JP2013255355A - ディジタル保護リレー装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】短時間の系統事故に対して不要な遮断器トリップの発生を回避可能な保護リレー装置を簡易な構成で実現する。
【解決手段】送電線の電流Isを一次電流とする変流器40の二次電流Isは、電圧信号に変換された後、アナログフィルタ120、A/D変換器130およびディジタルフィルタ140を通過して、事故検出部160へ入力される。事故検出部160は、入力信号によって示される電流の大きさに基づいて、電力系統の事故発生を検出するとともに、事故検出時に送電線に設けられた遮断器のトリップ指令TPを発生する。短時間事故検出部170は、ディジタルフィルタ140をバイパスした入力信号に基づいて電力系統の事故発生を検出するとともに、当該事故発生時における事故継続時間が所定の閾値よりも短い場合には、トリップ指令TPの発生を禁止するための禁止フラグRLをオンする。
【選択図】図2

Description

本発明は、電力系統を保護する目的で設置されるディジタル保護リレー装置に関するものである。
通常、電力系統には、落雷等の事故が発生した場合に、遮断器を開放して事故区間を系統から切り離すための保護リレー装置が設けられる。保護リレー装置は、送電線の電圧・電流を入力として事故発生を検出し、事故発生時には遮断器に対して遮断指令(トリップ指令)を出力するように構成される。
特開2005−6407号公報(特許文献1)には、事故検出処理をディジタル演算で行なうディジタル保護リレー装置の一例が記載される。特許文献1に記載されたディジタル保護リレー装置では、電力系統の状態量である各アナログ信号を2チャンネルずつ入力し、サンプリング周期内でこれらの信号をマルチプレクサにより切換えながら順にサンプリングする。そして、サンプリングされたデータ変化量がしきい値(通常の交流波形としての予測値)を超えれば異常データとみなし、1周期前のサンプリングデータに置き換えるように、サンプリングデータを補正することが記載される。
特開2005−6407号公報
特許文献1にも記載されるように、ディジタル保護リレー装置には、不要な遮断器トリップを引起すことがないように、事故を誤検出しないことが求められている。特許文献1では、異常データの排除機能によって、瞬間的なデータ異常に起因した不要な遮断器トリップ(誤動作)を回避することが期待できる。
一方、実際に系統事故が発生しても、数ms程度の短時間しか継続しない事故、たとえば鳥獣や樹木の接触による瞬間的な短絡に対して、遮断器トリップを発生させるべきではない。このような短時間事故では、ディジタル保護リレー装置がトリップ指令を発生することにより、事故発生後に短時間で電力系統が正常状態に戻ったにもかかわらず、不要な遮断器トリップによって停電が引起される虞がある。
特許文献1に記載されたディジタル保護リレー装置は、異常データを破棄して事故検出を実行することができるものの、発生した事故が短時間のものであるか否かを判断する機能を有するものではない。
また、特許文献1による瞬間的なデータ異常の排除機能によれば、事故態様によっては、短時間事故に対してトリップ指令を発生しないように対処できる可能性がある。しかしながら、特許文献1のディジタル保護リレー装置では、アナログ信号を2チャンネルずつ入力してマルチプレクサにより切換を行なうため、通常のディジタル保護リレー装置と比較してマルチプレクサを追加配置することが必要となる。すなわち、特許文献1によるディジタル保護リレー装置では、ハードウェア要素の追加によるコスト上昇、および、短時間事故への対処の確実性の点で問題が残る。
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであって、この発明の目的は、短時間の系統事故に対して不要な遮断器トリップの発生を回避可能な保護リレー装置を簡易な構成で実現することである。
この発明に係る保護リレー装置は、アナログ/ディジタル変換器と、ディジタルフィルタと、第1の検出手段と、第2の検出手段とを含む。アナログ/ディジタル変換器は、所定周波数の電力を伝達するための送電線に設けられた変流器からの入力に基づくアナログ信号をディジタル信号に変換するように構成される。ディジタルフィルタは、ディジタル信号によって示される交流電流から所定周波数の成分を抽出するように構成される。第1の検出手段は、ディジタルフィルタから出力されたディジタル信号によって示される電流の大きさに基づいて電力系統の事故発生を検出するとともに、事故検出時に送電線に設けられた遮断器のトリップ指令を発生する。第2の検出手段は、ディジタルフィルタをバイパスしたディジタル信号に基づいて電力系統の事故発生を検出するとともに、当該事故発生時における事故継続時間が所定の閾値よりも短い場合には、第1の検出手段によるトリップ指令の発生を一時的に禁止する。
