JP2013076344A - 軸流圧縮機 - Google Patents

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Abstract

【課題】WACを実施しない場合の性能維持とWAC時の信頼性確保を両立しつつ、WAC量を増加させることが可能な軸流圧縮機を提供する。
【解決手段】回転軸を中心に回転する動翼と静止した静翼によって構成される段を複数備え、前記回転軸に平行な方向に流入空気を圧縮する軸流圧縮機において、前記軸流圧縮機の流入部に液滴を噴霧して冷却する第1の噴霧冷却器を設け、前記圧縮機内で最も流入部に近い段よりも下流側に、少なくとも1つ以上の第2の噴霧冷却器を設け、前記第1の噴霧冷却器または第2の噴霧冷却器のうち少なくとも一つを、水と高温高圧空気の混合によって液滴を生成する2流体ノズルとし、前記第2の噴霧冷却器より下流側の段から抽気した空気を、前記高温高圧空気として前記2流体ノズルに供給するように構成する。
【選択図】 図4

Description

本発明は、空気を作動流体として回転軸方向に圧縮する軸流圧縮機のうち、特に圧縮機上流の吸気部に噴霧冷却器を用いた軸流圧縮機に関するものである。
近年、ガスタービン圧縮機入口の吸気ダクト部に微細液滴を噴霧し、液滴の蒸発によって吸気を冷却して性能向上を図る技術(Water Atomization Cooling,WAC)が研究されている。WACは主に夏場の出力改善策として、さまざまな圧縮機に適用されている。
WACによる性能向上効果は2種類に大別される。1つ目は噴霧した水が吸気部で蒸発することによる吸気冷却効果、2つ目は噴霧水が圧縮機内部まで流入してから蒸発することによる中間冷却効果である。噴霧液滴の蒸発量が少ない場合は吸気冷却効果のみが得られるが、蒸発量が一定値以上となると吸気冷却効果と中間冷却効果の双方が得られる。このときの蒸発量の閾値は圧縮機吸込み質量空気流量の約1%である。
現在の噴霧冷却では、噴霧量を1%未満にして吸気冷却効果のみを狙うのが主流である。これは中間冷却効果も狙って噴霧量を増やすと、圧縮機内部流れ場の変化により図1に示したチョークマージンやサージマージンが変化し、最終的にチョーク、サージ、旋回失速といった圧縮機性能に悪影響を及ぼす現象が起きる可能性があるからである。このときの圧縮機の負荷分布の比較と流れ場の模式図を図2に示す。図2は、噴霧を行った場合の作動媒体の流入方向及び負荷分布を破線で示し、噴霧を行わなかった場合の流入方向及び負荷分布を実線で示した図である。
非特許文献1などによれば、蒸発の起きる圧縮機前段側では負荷が減少し、後段側では負荷が上昇する。このため前段側では流入角が減少してチョーク側で作動し、後段側では流入角が増加してサージ側で動作することになる。ここから、吸気噴霧によって中間冷却効果も同時に得るためには、蒸発位置と流れ場の変化を予測し、圧縮機翼の失速マージンとチョークマージンが減少しないようにする必要があることが分かる。
ここでWACによる吸気冷却効果と中間冷却効果を同時に得ることを目的として、特許文献1では噴霧量を増やした場合の前段側と後段側の改造方法が提案されている。特許文献1では吸気噴霧量1%以上の圧縮機に対して、前段側の翼の取付け角を減らして後段側の翼の取付け角を増やす、もしくは内径と外径を同じだけ増加させた後に後段側の外径を下げるという改造を実施している。この改造によって、後段側の翼に対する入射角(翼に対する迎え角)の増加を抑制できるので、サージや旋回失速が発生しにくくなる。同時に圧縮機前段側の取付け角を減少させることで、前段側の翼に対する入射角が減少しにくくなり、翼形損失の増加およびチョークを抑制することが可能となる。
