JP2014005276A - ペプチド誘導体を含有する緑内障の治療剤 - Google Patents

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敦 島崎
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Abstract

【課題】新たな作用機序を有する眼圧下降剤を探索すること。
【解決手段】下記一般式(1)ペプチド誘導体は前房内投与または点眼により、ウサギの眼圧を強力且つ持続的に下降させることから、新たな緑内障の治療剤となることが期待される。
Figure 2014005276

[式中、Rは2−ナフトイルアミノ基などを示し;Xは炭素原子などを示し;破線は二重結合などを示し;Yは−CHCO−などを示し;Zは共有結合などを示し;Rは2−メチルブチル基などを示す。]
【選択図】図1

Description

本発明は、ペプチド誘導体またはその塩を含有する緑内障治療剤に関する。
緑内障は、種々の病因により眼圧が上昇し、眼球の内部組織(網膜、視神経など)が障害を受けることで失明に至る危険性のある難治性の眼疾患である。緑内障の治療方法としては、眼圧下降療法が一般的であり、その代表的なものとして薬物療法、レーザー治療法、手術療法などが知られているが、長期に渡り眼圧をコントロールし続ける必要がある緑内障治療においては、薬物療法は特に重要である。
しかしながら、既存の薬物では眼圧をコントロールできない患者も存在し、新たな作用機序を有する強力な眼圧下降剤の開発が待たれている。
薬物によって眼圧を下降させるためには、該薬物を前房内に送達する必要があるが、その安全性の高さ故、その投与経路としては点眼が選択されることが通常である。しかしながら、点眼後に薬物が涙液によってウォッシュアウトされてしまうことや、角膜がバリアとして機能するために点眼した薬物の極一部しか前房内に移行しないことなどから、点眼以外の投与経路を実現するための眼科製剤の開発も進んでいる。
例えば、Pharmaceutics, 4(1), 197−211(2012)(非特許文献1)には、結膜下またはテノン嚢下に投与される持続製剤や、涙点プラグの形態をとる眼圧下降剤が開示されている。なお、眼圧下降剤を硝子体内などの後眼部へ投与することは一般的ではないが、非特許文献1については、神経保護作用を有する眼圧下降薬を硝子体内投与し得ることも開示されている。
心房性ナトリウム利尿ペプチド(trial atriuretic eptide:ANP)はアミノ酸28個からなるホルモンであり、Atrial Natriuretic Factor(ANF)とも呼ばれる。特許第2855143号公報(特許文献1)には、このANPの部分ペプチドを修飾したペプチド誘導体が開示されているが、これらのペプチド誘導体の眼圧下降作用を検討した報告は存在しない。
ところで、Neuropeptides, 12, 219−224(1988)(非特許文献2)には、ANP(ANF)をウサギに前房内投与したところ、縮瞳が認められたものの、眼圧には影響を与えなかったことが記載されており、ANPの前眼部への投与が眼圧を下降させない可能性が示唆されている。一方、Invest. Ophthalmol. Vis. Sci., 28(8), 1357−1364(1987)(非特許文献3)には、rANP(ラットANP)をウサギの硝子体内に投与したところ、眼圧下降が認められたことが記載されているが、同時に、rANPの部分ペプチドについては、これをウサギの硝子体内に投与しても眼圧下降が確認されなかったことも開示されている。
すなわち、非特許文献2および3には、ANPを前眼部に投与しても眼圧下降作用が得られないことが示唆され、さらには、その部分ペプチドについては、後眼部(硝子体)に投与しても眼圧を下降させ得ないことが記載されている。
特許第2855143号公報
Pharmaceutics, 4(1), 197−211(2012) Neuropeptides, 12, 219−224(1988) Invest. Ophthalmol. Vis. Sci., 28(8), 1357−1364(1987)
