上記特許文献1に記載の従来の有機ELの製造方法においては、真空チャンバを複数に分割し、分割したそれぞれのチャンバでの動作を異ならせているので、一方の基板が蒸着中に他方の基板の搬入または搬出が可能になり、成膜の能率が向上する。しかしながら、この公報に記載の方法では、基板とマスクのアライメントについて、基板を直立させた後、アライメントカメラによりマスクおよび基板に設けられたアライメントマークを撮像し、アライメント機構でマスクを動かしてアライメントすることが記載されているだけで、実際のアライメントにおいてマスクと基板間の密着度がどの程度であるかについては、十分には考慮されていない。
一般的にマスクは、成膜する部分に微小な孔の開いた厚さ数十μmのマスクシートを有し、マスクシートの外周にマスクシートを保持するための強固な金属枠(マスクフレーム)が設けられている。金属枠とマスクシートとは溶接接合されており、総称してマスクと呼ばれている。
ところで、有機EL膜等の形成に当たっては、基板の前面に配置されるマスクの孔にいかに忠実に蒸着膜が形成されるかが重要となる。マスクと基板は機械的に密着させているが、実際には、基板を保持するための基板支持板とマスクフレームには部品加工時の歪があり、基板とマスクの全面を密着させることはできない。このような場合には、真空蒸着後の基板面を観察すると、マスクに形成した孔をなぞってほぼ均一厚さの膜が形成されている一方、孔の周囲には孔部に形成した膜厚さに比較して非常に薄い斜面状の膜が形成されている。この斜面状の膜の幅は最大で数十μm以上になることもある。
有機物分子は蒸発源から一定の噴射角を持って噴射されるので、マスクと基板の隙間が大きいほど広い範囲に成膜され、上記斜面状の膜が広い範囲に形成されることになる。近年、小型画面で高精細なディスプレイが求められ、画素配置の密度(PPI:ピクセル パー インチ)が高まっており、300PPI程度まで高くなると予想されている。一方、成膜される膜の面積を広く取り、高い輝度を確保する傾向にあるため、例えばR発光膜とG発光膜の間隔は狭くなり、上記斜面状の膜を限りなく小さくすることが要求されている。
ディスプレイの場合、電流を制御して各色を発光させる際に、斜面状の膜近傍の膜厚が薄くなり輝度が不均一になるとともに、劣化も早く、有効な膜として使用できない。そのため、マスクと基板とを密着させることにより、斜面状の膜の形成を限りなく小さくすることが強く求められている。
本発明は上記従来技術の不具合に鑑みなされたものであり、その目的は成膜装置および成膜方法において、蒸着膜を形成する際に不要な斜面状の膜が生じないように、マスクと基板との間の隙間を無くしてマスクと基板とを密着させることにある。本発明の他の目的は、有機EL用の成膜装置および成膜方法において、マスクと基板とを密着させることにある。
上記目的を達成する本発明の特徴は、真空チャンバ内に搬入された有機ELデバイス用基板にマスクを介して蒸発源から噴射される蒸着物質を成膜する成膜装置において、前記基板を垂直に保持する基板支持手段の前記基板に対向する表面を前記基板側に凸の曲面で構成したことにある。
そしてこの特徴において、前記基板支持手段と前記基板との間に、シリコンゴム製の緩衝シートを配置してもよく、前記基板支持手段の上端部および下端部にシリコンゴム製の緩衝材を配置してもよい。また、基板支持手段の前記基板側表面に多数の突起を間隔を置いて配列してもよい。
上記目的を達成する本発明の他の特徴は、真空チャンバ内に有機ELデバイス用基板を水平状態で搬入し、その後前記基板を垂直状態に保持し、この垂直状態に保持された基板の蒸発源に対向する面とは反対側の面である背面側に配置した曲面で構成した基板支持板を前記基板側に押圧し、前記基板の前面側に配置したマスクのマスクシートをこの基板形状に倣わせるようにしたことにある。
そしてこの特徴において、前記基板支持板の前記基板側表面をこの基板側に凸の曲面とし、前記マスクシートを前記基板のマスクシートに対向する面の形状に倣わせるようにするのがよい。
本発明によれば、基板背面に配置した基板支持板の表面を滑らかな曲面としたので、成膜方法および成膜装置において、蒸着膜を形成する際に不要な斜面状の膜を生ぜず、マスクと基板との間の隙間を無くして、マスクと基板とが密着する。また、有機EL用の成膜装置および成膜方法において、基板およびマスクが基板支持板に倣って変形するので、マスクと基板とが密着できる。
