JP2013201363A - 有機薄膜トランジスタ、有機薄膜トランジスタアレイおよび表示装置 - Google Patents

有機薄膜トランジスタ、有機薄膜トランジスタアレイおよび表示装置 Download PDF

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匡貴 毛利
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諭 山本
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大輔 後藤
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Abstract

【課題】印刷法を用いて、性能が高くばらつきの少ない有機薄膜トランジスタおよび表示装置を提供する。
【解決手段】前駆体溶液を印刷成膜後、外部エネルギーを付与することによって、下記一般式で表されるジチエノベンゾチオフェン有機半導体層を形成し、かつ有機半導体層の上に印刷により電極を形成する。
Figure 2013201363

〔上記式中、R及びRはそれぞれ独立に、置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表し、R〜R10はそれぞれ独立に、水素、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換のアルキルチオ基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表す。〕
【選択図】なし

Description

本発明は、積層構造体、有機薄膜トランジスタ、有機薄膜トランジスタアレイ及び表示装置に関する。
有機材料を用いた有機薄膜トランジスタ(TFT)は、1.材料構成の多様性、製造方法、製品形態等でフレキシビリティが高いこと; 2.大面積化が容易であること;
3.単純な層構成が可能であり、製造プロセスが単純化できること; 4.安価な製造装置を用いて、製造できること;等の利点があることから、有機TFTが精力的に研究されている。この有機TFTを構成する電極や絶縁膜、半導体層などの成膜方法としては、印刷法、スピンコート法、浸漬法等が挙げられ、有機TFTは、従来のSi半導体材料を用いたTFTより桁違いに安く製造することができる。
また、この有機TFTを集積した有機TFTアレイを作製し、表示素子を駆動すれば、表示装置が得られる。この表示装置は、上記有機TFTの特性を備えたこれまでにない付加価値を有するものとなる。印刷によりフィルム上に作製した有機TFTアレイを電気泳動素子と組み合わせ、フレキシブルな表示装置を作製することができる。このような特性は、曲面を有する壁への展示パネルへの適用性や、携帯ディスプレイとしての利便性、また、落とした場合に壊れにくい(耐衝撃性)といった利点に直結する。さらには、印刷により作製することによるコストメリットも反映される。
印刷により作製する上で重要となるのが、有機TFTの活性層である有機半導体層の形成工程である。TFTの性能指標として一般的な電界効果移動度(以下移動度という)があるが、これは半導体層中を伝導キャリアが流れる速さの指標であり、この値が高いほど有機TFTとして優れた特性であると言える。
一般的に移動度の高い材料としてはペンタセンなどの結晶性半導体材料が知られている(非特許文献1のAPPLIED PHYSICS LETTERS vol89, p223525 (2006) M.Kitamura)。これらを用いて作製された有機TFTでは移動度として1以上の報告があり、アモルファスシリコンを凌駕するレベルである。しかしながら、これらの高移動度を示す結晶性半導体材料は溶解性が低いために印刷法を適用できず、真空蒸着などの製造コストの高い手法で成膜する必要があるという問題がある。
つぎにこれらの結晶性材料に溶解性の置換基を付与することで、印刷法で形成することを可能にした例が報告されている(非特許文献2のAPPLIED PHYSICS LETTERS vol91, p063514 (2007) John E. Anthony)。しかしながら、溶解性であるために、半導体層形成後、印刷法による電極層などの積層が困難である。そのため、溶解性半導体層を用いる際には、製造コストの高い真空蒸着法により電極を積層するか、あるいはソースドレイン電極を形成した上に半導体層を形成する、ボトムコンタクト構造がとられる。ボトムコンタクト構造では、半導体層の上に電極を形成するトップコンタクト構造と比較すると、電極と半導体層の界面における電界強度の差などから、デバイス構造に起因する移動度の低下が報告されている(非特許文献3のJOURNAL OF APPLIED PHYSICS vol107, p053709 (2010) Toru Toyabe)。このため、溶解性の結晶性材料を半導体として用いた素子においては、材料の特性を充分に発揮できるデバイス構造をとることが困難である。また表示装置の駆動パネルとしては、層間絶縁層や画素電極、保護層などの積層工程に耐える耐久性が必要であるが、これら溶解性の材料においては、印刷による積層工程が困難である。
上記のことから、これまで、印刷法で作製する有機TFTにおいて、トップコンタクト構造を作製する技術は得られていない。
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その課題は、トップコンタクト型構造を、印刷法を用いて簡便に製造することで、性能が高くばらつきの少ない有機薄膜トランジスタ、該有機薄膜トランジスタを有するトランジスタアレイおよび表示装置を提供することにある。
上記課題は、つぎの(1)〜(6)項記載の「積層構造体」、「有機薄膜トランジスタ」、「有機薄膜トランジスタアレイ」及び「表示装置」を包含する本発明により達成される。
(1)「基板上に、有機半導体層と、電極を有する積層構造体であって、少なくとも下記一般式(I)で表されるジチエノベンゾチオフェン誘導体からなる有機半導体材料前駆体を溶媒に溶解した溶液を用いる印刷により成膜後、これに熱あるいは光による外部エネルギーを付与することによって、前記有機半導体材料前駆体からのX−Yの脱離によって得られる、少なくとも下記一般式(II)で表されるジチエノベンゾチオフェン誘導体を主成分とする有機半導体層を有し、かつ有機半導体層の上に印刷により形成された電極を有することを特徴とする積層構造体。
Figure 2013201363
Figure 2013201363