一方、WACによって吸気冷却効果と中間冷却効果を同時に得ようとする場合、圧縮機内部流れ場の変化以外にも液滴の衝突によるエロージョンや噴霧水による腐食、噴霧水中の汚れの付着等によって信頼性が低下する可能性がある。このうち特にエロージョンは水質に起因せず発生するため、WACの長期信頼性を確保する上で大きな障害となる。エロージョンは噴霧液滴径が小さいほど発生しにくくなるため、様々な液滴微細化方法が検討されている。例えば特許文献2によれば、液滴微粒化を減圧沸騰によって達成し、減圧沸騰に必要な熱エネルギーを圧縮機通過後の圧縮空気から供給するシステムが提案されている。
特開2008−190335号公報 特開2008−175149号公報
ASME GT2005−69144
特許文献1に示す改造方法を実施することでWAC実施時の圧縮機内部の負荷および入射角の変化に対し、翼を流れに追随させることができるため、WAC時にサージや旋回失速といった現象が発生する可能性を低減させることが可能である。しかし、翼の取付角や流路形状(ガスパス)そのものを変更するため、WACを実施しない場合に翼が流れに追随せず、サージや旋回失速といった不安定現象は発生しないものの、損失が増加する傾向がある。
つまり、WACを実施しない場合の性能維持とWAC時の信頼性確保の両立が難しい。対策として翼の取付角を可変とするような改造を実施する(すなわち、翼を可変翼とする)ことが考えられるが、これは従来可変機構としていない後段側の翼に可変機構を取り付けることになり、大幅なコスト増加を招くことが予想されるため現実的ではない。
一方、液滴を微粒化すると、前述したエロージョン低減の効果だけでなく蒸発促進による噴霧量増加が期待できる。ただし特許文献2のように液滴噴霧位置が圧縮機流入部である場合、微粒化によって前段側での蒸発量が増加する可能性が高い。このため、前段での負荷低減および後段での負荷増加がより顕著になり、かえってWAC時の噴霧可能量が低下するおそれがある。
そこで本発明の目的は、WACを実施しない場合の性能維持とWAC時の信頼性確保を両立しつつ、WAC量を増加させることが可能な軸流圧縮機を提供することにある。
本発明は、回転軸を中心に回転する動翼と静止した静翼によって構成される段を複数備え、前記回転軸に平行な方向に流入空気を圧縮する軸流圧縮機において、前記軸流圧縮機の流入部に液滴を噴霧して冷却する第1の噴霧冷却器を設け、かつ前記圧縮機内で最も流入部に近い段より下流側に位置する段と段の間の、少なくとも1箇所以上の段間に第2の噴霧冷却器を設けたことを特徴としている。その際前記第1の噴霧冷却器または第2の噴霧冷却器としては、水と高温高圧空気の混合によって液滴を生成する2流体ノズルか、高圧水の噴射によって液滴を生成する1流体ノズルのいずれかを用いるのが望ましい。噴霧冷却器として2流体ノズルを用いる場合、高温高圧空気として前記第2の噴霧冷却器より下流側の段から抽気した空気を用い、かつその抽気空気を前記軸流圧縮機の外周側に設けた抽気孔から供給するのが望ましい。一方噴霧冷却器として1流体ノズルを用いる場合、ノズルに供給される高圧水の供給経路中には高圧水を加熱する加熱装置を設けられており、かつノズルから主流中に噴出された液滴の飽和蒸気圧が、主流圧力よりも大きくなっているのが望ましい。
