JP2013192547A - メタン生産方法 - Google Patents

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信彦 山下
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Abstract

【課題】太陽光を用いた微生物反応によって二酸化炭素をメタンに変換し、メタンを生産するとともに、二酸化炭素ガスを固定化すること。
【解決手段】アンモニウム塩を含有せず、還元剤としてLシステイン塩酸塩を含有する培地により共培養可能な紅色非硫黄細菌と水素資化性メタン生成菌とを、二酸化炭素含有ガス存在下で共培養してメタンガスを得る。
【選択図】図1

Description

本発明は、メタン生産方法に関し、具体的には大気中の二酸化炭素をメタンに変換し、メタンを生産するとともに、二酸化炭素ガスを固定化する技術に関する。
地球温暖化の主たる原因となる二酸化炭素等の温室効果ガスは、化石燃料消費量の増大に伴い、大気中の濃度が増加している。排出を抑制せずに現在の消費を続けると、100年後には地球上の平均気温が2.4℃〜6.4℃上昇し、異常気象の発生、生体系の混乱や食料生産の変化、海面の上昇による陸地の減少等、人々の生活に深刻な影響がでることが予想されるため、大気中の二酸化炭素濃度の低減を目的として、火力発電所などから排出される二酸化炭素の排出抑制とともに大気中の二酸化炭素を除去することが課題となっている。
特許文献1には、太陽エネルギーで水を電気分解して水素を発生させ、生成した水素と炭酸ガスとを水素資化性メタン生成菌に供給して培養し、そこから排出されるメタンを燃焼させてエネルギーを得る方法が記載されている。
特許文献2には、光合成細菌とメタン生成菌を含むメタン発酵の共培養に関する記載がある。ここでは、メタン発酵槽内に嫌気性の光合成細菌を増殖させ、窒素化合物やリンの回収効率を改善する方法が述べられている。
特許文献1によれば、外部より水素と炭酸ガスの供給下でメタン生成菌を培養すると、メタン生成菌の持つ生物反応によって炭酸ガスをメタンに変換できる。しかしながら、特許文献1では水素の供給を外部の太陽光による水の電気分解装置に依存しており酸素も同時に発生するため、絶対嫌気性のメタン生成菌の反応においては酸素の分離プロセスが必要である。このため、全体としては反応設備が複雑となりコストアップが避けられない。
一方、特許文献2によれば、有機性廃水または有機性廃棄物のメタン発酵において、光合成細菌が発酵槽内で増殖できることが示されている。このことは、光合成細菌とメタン生成菌が共培養可能であることを示唆しているが、特許文献2はメタン発酵における窒素化合物とリンの回収効率を光合成細菌の増殖によって改善されることを目的としており、炭酸ガスのメタン化の方法、条件等については触れられていない。
特開平06−169783号公報 特開2000−153292号公報
つまり、太陽光を用いた微生物反応によって炭酸ガスを効率的にメタンガスとして固定化する方法は現在のところ知られていない状況にある。また、上記公知技術によると、いずれも大掛かりな装置やエネルギーが必要で、かつ高コストである。一方、大量の二酸化炭素の排出を抑制するため、二酸化炭素対策はなるべく低コストであることが望まれる。
そこで、本発明は上記実状に鑑み、太陽光を用いた微生物反応によって二酸化炭素をメタンに変換し、メタンを生産するとともに、二酸化炭素ガスを固定化することを目的とする。
〔構成1〕
上記目的のための本発明の特徴構成は、アンモニウム塩を含有せず、還元剤としてLシステイン塩酸塩を含有する培地により共培養可能な紅色非硫黄細菌と水素資化性メタン生成菌とを、二酸化炭素含有ガス存在下で共培養してメタンガスを得ることにある。
上記特徴構成によると、紅色非硫黄細菌と水素資化性メタン生成菌とが共培養されることにより、紅色非硫黄細菌が光合成により生産した水素ガスをメタン生産菌が資化してメタンを生産することになり、一見、太陽光を用いた微生物反応によって大気中の二酸化炭素をメタンに変換することができるように思われる。しかしこれらの細菌は生育条件が異なり、通常は混合培養してもどちらか一方の増殖しか観測されない。
具体的に説明すると、紅色非硫黄細菌の培養環境では、水素資化性メタン生成菌を生育させることはできず、逆に、水素資化性メタン生成菌の培養環境では、紅色非硫黄細菌を生育させることはできないのが現状である。
