JP2013210061A - すべり軸受とその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】固体潤滑剤を含む樹脂オーバレイ層のなじみ性を損なうことなく、優れた耐摩耗性を示すすべり軸受とその製造方法を提供する。
【解決手段】裏金鋼101と前記裏金鋼の上に配置された軸受合金層102とを有する軸受基材上に、バインダー樹脂と固体潤滑剤とを含む樹脂オーバレイ層103を設けたすべり軸受であって、前記固体潤滑剤がへき開を有する固体潤滑剤を含み、前記固体潤滑剤のうち平面視4μm以上である粒子の長軸方向がしゅう動方向に対して略垂直に配列したラジアルすべり軸受によって、高い耐摩耗性を得ることができる。
【選択図】図2

Description

本発明は、自動車やその他の産業機械用のエンジン用すべり軸受に関し、特に、裏金鋼と軸受合金層とを含む軸受基材上に、固体潤滑剤とバインダー樹脂とを含む樹脂オーバレイ層を設けた、すべり軸受に関する。
自動車用エンジンのすべり軸受(以下、「軸受」と称する場合もある。)材料としては、一般にアルミニウム合金やPb系オーバレイ付き銅鉛合金が用いられている。近年は高出力及び高回転による自動車エンジンの高性能化が著しく、これら軸受材料に対して、初期なじみ性、耐焼付性、耐久性、耐熱性などの優れたしゅう動性能が望まれている。
裏金鋼にアルミニウムや銅などの軸受合金層を接着した軸受では、耐疲労性や耐焼付性を確保できる一方で、初期なじみ性と耐異物特性が不十分である。また、なじみ性確保のために、Sn、Pbなどの軟質金属系オーバレイをさらに施した銅鉛合金軸受では、耐摩耗性が充分でなく、複雑な製造工程を要するためにコストが高いという不具合もあった。
そこで、高い耐疲労性、耐摩耗性を維持したまま、なじみ性を確保するために、軟質金属系オーバレイに代えて、固体潤滑剤とバインダー樹脂とを含む樹脂オーバレイ層が提案されている(特許文献1及び2)。この樹脂オーバレイ層は、固体潤滑剤、希釈剤及びポリイミド系樹脂をアルミニウム系軸受合金にスプレー法にて塗布し、乾燥、焼成することによりコーティング層が形成される。この固体潤滑剤を含んだ樹脂オーバレイ層が、下地のアルミニウム合金に被着されることから、軟質金属系オーバレイに比べてなじみ性が良好となる。
このなじみ性は、固体潤滑剤が特定の結晶面で非常にすべり易いという性質を利用している。すなわち、樹脂オーバレイ層中に分散している固体潤滑剤粒子が、相手軸からの荷重を受けると、その特定結晶面で滑りを起し、変形、破壊され、これに伴い樹脂オーバレイ層全体が流動する結果、低摩擦性や良好ななじみ性が実現される。固体潤滑剤の上記特定結晶面が樹脂オーバレイ層内でどのような方向を向いていたとしても、特定結晶面でのすべりが起こる。
特開平4−83914号公報 特許3133209号公報
しかしながら、すべり軸受しゅう動部材に関して、高いなじみ性を得ると、相反する性質である耐摩耗性が低下する。特に、近年使用されている起動停止エンジンなどにおいては、樹脂被膜の摩耗を低減させる必要がある。このように、すべり軸受には、耐摩耗性となじみ性が共に求められる一方で、両特性を高いまま両立することが困難であり、改善の余地があった。
従って、本発明は、なじみ性がよいと言われる固体潤滑剤を含んだ樹脂オーバレイ層の耐摩耗性を向上させることを目的とするものである。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意研鑽を積んだ結果、樹脂オーバレイ層中の固体潤滑剤の粒子の長軸を、しゅう動方向に対して略垂直に配列することで、高耐摩耗性のすべり軸受を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の<1>から<8>に関するものである。
<1>裏金鋼と前記裏金鋼の上に配置された軸受合金層とを有する軸受基材上に、バインダー樹脂と固体潤滑剤(A)とを含む樹脂オーバレイ層を設けたラジアルすべり軸受であって、前記固体潤滑剤(A)がへき開を有する固体潤滑剤(a)を含み、前記固体潤滑剤(a)は平面視4μm以上である粒子を含み、前記粒子の長軸方向がしゅう動方向に対して略垂直に配列するラジアルすべり軸受。
