以下、冠動脈用のガイディングカテーテルに本発明を適用した場合の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は一実施形態における自然状態のガイディングカテーテル10の平面図、図3(b)はガイディングカテーテル10の断面図である。
図1および図3(b)に示すように、冠動脈用のガイディングカテーテル10(以下、カテーテル10という)は、全体として断面円環状の管状をなしている。詳細には、カテーテル10は、基端に設けられたコネクタ11と、コネクタ11からカテーテル10の先端まで延びるシャフト12とを備える。シャフト12の外径は1〜3mmとすることができ、好ましくは、1.3〜2.5mmとすることができる。シャフト12の内径は、0.5mm〜2.8mmとすることができ、好ましくは、1.0〜2.1mmとすることができる。シャフト12の肉厚は、0.05〜0.5mmとすることができ、好ましくは、0.1〜0.2mmとすることができる。例えば、本実施形態では、シャフト12は、1.8mmの内径および2.1mmの外径を有する。
シャフト12は、略直線状の基端側シャフト13と、所定の形状が付与された先端側シャフト14とを備える。基端側シャフト13は、先端側シャフト14に連なり、先端側シャフト14よりも高い剛性を有する。先端側シャフト14は、先端側に位置する第1部分14aと基端側に位置する第2部分14bとから構成されている。
カテーテル10の基端には基端側開口16が形成され、カテーテル10の先端には先端側開口17が形成されている。基端側開口16と先端側開口17との間には図3(b)に示す断面円形状のルーメン18が延在している。ルーメン18は、ガイドワイヤやバルーンカテーテル、造影剤などが通る通路として機能する。
図2を参照してカテーテル10の先端側シャフト14の形状について説明する。図2はカテーテル10の先端側部分を拡大して示す平面図である。なお、自然状態とは、カテーテル10が体外にあり、他から力を受けていない状態のことである。本実施形態のカテーテル10は、アンプラッツ・レフト(Amplatz Left)と呼ばれる形状を有している。
図2に示すように、カテーテル10の自然状態において、先端側シャフト14は、略直線状の最先端部21と、最先端部21から延在する第1湾曲部22と、第1湾曲部22から延在する第2湾曲部23と、第2湾曲部23から延在し、基端側シャフト13に連なる略直線部24とを備える。先端側シャフト14の外表面は、最先端部21が冠動脈入口部に係合したときに上行大動脈壁に当接する当接領域25を有している。具体的には、当接領域25は、第2湾曲部23と略直線部24とにわたって形成されている。
略直線部24は、基端側シャフト13と同一直線状に延びている。また、最先端部21は、基端側シャフト13に対して傾斜している。第1湾曲部22と第2湾曲部23とは反対方向に湾曲している。第1湾曲部22が形成する弧がなす角の角度は、第2湾曲部23が形成する弧がなす角の角度よりも小さい。第1湾曲部22が形成する弧がなす角は90°以下である。第2湾曲部23が形成する弧がなす角は90°以下である。第1湾曲部22および第2湾曲部23の曲率半径は5〜20mmとすることができる。第2湾曲部23の曲率半径は、第1湾曲部22の曲率半径より大きくてもよい。
第1湾曲部22と第2湾曲部23との境界部分が延びる方向と最先端部21との間の角度は、120°〜170°とすることができる。最先端部21と基端側シャフト13(および略直線部24)との間の角度は30°〜90°とすることができる。
次に、シャフト12の構成材料などを説明する。図3(a)カテーテル10の一部拡大図であり、図3(c)はカテーテル10の一部拡大断面図である。図3(a)に示すように、シャフト12は、複数の線材31aからなる補強層31を備えている。詳細には、図3(b)に示すように、シャフト12は、その先端から基端にかけて略円形の断面形状を有し、複数の層から形成され、内側層32と、外側層33と、内側層32と外側層33との間に設けられた補強層31とを有する。補強層31は、シャフト12の剛性を高めるためのものであり、例えば、複数の線材31aを編み込むことに形成された編組とすることができる。このような編組の線材31aとしては、ステンレス鋼などの金属から形成された平角線または丸線を用いることができる。
