JP2014001092A - 水硬性材料補強用両端フック型鋼繊維、水硬性材料、及び水硬性材料硬化体 - Google Patents

水硬性材料補強用両端フック型鋼繊維、水硬性材料、及び水硬性材料硬化体 Download PDF

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正朗 小島
Tateo Mitsui
健郎 三井
Toshio Yonezawa
敏男 米澤
Daisuke Honma
大輔 本間
Hirozo Mihashi
博三 三橋
Tomoya Nishiwaki
智哉 西脇
Takatsune Kikuta
貴恒 菊田
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Abstract

【課題】圧縮強度、引張強度及び靱性に優れた硬化体を形成しうる水硬性材料補強用両端フック型鋼繊維、それを用いた水硬性材料硬化体及び水硬性材料硬化体を提供する。
【解決手段】直線部と、前記直線部の両端部から、該直線部と角度を持つように折り曲げられた第1フック部と、第1フック部の端部を折曲げて形成された直線部と平行な第2フック部と、を有し、鋼繊維の直径(φ)が0.10mm以上0.50mm以下であり、第2フック部の長さ(l)が1mm以上であり、(l/φ)が5以上25以下、第1フック部の曲げ高さ(h)が0.3mm以上であり、(h/φ)が2以上10以下であり、第1フック部と第2フック部の折曲部の内側面が形成する曲率半径(r1)、直線部と第1フック部が形成する曲率半径(r2)は、(r1/φ)が3以上10以下であり、(r2/r1)が1.5以上10以下である水硬性材料補強用両端フック型鋼繊維。
【選択図】図1

Description

本発明は、水硬性材料補強用両端フック型鋼繊維、該両端フック型鋼繊維を含有する水硬性材料及び該水硬性材料を硬化して得られた水硬性材料硬化体に関する。
土木・建築構造物に適用される水硬性材料、特にセメント、モルタルおよびコンクリート等の水硬性材料は種々の目的に使用され、水硬性材料の硬化体は、高い圧縮強度を有することで建築構造物などに汎用される。しかしながら水硬性材料硬化体は、優れた圧縮強度に対し、引張強度は充分ではなく、コンクリート等の構造物では、圧縮力だけを負担し、引張力を負担しない使用態様で設計されていることが一般的であった。
引張応力に対する強度を向上させる目的で、従来、水硬性材料に補強用の鋼繊維を混合することが行われており、より引き抜き力に対する抵抗を向上させるため、異形の鋼繊維、例えば、波形鋼繊維(例えば、特許文献1参照。)、S字型鋼繊維(例えば、特許文献2参照。)、両端異形繊維(例えば、特許文献3参照。)などを補強材として用いる技術が提案されている。
近年、コンクリート硬化体に代表される水硬性材料硬化体の圧縮強度向上のための改良が進み、特に、水硬性材料における水と、結合材との比率、即ち、コンクリートを例に挙げれば、水と、セメント、シリカフューム、高炉スラグ、フライアッシュ等のコンクリート中で水和反応する材料と、の質量比(以下、水/結合材比ということがある。本明細書中における水/結合材比は特にことわらなり限りにおいて、質量基準である)を、小さくして強度を上げる技術が種々提案されている。これは、水/結合材比を小さくすると、粒子間の距離が狭くなり、また、液相部分に水和生成物が析出し充填するため、組織が緻密になり、圧縮強度の高いコンクリートが得られるためと考えられる。
セメント硬化体として高強度のものが得られると、構造物の柱断面を小さくしたり、柱の荷重の負担面積を大きくしたりすることができるため、高層の構造物の建設に有用となり、また、建物の柱の間隔を大きくとることができるようになり、建築物の平面計画上の自由度を上げることができ、大きなメリットが生まれる。他方、引張応力に対する耐性もより高度なものが求められる。
水硬性材料硬化体の圧縮強度が高い場合、例えば、圧縮強度で60N/mm以上の場合には、従来使用される鋼繊維をそのまま利用しても、有効に補強できない場合が生じてきた。
特開平7−53247号公報 特開2001−220190号公報 特開2005−170715号公報
通常、鋼繊維などの補強繊維が補強効果を発揮するのは、硬化体に作用している応力が付着力を介して補強繊維に分散されるためと考えられている。
本発明者らが詳細に検討したところ、引張応力が高くなり、硬化体の変形が進むと、硬化体の強度が十分に高くない場合には、補強繊維は硬化体を破壊しながら抜け出てゆく傾向にあるが、水結合材比が小さく、水硬性材料硬化体の圧縮強度が60N/mm以上となる場合には、硬化体は破壊されず、鋼繊維自体が塑性変形することで抜け出てゆくために、従来公知の鋼繊維では、引張応力に対する耐性が充分に得られないことが判明した。
これらの問題点を考慮した本発明の課題は、水硬性材料硬化体の圧縮強度が60N/mm以上となるような、水/結合材比の小さい水硬性材料に好適に使用され、形成された水硬性材料硬化体の圧縮強度のみならず、引張応力に対する強度を向上させる水硬性材料用補強繊維を提供することである。
また、本発明のさらなる課題は、上記本発明の水硬性材料用補強繊維を用いた、水硬性材料、及び、該水硬性材料により得られる圧縮強度と引張強度の双方に優れる水硬性材料硬化体を提供することである。