本発明によれば、ハードウェア要素を追加することなく、短時間の系統事故に対して不要な遮断器トリップの発生を回避可能な保護リレー装置を簡易な構成で実現することができる。
本発明の実施の形態1によるディジタル保護リレー装置が適用される電力系統の構成を説明する概略ブロック図である。 実施の形態1によるディジタル保護リレー装置の構成を説明するための概略ブロック図である。 図2に示した事故検出部による通常の事故検出の手法を説明するための概略的な波形図である。 実施の形態1によるディジタル保護リレー装置の短時間事故の発生時における概略的な動作波形図である。 実施の形態1によるディジタル保護リレー装置の通常事故の発生時における概略的な動作波形図である。 実施の形態2によるディジタル保護リレー装置の構成を説明するための概略ブロック図である。 実施の形態3によるディジタル保護リレー装置の構成を説明するための概略ブロック図である。 実施の形態4によるディジタル保護リレー装置の構成を説明するための概略ブロック図である。
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお以下では、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は原則的に繰返さないものとする。
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態によるディジタル保護リレー装置が適用される電力系統の構成を説明する概略ブロック図である。
図1を参照して、送電線20は、系統周波数(たとえば、50Hzないし60Hz)の交流電力を供給する。図1には、送電線20は、単相の交流電力ないし三相のうちの一相の交流電力を供給する。
送電線20には、遮断器50が介挿接続される。遮断器50は、ディジタル保護リレー装置100から出力されたトリップ指令TPに応答して作動する。遮断器50のトリップによって、送電線20の電路が遮断される。
ディジタル保護リレー装置100は、計器用変圧器30からの電圧V1と、変流器40からの電流Isを入力として、送電線20における事故発生を検出する。代表的には、ディジタル保護リレー装置100は、送電線20での過電流発生に応じて、電力系統の事故発生を検出して、遮断器50へのトリップ指令TPを出力する。
トリップ指令TPに応じて遮断器50がトリップすることにより、保護対象設備は、事故点を含む電路から電気的に切り離される。また、図1には1個の遮断器しか例示されていないが、実際の電力系統には複数の遮断器が適宜配置されている。したがって、事故点の両端に位置する遮断器を開放することによって、事故点を電力系統から切り離すことが可能となる。これにより、機器損傷の防止ないし軽減、電力系統の安定運転の維持および、公衆安全の確保を図ることができる。
一方で、鳥獣や樹木の接触等による瞬間的な短絡事故の発生後、短時間(たとえば、数ms程度)で自然に正常状態に復帰した場合、すなわち短時間事故の発生時には、遮断器50をトリップさせることは妥当ではない。一旦遮断器50がトリップすると復帰に時間を要するため、電力系統が正常であるのに電路が遮断された状態となって、不要な停電が発生することが懸念されるからである。
したがって、本発明の実施の形態1では、通常の事故検出機能に加えて、短時間事故を峻別してトリップ指令を発生しないようにする機能を有したディジタル保護リレー装置の構成について説明する。
図2は、本発明の実施の形態1によるディジタル保護リレー装置100の構成を説明するための機能ブロック図である。
図2を参照して、ディジタル保護リレー装置100は、電流電圧変換器110と、アナログディジタル変換器(A/D変換器)130と、ディジタルフィルタ140と、演算処理部150とを含む。演算処理部150は、事故検出部160と、短時間事故検出部170とを有する。ディジタルフィルタ140および演算処理部150は、ディジタル信号に対して演算処理を実行するプロセッサによって実現される機能を示す機能ブロックである。
