JP2014005211A - ゼラチンゲルの作製法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、化学架橋剤を含まない、生体内において徐放性の薬物送達を可能とするゼラチンゲル及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】ゼラチンゲルの製造方法であって、(i)ゼラチンに疎水基が導入されてなるゼラチン誘導体を有機溶媒に溶解する工程;(ii)工程(i)で得られた、該ゼラチン誘導体が溶解した有機溶媒を凍結乾燥して乾燥物を得る工程;及び(iii)工程(ii)で得られた乾燥物に水性溶媒を加えて膨潤及びゲル化させ、ゼラチンゲルを得る工程、を含む、上記方法。
【選択図】なし
【解決手段】ゼラチンゲルの製造方法であって、(i)ゼラチンに疎水基が導入されてなるゼラチン誘導体を有機溶媒に溶解する工程;(ii)工程(i)で得られた、該ゼラチン誘導体が溶解した有機溶媒を凍結乾燥して乾燥物を得る工程;及び(iii)工程(ii)で得られた乾燥物に水性溶媒を加えて膨潤及びゲル化させ、ゼラチンゲルを得る工程、を含む、上記方法。
【選択図】なし
Description
本発明は、化学架橋剤を含まない、生体内において徐放性の薬物送達を可能とするゼラチンゲル及びその製造方法に関する。
近年、病巣部位へ薬物や栄養成分等を効果的な濃度で長期間に亘って送達するために、ゼラチンゲルを担体として用いた薬物送達システムが研究・開発されている(特許文献1−3、非特許文献1)。ゼラチンゲルを用いた薬物送達システムは、生体適合性、生体吸収性に優れたゼラチンを基材としてなり、生体内においてゼラチンが種々の酵素の働きにより分解されることにより、ゲル内に固定されていた薬物や栄養成分等が徐々に放出される。
ゼラチンゲルは、ゼラチンを水溶性溶媒に溶解し、それを冷却することにより製造することが可能であるが、そのゼラチンゲルは体温(約37℃)条件下において溶解するために、当該条件下に付すだけで(すなわち、酵素の働きに関係なく)ゲルの状態を維持することができなくなる。そこで従来的に、徐放性薬物送達のために利用されるゼラチンゲルの製造においては、化学架橋剤を添加してゼラチンを架橋し、これにより体温条件下においてもゲルの状態を維持できるようにしている。化学架橋剤としてはグルタルアルデヒド、水溶性カルボジイミド、プロピレンオキサイド、ジエポキシ化合物等が用いられている(特許文献3)。
しかしながら、一般的に化学架橋剤は生体組織や細胞に対して強い毒性を示すことから、生体への投与に関して、ゼラチンゲルに含まれる化学架橋剤の存在が問題となっていた。当該分野においては、化学架橋剤を使用することなく、体温条件下においてゲルの状態を維持することができ、徐放性薬物送達のための担体として利用可能なゼラチンゲル及びその製造方法が求められていた。
Ma J et al.,Journal of Biomaterials Science:Polymer Edition,13,67−80,2002
本発明は、化学架橋剤を含まない、生体内において徐放性の薬物送達を可能とするゼラチンゲル及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ゼラチンに疎水基が導入されてなるゼラチン誘導体をゲル製造のための基材として利用することによって、ゼラチン誘導体は疎水性相互作用により疎水基を介して相互に架橋されるために、化学架橋剤を用いることなく、体温条件下においてゲルの状態を維持することができ、生体内において徐放性の薬物送達を可能とするゼラチンゲルを製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
[1] ゼラチンゲルの製造方法であって、
(i)ゼラチンに疎水基が導入されてなるゼラチン誘導体を有機溶媒に溶解する工程;
(ii)工程(i)で得られた、該ゼラチン誘導体が溶解した有機溶媒を凍結乾燥して乾燥物を得る工程;及び
(iii)工程(ii)で得られた乾燥物に水性溶媒を加えて膨潤及びゲル化させ、ゼラチンゲルを得る工程、
を含む、上記方法。