本発明者らは鋭意検討の結果、水硬性材料硬化体の強度が高い場合には、補強用鋼繊維が塑性変形しながら抜け出る間の摩擦抵抗及び塑性変形エネルギーが効果的に作用して水硬性材料硬化体の圧縮強度、引張強度、及び靭性を改善していること、鋼繊維の形状と強度とを最適化することで、上記問題点を解決しうることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明の構成は以下の通りである。
<1> 直線部と、前記直線部の両端部から、該直線部と角度を持つように折り曲げられた第1フック部と、前記第1フック部の端部を互いに離れる方向へ折曲げて前記直線部と平行とした第2フック部と、を有する両端フック型鋼繊維であって、
前記鋼繊維の直径(φ)が0.10mm以上0.50mm以下であり、
前記第2フック部の長さ(l)が1mm以上であり、且つ、鋼繊維の直径(φ)と第2フック部の長さ(l)の比(l/φ)が5以上25以下であり、
前記直線部と前記第2フック部との距離である第1フック部の曲げ高さ(h)が0.3mm以上であり、且つ、鋼繊維の直径(φ)と第1フック部の曲げ高さ(h)との比(h/φ)が2以上10以下であり、
前記第1フック部と前記第2フック部の折曲部の内側面が形成するR部の曲率半径をr1とし、前記直線部と前記第1フック部の折曲部の内側面が形成するR部の曲率半径をr2とし、鋼繊維の直径をφをとしたとき、r1/φが3以上10以下であり、かつr2/r1が1.5以上10以下である水硬性材料補強用両端フック型鋼繊維。
<2> 前記両端フック型鋼繊維の全長(la)が6mm以上50mm以下である<1>に記載の水硬性材料補強用両端フック型鋼繊維。
<3> 前記両端フック型鋼繊維の直線部の長さ(l)と、前記第2フック部の長さ(lとの関係が、以下の式を満たす<1>又は<2>に記載の水硬性材料補強用両端フック型鋼繊維。
(式) 6×l<l
<4> 前記両端フック型鋼繊維を構成する鋼繊維の引張強度が2000MPa以上5000MPa以下である<1>〜<3>のいずれか1項に記載の水硬性材料補強用両端フック型鋼繊維。
<5> セメント、骨材、水、及び、<1>〜<4>のいずれか1項に記載の両端フック型鋼繊維を0.5容量%以上5.0容量%以下含有する、水結合材比が質量基準で0.1以上0.3以下である水硬性材料。
<6> <5>に記載の水硬性材料を硬化して得られた、圧縮強度が60N/mm以上であり、且つ、引張強度が10N/mm以上である水硬性材料硬化体。
なお、本明細書における水硬性材料とは、セメント、モルタルおよびコンクリートを包含する概念であり、代表的には、セメント、骨材、水和性材料及び水を含有し、水/結合材比(質量基準)が0.1以上0.3以下であるコンクリート組成物が挙げられ、水硬性材料硬化体とは、コンクリート組成物やセメント組成物を混合して型枠に投入し、硬化させてなる硬化体を示す。なお、高強度の硬化体を形成する場合、通常の養生に加え、硬化体を、70℃〜100℃の温度範囲で2時間〜72時間蒸気養生する蒸気養生、100℃〜400℃の温度範囲で2時間〜72時間加熱する高温養生などの1種以上を適宜組み合わせて実施することも好ましい態様である。
本発明の補強用鋼繊維を用いることで、水/結合材比が質量基準で0.1以上0.3以下であり、圧縮強度が60N/mm〜400N/mmの範囲にあり、且つ、引張応力に対する強度と靱性にも優れた水硬性材料硬化体を形成することができ、このような水硬性材料硬化体は、建築物などの構造部材としても有用である。
本発明の作用は明確ではないが、以下のように考えている。
本発明の両端フック型鋼繊維では、鋼繊維の直径を上記範囲とすることで、塑性変形に対する抵抗力を確保すると共に、第2フック部の長さ(l)を充分にとり、且つ、鋼繊維の直径(φ)と第2フック部の長さ(l)の比(l/φ)を5以上25以下の範囲とすること、鋼繊維の直径(φ)と第1フック部の曲げ高さ(h)との比(h/φ)を2以上10以下とすること、及び曲率半径を特定の範囲とすることにより、接触部分における摩擦抵抗力と繊維の塑性変形に伴うエネルギーが効率的に得られる。且つ、鋼繊維が引き抜ける際には塑性変形を伴うと、塑性変形が生じる前に素材として持っていた強度よりも低下してしまう現象が生じるが、前記の形状にすることでこの強度低下を小さくする。この結果として、大きな引き抜き抵抗力が得られ、靭性の低下も生じがたく、少量の添加であっても、水硬性材料硬化体の圧縮強度と引張強度の双方を向上させうるものと考えている。特に、引張強度の向上には効果的である。なお、ここでいう引張強度とは、応力ひずみ関係でいう最大値のことを指す。
本発明によれば、水硬性材料硬化体の圧縮強度が60N/mm以上となるような、水/結合材比の小さい水硬性材料に好適に使用され、形成された水硬性材料硬化体の圧縮強度のみならず、引張応力に対する強度と靱性を向上させる水硬性材料用補強繊維が提供される。
また、前記本発明の水硬性材料用補強繊維を用いることで、水硬性材料、及び、該水硬性材料により得られる圧縮強度と引張強度の双方に優れる水硬性材料硬化体が提供される。
本発明の両端フック型鋼繊維の一例を示す概略正面図である。 水硬性材料硬化体に本発明の両端フック型鋼繊維が含有された状態を示す概略断面図である。 実施例及び比較例の水硬性材料硬化体の引張試験による引張応力と引張ひずみの関係を示すグラフである。 実施例及び比較例の水硬性材料硬化体の引き抜き試験用試料の作製態様を示す概略断面図である。
以下、本発明の水硬性材料補強用両端フック型鋼繊維、該両端フック型鋼繊維を含有する水硬性材料及び該水硬性材料により得られる水硬性材料硬化体について詳細に説明する。