電流電圧変換器110には、送電線20の電流Ipを一次電流とする変流器40の二次電流Isが入力される。二次電流Isは、変流器40の変流比k(k>1)に応じて、Ipが(1/k)倍された電流である。以下では、二次電流Isを「入力電流」とも称する。一次電流Ipおよび二次電流Isは、系統周波数を基本周波数とする交流電流である。
電流電圧変換器110は、入力電流Isに応じたアナログ電圧VAを発生する。アナログ電圧VAは、系統周波数を基本周波数とする交流電圧を示すアナログ信号である。
アナログフィルタ120は、アナログ電圧VAに含まれる高周波成分を除去するための周波数特性を有するように構成される。アナログフィルタ120を通過したアナログ電圧VAfは、A/D変換器130に入力される。
A/D変換器130は、アナログ電圧VAfを所定のサンプリング周期に従ってサンプリングすることによって、ディジタル信号VD1に変換する。サンプリング周期は、系統周波数の逆数に相当する、系統電力の1サイクル(電気角360°)を複数に分割するように定められる。たとえば、A/D変換器130は、アナログ電圧VAfを電気角30度毎にサンプリングすることによって、ディジタル信号VD1を生成する。
ディジタル信号VD1によって、送電線20を流れる電流Ipに応じた周波数および振幅を有し、かつ、アナログフィルタ120によって高周波成分を除去された交流信号が示されることが理解される。したがって、当該交流信号の大きさ(実効値または振幅等)に基づいて、短絡等の事故による送電線20での過電流の発生を検知することができる。
一方で、アナログフィルタ120によっては、系統周波数の整数倍の周波数成分(n次高調波成分)を効果的に除去することが困難である。したがって、n次高調波成分によって事故を誤検出しないように、ディジタルフィルタ140がさらに設けられる。
ディジタルフィルタ140は、A/D変換器130から出力されたディジタル信号VD1に対して、高調波成分を除去するための信号処理を実行するように構成される。この結果、ディジタルフィルタ140から出力されたディジタル信号VDfは、送電線20の電流Ipから基本周波数(系統周波数)の成分を抽出した交流信号となっている。
事故検出部160は、ディジタルフィルタを通過したディジタル信号VDfに基づいて、送電線20の事故発生を検出するとともに、事故発生を検出した場合には、遮断器50に対してトリップ指令TPを発生するように構成される。
図3には、事故検出部160による通常の事故検出の手法が概念的に示される。
図3を参照して、入力電流Isは、送電線20の電流Ipに比例した、所定の基本周波数を有する交流電流である。図3では、入力電流Isは、基本波成分のみの理想的な交流電流として表記されている。
事故検出部160では、ディジタル信号VDfに基づいて、入力電流Isの大きさを示す電流実効値Ieが算出される。上述のように、ディジタル信号VDfは、アナログフィルタ120およびディジタルフィルタ140によるフィルタ処理後の信号であるので、図3に示した基本波成分のみの電流を示すものである。
事故検出部160は、電流実効値Ieが所定の閾値Itよりも大きくなることに応答して、送電線20での事故発生を検出するとともに、遮断器50へのトリップ指令TPをオンする。
実際に事故が発生して入力電流Isが大きくなってから、トリップ指令TPがオンされるまでには、一定の遅れ時間Tdが存在する。遅れ時間Tdは、アナログフィルタ120およびディジタルフィルタ140によるフィルタ処理時間、A/D変換の所要時間、および、判定処理等の演算時間を含むものである。事故発生からトリップ指令TPをオンするまでの所要時間は仕様により決定されており、その値は一般的に30〜50(ms)程度である。したがって、当該仕様を満たすように、A/D変換器130や、ディジタルフィルタ140および演算処理部150を構成するプロセッサ等が設計される。
このように、事故検出部160は、フィルタ処理された入力電流Isの大きさに基づいて、過電流が生じた期間の長さを考慮することなく、電力系統の事故発生を検出する。したがって、ごく短時間であっても、閾値を超えた過電流が検出されると、遮断器50のトリップ指令TPが出力されてしまう。
