JP2013227635A - 高強度冷延鋼板、高強度亜鉛めっき鋼板、高強度冷延鋼板の製造方法、及び高強度亜鉛めっき鋼板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】高強度冷延鋼板は、所定の成分組成を有し、組織は体積分率85%以上のフェライトと体積分率15%以下の第二相とを有し、第二相は体積分率1%以上8%未満のマルテンサイトと体積分率3%以上10%未満の残留オーステナイトとを含有し、ベイナイトは体積分率1%以上5%以下、パーライトは体積分率0%以上2%未満で、ベイナイトとパーライトとの合計体積分率がマルテンサイト体積分率以下であり、引張強度が440MPa以上590MPa未満である。
【選択図】図1
Description
始めに、本発明に係る高強度冷延鋼板及び高強度亜鉛めっき鋼板の成分組成について説明する。なお、以下において成分量の%表示は、特にことわらない限り質量%を意味する。
C(炭素)は、廉価、且つ、非常に強力なオーステナイト安定化元素であり、室温までオーステナイトを残留させる上で極めて重要な元素である。Cは、後述する熱処理過程において、Cはフェライト及びベイニティックフェライトからオーステナイトへと吐き出され、オーステナイトを安定化させる。延性を向上するためには、十分にCを濃化したオーステナイトが3%以上必要である。Cが0.08%未満では、最終的な残留オーステナイトの量が3%未満になるために、延性が十分に向上しない。C量が多いほど残留オーステナイトの生成量及び安定度は増加するが、C量が0.25%を超えると第二相分率が増えすぎてTSが増大し延性が低下する。さらに溶接性が劣化する。従って、Cの含有量は0.08%以上0.25%以下とする。より高い延性を備えた鋼板を得るためには、Cの含有量の上限値を0.20%未満とすることが好ましい。
Si(ケイ素)は、オーステナイトからのセメンタイト析出を抑制するので、オーステナイトのC濃化を促進させるために非常に有効な元素である。しかしながら、Siは非常に高い固溶強化能を有するため、多量に含有すれば引張強度を590MPa未満に維持することが困難になる。また、Siは、酸素との親和性が高いために鋼板表面に酸化皮膜を形成しやすく、微量でも熱延時のスケール残りや連続溶融亜鉛めっき時の酸化皮膜形成による不めっきを生じさせる。従って、Siの含有量は、できるだけ少なくすることが望ましく、0.50%未満とする。めっき品質や化成処理性を向上する観点から、Siの含有量は、0.20%未満が好ましく、さらに0.05%未満が好ましい。特に優れためっき品質を得るには、Siの含有量は0.03%未満とするとよい。
Mn(マンガン)は、オーステナイトがパーライトやベイナイトへ変態するのを抑制するために重要な元素である。Mnの含有量が0.7%未満では、焼鈍後の冷却時に、オーステナイトからパーライトやベイナイトへ分解しやすくなって、安定な残留オーステナイトの確保が困難になる。一方、Mnの含有量が2.0%以上になると、後述する一次冷却でのフェライト変態や二次冷却におけるベイナイト変態が遅延してマルテンサイト分率が増加するため、引張強度が590MPa以上になり延性が低下する。従って、Mnの含有量は、0.7%以上2.0%未満、好ましくは1.7%未満、より好ましくは1.6%未満とする。
P(リン)は、Bと同様に微量の添加でもパーライト変態を抑制する効果がある。但し、Pは非常に強い固溶強化元素であり、過剰に含有すると必要以上に強度が上昇する。また、Pは、合金化の遅延によるめっきムラや偏析による表面欠陥の発生を招く。従って、Pの含有量は、0.1%以下、より好ましくは0.05%以下、さらに好ましくは0.03%以下とする。
S(硫黄)を適量含有させることによって、一次スケールの剥離性を向上し、鋼板の最終的なめっき外観品質を向上させることが可能であり、このような効果を得るためには、Sを0.001%以上含有させることが好ましい。しかしながら、Sが多量に存在した場合、鋼の熱間延性が低下し、熱間圧延時に鋼板表面に割れが発生することで表面品質を劣化し、さらには、Sは、粗大なMnSを形成して破壊の基点となるため鋼板の延性を低下させる。このため、Sの含有量は0.01%以下とする。