また本発明の軸流圧縮機は、前記第2の噴霧冷却器を設置する箇所における動翼と静翼間、もしくは静翼と動翼間の軸方向距離が、他の翼の軸方向距離よりも大きいことを特徴としている。前記第2の噴霧冷却器の具体的な設置方法としては、前記軸流圧縮機外周の壁面に設けられた孔から前記第2の噴霧冷却器に対して半径方向に噴霧水を供給する供給経路を備え、かつ前記第2の噴霧冷却器の噴霧方向が軸方向となる構造とするのが望ましい。もしくは、前記軸流圧縮機外周壁面には前記第2の噴霧冷却器に対して半径方向に噴霧水を供給する供給経路を設けるための、前記第2の噴霧冷却器の半径方向断面積より断面積の大きい空間が設けられており、かつ前記第2の噴霧冷却器の噴霧方向が半径方向であり、かつ前記第2の噴霧冷却器が前記空間内に存在する構造となっているのが望ましい。
また本発明の軸流圧縮機は、前記第2の噴霧冷却器が前記圧縮機段中の動翼と静翼の間に設置されることを特徴としている。
本発明によれば、前記第2の噴霧冷却器によって圧縮機中間段〜後段の蒸発量が増加するため、圧縮機前段から後段にかけての蒸発量分布が平滑化され、WAC時のサージや旋回失速、チョークを抑制することが可能となる。
特に前記第2の噴霧冷却器として水と高温高圧空気の混合によって液滴を生成する2流体ノズルを用いた場合、圧縮機外周側に設けた抽気孔を介して前記第2の噴霧冷却器より下流側の段から抽気した高温高圧空気を供給することで、前記抽気孔近傍で発達した境界層を吸込むことができる。この境界層吸込みにより動翼先端で生じる漏れ流れ損失や静翼根元と圧縮機外周ケーシングとの干渉によって生じる二次流れ損失を低減することが可能となる。これらの損失の低減は性能向上だけでなくサージや旋回失速といった現象の抑制にもつながるため、結果としてWAC量増加時の性能と信頼性をさらに向上させることができる。
また前記第2の噴霧冷却器として高圧水の噴射によって液滴を生成する1流体ノズルで、かつノズルに供給される高圧水を加熱することでノズルから主流中に噴出された液滴の飽和蒸気圧が主流圧力よりも大きくなっている場合、ノズルから噴霧された液滴が減圧沸騰を起こし、微粒化が促進される。微粒化によって液滴の蒸発時間は短くなるため、前記第2の噴霧冷却器からの噴霧量を増加させることができる。すなわち、さらなるWAC量の増加による圧縮機性能向上が見込まれる。
圧縮機翼の失速マージン、チョークマージンに関する説明図。 圧縮機の負荷分布と流入角に関する説明図。 本発明の第一実施例に関する概略のサイクル図。 本発明の第一実施例に関する軸流圧縮機の子午面断面の概略図。 本発明の第一実施例に関する軸流圧縮機内部の負荷分布の模式図。 本発明の第二実施例に関する軸流圧縮機の子午面断面の概略図。 本発明の第二実施例に関する軸流圧縮機内部の負荷分布の模式図。 本発明の第三実施例に関する軸流圧縮機の子午面断面の概略図。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図3に本実施例における軸流圧縮機を含む概略のサイクル図を、図4には軸流圧縮機の子午面断面の概略図を示す。本実施例では軸流圧縮機としてガスタービン用の軸流圧縮機を想定しているが、他の用途に用いられる軸流圧縮機に対しても本実施例は適用可能である。
まず、図3を用いて概略のサイクルについて説明する。図3に示すように本実施例のガスタービンシステムには空気を圧縮する軸流圧縮機1と、圧縮空気と燃料を混合して燃焼させる燃焼器2と、高温の燃焼ガスを用いて軸4を駆動するタービン3が設けられている。軸流圧縮機1とタービン3は軸4を介して発電機5と接続されている。本実施例では、タービン3および軸4の形式としてはパワータービンのない1軸式ガスタービンを想定しているが、パワータービンを配した2軸式ガスタービンであっても問題ない。またガスタービンの仕様として、回転数として約7,000rpmを、圧力比として約15を想定している。さらに、出力としては30MW程度を想定しているが、一般的な産業用ガスタービンの出力帯である10MW以上であれば本想定と異なっていても問題ない。
