JP2013201911A - 台木と穂木の接ぎ木を介して植物の形質転換を行う方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 転写型遺伝子サイレンシングを発動させるためのsiRNAを用い、全身性の遺伝子サイレンシングを起こすことで台木と穂木の接ぎ木を介して植物の形質転換を効果的に行う方法を提供すること。
【解決手段】 転写型遺伝子サイレンシングを発動させるためのsiRNAとその標的配列に相補的な配列を有するRNAを穂木において産生せしめ、穂木において産生されたsiRNAとその標的配列に相補的な配列を有するRNAを接ぎ木を介して台木に輸送し、転写型遺伝子サイレンシングを台木において発動させることによって台木の形質転換を行うことを特徴とする。
【選択図】 図2
【解決手段】 転写型遺伝子サイレンシングを発動させるためのsiRNAとその標的配列に相補的な配列を有するRNAを穂木において産生せしめ、穂木において産生されたsiRNAとその標的配列に相補的な配列を有するRNAを接ぎ木を介して台木に輸送し、転写型遺伝子サイレンシングを台木において発動させることによって台木の形質転換を行うことを特徴とする。
【選択図】 図2
Description
本発明は、台木と穂木の接ぎ木を介して植物の形質転換を行う方法に関する。
植物の品種改良(生産性や品質の向上、耐病性の付与など)の手段として、特定の標的遺伝子の発現を抑制することで植物の形質転換を行う方法が有効であることは当業者に周知の通りであり、近年、その方法の一つとして、遺伝子の発現機能を阻害する遺伝子サイレンシングが注目されている。遺伝子サイレンシングは、遺伝子の転写レベルで作用する転写型遺伝子サイレンシング(Transcriptional Gene Silencing:TGS)と、転写後に作用する転写後型遺伝子サイレンシング(Post−Transcriptional Gene Silencing:PTGS)に分類されるが、いずれもsiRNA(short interfering RNA)によって発動できることが知られている。siRNAは、20〜25bpの低分子RNAであり、細胞内で形成された二本鎖RNA(dsRNA:double−strand RNA)がダイサーによって分断されて生成し、ヘリカーゼによって一本鎖に解離したものは、RNA誘導型サイレンシング複合体(RISC)を形成して標的のmRNAに結合し、これを切断することができるものであって、siRNAはこの機能によってPTGSを発動する。また、siRNAは、標的遺伝子のプロモーター領域のメチル化を誘導し(RNA−directed DNA Methylation:RdDM)、さらにその領域のヒストンタンパク質の修飾などにも関与して、その領域をリモデリング化することで、TGSを発動する。TGSはエピジェネティック変異と称され、遺伝子サイレンシングが体細胞分裂や減数分裂を経ても維持されて後代へ遺伝することが知られている。
siRNAは、伴細胞(companion cell)から原形質連絡糸を通して篩管(sieve tube)へ送り出され、長距離輸送されることが知られており、こうした篩管輸送は接ぎ木を介しても行われる。siRNAのこの性質を利用して、PTGSを発動させるためのsiRNAを穂木において産生せしめ、穂木において産生されたsiRNAを接ぎ木を介して台木に輸送し、PTGSを台木において発動させることによって台木の形質転換を行う方法が非特許文献1に記載されている。一方、TGSを発動させるためのsiRNAを穂木において産生せしめ、穂木において産生されたsiRNAを接ぎ木を介して台木に輸送し、TGSを台木において発動させることによって台木の形質転換を行う方法が本発明者らによって見出されている(非特許文献2)。前述の通り、TGSは遺伝子サイレンシングが体細胞分裂や減数分裂を経ても維持されて後代へ遺伝する。従って、非特許文献2に記載の方法は、台木と穂木の接ぎ木を介して行う植物の品種改良の手段の一つとして大いに期待される。しかしながら、TGSでは、PTGSと異なって標的のRNAが存在しないので、RNA上でのトランジティビティ(Transitivity)現象が起動しない。よって、台木においてsiRNAは増幅されず、PTGSのような全身性(Systemic)の遺伝子サイレンシングが起こらないので、非特許文献2に記載の方法にはこの点で改良の余地がある。
Molnar A.ら、Science 328:872−875.2010
Bai S.ら、J.Exp.Bot.62:4561−4570.2011
そこで本発明は、TGSを発動させるためのsiRNAを接ぎ木を介して穂木から台木に篩管輸送し、台木において全身性の遺伝子サイレンシングを起こすことで、植物の形質転換を効果的に行う方法を提供することを目的とする。