Cr(クロム)は、任意添加元素である。しかし、Crの固溶強化は小さいのに対して、Mn当量を増加させる効果は大きいことから、冷却過程におけるパーライト変態の抑制のためにCrは0.1%以上添加することが好ましい。一方、過剰なCr添加はコストを増大させるだけでなく、フェライト/ベイナイト変態を著しく遅延し、残留オーステナイトが得にくくなる。従って、Crの含有量は1.0%以下(0%を含む)とする。
Al(アルミニウム)は、オーステナイト中の炭化物析出を抑制する効果を有し、Siより固溶強化能が小さいことから、本発明においてオーステナイトのC濃度を増加させるため必須の元素である。また、Alは、強力なフェライト安定化元素であるため、Ae3線を高C側へ遷移し、フェライトと共存するオーステナイトのC濃度を高濃度化できるので残留オーステナイトの安定度がさらに増加する。Alの含有量が0.40%未満では炭化物の生成を抑制する効果が十分に得られない。一方、Alの含有量が2.00%を超えると、鋼板表面に酸化層を形成し、めっき性や化成処理性を著しく劣化する。さらに、Alはスラブ鋳造時にNと結合してAlN介在物を形成し鋳造性が低下する。また、フェライトバンド組織が形成されやすくなり、不均一な組織になるため延性が劣化する。従って、Alの含有量は0.40%以上2.00%以下とする。上述のAlの効果をより有効に発揮するためには、Alの含有量は0.60%以上が好ましい。また、上記不都合をより確実に回避するためには、Alの含有量は1.80%以下が好ましい。
B(ホウ素)は、任意添加元素である。しかし、Bは、極微量の添加によって、冷却時のパーライト変態を抑制する効果があることから、後述する二次冷却においてパーライト変態を回避し、ベイナイト変態をさせる効果を有する元素である。しかしながら、Bの過剰な添加は、Bの炭化物を析出し焼入れ性を低下させるだけでなく、熱間変形抵抗を増大させ熱間圧延が困難になる。このため、Bの含有量は0.0050%以下(0%を含む)とする。
Al及びSiは共にオーステナイト中の炭化物析出を抑制する元素であり、Al及びSiの合計含有量が多いほど、残留オーステナイトは生成しやすい。この効果は、Al及びSiの合計含有量が0.7%以上で得られる。しかしながら、Al及びSiの過剰な添加は鋼板のフェライトバンドを助長し延性を低下させる。さらに、Al及びSiは共に易酸化元素であるため、過剰な添加はめっき品質や化成処理性を著しく劣化させる。従って、Al及びSiの合計含有量は0.7%以上2%以下とする。
室温でも安定なオーステナイトを得るためには、冷却過程におけるパーライト生成を低減する必要がある。そこで、フェライト/パーライト変態を遅延する効果のある本発明鋼中の主な合金元素をMn当量(Mneq)として厳密に管理する。焼鈍後の冷却時のパーライト生成に及ぼす各種合金元素の影響を調査した結果、Mn、Cr、P、Bが、パーライト生成を遅延する効果を有し、以下に示す数式(1)のようなMn当量式として表されることが知見された。さらに、Mn当量はフェライト生成も遅延するので、第二相分率に大きく影響し、本発明鋼の引張強度(TS)をほぼ決定する重要な因子でもある。
Ti(チタン)、Nb(ニオブ)、V(バナジウム)はいずれもNとの親和性が強く、鋼中のNを金属窒化物として固定する効果があり、AlNの析出量を低減することができる。従って、これらの元素は、微細なAlN析出に伴うフェライト組織の粒成長の抑制や熱間延性の低下を抑制する効果がある。Ti、Nb、VによるN固定の効果を得るには、これらの元素を0.002%以上添加することが好ましい。但し、いずれも高価な元素であるため多量に添加すれば大幅なコスト増加となり、また、焼鈍時に微細な炭化物を析出しやすいため鋼板の強度を増加させる。このため、Ti、Nb、Vは、それぞれ0.02%以下とすることが好ましい。
Ni(ニッケル)は、オーステナイト安定化元素であるためパーライト変態の抑制のために必要に応じて0.05%以上添加することができる。但し、Niを多量に添加すると合金コストが増大することに加えて、鋼の延性が低下する。従って、Niを添加する場合には、その含有量は0.2%以下とする。
Cu(銅)及びMo(モリブデン)は、オーステナイト安定化元素なのでパーライト変態を抑制する目的で必要に応じてそれぞれ0.02%以上添加することができる。また、SiやAlほどではないが、これらの元素はセメンタイトの生成を抑制する効果も期待される。しかしながら、いずれも高価な元素であるため合金コストを著しく増大させる。さらに、固溶強化や鋼の組織を微細化することによって鋼板の強度を上昇するので多量に含有させることは好ましくない。従って、Cu及びMoを添加する場合には、これらの含有量はそれぞれ0.1%未満、より好ましくは0.05%未満とする。