そこで、本発明者らが鋭意研究したところによると、紅色非硫黄細菌と水素資化性メタン生成菌とを共培養する場合には、アンモニウム塩を含有せず、還元剤としてLシステイン塩酸塩を含有する培地を選択することにより、両者を共培養可能となる環境が得られることを新規に見出し、本発明を完成させるに至った。
紅色非硫黄細菌による水素生成はニトロゲナーゼによるものであることが知られている。この酵素はアンモニウム塩によって阻害されるので、N源としてアンモニウム塩は使えない。よってアンモニウム塩以外の窒素源で生育可能なメタン生成菌を選択すれば、容易に紅色非硫黄細菌と水素資化性メタン生成菌とを共培養することができる条件が見出せると考えられる。
また、メタン生成菌培地には通常酸化還元電位を下げるための還元剤が含まれている。これらが光合成細菌の生育を阻害する。本発明者らによると、紅色非硫黄細菌は硫化水素に弱いことから、特に還元剤として硫黄系還元剤が生育の阻害に関与するものと考えられた。そこで、メタン生産菌の培養に用いることができる還元剤のうち、非硫黄系還元剤であるLシステイン塩酸塩で生育する紅色非硫黄細菌を選択すれば容易に紅色非硫黄細菌と水素資化性メタン生成菌とを共培養することができる条件が見出せると考えられる。
すなわち、アンモニウム塩を含有せず、還元剤としてLシステイン塩酸塩を含有する培地により共培養可能な紅色非硫黄細菌と水素資化性メタン生成菌とを、二酸化炭素含有ガス存在下で共培養することにより、メタンガスを効率よく生産することができるようになった。
〔構成2〕
また、前記紅色非硫黄細菌が、ロドバクター・キャプシュラータス(Rhodobacter capsulatus)(NBRC16581)、ロドシュードモナス・パルストリス(Rhodopseudomonas palustris)(NBRC16661)から選ばれる少なくとも1種の細菌を含有するものであってもよく、
〔構成3〕
前記水素資化性メタン生成菌が、メタノバクテリウムsp.(Methanobacterium sp.)(NBRC105039)、メタノバクテリウム・フンガテイ(Methanobacterium hungatei)(NBRC100397T)から選ばれる少なくとも1種の細菌を含有するものであってもよく、
〔構成4〕
前記紅色非硫黄細菌が、ロドバクター・キャプシュラータス(Rhodobacter capsulatus)(NBRC16581)であり、前記水素資化性メタン生成菌がメタノバクテリウムsp.(Methanobacterium sp.)(NBRC105039)であれば、特に好ましい。
すなわち、これらの微生物を選択すると、アンモニウム塩以外の窒素源で生育可能なメタン生成菌と、Lシステイン塩酸塩で生育する紅色非硫黄細菌との組み合わせを提供することができるので容易に両者を共培養可能な微生物の組み合わせを提供することができるようになる。
なかでも、前記紅色非硫黄細菌が、ロドバクター・キャプシュラータス(Rhodobacter capsulatus)(NBRC16581)であり、前記水素資化性メタン生成菌がメタノバクテリウムsp.(Methanobacterium sp.)(NBRC105039)であれば、きわめて効率よく大気中の二酸化炭素を固定化してメタンを生産することができるようになった。
したがって、太陽光を用いた微生物反応等によって二酸化炭素をメタンに変換することができるので、たとえば、ガスコージェネレーションシステム等からのオンサイト排出炭酸ガスをメタンに変換してエネルギー源として利用できるようにするとともに、温暖化ガスである二酸化炭素ガスを効果的に削減できるようになった。
本発明のメタン生産方法の実証試験結果を示すグラフ
以下に、本発明のメタン生産方法を説明する。尚、以下に好適な実施例を記すが、これら実施例はそれぞれ、本発明をより具体的に例示するために記載されたものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々変更が可能であり、本発明は、以下の記載に限定されるものではない。
〔メタン生産装置〕
本発明のメタン生産方法に用いるメタン生産装置は、紅色非硫黄細菌と水素資化性メタン生成菌とを、共培養する生物反応槽を備える。