内側層32および外側層33は合成樹脂から形成することができる。内側層32は、低摩擦材料から形成されており、これによりルーメン18内においてガイドワイヤやバルーンカテーテルなどを摺動させる際の抵抗を低減させている。内側層32の形成材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素含有樹脂を用いることができる。
内側層32および補強層31の各々は、シャフト12の各部において、すなわち、基端側シャフト13と第1部分14aと第2部分14bとにおいて同じ材料で形成されている。一方、外側層33は、基端側シャフト13と第1部分14aと第2部分14bとでは、異なる材料から形成されている。すなわち、外側層33は、第1部分14aに設けられた第1外側層33aと、第2部分14bに設けられた第2外側層33bと、基端側シャフト13に設けられた第3外側層33cとを有する。第1外側層33aは、第2外側層33bよりも柔軟な材料から形成され、第2外側層33bは第3外側層33cよりも柔軟な材料から形成されている。従って、第2部分14bは第1部分14aよりも高い剛性を有し、基端側シャフト13は第2部分14bよりも高い剛性を有する。すなわち、基端側シャフト13は先端側シャフト14よりも高い剛性を有する。最先端部21および第1湾曲部22は、第2湾曲部23、略直線部24、および基端側シャフト13よりも高い柔軟性を有する。なお、冠動脈入口部に最先端部21が導入された際に最先端部21の軸が冠動脈入口部の軸と略平行となるように、第1湾曲部22の剛性を設定することもできる。第2湾曲部23は、基端側シャフト13よりも高い柔軟性を有する。なお、剛性とは、具体的には「曲げこわさ(曲げモーメント)」のことをいい、ヤング率(縦弾性係数)と断面二次モーメントとの積に比例する値のことをいう。
図2に示すように、最先端部21は、最先端部21の他の部分と比較して柔軟な保護チップ21aをその先端に備える。第1部分14aのうちの先端側のわずかな所定領域は、内側層32と補強層31とを備えておらず、第1外側層33aを構成する材料のみから形成され、それが保護チップ21aとなっている。そのため保護チップ21aは、最先端部21の他の部分と比較して柔軟になっており、非常に柔軟性が高いためカテーテル10の先端が血管に接触した際にも血管を損傷させる可能性が低減されている。
上記のように、シャフト12においては、基端から先端に向かうほどに柔軟性が高くなっている。先端側シャフト14の外側層33、すなわち第1外側層33aおよび第2外側層33bは、基端側シャフト13の外側層33、すなわち第3外側層33cのショア硬度よりも低いショア高度を有している。例えば、先端側シャフト14の外側層33、すなわち第1外側層33aおよび第2外側層33bはショア硬度が72D以下であってもよく、基端側シャフト13の外側層33、すなわち第3外側層33cはショア硬度が72Dより大きくてもよい。具体的には、、第1外側層33aはショア硬度が25D以上かつ50D以下であり、好ましくは30D以上かつ40D以下であってもよい。第2外側層33bは、ショア硬度が50Dより大きくかつ72D以下であり、好ましくは、60D以上かつ70D以下であってもよい。第3外側層33cは、72Dより大きくかつ80D以下であり、好ましくは73D以上かつ76D以下であってもよい。
このような硬度バランスを達成するために外側層33を構成する第1外側層33a、第2外側層33b、第3外側層33cのそれぞれを異なる種類の樹脂から形成してもよく、あるいは、複数の樹脂の混合物を用いて混合の割合を変えることにより硬度変更を達成してもよい。外側層33の形成材料としては、例えば、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリブチレンテレフタレート、またはこれらの混合物を用いることができる。