[2] 疎水基が炭素数4〜20のアルキル基である、[1]の方法。
[3] ゼラチン誘導体1g(乾燥重量)あたり、1×10−5〜1×10−2molの疎水基がゼラチン誘導体に導入されている、[1]又は[2]の方法。
[4] 工程(i)において、ゼラチン誘導体を0.1〜50%(w/v)の濃度となるように有機溶媒に溶解する、[1]〜[3]のいずれかの方法。
[5] 有機溶媒がジメチルスルホキシドである、[1]〜[4]のいずれかの方法。
[6] さらに、(iv)工程(iii)で得られたゼラチンゲルに薬物を含む水性溶媒を加える、[1]〜[5]のいずれかの方法。
[7] 薬物が細胞増殖因子である、[6]の方法。
[8] 薬物が塩基性線維芽細胞増殖因子である、[6]又は[7]の方法。
[9] [1]〜[8]のいずれかの方法により製造される、ゼラチンゲル。
[10] 疎水性相互作用により互いに結合している、ゼラチンに疎水基が導入されてなるゼラチン誘導体を含んでなり、かつ化学架橋剤を含まない、ゼラチンゲル。
[11] 疎水基が炭素数4〜20のアルキル基である、[10]のゼラチンゲル。
[12] ゼラチン誘導体1g(乾燥重量)あたり、1×10−5〜1×10−2molの疎水基がゼラチン誘導体に導入されている、[10]又は[11]のゼラチンゲル。
[13] ゼラチン誘導体を0.1〜50%(w/v)の量で含む、[10]〜[12]のいずれかのゼラチンゲル。
[14] さらに薬物を含む、[10]〜[13]のいずれかのゼラチンゲル。
[15] 薬物が細胞増殖因子である、[14]のゼラチンゲル。
[16] 薬物が塩基性線維芽細胞増殖因子である、[14]又は[15]のゼラチンゲル。
[17] [16]のゼラチンゲルを含む、血管新生促進剤。
[1] ゼラチンゲルの製造方法であって、
(i)ゼラチンに疎水基が導入されてなるゼラチン誘導体を有機溶媒に溶解する工程;
(ii)工程(i)で得られた、該ゼラチン誘導体が溶解した有機溶媒を凍結乾燥して乾燥物を得る工程;及び
(iii)工程(ii)で得られた乾燥物に水性溶媒を加えて膨潤及びゲル化させ、ゼラチンゲルを得る工程、
を含む、上記方法。
[2] 疎水基が炭素数4〜20のアルキル基である、[1]の方法。
[3] ゼラチン誘導体1g(乾燥重量)あたり、1×10−5〜1×10−2molの疎水基がゼラチン誘導体に導入されている、[1]又は[2]の方法。
[4] 工程(i)において、ゼラチン誘導体を0.1〜50%(w/v)の濃度となるように有機溶媒に溶解する、[1]〜[3]のいずれかの方法。
[5] 有機溶媒がジメチルスルホキシドである、[1]〜[4]のいずれかの方法。
[6] さらに、(iv)工程(iii)で得られたゼラチンゲルに薬物を含む水性溶媒を加える、[1]〜[5]のいずれかの方法。
[7] 薬物が細胞増殖因子である、[6]の方法。
[8] 薬物が塩基性線維芽細胞増殖因子である、[6]又は[7]の方法。
[9] [1]〜[8]のいずれかの方法により製造される、ゼラチンゲル。
[10] 疎水性相互作用により互いに結合している、ゼラチンに疎水基が導入されてなるゼラチン誘導体を含んでなり、かつ化学架橋剤を含まない、ゼラチンゲル。
[11] 疎水基が炭素数4〜20のアルキル基である、[10]のゼラチンゲル。
[12] ゼラチン誘導体1g(乾燥重量)あたり、1×10−5〜1×10−2molの疎水基がゼラチン誘導体に導入されている、[10]又は[11]のゼラチンゲル。
[13] ゼラチン誘導体を0.1〜50%(w/v)の量で含む、[10]〜[12]のいずれかのゼラチンゲル。
[14] さらに薬物を含む、[10]〜[13]のいずれかのゼラチンゲル。
[15] 薬物が細胞増殖因子である、[14]のゼラチンゲル。
[16] 薬物が塩基性線維芽細胞増殖因子である、[14]又は[15]のゼラチンゲル。
[17] [16]のゼラチンゲルを含む、血管新生促進剤。
本発明によれば、化学架橋剤を含まない、生体内において徐放性の薬物送達を可能とするゼラチンゲル及びその製造方法を提供することができる。
本発明のゼラチンゲルは化学架橋剤を含まないために、従来公知のゼラチンゲルと比べて細胞毒性が低く、徐放性の薬物送達を行うための担体として好適に利用することができる。