Sb(アンチモン)及びSn(スズ)は、微量添加することで鋼板表面における酸化や窒化を抑制でき、必要に応じてそれぞれ0.004%以上添加することができる。但し、多量に含有させると強度の上昇と靭性の劣化、及びコストの増大を招く。このため、Sb及びSnを添加する場合には、これらの含有量はそれぞれ0.2%以下とする。
Ca(カルシウム)及びREM(希土類金属)は、Sとの親和性が強いため、鋼中Sを固定し、また熱延及び冷延によって鋼中で進展して破壊の起点となるS介在物の形態を制御するために、必要に応じてそれぞれ0.002%以上添加することができる。しかしながら、これらは0.01%を超えて添加しても効果は飽和する。このため、Ca及びREMを添加する場合には、これらの含有量はそれぞれ0.01%以下とする。
N(窒素)は、鋼中のAlと微細なAlNとを形成し、フェライト組織の粒成長性を低下させるため、組織が高強度化する。また、多量のAlNが析出すると熱間延性が急激に低下するため、連続鋳造での製造安定性が著しく損なわれる。従って、Nはできる限り低く抑えられるべき元素であり、そのような観点からNの含有量は、0.004%未満とすることが好ましく、より好ましくは0.0035%未満とする。
本発明に係る高強度冷延鋼板及び高強度亜鉛めっき鋼板は、上記成分組成を有した上で、さらに、フェライトを母相として、第二相体積分率が15%以下であり、第二相としては体積分率1%以上8%未満のマルテンサイト、体積分率3%以上10%未満の残留オーステナイト、体積分率1%以上5%以下のベイナイト、体積分率0%以上2%未満のパーライトを有し、ベイナイトとパーライトの合計体積分率がマルテンサイト体積分率以下であることを特徴とする。これにより、440MPa以上590MPa未満の引張強度と優れた加工性が得られる。以下、本発明に係る高強度冷延鋼板及び高強度亜鉛めっき鋼板の組織について説明する。
合金成分により固溶強化を抑えても、第二相の体積分率が15%を超えると、引張強度が増加し延性が大きく低下してしまう。このため第二相の体積分率は、15%以下、より好ましくは14%以下とする。すなわち、本発明に係る鋼板は、体積分率85%以上、より好ましくは86%以上のフェライトを有する。
本発明に係る鋼板では、降伏点伸び(YPEl)の発生を抑制するため、適切にCを濃化させた硬質なマルテンサイトをフェライト中に微量に分散させることが重要である。YPElの発生を抑制するためには少なくとも1%以上のマルテンサイトが必要で、3%以上のマルテンサイトを含有することが好ましい。しかしながら、マルテンサイトが過剰に存在すると組織の高強度化を招くため、マルテンサイトの体積分率は8%未満に抑える必要がある。
本発明に係る鋼板においては、残留オーステナイトによるTRIP効果を活用し高い均一伸びを得るため、残留オーステナイトの体積分率の制御が非常に重要である。高い均一伸びを得るには、残留オーステナイトを少なくとも3%以上10%未満含有する必要がある。残留オーステナイトの体積分率が3%未満である場合、均一伸びは25%未満となる。さらに優れた均一伸びを得るためには、残留オーステナイトの体積分率は4%以上であることが好ましく、5%以上であることがさらに好ましい。一方、10%以上の過剰な残留オーステナイトが存在すると、TS≧590MPaとなって延性が低下することから、10%未満とする。
本発明に係る鋼板では、二次冷却後の中間保持時にベイニティックフェライトの生成を促進するため、第二相中に微量のベイナイトを生成することが非常に重要である。ベイニティックフェライトの生成を促進するためには少なくとも1%以上のベイナイトが必要で、2%以上のベイナイトを含有することが好ましい。しかしながら、ベイナイトが過剰に存在すると第二相中のC濃化量が低下すると共に、組織が硬質化し延性が低下する。従って、ベイナイトの体積分率は5%以下に抑える必要がある。
パーライトは、Cが濃化した第二相から生成しCを消費してしまうので、残留オーステナイトの安定性を低下して延性を低減させるため、極力生成しないことが好ましい。このため、パーライトの体積分率は0%以上2%未満、より好ましくは1%未満に抑えることが望ましい。