カテーテル10において、シャフト12の外表面は、当接領域25よりも基端側において、当接領域25よりも低い摩擦係数を有する低摩擦領域35を有する。この低摩擦領域35は、基端側シャフト13の所定領域に形成されている。この場合、摩擦係数とはカテーテル10を体内に挿入したときの摩擦力に関係する摩擦係数、すなわち血管壁に対する摩擦係数を意味する。
本実施形態では、低摩擦領域35が潤滑性コーティングを有することにより低摩擦領域35の摩擦が小さくなっている。一方、低摩擦領域35以外の部分には、潤滑性コーティングが設けられていない。具体的には、低摩擦領域35は、カテーテル10が右手首の橈骨動脈から挿入された場合に当接領域25が上行大動脈に配置されたときにおいて、鎖骨下動脈に位置するように設けられている。低摩擦領域35は、先端側シャフト14の先端、すなわちシャフト12の先端から20cmから30cmまでの領域を含む。低摩擦領域35の先端は、シャフト12の先端から15cm以上の距離に位置する。低摩擦領域35の基端は、シャフト12の先端から60cm以下の距離に位置する。すなわち、低摩擦領域35の先端は、シャフト12の先端から15cm〜20cmの箇所に位置する。低摩擦領域35の基端は、シャフト12の先端から30cm〜60cmの箇所に位置する。本実施形態では、低摩擦領域35の先端から基端の間に位置するシャフト12の外表面の全周において低摩擦領域35が形成されており、シャフト12は、その領域の外表面の全周において、血管壁に対して当接領域25よりも低い摩擦係数を有している。
この潤滑性コーティングとしては、好ましくは親水性コーティングを用いることができる。潤滑性コーティングの材料としては、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)等のポリ−N−ビニルラクタム、ビニルエチルエーテル無水マレイン酸共重合体系ポリマー、アクリルアミドやその誘導体を主な構成成分とするポリアクリルアミド系ポリマー、ポリエチレンオキシド(PEO)、ヒアルロン酸などのうちの1つまたは複数を組み合わせて用いることができる。あるいは、潤滑性コーティングとして、シリコーン等の疎水性コーティグを用いることもできる。
また、当接領域25の摩擦係数をより高くしてもよい。このことは、例えば、先端側シャフト14の外表面の当接領域25の少なくとも一部を含む所定領域を凹凸面にすることにより達成することができる。例えば、図3(a),(c)に示すように、先端側シャフト14の外表面が凸部34を有していてもよい。一方、基端側シャフト13は滑らかな外表面を有している。図3(a)に示すように、先端側シャフト14の外表面において、凸部34は線材31aと対応する位置に形成されている。
このような凸部34は、カテーテル10の製造工程において、外側層33を先端側シャフト14に設ける際に加工条件などを適宜設定することにより形成することができる。例えば、外側層33を先端側シャフト14に設ける際に、外側層33を形成する樹脂にかけられる圧力や温度などを調節することにより、線材31aにより形成される凹凸が外側層33の外表面に表れるようにして凸部34を形成してもよい。
或いは、先端側シャフト14に対して所定の形状を付与するために曲げ加工を行う際に、第2湾曲部23のカーブの外側の外表面に凸部34を形成することにより、当接領域25の少なくとも一部に凸部34を形成してもよい。先端側シャフト14に曲げ加工を行う際、第1および第2湾曲部22,23のカーブの外側に位置する外側層33は曲げられながら伸ばされることとなる。この際、温度や時間などを調節することにより、第2湾曲部23のカーブの外側に位置する外側層33の外表面に線材31aの凹凸が表れるようにして凸部34を形成してもよい。この場合、第2湾曲部23のカーブの外側に位置する外側層33にのみ凹凸面、すなわち凸部34が形成されることとなる。或いは、薄い外側層33を設けることにより凸部34を形成してもよい。