〔水硬性材料補強用両端フック型鋼繊維〕
本発明の水硬性材料補強用両端フック型鋼繊維を、図を用いて説明する。
図1は本発明の水硬性材料補強用両端フック型鋼繊維10の一態様を表す正面図である。
本発明の水硬性材料補強用両端フック型鋼繊維(以下、適宜、両端フック型鋼繊維と称する)10は、鋼繊維であって、直線部12と、その両端において、該直線部12と角度をなすように屈曲した第1フック部14A、14Bと、該第1フック部14A、14Bの端部を互いに離れる方向へ折曲げて前記直線部と平行とした第2フック部16A、16Bとを有する両端フック型鋼繊維である。
本発明の両端フック型鋼繊維10を構成する鋼繊維は、直径(φ)が0.10mm以上0.50mm以下であることを要する。直径(φ)が0.10mm未満の場合には、加工精度の確保が困難なことから必要な補強効果が得がたく、また、直径(φ)が0.50mmを超えた場合、さらなる強度向上効果が望めず、成形加工が困難になるため何れも好ましくない。
また、直線部12と平行な第2フック部16A、16Bの長さ(l)は1mm以上であることを要し、直径(φ)が0.30mm以上の場合には2.5mm以上が好ましい。長さが短すぎると引張応力に対する耐性が低下する。長さの上限には特に制限はないが、水硬性材料に混合する際の作業性の観点からは、5mm以下であることが好ましい。
なお、図1に示すように、第2フック部16A、16Bの長さ(l)とは、第1フック部14A、14Bの折り曲げ位置から第2フック部16A、16Bの端部までの距離を指す。
また、鋼繊維の直径(φ)と第2フック部16A、16Bの長さ(l)の比(l/φ)は5以上25以下であり、直径(φ)が0.30mm以上の場合には6.5以上15以下であることが好ましい。
さらに直線部12と前記第2フック部16A、16Bとの距離である第1フック部14A、14Bの曲げ高さ(h)は0.3mm以上であることを要し、直径(φ)が0.30mm以上の場合には0.8mm以上であることが好ましい。高さ(h)の上限には特に制限はないが、水硬性材料に混合する際の均一混合を容易にするという観点からは、3mm以下であることが好ましい。曲げ高さhは、図1に示すように、第2フック部16A、16Bにおける鋼繊維の中心線と直線部12における鋼繊維の中心線との距離を指す。
ここで、鋼繊維の直径(φ)と第1の屈曲部14A、14Bの曲げ高さ(h)との比(h/φ)が2以上10以下であることを要し、3以上6以下であることが好ましい。
前記第1フック部14A、14Bと前記第2フック部16A、16Bの折曲部の内側面が形成するR部の曲率半径をr1とし、前記直線部12と前記第1フック部14A、14Bの折曲部の内側面が形成するR部の曲率半径をr2とし、鋼繊維の直径をφをとしたとき、r1/φが3以上10以下であり、かつr2/r1が1.5以上10以下である。
本発明の両端フック型鋼繊維は、全長(la)、即ち、一方の第2フック部16Aの端部から、他方の第2フック部16Bの端部までの距離が、6mm以上50mm以下であることが好ましく、15mm以上40mm以下であることがより好ましい。
全長を上記範囲とすることで、引張応力に対する耐性がより向上し、引張応力を受けた場合のクラックの発生などが、より効果的に抑制される。
また、両端フック型鋼繊維10の直線部12の長さ(l)と、前記第2フック部16A、16Bの長さ(l)との関係は、以下の式を満たすことが好ましい。
(式) 6×l<l
両者の長さのバランスにおいて、第2フック部16A、16Bの長さ(l)が直線部12の長さ(l)に対して、上記割合の長さを有することで、フックの形状がより効果的に働き、水硬性材料中における引き抜き耐性がより向上し、水硬性材料硬化体の引張応力に対する耐性がよりすぐれたものとなる。
本発明の両端フック型鋼繊維10を構成する鋼繊維(素線)の引張強度としては、2000MPa以上5000MPa以下であることが好ましい。素線の強度が高いほど補強繊維としては有効であるが、加工性などを考慮して上限値を5000MPaとしたものであり、そのような観点からは、素線の引張強度は3000MPa以上であることがより好ましい。両端フック型鋼繊維を構成する鋼繊維の引張強度は、土木学会「コンクリート用鋼繊維品質規格(案)(JSCE−E101−2007)の付属書(規定)「鋼繊維の引張強度試験方法」に準じて行っている。
載荷試験にはインストロン社製万能試験機モデル55R1125を用い、変位速度をクロスヘッド速度で0.2mm/minで引っ張って試験した。5本の試験結果の平均値を試験値とした。なお、本規格では平板用チャックで固定した。繊維径が0.2mm程度以下の直径の細い鋼繊維は、平板用チャックを用いて試験するとチャック付近で破断してしまうことが多かったため、空気キャプスタン型糸つかみ具(島津製作所製)を用い、繊維の固定部を、引っ張り方向に対して円筒部分を半周回った位置に設けて、つかみ部分で破断しないようにして試験した。
このような引張強度を達成するためには、両端フック型鋼繊維を構成する鋼繊維(素線)の素材としては、例えば、JIS G 7305「ばね用鋼線−第2部:冷間引抜炭素鋼線(ISO仕様)」、JIS G 7306「ばね用鋼線−第3部:オイルテンパー線(ISO仕様)」、JIS G 3522「ピアノ線」、JIS G 3521「硬鋼線」等を使用することが好ましい。