〔上記式中、X及びYは、外部刺激によりXとYが結合してX−Yとして一般式(I)の化合物から脱離する基を表し、R及びRはそれぞれ独立に、置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表し、R〜R10はそれぞれ独立に、水素、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換のアルキルチオ基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表す〕。」
(2)「前記有機半導体材料前駆体のX及びYの一方が水素であり、他方が水酸基又はエステル構造若しくはチオエステル構造を有する基であることを特徴とする、前記(1)項に記載の積層構造体。」
(3)「前記有機半導体材料前駆体の前記エステル構造若しくはチオエステル構造が、下記一般式(III)〜(IX)のいずれかであることを特徴とする、前記(2)項に記載の積層構造体。
Figure 2013201363
Figure 2013201363
Figure 2013201363
Figure 2013201363
Figure 2013201363
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〔上記式中、R11は置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表す。〕。」
(4)「前記(1)乃至(3)項の何れかに記載された積層構造体を有することを特徴とする有機薄膜トランジスタ。」
(5)「前記(4)項に記載された有機薄膜トランジスタを複数配置して得られる有機薄膜トランジスタアレイ。」
(6)「前記(5)項に記載された有機薄膜トランジスタアレイを用いて得られる表示装置。」
以下の詳細かつ具体的な説明から理解されるように、本発明によれば、溶媒に可溶な、ジチエノベンゾジチオフェン誘導体前駆体材料を用い、印刷法を用いて前駆体膜を形成し、これに熱や光などの外部エネルギーを付与することによって、溶解性が低く、耐熱性に優れるジチエノベンゾジチオフェン誘導体からなる半導体に変換し、ジチエノベンゾジチオフェン誘導体からなる半導体層上にソース、ドレイン電極を設け、焼結したところ、印刷法でも性能が良好なトップコンタクト構造の有機薄膜トランジスタを得ることが可能であり、上記課題が解決できることを見出した。
さらに、本発明の有機薄膜トランジスタを複数配置することで、有機トランジスタアレイを得ることが可能となる。
さらに、本発明からなる有機トランジスタアレイと画素表示素子を組み合わせることで、安価で可撓性に優れた表示装置を作製することが可能となる。
本発明で用いられるジチエノベンゾジチオフェン誘導体(XI)の単結晶を偏光顕微鏡(平行ニコル)で観察したものである。 スピンコート法にて製膜したジチエノベンゾジチオフェン誘導体前駆体(X)の変換膜を走査型電子顕微鏡で観察したものである。 真空蒸着膜法にて製膜したジチエノベンゾジチオフェン誘導体(XI)の有機膜を走査型電子顕微鏡で観察したものである。 有機薄膜トランジスタの概略図である。 実施例1にて作製した有機薄膜トランジスタの観察写真である。 実施例1にて計測した有機薄膜トランジスタの伝達特性である。 実施例15にて作製した表示装置の概略図である。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。本発明における「印刷」又は「印刷法」とは、スピンコート法、キャスティングコート法、スプレーコート法、ディップ法、インクジェット法、ドクターブレードコート法、スクリーン印刷法、ディスペンスコート法等による面領域へのベタ塗工、又は、例えばマスキングを用いた所望領域のみへの選択的塗工を意味する。
ここで本発明で用いるジチエノベンゾチオフェン誘導体からなる有機半導体材料前駆体および該前駆体から得られるにジチエノベンゾチオフェン誘導体を主成分とする有機半導体材料ついて、具体的に説明する。
本発明の有機半導体材料前駆体は、下記一般式(I)で表されるジチエノベンゾジチオフェン誘導体からなる。
Figure 2013201363
〔上記式中、X及びYは、外部刺激によりXとYが結合し、X−Yとして一般式(I)の化合物から脱離する基を表し、R及びRはそれぞれ独立に、置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表し、R〜R10はそれぞれ独立に、水素、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換のアルキルチオ基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表す。〕
X及びYとしては、水素とエステル構造を有する基の組合せが好ましい。中でも、カルボン酸エステルと水素、炭酸エステルと水素、キサントゲン酸エステルと水素の組合せが好ましく、特に次の一般式(III)〜(IX)のいずれかと水素の組合せが好ましい。
Figure 2013201363
Figure 2013201363
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Figure 2013201363
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Figure 2013201363
(上記式中、R11は置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表す。)
一般式(I)で表されるジチエノベンゾジチオフェン誘導体は、外部刺激によりXとYが結合してX−Yとして脱離する結果、新たにアルケン部位が生成し、一般式(II)で表されるジチエノベンゾジチオフェン誘導体へと変換する。
Figure 2013201363
上記一般式(I)〜(IX)中の、R〜R11における置換若しくは無置換のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ブチル基、i−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、3,7−ジメチルオクチル基、2−エチルヘキシル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル、2−シアノエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができ、置換若しくは無置換のアルコキシ基、アルキルチオ基としては、例えば上記アルキル基の結合位に酸素原子又は硫黄原子を挿入してアルコキシ基、アルキルチオ基としたものが挙げられる。