以下、本発明に係る成膜装置の実施例を、図面を用いて説明する。図1は、成膜装置に用いる基板支持板の一実施例の正面図(同図(a))およびその部分拡大図(同図(b))である。図2は、図1に示した基板支持板の作用を説明する図で、その縦断面図である。図3は、図1に示した基板支持板を内蔵した成膜装置の一実施例の縦断面図であり、図4は成膜装置の主要部の斜視図、図5は、成膜装置に使用するマスクの一例を示す図である。
初めに、図3、4を用いて、本発明に係る成膜装置100の概要を説明する。以下の説明では、有機ELデバイスでの成膜について説明するが、本発明は有機ELデバイスに限るものではなく、通常のELデバイス等にも適用できることは言うまでもない。また、本実施例で説明する基板6は第5〜第6世代であり、1500mm×1800mmの大きさにもなるものである。
成膜装置100は、図示しない真空ポンプで真空引きされた真空チャンバ1と、この真空チャンバ1へ基板6を搬入、搬送する際に真空チャンバ1を開閉するゲート弁10とを有している。成膜装置100で成膜中は、真空チャンバ1内はゲート弁10により仕切られ、10−5Paオーダの圧力に保たれる。
基板6は、図示しない搬送手段を用いて機外からこの真空チャンバ1へ、水平状態で導かれる。そして、基板を載置可能で回動可能に設けられた基板保持手段90に載置される。基板保持手段90は真空チャンバ内1に固定された回転機構92に接続されており、回転機構92により水平位置から垂直位置まで、90度回動可能になっている。基板保持手段90は、基板6を保持し、基板載置面を形成する基板支持板91を有している。基板支持板91は、成膜時に基板6の温度が過度に上昇するのを防止するために、その内部に冷却手段、例えば冷却流路が形成されており、CP(冷却板)とも呼ばれる。基板6が回動して垂直方向に位置したときに、基板支持板91の上端部および下端部になる位置の近傍には、アライメントカメラ86が取り付けられている。
基板6を回動して垂直状態になる位置に対向して、詳細を後述するマスク81が真空チャンバ1に固定した保持手段を介して、垂直に保持される。つまり、マスク81はその背面側(基板6に対向する側の反対側)周縁部で、マスクホルダ89により固定保持される。マスクホルダ89の上部は、この真空チャンバ1の外側にモータが取り付けられたアライメント駆動部83に接続されている。
マスク81から少し距離を置いて、左右方向(図ではY方向)に延びる蒸発源71が配置されている。蒸発源71は、上下方向に移動可能になっている。蒸発源71の上下方向の移動およびマスク81のアライメントの調節は、コントローラ200の指示により実行される。
ここで、アライメントの詳細を、図4を用いて説明する。なおこの図4では基板6を左右に2枚取り付け可能な場合を示しているが、基板6の取り付けが1枚しかできない場合でも、以下の説明は同様に適用できる。右側の基板6をアライメントする場合である。真空チャンバ1内に搬送された基板6は、最初水平状態になっている。基板支持板91に保持されているので、回転機構92を用いてずり落ちることなく、基板6は垂直に立てられる。
マスク81の角部にはアライメントマークとしての窓(開口部)85が形成されており、基板6に設けたアライメントマークと、窓85をアライメントカメラ86で撮像してアライメントを行う。この撮像に基づいてアライメント駆動部83がマスク81の位置を調整し、マスク81と基板6との位置決めが実行される。位置決めが終了したら、蒸発源71を移動させて、蒸着を実行する。
PPIの高い基板6を作成するための蒸着用のマスク81では、長方形の孔が開けられている。この多数の孔は、エッチング等により形成されている。多数の孔が形成されたマスクシート81aは、張力を加えてマスクフレーム81bに溶接固定されている。なお、マスクフレーム81bは、基板6のサイズが第5〜第6世代では1500mm×1800mmにも達しているので、その基板6に応じた大きさとなっている。そのため、製作過程の加工誤差等により、数百μmの変形を生じている。蒸着時には、マスクフレーム81bを装置のマスク固定板に押し付け保持するが、上記製作過程で生じた変形を完全に強制することは困難であった。
