JP2014005237A - リグニン製造方法、リグニン、及び油脂の製造方法 - Google Patents

リグニン製造方法、リグニン、及び油脂の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】パーム油製造時の副産物の有効活用のみならず、年間を通して原料を安定的に入手可能かつ高収率でリグニンを得ることのできる製造方法を提供する。また、有機溶媒や樹脂との相溶性が良好で成形体材料として利用できるリグニンを提供する。さらにパーム油と同等の油脂を副産物として得ることのできる製造方法を提供する。
【解決手段】パームヤシ果実の繊維(Palm Fiber)、果実の種子であるPKS (Palm Kernel Shell)、果実を分離した後の房であるEFB(Empty Fruit Bunch)、およびパームヤシの幹から選ばれる一種又は二種以上からなる原料を用いたリグニン製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、パーム油製造時に発生する副産物を用いたリグニン製造方法、この製造方法により得られるリグニン、及び油脂の製造方法に関する。
リグニンは木本類、草本類から得られる。木本類、草本類は親水性の線状高分子の多糖類(セルロースとヘミセルロース)と疎水性の架橋構造リグニンの相互侵入網目(IPN)構造を形成している。このうち、リグニンは20〜35質量%を占め、不規則かつ極めて複雑なポリフェノールの化学構造をしている。リグニンの基本骨格はヒドロキシフェニルプロパン単位を基本単位とする構造である。
木本類、草本類からリグニンを抽出する方法として、例えば、特許文献1では、リグノセルロース系物質、フェノール誘導体および酸を含む混合物と不活性低沸点疎水性有機溶媒とを混合し、得られた混合物を遠心分離により3層に分離し、3層のうちの中間層を回収する工程を含む、リグノフェノール誘導体の調製方法が公開されている。また、特許文献2では、リグノセルロース材料と少なくとも一種のフェノール化合物を主成分として含む溶剤とを、加熱下に溶解反応させ、リグノセルロース−フェノール化合物複合物を製造する方法が公開されている。さらに、非特許文献1では、可溶化リグニン分離法として、パルプ蒸解排液中に溶出したリグニンを、排液の酸性化による沈降、分子量分別によってクラフトリグニンを分離する方法が紹介されている。
木本類、草本類から抽出されたリグニンは、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基を有しており、これらの水酸基をエポキシ基、イソシアネート基等と反応させることで硬化物を作製できる。そのため、リグニンを用いた成形体の作製が可能であり、化石資源を用いた製品の代替品として期待できる。
リグニンのようなバイオマス由来の材料は、廃棄時に燃焼すると、化石資源を使用した材料と同様に二酸化炭素(CO)を発生する。しかし、植物は、成長過程で光合成によりCOを吸収しており、ライフサイクル全体でみると大気中のCOを増加させず、収支はゼロであると考えられる。そのため、CO排出量削減効果が見込まれる材料である。
リグニンを使用した材料の例として成形体があり、例えば、特許文献3ではリグニンをエポキシ化し、モータやプリント基板、成形材料の絶縁層、また、塗料の主剤等に用いることができるバイオマス由来エポキシ樹脂組成物が公開されている。さらに特許文献4では、爆砕法で得たリグニンとエポキシ樹脂、ウレタン樹脂等と硬化物を作製することで難燃性、抗菌性を付与した成形体が公開されている。
特許第4593706号公報 特許第2991466号公報 特開2010−150298号公報 特開2011−219722号公報
「ウッドケミカルの新展開」シーエムシー出版 2007 pp.5−6
リグニンの原料としては、これまで、杉、檜、松等の針葉樹、稲わら等種々検討されている。しかし、針葉樹では原料中のリグニン含有率は高いもののリグニン収率が低く、稲わらではリグニン含有率が低いため収率も低い。さらに、稲わらでは原料調達が収穫時期に限られるといった課題もある。