〜R11における置換若しくは無置換のアリール基としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、ターフェニル、クォーターフェニル、ピレン、フルオレン、9,9−ジメチルフルオレン、アズレン、アントラセン、トリフェニレン、クリセン、9−ベンジリデンフルオレン、5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン、[2,2]−パラシクロファン、トリフェニルアミン、チオフェン、ビチオフェン、ターチオフェン、クォーターチオフェン、チエノチオフェン、ベンゾチオフェン、ジチエニルベンゼン、フラン、ベンゾフラン、カルバゾール、ベンゾジチアゾール等が挙げられる。これらはさらに上記の置換若しくは無置換のアルキル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、又はフッ素、塩素、ヨウ素及び臭素のハロゲン基を置換基として有していてもよい。
特にR及びRに上記アルキル基又はアリール基を導入することにより、棒状の分子形状となり、結晶が2次元的に成長しやすくなるため、結晶性の連続膜が得やすくなる。
さらにアリール基を導入した場合、一般式(II)の状態において分子の共役系の拡大により材料のイオン化ポテンシャルが浅くなり、ホール輸送特性が向上する。
一般式(I)で表されるジチエノベンゾジチオフェン誘導体の合成方法は特に限定されず、公知の種々の方法を採用することができる。手順としては、ジチエノベンゾジチオフェン骨格を構築した後、X及びYで表される脱離ユニットを導入すればよい(特開2011−44686号公報参照)。
例えば、一般式(I)において、Xがエステル構造を有する基でYが水素の場合、ジチエノベンゾジチオフェン骨格を構築した後、カルボニル化合物(1)へ誘導し、さらにグリニヤール試薬をはじめとする求核試薬との反応によりアルコール体(2)とし、このアルコール体(2)を酸塩化物や酸無水物等と反応させれば、目的とするカルボン酸エステル(3)が得られる。
Figure 2013201363
また、上記アルコール体(2)を、塩基を用いて二硫化炭素と反応させた後、ハロゲン化アルキル等のアルキル化試薬と反応させれば、目的とするキサントゲン酸エステル体(4)を得ることができる。
Figure 2013201363
また、上記アルコール体(2)を、クロロギ酸エステルで処理することにより、炭酸エステル体(5)を得ることができる。
Figure 2013201363
なお、上記カルボニル化合物(1)は、公知の種々の反応により合成することができ、例えば次の(a)〜(d)の反応が挙げられる。
(a)次の式で示されるVilsmeier反応
Figure 2013201363
(b)次の式で示される、アリールリチウム化合物と、DMF、N−ホルミルモルホリン、N−ホルミルピペリジン、各種酸塩化物、各種酸無水物等をはじめとするホルミル化又はアシル化試薬との反応
Figure 2013201363
(c)次の式で示される、Gatterman反応
Figure 2013201363
(d)次の式で示される、Friedel−Crafts反応
Figure 2013201363
上記反応式〔1〕〜[3]及び反応式[a]〜[d]中、Rはアルキル基を、halはハロゲンを表し、R〜R11は一般式(I)の場合と同様である。また、Xが水素でYがエステル構造を有する基の場合にも、同様の反応により容易に合成することができる。
上記のようにして得られた有機半導体材料前駆体は、反応に使用した触媒、無機塩、未反応原料、副生成物等の不純物を除去して使用される。精製操作は再結晶、各種クロマトグラフィー法、昇華精製、再沈澱、抽出、ソックスレー抽出、限外濾過、透析等をはじめとする従来公知の方法を使用できる。不純物の混入は半導体特性に悪影響を及ぼすため、可能な限り高純度にすることが望ましい。溶解性に優れた材料では、これら精製方法の制約が少なくなり、結果的に半導体特性にも好影響を与える。
一般式(I)で表されるジチエノベンゾジチオフェン誘導体は、次の式で示すように、一般式(I)中のX−Yの脱離によりアルカン部位が生成し、一般式(II)で表されるジチエノベンゾジチオフェン誘導体へと変換する。
Figure 2013201363
この際、X−Yの組合せが、水素とカルボン酸エステルの場合には、カルボン酸分子が脱離し、X−Yの組合せが水素とキサントゲン酸エステルの場合には、キサントゲン酸部位が脱離した後、さらに分解して、硫化カルボニルとチオール化合物として除去される。X−Yの組合せが水素と炭酸エステルの場合には、やはり脱炭酸が起こる。
上記X−Yの脱離により生成する、一般式(II)で表されるジチエノベンゾジチオフェン誘導体では、脱離前の一般式(I)で表される構造と比べて、共役系が拡大すると共に平面性が得られるため結晶性が向上し、半導体部材として使用可能な良好な電荷輸送特性が発現する。
同時にX−Yの脱離前後では溶剤に対する溶解性が劇的に変化する。一般式(I)ではジチエノベンゾジチオフェンユニットの側鎖(R、R、R、X、Y及び、R、R、R、X、Yを含む部位)が分子に良好な溶解性を付与するのに対し、一般式(II)ではそのような効果が小さくなり、非常に溶解性が低下する。
脱離反応を行なうために印加するエネルギーとしては、熱、光、電磁波が挙げられるが、反応性および収率、後処理の観点から、熱エネルギーあるいは光エネルギーが望ましく、特に熱エネルギーが好ましい。また、酸または塩基の存在下で上記エネルギーを印加してもよい。
通常、上記脱離反応には、官能基の構造に依存するが、加熱が必要となることが多い。
脱離反応を行なうための加熱の方法には、支持体上で加熱する方法、オーブン内で加熱する方法、マイクロ波の照射による方法、レーザーを用いて光を熱に変換して加熱する方法、光熱変換層を用いる等種々の方法を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
脱離反応を行なうための加熱温度については、室温(およそ25℃)〜500℃の範囲を用いることが可能であり、下限温度は材料の熱安定性および脱離成分の沸点を考え、上限温度ではエネルギー効率や、未変換分子の存在率、変換後の化合物の分解、昇華等を考慮すると、40〜500℃の範囲が好ましく、さらに前駆体の合成の熱安定性を考慮するとより好ましくは60〜500℃の範囲であり、特に好ましくは80℃〜400℃である。
上記加熱の時間については、高温であるほど反応時間は短く、低温であるほど脱離反応に必要な時間は長くなる。また、前駆体の反応性、量なども考慮して、適宜最適時間を設定することができる。
光を外部刺激として用いる場合は、赤外線ランプや、化合物が吸収する波長の光を照射すること(例えば405nm以下の波長に露光)等を利用してもよい。その際に半導体レーザーを用いてもよい。例えば、近赤外域のレーザー光(通常は780nm付近の波長のレーザー光)、可視レーザー光(通常は、630nm〜680nmの範囲の波長のレーザー光)、波長390〜440nmのレーザー光が挙げられる。特に好ましくは波長390〜440nmのレーザー光であり、440nm以下の範囲の発振波長を有する半導体レーザー光が好適に用いられる。中でも好ましい光源としては、390〜440(更に好ましくは390〜415nm)の範囲の発振波長を有する青紫色半導体レーザー光、中心発振波長850nmの赤外半導体レーザー光を光導波路素子を使って半分の波長にした中心発振波長425nmの青紫色SHGレーザー光を挙げることができる。