上記の点に鑑みてなされた本発明の台木と穂木の接ぎ木を介して植物の形質転換を行う方法は、請求項1記載の通り、TGSを発動させるためのsiRNAとその標的配列に相補的な配列を有するRNAを穂木において産生せしめ、穂木において産生されたsiRNAとその標的配列に相補的な配列を有するRNAを接ぎ木を介して台木に輸送し、TGSを台木において発動させることによって台木の形質転換を行うことを特徴とする。
また、請求項2記載の方法は、請求項1記載の方法において、TGSを発動させるためのsiRNAを穂木において産生せしめる方法として、標的遺伝子のプロモーター領域に相同な配列を有するsiRNAを産生することができる、CoYMVプロモーターを用いたベクターを導入したアグロバクテリウムを穂木に感染させる方法を用いることを特徴とする。
また、請求項3記載の方法は、請求項1記載の方法において、TGSを発動させるためのsiRNAの標的配列に相補的な配列を有するRNAを穂木において産生せしめる方法として、プロモーター、siRNAの標的配列の少なくとも一部を含むヌクレオチド、配列表の配列番号1に記載の配列を少なくとも含むヌクレオチド、ターミネーターを5’側からこの順番で有してなるベクターを導入したアグロバクテリウムを穂木に感染させる方法を用いることを特徴とする。
また、請求項4記載の方法は、請求項1記載の方法において、穂木としてタバコ(Nicotiana benthamiana)を用いることを特徴とする。
また、請求項5記載の方法は、請求項4記載の方法において、TGSを発動させるためのsiRNAとその標的配列に相補的な配列を有するRNAを、アグロインフィルトレーション法によって一過的にタバコにおいて産生せしめることを特徴とする。
また、請求項6記載の方法は、請求項4記載の方法において、台木がタバコと接ぎ木が成立する植物であることを特徴とする。
また、本発明の植物の形質転換個体の取得方法は、請求項7記載の通り、請求項1記載の方法によって台木の形質転換を行った後、台木の主根の側根からの再分化個体を形質転換個体として取得することを特徴とする。
また、請求項2記載の方法は、請求項1記載の方法において、TGSを発動させるためのsiRNAを穂木において産生せしめる方法として、標的遺伝子のプロモーター領域に相同な配列を有するsiRNAを産生することができる、CoYMVプロモーターを用いたベクターを導入したアグロバクテリウムを穂木に感染させる方法を用いることを特徴とする。
また、請求項3記載の方法は、請求項1記載の方法において、TGSを発動させるためのsiRNAの標的配列に相補的な配列を有するRNAを穂木において産生せしめる方法として、プロモーター、siRNAの標的配列の少なくとも一部を含むヌクレオチド、配列表の配列番号1に記載の配列を少なくとも含むヌクレオチド、ターミネーターを5’側からこの順番で有してなるベクターを導入したアグロバクテリウムを穂木に感染させる方法を用いることを特徴とする。
また、請求項4記載の方法は、請求項1記載の方法において、穂木としてタバコ(Nicotiana benthamiana)を用いることを特徴とする。
また、請求項5記載の方法は、請求項4記載の方法において、TGSを発動させるためのsiRNAとその標的配列に相補的な配列を有するRNAを、アグロインフィルトレーション法によって一過的にタバコにおいて産生せしめることを特徴とする。
また、請求項6記載の方法は、請求項4記載の方法において、台木がタバコと接ぎ木が成立する植物であることを特徴とする。
また、本発明の植物の形質転換個体の取得方法は、請求項7記載の通り、請求項1記載の方法によって台木の形質転換を行った後、台木の主根の側根からの再分化個体を形質転換個体として取得することを特徴とする。
本発明によれば、TGSを発動させるためのsiRNAとともにその標的配列に相補的な配列を有するRNAを穂木において産生せしめ、穂木から台木に輸送し、台木においてsiRNAとその標的配列に相補的な配列を有するRNAを共存させることで、RNA上でのトランジティビティ現象を起動させてsiRNAを増幅し、全身性の遺伝子サイレンシングを起こすことができるので、台木と穂木の接ぎ木を介して植物の形質転換を効果的に行うことができる。
本発明の台木と穂木の接ぎ木を介して行う植物の形質転換方法は、TGSを発動させるためのsiRNAとその標的配列に相補的な配列を有するRNAを穂木において産生せしめ、穂木において産生されたsiRNAとその標的配列に相補的な配列を有するRNAを接ぎ木を介して台木に輸送し、TGSを台木において発動させることによって台木の形質転換を行うことを特徴とするものである。以下、「TGSを発動させるためのsiRNA」を単に「siRNA」と略称し、「TGSを発動させるためのsiRNAの標的配列に相補的な配列を有するRNA」を単に「標的相補RNA」と略称することもある。