また、第1フック部及び第2フック部は、精密バネ加工用のコイリングマシンを調整して上記好ましい形状に成形される。大量に生産する場合には、特開平5−337727号公報に示される歯車式の成型装置などで製造してもよい。
両端フック型鋼繊維表面は、後述する水硬性材料との密着性向上などの目的で、プライマー処理、表面粗面化処理などの、化学的、或いは、物理的な表面処理を施してもよい。
〔水硬性材料〕
本発明の両端フック型鋼繊維10を含む水硬性材料は、水硬性の特性を有するものであれば特に制限はなく、セメント、モルタルおよびコンクリートなどが代表的なものとして挙げられる。なかでも、高い強度と靱性を必要とするコンクリート組成物に適用した場合に両端フック型鋼繊維10の添加効果が高い。これは、硬化体の強度が一定以上である場合に、両端フック型鋼繊維10の耐引き抜き効果がより効果的に発現するためである。
本発明の水硬性材料は、セメント、骨材、水、及び、前記本発明の両端フック型鋼繊維を含み、両端フック型鋼繊維の含有量は0.5容量%以上5.0容量%以下であることを要し、好ましくは1.0容量%以上4.0容量%以下である。
含有量が0.5容量%未満では、得られる硬化体の引張応力に対する強度向上効果が充分に得られず、5.0容量%を超えると均一分散性、水硬性材料の流動性が低下し、局所的に強度が不十分な領域が生じるおそれがあるため、いずれも好ましくない。
図2は、本発明の両端フック型鋼繊維10を含有してなる水硬性材料硬化体18を模式的に表した概略断面図である。鋼繊維にフック部を有することで、引張応力が掛かった場合においても、マトリックスである水硬性材料硬化体18からの引き抜き抵抗が著しく向上する。
水硬性材料の中でも水/結合材比が質量基準で0.1以上0.3以下である高強度の硬化体を形成しうる水硬性材料が好ましい。なお、以下、特に断らない限りにおいて、水/結合材比は質量基準で表すものとする。
水硬性材料の一例を挙げれば、セメント、骨材、シリカフューム、水、及び前記本発明の両端フック型鋼繊維を所定の含有量で含み、水/結合材比(質量基準)が0.1以上0.3以下であるセメント組成物が好ましく挙げられる。
(水硬性材料の各成分)
以下、本発明の水硬性材料硬化体に用いられる材料について述べる。
(水/結合材比)
本発明のセメント硬化体の製造に使用されるセメント組成物(骨材として、粗骨材をさらに含むコンクリート組成物であってもよい)は、水/結合材比が0.5程度の一般的なセメント組成物であってもよいが、高強度の硬化体を形成しうるという観点からは、水/結合材比が0.1以上0.3以下であることが好ましい。
また、少なくとも、水、及びセメントを含む、その他にも、シリカフュームなどのその他の結合材を含有し、目的に応じて、さらに、細骨材、粗骨材などの骨材、及び、減水剤などを含有する。
本発明における結合材とは、セメント硬化体の主成分であるセメント及び一般にセメントと共に用いられるシリカフューム、スラグ、フライアッシュなどのセメント硬化体の効果に関与する微粉末(固形分)を包含するものである。なお、骨材、流動化向上のために添加される界面活性剤は本発明における結合材には包含されない。
(セメント)
本発明のセメント硬化体の製造に用いられるセメントには特に制限はなく、目的に応じて、各種セメント類の中から、適宜選択することができる。セメントとしては、普通ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメントなどの公知のセメントはいずれも好適に使用しうる。好ましくは、低熱ポルトランドセメントが良い。
また、予めシリカフュームを含有するポルトランドセメントを用いてもよい。シリカフュームを含有するポルトランドセメントは市販品としても入手可能であり、例えば、宇部三菱セメント社製、商品名:シリカフュームセメントスーパー、シリカフュームセメント、太平洋セメント社製:シリカフュームプレミックスセメント等が挙げられる。
(シリカフューム)
本発明のセメント硬化体の製造に用いられるセメント組成物はシリカフュームを含有してもよい。
好適に用いられるシリカフュームとしては、粉体状または顆粒状のどちらの形態でも用いることができる。シリカフュームとしては、一般に用いられるフェロシリコンや金属シリコン製造時に副成されるシリカフューム(平均粒径:0.1μm〜0.2μm)が好ましい。
なお、本明細書におけるシリカフュームの粒径は、BET法で比表面積を算出し、この比表面積から粒子の密度と粒子が球形であるとして計算により求めた値を用いている。
シリカフュームの含有量としては、セメント組成物における全結合材中、5質量%〜35質量%であることが好ましく、10質量%〜30質量%であることがより好ましい。シリカフュームを全結合材中、5質量%〜35質量%含有させるには、結合材であるセメントのうちの5質量%〜35質量%をシリカフュームで置き換えればよい。シリカフュームの含有量が上記範囲において、流動性向上効果及び強度向上効果が充分に発現される。
(その他の結合材)
本発明のセメント硬化体を製造するに際して、本発明の効果を損なわない限りにおいて、調製されるセメント組成物の用途に応じて、他の結合材を適宜選択して、適切な使用量で使用してもよい。
その他の結合材としては、結晶質のシリカを微粉砕したシリカ微粉末、高炉スラグ微粉末などのスラグ、石灰石微粉末、フライアッシュなどが挙げられる。
(骨材)
本発明のセメント硬化体を製造するためのセメント組成物には、骨材を含有する。骨材としては、細骨材が好ましく、細骨材と粗骨材とを含むコンクリート組成物としてもよい。粗骨材をさらに含有することでセメント硬化体の強度が一層向上する。