再び図2を参照して、短時間事故検出部170は、短時間事故を峻別するために、過電流の継続時間(すなわち、事故継続時間)が所定時間よりも短いか否かを判定する機能を有する。具体的には、短時間事故検出部170は、A/D変換器130から出力されたディジタル信号VD1に基づいて、所定時間よりも短い時間内で収まった過電流の発生、すなわち、短時間事故の発生を検出する。そして、短時間事故検出部170は、短時間事故の発生を検出したときには、遮断器50のトリップ指令TPの発生を一時的に禁止するための禁止フラグRLをオンする。事故検出部160は、禁止フラグRLのオン期間中には、強制的にトリップ指令TPをオフに維持する。
図4は、短時間事故の発生時におけるディジタル保護リレー装置100の動作波形図である。
図4を参照して、送電線20の電流Ipに比例した二次電流Isに、電力系統での短時間事故の発生により、時刻t1からTsの間、過電流が発生したものとする。
ディジタル信号VD1は、入力電流Isが電流電圧変換されたアナログ電圧VAがアナログフィルタ120を通過した後、A/D変換されることによって得られる。図4には、表記の都合上、ディジタル信号VD1およびディジタル信号VDfとして、サンプリングされる前の交流信号のアナログ波形が記載されている。なお、入力電流Isとディジタル信号VD1との間には、A/D変換等による時間遅れが生じる。
事故検出部160に入力されるディジタル信号VDfは、ディジタルフィルタ140を通過することにより、短時間事故検出部170に入力されるディジタル信号VD1よりフィルタ処理時間Tf遅れる。
短時間事故検出部170は、ディジタル信号VD1の推移に基づいて、ディジタル信号VD1の同一位相間での偏差VDSを算出する。偏差VDSは、現在のVD1と、基準値VD♯との差の絶対値で示される(VDS=|VD1−VD♯|)。たとえば、m(m:自然数)サイクル(すなわち、電気角360°×m)前のVD1の値を記憶したものが、基準値VD♯とされる。基本的には、m=1である。このように、VDSは、同一位相におけるサイクル間での電流Ipの差に応じた値である。
基準値VD♯は、系統電力の1サイクル当たりのサンプリング回数に応じた個数分準備される。たとえば、サンプリング周期が電気角30°に相当する場合には、12個分の基準値VD♯が準備され、ディジタル信号VD1がサンプリングされる毎に、VD♯は1個ずつ逐次更新される。すなわち、基準値VD♯は、VD1の今回のサンプリング値に更新される。
なお、三角関数の性質より、基準値VD♯を1/2サイクル(電気角180°)前のVD1の値として、VDS=|VD1+VD♯|としても、同一位相間での偏差VDSを算出することが可能である。この場合にも、基準値VD♯は、ディジタル信号VD1がサンプリングされる毎に、適宜更新される。
ただし、過電流の検出時、すなわち、VDS>Vthの期間では、基準値VD♯の更新を停止することにより、過電流時の値を偏差VDSを求めるための基準値から排除することが好ましい。このようにすると、短時間事故から復帰した、次サイクルでの電流Ipに応じた入力電流Isについては、正常時の電流との比較によって、事故発生の有無を正確に判定することが可能となる。
短時間事故検出部170は、時刻t2において、偏差VDSが閾値Vthを超えるのに応答して、事故発生を検出する。さらに、VDS>Vthの継続時間を過電流の継続時間(すなわち、事故継続時間)とみなして、当該事故継続時間が所定時間Tjよりも短いか否かが判定される。図4では、時刻t2およびt3の時間差が事故継続時間に相当し、事故継続時間はTjよりも短い。
短時間事故検出部170は、事故発生を検出した時刻t2から所定時間Tjが経過するまでに過電流が収まると(すなわち、VDS<Vthに復帰すると)、時刻t1から所定期間Thが経過するまでの間、禁止フラグRLをオンする。
一方、事故検出部160は、ディジタル信号VDfに基づいて、時刻t2よりもTf遅れて、過電流の発生、すなわち、電力系統の事故発生を検出することができる。実際には、図中に点線で示すように、実際に過電流が発生した時刻t1から遅れ時間Tdが経過した時刻txにおいて、トリップ指令TPを発生することが可能となる。
短時間事故検出部170が短時間事故を検出した場合には、時刻txにおいて禁止フラグRLがオンされているため、事故検出部160は、ディジタル信号VDfに基づいて過電流が検出されても、トリップ指令TPをオンすることなく、オフに維持する。