本発明において、TGSを発動させるためのsiRNAを穂木において産生せしめる方法としては、標的遺伝子のプロモーター領域に相同な配列を有するsiRNAを産生することができるベクターを、例えば、Agrobacterium tumefacience EHA105株などのアグロバクテリウムに導入した後、siRNA産生ベクターを保持したアグロバクテリウムを穂木として用いる植物の葉片に自体公知の方法で感染させ、ベクター内のT−DNAの挿入によって目的とする形質転換が行われた細胞から再分化個体を取得し、この再分化個体を育成して穂木として用いる方法が挙げられる。また、穂木としてタバコ(Nicotiana benthamiana)を用いる場合、アグロインフィルトレーション法によってTGSを発動させるためのsiRNAを一過的にタバコにおいて産生せしめることもできる(必要であれば例えばBurow,M.D.ら、Plant Mol.Biol.Rep.8:124−139.1990やRatchlif,F.CG.ら、Plant Cell 11:1207−1216.1999などを参照のこと)。
siRNA産生ベクターとしては、プロモーターとターミネーターの間に、標的遺伝子のプロモーター領域のセンス鎖配列(siRNAの標的配列:部分的であってもよい)とそのアンチセンス鎖配列との逆位方向反復塩基配列(Inverted Repeat Sequence)構造を組み込んだ構成を有するものが挙げられる(逆位方向反復塩基配列構造の間にスペーサーを連結してもよい)。穂木において産生されたsiRNAを篩管を通して台木に効率的に輸送するためには、プロモーターは、篩管輸送の起点である伴細胞で特異的に機能するプロモーター、例えば、CoYMV(Commelina yellow mottole virus)プロモーターを用いることが望ましい。なお、ターミネーターとしては、植物体内でターミネーターとして機能する例えばNOSターミネーターなどが挙げられる。
本発明において、TGSを発動させるためのsiRNAの標的配列に相補的な配列を有するRNAを穂木において産生せしめる方法としては、プロモーター、siRNAの標的配列の少なくとも一部を含むヌクレオチド、配列表の配列番号1に記載の配列を少なくとも含むヌクレオチド、ターミネーターを5’側からこの順番で有してなる標的相補RNA産生ベクターを、例えば、Agrobacterium tumefacience EHA105株などのアグロバクテリウムに導入した後、標的相補RNA産生ベクターを保持したアグロバクテリウムを穂木として用いる植物の葉片に自体公知の方法で感染させ、ベクター内のT−DNAの挿入によって目的とする形質転換が行われた細胞から再分化個体を取得し、この再分化個体を育成して穂木として用いる方法が挙げられる。また、穂木としてタバコを用いる場合、アグロインフィルトレーション法によって標的相補RNAを一過的にタバコにおいて産生せしめることもできる(前述の通り)。
標的相補RNA産生ベクターは、本発明者らが提案した植物の篩管を通してRNAを輸送するためのベクターシステムを用いて作製することができる(特開2010−75116号公報)。配列表の配列番号1に記載の配列からなるヌクレオチドは、1951個の塩基から構成されるシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)由来のRGA2遺伝子(cDNA:Accession No.Y11337)の952〜1194bpの領域の243個の塩基から構成されるヌクレオチドである。プロモーターは、篩管輸送の起点である伴細胞で特異的に機能するプロモーター、例えば、CoYMVプロモーターを用いることが望ましい。なお、ターミネーターとしては、植物体内でターミネーターとして機能する例えばNOSターミネーターなどが挙げられる。
TGSを発動させるためのsiRNAとその標的配列に相補的な配列を有するRNAを穂木において産生せしめるための方法としては、例えば、siRNA産生ベクターを保持したアグロバクテリウムと標的相補RNA産生ベクターを保持したアグロバクテリウムのそれぞれを穂木として用いる植物の葉片に感染させ、それぞれの目的とする形質転換が行われた細胞からそれぞれの再分化個体を取得し、それぞれの再分化個体を育成して両者を穂木とするY字接ぎ木法(Notaguchi M.ら、J.Plant Res.122:201−204.2009)を用いて行う方法が挙げられる。また、穂木としてタバコを用い、アグロインフィルトレーション法によってsiRNAと標的相補RNAを一過的にタバコにおいて産生せしめるためには、タバコと台木を予め接ぎ木した後、タバコの異なる葉のそれぞれにsiRNA産生ベクターを保持したアグロバクテリウムと標的相補RNA産生ベクターを保持したアグロバクテリウムのそれぞれを自体公知の方法で同時にまたは時を前後してインフィルトレートすればよい。できるだけ多くのsiRNAと標的相補RNAを穂木において産生せしめ、穂木から台木に輸送するためには、Y字接ぎ木法を用いて行う方法などを採用するよりも、穂木としてタバコを用い、アグロインフィルトレーション法によってsiRNAと標的相補RNAを一過的にタバコにおいて産生せしめる方法を採用することが望ましい。