上記の酸または塩基は脱離反応の触媒として働き、より低温での変換が可能となる。これらの使用方法は特に限定はされないが、そのまま添加しても良いし、任意の溶媒に溶解させ溶液にして添加してもよいし、気化させてその雰囲気中で加熱処理を行っても良いし、光酸発生剤および光塩基発生剤等を添加し、光照射によって系内で酸および塩基を得てもよい。
上記、酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、蟻酸、リン酸等、2-ブチルオクタン酸を用いることができる。
また塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩、トリエチルアミン、ピリジン等のアミン類、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン等のアミジン類などを用いることができる。
光酸発生剤としては、スルホニウム塩、ヨードニウム塩等のイオン性発生剤とイオン性光酸発生剤イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジスルホニルジアゾメタン、ニトロベンジルスルホネート等の非イオン性発生剤を挙げることができる。
本発明の有機半導体材料前駆体は、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、トルエン、メシチレン、安息香酸エチル、ジクロロベンゼン及びキシレン等をはじめとする汎用溶剤への溶解性が高いため、これらの溶剤に溶解させてインク化することができる。さらに該インクを支持体上に付着させた後、溶剤を揮発させることによって絶縁部材となる構造体を形成することができる。
支持体への付着方法としては、例えばスピンコート法、キャスティングコート法、ディップ法、インクジェット法、ドクターブレード法、スクリーン印刷法、ディスペンス法等の公知の印刷手法が挙げられる。また、これらの手法により、パターニングされた膜や大面積の膜を作製することができ、さらにインク濃度や付着量を変えることにより、膜厚を適宜調整することができる。作製するデバイスに応じて、最適な印刷方法と溶媒の組み合わせを選択すればよい。
このようにして得られた本発明の有機半導体材料前駆体を利用した部材を、加熱処理をはじめとする外部刺激により、一般式(II)で表される有機半導体材料へと変換しエレクトロニクスデバイスに用いる。局所的にエネルギー印加を行って部分的に一般式(I)から一般式(II)へ変換することにより、半導体領域と絶縁体領域のパターニングを行うことも可能である。
さらに、溶解性の高い本発明の有機半導体材料前駆体が、溶解性の低い一般式(II)で表される有機半導体材料へ変換できることは、デバイス作製工程上、非常に有利となる。一般式(II)で表される有機半導体材料に変換した後は、さらにその上に絶縁材料や電極材料等を、湿式プロセスを用いて構成することが容易になり、後工程によるプロセスダメージを抑えることが可能となる。
これらの薄膜、厚膜、或いは結晶は、光電変換素子、薄膜トランジスタ素子、発光素子など種々の機能素子の電荷輸送性部材として機能するので、本発明の有機半導体材料前駆体を用いて多様な有機電子デバイスを作製することが可能である。
ここで本発明で用いるジチエノベンゾチオフェン誘導体前駆体からの変換について、理解を用意にするために具体例を開示し説明する。ただし、具体例を以下に示すが、これに限定されるものではない。
(ジチエノベンソジオフェン誘導体前駆体の変換)
例えば、下記反応式[5]に示されるように本発明で用いるジチエノベンゾチオフェン誘導体前駆体からの変換過程について、例えばTG−DTA測定(SII社製:TG/DTA200)によって、重量変化および発熱・吸熱ピークから変換過程をモニタすることができる。
Figure 2013201363
上記ジチエノベンゾチオフェン誘導体前駆体(X)を5℃/minの速度で昇温したところ、190〜250℃で、ペンタン酸2分子に相当する重量減少(理論減少量31.5%、実測減少量31.4%)が観測された。また、さらに昇温すると363℃に吸熱ピークが観測された。これは、別に合成したジチエノベンゾチオフェン誘導体化合物(XI)の融点に一致した。
[ジチエノベンゾジチオフェン誘導体前駆体からの変換膜]
以下にジチエノベンゾチオフェン誘導体からの変換膜の作製方法について一例を示す。
膜厚300nmの熱酸化膜がついたシリコンウェハー(Nドープ)を基板に用い、酸化膜表面を酸素プラズマで洗浄後、ポリイミド樹脂のN−メチルピロリドン溶液をスピンコートすることで、厚さ約500nmのポリイミド膜を製膜した。
その後、前記ジチエノベンゾジチオフェン誘導体前駆体(X)のクロロホルム溶液インク(1wt%)をスピンコートすることで、厚さ約100nmのジチエノベンゾジチオフェン誘導体前駆体膜を得た。その後、不活性雰囲気で230℃5分の加熱を行うことで、外部エネルギーを与え、ジチエノベンゾジチオフェン誘導体前駆体(X)からジチエノベンゾジチオフェン誘導体(XI)および脱離成分(XII)に変換された膜を得た。
ここで、図1にジチエノベンゾジチオフェン誘導体(XI)の単結晶の顕微鏡観察写真を示す。さらに、図2に、上記製造方法によって製造されたジチエノベンゾジチオフェン誘導体前駆体(X)の変換膜であるジチエノベンゾジチオフェン誘導体(XI)を含む有機膜のSEM写真を示す。さらに、比較のため、他の有機膜の製造方法として、ジチエノベンゾジチオフェン誘導体(XI)の真空蒸着膜のSEM写真を図3に示す。
面外・面内X線回折によって、図2と図3の薄膜では、一致した回折ピークを有していることが明らかとなっている(図示しない)。そのため、変換膜はジチエノベンゾジチオフェン誘導体(XI)を主として含む膜であることが明らかとなっている。
図1に示すように、溶液成長乃至気相成長で得られたジチエノベンゾジチオフェン誘導体(XI)の単結晶には、その製法における晶癖が見られる。たとえばジチエノベンゾジチオフェン誘導体(XI)では、板状結晶であり、θ1=約130度の角度を有している。これはジチエノベンゾジチオフェン誘導体(XI)の単結晶の結晶格子から推定できる角度である。