新たな作用機序を有する眼圧下降剤を探索することは興味深い課題である。
本発明者は、鋭意研究の結果、ANPの部分ペプチドを修飾したペプチド誘導体を前眼部に投与した場合に、強力かつ持続的な眼圧下降が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表されるペプチド誘導体(以下、単に「本ペプチド誘導体」ともいう)またはその塩を含有する緑内障治療剤(以下、単に「本治療剤」ともいう)である。
Figure 2014005276
[式中、Rは2−(2−ナフチル)エチルアミノ基、2−ナフチルアセチル基、2−ナフチルアセチルアミノ基、2−ナフチルアセチルアミノメチル基、2−ナフトイル基、2−ナフトイルメチル基、2−ナフトイルメチルアミノ基、2−ナフトイルアミノ基、2−ナフトイルアミノメチル基、2−ナフトキシアセチル基、2−ナフトキシアセチルアミノ基、2−ブロモアセチルフェニルアミノ基、2−クロロ−2−フェニルアセチルアミノ基または2−ブロモ−2−フェニルアセチルアミノ基を示し;Xは炭素原子または窒素原子を示し;Xが炭素原子の場合には破線は単結合または二重結合を示し、Xが窒素原子の場合には破線は単結合を示し;Yは−CH−、−CHNH−、−CHCHNH−、−CHCO−または−CO−を示し;ZはIleまたは共有結合を示し;Rは水素原子または2−メチルブチル基を示す。]
本ペプチド誘導体は、好ましくは、前記一般式(1)において、Zが共有結合を示す。
本ペプチド誘導体は、より好ましくは、前記一般式(1)において、Rは2−ナフチルアセチル基、2−ナフトイルアミノ基、2−ナフトキシアセチル基または2−ナフトキシアセチルアミノ基を示し;Xが炭素原子の場合には破線は二重結合を示し、Xが窒素原子の場合には破線は単結合を示し;Yは−CHNH−、−CHCO−または−CO−を示し;Zは共有結合を示し;Rは2−メチルブチル基を示す。
本ペプチド誘導体は、下記式(2)〜(25)で表される化合物であることが、さらに好ましい。
Figure 2014005276
Figure 2014005276
Figure 2014005276
本ペプチド誘導体は、下記式(26)で表される化合物(以下、単に「化合物A」ともいう)であることが、特に好ましい。
Figure 2014005276
また、本発明の1つの態様は、前眼部に投与されることを特徴とする本治療剤である。
また、本発明の他の態様は、点眼、前房内投与、結膜下投与、テノン嚢下投与、または結膜嚢もしくは涙点に投与されることを特徴とする本治療剤である。
また、本発明の他の態様は、剤型が点眼剤、眼軟膏、注射剤、眼内インプラント製剤または挿入剤であることを特徴とする本治療剤である。
後述する前房内投与試験および点眼試験の結果から明らかなように、化合物Aは前房内投与または点眼により、ウサギの眼圧を強力且つ持続的に下降させた。したがって、本ペプチド誘導体は新たな緑内障の治療剤となることが期待される。
化合物Aを正常眼圧ウサギに前房内投与した後の眼圧値の経時変化を示すグラフである。 化合物Aを正常眼圧ウサギ(自動眼圧測定系)に前房内投与した後の眼圧値の経時変化を示すグラフである。 化合物Aを正常眼圧ウサギに点眼した後の眼圧値の経時変化を示すグラフである。
本発明において、前記一般式(1)のArg、IleまたはAspは、それぞれL型またはD型のアルギニン、イソロイシンまたはアスパラギン酸を示す。
本発明において、前記一般式(1)は、前記一般式のZがIleである場合、「(N末端側)Arg−Ile−Asp−Arg−Ile(C末端側)」からなるペプチドのN末端側のArgのアミノ基の水素原子が下記式(a)の基に置換され、C末端側のIleのカルボキシ基のOHがNHR基に置換されている化合物を示す。
Figure 2014005276
本発明において、前記一般式(1)は、前記一般式のZが共有結合である場合、「(N末端側)Arg−Ile−Asp−Arg(C末端側)」からなるペプチドのN末端側のArgのアミノ基の水素原子が前記式(a)の基に置換され、C末端側のArgのカルボキシ基のOHがNHR基に置換されている化合物を示す。