前記生物反応槽には、アンモニウム塩を含有せず、還元剤としてLシステイン塩酸塩を含有する培地が収容され、前記反応槽内に二酸化炭素ガスを供給する二酸化炭素ガス供給部を備え、前記培地中に光照射する光照射部を備えるとともに、生成したメタンガスを排出するメタンガス排出部を備える。これにより、前記培地中で紅色非硫黄細菌と水素資化性メタン生成菌とを、二酸化炭素含有ガス存在下で共培養することができ、これにより、前記生物反応槽では、前記紅色非硫黄細菌が光合成反応により水素を生成するとともに、生成した水素を用いて水素資化性メタン生成菌が炭酸ガスをメタンに変換することにより、結果的に二酸化炭素をメタンに変換することができるものとなっている。
〔紅色非硫黄細菌〕
前記紅色非硫黄細菌としては、
・ロドバクター・キャプシュラータス(Rhodobacter capsulatus)(NBRC16435)
・ロドバクター・キャプシュラータス(Rhodobacter capsulatus)(NBRC16581)
・ロドシュードモナス・パルストリス(Rhodopseudomonas palustris)(NBRC16661)
・ロドシュードモナス・パルストリス(Rhodopseudomonas palustris)(NBRC100246)
・ロドシュードモナス・パルストリス(Rhodopseudomonas palustris)(NBRC100419)
・ロドスピルリウム・ルブラム(Rhodospirillum rubrum)(NBRC3986)
・ロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)(NBRC12203)
・ロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)(NBRC100037)
・ロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)(NBRC100038)
等の市販光合成細菌を利用することが考えられる。なかでも、市販菌株を入手し、それぞれの水素生成能力を検討したところ、
・ロドバクター・キャプシュラータス(Rhodobacter capsulatus)(NBRC16581)
・ロドシュードモナス・パルストリス(Rhodopseudomonas palustris)(NBRC16661)
が好適に用いられることがわかった。(以下適宜寄託番号で略称する)
以下では紅色非硫黄細菌として、NBRC16581を用いて検証を行った。
〔水素資化性メタン生成菌〕
前記水素資化性メタン生成菌としては、
・メタノバクテリウム・フンガテイ(Methanobacterium hungatei)
・メタノバクテリウム・オリザエ(Methanobacterium oryzae)
・メタノバクテリウム・パルストレ(Methanobacterium palustre)
・メタノバクテリウム・sp.(Methanobacterium sp.)
・メタノバクテリウム・サブテラヌエム(Methanobacterium subterraneum)
とうの市販メタン生成菌を利用することが考えられる。なかでも、市販菌株を入手し、それぞれのメタン生成能力を検討したところ、
・メタノバクテリウム・sp.(Methanobacterium sp.)(NBRC105039)
・メタノバクテリウム・フンガテイ(Methanospirillum hungatei)(NBRC100397T)
が好適に用いられることがわかった。
以下では、水素資化性メタン生成菌として、NBRC105039を用いて検証を行った。
〔培地〕
これらの紅色非硫黄細菌と水素資化性メタン生成菌を共培養するための培地組成を検討した。
(1)水素資化性メタン生成菌の窒素源についての検証
水素資化性メタン生成菌は通常アンモニウム塩を含む合成培地で培養される。一方、紅色非硫黄細菌による水素生成はニトロゲナーゼによるものであることが知られており、この酵素はアンモニウム塩によって阻害されるので、紅色非硫黄細菌の培養にはN源としてアンモニウム塩は使えない。よって、メタン生成菌の生育が可能な、アンモニウム塩以外の窒素源を検証した。
窒素源として下記(A)または(B)を含有する培地を用いてメタン生成菌の増殖がみられるか調べたところ、どちらの場合でもほぼアンモニウム塩の場合と同等の増殖がみられた。すなわちこれらの培地を用いると、水素資化性メタン生成菌を紅色非硫黄細菌培養可能な環境で培養できる可能性があることがわかる。
(A) 5mM グルタミン酸ナトリウム
(B) 0.2% Polypeptone, 0.2% Yeast Extract