なお、凹凸面、すなわち凸部34は、当接領域25の少なくとも一部に形成されていればよい。凸部34(凹凸面)は、当接領域25に形成されていてもよく、第2部分14bに形成されていてもよく、先端側シャフト14に形成されていてもよい。
次に、カテーテル10の作用効果について図4、図5(a)を参照して説明する。ここでは、経橈骨動脈的冠動脈形成術を行うためにカテーテル10を右橈骨動脈から挿入した場合について説明する。図4は、カテーテル10の留置状態を示す概略図である。図5(a)は、カテーテル10を左冠動脈入口部に係合させた留置状態を示す概略図である。
経橈骨動脈的冠動脈形成術では、外皮に近い部分に位置している橈骨動脈41、本実施形態では右手首側の橈骨動脈41からカテーテル10を挿入し、カテーテル10の最先端部21を左冠動脈入口部42に係合させる。橈骨動脈41は、上腕動脈43が二本に分岐したうちの一本の動脈であって、右手44に位置する掌弓動脈45を介してもう一方の尺骨動脈46とつながっている。橈骨動脈41が表面側に位置していることで、術後の止血が容易である。
経橈骨動脈的冠動脈形成術においては、患者47の右手首48の橈骨動脈41が穿刺され、該穿刺箇所からシース(図示せず)が動脈内に挿入される。カテーテル10は、まずこのシースに挿入され、次いで橈骨動脈41内に挿入され、次いでこの橈骨動脈41を介して上腕動脈43、右鎖骨下動脈49、腕頭動脈50を経て上行大動脈51に挿入される。
次いでカテーテル10の最先端部21を左冠動脈入口部42に係合させるための操作を行う。最先端部21を左冠動脈入口部42に係合させるために、術者はカテーテル10を押し引き、回転させるなどする。このとき、カテーテル10の当接領域25は上行大動脈51内に配置されており、低摩擦領域35は右鎖骨下動脈49に位置している。右鎖骨下動脈49は大きく湾曲している動脈であり、カテーテル10に作用する摩擦力が大きくなる箇所である。しかしながら、低摩擦領域35が右鎖骨下動脈49に位置しているため、カテーテル10に作用する摩擦力を比較的小さくすることができ、術者はカテーテル10を容易に操作することができ、迅速に最先端部21を左冠動脈入口部42に係合させることができる。
なお、カテーテル10を挿入するのを補助するために、周知のガイディングカテーテル用ガイドワイヤ(図示せず)を使用してもよい。
図5(a)に示すように、最先端部21が左冠動脈入口部42に係合した留置状態において、上行大動脈51の上行大動脈壁51aに当接領域25が弾発的に当接している。このため、カテーテル10は優れた安定性およびバックアップ性を発揮することができる。
以下、この安定性およびバックアップ性について説明する。冠動脈病変部の治療の際には、最先端部21を左冠動脈入口部42に係合させた後、術者は、図示しないバルーンカテーテル等をカテーテル10の中を通して左冠動脈に入れ、さらに冠動脈の末梢側に挿入していく。その際、バルーンカテーテル等は高度狭窄した血管を通っていく場合がある。この場合、バルーンカテーテル等を押し進めるために、そのバルーンカテーテル等が強い力で押し込まれる。このとき、バルーンカテーテル等には、左冠動脈末梢側方向に向かう力が作用し、その反作用としてカテーテル10には、左冠動脈入口部42から対向する上行大動脈壁51aの方向に向かった力が働く。すなわち、カテーテル10は、その反作用を受けながらその反作用に抗してバルーンカテーテル等が左冠動脈の末梢側に進むのを支えることとなる。このようにカテーテル10が、バルーンカテーテル等がカテーテル10から血管の奥へと進めるように、バルーンカテーテル等を支える性能をバックアップ性という。