また、リグニンを成形体として利用するためには、リグニンが樹脂と相溶することが均一な成形体を作製するために必要である。しかし、リグニンはその製造方法によって溶媒への溶解性が異なる。例えば、パルプ蒸解の廃液から得られるクラフトリグニン、酢酸リグニンは有機溶媒に不溶又は一部可溶である。また、これらのリグニンは製造過程で著しく変性しているため、樹脂との硬化反応が起こり難い。このため、リグニン成形体として利用するには、樹脂と良好な相溶性、硬化反応を示す製造法を選択しなくてはいけない。
本発明者らは上記課題を解決するために、パーム油を製造する際に発生する副産物であるパームヤシ果実の繊維(Palm Fiber)、果実の種子であるPKS(Palm Kernel Shell)、果実を分離した後の房であるEFB(Empty Fruit Bunch)、およびパームヤシの幹のうち一種又は二種以上を原料とし、水のみを用いた短時間の加熱処理をした後、有機溶媒で抽出することで、リグニンを高収率かつ安定的に供給でき、樹脂と良好な相溶性、硬化反応を示すリグニンの製造方法を見出した。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)パームヤシ果実の繊維(Palm Fiber)、果実の種子であるPKS(Palm Kernel Shell)、果実を分離した後の房であるEFB(Empty Fruit Bunch)、およびパームヤシの幹から選ばれる一種又は二種以上からなる原料を用いたリグニン製造方法。
(2)原料が、粉状、繊維状、又はチップ状である上記(1)に記載のリグニン製造方法。
(3)原料を、水蒸気の存在下で加熱処理し、加熱処理物を水洗、乾燥した後、有機溶媒で抽出し、有機溶媒を除去して固形物を得る上記(1)又は(2)に記載のリグニン製造方法。
(4)水蒸気の存在下で加熱処理するときの圧力が0.5〜4.0MPaである上記(3)に記載のリグニン製造方法。
(5)水蒸気の存在下で加熱処理するときの時間が1〜60分間である上記(3)又は(4)に記載のリグニン製造方法。
(6)上記(1)〜(5)に記載の製造方法で得られるリグニンであって、重量平均分子量が100〜7000であるリグニン。
(7)リグニン中の硫黄原子含有率が2質量%以下である上記(6)に記載のリグニン。
(8)上記(1)〜(5)に記載の製造方法で得られる加熱処理物又は抽出液、抽出液から有機溶媒を除去した固形物のいずれかから分離して得られる油脂の製造方法。
本発明によれば、パーム油製造時の副産物をリグニンの原料とすることで、副産物の有効活用のみならず、年間を通して安定的に入手可能かつ高収率でリグニンを得ることのできる製造方法が提供できる。また、本発明の製造方法で得られたリグニンは有機溶媒や樹脂との相溶性が良好で成形体材料として利用でき、さらにパーム油製造時の副産物を原料とすることで、パーム油と同等の油脂を副産物として利用することができる。
以下、上記本発明をさらに詳細に説明する。
本発明は、パーム油製造工程の副産物を原料とし、セルロース、ヘミセルロースからリグニンを分離し、有機溶媒に可溶なリグニンを製造することを特徴とする。パーム油製造工程の副産物としては、具体的にはパームヤシ果実の繊維(Palm Fiber)、果実の種子であるPKS(Palm Kernel Shell)、果実を分離した後の房であるEFB(Empty Fruit Bunch)、およびパームヤシの幹であり、これらを一種又は二種以上混合して使用することができる。
また、これらの原料は、必要に応じてチッパー、ハンマーミル、グラインダー等で切断、粗粉砕、微粉砕した後に使用できる。
セルロース、ヘミセルロースからリグニンを分離する方法として、水蒸気を用いた分離方法が好ましい。使用する原料を水蒸気のみを用いた処理方法により、リグニンをセルロース成分、ヘミセルロース成分から分離し、有機溶媒に溶解させる製造方法であることが好ましい。また、リグニン製造方法としては、水蒸気爆砕法がより好ましい。水蒸気爆砕法は高温高圧の水蒸気による加水分解と、圧力を瞬時に開放することによる物理的破砕効果により、短時間で破砕するものである。
水蒸気爆砕の条件としては、原料を水蒸気爆砕装置用の耐圧容器に入れ、0.5〜4.0MPaの水蒸気を圧入し、1〜60分間加熱処理した後、瞬時に圧力を開放することが好ましい。さらに、2.1〜4.0MPaの条件では1〜30分間加熱処理することがより好ましく、1〜10分間であればさらに好ましい。また、0.5〜2.0MPaの条件では、5〜40分間加熱処理することが好ましく、10〜30分間であればより好ましい。加熱処理時間が短いとセルロース成分、ヘミセルロース成分からリグニンが十分に分離せず、リグニンの収率が低下する。また、加熱処理時間が長いと1度分離したリグニンが縮合し、分子量が大きくなるため有機溶媒に溶け難く、リグニンの収率が低下する恐れがある。