本発明の適用対象となる植物は、台木と穂木のいずれについても接ぎ木が成立する植物であれば特段の制限はない。接ぎ木の手法は自体公知の手法であってよい。本発明によれば、ソース力が強い穂木からシンク力が強い台木に接ぎ木を介してTGSを発動させるためのsiRNAとその標的配列に相補的な配列を有するRNAを輸送することで、台木においてRNA上でのトランジティビティ現象が起動してsiRNAが増幅され、全身性の遺伝子サイレンシングが起こることによって台木を効果的に形質転換することができる。台木において発動されたTGSは後代に遺伝するので、台木の主根の篩管に隣接する内鞘細胞(pericycle cell)が分裂して形成される側根から組織培養を通して再分化個体を取得したり、いわゆる「ひこばえ」が見られる植物(例えばブルーベリーやリンゴなどの果樹)においては根系不定芽体(Root sucker)から組織培養を通して再分化個体として取得したり、台木の茎切片から組織培養を通して再分化個体を取得したりすれば、これらは遺伝子サイレンシングが維持された形質転換個体であるので、品種改良個体として育成することができる。とりわけ、穂木としてタバコを用いた場合、同じナス科植物(Solanaceae)に属するナスやトマトやジャガイモを台木とすることで接ぎ木が成立するので、本発明はこうした作物の品種改良の手段として利用することができる。また、穂木としてタバコを用いた場合、タバコと接ぎ木が成立しない植物(例えばリンゴ)を台木としても、アグロインフィルトレーション法によってsiRNAと標的相補RNAを一過的にタバコにおいて産生せしめ、台木との間で切り口を密着させる接ぎ木形態を短期間でもとりさえずれば、siRNAと標的相補RNAがタバコから台木に輸送され、台木においてTGSを発動させることができる。
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定して解釈されるものではない。
実施例1:
台木としてトマト(Solanum lycopersicum)を、穂木としてタバコ(Nicotiana benthamiana)を用い、接ぎ木を介してトマトの内生遺伝子に対してTGSを発動させ、遺伝子サイレンシングを起こす実験を以下のようにして行った。
台木としてトマト(Solanum lycopersicum)を、穂木としてタバコ(Nicotiana benthamiana)を用い、接ぎ木を介してトマトの内生遺伝子に対してTGSを発動させ、遺伝子サイレンシングを起こす実験を以下のようにして行った。
(実験方法)
(1)TGS発動siRNAを穂木として用いるタバコにおいて産生させるためのsiRNA産生ベクターの作製
トマトの内生遺伝子として知られているウイロイド増殖に必須のSlVirp1遺伝子のプロモーターの−44〜−1024bpの領域(tomato genomic annotations SL2.40ch01)とそのアンチセンス鎖配列との逆位方向反復塩基配列構造の間にCAT1(カタラーゼ)遺伝子由来のイントロン(配列長:201bp、Ohta S.ら、Plant and Cell Physiology 31:805−813.1990)をスペーサーとして連結して組み込んだ。このユニットを、バイナリーベクターpE2113−GUS(Mitsuhara I.ら、Plant Cell Physiology 37:49−59.1996)のBamHI/SacI部位のGUS(beta−glucuronidase)遺伝子と入れ換えて35S:SlVirp1proIRを構築した。次に、伴細胞で特異的に機能するプロモーターであるCoYMVpをpCOI(Matsuda、Y.ら、Protoplasma 220:51−58.2002)によりPCR増幅し、これを35S:SlVirp1proIRのSalI/BamIH部位と入れ換えることで、目的のsiRNA産生ベクター(CoYMV:SlVirp1proIR)を得た(図1)。
(1)TGS発動siRNAを穂木として用いるタバコにおいて産生させるためのsiRNA産生ベクターの作製
トマトの内生遺伝子として知られているウイロイド増殖に必須のSlVirp1遺伝子のプロモーターの−44〜−1024bpの領域(tomato genomic annotations SL2.40ch01)とそのアンチセンス鎖配列との逆位方向反復塩基配列構造の間にCAT1(カタラーゼ)遺伝子由来のイントロン(配列長:201bp、Ohta S.ら、Plant and Cell Physiology 31:805−813.1990)をスペーサーとして連結して組み込んだ。このユニットを、バイナリーベクターpE2113−GUS(Mitsuhara I.ら、Plant Cell Physiology 37:49−59.1996)のBamHI/SacI部位のGUS(beta−glucuronidase)遺伝子と入れ換えて35S:SlVirp1proIRを構築した。次に、伴細胞で特異的に機能するプロモーターであるCoYMVpをpCOI(Matsuda、Y.ら、Protoplasma 220:51−58.2002)によりPCR増幅し、これを35S:SlVirp1proIRのSalI/BamIH部位と入れ換えることで、目的のsiRNA産生ベクター(CoYMV:SlVirp1proIR)を得た(図1)。