本発明のゼラチンゲルは、ゼラチンに疎水基が導入されてなるゼラチン誘導体を基材として製造することができる。
「ゼラチン」は、動物(例えば、哺乳類、鳥類、魚類など)の器官・組織より採取されるコラーゲンを、アルカリ加水分解、酸加水分解、酵素分解することによって得ることができる。また、化学合成、微生物を用いた発酵法、遺伝子組換え操作等の手法を用いて得られたゼラチンも利用することができる。ゼラチンは市販のものも利用することができ、本発明において例えば、ウシ皮膚由来酸性ゼラチン(シグマ社製)を使用することができる。
本発明において使用するゼラチンは、酸性ゼラチン及び塩基性ゼラチンのいずれであってもよい。「酸性ゼラチン」とは、コラーゲンをアルカリ処理することによって得られるゼラチンであり、等電点が2.0〜7.0、好ましくは4.0〜6.5、より好ましくは4.5〜5.5であるものが意図される。「塩基性ゼラチン」とは、コラーゲンを酸処理することによって得られるゼラチンであり、等電点が7.0〜13.0、好ましくは7.5〜10.0、より好ましくは8.5〜9.5であるものが意図される。酸性ゼラチン及び塩基性ゼラチンの選択は、ゼラチンゲルの用途やゼラチンゲルに配合される薬物の性質に応じて適宜決定することができる。たとえば、塩基性線維芽細胞増殖因子(以下、「bFGF」と記載する)のような生体内と同じ中性域(約pH7)において正に帯電する薬物をゼラチンゲルに配合する場合には、中性域において負に帯電する酸性ゼラチンを用いることが好ましい。一方、骨形成タンパク質(以下、「BMP」と記載する)のような中性域において負に帯電する薬物をゼラチンゲルに配合する場合には、中性域において正に帯電する塩基性ゼラチンを用いることが好ましい。
「疎水基」は、アルキル基、アシル基、フェニル基、ベンジル基などが挙げられ、好ましくはアルキル基である。本発明において「アルキル基」とは炭素数4〜20個の直鎖状のものを指し、特に好ましくはウンデシル基(炭素数11個)である。
「ゼラチン誘導体」は、ゼラチンの官能基に対して疎水基を直接又はリンカーを介して間接的に結合させることによって得ることができる。ゼラチン誘導体の製造に利用可能なゼラチンの官能基としては、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボン酸基、チオール基、エステル基、アミド基、ケトン基、アルデヒド基等が挙げられるが、好ましくはアミノ基である。ゼラチンの官能基に対する疎水基の結合は公知の手法によって行うことができる。例えば、疎水基としてアルキル基を利用する場合においては(図1)、ゼラチンを適当な溶媒(例えば、水等)に溶解し、ここに適当な直鎖飽和脂肪族アルデヒドを加える。直鎖飽和脂肪族アルデヒドは、ゼラチンのアミノ基との縮合反応によりシッフ塩基を形成する。続いて、シッフ塩基を還元することによって、アルキル基が結合したゼラチンを得ることができる。反応に用いるゼラチンと疎水基を付与する物質(上記アルキル基の例でいえば、直鎖飽和脂肪族アルデヒド)の量比を適宜変更することによって、最終的に得られるゼラチン誘導体における疎水基の導入量を調節することができる。ゼラチン誘導体における疎水基の導入量を増加させることによって、当該ゼラチン誘導体を用いて得られるゼラチンゲルの架橋度を高めることができ、ゼラチンゲルの安定性を高め、分解されにくくすることができる。本発明においては、ゼラチン誘導体1g(乾燥重量)あたり、1×10−5〜1×10−2molの疎水基が導入されていることが好ましい。
特に好ましくは、本発明において「ゼラチン誘導体」とは、ゼラチン誘導体1g(乾燥重量)あたり、炭素数11の直鎖アルキル基が1×10−4〜9×10−4mol導入されているものを指す。
本発明のゼラチンゲルは、ゼラチン誘導体を有機溶媒に溶解してゼラチン誘導体溶液とし、続いてゼラチン誘導体溶液を凍結乾燥して乾燥物を得て、当該乾燥物を適当な水性溶媒で膨潤及びゲル化させることによって製造することができる。
ゼラチン誘導体を溶解するための有機溶媒としては、上記ゼラチン誘導体を溶解できるものであれば良く、特に限定はされないが、例えば、ジメチルスルホキシド(以下、「DMSO」と記載する)、エタノール、プロパノール、グリセリン等が挙げられ、好ましくはDMSOである。