(細骨材)
細骨材は、良質で堅固な天然砂、砕砂、加工砂は使用される。細骨材の種類と含有量は目標とするセメント硬化体の強度に応じて適宜選定すればよいが、砕砂や加工砂を使用する場合には、角を処理したものや、粒度を調整したもの等を使用するのが効果的である。
(粗骨材)
骨材として、細骨材に加えて、さらに粗骨材を使用する場合には、良質で堅固な粗骨材を用いればよい。粗骨材の最大寸法は粒径(最大粒径)が20mm以下であることを要し、好ましくは最大寸法が15mm以下とすることが望ましい。岩種については、硬質砂岩、安山岩、流紋岩などの一般的なものから、目標とする強度に応じて適宜選定すればよい。セメント硬化体を形成するセメント組成物に粗骨材を用いることで、コンクリート組成物となり、得られる硬化体の強度が一層向上する。なお、本明細書における「セメント組成物」の文言は、骨材として粗骨材をさらに含む「コンクリート組成物」をも包含する意味で用いられる。
(その他の成分)
本発明のセメント硬化体に用いられるセメント組成物には、目的に応じて、さらに、減水剤、遅延剤など、コンクリート組成物に通常用いられる他の成分を含むことができる。
本発明のセメント硬化体は、既述のような各成分を適宜含有するセメント組成物を硬化させ、以下に示す特定の養生を行うことで得られる。
〔水硬性材料硬化体〕
本発明の水硬性材料硬化体は、前記本発明の両端フック型鋼繊維を含有する水硬性材料を硬化して得られる。
本発明の水硬性材料硬化体は、上記本発明の両端フック型鋼繊維を0.5容量%以上5.0容量%以下の範囲で含有するために、得られた硬化体は圧縮強度が60N/mm以上であり、且つ、引張強度が10N/mm以上であるという優れた強度と靱性を有する水硬性材料硬化体となる。なお、硬化体の圧縮強度はより好ましくは、120N/mm以上であり、引張強度は12N/mm以上である。
圧縮強度は、水硬性材料の組成物、例えば、水/結合材比を調整する、適切な硬化促進剤や減水剤を使用する等の方法により調整される。引張強度は、前記本発明の両端フック型鋼繊維の含有量を調整することにより調整される。具体的には、例えば、水/結合材比が0.1以上0.2以下程度のセメント組成物であれば、両端フック型鋼繊維の含有量は1.0容量%以上4.0容量%以下であることが好ましく、水/結合材比が0.2を超え0.3以下程度のセメント組成物であれば、含有量は1.5容量%以上4.0容量%以下であることが好ましい。
(水硬性材料硬化体の製造方法)
本発明のセメント硬化体を製造するには、セメント、骨材、水及び所望により併用される各種添加物を混合して均一にした後、両端フック型鋼繊維を添加してさらに混合し、その後、型枠に投入し、硬化させてセメント成形体を形成することにより行えばよい。形成されたセメント成形体は、必要に応じて養生を施され、充分な強度を有する硬化体が得られる。
混合は常法により行うことができ、まず、水硬性材料のスラリーを調整する。即ち、セメント、骨材、水、所望により添加されるシリカフュームやその他の添加剤をミキサーに投入して混合することでスラリーを調製する方法である。また、まず、骨材を混合した後、セメント及び添加剤を添加して混合し、その後、水を添加して混合してスラリーを調整してもよく、全結合材中の50質量%〜90質量%と水とを練り混ぜてスラリーを調整し、その後、残余の結合材を投入して混合してスラリーを調整してもよい。
スラリーの調整後、両端フック型鋼繊維を0.5容量%以上5.0容量%以下の範囲で、水硬性材料の目的に応じた量を投入して混合しセメント組成物を得る。
調製されたスラリーは型枠に投入して硬化させ、セメント成形体を形成する。本発明に係る水硬性材料は、上記構成としたために、水/結合材比は0.1以上0.3以下の高強度硬化体形成用として有用である。スラリー状のセメント組成物を型枠内に投入した後、常法に従い、脱泡などの工程をさらに行ってもよい。
型枠内に投入されたセメント組成物は自己発熱を伴い硬化してセメント成形体が形成される。このようにして得られた硬化したセメント成形体は、養生を行って強度を向上させる。
適用可能な養生方法には特に制限はなく、セメント、コンクリート硬化体を形成する場合に適用される一般的な養生工程を行えばよい。
養生工程としては、特に制限はなく、いずれの養生を行ってもよい、例えば、温度を20±3℃に維持した水中、湿砂中、或いは、飽和蒸気中で行う標準養生、水中で行う水中養生、高温、例えば、セメント成形体を70℃〜100℃の温度範囲で2時間〜72時間蒸気養生する方法、また、100℃〜400℃の加熱温度にて、2時間〜72時間高温養生する方法、高圧下の蒸気養生であるオートクレーブ養生などが挙げられる。
養生工程は、セメント成形体が硬化した後であれば、いずれのタイミングで行ってもよく硬化後直ちに行ってもよく、経時後、例えば、自己発熱した成形体が常温に降温した後行ってもよく、多数の成形体を作製した後、複数の成形体をまとめて養生してもよい。
蒸気養生は、常法により行われ、例えば、ボイラーで製造した水蒸気を、養生する槽に導入パイプで導入できるようにしておき、槽内に温度センサーを設置して、槽内の温度が設定した温度履歴となるように水蒸気の供給弁を開閉することで行う蒸気養生が最も一般的であるが、他の蒸気養生の方法として、成型体が極度に乾燥しない手段をとった上で、例えば、通電により発熱する面状発熱体などを成型体の表面に取り付けることで加熱する方法などが挙げられ、このような方法で蒸気養生を行ってもよい。