軸流圧縮機1の流入部には第1の噴霧冷却器6が、軸流圧縮機1の最上流段より下流側の段間には第2の噴霧冷却器7が設けられており、それぞれ水タンク8から水が供給されている。本実施例では水タンク8から第1の噴霧冷却器6と第2の噴霧冷却器7の双方に高圧水を供給しているが、それぞれ独立した水タンクから高圧水を供給しても良い。また本実施例では最上流段より下流側の段間の1箇所に第2の噴霧冷却器7を設置しているが、1箇所以上の段間に対して噴霧冷却器が設置されていても良い。第1の噴霧冷却器6からの噴霧量は圧縮機吸込み流量の約3%、第2の噴霧冷却器7からの噴霧量は圧縮機吸込み流量の約1%を想定している。さらに第1の噴霧冷却器6および第2の噴霧冷却器7における平均噴霧粒径は約15μmを想定している。
図3において、本実施例では第1の噴霧冷却器6および第2の噴霧冷却器7として水と高温高圧空気の混合によって微細な液滴を生成する2流体ノズルを用いている。このため、各噴霧冷却器に空気を供給する供給配管61および71が設けられている。この供給配管61および71の他端は軸流圧縮機1の下流側に接続されており、圧縮されて高温・高圧となった空気を各噴霧冷却器に供給している。なお供給配管61および71の空気流量はそれぞれ圧縮機吸込み流量の1.5%、0.5%を想定している。
次に、図4を用いて軸流圧縮機1の内部構造について説明する。軸流圧縮機1のガスパスはロータ51およびケーシング52によって構成される。流路内には入口案内翼21、初段動翼22、初段静翼23、前段動翼24、前段静翼25、中間段動翼26、中間段静翼27、後段動翼28、後段静翼29、最終段動翼30、最終段静翼31、出口案内翼32が設置される。図4では前段、中間段、後段の代表としてそれぞれ1段ずつ動静翼を図示しているが、もちろん複数段であっても問題ない。また、前段、中間段、後段の区別には段数などの特別な定義があるわけではないので、何段ずつでも問題ない。さらに出口案内翼32を本実施例では1段としているが、1段以上であっても問題ない。
また図4において、本実施例における第1の噴霧冷却器6は入口案内翼21の上流側に、第2の噴霧冷却器7は中間段静翼27と後段動翼28の間に設置されている。このうち第2の噴霧冷却器7の設置位置は、初段静翼23より下流側で最終段動翼30より上流側であればどの箇所にあっても問題ない。噴霧冷却器6および7はそれぞれ水と空気を供給する供給経路62、72とノズル部63、73に分けられる。本実施例では噴霧冷却器7の供給経路72は管状で、圧縮機ケーシング52に開けられた孔から半径方向に挿入されている。供給経路72は流路中にまで突き出ており、供給経路72の先に取り付けられたノズル部73から液滴が軸方向に噴霧される。なお、本実施例では第1の噴霧冷却器6の設置位置を入口案内翼21の上流とし、供給経路62が軸流圧縮機1の流路内に存在しているが、噴霧冷却器6の設置位置は軸流圧縮機1より上流の吸気ダクト部や入口プレナム部(図示せず)であっても問題ない。
さらに図4の圧縮機ケーシング52において、最終段動翼30が存在する位置にスリット53が設けられている。このスリット53はそれぞれ供給配管61および71に接続されており、スリット53から高圧空気を抽気して噴霧冷却器6、7に供給する構造になっている。本実施例では最も圧力・温度が高く、かつWACによる負荷増加の影響を最も受けやすい最終段動翼部にスリット53を設けているが、噴霧冷却器6、7に用いる2流体ノズルの条件に見合う高圧・高温空気を供給できれば他の箇所に設置しても問題ない。