<2>前記固体潤滑剤(a)が、MoSである前記<1>に記載のラジアルすべり軸受。
<3>前記樹脂オーバレイ層の厚さが1μm〜20μmである前記<1>又は<2>に記載のラジアルすべり軸受。
<4>前記バインダー樹脂が、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂及びポリベンゾイミダゾール樹脂よりなる群から選ばれる1以上の樹脂である、前記<1>〜<3>のいずれか1に記載のラジアルすべり軸受。
<5>前記固体潤滑剤(A)が、前記樹脂オーバレイ層全体に対して40〜60体積%である、前記<1>〜<4>のいずれか1に記載のラジアルすべり軸受。
<6>前記固体潤滑剤(a)が、さらに黒鉛を含み、固体潤滑剤(a)全体に対し、MoSは、40体積%以上100体積%未満である前記<1>〜<5>のいずれか1に記載のラジアルすべり軸受。
<7>前記固体潤滑剤(A)が、ポリテトラフルオロエチレンを含み、前記固体潤滑剤(A)中の前記固体潤滑剤(a)の割合が、40体積%以上100体積%未満である前記<1>〜<6>のいずれか1に記載のラジアルすべり軸受。
<8>円筒状又は半円筒状の裏金鋼と前記裏金鋼の内側に配置された軸受合金層とを有する軸受基材の内周面に、へき開を有する固体潤滑剤(a)を含む固体潤滑剤(A)とバインダー樹脂とを含む樹脂オーバレイ層を塗布するラジアルすべり軸受の製造方法であって、前記樹脂オーバレイ層の塗布後、前記ラジアルすべり軸受の軸方向を地面に対して垂直にして乾燥させる工程、焼成する工程、を含む、ラジアルすべり軸受を製造する方法。
本発明に係るラジアルすべり軸受は、へき開を有する固体潤滑剤(a)粒子の長軸の向きを、しゅう動方向に対して略垂直にすることにより、軸受全体の耐摩耗性を向上させることができる。
図1は、ラジアルすべり軸受における樹脂オーバレイ層内の固体潤滑剤粒子の配列の様子を示した模式図である。 図2は、ラジアルすべり軸受上に塗布した樹脂オーバレイ層を乾燥する際の軸受の態様、及び、樹脂オーバレイ層内の固体潤滑剤粒子の長軸の向きを示した模式図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係るラジアルすべり軸受(単に「すべり軸受」又は「軸受」と称することもある。)は、裏金鋼と前記裏金鋼の上に配置された軸受合金層とを有する軸受基材上に、バインダー樹脂と固体潤滑剤(A)とを含む樹脂オーバレイ層が設けられ、前記固体潤滑剤(A)がへき開を有する固体潤滑剤(a)を含み、前記固体潤滑剤(a)のうち平面視4μm以上である粒子の長軸方向がしゅう動方向に対して略垂直に配列することを特徴とする。
本発明に係る軸受はラジアルすべり軸受であるので、しゅう動方向と円周方向とは同方向を意味する。
MoSなどへき開を有する固体潤滑剤の場合、固体潤滑剤はへき開面でへき開するため、低摩擦性を示す。へき開は、へき開面全体で同時に起こるのではなく、一端から逆端側に向かって徐々にへき開すると考えられる。そのため、固体潤滑剤の粒子において、へき開面の方向に対する粒子の垂直方向の長さが長いほど、同じ力でもへき開し難くなると考えられる。このため、しゅう動部材のしゅう動方向に対して、固体潤滑剤粒子の長軸方向が垂直であるほど、耐摩耗性の点から好ましい。
樹脂オーバレイ層内の固体潤滑剤粒子の長軸方向について、走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察できる。本発明では、へき開を有する固体潤滑剤(a)の粒子のうち、平面視4μm以上の粒子を観察対象とし、長軸の向いている方向について検討する。