ゼラチン誘導体は有機溶媒に、0.1〜50%(w/v)、好ましくは5〜20%(w/v)の濃度で溶解させる。当該濃度によって、ゼラチンゲルにおけるゼラチン誘導体の密度を調節することができる。ゼラチンゲルにおけるゼラチン誘導体の密度を増加させることによって、得られるゼラチンゲルの架橋度を高めることができ、ゼラチンゲルの安定性を高め、分解されにくくすることができる。
ゼラチン誘導体溶液の凍結乾燥は公知の手法により行うことができる。すなわち、ゼラチン誘導体溶液を−196℃〜−20℃程度で急速に凍結し、真空条件下にて溶媒を昇華して乾燥させる。凍結乾燥を用いることによって、乾燥物をゼラチン誘導体が疎水性相互作用により疎水基を介して相互に架橋された、多孔質体として得ることができる。凍結乾燥の結果得られた乾燥物は、使用するまで−196℃〜室温で保存することができる。
乾燥物の膨潤及びゲル化は、乾燥物に水性溶媒を含浸させることによって行うことができる。すなわち、乾燥物に水性溶媒を含浸させることによって、多孔質体である乾燥物の内部(すなわち、間隙)に水が保持され膨潤しゲル状になる。また、ゼラチン誘導体は疎水性相互作用により疎水基を介して相互に架橋されているためにゲルの状態を保つことができる(図2)。
乾燥物の膨潤及びゲル化に用いられる水性溶媒としては、例えば、水や生理食塩水、あるいはこれらに緩衝剤(リン酸塩、クエン酸塩、炭酸塩、酢酸塩等)を添加したものが挙げられる(これらに限定はされない)。乾燥物の膨潤及びゲル化は、水性溶媒を乾燥物に対して滴下するか、水性溶媒中に乾燥物を浸漬することによって行うことができる。乾燥物の膨潤及びゲル化の工程は、水性溶媒が乾燥物内部まで均一に浸潤するのに十分な時間行えば良く、乾燥物の大きさや含まれるゼラチン誘導体量によって異なるが、1分〜24時間程度行えば良い。乾燥物の膨潤及びゲル化に際しては、必要に応じて、脱気処理を行うことができ、これにより効率的に水性溶媒を乾燥物内部まで均一に浸潤させることができる。
本発明のゼラチンゲルは、50〜99.9w/w%、好ましくは75〜95w/w%の含水率を有する(すなわち、本発明のゼラチンゲルは、ゼラチン誘導体を0.1〜50%(w/w)、好ましくは5〜25w/w%の量で含む)。含水率とは、ゼラチンゲル中の水性溶媒の重量パーセントで表わされる。含水率は上記したゼラチン誘導体における疎水基の導入量、及び/又は、ゼラチンゲルにおけるゼラチン誘導体の密度(すなわち、ゼラチン誘導体の溶媒に対する溶解濃度)によって、調節することができる。ゼラチン誘導体における疎水基の導入量が少ないほど、また、ゼラチンゲルにおけるゼラチン誘導体の密度が少ないほど、含水率を増加させることができる。
本発明のゼラチンゲルの形状及び大きさは、特に限定されることなく、意図する用途に応じて適宜選択することができる。形状としては、円柱状、角柱状、シート状、ディスク状、球状、ペースト状等が挙げられるが、円柱状、角柱状、シート状、ディスク状であれば、生体内に容易に埋殖することができる。ゼラチンゲルの形状及び大きさの調整は、ゼラチンゲル作製時において、上記ゼラチン誘導体溶液を所望の形状及び大きさを有する鋳型に流しこみ、凍結乾燥させることによって行うこともできるし、上記乾燥物又はゼラチンゲルを所望の形状及び大きさに適宜切断・裁断することによって行うこともできる。
本発明のゼラチンゲルは、基材であるゼラチン誘導体が疎水性相互作用により疎水基を介して相互に架橋されてなり、従来的に用いられているゼラチンゲルと異なり、化学架橋剤(例えば、ホルムアルデヒドやグルタルアルデヒドなど)を包含しない。故に、本発明のゼラチンゲルは、細胞、組織、器官に対して、毒性を示すことなく、又は低い毒性にて、適用することができる。
本発明のゼラチンゲルは、薬物を含めることによって、徐放性製剤として利用することができる。徐放性製剤においては、生体内においてゼラチンが種々の酵素の働きにより分解されるに伴い、ゲル中に包含される薬物が徐々に放出される。薬物の放出速度は、ゼラチンゲルの分解速度によって調節することができる。