図2の本発明で用いられるジチエノベンゾジチオフェン誘導体前駆体(X)からの変換膜であるジチエノベンソチオフェン誘導体(XI)は、同一方向のドメインができており、クラックまたは前駆体変換による晶癖が見えている。θ2=約130度の角度を有しており、本発明で用いられるジチエノベンゾジチオフェン誘導体前駆体(X)からの変換膜であることを意味している。図3で示したジチエノベンゾジチオフェン誘導体(XI)の真空蒸着膜と異なることは明らかであり、ドメインの大きさ、ドメインの形、ドメインが形成する角度の様子に差異が見られる。また、本発明で製造された有機膜は、真空蒸着膜と異なる特性(たとえば、トランジスタ特性)を有する。
このように、本発明で用いられるジチエノベンゾジチオフェン誘導体前駆体(X)からジチエノベンゾジチオフェン誘導体(XI)に変換された有機膜は、真空蒸着法などで別の方法で製造された膜と異なる場合があり、膜の形状、種々の解析方法から容易に本発明で用いられる変換膜であるかどうか判断できる。
(電界効果型トランジスタ)
次に本発明で作製する有機薄膜トランジスタについて説明する。
(トランジスタ構造)
図4を参照して、本発明の有機薄膜トランジスタには、基板(6)上で、絶縁層(2)により空間的に分離された第一の電極(3)と第二の電極(4)および第三の電極(5)が設けられており、第三の電極(5)への電圧印加により、有機半導体層(1)を流れる電流を制御することができる。第一の電極および第二の電極をそれぞれ、ソース電極、ドレイン電極と呼ぶ。また、第三の電極をゲート電極と呼ぶ。図4(A)はボトムコンタクト型のもの、(B)はトップコンタクト型のものもので、いずれも電界効果型トランジスタ(FET)である。
本発明においては、印刷によりトップコンタクト型の電界効果型トランジスタを作製した。一般的にボトムコンタクト構造よりも、トップコンタクト型の方が、トランジスタ特性の指標である移動度も高い。これは電界のかかる電極/半導体界面の接触面積が大きいなどの理由でキャリア注入特性が良好であるためである。
(基板)
本発明に用いられる基板(6)としては、例えば、金属基板、ガラス基板、プラスチック基板、シリコン基板等が挙げられる。一連の製造工程において寸法変化が少ない基板は製造工程を容易にすることができる。また、導電性基板を用いることにより、ゲート電極と兼ねること、さらには、ゲート電極と導電性基板とを積層した構造にすることもできる。
プラスチック基板を用いると、完成するデバイスにフレキシビリティ、軽量化、安価、耐衝撃性などの特性を与えることができる。
プラスチック基板としては、例えば、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネイト、セルローストリアセテート、セルロースセテートポロピオネート等からなる基板が挙げられる。
(絶縁膜)
本発明に用いられる絶縁膜(2)の材料としては、種種の絶縁膜材料を用いることができる。
例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化チタン、酸化タンタル等の無機系絶縁膜材料が挙げられる。
また、有機絶縁膜としてポリイミド、ポリアミドイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリエステル、ポリエチレン、ポリフェニレンスルフィド、無置換またはハロゲン原子置換ポリパラキシリレン、ポリアクリロニトリル、シアノエチルプルラン、ポリメチルメタクリレート、シルセスキオキサン、ポリビニルブチラール等が挙げられる。
なお、絶縁性を向上させるために、有機材料に無機材料を添加してもよい。絶縁膜の作製方法は、その種類に応じて適宜選択できる。例えば、CVD法、プラズマCVD法、プラズマ重合法、蒸着法、スプレーコート法、スピンコート法、ディップコート法、ブレードコート法、バーコート法、印刷法、ディスペンサ法、インクジェット法などを用いることができる。塗布後には、絶縁性を獲得するために、アニール工程を含んでも良い。
(電極材料)
本発明に用いられる第一の電極(3)、第二の電極(4)、および、第三の電極(5)は、導電性材料であれば、特に限定されないが、金属粒子又は金属錯体を含有する金属インクを用いることが好ましい。金属粒子としては、特に限定されないが、Au、Ag、Cu、Pt、Pd、Ni、Ir、Rh、Co、Fe、Mn、Cr、Zn、Mo、W、Ru、In、Sn等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、Au、Ag、Cu、Niは、電気抵抗、熱伝導率及び腐食の面で、好ましい。このとき、金属粒子は、平均粒径が数nm〜数10nm程度で、溶剤中に均一に分散されていると、格段に低い温度で焼結することが知られている。これは、金属粒子の粒径が小さくなるにつれ、活性の高い表面原子の影響が大きくなることに起因している。金属錯体としては、特に限定されないが、中心金属として、Au、Pt、Ag、Cu、Pd、In、Cr、Ni等を有する錯体等が挙げられる。このような金属インクを用いて、パターン形成した後、焼結することで、第一の電極(3)、第二の電極(4)、および、第三の電極(5)を形成することができる。
また、その他の電極材料として、導電性高分子などを用いても良い。導電性高分子としては、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリパラフェニレン、ポリアセチレン、あるいはこれらポリマーにドーピングを施したもの等が挙げられる。中でも、電気伝導度、安定性、耐熱性等の面で、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)とポリスチレンスルホン酸(PSS)の錯体(PEDOT/PSS)が好ましい。これらを分散した導電性高分子インクを用いて、パターン形成した後、乾燥工程を経ることで、第一の電極(3)、第二の電極(4)、および、第三の電極(5)を形成することができる。導電性高分子は、金属と比較して、電気特性や安定性で劣るが、重合度、構造により電極の電気特性を改善できること、焼結を必要としないため、低温で電極を形成できること等の点で優れるが、後工程での積層プロセスに対して耐熱性が要求される。
また、第一の電極(3)と第二の電極(4)は、有機半導体層との接触面において、電気抵抗の少ない材料で形成することが望ましい。
本発明において、第一の電極(3)、第二の電極(4)を形成するための印刷工程とは、真空雰囲気を必要としない、上記金属インク、導電性高分子インクのパターニング工程のことである。具体的な例としては、インクジェット法、静電吸引型インクジェット法、ディスペンサ法などにより直接パターニングしても良いし、塗行膜に対してリソグラフィーやレーザーアブレーション等と組み合わせて形成しても良い。あるいは凸版、凹版、平版、スクリーン印刷等の印刷法でパターニングする方法も用いることができる。