へき開を有する固体潤滑剤(a)の粒子において、それぞれの粒子の重心を通る直線のうち、最長の直線を長軸として定める。そして該長軸と、しゅう動方向に対する垂線との成す角度を測定する。測定は軸方向中央部の任意の30μm×30μmの範囲を対象とし、当該範囲内に存在する平面視4μm以上の面積を有するすべての固体潤滑剤(a)について角度を計測し、該角度の平均が10°以下である状態を、本発明では略垂直と定義する。ここで、軸方向中央部とは、軸受の軸方向中心から、軸方向前後にそれぞれ軸受の軸方向長さの5%の幅を持つ範囲であって、測定対象は、当該軸幅上の任意の部分とする。
固体潤滑剤粒子が略垂直に配列されている場合、しゅう動時の摩耗量は大幅に低減され、耐摩耗性は向上する。
固体潤滑剤は、へき開を有する固体潤滑剤(a)が含まれていれば、2種以上を組み合わせて用いてもよい。へき開を有する固体潤滑剤(a)にはMoS、黒鉛、六方晶系窒化ホウ素(h−BN)、WSが挙げられる。
固体潤滑剤(a)はMoSが低摩擦性の点から好ましく、固体潤滑剤(a)は1種で用いても、他の潤滑剤と組み合わせて用いてもよい。MoSと他の固体潤滑剤を組み合わせて用いる場合には、さらに黒鉛を使用することが、潤滑油が不足した場合でも性能を確保できる点から好ましく、その場合、固体潤滑剤(a)全体に対してMoSは40体積%以上100体積%未満であることが低摩擦性の点から好ましい。
また、固体潤滑剤(a)に配向性のないポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を組み合わせて固体潤滑剤(A)としてもよい。その場合には、固体潤滑剤(A)中に、へき開を有する固体潤滑剤(a)が40体積%以上100体積%未満であることが配向性の確保の点から好ましい。
固体潤滑剤(A)は、軸受に対する接着性の観点から、バインダー樹脂と混合した状態で用いられる。バインダー樹脂はポリイミド樹脂(PI)、ポリアミドイミド樹脂(PAI)、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂や、ポリベンゾイミダゾール樹脂(PBI)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)等の熱可塑性樹脂を用いることができる。中でも、ポリイミド樹脂(PI)、ポリアミドイミド樹脂(PAI)やポリベンゾイミダゾール樹脂(PBI)が、耐熱性及び強度の点から好ましい。
固体潤滑剤(A)とバインダー樹脂とを含む層を樹脂オーバレイ層と称するが、樹脂オーバレイ層はバインダー樹脂と固体潤滑剤(A)との割合が体積比で4:6〜7:3であることが好ましく、より好ましくは4:6〜6:4である。
また、樹脂オーバレイ層の厚さは1〜20μmであることが好ましく、3〜10μmがより好ましい。層の厚さは、固体潤滑剤粒子の配向以外に、母材との接着強度、層内強度、熱伝導性などにも影響を及ぼすと考えられる。
樹脂オーバレイ層は裏金鋼と前記裏金鋼の上に配置された軸受合金層とを有する軸受基材上に被覆するが、裏金鋼と軸受合金層には、当該分野において従来用いられる種々のものを、種々の条件で用いることができる。
軸受合金層は、AlやCuを主成分としたアルミニウム系軸受合金又は銅系軸受合金が好ましい。
アルミニウム系軸受合金の組成は、特に限定されないが、10質量%以下のCr、Si、Mn、Sb、Sr、Fe、Ni、Mo、Ti、W、Zr、V、Cu、Mg、Znなどの1種以上の元素と、20質量%以下のSn、Pb、In、Tl、Biなどの1種以上の元素とを含有する合金を好ましく使用することができる。
前者の群の元素は主として強度及び耐摩耗性を付与し、後者の群の元素は主としてなじみ性を付与し、それぞれの添加元素の種類と量により、軸受特性を発揮する。
また、アルミ合金鋳物であるAC8A、AC9Bなどの高Si−Al合金からなるピストンのスカート部を下地として、その耐摩耗性を向上するために、本発明の樹脂オーバレイ層を使用することもできる。
銅合金の組成は、特に限定されないが、25質量%以下のPb、Biの1種又は2種以上と、10質量%以下のSnと、2質量%以下のP、Ag、In、Ni、Al等を含有する合金を、好ましく使用することができる。