ここで、上記のバルーンカテーテル等を挿入する際の反作用は、左冠動脈入口部42から対向する上行大動脈壁51aに向かう力である。上記の反作用が強い場合には、カテーテル10の留置状態を維持できなくなり、最先端部21が左冠動脈入口部42から外れてカテーテル10のバックアップ性がなくなり、それ以上バルーンカテーテル等を冠動脈の末梢側に挿入することができなくなってしまう。すなわち、カテーテル10がバックアップ性を発揮するためには、上記の反作用を受け止めてバルーンカテーテル等を支えるような留置状態を維持することが必要となってくる。換言すれば、上記の反作用を受け止めるような留置状態を維持してバックアップ性を発揮するためには、カテーテル10の安定性が必要となってくる。すなわち、ここでいうカテーテル10の安定性とは、留置状態にあるカテーテル10の形状または位置などが安定している性質のことを意味している。
ここで、カテーテル10では、当接領域25が左冠動脈入口部42とは反対側の上行大動脈壁51aに当接しているため、その上行大動脈壁51aによりカテーテル10が支えられ、カテーテル10の留置状態が維持され、バルーンカテーテル等をさらに末梢に挿入することができる。
また、当接領域25は、潤滑性コーティングを有しておらず低摩擦領域35よりも摩擦係数が高いため、カテーテル10の安定性が維持されており、当接領域25が上行大動脈壁51aに対して意図せずに動いてしまう虞が低減されている。或いは、当接領域25が凸部34を有する場合には、当接領域25の摩擦係数が高くなり、カテーテル10の安定性が高められており、当接領域25が上行大動脈壁51aに対して意図せずに動いてしまう虞をさらに低減させることができる。当接領域25が上行大動脈壁51aに対して意図せずに動いてしまうと、カテーテル10は適切な留置状態を維持することができず、バックアップ性が低下してしまう。しかし、カテーテル10では、上記のようにして安定性を維持して、バックアップ性が低下する虞を低減させている。
次に、カテーテル10を左橈骨動脈から挿入した場合について説明する。図5(b)は、カテーテル10を右冠動脈入口部52に係合させた留置状態を示す概略図である。右橈骨動脈から挿入する場合と同様に、カテーテル10は、左手首側の橈骨動脈から、上腕動脈、左鎖骨下動脈59、を経て上行大動脈51に挿入される。
次いでカテーテル10の最先端部21を右冠動脈入口部52に係合させるための操作を行う。最先端部21を右冠動脈入口部52に係合させるために、術者はカテーテル10を押し引き、回転させるなどする。このとき、カテーテル10の当接領域25は上行大動脈51内に配置されており、低摩擦領域35は左鎖骨下動脈59に位置している。左鎖骨下動脈59は大きく湾曲している動脈であり、カテーテル10に作用する摩擦力が大きくなる箇所である。しかしながら、低摩擦領域35が左鎖骨下動脈59に位置しているため、カテーテル10に作用する摩擦力を比較的小さくすることができ、術者はカテーテル10を容易に操作することができ、迅速に最先端部21を右冠動脈入口部52に係合させることができる。
図5(b)に示すように、最先端部21が右冠動脈入口部52に係合した留置状態において、上行大動脈51の上行大動脈壁51aに当接領域25が弾発的に当接している。このため、カテーテル10の安定性が高く、カテーテル10は優れたバックアップ性を発揮することができる。
また、上述のように、当接領域25は低摩擦領域35よりも摩擦係数が高いため、カテーテル10の安定性が維持され、当接領域25が上行大動脈壁51aに対して意図せずに動いてしまう虞が低減されている。結果として、カテーテル10のバックアップ性が低下する虞を低減させている。
以上詳述した本実施の形態によれば、以下の優れた効果を奏する。
最先端部21を有するシャフト12を備えるカテーテル10において、シャフト12の外表面は、最先端部21が冠動脈入口部42,52に係合したとき、上行大動脈壁51aに当接する当接領域25と、当接領域25よりも低い摩擦係数を有する低摩擦領域35と、を有し、低摩擦領域35は、カテーテル10が右手首の橈骨動脈41から挿入され、当接領域25が上行大動脈51に配置されたとき、右鎖骨下動脈49に位置する。この場合、当接領域25よりも低い摩擦係数を有する低摩擦領域35は、カテーテル10が右手首の橈骨動脈41から挿入され、当接領域25が上行大動脈51に配置されたとき、右鎖骨下動脈49に位置する。