(2)TGS発動siRNAの標的配列に相補的な配列を有するRNAを穂木として用いるタバコにおいて産生させるためのRNA産生ベクターの作製
特開2010−75116号公報に記載の方法に従って作製した。まず、バイナリーベクターpE2113−GUS(Mitsuhara I.ら、Plant Cell Physiology 37:49−59.1996)からHindIII/SacI部位の35SプロモーターとGUS遺伝子を切り出し、そこに配列表の配列番号1に記載のRGA2遺伝子(cDNA:Accession No.Y11337)の952〜1194bpの領域の243個の塩基から構成されるヌクレオチド(以下「−243」と略称)を制限酵素サイト付加プライマーを用いてPCR増幅して組み込んだ。次に、伴細胞で特異的に機能するプロモーターであるCoYMVpをpCOI(Matsuda、Y.ら、Protoplasma 220:51−58.2002)によりPCR増幅し、そのSalI/BamHI部位に−243で挿入することでCoYMV:−243を構築した。最後に、SlVirp1遺伝子のプロモーターの−44〜−1024bpの領域(tomato genomic annotations SL2.40ch01)をPCR増幅し、CoYMV:−243のBamHI/XhoI部位に組み込むことで、目的の標的相補RNA産生ベクター(CoYMV:SlVirp1pro−243)を得た(図1)。
特開2010−75116号公報に記載の方法に従って作製した。まず、バイナリーベクターpE2113−GUS(Mitsuhara I.ら、Plant Cell Physiology 37:49−59.1996)からHindIII/SacI部位の35SプロモーターとGUS遺伝子を切り出し、そこに配列表の配列番号1に記載のRGA2遺伝子(cDNA:Accession No.Y11337)の952〜1194bpの領域の243個の塩基から構成されるヌクレオチド(以下「−243」と略称)を制限酵素サイト付加プライマーを用いてPCR増幅して組み込んだ。次に、伴細胞で特異的に機能するプロモーターであるCoYMVpをpCOI(Matsuda、Y.ら、Protoplasma 220:51−58.2002)によりPCR増幅し、そのSalI/BamHI部位に−243で挿入することでCoYMV:−243を構築した。最後に、SlVirp1遺伝子のプロモーターの−44〜−1024bpの領域(tomato genomic annotations SL2.40ch01)をPCR増幅し、CoYMV:−243のBamHI/XhoI部位に組み込むことで、目的の標的相補RNA産生ベクター(CoYMV:SlVirp1pro−243)を得た(図1)。
(3)siRNA産生ベクターと標的相補RNA産生ベクターのそれぞれのアグロバクテリウムへの導入
アグロバクテリウムとしてAgrobacterium tumefacience EHA105株を用い、その単一コロニーをLB培地(組成は表1参照)に抗生物質(50mg/LのRifampicin)を添加した培地に植え付け、28℃で24時間振盪培養し、継代してさらに12時間振盪培養した。その後、4℃にて6000rpmで10分間遠心し、回収した菌を滅菌水および10%グリセロールで洗浄した。この菌のペレットを10%グリセロール1mLで懸濁し、そのうちの40μLを(1)と(2)のそれぞれで作製したsiRNA産生ベクターと標的相補RNA産生ベクターのそれぞれ0.5〜1.0μgと混合し、混合液をキュベットに移し、20kV/cm,6msの条件でエレクトロポレーションすることで、siRNA産生ベクターと標的相補RNA産生ベクターのそれぞれをアグロバクテリウムに導入した。電圧をかけたキュベット内の反応液にLB培地1mLを加え、1.5mLチューブに回収し、28℃で24時間培養した。抗生物質(50mg/LのRifampicinおよび50mg/LのKanamycin)を含むLB寒天培地上に培養液を塗布し、28℃で3日間培養した。得られたコロニーを新しいLB培地で培養し、アグロバクテリウム感染に用いた。