次に図3および図4において、作動流体の流れは以下の通りとなる。まず作動流体である空気に対し、軸流圧縮機1の上流側で第1の噴霧冷却器6から水が噴霧される。噴霧水のうちの一部が蒸発し、液滴を伴う過飽和空気となって軸流圧縮機1に流入する。軸流圧縮機1に流入した過飽和空気の温度と圧力は圧縮機内で上昇するため、過飽和空気中の液滴は圧縮機通過時に蒸発する。この蒸発は主に初段動翼22〜中間段静翼27の間で行われる。圧縮機中間段静翼27を通過した湿り空気に対し、中間段静翼27と後段動翼28の間に設置された第2の噴霧冷却器7から水が噴霧される。この噴霧水および湿り空気中の残存液滴が圧縮機後段で蒸発し、圧縮機内部で蒸発が完了する。圧縮機後段中の高温空気は一部が供給配管61および71から抽気されて第1の噴霧冷却器6および第2の噴霧冷却器7に供給されるが、残りは燃焼器2へと流入する。燃焼器2へと流入した高温空気が燃焼器2で燃料と混合し、燃焼することよって高温燃焼ガスが生成される。燃焼ガスはタービン3を通過する際に軸4を駆動し、排気ガスとして外部に放出される。
本実施例におけるガスタービンシステムの具体的な動作は以下のようになる。作動流体である空気は、軸流圧縮機1の上流側で圧力約0.1MPa、温度約15℃、相対湿度60%の状態で存在する。この空気に対し、第1の噴霧冷却器6から水が噴霧される。噴霧水の条件は、流量が圧縮機吸込み流量の約3%、圧力約0.5MPa、温度約15℃である。噴霧水の一部が蒸発し、液滴を伴う過飽和空気となって軸流圧縮機1へと流入する。このときの過飽和空気の温度は約11℃、相対湿度は95%以上である。軸流圧縮機1に流入した液滴を伴う過飽和空気は、液滴蒸発によって冷却されつつ圧縮される。この蒸発の大半は初段動翼22〜中間段静翼27の間で行われ、圧縮機後段動翼28に流入する際の作動流体の圧力と温度はそれぞれ約1.0MPa、約260℃となる。さらにこの作動流体に対し第2の噴霧冷却器によって液滴が噴霧され、圧縮機後段動翼28〜出口案内翼32間で蒸発する。この蒸発によって、軸流圧縮機1の出口における作動流体の圧力は約1.5MPa、温度は約310℃になり、燃焼器2へと流入する。燃焼器で温度約1300℃の燃焼ガスとなった後、タービン3で軸4を駆動することで、最終的には約550℃の排気ガスとして放出される。なお圧縮機ケーシング52の、最終段動翼30が存在する位置に設けられたスリット53から作動流体の一部が抽気されている。この抽気された流体は供給経路61および71を介し、第1の噴霧冷却器6と第2の噴霧冷却器7に供給されている。この際の流体圧力と温度は、それぞれ約1.4MPa、約300℃である。
ここで、本実施例における利点について図5を用いて説明する。図5は軸流圧縮機1内部の負荷分布の模式図である。図5において、液滴噴霧が第1の噴霧冷却器6のみから行われた場合、WAC時の蒸発量は圧縮機1の前段〜中間段に集中するため、圧縮機前段の負荷が大きく減少し、後段の負荷が大きく増加する傾向にある。一方、本実施例では第2の噴霧冷却器からも液滴噴霧が行われるため、WAC時の蒸発量が平滑化され、前段の負荷減少と後段の負荷上昇が抑制される傾向にある。このため、後段の負荷上昇に伴うサージやストール、前段の負荷減少に伴うチョークを抑制することが可能となる。
さらに、圧縮機ケーシング52の、最終段動翼30が存在する位置に設けられたスリット53から噴霧冷却器6、7に必要な高圧高温空気を抽気しているため、最終段動翼30の外周側の境界層が抽気される。一般に圧縮機後段側では、作動流体と壁面との干渉により内周や外周壁近傍で厚い境界層が形成される。翼負荷が大きいと、この領域で境界層が剥離し、大きな二次流れを形成する。このような二次流れは、翼の損失が増加するだけでなく、サージやストールなどの不安定現象を引き起こす要因にもなる。さらに動翼の外周側では動翼と外周壁によって翼端漏れ渦が形成されるので、さらに不安定現象が起こりやすい状況となっている。これに対し、本実施例のようにスリット53を設けて外周側の境界層を抽気することで、前述の二次流れや翼端漏れ渦が抑制されるため、サージやストールが発生するのをさらに抑制できると考えられる。