本発明のリグニン製造方法は、硫酸法、クラフト法等の他の分離方法と比較し、硫酸、亜硫酸塩等を用いることなく、水蒸気のみを使用するので、クリーンな分離方法である。この方法では、リグニン中に硫黄原子を含まないリグニン、又は、硫黄原子の含有率が少ないリグニンが得られる。通常、リグニン中の硫黄原子の含有率は、2質量%以下が好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。硫黄原子の含有量が増大すると親水性のスルホン酸基が増加するため、有機溶媒への溶解性が低下する。本発明者らは、さらに、爆砕物から有機溶媒でリグニンを抽出することにより、リグニンの分子量を制御し得ることを見出した。
本発明で用いるリグニンの抽出に用いる有機溶媒は、一種又は二種以上複数の混合のアルコール溶媒、アルコールと水を混合した含水アルコール溶媒、その他の有機溶媒又は、水と混合した含水有機溶媒を使用することができる。水としては、イオン交換水を使用することが好ましい。水との混合溶媒の含水率は0〜70質量%が好ましい。リグニンは水への溶解度が低いため、水のみを溶媒とするとリグニンを抽出することが困難である。また、用いる溶媒を選択することにより、得られるリグニンの重量平均分子量を制御することが可能である。
アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、n−ヘキサノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール等のモノオール系とエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、トリエタノールアミン等のポリオール系が挙げられる。また、天然物質から得られるアルコールであることが、環境負荷低減化の観点で好ましい。具体的には、天然物質から得たメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、グリセリン、ヒドロキシメチルフルフラール等が挙げられる。
リグニンの重量平均分子量は、ポリスチレン換算値において、100〜7000であることが好ましく、200〜5000であることがより好ましく、500〜4000であることがさらに好ましい。リグニンの重量平均分子量が7000を超えると有機溶媒への溶解性が低下する恐れがある。重量平均分子量が100未満であるとリグニンの構造を活かした成形体に応用できない恐れがある。
なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、標準ポリスチレン換算した値を使用した。
本発明のリグニンは、エポキシ基、イソシアネート基、アルデヒド又はホルムアルデヒドを生成する化合物、多価カルボン酸又は多価カルボン酸無水物、不飽和多価カルボン酸又は不飽和多価カルボン酸無水物等、リグニンの水酸基と反応する置換基を有する材料と相溶し、硬化反応することによって成形体を作製することが可能である。リグニンが上記材料と相溶しないと、均一な成形体が作製できない恐れがある。
パーム油製造時の副産物には油脂が含まれている。この油脂は本発明の製造工程において、分離可能であり、有効活用することができる。具体的には、加熱処理物、抽出液、抽出液から有機溶媒を除去した固形物から油脂を分離できる。油脂を分離する手法としては、非極性溶媒によって分離する手法が好ましく、非極性溶媒としては、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、iso−オクタン、n−デカン等の飽和脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、デカリン等の環状脂肪族炭化水素、トルエン、p−キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
(EFBのリグニン含有率測定)