特にインクジェット法および静電吸引型のインクジェット法は、基板に直接パターニングできるため、パターン設計の自由度が高く、またインク材料の利用効率が高いという点で好ましい。インクジェット法のインクとしては、表面張力や粘度が適していない場合は、吐出不能や吐出不良を起こし、丸い液滴になりにくく、さらに、リガメントが長くなることがある。このため、インクジェット法のインクは、表面張力が約30mN/mであると共に、粘度が2〜13mPa・秒であることが好ましく、7〜10mPa・秒がさらに好ましい。さらに、インクを吐出する際に、溶剤が揮発して、金属粒子又は金属錯体、導電性高分子などが固化しない程度の乾燥性も必要である。
第三の電極の形成方法としては、上記の印刷工程に加え、上記材料を原料として蒸着やスパッタリング等の方法を用いて形成した導電性薄膜を、公知のフォトリソグラフィー法やリフトオフ法を用いて電極形成する方法、アルミニウムや銅等の金属箔上に熱転写、インクジェット等によるレジストを用いてエッチングする方法などを用いて形成しても良い。
(ジチエノベンゾジチオフェン誘導体前駆体材料の成膜プロセス)
先述したジチエノベンゾジチオフェン誘導体前駆体(X)の成膜プロセスについては、ジチエノベンゾジチオフェン誘導体前駆体(X)の剥離が容易に生じないように支持基板上に形成可能なものであれば特に限定されるものではない。しかし、先述のとおり有機半導体材料の印刷法、塗布法等の生産性に優れた方法で薄膜形成であるメリットを生かし、ジチエノベンゾジチオフェン誘導体前駆体(X)を溶媒に溶解させた溶液を塗布するプロセスを用いることが好ましい。
例えば、塗布方法としては慣用のコーティング方法、スピンコーティング法、キャスト法、スプレー塗布法、ドクターブレード法、ダイコーティング法、ディッピング法、印刷法、インクジェット法、滴下法等が挙げられる。また、印刷法としては、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、マイクロコンタクトプリンティングなどが挙げられる。これらの塗布方法のうち、塗布量を制御して所望の膜厚の成膜ができるという点で好ましい塗布方法は、スピンコーティング法、ディッピング法、スプレー塗布法、インクジェット法である。
ジチエノベンゾジチオフェン誘導体前駆体(X)を溶解するために用いられる有機溶媒は有機半導体材料が反応したり、析出したりしなければ特に限定されない。また、2種以上の有機溶媒を混合して用いても良い。ここで、溶媒には、塗膜表面の平滑性や膜厚の均一性を考慮に入れた溶媒を選択することが望ましい。例えば、ジチエノベンゾジチオフェン誘導体前駆体(X)おけるXおよびYの少なくとも一方が極性基である場合、極性基に親和性の高いメタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等のエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン、フエノール、クレゾールのようなフエノール類、ジメチルホルムアミド(DMF)、ピリジン、ジメチルアミン、トリエチルアミン等の含窒素有機溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブのようなセロソルブ(登録商標)等の極性(水混和性)溶媒等が使用できる。また、ジチエノベンゾジチオフェン誘導体前駆体(X)おけるXおよびYと親和性の高い、トルエン、キシレン、ベンゼン等の炭化水素、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン等のハロゲン化炭化水素溶媒、酢酸メチル、酢酸エチルのようなエステル系溶媒、ニトロメタン、ニトロエタン等の含窒素有機溶媒等を用いても良い。これらは、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
中でも、テトラヒドロフラン(THF)等の極性(水混和性)溶媒と、トルエン、キシレン、ベンゼン、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素、酢酸エチル等のエステル系溶媒のような非水混和性のものとの併用が特に好ましい。
これらの溶媒はあらかじめ乾燥、脱気処理を行うことが望ましい。ジチエノベンゾジチオフェン誘導体前駆体(X)と溶媒からなる溶液の濃度は所望の膜厚によって任意に調節されるが、好ましくは0.01重量%以上10重量%以下である。
インクジェット法を用いて形成する際に用いられる有機溶媒としては、インクジェットのノズルから液滴を安定に吐出させうる溶媒から選ばれる。
安定に吐出させるための条件としては、少なくとも、溶媒の乾燥速度と、溶質の溶解度に対するインクの溶質濃度の二点から検討する必要がある。
乾燥速度については、過度に高い蒸気圧すなわち、沸点が比較的低い溶媒は、インクジェットのノズル周辺での急激な溶媒乾燥によって溶質が析出し、ノズルの目詰まりが生じるという問題が発生するため、工業的製造において不適切である。したがって、一般にインクジェット法に用いる溶媒としては高沸点のものがよいとされているが、本発明においては、少なくとも150度以上の沸点を有する溶媒を含むことが望ましい。さらに望ましくは、少なくとも200度以上の沸点を有する溶媒を含むことである。
また、インク溶媒に対する溶質の溶解度としては、本発明で用いられる有機半導体材料を少なくとも0.1重量%以上溶解させる溶媒であることが望ましい。さらに望ましくは0.5重量%以上溶解させる溶媒である。上記を満たす溶媒としては、例えば、クメン、シメン、メシチレン、2,4−トリメチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン、アミルベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、ニトロベンゼン、ベンゾニトリル、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、テトラリン、1,5−ジメチルテトラリン、シクロヘキサノン、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル等が挙げられる。
以上の操作によって得られる有機半導体膜の膜厚は3nm以上10μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは20nm以上1μm以下である。
また、本発明の有機薄膜トランジスタは、必要に応じて各電極からの引き出し電極を設けることができる。また、本発明の有機薄膜トランジスタは、水分、大気及びガスからの保護、または、デバイスの集積の都合上の保護等のため、必要に応じて保護層を設けることもできる。
以下、実施例により、本発明を更に詳細かつ具体的に説明するが、これら例は、本発明についての理解を容易ならしめるためのものであって、本発明を限定するためのものではない。
[実施例1]