右鎖骨下動脈49は大きく湾曲している動脈であり、カテーテル10に作用する摩擦力が大きくなりやすい箇所である。ここで、カテーテル10の最先端部21を冠動脈入口部42に係合させるための操作を行う際には当接領域25が上行大動脈51に配置されており、このとき低摩擦領域35が右鎖骨下動脈49に位置している。この低摩擦領域35は、血管壁に対する摩擦係数が当接領域25よりも低く、カテーテル10の操作性が優れたものとなる。その結果、最先端部21を冠動脈入口部42に係合させるための操作を良好に行うことができる。また、上行大動脈壁51aに当接する当接領域25は低摩擦領域35よりも摩擦係数が高いため、当接領域25が上行大動脈壁51aに対して意図せずに動いてしまう虞を低減させることができ、カテーテル10の安定性が低下する虞を低減させることができる。また、低摩擦領域35は、カテーテル10が左手首の橈骨動脈から挿入され、当接領域25が上行大動脈51に配置されたとき、左鎖骨下動脈59に位置する。このため、カテーテル10が左手首の橈骨動脈から挿入された場合にでも上記と同様の効果が得られる。なお、摩擦係数としては、静摩擦係数と動摩擦係数とがあるが、カテーテル10の各部の間の摩擦係数の高低は、血管壁に対するいずれか一方の摩擦係数で比較すればよい。概して、静摩擦係数が高い物質は動摩擦係数も高く、静摩擦係数が低い物質は動摩擦係数も低くなっている。
シャフト12は、当接領域25を有し、所定の形状が付与された先端側シャフト14と、先端側シャフト14に連なり、先端側シャフト14よりも高い剛性を有する基端側シャフト13と、を備え、基端側シャフト13が低摩擦領域35を有する。この場合、先端側シャフト14よりも高い剛性を有する基端側シャフト13が低摩擦領域35を有している。シャフトの剛性が高いほど、血管に沿って変形しにくく、シャフトと血管壁との間に作用する摩擦力が大きくなるが、高い剛性を有する基端側シャフト13は低摩擦領域35を有しているため、摩擦力が大きくなることを抑制することができ、カテーテル10の操作性を優れたものとすることができる。
低摩擦領域35はシャフト12の先端から20cmから30cmまでの領域を含む。この場合、低摩擦領域35がシャフト12の先端から20cmから30cmまでの領域を含むため、カテーテル10が左右どちらの橈骨動脈から挿入された場合であっても、当接領域25が上行大動脈51に配置されたときにおいて、低摩擦領域35が左鎖骨下動脈59または右鎖骨下動脈49に位置するようになっている。すなわち、カテーテル10が左右どちらの橈骨動脈から挿入された場合であっても、最先端部21を冠動脈入口部42,52に係合させるための操作を良好に行うことができる。
低摩擦領域35の基端は、シャフト12の先端から60cm以下の距離に位置する。この場合、低摩擦領域35の基端はシャフト12から60cm以下の距離に位置するため、術者が、低摩擦領域35を把持することにより操作性が低下する虞を低減させることができる。
低摩擦領域35は、潤滑性コーティングを有する。この場合、潤滑性コーティングにより低摩擦領域35の摩擦係数を低くすることができる。
カテーテル10は、アンプラッツ・レフト形状を有する。具体的には、カテーテル10の先端側シャフト14は、最先端部21と、最先端部21から延在する第1湾曲部22と、第1湾曲部22から延在し、第1湾曲部22とは反対方向に湾曲する第2湾曲部23とを備える。アンプラッツ・レフト形状では、概して最先端部21を冠動脈入口部42,52に係合させることが難しく、そのための操作に手間取る場合がある。しかし、カテーテル10が低摩擦領域35を有するため、アンプラッツ・レフト形状であってもカテーテル10の操作性が優れたものとなり、迅速に最先端部21を冠動脈入口部42,52に係合させることが可能となる。すなわち、アンプラッツ・レフトのカテーテル10においては低摩擦領域35による操作性向上という効果が十分に発揮されやすくなっている。
当接領域25は凹凸面を有していてもよい。この場合、凹凸面により当接領域25の摩擦係数が高くなり、当接領域25が上行大動脈壁51aに対して動きにくく、カテーテル10の安定性およびバックアップ性が優れたものとなる。