ところで、従来からガラス基板と薄板のマスクの密着については十分検討されているが、成膜後の基板を調べると斜面状の膜が形成されている場合が多い。この原因の一つは、ガラス基板6と薄板のマスク81の間に非常に微細な隙間が形成されることにあると本願発明者らは考えて、隙間を可能な限りゼロとすることとした。
図1および図2に、基板支持板91部を詳細に示す。図1(a)は、基板支持板91の正面図および縦断面図であり、図1(b)は、図1(a)のA部詳細平面図およびその縦断面図である。また、図2(a)は基板6とマスク81のアライメント前の状態を、図2(b)は基板6とマスク81のアライメント後の状態を、それぞれ縦断面で示した図である。
基板6の背面側に配置される基板支持板91は、上記アライメントの際に、基板6を背面側からマスクシート81に押し付けるように作用する。そこで、マスクシート81aをわずかに変形させ、基板6に倣うようにする。基板6はガラス製なので、僅かの変形を有して垂直に保持される。
基板支持板91の基板側表面は、全体として基板6側に凸の曲面とすることが可能である。ここで、基板支持板91の表面には従来から幅W、高さhの無数の突起91bが間隔cで形成されている。この突起91bは、基板6を他の真空チャンバ1へ移動させるときに、基板6が基板支持板91に密着し基板6を剥離させるときに抵抗が増大するのを防止すること、および基板6を剥離させるときに帯電を防止することのために形成される。
この突起91b部の形状を全体として曲面とすることで、基板支持板91のガラス基板6へ密着させることができる。本実施例では、曲率を有する孔長手方向でマスク81と基板6とを密着させる。突起91b部の曲率は、マスク81を基板支持板91に倣わせたとき、マスクシート81aに加わる張力になるように選定するのがよい。例えば、マスク81が基板支持板91に倣ったときに生じる突起高さの変化が、500μm程度になるように選べばよい。すなわち、曲率半径としては560m程度になる。
従来は、基板6とマスク81を垂直に保ち、基板6とマスク81を均一に密着させようとしていた。そのため、基板6とマスク81の双方を平坦度ゼロに限りなく近づけることが試みられている。しかしながら、基板とマスク81の双方の平坦度をゼロにすることは現実的には無理である。本実施例によれば、曲面を形成した基板支持板91に局所的に凹部が存在しても、基板6は自己の剛性で凹部の無い形状を形成する。また、マスク81は基板6の剛性よりはるかに小さい剛性しか有していないので、基板6にマスク81を倣わせることができる。また、基板6にマスク81を倣わせるので、高い精度の部品や装置を用いずに、基板6とマスク81を全面的に密着させることができる。
基板支持板91を曲面形状とし、この曲面に基板6およびマスク81を倣わせるようにしたので、マスク81の孔長辺方向(図5の上下方向)は、マスク81と基板6の密着度が向上する。しかし、マスク81の上端および下端では、マスクフレーム81bの幅方向(図5の左右方向)の加工誤差や組み立て誤差等に起因する変形の影響が残っているおそれがある。
そこで、基板支持板91の全面または上端部および下端部に、シリコンゴムまたは、4フッ化エチレン樹脂製の緩衝シート98を配置している。基板6の上端部および下端部を緩衝シート98で押圧することにより、マスク81の幅方向(図5の左右方向)についても、基板6をマスクフレーム81bに倣わせることが可能になる。
なお、マスク81の中央部にも緩衝シート98を設けると緩衝シート98の反発力がマスク81の張力を高めるおそれがあるが、基板6の上端部および下端部では、緩衝シート98の反発力を高剛性のマスクフレーム81bが受けることになり張力が高まることは無い。また、マスク81を基板6の形状に倣わせているので、緩衝シート98を用いてマスク81の幅方向(図5の左右方向)を押圧しても、密着性を高める効果は損なわれない。
なお、上記図2に示した実施例では、基板支持板91の表面突起部の断面形状を、ガラス基板6側に凸の形状としているが、その曲率半径はマスクシート81aを倣わせる押し込み量とマスクの大きさの相関から決めることができる。また、密着を優先させる場合には、曲面の形状は、球面であってもよく、楕円球面でも卵型であってもよい。ただし、凹面が無いことが望ましい。また、緩衝シート98の厚さは、5mm程度が望ましい。さらに基板支持板91の曲面は、上下方向だけでなく左右方向にもガラス基板側に凸の曲面であるのがよいが、上下方向だけの曲面でも本発明の効果は得られる。