これにより、短時間事故の発生時には、遮断器50のトリップを回避することによって、無用の停電が発生することを防止できる。禁止フラグRLの所定期間Thは、時刻t1から遅れ時間Tdが経過した時刻txにおいてRLがオンされるように定めることが必要である。一方で、Thが長過ぎると、短時間事故に後続して本来の系統事故が発生した場合に、トリップ指令TPの出力が遅くなる虞がある。たとえば、所定期間Thについては、系統電力の2サイクルよりも短くなるように、1〜1.5サイクル程度の期間とすることが好ましい。
なお、禁止フラグRLのオンを維持している間に新たな短時間事故が検出された場合には、禁止フラグRLのオン期間が延長される。すなわち、短時間事故が連続して発生した場合には、最後に短時間事故が検出されてからThの間、禁止フラグRLがオンされる。
図4より、短時間事故検出部170がディジタルフィルタ140をバイパスしたディジタル信号VD1に基づいて短時間事故を検出することにより、事故検出部160によるトリップ指令TPの発生を適切に回避するための時間的余裕を確保できることが理解される。
一方で、図5には、遮断器をトリップすべき事故(通常事故)の発生時における短時間事故検出部170の動作例が示される。
図5を参照して、送電線20の電流Ipに比例した二次電流Isに、電力系統での事故の発生により、時刻t1から所定時間Tjを超えて過電流が発生する。時刻t2において、短時間事故検出部170は、ディジタル信号VD1の推移に基づいて、偏差VDSが閾値Vthを超えたことに応答して、事故発生を検出する。短時間事故検出部170は、事故発生を検出した時刻t2から所定時間Tjが経過した時刻t3においても、VDS>Vthが継続しているため、事故継続時間が所定時間Tjよりも長いと判定する。このとき、短時間事故検出部170は、発生した事故は短時間事故ではないと判断して、禁止フラグRLをオフに維持する。
上述のように、事故検出部160は、時刻t1から遅れ時間Tdが経過した時刻txにおいて、ディジタル信号VDfに基づいて電力系統の事故発生を検出することができる。時刻t3において、図4の場合とは異なり禁止フラグRLがオフであるため、事故検出部160は、遮断器50に対してトリップ指令TPを出力する。これにより、所定時間Tjを超えた系統事故に対しては、遮断器50を正常にトリップできることが理解される。
さらに、短時間事故検出部170の機能は、A/D変換器130の出力信号(ディジタル信号VD1)に対する演算処理、すなわち、プロセッサによるソフトウェア処理によって実現できるので、マルチプレクサの配置を要する特許文献1のように、ハードウェア要素を追加する必要がない。
また、図2〜図5では、単相(一相分)のみに対する事故検出を説明したが、同様の演算を三相(A相、B相、C相)の各々に適用することにより、三相の交流電力系統についても同様の事故検出を行なうことが可能である。
このように実施の形態1によるディジタル保護リレー装置によれば、送電線の電流の大きさ(たとえば、実効値)に基づく通常の事故検出に加えて、短時間事故検出部170の機能により、短時間事故に対してトリップ指令を発生しないように対処することができる。したがって、ハードウェア要素の追加を要しない簡易な構成によって、短時間の系統事故に対する遮断器トリップの発生を回避可能な保護リレー装置を実現することが可能となる。
なお、事故検出部160は「第1の検出手段」に対応し、短時間事故検出部170は「第2の検出手段」に対応する。
[実施の形態2]
図6には、実施の形態2によるディジタル保護リレー装置の構成を説明するための機能ブロック図が示される。
図6を参照して、実施の形態2によるディジタル保護リレー装置101は、実施の形態1によるディジタル保護リレー装置100(図2)と比較して、短時間事故検出部170に代えて短時間事故検出部170♯を含む点で異なる。上述のように、図2に示した短時間事故検出部170を三相に適用する場合には、各相に対して短時間事故検出部170が設けられる一方で、短時間事故検出部170♯は、3相に対して共通に設けられる。短時間事故検出部170♯には、三相(A相、B相、C相)の電流Ia,Ib,Icが入力される。図6のその他の部分の構成については、実施の形態1によるディジタル保護リレー装置100(図2)と同様であるので詳細な説明は繰返さない。図6の構成では、短時間事故検出部170♯が「第2の検出手段」に対応する。
短時間事故検出部170♯は、座標変換部175を有する。座標変換部175は、三相(A相、B相、C相)の電流Ia,Ib,Icに対して座標変換処理を実行する。座標変換部175の機能は、プロセッサによるソフトウェア処理によって実現することができる。