これらの元素において、軟質金属であるPb、Biは、なじみ性を発揮し、青銅の基本成分であるSnは、強度と耐摩耗性を発揮し、その他の成分は補助的に特性を向上する。特に、Pは脱酸素、焼結促進、強化などに有効であり、Agはしゅう動特性向上に有効な化合物を、潤滑油又は銅中の不純物成分Sとの反応で形成し、Inは耐食性と潤滑油の濡れ性を向上し、NiやAlは銅を強化するなどの作用がある。
軸受合金層は一般に厚さが0.1mm〜0.5mmである。これを補強する裏金鋼は一般に厚さが1.0mm〜3.0mmである。
続いて、本発明に係るラジアルすべり軸受を製造する方法について説明する。
すべり軸受は、以下に示す工程を経て製造することができる。
(a)円筒状又は半円筒状の裏金鋼と前記裏金鋼の上に配置された軸受合金層とを有する軸受基材の内周面に、へき開を有する固体潤滑剤(a)を含む固体潤滑剤(A)とバインダー樹脂とを含む樹脂オーバレイ層を塗布する工程、
(b)前記樹脂オーバレイ層の塗布後、ラジアルすべり軸受の軸方向を地面に対して垂直にして乾燥する工程、
(c)焼成する工程。
樹脂オーバレイ層はへき開を有する固体潤滑剤(a)を含む固体潤滑剤(A)とバインダー樹脂とを含む。一般に、固体潤滑剤原料はアスペクト比(薄片面積の平方根を厚さで割った値)が10以上のものを用いることが、低摩擦性の点から好ましい。
へき開を有する固体潤滑剤(a)を含む固体潤滑剤(A)40〜60体積%を残部バインダー樹脂と混合し、希釈剤を加えて塗料を調製する。この塗料において、固形分の配合は10〜50体積%程度であることが好ましい。ここで固形分とはバインダー樹脂と固体潤滑剤の混ぜ物のことを表し、塗料とは当該固形分と希釈剤の混ぜ物のことを表す。
固体潤滑剤は、へき開有する固体潤滑剤(a)が含まれていれば、2種以上を組み合わせて用いてもよい。へき開性及び配向性を有する固体潤滑剤(a)はMoS、六方晶系窒化ホウ素(h−BN)、黒鉛、WSが挙げられる。また、配向性のないポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を組み合わせて用いてもよい。
固体潤滑剤(a)はMoSであることが低摩擦性の点から好ましい。MoSを他の固体潤滑剤と組み合わせて用いる場合、PTFE及び黒鉛のうち少なくとも一方であることが好ましく、黒鉛は潤滑油が不足した場合でも、性能を確保できる点からより好ましい。その場合、固体潤滑剤(a)全体に対してMoSは40体積%以上100体積%未満であることが低摩擦性の点から好ましい。
また、固体潤滑剤(a)に配向性のないポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を組み合わせて固体潤滑剤(A)とする場合には、固体潤滑剤(A)中に、へき開性及び配向性を有する固体潤滑剤(a)が40体積%以上100体積%未満であることが配向性の確保の点から好ましい。
バインダー樹脂は、ポリイミド樹脂(PI)、ポリアミドイミド樹脂(PAI)、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂や、ポリベンゾイミダゾール樹脂(PBI)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)等の熱可塑性樹脂を用いることができる。中でも、ポリイミド樹脂(PI)、ポリアミドイミド樹脂(PAI)又はポリベンゾイミダゾール樹脂(PBI)が、耐熱性及び強度の点から好ましい。
へき開を有する固体潤滑剤(a)を含む固体潤滑剤(A)とバインダー樹脂とを含む層を樹脂オーバレイ層はバインダー樹脂と固体潤滑剤(A)との割合が体積比で4:6〜7:3であることが好ましく、より好ましくは4:6〜6:4である。
また、樹脂オーバレイ層の厚さは1〜20μmであることが好ましく、3〜10μmがより好ましい。層の厚さは、固体潤滑剤粒子の配向以外に、母材との接着強度、層内強度、熱伝導性などにも影響を及ぼすと考えられる。