ジチエノベンゾジチオフェン誘導体前駆体(実−1)を用いて、以下の要領で、図4(B)に示す構造の電界効果型トランジスタを作製した。膜厚300nmの熱酸化膜が付いたシリコンウェハー(Nドープ)を基板に用いた。酸化膜表面を酸素プラズマで洗浄後、ポリイミド樹脂のN−メチル−2−ピロリドン溶液をスピンコートすることで、厚さ約500nmのポリイミド膜を製膜した。その後、ジチエノベンゾジチオフェン誘導体前駆体(実−1)のクロロホルム溶液(1wt%)をスピンコートすることで、厚さ約100nmのジチエノベンゾジチオフェン誘導体前駆体膜を得た。
これをホットプレート上で230℃、2hrs加熱することで、ジチエノベンゾジチオフェン誘導体半導体(XI)に変換した。
つづいて、インクジェット法によりジチエノベンゾチオフェン半導体膜上にAg電極インクをパターン形成した。インクジェットヘッドには、クラスターテクノロジー社製pulseInjector(PIJ-25)を用いた。インクにはUlvac社製ナノAgインク(L-Ag1-TeH)を用いた。
インクジェット法によりジチエノベンゾチオフェン半導体膜上にパターン形成したAg電極インクを、を180℃、2hrs加熱することで焼成し、Agのソースドレイン電極を得た(L=200μm、W=2000μm)。顕微鏡観察結果を図5に示す。
電極とは異なる部位のジチエノベンゾジチオフェン誘導体およびシリコン酸化膜を削り取り、その部分に導電性ペースト(導電性ペースト、藤倉化成製)を付け溶媒を乾燥させた。この部分を用いて、ゲート電極としてのシリコン基板に電圧を印加した。
こうして得られた素子の電気特性をAgilent社製 半導体パラメーターアナライザー4156Cを用いて評価した結果、p型のトランジスタ素子としての特性を示した。その特性図を図6に示す。さらに、有機薄膜トランジスタの電流−電圧(I−V)特性における飽和領域から、電界効果移動度を求めた。電界効果移動度の算出には、以下の式を用いた。
Figure 2013201363
(ただし、Cinはゲート絶縁膜の単位面積あたりのキャパシタンス、Wはチャネル幅、Lはチャネル長、Vgはゲート電圧、Idsはソースドレイン電流、μは移動度、Vthはチャネルが形成し始めるゲートの閾値電圧である。)
こうして得られた電界効果移動度は平均で0.16cm^2/Vsであり、閾値電圧Vthは3.8V、ON/OFF比は3.1E+3であった。
Figure 2013201363
[実施例2]
ジチエノベンゾジチオフェン誘導体前駆体として(実−2)を用い、これをホットプレート上で250℃で2hrs加熱すること以外は、実施例1と同様にして有機薄膜トランジスタを作製した。
Figure 2013201363
[実施例3]
ジチエノベンゾジチオフェン誘導体前駆体として(実−3)を用い、これをホットプレート上で250℃で2hrs加熱すること以外は、実施例1と同様にして有機薄膜トランジスタを作製した。
Figure 2013201363
[実施例4]
ジチエノベンゾジチオフェン誘導体前駆体として(実−4)を用い、これをホットプレート上で250℃で2hrs加熱すること以外は、実施例1と同様にして有機薄膜トランジスタを作製した。
Figure 2013201363
[実施例5]
ジチエノベンゾジチオフェン誘導体前駆体として(実−5)を用い、これをホットプレート上で250℃で2hrs加熱すること以外は、実施例1と同様にして有機薄膜トランジスタを作製した。
Figure 2013201363
[実施例6]
ジチエノベンゾジチオフェン誘導体前駆体として(実−6)を用い、これをホットプレート上で200℃で2hrs加熱すること以外は、実施例1と同様にして有機薄膜トランジスタを作製した。
Figure 2013201363
[実施例7]
ジチエノベンゾジチオフェン誘導体前駆体として(実−7)を用い、これをホットプレート上で200℃で2hrs加熱すること以外は、実施例1と同様にして有機薄膜トランジスタを作製した。
Figure 2013201363
[実施例8]
ジチエノベンゾジチオフェン誘導体前駆体として(実−8)を用い、これをホットプレート上で250℃で4hrs加熱すること以外は、実施例1と同様にして有機薄膜トランジスタを作製した。
Figure 2013201363
[実施例9]
ジチエノベンゾジチオフェン誘導体前駆体として(実−9)を用い、これをホットプレート上で170℃で2hrs加熱すること以外は、実施例1と同様にして有機薄膜トランジスタを作製した。
Figure 2013201363
[実施例10]
ジチエノベンゾジチオフェン誘導体前駆体として(実−10)を用い、これをホットプレート上で180℃で2hrs加熱すること以外は、実施例1と同様にして有機薄膜トランジスタを作製した。
Figure 2013201363
[実施例11]
ジチエノベンゾジチオフェン誘導体前駆体として(実−11)を用い、これをホットプレート上で250℃で2hrs加熱すること以外は、実施例1と同様にして有機薄膜トランジスタを作製した。
Figure 2013201363
[実施例12]
ジチエノベンゾジチオフェン誘導体前駆体として(実−12)を用い、これをホットプレート上で220℃で2hrs加熱すること以外は、実施例1と同様にして有機薄膜トランジスタを作製した。
Figure 2013201363
[実施例13]
ジチエノベンゾジチオフェン誘導体前駆体として(実−13)を用い、これをホットプレート上で180℃で2hrs加熱すること以外は、実施例1と同様にして有機薄膜トランジスタを作製した。
Figure 2013201363
[比較例1]
ジチエノベンゾジチオフェン誘導体前駆体の変わりに、結晶性半導体であるPentaceneを用いて作製することを試みたが、溶媒に不溶なため、印刷工程でトランジスタ動作を得ることはできなかった。
[比較例2]
ジチエノベンゾジチオフェン誘導体前駆体の変わりに、以下に示す可溶性結晶性半導体であるTips-Pentacene(比較−1)を用いて作製したが、トランジスタ動作は得られなかった。ナノAgインクの溶媒による侵食、および加熱工程での結晶格子の乱れ、Tips-Pentacene分子の揮発などによるものと考えられた。
Figure 2013201363
[比較例3]
ジチエノベンゾジチオフェン誘導体前駆体の代わりに、可溶性結晶性半導体であるTips-Pentacene(比較−1)を用いて、以下の要領で、図4(A)に示す構造の電界効果型トランジスタを作製した。
膜厚300nmの熱酸化膜が付いたシリコンウェハー(Nドープ)を基板に用いた。酸化膜表面を酸素プラズマで洗浄後、ポリイミド樹脂のN-メチル-2-ピロリドン溶液をスピンコートすることで、厚さ約500nmのポリイミド膜を製膜した。その後、絶縁膜上にインクジェット法を用いてナノAg微粒子分散インクを塗布し、これを180℃2hrs加熱することで焼成し、Agのソースドレイン電極を得た(L=200μm、W=2000μm)。