たとえば、座標変換部175は、クラーク座標法による下記(1)式によって、三相電流Ia,Ib,Icを、電流Iα(α成分)、電流Iβ(β成分)およびI0(0成分)に変換する。
Figure 2013255355
クラーク座標法による変換後の電流(α成分,β成分,0成分)では、各相の短絡事故が発生した場合にはβ成分の値に影響が現れるとともに、地絡事故が発生した場合には0成分に影響が現れる。したがって、変換後の電流については、β成分および0成分の2つについて、図2に示した短時間事故検出部170による処理を実行することにより、三相分の事故すべてに対応できることになる。
したがって、短時間事故検出部170♯では、クラーク座標法による変換後の電流Iβ(β成分)および電流I0(0成分)の2つの電流の各々について、実施の形態1と同様に、同一位相におけるサイクル間での偏差(図4でのVDSに相当)を求めるとともに、当該偏差と閾値との比較に基づいて、短時間事故の検出および禁止フラグRLのオンオフ制御が実行されることになる。
あるいは、クラーク座標法に代えて、対称座標法を用いることも可能である。対称座標法を用いる場合には、下記(2)式に示されるように、三相電流Ia,Ib,Icが、0相電流I0、正相電流I1および逆相電流I2に変換される。
Figure 2013255355
短時間事故検出部170♯は、対称座標法を用いた場合には、正相または逆相電流と、0相電流との2つの電流の各々について、図2に示した短時間事故検出部170による処理を実行する。
実施の形態2による短時間事故検出部170♯では、図2の短時間事故検出部170による演算処理と比較して、3相分の処理を2成分の電流に対する処理に軽減することができる。したがって、座標変換処理に係る演算処理の負荷が、1相分の短時間事故検出に係る演算処理の負荷よりも低い場合には、短時間事故検出部170♯を構成するプロセッサの演算負荷を軽減することが可能となる。
[実施の形態3]
図7は、本発明の実施の形態3によるディジタル保護リレー装置102の構成を説明するための概略ブロック図である。
図7を参照して、実施の形態3によるディジタル保護リレー装置102は、実施の形態1によるディジタル保護リレー装置(図2)と比較して、演算処理部150に代えて、演算処理部151を含む点で異なる。演算処理部151は、演算処理部150にも含まれる事故検出部160および短時間事故検出部170に加えて、記憶部180および報知部185をさらに含む。
記憶部180は、短時間事故検出部170によって禁止フラグRLがオンされた履歴を記憶する。報知部185は、記憶部180に記憶された禁止フラグRLのオン履歴に基づく警告を出力するための指令を、図示しない表示部(たとえば、警告ランプ)に対して出力する。記憶部180は、たとえば、プロセッサ内部に設けられたメモリを用いて構成することができる。報知部185の機能は、プロセッサによるソフトウェア処理によって、実現できる。
ディジタル保護リレー装置102のその他の部分の構成は、実施の形態1によるディジタル保護リレー装置100と同様であるので詳細な説明は繰り返さない。
短時間事故の発生が過度に頻繁に検出される場合には、実際の電力系統の短時間事故ではなく、ディジタル保護リレー装置内部での異常が発生していることが懸念される。たとえば、A/D変換器におけるデータ変換異常(データ化け)によって、短時間事故検出部170が短時間事故を誤検出している虞がある。短時間事故が頻繁に誤検出されると、禁止フラグRLが誤ってオンされた期間中に実際の系統事故が発生した場合に、当該系統事故の検出が遅れる可能性がある。
したがって、報知部185は、短時間事故検出部170による短時間事故の発生検出頻度(すなわち、一定時間内における禁止フラグRLのオン回数)が判定値を超えると、ユーザに対する警告出力を指示する。これにより、ユーザは、実際の短時間事故の発生と、ディジタル保護リレー装置内部での異常とを切り分けることが可能となる。言い換えると、短時間事故検出部170による短時間事故の発生検出頻度に基づいて、ディジタル保護リレー装置内部での異常を検出することが可能となる。特に、警告の出力によってディジタル保護リレー装置の点検をユーザに促すことにより、事故検出部160による事故検出能力が低下する状態が継続することを防止できる。