またWACを実施しない場合の性能についても、特許文献1と異なり翼の取付角を変えるわけではない。このため、噴霧冷却器6、7からの液滴噴霧を停止してWACを実施しない場合にも、性能低下は起こらない。
以上をまとめると、本実施例の利点は噴霧量を1%以上として吸気冷却効果と中間冷却効果を同時に得つつ、中間冷却効果を得る際に発生する圧縮機内負荷分布変化によるサージやストール、チョークの可能性を低減することができる。かつ、特許文献1に比べ、WACを実施しない場合の性能低下が発生しない。つまり本実施例により、WACを実施しない場合の性能維持とWAC時の信頼性確保を両立しつつ、WAC量を増加させることが可能になったといえる。
図6に本実施例における軸流圧縮機子午面断面の概略図を示す。なお図4と重複する機器については番号を同一としている。実施例1との相違は、噴霧冷却器6および7として1流体ノズルを用い、かつ1流体ノズルに供給される水を加熱装置9によって加熱している点である。1流体ノズルを用いることで、図4のように2流体ノズルを用いる場合に必要な空気系統の供給経路61、71および、高温空気を抽気するスリット53が不要となる。
また図6では加熱装置9を用いてノズルへの供給水を加熱している。これは1流体ノズルの供給水温度を増加させることで、ノズル噴霧時に液滴の減圧沸騰が起こり、微粒化が促進されるためである。本実施例では加熱装置9によって供給水温度を150℃程度まで増加させることを想定している。給水圧力は約7MPaを想定しており、加熱によって液滴径が約20μmから10μm程度まで減少することを想定している。つまり、本実施例における噴霧液滴径は実施例1に比べて小さくなると考えられる。
一般に液滴径の減少によって、液滴の蒸発時間は減少する。本実施例において特に影響が大きいのは、第2の噴霧冷却器7からの噴霧量を実施例1に比べて増加させることができる点である。このときの軸流圧縮機1内部の負荷分布の模式図を図7に示す。本実施例では噴霧液滴径が減少するため、より噴霧冷却器に近い側で蒸発量が増加する傾向にある。特に噴霧量を増加させた第2の噴霧冷却器7の下流側の蒸発量が増加するため、後段側の翼負荷を実施例1に比べて減少させることができると考えられる。一方、圧縮機前段側の蒸発量が増加するため、前段側の流入角がさらに減少し、チョークが発生する可能性はあると考えられる。ただし一般的に、チョークはサージや旋回失速に比べ、翼やガスタービン本体の大きな損傷につながる可能性は低く、本実施例を適用したことで信頼性が損なわれる可能性は低いと考えられる。
また、本実施例は1流体ノズルを用いているので、高温抽気スリット53や空気供給経路61、71が存在しない。このため同一吸気流量に対するタービン流量(圧縮機出口流量)は1流体ノズルの方が多くなる。よって1流体ノズルを用いた方が、実施例1のように2流体ノズルを用いた場合に比べ、ガスタービン出力、効率は増加する傾向にあると考えられる。一方、実施例1に記載した圧縮空気抽気による翼面境界層の吸込み効果は得られないため、二次流れや翼端漏れ渦によってサージやストールが発生する可能性は実施例1より高くなると考えられる。
さらに本実施例では実施例1より液滴径が小さいため、圧縮機翼に対するエロージョンの可能性が低減する。特に噴霧液滴が翼面衝突時にすぐ蒸発せず、かつ回転速度の大きい前段側動翼における信頼性が増加すると考えられる。