当接領域25は凸部34を有していてもよい。この場合、凸部34により当接領域25の摩擦係数が高くなり、当接領域25が上行大動脈壁51aに対して動きにくく、カテーテル10の安定性およびバックアップ性が優れたものとなる。
(他の実施形態)
なお、本発明の実施形態は、上記実施形態に限定されず、例えば、以下のように変更してもよい。
(1)上記実施形態では、カテーテル10はアンプラッツ・レフト形状を有していたが、カテーテル10の形状はこれに限定されない。例えば、カテーテル10が、図6に示すようなジャドキンス・レフト(Judkins Left)、図7に示すようなジャドキンス・ライト(Judkins Right)等の形状を有していてもよい。
図6は、別例におけるジャドキンス・レフト形状を有する自然状態のカテーテル10の先端側部分を拡大して示す平面図である。図6に示すように、このカテーテル10の自然状態において、先端側シャフト14は、略直線状の最先端部81と、最先端81から延在する第1湾曲部82と、第1湾曲部82から延在する中間部83と、中間部83から延在する第2湾曲部84と、第2湾曲部84から延在し、基端側シャフト13に連なる略直線部85とを備える。先端側シャフト14の外表面は、最先端部81が冠動脈入口部に係合したときに上行大動脈壁51aに当接する当接領域86を有している。具体的には、当接領域86は、第2湾曲部84に形成されている。
略直線部85は、基端側シャフト13と同一直線状に延びている。第1湾曲部82と第2湾曲部84とは同じ方向に湾曲している。中間部83は、第1湾曲部82および第2湾曲部84と同じ方向にわずかに湾曲している。第1湾曲部82が形成する弧がなす角の角度は、第2湾曲部84が形成する弧がなす角の角度よりも小さい。第1湾曲部82が形成する弧がなす角は90°以下である。第2湾曲部84が形成する弧がなす角は90°以上である。第1湾曲部82および第2湾曲部84の曲率半径は5〜20mmとすることができる。第2湾曲部84の曲率半径は、第1湾曲部82の曲率半径より大きくてもよい。中間部83は、略直線部85と略平行になっている。最先端部81は、基端側シャフト13および略直線部85と略直角となるように、基端側シャフト13の方向を向いている。
図7は、さらなる別例におけるジャドキンス・ライト形状を有する自然状態のカテーテル10の先端側部分を拡大して示す平面図である。図7に示すように、このカテーテル10の自然状態において、先端側シャフト14は、略直線状の最先端部91と、最先端91から延在する第1湾曲部92と、第1湾曲部92から延在する略直線状の中間部93と、中間部93から延在する第2湾曲部94と、第2湾曲部94から延在し、基端側シャフト13に連なる略直線部95とを備える。先端側シャフト14の外表面は、最先端部91が冠動脈入口部に係合したときに上行大動脈壁51aに当接する当接領域96を有している。具体的には、当接領域96は、第2湾曲部94に形成されている。
略直線部95は、基端側シャフト13に対して傾斜している。第1湾曲部92と第2湾曲部94とは同じ方向に湾曲している。第1湾曲部92が形成する弧がなす角の角度は、第2湾曲部94が形成する弧がなす角の角度よりも大きい。第1湾曲部92が形成する弧がなす角は45°以上である。第2湾曲部94が形成する弧がなす角は45°以下である。第2湾曲部94の曲率半径は、第1湾曲部92の曲率半径より大きくてもよい。最先端部91と中間部93との間の角度は、45°〜90°とすることができる。中間部93と略直線部95との間の角度は10°〜45°とすることができる。
図6および図7に示すカテーテル10の基端側シャフト13の外表面は、低摩擦領域35を有しており、アンプラッツ・レフト形状を有するカテーテル10と同様の作用効果を有する。