本発明の補強用両端フック型鋼繊維を含有する水硬性材料硬化体は、所望により行われる上記養生工程を経て、より安定した実用上充分な強度と靱性を発現し、各種構造材に好適に使用される。
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に制限されるものではない。
以下の実施例では、水硬性材料としてセメント組成物を用いた例を挙げる。
(実施例1、比較例1)
〔セメント組成物の配合〕
(使用材料)
セメント:シリカフュームセメントスーパー(商品名:宇部三菱社製、密度3.01g/cm、ベースセメントである低熱ポルトランドセメントの17.5質量%をシリカフュームで置換されたセメント)
水:水道水
細骨材:三河珪砂(粒度D50 212μm、密度2.6g/cm
混和剤:SSP−104:(商品名:竹本油脂社製、固形分30%)
両端フック型鋼繊維等の鋼繊維については、後述する。
下記表1に、本発明の水硬性材料硬化体の製造に適用されるセメント組成物の配合を示す。
*下記表1において、混和剤に含有される水分は水の一部とし、固形分は単位体積の外割りとした。
**鋼繊維の添加量(容量%)は、水硬性材料のマトリクス部分の容量の外割りとした。
[水硬性材料補強用両端フック型鋼繊維Aの製造]
下記表2に示す形状の鋼繊維を、精密バネ加工用のコイリングマシンを調整して成型した。
〔比較補強用鋼繊維〕
神鋼建材工業社、シンコーファイバー・ドラミックス(商品名:RC−80/30−BP)
〔補強用鋼繊維の形状測定〕
鋼繊維の繊維径(φ)は、それぞれ任意に抜き取った鋼繊維の両端の合計20箇所の形状をマイクロスコープ(キーエンス社製:デジタルHFマイクロスコープVH−8000)で測定した値である。また、全長、第1フック部長さ、曲率半径、曲げ角度、曲げ高さなどの鋼繊維の形状はマイクロスコープの形状測定機能を用い、得られた画像の上に繊維の中心線を描きこれを元に測定した値を用いている。具体的には、鋼繊維の直線部については、直線部の始点と終点近傍で繊維の直径方向の中心点を求め、両点を結び中心線を引き、曲がり部については、直径方向に3点以上の中心点を求め、これを通る円を求めその円の半径を曲率半径とした。なお、lは先端から1つ目の曲がり部の中央までの距離とした。lは、先端から2つ目の曲がり部の中央の点と、反対側の端部の対称の点までの距離とした。表2には、それぞれ10本の測定結果の平均値を示した。
〔補強用鋼繊維を形成する素線の引張強度測定〕
また、両端フック型鋼繊維を形成する素線の引張強度は以下の方法で測定した。
土木学会「コンクリート用鋼繊維品質規格(案)(JSCE−E101−2007)の付属書(規定)「鋼繊維の引張強度試験方法」に準じ、インストロン社製万能試験機モデル55R1125を用い、変位速度をクロスヘッド速度で0.2mm/minで引っ張って試験した。繊維を固定には平板用チャックを用い、繊維の全長30mmのうち、両端それぞれ12.5mmをチャックで掴み、鋼繊維の直線部分lの中央部分5mmに相当する箇所の強度を測定した。つかみ部分にすべりを生じたり、つかみ部分で早期に破断したりしたデータは除外し、新たに1回の試験を追加して、5本の試験結果の平均値を強度とした。なお、本発明に基づき製作した両端フック型鋼繊維を加工する前の素線5本について、チャック部分での破断が生じにくい空気キャプスタン式糸つかみ具を用いて引張試験を行ったところ、平均値は3120MPaとなり、加工した両端フック型鋼繊維と同等であることが確認され、本方法で鋼繊維の母材強度を測定できていることを確かめた。
(1.水硬性材料の調製)
前記表1に記載のセメント組成物について、水、セメント、および骨材を表1に記載の量比で練り上がり量が5Lとなる量を計量し、オムニミキサ(チヨダマシナリー社製 OM−10E 容量10L)を用いて以下の条件で練り混ぜた。
(1)オムニミキサにて、セメント、細骨材を全量投入して空練30秒行い、水を投入し、3分低速(速度:150rpm)で攪拌した後、かき落してさらに5分中速(速度:300rpm)で攪拌した。
練り上がったスラリーの入ったオムニミキサの中に、本発明の両端フック型鋼繊維を投入し、ふたたびオムニミキサにて2分練混ぜ(速度:300rpm)て、スラリーを調製し、実施例1の水硬性材料を調整した。
比較鋼繊維は、繊維が糊状のもので束ねてあったので、オムニミキサに投入する前にあらかじめアルカリ水で洗浄して1本ごとに解き、上水道水で洗浄し乾燥させて用いた。
両端フック型鋼繊維に代えて比較鋼繊維を用いた以外は同じ方法と手順で比較例1の水硬性材料を調整した。
(2.水硬性材料硬化体の成形)
前記実施例1及び比較例1の水硬性材料(鋼繊維混入セメント組成物)を、引張試験用のダンベル型の試験体に投入した。圧縮強度用には直径5cm高さ10cmの鋼製モールドに投入した。
引張試験用には、試験体の上下に固定保持部があり、試験体の中央に厚さ3cm幅3cm長さ8cmの引張試験部を有している硬化体を作製した。固定保持部は、厚さ3cmで、幅6cm長さ8.5cmの部分と中央の引張試験部にかけて15/40の勾配でテーパー状になっており、急激な断面変化が無いようにしてあるものを使用した。
これを5〜7日放置して自然硬化させ、型枠から取り出し、昇温速度15℃/時間で昇温し、最高温度90℃を24時間保持し、15℃/時間で降温して成形体を得た。その後、試験材齢まで20℃60RH%の室内にて保管した。