ただし一般的に1流体ノズルの方が噴霧ノズル内の最小断面積が小さく、目詰まりを起こしやすい。このため、メンテナンス性は2流体ノズルを用いている実施例1に比べて悪化すると考えられる。
以上をまとめると、本実施例は実施例1に比べ、噴霧液滴径の減少によって後段側での噴霧量増加とエロージョンに関する信頼性向上を達成できる。また1流体ノズルを用いているため、ガスタービン出力、効率をさらに増加させることが可能となる。ただし前段側のチョークや後段側の二次流れや翼端漏れ渦は実施例1より発生しやすくなるため、圧縮機翼の非定常空気力に関する健全性は実施例1より低下することが予想される。
図8に本実施例における軸流圧縮機子午面断面の概略図を示す。なお、図4と重複する機器については番号を同一としている。実施例1との相違は、第2の噴霧冷却器7の設置位置と噴霧方向である。本実施例では、圧縮機ケーシング52の壁面に第2の噴霧冷却器7に対して半径方向に噴霧水を供給する供給経路72およびノズル部73を設けるための、第2の噴霧冷却器7の半径方向断面積より断面積の大きい空間74が設けられている。また第2の噴霧冷却器7の噴霧方向は圧縮機の半径方向であり、かつ第2の噴霧冷却器7が前記空間74内に存在する構造となっている。また、第2の噴霧冷却器7の設置位置は圧縮機後段動翼28と圧縮機後段静翼29の間にある。
本実施例のように第2の噴霧冷却器7を設置した場合、第2の噴霧冷却器7の供給経路72やノズル部73を圧縮機流路に突き出すことなく噴霧液滴を供給することができる。実施例1のような圧縮機流路に供給経路72やノズル部73を突き出す構造の場合、ケーシングから供給経路72の半径方向最小位置までの長さが大きくなるため、供給経路72に大きな力がかかるだけでなく、流れとのカルマン渦励振の可能性も高くなる。特に圧縮機後段側の流れは流速が大きく(約200m/s)密度も高いので、上記のリスクを回避するためには供給経路72の構造が成立するよう、第2の噴霧冷却器7を大型化することが必要になる。そのため、実施例1の構造だとコストの増加や圧縮機軸長の増加といった問題が懸念される。
一方、本実施例では、ケーシングから供給経路72の半径方向最小位置までの長さが短くなり、かつ流れの流速が小さくなる(突き出し部が空間75内部に限定されているため)ので、上記のようなリスクは小さく、噴霧冷却器7を小型化できる。
なお、本実施例のような構造とすると液滴の噴霧方向は半径方向となる。この噴霧方向の場合、噴霧液滴がロータに付着して液膜を形成し、ドレンや2次液滴になる可能性がある。しかし、噴霧位置が温度の高い圧縮機後段側のため、付着液滴は短時間に蒸発を完了すると考えられる。よって、上記の点はあまり問題にならないと予想される。一方、実施例1のように軸方向に噴霧する場合に比べると液滴の滞留時間が増加しやすくなるので、実施例1より噴霧量を増加させることができる可能性がある。なお噴霧方向について、本実施例では半径方向としているが、傾きをつけた場合も同様の効果が得られると考えられる。
またノズル設置位置は、噴霧液滴の翼面への衝突を考慮すると本実施例のように圧縮機後段動翼28と圧縮機後段静翼29の間とする方が良い。というのも、液滴の初期噴霧速度や作動流体の流速に比べて動翼周速の方が大きいため、噴霧直後に動翼が存在するとより高速で液滴が翼面に衝突することになり、エロージョンの可能性が増加するためである。
以上をまとめると、本実施例は実施例1に比べ、第2の噴霧冷却器の信頼性が高く、小型化による低コスト化を達成できる。また噴霧液滴量も増加させることが可能なため、さらなる性能向上が可能となる。さらにエロージョンによる翼信頼性低下も抑制できるという利点がある。