ゼラチンゲルの分解速度は、ゼラチンゲル作製時における、ゼラチンに対する疎水基の導入量、上記ゼラチン誘導体溶液におけるゼラチン誘導体の濃度、またはそれらの組み合わせを調節し、ゼラチンゲルにおける架橋の程度を調節することにより行うことができる。
「薬物」としては、例えば、抗腫瘍剤、抗菌剤、抗炎症剤、抗ウイルス剤、抗エイズ剤、ホルモン、細胞増殖因子、核酸等が挙げられ、10,000〜100,000程度の分子量を持つものが好ましい。中でも、細胞増殖因子が好ましい。「細胞増殖因子」としては、線維芽細胞増殖因子(FGF)(好ましくはbFGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、神経成長因子(NGF)、骨形成タンパク質(BMP)、上皮成長因子(EGF)、トランスフォーミング成長因子(TGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、インスリン様増殖因子(IGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)等が挙げられる(これらに限定はされない)。下記実施例にて詳述するとおり、bFGFを含む本発明のゼラチンゲルは、血管新生促進剤として利用することができる。
薬物はゼラチンゲルとの物理化学的相互作用(例えば、疎水性相互作用、水素結合、クーロン力など)や配位結合を利用して、ゼラチンゲル内に固定することができる。例えば、薬物が細胞増殖因子等のタンパク質である場合、薬物の等電点が7以下であれば上記塩基性ゼラチンより作製されたゼラチンゲルを利用することにより、薬物をゼラチンゲル内に好適に固定することができ、薬物の等電点が7以上であれば上記酸性ゼラチンより作製されたゼラチンゲルを利用することにより、薬物をゼラチンゲル内に好適に固定することができる。
薬物は、適当な溶媒、好ましくは水性溶媒に溶解した後、ゼラチンゲルの一方の面から薬物を含む溶液を滴下するか、又は薬物を含む溶液中にゼラチンゲルを浸漬することによって、ゼラチンゲル中に薬物を含めることができる。あるいは、薬物を、上記乾燥物を膨潤及びゲル化するための水性溶媒中に含めることによって、ゼラチンゲル中に薬物を含めることができる。
ゼラチンゲル中に含める薬物の量は、患者の年齢、体重、疾患の重篤度、投与するゼラチンゲルの大きさなどの要因によって変化し得るが、0.01μg〜1000μg、好ましくは0.1μg〜100μgの範囲から適宜選択される量を含めることができる。
ゼラチンゲルには、薬物に加えて、必要に応じて、安定化剤、保存剤、可溶化剤、pH調整剤、増粘剤等を含めることができる。
薬物を含むゼラチンゲルは任意の方法で生体に投与することができるが、目的とする部位において持続的に薬物を放出させるために、局所投与が好ましい。薬物を含むゼラチンゲルの投与量は、必要とされる薬物の投与量に応じて、適宜選択することができる。
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は、それらの実施例によって制限されないものとする。
実施例1:ゼラチンゲルの調製
(1−1)ゼラチン誘導体の合成
ウシ皮膚由来酸性ゼラチン(シグマ社製)を8mMリン酸緩衝液(pH7.4)に3%(w/v)の濃度で溶解して水溶液とした。得られた水溶液に、その水溶液量の0.7倍量の99.9%エタノールを加えた。得られた水溶液に1−ドデカナールを加え、ゼラチンのアミノ基との縮合反応(25℃、6時間)によりシッフ塩基を形成させた。得られた反応物に、シアノ水素化ホウ素ナトリウムを加え、還元的アミノ化反応により、アルキル基を導入したゼラチン誘導体を作製した(図1)。
実施例1:ゼラチンゲルの調製
(1−1)ゼラチン誘導体の合成
ウシ皮膚由来酸性ゼラチン(シグマ社製)を8mMリン酸緩衝液(pH7.4)に3%(w/v)の濃度で溶解して水溶液とした。得られた水溶液に、その水溶液量の0.7倍量の99.9%エタノールを加えた。得られた水溶液に1−ドデカナールを加え、ゼラチンのアミノ基との縮合反応(25℃、6時間)によりシッフ塩基を形成させた。得られた反応物に、シアノ水素化ホウ素ナトリウムを加え、還元的アミノ化反応により、アルキル基を導入したゼラチン誘導体を作製した(図1)。