アグロバクテリウムとしてAgrobacterium tumefacience EHA105株を用い、その単一コロニーをLB培地(組成は表1参照)に抗生物質(50mg/LのRifampicin)を添加した培地に植え付け、28℃で24時間振盪培養し、継代してさらに12時間振盪培養した。その後、4℃にて6000rpmで10分間遠心し、回収した菌を滅菌水および10%グリセロールで洗浄した。この菌のペレットを10%グリセロール1mLで懸濁し、そのうちの40μLを(1)と(2)のそれぞれで作製したsiRNA産生ベクターと標的相補RNA産生ベクターのそれぞれ0.5〜1.0μgと混合し、混合液をキュベットに移し、20kV/cm,6msの条件でエレクトロポレーションすることで、siRNA産生ベクターと標的相補RNA産生ベクターのそれぞれをアグロバクテリウムに導入した。電圧をかけたキュベット内の反応液にLB培地1mLを加え、1.5mLチューブに回収し、28℃で24時間培養した。抗生物質(50mg/LのRifampicinおよび50mg/LのKanamycin)を含むLB寒天培地上に培養液を塗布し、28℃で3日間培養した。得られたコロニーを新しいLB培地で培養し、アグロバクテリウム感染に用いた。
(4)台木としてのトマトと穂木としてのタバコの接ぎ木
トマト(Solanum lycopersicum CV.Rutgurs)の種子とタバコ(Nicotiana benthamiana)の種子のそれぞれを、2%次亜塩素酸ナトリウムと0.01%Tween20の水溶液で殺菌し、MS寒天(0.7%)培地上に播種した。発芽から約7日後のそれぞれの幼苗体を、下胚軸中位部分で水平にカットし、実体顕微鏡下、内径0.7mmの医療用マイクロシリコンチューブ(TechJam,Osaka,Japan)内で、台木側のトマトのカット面と穂木側のタバコのカット面を密着させて接ぎ木し、MS寒天培地上で再度生育させた。7日後、実体顕微鏡下にてシリコンチューブをメスで切除し、接ぎ木個体を、液体肥料(Otsuka House Nos.1 and 2,Otsuka Chemical Co.)に湿潤させた栽培用ロックウール(Nitto Boseki Co.)に移植して培養庫内で約2週間栽培した。その後、接ぎ木個体の穂木側のタバコの第6〜8位に相当する2枚の葉のみを残して、その下の葉および上位にあたる葉をカミソリ刃で切除した。
トマト(Solanum lycopersicum CV.Rutgurs)の種子とタバコ(Nicotiana benthamiana)の種子のそれぞれを、2%次亜塩素酸ナトリウムと0.01%Tween20の水溶液で殺菌し、MS寒天(0.7%)培地上に播種した。発芽から約7日後のそれぞれの幼苗体を、下胚軸中位部分で水平にカットし、実体顕微鏡下、内径0.7mmの医療用マイクロシリコンチューブ(TechJam,Osaka,Japan)内で、台木側のトマトのカット面と穂木側のタバコのカット面を密着させて接ぎ木し、MS寒天培地上で再度生育させた。7日後、実体顕微鏡下にてシリコンチューブをメスで切除し、接ぎ木個体を、液体肥料(Otsuka House Nos.1 and 2,Otsuka Chemical Co.)に湿潤させた栽培用ロックウール(Nitto Boseki Co.)に移植して培養庫内で約2週間栽培した。その後、接ぎ木個体の穂木側のタバコの第6〜8位に相当する2枚の葉のみを残して、その下の葉および上位にあたる葉をカミソリ刃で切除した。
(5)siRNA産生コンストラクトと標的相補RNA産生コンストラクトのそれぞれの穂木タバコへのアグロインフィルトレーション
液体LB培地5mLに抗生物質(50mg/LのRifampicinおよび50mg/LのKanamycin)を添加し、siRNA産生ベクター(CoYMV:SlVirp1ProIR)を保持したアグロバクテリウムと標的相補RNA産生ベクター(CoYMV:SlVirp1Pro−243)を保持したアグロバクテリウムのそれぞれを28℃で16〜18時間、前培養した。次に、液体LB培地に10μMのacetosyringoneを添加して調製した培地に1/50量の前培養液を加えて28℃で12〜16時間、本培養した。こうして得た本培養液を室温にて8000rpmで5分間遠心し、回収した菌をOD600=1.0になるように懸濁液(10μMのMES−KOH(pH5.2),10mMのMgCl2,100μMのacetosyringone)に懸濁した後、2時間程度静置した。(4)において作製した接ぎ木個体の穂木タバコの2枚の葉の一方の裏側にsiRNA産生ベクターを保持したアグロバクテリウムを含む懸濁液0.5mLを、他方の裏側に標的相補RNA産生ベクターを保持したアグロバクテリウムを含む懸濁液0.5mLを、それぞれシリンジ(ツベルクリン1mL、ニプロ)を用いて主葉脈(中肋)を避けて4箇所にインフィルトレートした。