ペレット状に加工されたEFBをミキサーにて粉砕し、メッシュ幅150μmの篩にかけ、得られた木粉を105℃で質量が一定となるまで乾燥させた。乾燥させた木粉0.2gに72質量%硫酸3mLを加え、4時間撹拌した後、113mLの純水に滴下し硫酸の濃度を3質量%とした。これをオートクレーブにて121℃、30分間加熱した後、吸引濾過によって固液分離した。得られた固形物を105℃で質量一定となるまで乾燥させ、得られた固形物をリグニンとし、リグニン含有率を求めた。その結果、リグニン含有率は26.3質量%であった。
(実施例2)
(EFBを原料としたリグニン抽出および油脂の分離)
ペレット状に加工されたEFB894g(乾燥質量)を水蒸気爆砕装置の2Lの耐圧容器に入れ、3.5MPaの水蒸気を圧入し、3分間保持した。その後バルブを急速に開放することで爆砕処理物を得た。洗浄液のpHが6以上になるまで得られた爆砕処理物を水により洗浄して水溶性成分を除去した。その後、105℃で残存水分を除去した。得られた乾燥体に対して質量で3倍量のヘキサンを加え、10分間撹拌した後、濾過によってヘキサン抽出物と固形物に分離した。分離したヘキサン抽出物を減圧乾燥することで赤褐色の油脂成分を17g得た。分離した固形物を常温で乾燥させた後、 固形物に対して質量で3倍量の乾燥抽出溶媒(アセトン)を加え、10分間攪拌した。その後、ろ過により繊維物質を取り除いた。得られた濾液から抽出溶媒(アセトン)を除去し、リグニンを150g得た。得られたリグニンは常温(25℃)で茶褐色の粉末であった。
(リグニンの重量平均分子量)
リグニン中の硫黄原子の含有率は燃焼分解−イオンクロマトグラフ法により定量した。装置は株式会社三菱化学アナリテック製自動試料燃焼装置(商品名:AQF−100)及び日本ダイオネクス株式会社製イオンクロマトグラフ(商品名:ICS−1600)を用いた。上記リグニン中の硫黄原子の含有率は0.2質量%であった。さらに示差屈折計を備えたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にてリグニンの分子量を測定した。多分散度の小さいポリスチレンを標準試料として用い、移動相をテトラヒドロフランとして使用し、カラムとして株式会社日立ハイテクノロジーズ製、商品名:ゲルパックGL−A120SとGL−A170S(「ゲルパック」は登録商標)とを直列に接続して分子量測定を行った。その重量平均分子量は2000であった。
(油脂成分とパーム油の比較分析)
油脂成分とパーム油を H‐NMR(プロトン核磁気共鳴)、TMAH誘導化PyGC‐MS(誘導化試薬として水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)を用いた、熱分解によるガスクロマトグラフ質量分析)によって比較分析した。H‐NMRはBRUKER社製核磁気共鳴装置(商品名:AMX400)を使用し、溶媒:重クロロホルム(CDCl)、周波数:400MHzで測定した。TMAH誘導化PyGC‐MSはアジレント・テクノロジー株式会社製ガスクロマトグラフ装置(商品名:6890N/5973MSD)アジレント・テクノロジー株式会社製カラム(商品名:HP−5ms、内径0.25mm×長さ30m)を使用し、熱分解:650℃、0.2分間、カラム温度:70〜300℃、10℃/分、注入口温度:320℃、キャリアガス:He、1mL/分で測定した。油脂成分とパーム油の H‐NMRスペクトルパターンから、油脂成分はパーム油と近い組成であった。また、TMAH誘導化PyGC−MSでは主な油脂の誘導化物は、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸であり、そのピーク面積比はそれぞれ1:0.9:0.05:0.06であった。また、主なパーム油の誘導体化物は、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸であり、そのピーク面積比は1:0.9:0.03であった。
(実施例3)
(PKSのリグニン含有率測定)
実施例1と同様にPKSのリグニン含有率を求めた。その結果、リグニン含有率は41.4質量%であった。
(実施例4)
(PKSを原料としたリグニン抽出および油脂の分離)
PKS872g(乾燥質量)を用いて実施例2と同様にリグニンを抽出し、赤褐色の油脂成分15g、リグニン130gを得た。得られたリグニンは常温(25℃)で茶褐色の粉末であった。
(リグニンの分析)
実施例2と同様にリグニンの分子量を測定した。その結果、重量平均分子量は1800であった。