ゼラチンに対するアルキル基の導入量は、反応に用いるゼラチンと1−ドデカナールとの量比によって調整することができ、ゼラチン中のアミノ基の総物質量を1として、0.1、0.5、1.0(、5.0(GD8)の物質量の1−ドデカナールをゼラチン水溶液に加え、上記反応によりゼラチン誘導体を作製した。
結果、ゼラチン誘導体1g(乾燥重量)あたり、1.1×10−4molのアルキル基が導入されたゼラチン誘導体(以下、「GD1」と記載)、2.9×10−4molのアルキル基が導入されたゼラチン誘導体(以下、「GD3」と記載)、4.8×10−4molのアルキル基が導入されたゼラチン誘導体(以下、「GD5」と記載)、及び8.3×10−4molのアルキル基が導入されたゼラチン誘導体(以下、「GD8」と記載)を得、以下の実験に用いた。
(1−2)ゼラチンゲルの調製
GD1、GD3、GD5、GD8の各ゼラチン誘導体の乾燥粉末0.125gを蒸留水またはジメチルスルホキシド(DMSO)10mLに加え、80℃で15分攪拌した後、溶解したゼラチン誘導体の量を測定した。対照として、アルキル基未導入の同量のゼラチンを用いた。
結果を以下の表1に示す。
GD1、GD3、GD5、GD8の各ゼラチン誘導体の乾燥粉末0.125gを蒸留水またはジメチルスルホキシド(DMSO)10mLに加え、80℃で15分攪拌した後、溶解したゼラチン誘導体の量を測定した。対照として、アルキル基未導入の同量のゼラチンを用いた。
結果を以下の表1に示す。
ゼラチン誘導体は、導入されたアルキル基の増加に伴い、蒸留水への溶解度が減少した。すなわち、ゼラチン誘導体は導入されたアルキル基の増加に伴い、疎水性が向上したことが示された。以下、ゼラチン誘導体を溶解するための有機溶媒として、DMSOを使用した。
GD1、GD3、GD5、GD8のゼラチン誘導体の乾燥粉末をそれぞれDMSOに10%(w/v)の濃度で溶解し、12穴ウェルプレートに1mLずつ入れ、凍結−真空乾燥を行った。得られた乾燥物を8mMリン酸緩衝液(pH7.4)に浸しながら、1分〜10分間程度、脱気処理することにより、乾燥物の内部までリン酸緩衝液を浸透させ、各ゼラチン誘導体からなるゼラチンゲルを得た。なお以下、GD1から作製したゼラチンゲルをGD1ゼラチンゲル、GD3から作製したゼラチンゲルをGD3ゼラチンゲル、GD5から作製したゼラチンゲルをGD5ゼラチンゲル、及びGD8から作製したゼラチンゲルをGD8ゼラチンゲル、と記載する。
実施例2:ゼラチンゲルの生体内温度での安定性
上記実施例1で得られた各ゼラチン誘導体から作製したゼラチンゲル(乾燥重量0.1g)を8mMリン酸緩衝液(pH7.4)に浸し37℃、100rpmで振とうし、ゼラチンゲルが完全に溶解するまでの時間を測定した。対照として、アルキル基未導入のゼラチンより、実施例1に記載の方法と同様に作製したゼラチンゲルを用いた
結果を以下の表2に示す。
上記実施例1で得られた各ゼラチン誘導体から作製したゼラチンゲル(乾燥重量0.1g)を8mMリン酸緩衝液(pH7.4)に浸し37℃、100rpmで振とうし、ゼラチンゲルが完全に溶解するまでの時間を測定した。対照として、アルキル基未導入のゼラチンより、実施例1に記載の方法と同様に作製したゼラチンゲルを用いた
結果を以下の表2に示す。
ゼラチン誘導体に導入されたアルキル基の増加に伴い、ゼラチンゲルの37℃における安定性が向上した。GD8ゼラチンゲルは実験開始から16日経過しても、ほとんど溶解していなかった。
実施例3:ゼラチンゲルの細胞毒性
上記実施例1で得られた各ゼラチン誘導体から作製したゼラチンゲルを一部に塗布した細胞培養用プレートを作製し、当該プレートにL929線維芽細胞を播種し、従来公知の手法に基づいて培養を行った。
培養開始から5日目の結果を図3に示す。
上記実施例1で得られた各ゼラチン誘導体から作製したゼラチンゲルを一部に塗布した細胞培養用プレートを作製し、当該プレートにL929線維芽細胞を播種し、従来公知の手法に基づいて培養を行った。
培養開始から5日目の結果を図3に示す。