なお、短時間事故検出部170による短時間事故の発生検出頻度が高い場合に、禁止フラグRLのオンを禁止する構成としてもよい。たとえば、報知部185による警告出力が必要な場合に、短時間事故検出部170に対して禁止フラグRLのオンを禁止する構成とすることが可能である。あるいは、短時間事故検出部170が、記憶部180に記憶された履歴に基づいて、短時間事故の発生検出頻度が高い場合に、禁止フラグRLをオンしないようにしてもよい。
このように、実施の形態3によるディジタル保護リレー装置によれば、短時間事故検出部170による短時間事故の発生検出頻度に基づいて、ディジタル保護リレー装置内部の異常を検出することが可能である。さらに、ユーザに対する警告出力および/または禁止フラグRLのオン禁止を行なうことにより、短時間事故の頻繁な誤検出によって事故検出部160による事故検出能力が低下する状態を回避することが可能となる。
なお、実施の形態3による構成は、実施の形態2による構成と組み合わせることも可能である。すなわち、図6に示したディジタル保護リレー装置101の構成において、記憶部180および報知部185を設けることも可能である。この構成では、記憶部180は、短時間事故検出部170♯による禁止フラグRLのオン履歴を記憶するように構成される。
[実施の形態4]
図8は、実施の形態4によるディジタル保護リレー装置の構成を示すブロック図である。
図8を参照して、実施の形態4によるディジタル保護リレー装置103は、実施の形態1によるディジタル保護リレー装置100(図2)と比較して、短時間事故検出部170に入力されるディジタル信号の発生経路が異なる。具体的には、A/D変換器130は、アナログフィルタ120を通過した電圧信号VAをA/D変換したディジタル信号VD1に加えて、アナログフィルタ120をバイパスした電圧信号VAをA/D変換したディジタル信号VD1♯を出力する。
短時間事故検出部170は、ディジタル信号VD1♯を入力として、上述したのと同様に、短時間事故の発生検出処理および禁止フラグRLのオンオフ制御を実行する。すなわち、短時間事故検出部170は、アナログフィルタ120をバイパスした信号をA/D変換したディジタル信号VD1♯に基づいて、短時間事故の検出処理を実行する。具体的には、ディジタル信号VD1♯について、実施の形態1と同様に、同一位相におけるサイクル間での偏差VDSを求めるとともに、当該偏差と閾値との比較に基づいて、短時間事故の検出および禁止フラグRLのオンオフ制御が実行される。
これに対して、事故検出部160に入力されるディジタル信号VDfは、実施の形態1と同様に、アナログフィルタ120およびディジタルフィルタ140の両方を通過する経路によって発生される。すなわち、事故検出部160による系統事故の検出処理は、実施の形態1で説明したのと同様であるので、詳細な説明は繰り返さない。
ディジタル信号VD1♯は、アナログフィルタ120をバイパスした経路で発生される。このため、ディジタル信号VD1♯には、ディジタル信号VD1と比較して、アナログフィルタ120における遅延時間分だけ早く、系統事故(短時間事故)を示す波形が出現する。実施の形態1で説明したように、短時間事故の検出は、事故検出部160による事故検出よりも早期に完了する必要がある。
したがって、実施の形態4によるディジタル保護リレー装置103によれば、短時間事故検出部170による短時間事故をさらに検出に実行することが可能となるので、短時間事故の検出による不要な遮断器トリップを回避する効果をさらに高めることが期待できる。
なお、実施の形態4による構成は、実施の形態2,3による構成と組み合わせることも可能である。すなわち、図6に示したディジタル保護リレー装置101、図7に示したディジタル保護リレー装置102、および、実施の形態2および3を組み合わせたディジタル保護リレー装置(図示せず)の構成の各々において、短時間事故検出部170への入力信号を、アナログフィルタ120をバイパスした経路によって発生されたディジタル信号VD1♯とすることも可能である。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
20 送電線、30 計器用変圧器、40 変流器、50 遮断器、100,101,102,103 ディジタル保護リレー装置、110 電流電圧変換器、120 アナログフィルタ、130 A/D変換器、140 ディジタルフィルタ、150,151 演算処理部、160 事故検出部、170,170♯ 短時間事故検出部、175 座標変換部、180 記憶部、185 報知部、Ia,Ib,Ic 三相電流、Ie 電流実効値、Ip 送電線電流(変流器一次電流)、Is 入力電流(変流器二次電流)、It,Vth 閾値、RL 禁止フラグ、TP トリップ指令、Td 遅れ時間、Tf ディジタルフィルタ処理時間、Tj 所定時間、V1 送電線電圧、VA,VAf 電圧信号(アナログ電圧)、VD1,VD1♯,VDf ディジタル信号、VDS 偏差。