樹脂オーバレイ層を軸受基材上に被覆する場合、固体潤滑剤とバインダー樹脂の均一な分散のため、希釈剤を用いる。希釈剤に固体潤滑剤とバインダー樹脂を分散させたもの(塗料)を軸受に塗布し、後に希釈剤を除去し、焼成することで、樹脂オーバレイ層が形成される。
希釈剤としては特に制限されないが、中でもN−メチルピロリドン(NMP)が好ましい。
また、希釈剤の配合比率は塗料に対して50〜90体積%であればよい。
樹脂オーバレイ層を軸受合金層上に成膜する際には、塗料をパッド印刷、スクリーン印刷、エアスプレー、エアレススプレー、静電塗装、タンブリング、スクイズ法、ロール法などにより塗布する方法が挙げられる。
また、全ての成膜方法に共通するものとして、膜厚が不足する場合には、希釈剤中の固体潤滑剤とバインダー樹脂の濃度を高くするのではなく、複数回に渡って重ね塗りをする方法が好ましく用いられる。
樹脂オーバレイ層を塗布した後の乾燥工程においては、重力によって配向性のある固体潤滑剤粒子が僅かに傾きながら移動する。この移動において、該粒子は、重力の影響を受けて、長軸の向きを重力方向に揃える方向にずれていく。
本発明では、固体潤滑剤(A)のうちへき開を有する固体潤滑剤(a)である粒子を略垂直に配列するために、軸受内周面に樹脂オーバレイ層となる塗料を塗布後、すべり軸受の軸方向を地面に対して垂直にして、20〜40℃で乾燥させる。図2で示したように、軸方向を地面に対して垂直にして乾燥することで、樹脂オーバレイ層内の固体潤滑剤(a)粒子の長軸は、重力に従って、しゅう動方向に対して略垂直に配列する。先述したように、本発明における略垂直とは、固体潤滑剤(a)粒子の長軸と、しゅう動方向に対する垂線とのなす角度の平均が10°以下であることをいう。
焼成工程においては、樹脂オーバレイ層を塗布、乾燥させた軸受基材を、徐々に樹脂の焼成温度まで昇温し、焼成は大気中で100〜300℃で1時間行えばよい。
また、樹脂オーバレイ層を塗布する軸受基材を構成する裏金鋼及び軸受合金層は、当該分野において従来用いられる種々のものを、種々の条件で用いることができる。
裏金鋼の厚さは一般に1.0mm〜3.0mmである。
軸受合金層は、AlやCuを主成分としたアルミニウム系軸受合金又は銅系軸受合金が好ましい。また、軸受合金層の厚みは一般に0.1mm〜0.5mmである。
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
(すべり軸受の作製)
裏金鋼にはSPCC(JIS)を用い、アルミニウム系軸受合金(Al−11.5%Sn−1.8%Pb−1.0%Cu−3.0%Si−0.3%Cr)を圧接した。アルミニウム系軸受合金の上に、樹脂オーバレイ層をロール法またはエアスプレー法により塗布し、すべり軸受の軸方向を地面に対して垂直にした状態で乾燥した。乾燥は室温にて1時間行った。その後大気中250℃で1時間焼成し、ラジアルすべり軸受を作製した。
ここで樹脂オーバレイ層の被膜の厚さは全面略均一であるが、軸受け中央部の厚みを被膜の断面のSEM画像解析により測定した。結果を表1に示す。
塗布した樹脂オーバレイ層は、希釈剤に固体潤滑剤(A)及びバインダー樹脂を分散させたものを前駆体とし、固体潤滑剤(A)及びバインダー樹脂は表1に記載の組成のものを用い、希釈剤はN−メチルピロリドン(NMP)とした。固体潤滑剤とバインダー樹脂を体積比で6:4とした。また、固体潤滑剤とバインダー樹脂の総量に対して、ロール法の場合は100質量%の希釈剤、エアスプレー方の場合には900質量%の希釈剤を加え、塗料とした。(実施例1〜6)
上記と同様の方法で得られた軸受基材上に表1に記載の固体潤滑剤(A)及びバインダーと、希釈剤NMPを、実施例と同じ割合でロール法又はエアスプレー法により塗布した。軸受中央部塗布面を上向きにして室温で1時間乾燥し、大気中250℃で1時間焼成することにより、ラジアルすべり軸受を作製した。(比較例1〜4)
(長軸平均角度の計測)