液体LB培地5mLに抗生物質(50mg/LのRifampicinおよび50mg/LのKanamycin)を添加し、siRNA産生ベクター(CoYMV:SlVirp1ProIR)を保持したアグロバクテリウムと標的相補RNA産生ベクター(CoYMV:SlVirp1Pro−243)を保持したアグロバクテリウムのそれぞれを28℃で16〜18時間、前培養した。次に、液体LB培地に10μMのacetosyringoneを添加して調製した培地に1/50量の前培養液を加えて28℃で12〜16時間、本培養した。こうして得た本培養液を室温にて8000rpmで5分間遠心し、回収した菌をOD600=1.0になるように懸濁液(10μMのMES−KOH(pH5.2),10mMのMgCl2,100μMのacetosyringone)に懸濁した後、2時間程度静置した。(4)において作製した接ぎ木個体の穂木タバコの2枚の葉の一方の裏側にsiRNA産生ベクターを保持したアグロバクテリウムを含む懸濁液0.5mLを、他方の裏側に標的相補RNA産生ベクターを保持したアグロバクテリウムを含む懸濁液0.5mLを、それぞれシリンジ(ツベルクリン1mL、ニプロ)を用いて主葉脈(中肋)を避けて4箇所にインフィルトレートした。
(6)台木としてのトマトにおけるTGS発動の観察
(5)におけるアグロインフィルトレーションから7日後、接ぎ木してから新たに成長してきた側根をサンプリングし、TRIzol(invitrogen)を用いてtotalRNAを抽出した。TURBO DNA−free Kit(Life tech.)を用いてサンプリングした側根より、抽出したtotalRNAを用いてSuperScript VILO(invitrogen)による逆転写反応を行った。得られたcDNAを鋳型にしてSsoFast EvaGreen Supermix(BIO−RAD)を用いた定量的RT−PCR解析を行い、標的遺伝子としたSlVirp1遺伝子の側根における発現の程度を調べた。なお、SlVirp1遺伝子転写物の定量的RT−PCR解析は、その2005〜2168bpの領域を増幅するためのプライマーセット(配列表の配列番号2に記載の5’−CCGGAAGTGACTCTGATGCT−3’と配列番号3に記載の5’−CCTAGGTTGCCCATGTGTTT−3’)を用いて行った。また、内部補正には、アクチン遺伝子(Li L.ら、Journal of the science of food and agriculture 91:2308−14.2011)を用いた。
(5)におけるアグロインフィルトレーションから7日後、接ぎ木してから新たに成長してきた側根をサンプリングし、TRIzol(invitrogen)を用いてtotalRNAを抽出した。TURBO DNA−free Kit(Life tech.)を用いてサンプリングした側根より、抽出したtotalRNAを用いてSuperScript VILO(invitrogen)による逆転写反応を行った。得られたcDNAを鋳型にしてSsoFast EvaGreen Supermix(BIO−RAD)を用いた定量的RT−PCR解析を行い、標的遺伝子としたSlVirp1遺伝子の側根における発現の程度を調べた。なお、SlVirp1遺伝子転写物の定量的RT−PCR解析は、その2005〜2168bpの領域を増幅するためのプライマーセット(配列表の配列番号2に記載の5’−CCGGAAGTGACTCTGATGCT−3’と配列番号3に記載の5’−CCTAGGTTGCCCATGTGTTT−3’)を用いて行った。また、内部補正には、アクチン遺伝子(Li L.ら、Journal of the science of food and agriculture 91:2308−14.2011)を用いた。
(実験結果)
実施例1において用いた台木としてのトマトにおけるTGS発動システムの概略を図2に示す。このシステムを利用してsiRNAと標的相補RNAを穂木タバコにおいて産生せしめ、接ぎ木を介して両者を台木トマトに輸送することで、台木トマトの側根における標的遺伝子としたSlVirp1遺伝子の発現量が減少することを確認することができた。その減少の程度は、siRNAだけを穂木タバコにおいて産生せしめ、接ぎ木を介して台木トマトに輸送した場合よりも効果的であった。これは、siRNAとともに標的相補RNAを穂木タバコから台木トマトに輸送したことで、台木トマトにおいてRNA上でのトランジティビティ現象が起動し、siRNAの増幅によって全身性の遺伝子サイレンシングが起きたことによるものと推察できた。以上の結果から、本発明によれば、台木と穂木の接ぎ木を介して植物の形質転換を効果的に行うことができることがわかった。
実施例1において用いた台木としてのトマトにおけるTGS発動システムの概略を図2に示す。このシステムを利用してsiRNAと標的相補RNAを穂木タバコにおいて産生せしめ、接ぎ木を介して両者を台木トマトに輸送することで、台木トマトの側根における標的遺伝子としたSlVirp1遺伝子の発現量が減少することを確認することができた。その減少の程度は、siRNAだけを穂木タバコにおいて産生せしめ、接ぎ木を介して台木トマトに輸送した場合よりも効果的であった。これは、siRNAとともに標的相補RNAを穂木タバコから台木トマトに輸送したことで、台木トマトにおいてRNA上でのトランジティビティ現象が起動し、siRNAの増幅によって全身性の遺伝子サイレンシングが起きたことによるものと推察できた。以上の結果から、本発明によれば、台木と穂木の接ぎ木を介して植物の形質転換を効果的に行うことができることがわかった。