(油脂成分とパーム油の比較分析)
実施例2と同様に油脂成分とパーム油を比較分析した。その結果、H‐NMRにおける油脂成分とパーム油のスペクトルパターンから、油脂成分はパーム油と近い組成であった。また、TMAH誘導化PyGC−MSでは主な油脂の誘導化物は、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸であり、そのピーク面積比はそれぞれ1:0.9:0.05:0.05であった。また、主なパーム油の誘導体化物は、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸であり、そのピーク面積比は1:0.9:0.03であった。
(比較例1)
(杉のリグニン含有率)
実施例1と同様に杉のリグニン含有率を求めた。その結果、リグニン含有率は35.5質量%であった。
(比較例2)
(杉を原料としたリグニン抽出)
適当な大きさにカットした杉材180g(乾燥質量)を水蒸気爆砕装置の2Lの耐圧容器に入れ、3.8MPaの水蒸気を圧入し、2分間保持した。その後バルブを急速に開放することで爆砕処理物を得た。洗浄液のpHが6以上になるまで得られた爆砕処理物を水により洗浄して水溶性成分を除去した。その後、105℃で残存水分を除去した。得られた乾燥体に対して質量で3倍量の抽出溶媒(アセトン)を加え、3時間攪拌した後、ろ過により繊維物質を取り除いた。固形物を常温で乾燥させた後、乾燥抽出溶媒(アセトン)1800gを加え、10分間攪拌した。その後、ろ過により繊維物質を取り除いた。得られた濾液から抽出溶媒(アセトン)を除去し、リグニンを13.9g得た。得られたリグニンは常温(25℃)で茶褐色の粉末であった。
(リグニンの分析)
実施例2と同様にリグニンの分子量を測定した。その結果、重量平均分子量は1500であった。
(比較例3)
(稲わらのリグニン含有率)
適当な大きさにカットした稲わらをミキサーにて粉砕し、メッシュ幅150μmの篩にかけ、得られた粉体を105℃で質量が一定となるまで乾燥させた。乾燥させた粉体0.2gに72質量%硫酸3mLを加え、4時間撹拌した後、113mLの純水に滴下し硫酸の濃度を3質量%とした。これをオートクレーブにて121℃、30分間加熱した後、吸引濾過によって固液分離した。得られた固形物を105℃で質量一定となるまで乾燥させた。さらに、粉体0.2gを600℃、4時間加熱したのち灰分を得た。この灰分と乾燥させた固形物の質量の差からリグニン含有率を求めた。
(比較例4)
(稲わらのリグニン抽出)
適当な大きさにカットした稲わら86g(乾燥質量)を用いて比較例2と同様にリグニンを抽出し、リグニン5.3gを得た。得られたリグニンは常温(25℃)で茶褐色の粉末であった。
(リグニンの分析)
実施例2と同様にリグニンの分子量を測定した。その結果、重量平均分子量は1600であった。
以上の実施例1〜4の結果からリグニン含有率と爆砕で得たリグニンおよび油脂収率、比較例1〜4の結果からリグニン含有率と爆砕で得たリグニン収率の結果を表1に示す。なお、本明細書において、収率は、原料質量に対する収量の率(質量%)を指す。
Figure 2014005237
(実施例5)
(成形体の作製)
実施例2に記載のリグニン6g、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(YDCN−700−10、新日化エポキシ製造株式会社製、商品名)6g、硬化促進剤(2PZ−CN、四国化成工業株式会社製、商品名)0.06gをアセトン10gに溶解させ、常温(25℃)で2時間攪拌した。その後、常温でアセトンを乾燥させた後、さらに真空乾燥機を用いて40℃で2時間乾燥させ、乳鉢で粉砕し、成形材料を得た。この成形材料4gを50mm×50mm×1mmの金型に入れ、油圧真空加熱プレス機で面圧0.2MPa、180℃/10分間プレスした後、オーブンで200℃/4時間硬化し、厚み1mmの均一な成形体を得た。
(実施例6)
実施例4に記載のリグニンを用いて実施例5と同様に成形体を作製し、厚み1mmの均一な成形体を得た。
(比較例5)