(3.水硬性材料硬化体の圧縮強度試験)
材齢14日に、得られた水硬性材料硬化体(セメント硬化体)の圧縮強度をJIS A 1108(2006年)に準じて測定した。
実施例1の水硬性材料硬化体の圧縮強度は、245N/mmであり、比較例1の水硬性材料硬化体の圧縮強度は、242N/mmであり、同等の圧縮強度であることが確認された。
(4.水硬性材料硬化体の引張強度試験)
材齢14日に、ダンベル型試験体を治具で固定し、高精度万能試験装置(オートグラフAG−250kN:島津製作所製)で引張荷重を測定した。引張荷重を断面積(30mm×30mm)で除して引張応力度を求め、その最大値を引張強度とした。変位計は、試験体の中央部の引張試験部80mmの位置の変位を測ることができるように治具を介して取り付け、試験時の変位を標点間距離80mmで除して引張ひずみを求めた。
図3は、引張試験による水硬性材料硬化体の引張応力と引張ひずみの関係を示すグラフである。実施例1の鋼繊維Aを用いた硬化体の結果を実線で、市販品である比較鋼繊維を用いた硬化体の結果を破線で、それぞれ示した。
実施例1の両端フック型鋼繊維Aを用いた本発明の水硬性材料硬化体は、約8N/mm程度で最初のひび割れが生じるが、その後の変形とともに硬化してゆく。引張ひずみが1%程度で引張強度14N/mm程度となった。2%ひずみ時でも12N/mm程度の引張応力を負担できている。
他方、比較鋼繊維を用いた比較例1の水硬性材料硬化体は、約6N/mmでひび割れが生じ、その後、引張ひずみの進行とともに若干の硬化は認められるが1%程度のひずみ時で引張強度が10N/mm程度となった。2%ひずみ時には9N/mm程度の引張応力度となっている。
上記結果より、本発明の両端フック型鋼繊維を用いた水硬性材料硬化体は、圧縮強度は従来品である比較鋼繊維を用いた硬化体と同等であるが、同じひずみ時点の引張応力度は比較例1の硬化体よりも3割程度大きくなっている。このことから本発明による鋼繊維を用いた硬化体は、セメント系材料として極めて優れた引張性能及び靱性を有していることが明らかとなった。
(実施例2〜5、比較例2〜9)
〔セメント組成物の配合〕
セメント組成物の配合に使用した材料は、前記鋼繊維A及び比較鋼繊維を添加しなかった以外は実施例1及び比較例1と同じである。セメント組成物の組成物を下記表3に示す。
*下記表3において、混和剤に含有される水分は水の一部とし、固形分は単位体積の外割りとした。
[水硬性材料補強用両端フック型鋼繊維の製造]
鋼繊維の製作には、精密バネ加工などに用いられるコイリングマシンを用いた。本発明の両端フック型鋼繊維B、C、D及びE(実施例2〜5)と、本発明の範囲外の両端フック型鋼繊維(比較例鋼繊維2、3、5、6、7及び8)を製作した。
また、試験硬化体として、フック加工をしていない直線状の繊維(比較鋼繊維4)と、市販されている既存の両端フック型鋼繊維(比較例1で用いた市販の比較鋼繊維)と、を用いた試験硬化体を、それぞれ比較例4及び比較例5として評価した。
コイリングマシンで製作した鋼繊維および市販の鋼繊維の形状は、それぞれの鋼繊維の中から無作為に10本を抜きとって、その両端の合計20箇所の形状をマイクロスコープ(キーエンス社製:デジタルHFマイクロスコープVH−8000)で測定した。形状の測定方法は実施例1、比較例1と同様である。
得られた補強用鋼繊維の形状を下記表4に示す。
(引き抜き試験)
得られた前記各補強用鋼繊維を用いて、水硬性材料硬化体からの補強用鋼繊維の引き抜き抵抗性を測定し、補強用鋼繊維含有硬化体の靱性の目安とした。
水硬性材料は、表3に記載されるように水/結合材比は0.12(即ち、水と結合材の総量に対する水の含有率が12質量%)である。ここでは、補強用鋼繊維を水硬性材料には混ぜ込まず、ひび割れを想定した面に垂直に鋼繊維が2本架橋するような状態の試験体を製作し、両端フック型鋼繊維の形状と引き抜かれる際に負担する応力を評価した。試験体及び該試験体を形成する型枠の形状を図4に示す。
試験体を形成する一対の型枠20A、20Bとして、厚さ25mmのもので、図4に示す形状の水硬性材料硬化体18、即ち、両端に扇型状のひっかけ部があり、両端の間の中央部に幅25mmで長さ80mmの直線部があるものを用いた。型枠20A、20Bには型枠20A、20Bを2等分するように25mm×25mmのバルサ材24を取りつけた。バルサ材24には、バルサ材24を垂直に貫通させた状態で鋼繊維10が2本取りつけてあり、その位置は、鋼繊維10が型枠の底部から12.5mmの高さで、型枠の側面からそれぞれ7.5mmのへり空きとなる位置で、バルサ材24に対して両側に同じ長さになるように調整してある。
補強用鋼繊維を投入する工程を有しないこと以外、実施例1及び比較例1の水硬性材料調製方法と同じ方法と手順で水硬性材料を混練し、練り上がった水硬性材料を前記の鋼繊維10を2本配置した型枠20A、20Bの中に充填し、型枠20A、20Bをボルト22で固定した。同時に、圧縮強度測定用に、水硬性材料を直径5cm高さ10cmの鋼製モールドに投入した。
型枠又はモールド内の水硬性材料を5〜7日放置して自然硬化させ、昇温速度15℃/時間で昇温し、最高温度90℃を24時間保持する加熱養生を行い、15℃/時間で降温して水硬性材料硬化体を得た。その後、型枠から取り出し、試験材齢まで20℃60RH%の室内にて保管した。