Claims (8)

  1. 所定周波数の電力を伝達するための送電線に設けられた変流器からの入力に基づくアナログ信号をディジタル信号に変換するためのアナログ/ディジタル変換器と、
    前記ディジタル信号によって示される交流電流から前記所定周波数の成分を抽出するためのディジタルフィルタと、
    前記ディジタルフィルタから出力されたディジタル信号によって示される電流の大きさに基づいて電力系統の事故発生を検出するとともに、事故検出時に前記送電線に設けられた遮断器のトリップ指令を発生するための第1の検出手段と、
    前記ディジタルフィルタをバイパスした前記ディジタル信号に基づいて前記電力系統の事故発生を検出するとともに、当該事故発生時における事故継続時間が所定の閾値よりも短い場合には、前記第1の検出手段による前記トリップ指令の発生を一時的に禁止するための第2の検出手段とを備える、ディジタル保護リレー装置。
  2. 前記第2の検出手段は、
    前記事故継続時間が所定の閾値よりも短い場合には、前記第2の検出手段による事故発生の検知から所定時間が経過するまでの間、前記第1の検出手段による前記事故発生の検出を禁止するための手段を含み、
    前記所定時間は、前記ディジタルフィルタによって生じる遅れ時間よりも長く、前記所定周波数の逆数である所定周期の2倍よりも短い、請求項1記載のディジタル保護リレー装置。
  3. 前記電力系統は、三相交流電流を送電し、
    前記第2の検出手段は、
    三相の各々において、前記所定周波数に従った同一位相の周期間での電流差が閾値を連続的に超えた時間に基づいて、前記事故継続時間として検出するための手段を含む、請求項1または2に記載のディジタル保護リレー装置。
  4. 前記電力系統は、三相交流電流を送電し、
    前記第2の検出手段は、
    前記三相交流電流をクラーク座標法に従って変換して得られたβ成分および0成分のそれぞれについて、前記所定周波数に従った周期間の同一位相での電流差が閾値を連続的に超えた時間に基づいて、前記事故継続時間として検出するための手段を含む、請求項1または2に記載のディジタル保護リレー装置。
  5. 前記電力系統は、三相交流電流を送電し、
    前記第2の検出手段は、
    前記三相交流電流を対称座標法に従って変換して得られた正相分または逆相分と零相分とのそれぞれについて、前記所定周波数に従った周期間の同一位相での電流差が閾値を連続的に超えた時間に基づいて、前記事故継続時間として検出するための手段を含む、請求項1または2に記載のディジタル保護リレー装置。
  6. 前記第2の検出手段による前記短時間事故の発生履歴を記憶するための記憶手段と、
    前記短時間事故の発生検出頻度が所定値を超えたときにユーザに警告するための警告手段とをさらに備える、請求項1〜5のいずれか1項に記載のディジタル保護リレー装置。
  7. 前記第2の検出手段による前記短時間事故の発生履歴を記憶するための記憶手段と、
    前記短時間事故の発生検出頻度が所定値を超えたときに、前記第1の検出手段による前記短時間事故の発生の検出を禁止するための手段とをさらに備える、請求項1〜5のいずれか1項に記載のディジタル保護リレー装置。
  8. 前記アナログ/ディジタル変換器に入力される前記アナログ信号から高周波成分を除去するためのアナログフィルタをさらに備え、
    前記アナログ/ディジタル変換器は、前記アナログフィルタを通過したアナログ信号を変換した第1のディジタル信号と、前記アナログフィルタをバイパスしたアナログ信号を変換した第2のディジタル信号とを出力し、
    前記第1のディジタル信号は、前記ディジタルフィルタに入力され、
    前記第2の検出手段は、
    前記第2のディジタル信号に基づいて、前記短時間事故の発生を検出するための手段を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載のディジタル保護リレー装置。
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