酢酸リグニン6g、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(YDCN−700−10、新日化エポキシ製造株式会社製、商品名)6g、硬化促進剤(2PZ−CN、四国化成工業株式会社製、商品名)0.06gをアセトン10gに加え常温(25℃)で24時間攪拌した。酢酸リグニンは全量溶解しなかったが、実施例5と同様に成形体を作製した。しかし、得られた成形体は脆く、不均一なものであった。
(比較例6)
クラフトリグニン6g、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(YDCN−700−10、新日化エポキシ製造株式会社製、商品名)6g、硬化促進剤(2PZ−CN、四国化成工業株式会社製、商品名)0.06gをアセトン10gに加え常温(25℃)で24時間攪拌した。クラフトリグニンは全量溶解しなかったが、実施例5と同様に成形体を作製した。しかし、クラフトリグニンとエポキシ樹脂が相溶せず、均一な成形体を作製することができなかった。
水蒸気爆砕法の原料としてパーム油製造時に発生する副産物を用いた本発明では、リグニン含有率はEFBでリグニン含有率26.3質量%、PKSで41.4質量%であり、リグニン収率はそれぞれ16.8質量%、14.9質量%であった。また、EFB、PKSからリグニンを抽出する際にパーム油と同等の油脂成分を分離することが可能であった。比較した杉のリグニン含有率は35.5質量%、稲わらでは12.1質量%であり、リグニン収率はそれぞれ7.7質量%、6.1質量%であった。杉は、リグニン含有率は高いもののリグニン収率が低く、稲わらでは原料のリグニン含有率が他の原料と比べ低かった。また、本発明で製造したリグニンは樹脂と均一に相溶し、エポキシ樹脂との均一な成形体を作製できた。一方、クラフトリグニン、酢酸リグニンを用いると、溶媒およびエポキシ樹脂と相溶せず、均一な成形体を作製できなかった。さらに、酢酸リグニンでは硬化反応が起こり難く、脆い成形体となった。したがって、水蒸気爆砕法の原料としてパーム油製造時に発生する副産物を用いる本発明では、工業的製造法として高効率でリグニンが得られ、かつ成形体の原料として利用可能であり、さらには、副産物としてパーム油同等の油脂成分を得ることができる製造方法であることが確認できた。

Claims (8)

  1. パームヤシ果実の繊維(Palm Fiber)、果実の種子であるPKS(Palm Kernel Shell)、果実を分離した後の房であるEFB(Empty Fruit Bunch)、およびパームヤシの幹から選ばれる一種又は二種以上からなる原料を用いたリグニン製造方法。
  2. 原料が、粉状、繊維状、又はチップ状である請求項1に記載のリグニン製造方法。
  3. 原料を、水蒸気の存在下で加熱処理し、加熱処理物を水洗、乾燥した後、有機溶媒で抽出し、有機溶媒を除去して固形物を得る請求項1又は2に記載のリグニン製造方法。
  4. 水蒸気の存在下で加熱処理するときの圧力が0.5〜4.0MPaである請求項3に記載のリグニン製造方法。
  5. 水蒸気の存在下で加熱処理するときの時間が1〜60分間である請求項3又は4に記載のリグニン製造方法。
  6. 請求項1〜5に記載の製造方法で得られるリグニンであって、重量平均分子量が100〜7000であるリグニン。
  7. リグニン中の硫黄原子含有率が2質量%以下である請求項6に記載のリグニン。
  8. 請求項1〜5に記載の製造方法で得られる加熱処理物又は抽出液、抽出液から有機溶媒を除去した固形物のいずれかから分離して得られる油脂の製造方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015157792A (ja) * 2014-02-25 2015-09-03 国立研究開発法人産業技術総合研究所 リグニン分解物の製造方法
WO2021024026A1 (en) * 2019-08-08 2021-02-11 Thai Eastern Pulp And Paper Co., Ltd. A method for preparing empty fruit bunch fiber in a paper and/or pulp production process
CN115315464A (zh) * 2020-03-20 2022-11-08 灯塔纸业有限公司 用于将木质素干燥和除臭的系统和方法

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