図3の結果より明らかなとおり、GD1ゼラチンゲル又はGD8ゼラチンゲルと近接している領域においても細胞の増殖が確認され、当該ゼラチンゲルが細胞に与える影響(すなわち、細胞毒性)は低いことが示された。
実施例4:ゼラチンゲルの生体内における安定性
上記実施例1で得られた各ゼラチン誘導体から作製したゼラチンゲル(乾燥重量0.025g)をDDYマウス(6週齢)の背部皮下に埋殖し、1週間後のゼラチンゲルの大きさを確認した。
結果を図4に示す。
上記実施例1で得られた各ゼラチン誘導体から作製したゼラチンゲル(乾燥重量0.025g)をDDYマウス(6週齢)の背部皮下に埋殖し、1週間後のゼラチンゲルの大きさを確認した。
結果を図4に示す。
図4の結果より明らかなとおり、GD1とGD3はほとんど分解しており、GD5は約半分ほど分解していた。一方、GD8はほとんど分解していなかった。
すなわち、ゼラチン誘導体に導入されたアルキル基の増加に伴い、ゼラチンゲルの生体内における安定性が向上した。
実施例5:bFGFのモデルタンパク質の吸着及び放出
(5−1)シトクロームCの吸着
bFGF及びシトクロームCの分子量及び等電点を以下の表3に示す。
(5−1)シトクロームCの吸着
bFGF及びシトクロームCの分子量及び等電点を以下の表3に示す。
シトクロームCはbFGFと同程度の分子量および等電点を有するために、シトクロームCはbFGFのモデルタンパク質として用いた。
シトクロームC水溶液(0.15mg/ml)中に、上記実施例1で得られたGD3ゼラチンゲル(乾燥重量0.025g)を加え、37℃、400rpmで振とうした。所定の時間において水溶液の一部を採取して、水溶液中のシトクロームC量を測定し、ゼラチンゲルに吸着されたシトクロームC量を調べた。結果を、図5に示す。なお、図中の吸着率(%)とは、以下の式により求めることができる。
図5の結果より明らかなとおり、シトクロームCは経時的にゼラチンゲルに吸着され、実験開始から60分後には水溶液中に含まれる全てのシトクロームCがゼラチンゲルに吸着された。
(5−2)シトクロームCの放出
シトクロームC水溶液(0.15mg/ml)中に、上記実施例1で得られたGD3ゼラチンゲル(乾燥重量0.025g)を加え、37℃、400rpmにて60分間振とうし、シトクロームC吸着したゼラチンゲルを調製した。ゼラチン分解酵素であるパパインを8mMリン酸緩衝液(pH7.4)に溶解(0.1mg/ml)し、ここに上記シトクロームC吸着したゼラチンゲルを加え、37℃、200rpmで振とうした。所定の時間において水溶液の一部を採取して、水溶液中のシトクロームC量を測定し、水溶液中に放出されたシトクロームC量を調べた。結果を、図6に示す。なお、図中のシトクロームC放出率(%)とは、以下の式により求めることができる。
シトクロームC水溶液(0.15mg/ml)中に、上記実施例1で得られたGD3ゼラチンゲル(乾燥重量0.025g)を加え、37℃、400rpmにて60分間振とうし、シトクロームC吸着したゼラチンゲルを調製した。ゼラチン分解酵素であるパパインを8mMリン酸緩衝液(pH7.4)に溶解(0.1mg/ml)し、ここに上記シトクロームC吸着したゼラチンゲルを加え、37℃、200rpmで振とうした。所定の時間において水溶液の一部を採取して、水溶液中のシトクロームC量を測定し、水溶液中に放出されたシトクロームC量を調べた。結果を、図6に示す。なお、図中のシトクロームC放出率(%)とは、以下の式により求めることができる。
また、所定の時間において残存するゼラチンゲルの重量を測定し、ゼラチンゲルの分解率(%)を調べた。
図6の結果より明らかなとおり、ゼラチンゲルの分解と、水溶液中のシトクロームC量には相関関係が見られた。この結果は、ゼラチンゲルの分解により、吸着されていたシトクロームCが放出されることを示す。
以上の結果より、ゼラチンゲルはシトクロームCと同様にbFGFを吸着することが可能であり、またゼラチンゲルの分解により、吸着していたbFGFを放出することができることを示す。
実施例6:ゼラチンゲルを用いた血管新生の誘導
上記実施例1で得られたGD3のゼラチン誘導から作製したゼラチンゲルの上面にbFGFを10μgを含む水溶液20μLを滴下して、37℃にて1時間静置して、ゼラチンゲルにbFGFを吸着させた。