つづいて、Tips-Pentacene(比較−1)のクロロホルム溶液(1wt%)をスピンコートすることで、厚さ約100nmのTips-Pentacene薄膜を得た。
電極とは異なる部位のジチエノベンゾジチオフェン誘導体およびシリコン酸化膜を削り取り、その部分に導電性ペースト(導電性ペースト、藤倉化成製)を付け溶媒を乾燥させた。この部分を用いて、ゲート電極としてのシリコン基板に電圧を印加した。
実施例1と同様の手法でトランジスタ特性の評価を行った。
こうして得られた電界効果移動度は0.044cm^2/Vsであり、閾値電圧Vthは2.0V、ON/OFF比は2.4E+3であった。ボトムコンタクト構造であればトランジスタ特性が得られたが、構造由来の影響もあり、移動度としては低くなってしまった。
[比較例4]
ジチエノベンゾジチオフェン誘導体前駆体の代わりに、可溶性結晶性半導体であるTips-Pentacene(比較−1)を用いて、またインクジェット法でナノAgインクを用いる代わりに真空蒸着法を用いてAg薄膜を形成する以外は、実施例1と同様の方法でトランジスタを作製した。
こうして得られた電界効果移動度は0.17cm^2/Vsであった。
実施例1〜13および比較例1〜4の結果をまとめたものを表1に示した。
Figure 2013201363
ただし、評価項目の印刷工程は、半導体および電極の作製プロセスがいずれも印刷工程である場合に○、そうでない場合に×とした。また評価項目の移動度は0.1cm2/Vs以上のものを○、0.1cm2/Vs未満を×とした。
以上から、本発明によれば、印刷工程で作製可能であり、特性の良好なトランジスタ特性が得られることがわかった。
[実施例14]
実施例1と同様の手法で、有機薄膜トランジスタを複数配置したトランジスタアレイを作製した。
同様にして作製した8素子のトランジスタ特性を、各々面内20箇所、グローブボックス内で評価したところ、平均移動度0.17cm/Vs(最大/最小値:0.22/0.13cm/Vs)となり、ぱらつきが少なく、良好なトランジスタ特性が得られた
[実施例15]
実施例14で作製した有機トランジスタアレイを用いて、図7に示す電気泳動表示装置(アクティブマトリックス表示装置)を作製した。具体的には、電気泳動表示装置(100)は、ITOからなる透明電極(21)が形成されたポリカーボネート基板からなるフィルム(22)と、フィルム(22)の透明電極(21)上に、酸化チタン粒子とオイルブルーで着色したアイソパーを内包するマイクロカプセル(20a)と、カーボンブラック粒子(20b)と、ポリビニルアルコール水溶液を混合した塗布液を塗布して形成されてなり、隔壁(20d)で区画され内部にマイクロカプセル(20a),カーボンブラック粒子(20b),水溶液(20c)が充填されたセル(20)と、フィルム(22)との間にセル(20)を挟むようにしてガラス基板(6)が外側になるように配置される、実施例1の有機薄膜トランジスタを複数配置した有機トランジスタアレイと、から構成される。
得られた電気泳動表示装置(100)のゲート電極(5)に繋がるバスラインに走査信号用のドライバーICを、ソース電極(3)に繋がるバスラインにデータ信号用のドライバーICを各々接続し、0.5秒毎に画像の切り替えを行ったところ、良好な静止画像を表示することができた。
なお、これまで本発明を図面に示した実施形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
1 有機半導体層
2 絶縁層
3 第一の電極
4 第二の電極
5 第三の電極
6 ガラス基板
20 セル
20a マイクロカプセル
20b カーボンブラック粒子
20c
20d 隔壁
21 透明電極
22 フィルム
100 電気泳動表示装置
APPLIED PHYSICS LETTERS vol89, p223525 (2006) M.Kitamura APPLIED PHYSICS LETTERS vol91, p063514 (2007) John E. Anthony JOURNAL OF APPLIED PHYSICS vol107, p053709 (2010) Toru Toyabe

Claims (6)

  1. 基板上に、有機半導体層と、電極を有する積層構造体であって、少なくとも下記一般式(I)で表されるジチエノベンゾチオフェン誘導体からなる有機半導体材料前駆体を溶媒に溶解した溶液を用いる印刷により成膜後、これに熱あるいは光による外部エネルギーを付与することによって、前記有機半導体材料前駆体からのX−Yの脱離によって得られる、少なくとも下記一般式(II)で表されるジチエノベンゾチオフェン誘導体を主成分とする有機半導体層を有し、かつ有機半導体層の上に印刷により形成された電極を有することを特徴とする積層構造体。
    Figure 2013201363

    Figure 2013201363
    〔上記式中、X及びYは、外部刺激によりXとYが結合してX−Yとして一般式(I)の化合物から脱離する基を表し、R及びRはそれぞれ独立に、置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表し、R〜R10はそれぞれ独立に、水素、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換のアルキルチオ基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表す。〕
  2. 前記有機半導体材料前駆体のX及びYの一方が水素であり、他方が水酸基又はエステル構造若しくはチオエステル構造を有する基であることを特徴とする、請求項1に記載の積層構造体。
  3. 前記有機半導体材料前駆体の前記エステル構造若しくはチオエステル構造が、下記一般式(III)〜(IX)のいずれかであることを特徴とする、請求項2に記載の積層構造体。
    Figure 2013201363
    Figure 2013201363
    Figure 2013201363
    Figure 2013201363
    Figure 2013201363
    Figure 2013201363
    Figure 2013201363
    〔上記式中、R11は置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表す。〕
  4. 請求項1乃至3の何れかに記載された積層構造体を有することを特徴とする有機薄膜トランジスタ。
  5. 請求項4に記載された有機薄膜トランジスタを複数配置して得られる有機薄膜トランジスタアレイ。
  6. 請求項5に記載された有機薄膜トランジスタアレイを用いて得られる表示装置。
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