(2)低摩擦領域35の摩擦係数を当接領域25,86,96よりも低くする手段は、潤滑性コーティングや凸部34だけに限らない。例えば、当接領域25,86,96を構成する材料よりも低い摩擦係数を有する材料から、低摩擦領域35を構成する外側層33を形成してもよい。また、低摩擦領域35の摩擦係数を当接領域25,86,96よりも低くする手段は、潤滑性コーティング、凸部34、低摩擦の外側層33、のいずれか一つでもよく、あるいは複数を組み合わせてもよい。
(3)カテーテル10において、当接領域25,86,96よりも先端側の領域を形成する先端領域の摩擦係数が、当接領域25,86,96よりも低くてもよい。具体的には、シャフト12の外表面は、当接領域25,86,96よりも先端側において、当接領域25,86,96よりも摩擦係数が低く、低摩擦領域35よりも摩擦係数が高い先端領域を有していてもよい。換言すれば、シャフト12の外表面は、当接領域25,86,96よりも先端側に位置する先端領域と、当接領域25,86,96よりも基端側において、先端領域よりも低い摩擦係数を有する低摩擦領域35とを有し、当接領域25,86,96が先端領域よりも高い摩擦係数を有していてもよい。このことは、例えば、低摩擦領域35に潤滑性コーティングを設け、当接領域25,86,96に凸部34を設けることにより達成することができる。
シャフト12の外表面は、当接領域25,86,96よりも先端側において、当接領域25,86,96よりもよりも低い摩擦係数を有する先端領域を有しているため、先端領域に作用する摩擦力を比較的小さくすることができ、カテーテル10の操作性をより優れたものとすることができる。
シャフト12の外表面は、当接領域25,86,96よりも先端側において、当接領域25,86,96よりも低く、かつ、低摩擦領域35よりも高い摩擦係数を有する先端領域を有している。すなわち、先端領域と当接領域25,86,96と低摩擦領域35とを比較すると、低摩擦領域35が最も低い摩擦係数を有し、当接領域25,86,96が最も高い摩擦係数を有し、先端領域がそれらの間の摩擦係数を有している。従って、先端領域にはある程度の摩擦力が作用することとなり、先端領域は、操作性と安定性とがバランスがとれた領域とすることが可能となっている。
(4)外側層33は、第1外側層33aと第2外側層33bと第3外側層33cといった3つの外側層から構成されていたがこれに限定されない。例えば、外側層33を1種類または2種類の樹脂のみから構成してもよく、4種類以上の樹脂から構成してもよい。
(5)カテーテル10は、内側層32と外側層33と補強層31とを備える3層構造を有していたがこれに限定されない。補強層31を設けずに、内側層32と外側層33とのみから形成してもよく、あるいは、1層構造としてもよい。この場合、硬度の高い樹脂材料を使用することにより、カテーテルが必要な剛性を有するようにする。
(6)上記実施形態では、カテーテル10の用途としては、腕の動脈、特には、橈骨動脈から挿入した場合を説明したが、カテーテル10を他の部位から体内に挿入してもよい。例えば、カテーテル10を大腿動脈から挿入した場合では、最先端部21,81,91を冠動脈入口部42,52に係合させる際に、低摩擦領域35が大動脈弓に対しても滑らかに動くため、カテーテル10の操作性が良好なものとなる。
(7)上記実施形態では、ガイディングカテーテル10に本発明を適用したが、本発明が適用されるカテーテルはガイディングカテーテルに限定されず他のカテーテルに本発明を適用してもよい。例えば、本発明を造影カテーテルに本発明を適用してもよい。冠動脈を造影するための造影カテーテルでは、まず造影カテーテルの最先端部を冠動脈入口部に係合させる。このとき、低摩擦領域により、最先端部を冠動脈入口部に係合させるための操作を良好に行うことができる。次いで、造影カテーテルの最先端部を冠動脈入口部に係合させた状態で、造影カテーテルを介して造影剤を冠動脈内に注入する。このとき、上行大動脈壁に当接する当接領域は低摩擦領域よりも摩擦係数が高いため、造影カテーテルの安定性が維持されている。従って、造影剤を冠動脈内に勢いよく急速に注入した場合であっても、造影カテーテルが動いてしまい、最先端部が冠動脈入口部から外れる虞が低減することができる。