上記実施例1で得られたGD3のゼラチン誘導から作製したゼラチンゲルの上面にbFGFを10μgを含む水溶液20μLを滴下して、37℃にて1時間静置して、ゼラチンゲルにbFGFを吸着させた。
bFGFを吸着させたゼラチンゲル(乾燥重量0.025g)をWistarラット(雄、6週齢)の背部皮下に埋殖した。対照として、bFGF水溶液に変えて、bFGFを含まない精製水20μLを滴下した以外は同様に調製したゼラチンゲルを用いた。
埋殖後3日目のゼラチンゲル周辺組織の写真図を図7に示す。図7の結果より明らかなとおり、対照ゼラチンゲルを埋殖した場合と比べて、bFGFを吸着させたゼラチンゲルを埋殖した場合には、ゼラチンゲル周辺において顕著に多数の血管が形成されていた。
続いて、埋殖後3日目のゼラチンゲル周辺組織のヘモグロビン量を測定した。結果を図8に示す。
図8の結果より明らかなとおり、対照ゼラチンゲルを埋殖した場合と比べて、bFGFを吸着させたゼラチンゲルを埋殖した場合には、ゼラチンゲル周辺において顕著に大量のヘモグロビンが存在することが明らかとなった。この結果は、bFGFを吸着させたゼラチンゲル周辺において顕著に多数の血管が形成されていることを示す。
Claims (17)
- ゼラチンゲルの製造方法であって、
(i)ゼラチンに疎水基が導入されてなるゼラチン誘導体を有機溶媒に溶解する工程;
(ii)工程(i)で得られた、該ゼラチン誘導体が溶解した有機溶媒を凍結乾燥して乾燥物を得る工程;及び
(iii)工程(ii)で得られた乾燥物に水性溶媒を加えて膨潤及びゲル化させ、ゼラチンゲルを得る工程、
を含む、上記方法。 - 疎水基が炭素数4〜20のアルキル基である、請求項1に記載の方法。
- ゼラチン誘導体1g(乾燥重量)あたり、1×10−5〜1×10−2molの疎水基がゼラチン誘導体に導入されている、請求項1又は2に記載の方法。
- 工程(i)において、ゼラチン誘導体を0.1〜50%(w/v)の濃度となるように有機溶媒に溶解する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 有機溶媒がジメチルスルホキシドである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
- さらに、(iv)工程(iii)で得られたゼラチンゲルに薬物を含む水性溶媒を加える、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
- 薬物が細胞増殖因子である、請求項6に記載の方法。
- 薬物が塩基性線維芽細胞増殖因子である、請求項6又は7に記載の方法。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法により製造される、ゼラチンゲル。
- 疎水性相互作用により互いに結合している、ゼラチンに疎水基が導入されてなるゼラチン誘導体を含んでなり、かつ化学架橋剤を含まない、ゼラチンゲル。
- 疎水基が炭素数4〜20のアルキル基である、請求項10に記載のゼラチンゲル。
- ゼラチン誘導体1g(乾燥重量)あたり、1×10−5〜1×10−2molの疎水基がゼラチン誘導体に導入されている、請求項10又は11に記載のゼラチンゲル。
- ゼラチン誘導体を0.1〜50%(w/v)の量で含む、請求項10〜12のいずれか1項に記載のゼラチンゲル。
- さらに薬物を含む、請求項10〜13のいずれか1項に記載のゼラチンゲル。
- 薬物が細胞増殖因子である、請求項14に記載のゼラチンゲル。
- 薬物が塩基性線維芽細胞増殖因子である、請求項14又は15に記載のゼラチンゲル。
- 請求項16に記載のゼラチンゲルを含む、血管新生促進剤。
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-
2012
- 2012-06-21 JP JP2012139890A patent/JP2014005211A/ja active Pending
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