材齢14日に、得られた水硬性材料硬化体(セメント硬化体)の圧縮強度をJIS A 1108(2006年)に準じて測定した。水硬性材料硬化体はいずれの鋼繊維を埋め込んだ試験体でも共通であり、水硬性材料の圧縮強度は、251N/mmであった。
材齢14日に、高精度万能試験装置(インストロン社製モデル55R1125)のチャックに、前記引き抜き抵抗性評価用の補強用鋼繊維を埋め込んだ試験体(硬化体)の扇型状部分を固定することができる引張試験用治具を取りつけ、0.5mm/分の早さで試験体を引っ張り、鋼繊維が引き抜けるときに要する荷重を測定した。また、仕切り板のバルサ材24の一部を欠きとり、クリップゲージ(東京測器製)を取りつけて、鋼繊維の引き抜け量を測定した。荷重の最大値を鋼繊維の断面積で除して補強用鋼繊維に作用する応力度を求め、さらにこの応力度を、補強用鋼繊維の母材(水硬性材料硬化体)の引張強度で除して、補強用鋼繊維のポテンシャル強度に対して、どの程度の応力を負担できているかを計算で求めた。また、引き抜き時の荷重と引き抜け量の関係から、引き抜き時に繊維が破断してしまったか否かを評価した。
このとき、応力度/強度が0.85以上であり、且つ、補強用鋼繊維の破断がなかったものを実用上充分な性能を有するものとして○と評価し、応力度/強度が0.85未満であるもの、或いは、鋼繊維が破断したものを×と評価した。
結果を下記表5に示す。
実施例2〜5の両端フック型鋼繊維B、C、D或いはEを用いた場合は、引き抜き荷重を繊維の面積で除した引き抜き応力(表5中、「応力度」と記載)が2626N/mmから3250N/mmで、鋼繊維には繊維の素線の引張強度の85%以上の応力が生じており、効果的に引張に対して抵抗できていることがわかる。また、破断することなく引き抜けており、靭性の向上に有効であることが示唆される。
一方、比較例2〜5では、引き抜き荷重を繊維の面積で除した引き抜き応力が1435N/mmから2578N/mmで、素線の引張強度の85%未満の応力しか得られておらず、鋼繊維の性能を活用できていない。これにより、直線状の比較補強用鋼繊維4は引き抜き応力が低いこと、両端フック型の形状を有していても、本発明の範囲外の形状の鋼繊維も実施例に比べ引き抜き応力が低いことがわかる。
また、比較例6〜9では、引き抜き応力は高いが、引き抜け過程のごく初期に鋼繊維が破断していまい、一気に負担できる応力が低下してしまうため靭性の向上は望めない。
上記結果より、本発明の両端フック型鋼繊維を用いた水硬性材料を用いた場合についてのみ、水硬性材料に明らかに高い引張抵抗と高い靭性を付与できることが確認された。本発明の補強用両端フック型鋼繊維を、例えば、実施例1で用いた水硬性材料における如き補強用鋼繊維の含有量と同量使用することで、飛躍的に高い引張性能を示すことは明らかであり、このことから本発明の補強用鋼繊維を用いた本発明の水硬性材料硬化体は、セメント系材料として極めて優れた引張性能を有することになる。
10 水硬性材料補強用両端フック型鋼繊維(両端フック型鋼繊維)
12 直線部
14A、14B 第1フック部
16A、16B 第2フック部
18 水硬性材料硬化体

Claims (6)

  1. 直線部と、前記直線部の両端部から、該直線部と角度を持つように折り曲げられた第1フック部と、前記第1フック部の端部を互いに離れる方向へ折曲げて前記直線部と平行とした第2フック部と、を有する両端フック型鋼繊維であって、
    前記鋼繊維の直径(φ)が0.10mm以上0.50mm以下であり、
    前記第2フック部の長さ(l)が1mm以上であり、且つ、鋼繊維の直径(φ)と第2フック部の長さ(l)の比(l/φ)が5以上25以下であり、
    前記直線部と前記第2フック部との距離である第1フック部の曲げ高さ(h)が0.3mm以上であり、且つ、鋼繊維の直径(φ)と第1フック部の曲げ高さ(h)との比(h/φ)が2以上10以下であり、
    前記第1フック部と前記第2フック部の折曲部の内側面が形成するR部の曲率半径をr1とし、前記直線部と前記第1フック部の折曲部の内側面が形成するR部の曲率半径をr2とし、鋼繊維の直径をφをとしたとき、r1/φが3以上10以下であり、かつr2/r1が1.5以上10以下である水硬性材料補強用両端フック型鋼繊維。
  2. 前記両端フック型鋼繊維の全長(l)が6mm以上50mm以下である請求項1記載の水硬性材料補強用両端フック型鋼繊維。
  3. 前記両端フック型鋼繊維の直線部の長さ(l)と、前記第2フック部の長さ(l)との関係が、以下の式を満たす請求項1又は請求項2に記載の水硬性材料補強用両端フック型鋼繊維。
    (式) 6×l<l
  4. 前記両端フック型鋼繊維を構成する鋼繊維の引張強度が2000MPa以上5000MPa以下である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の水硬性材料補強用両端フック型鋼繊維。
  5. セメント、骨材、水、及び、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の両端フック型鋼繊維を0.5容量%以上5.0容量%以下含有する、水結合材比が質量基準で0.1以上0.3以下である水硬性材料。
  6. 請求項5に記載の水硬性材料を硬化して得られた、圧縮強度が60N/mm以上であり、且つ、引張強度が10N/mm以上である水硬性材料硬化体。
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