでは、2〜5日目における抑制を完全に説明することはできない。特に、実施例5の表1、表2および表3に示されるように、全身性IgGの産生が低いままでは、無防備なニワトリへの感染を食い止める直接的な効果を発揮できない。さらに、ニワトリが自然あるいは偶発的に既に感染していた、実施例3のB農場およびC1農場においては、IgGの産生が低かったと推測され、疾患を抑制することはできなかった。
シアリダーゼが粘膜上皮上のレセプター部位に結合するだけでなく、リンパ球、特に細胞傷害性T細胞がこれらの変性部位を認識しているはずである。この結果、細胞性免疫システムが確立され、オルソミクソウイルスHP H5N1のようなウイルスの出芽を抑制する主な要因となっていると考えられる。
本発明の鼻腔内ワクチンを使用してワクチン接種を行った12日齢のニワトリにおいては、全身性IgG HI抗体値が(HIが64ユニットを超える)高レベルに達するまでに、ワクチン接種後少なくとも10週間を要することが報告されている。IgGは、粘膜の第1防御ラインをくぐり抜けたウイルスの中和には望ましいが、ウイルスと最初に接触する部位ではほとんど役に立たない。細胞傷害性T細胞は、それほど株特異的ではなく、広範な交差反応を示し、これは、一般に見られる亜型の突然変異体を中和するのに有益でありうる。
この防御細胞性免疫は、本発明のワクチンを家禽に2回鼻腔内投与し、20mしか離れていない隣接した農場からの感染に晒された農場において立証された。ワクチンの鼻腔内接種を受けたこの農場の家禽は死亡しなかったが、近隣の農場では大量の家禽の損失を被ることとなった。実地試験により、他の農場と近接した場所で発生した接触感染は、100%の確率でその隣接施設に及ぶことが確認された。
Claims (25)
- インフルエンザA型ウイルス抗原と細菌シアリダーゼとを含むワクチン組成物。
- 前記細菌シアリダーゼが、緑膿菌、ウェルシュ菌、ショウベイ菌、または悪性水腫菌のシアリダーゼから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
- 前記細菌シアリダーゼが、ウェルシュ菌A型のシアリダーゼであることを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
- 前記細菌シアリダーゼが、ウェルシュ菌A型107のシアリダーゼであることを特徴とする、請求項3に記載の組成物。
- 前記インフルエンザA型ウイルス抗原が、不活性化したウイルス全体を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
- 前記インフルエンザA型ウイルス抗原が、破壊したウイルスを含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
- 前記インフルエンザA型ウイルス抗原が、精製した膜糖タンパク質を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
- 前記インフルエンザA型ウイルス抗原が、インフルエンザA型H5N1亜型であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
- さらにキトサンを含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
- 水分散液または水溶液の形態であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
- 粘膜投与に適合した、請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
- 前記粘膜投与が、鼻腔内投与であることを特徴とする、請求項11に記載の組成物。
- インフルエンザA型ウイルス抗原と細菌シアリダーゼとを含む組成物を被験体に投与することを含む、インフルエンザA型に対する免疫応答を被験体において誘導する方法。
- 前記被験体が、鳥類であることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
- 前記インフルエンザA型ウイルスが、インフルエンザA型H5N1亜型であることを特徴とする、請求項13または14のいずれかに記載の方法。
- 前記細菌シアリダーゼが、ウェルシュ菌シアリダーゼであることを特徴とする、請求項13〜15のいずれか1項に記載の方法。
- 前記ウェルシュ菌が、A型107であることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
- 前記組成物が、さらにキトサンを含むことを特徴とする、請求項13〜17のいずれか1項に記載の方法。
- 前記組成物が、鼻腔投与に適合しており、被験体に鼻腔投与されることを特徴とする、請求項13〜18のいずれか1項に記載の方法。
- 請求項12に記載の組成物を家禽に鼻腔投与することを含む、家禽にワクチン接種を行う方法。
- インフルエンザA型ウイルス抗原を含むワクチン組成物の作用強度を高めるための細菌シアリダーゼの使用。
- 前記ワクチン組成物が、さらにキトサンを含むことを特徴とする、請求項21に記載の使用。
- 前記ワクチンが、鼻腔投与に適合していることを特徴とする、請求項21または22のいずれかに記載の使用。
- 前記細菌シアリダーゼが、ウェルシュ菌A型由来のシアリダーゼであることを特徴とする、請求項21〜23のいずれか1項に記載の方法。
- 前記インフルエンザA型ウイルス抗原が、高病原性H5N1亜型ウイルス由来の抗原であることを特徴とする、請求項21〜24のいずれか1項に記載の使用。
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