パーライト及びベイナイトといった炭化物の析出を伴った第二相が生成すると、マルテンサイトの生成量が低下し、マルテンサイトとフェライトの中間に生成してマルテンサイトがフェライトに歪を導入しYPElを消失させる効果が阻害される。そこで、第二相中の組織構成がYPElに及ぼす影響を調査した。図2は、成分組成をC:0.09〜0.171%、Si:0.01〜0.80%、Mn:0.3〜2.35%、P:0.01〜0.04%、S:0.002〜0.009%、Al:0.22〜1.66%、Cr:0.01〜0.65%、N:0.002%、B:0〜0.001%で、さらにSi+Al量:0.23〜1.7%、Mneq:0.5〜2.9、Mneq+1.3(Si+Al):2.2〜4.9とした鋼の組織構成を変化させたときのYPElの変化を示す図である。図2は、YPElに及ぼすマルテンサイト体積分率(Vm)とパーライト及びベイナイト合計体積分率(Vp+b)との差の影響を示すものである。
第二相体積分率が同一の鋼板でも、第二相がより微細な多数のベイニティックフェライトに蚕食された形態である方が、ベイニティックフェライトから各残留オーステナイト粒へのC濃縮が促進されることで、延性が向上することが知見された(実験結果については、製造条件における図5にて後述する)。すなわち、同一の第二相体積分率において、第二相とフェライトが接する面積が広いほど、残留オーステナイトが安定化する。
本発明においては、所定の成分鋼を上記の組織に制御することによって優れた加工性を有する高強度冷延鋼板が得られるが、以下にこのような高強度冷延鋼板を得るための製造方法について説明する。
以下、本発明の実施例について説明する。
Claims (7)
- 成分組成として、質量%で、C:0.08%以上0.25%以下、Si:0.50%未満、Mn:0.7%以上2.0%未満、P:0.1%以下、S:0.01%以下、Cr:1.0%以下(0%を含む)、Al:0.40%以上2.00%以下、B:0.0050%以下(0%を含む)を含有し、Si及びAlの合計含有量が0.7〜2%であり、下記数式(1)に示すMn当量Mneqが0.8≦Mneq≦2.0であると共に、Mneq+1.3×(Siの含有量+Alの含有量)≧2.6を満足し、残部が鉄及び不可避的不純物からなり、組織は体積分率85%以上のフェライトと体積分率15%以下の第二相とを有し、第二相は体積分率1%以上8%未満のマルテンサイトと体積分率3%以上10%未満の残留オーステナイトとを含有し、ベイナイトは体積分率1%以上5%以下、パーライトは体積分率0%以上2%未満で、ベイナイトとパーライトとの合計体積分率がマルテンサイト体積分率以下であり、引張強度が440MPa以上590MPa未満であることを特徴とする高強度冷延鋼板。
- 成分組成として、質量%で、Ti:0.02%以下、Mo:0.1%未満、V:0.02%以下、Nb:0.02%以下、Ni:0.2%以下、Cu:0.1%未満のうちの1種又は2種以上の元素をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の高強度冷延鋼板。
- 成分組成として、質量%で、Sb:0.2%以下、Sn:0.2%以下、Ca:0.01%以下、REM:0.01%以下のうちの1種又は2種以上の元素をさらに含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の高強度冷延鋼板。
- 前記第二相の体積分率Sを第二相の周囲長Lの二乗値で除算した値S/L2が0.00015未満であることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の高強度冷延鋼板。
- 請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載の高強度冷延鋼板は表面に亜鉛系めっき皮膜を備えることを特徴とする高強度亜鉛めっき鋼板。
- 請求項6に記載の高強度冷延鋼板の製造方法において、連続焼鈍の過程で亜鉛系めっきを施すことにより高強度冷延鋼板の表面に亜鉛系めっき皮膜を形成することを特徴とする高強度亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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