本発明は、TGSを発動させるためのsiRNAを用い、全身性の遺伝子サイレンシングを起こすことで台木と穂木の接ぎ木を介して植物の形質転換を効果的に行う方法を提供することができる点において産業上の利用可能性を有する。
Claims (7)
- 台木と穂木の接ぎ木を介して植物の形質転換を行う方法であって、転写型遺伝子サイレンシングを発動させるためのsiRNAとその標的配列に相補的な配列を有するRNAを穂木において産生せしめ、穂木において産生されたsiRNAとその標的配列に相補的な配列を有するRNAを接ぎ木を介して台木に輸送し、転写型遺伝子サイレンシングを台木において発動させることによって台木の形質転換を行うことを特徴とする方法。
- 転写型遺伝子サイレンシングを発動させるためのsiRNAを穂木において産生せしめる方法として、標的遺伝子のプロモーター領域に相同な配列を有するsiRNAを産生することができる、CoYMVプロモーターを用いたベクターを導入したアグロバクテリウムを穂木に感染させる方法を用いることを特徴とする請求項1記載の方法。
- 転写型遺伝子サイレンシングを発動させるためのsiRNAの標的配列に相補的な配列を有するRNAを穂木において産生せしめる方法として、プロモーター、siRNAの標的配列の少なくとも一部を含むヌクレオチド、配列表の配列番号1に記載の配列を少なくとも含むヌクレオチド、ターミネーターを5’側からこの順番で有してなるベクターを導入したアグロバクテリウムを穂木に感染させる方法を用いることを特徴とする請求項1記載の方法。
- 穂木としてタバコ(Nicotiana benthamiana)を用いることを特徴とする請求項1記載の方法。
- 転写型遺伝子サイレンシングを発動させるためのsiRNAとその標的配列に相補的な配列を有するRNAを、アグロインフィルトレーション法によって一過的にタバコにおいて産生せしめることを特徴とする請求項4記載の方法。
- 台木がタバコと接ぎ木が成立する植物であることを特徴とする請求項4記載の方法。
- 植物の形質転換個体の取得方法であって、請求項1記載の方法によって台木の形質転換を行った後、台木の主根の側根からの再分化個体を形質転換個体として取得することを特徴とする方法。
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Cited By (2)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JP2022548397A (ja) * | 2019-09-20 | 2022-11-18 | ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ、 アズ リプレゼンティッド バイ ザ セクレタリー オブ アグリカルチャー | 植物ゲノムを改変させずに植物特徴を改変させるための組成物および方法 |
| CN116144699A (zh) * | 2022-11-25 | 2023-05-23 | 中国农业大学 | 一种植物砧穗间运输蛋白质的载体及其应用 |
Citations (1)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JP2010075116A (ja) * | 2008-09-26 | 2010-04-08 | Hirosaki Univ | 植物の篩管を通して遺伝子の転写物を輸送する方法 |
-
2012
- 2012-03-27 JP JP2012071387A patent/JP2013201911A/ja active Pending
Patent Citations (1)
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| Title |
|---|
| JPN6016002611; 基礎的研究業務研究成果集 , 20120312, pp.1-2 * |
| JPN6016002614; J. Exp. Bot. vol.62, no.13, 2011, pp.4561-4570, Suppl.1-7 * |
| JPN6016002616; PLoS One vol.6, no.2, 2011, pp.e16895(1-6) * |
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| CN116144699B (zh) * | 2022-11-25 | 2023-10-31 | 中国农业大学 | 一种植物砧穗间运输蛋白质的载体及其应用 |
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