酸化還元電位を下げやすいという理由から以下では(B)0.2%Polypeptone, 0.2% Yeast Extract を用いることにした。
(2)紅色非硫黄細菌のメタン生成菌培地での生育についての検証
メタン生成菌増殖用培地を用いて紅色非硫黄細菌を培養したところ、増殖阻害が見られ、水素の生産はみられなかった。通常、酸化還元電位を下げるための還元剤として0.05%硫化ナトリウムと0.05%L−システイン塩酸塩が含まれている。これらが光合成細菌の生育に影響する可能性が考えられたので、(文献等の調査によると紅色非硫黄細菌は硫化水素に弱いらしいことがわかった。)そこで還元剤として、0.1% L−システイン塩酸塩のみを用いて培養を行ったところ、増殖阻害は見られず、増殖および水素生成は回復することがわかった。
また、この培地でメタン生成菌が増殖可能なことも確認することができた。
(3)メタン生成菌と光合成細菌の共培養によるメタン生成の可能性の検証
(1)、(2)の検証により、共培養の培地組成として、たとえば、下表1のような共培養培地を用いることができる。以下表1〜3に共培養培地、メタン生成菌増殖用培地、紅色非硫黄細菌増殖用培地を示す。
Figure 2013192547
Vitamin Solutionは表4参照
Trace Elementsは表5参照
pH 7.0
80%−Ar, 20%−CO2
Figure 2013192547
Vitamin Solutionは表4参照
Trace Elementsは表5参照
pH 7.0
80%−H2, 20%−CO2
Figure 2013192547
Vitamin Solutionは表4参照
Trace Elementsは表5参照
pH 6.7
100%−Ar
Figure 2013192547
Figure 2013192547
すなわち、NBRC16581およびNBRC105039を種々の培地で培養したところ、培養結果は下表6のようなり、紅色非硫黄細菌と水素資化性メタン生成菌とを安定的に共培養できる環境としては、アンモニウム塩を含有せず、還元剤としてLシステイン塩酸塩を含有する培地を用いることが好ましいことがわかった。
Figure 2013192547
〔メタン生産方法の実証試験〕
上記表1に示す培地において、NBRC16581およびNBRC105039を、30℃、近赤外線(ピーク850nm)照射下で培養し、適時ガスクロマトグラフィーでメタン生成量の経時変化を測定した。
その結果図1のようになり、上記NBRC16581およびNBRC105039を共培養することによって、反応槽を一段階経由するだけで、供給される二酸化炭素からメタンを生産することができることが明らかになった。
本発明により、たとえば、ガスコージェネレーションシステム等からのオンサイト排出炭酸ガスをメタンに変換してエネルギー源として利用できるようにするとともに、温暖化ガスである二酸化炭素ガスを効果的に削減できる。

Claims (4)

  1. アンモニウム塩を含有せず、還元剤としてLシステイン塩酸塩を含有する培地により共培養可能な紅色非硫黄細菌と水素資化性メタン生成菌とを、二酸化炭素含有ガス存在下で共培養してメタンガスを得るメタン生産方法。
  2. 前記紅色非硫黄細菌が、ロドバクター・キャプシュラータス(Rhodobacter capsulatus)(NBRC16581)、ロドシュードモナス・パルストリス(Rhodopseudomonas palustris)(NBRC16661)から選ばれる少なくとも1種の細菌を含有するものである請求項1に記載のメタン生産方法。
  3. 前記水素資化性メタン生成菌が、メタノバクテリウムsp.(Methanobacterium sp.)(NBRC105039)、メタノバクテリウム・フンガテイ(Methanobacterium hungatei)(NBRC100397T)から選ばれる少なくとも1種の細菌を含有するものである請求項1または2に記載のメタン生産方法。
  4. 前記紅色非硫黄細菌が、ロドバクター・キャプシュラータス(Rhodobacter capsulatus)(NBRC16581)であり、前記水素資化性メタン生成菌がメタノバクテリウムsp.(Methanobacterium sp.)(NBRC105039)である請求項1〜3のいずれか一項に記載のメタン生産方法。
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