なお、本実施例におけるノズル設置位置は、もちろん実施例2のように第2の噴霧冷却器7に1流体ノズルを用いた場合にも適用可能である。この場合も、本実施例と同様の効果が得られると考えられる。
本発明は、作動流体を圧縮する軸流圧縮機に対して適用可能である。具体的な適用先としては、本発明の実施例で示したガスタービンや航空用エンジン、LNG圧縮用圧縮機などが挙げられる。
1 軸流圧縮機
2 燃焼器
3 タービン
4 軸
5 発電機
6、7 噴霧冷却器
8 水タンク
9 加熱装置
21 入口案内翼
22、24、26、28、30 圧縮機動翼
23、25、27、29、31 圧縮機静翼
32 出口案内翼
51 圧縮機ロータ
52 圧縮機ケーシング
53 スリット
61、71 供給配管
62、72 供給経路
63、73 ノズル部
74 空間

Claims (8)

  1. 回転軸を中心に回転する動翼と静止した静翼によって構成される段を複数備え、前記回転軸に平行な方向に流入空気を圧縮する軸流圧縮機において、
    前記軸流圧縮機の流入部に液滴を噴霧して冷却する第1の噴霧冷却器を有し、
    前記圧縮機内で最も流入部に近い段よりも下流側に、少なくとも1つ以上の第2の噴霧冷却器を有し、
    前記第1の噴霧冷却器または第2の噴霧冷却器のうち少なくとも一つに、水と高温高圧空気の混合によって液滴を生成する2流体ノズルを備え、
    前記第2の噴霧冷却器より下流側の段から抽気した空気を、前記高温高圧空気として前記2流体ノズルに供給するように構成されたことを特徴とする軸流圧縮機。
  2. 請求項1に記載の軸流圧縮機において、
    前記軸流圧縮機の外周側に抽気孔を有し、該抽気孔から抽気した空気を前記高温高圧空気として前記2流体ノズルに供給することを特徴とする軸流圧縮機。
  3. 請求項1に記載の軸流圧縮機において、
    前記第1の噴霧冷却器または第2の噴霧冷却器のうち少なくとも一つは、高圧水の噴射によって液滴を生成する1流体ノズルであって、
    前記1流体ノズルに供給される高圧水の供給経路中に高圧水を加熱する加熱装置を設けることを特徴とする軸流圧縮機。
  4. 請求項3に記載の軸流圧縮機において、
    前記1流体ノズルから主流中に噴出された液滴の飽和蒸気圧が、主流圧力よりも大きいことを特徴とする軸流圧縮機。
  5. 請求項1から4のいずれかに記載の軸流圧縮機において、
    前記第2の噴霧冷却器を設置する動翼と静翼間、もしくは静翼と動翼間の軸方向距離が、他の翼間の軸方向距離よりも大きくなるように形成されていることを特徴とする軸流圧縮機。
  6. 請求項5に記載の軸流圧縮機において、
    前記第2の噴霧冷却器は、前記軸流圧縮機外周の壁面に設けられた孔から、前記軸流圧縮機の半径方向に噴霧水を供給する供給経路を備え、前記第2の噴霧冷却器の噴霧方向が軸方向であることを特徴とする軸流圧縮機。
  7. 請求項5に記載の軸流圧縮機において、
    前記軸流圧縮機外周壁面には、前記第2の噴霧冷却器に対して半径方向に噴霧水を供給するための、前記第2の噴霧冷却器の半径方向についての断面積より同方向についての断面積の大きい空間が形成されており、
    前記第2の噴霧冷却器の噴霧方向が前記軸流圧縮機の半径方向であり、
    前記第2の噴霧冷却器が前記空間内に存在することを特徴とする軸流圧縮機。
  8. 請求項1から7のいずれかに記載の軸流圧縮機において、前記第2の噴霧冷却器が前記圧縮機段中の動翼と静翼の間に設置されることを特徴とする軸流圧縮機。
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