上記で得られたすべり軸受を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。観察範囲は軸方向中央部の任意の30μm×30μmの範囲を対象とし、当該範囲内に存在する固体潤滑剤(A)のうち、へき開を有する固体潤滑剤(a)のうち、平面視4μm以上のすべての粒子について長軸と、しゅう動方向に対する垂線との成す角度を測定した。当該角度の平均値を算出して、長軸平均角度とした。結果を表1に示す。
ここで長軸とは、各粒子の重心を通る最も長い線を表す。
(摩耗量の測定)
摩耗量の測定のために摩耗試験を、軸受摩耗試験機を用いて以下の条件で行なった。
回転数:0rpm(1分保持)→1200rpm(1分保持)→0rpm(1分保持)のサイクル試験
潤滑油:0W−20
給油温度:100℃
荷重:4.41kN
試験時間:100時間
摩耗試験後、走査型電子顕微鏡(SEM)の画像解析から、軸受しゅう動方向中央部における、樹脂オーバレイ層を塗布した試験片の摩耗試験前後での樹脂オーバレイ層の膜厚を測定し、それらの膜厚差をそれぞれ摩耗量とした。結果を表1に示す。
Figure 2013210061
表1より、樹脂オーバレイの塗布後、軸受けの軸方向を地面に対して垂直にして乾燥させることにより、長軸平均角度が略垂直(10°以下)になることが分かる。また、長軸平均角度が略垂直になるのに伴い、軸受の摩耗量に顕著な減少が見られ、耐摩耗性が向上することが分かった。
本発明は、固体潤滑剤(a)粒子の長軸の向きを、しゅう動方向に対して略垂直にすることにより、耐摩耗性に優れたラジアルすべり軸受を提供するものである。なじみ性のよい固体潤滑剤自身の特性と、粒子の長軸の配列による耐摩耗性の向上により、起動停止エンジンなどの高性能な自動車やその他の産業機械用のエンジン用すべり軸受に採用される可能性は大きい。
101 裏金鋼
102 軸受合金層
103 樹脂オーバレイ層
110 へき開を有する固体潤滑剤(a)粒子

Claims (8)

  1. 裏金鋼と前記裏金鋼の上に配置された軸受合金層とを有する軸受基材上に、バインダー樹脂と固体潤滑剤(A)とを含む樹脂オーバレイ層を設けたラジアルすべり軸受であって、前記固体潤滑剤(A)がへき開を有する固体潤滑剤(a)を含み、前記固体潤滑剤(a)は平面視4μm以上である粒子を含み、前記粒子の長軸方向がしゅう動方向に対して略垂直に配列するラジアルすべり軸受。
  2. 前記固体潤滑剤(a)が、MoSである請求項1に記載のラジアルすべり軸受。
  3. 前記樹脂オーバレイ層の厚さが1μm〜20μmである請求項1又は2に記載のラジアルすべり軸受。
  4. 前記バインダー樹脂が、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂及びポリベンゾイミダゾール樹脂よりなる群から選ばれる1以上の樹脂である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のラジアルすべり軸受。
  5. 前記固体潤滑剤(A)が、前記樹脂オーバレイ層全体に対して40〜60体積%である、請求項1〜4の何れか1項に記載のラジアルすべり軸受。
  6. 前記固体潤滑剤(a)が、さらに黒鉛を含み、固体潤滑剤(a)全体に対し、MoSは、40体積%以上100体積%未満である請求項1〜5のいずれか1項に記載のラジアルすべり軸受。
  7. 前記固体潤滑剤(A)が、ポリテトラフルオロエチレンを含み、前記固体潤滑剤(A)中の前記固体潤滑剤(a)の割合が、40体積%以上100体積%未満である請求項1〜6のいずれか1項に記載のラジアルすべり軸受。
  8. 円筒状又は半円筒状の裏金鋼と前記裏金鋼の内側に配置された軸受合金層とを有する軸受基材の内周面に、へき開を有する固体潤滑剤(a)を含む固体潤滑剤(A)とバインダー樹脂とを含む樹脂オーバレイ層を塗布するラジアルすべり軸受の製造方法であって、前記樹脂オーバレイ層の塗布後、前記ラジアルすべり軸受の軸方向を地面に対して垂直にして乾燥させる工程、焼成する工程、を含む、ラジアルすべり軸受を製造する方法。
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