本発明において、前記一般式(1)のArg、IleまたはAspは、すべてL型であることが好ましい。
本発明において、2−メチルブチル基は「(S)−2−メチルブチル基」または「(R)−2−メチルブチル基」のいずれをも意味するが、好ましくは「(S)−2−メチルブチル基」を意味する。
(A)本ペプチド誘導体は、下記一般式(1)で表される化合物において、各基が以下に示す基である化合物である。
Figure 2014005276
(A1)Rは2−(2−ナフチル)エチルアミノ基、2−ナフチルアセチル基、2−ナフチルアセチルアミノ基、2−ナフチルアセチルアミノメチル基、2−ナフトイル基、2−ナフトイルメチル基、2−ナフトイルメチルアミノ基、2−ナフトイルアミノ基、2−ナフトイルアミノメチル基、2−ナフトキシアセチル基、2−ナフトキシアセチルアミノ基、2−ブロモアセチルフェニルアミノ基、2−クロロ−2−フェニルアセチルアミノ基または2−ブロモ−2−フェニルアセチルアミノ基を示し;
(A2)Xは炭素原子または窒素原子を示し;
(A3)Xが炭素原子の場合には破線は単結合または二重結合を示し、Xが窒素原子の場合には破線は単結合を示し;
(A4)Yは−CH−、−CHNH−、−CHCHNH−、−CHCO−または−CO−を示し;
(A5)ZはIleまたは共有結合を示し;および
(A6)Rは水素原子または2−メチルブチル基を示す。
すなわち、本ペプチド誘導体は、前記一般式(1)で表される化合物において、上記(A1)、(A2)、(A3)、(A4)、(A5)および(A6)に列挙された各基を組み合わせたものである。
(B)本ペプチド誘導体の好ましい例として、前記一般式(1)においてZが共有結合を示す化合物、すなわち、下記一般式(1−2)で表される化合物において、各基が以下に示す基である化合物が挙げられる。
Figure 2014005276
(B1)Rは2−(2−ナフチル)エチルアミノ基、2−ナフチルアセチル基、2−ナフチルアセチルアミノ基、2−ナフチルアセチルアミノメチル基、2−ナフトイル基、2−ナフトイルメチル基、2−ナフトイルメチルアミノ基、2−ナフトイルアミノ基、2−ナフトイルアミノメチル基、2−ナフトキシアセチル基、2−ナフトキシアセチルアミノ基、2−ブロモアセチルフェニルアミノ基、2−クロロ−2−フェニルアセチルアミノ基または2−ブロモ−2−フェニルアセチルアミノ基を示し;
(B2)Xは炭素原子または窒素原子を示し;
(B3)Xが炭素原子の場合には破線は単結合または二重結合を示し、Xが窒素原子の場合には破線は単結合を示し;
(B4)Yは−CH−、−CHNH−、−CHCHNH−、−CHCO−または−CO−を示し;および
(B5)Rは水素原子または2−メチルブチル基を示す。
すなわち、本ペプチド誘導体の好ましい例は、前記一般式(1−2)で表される化合物において、上記(B1)、(B2)、(B3)、(B4)および(B5)に列挙された各基を組み合わせたものである。
(C)本ペプチド誘導体のより好ましい例として、前記一般式(1−2)において、各基が以下に示す基である化合物が挙げられる。
(C1)Rは2−ナフチルアセチル基、2−ナフトイルアミノ基、2−ナフトキシアセチル基または2−ナフトキシアセチルアミノ基を示し;
(C2)Xは炭素原子または窒素原子を示し;
(C3)Xが炭素原子の場合には破線は二重結合を示し、Xが窒素原子の場合には破線は単結合を示し;
(C4)Yは−CHNH−、−CHCO−または−CO−を示し;および
(C5)Rは2−メチルブチル基を示す。
すなわち、本ペプチド誘導体のより好ましい例は、前記一般式(1−2)で表される化合物において、上記(C1)、(C2)、(C3)、(C4)および(C5)に列挙された各基を組み合わせたものである。
(D)本ペプチド誘導体のさらに好ましい例として、前記一般式(1−2)において各基が以下に示す基である化合物が挙げられる。
(D1)Rは2−ナフトイルアミノ基を示し;
(D2)Xは炭素原子を示し;
(D3)破線は二重結合を示し;
(D4)Yは−CHCO−を示し;および/または
(D5)Rは(S)−2−メチルブチル基を示す。
すなわち、本ペプチド誘導体のさらに好ましい例は、前記一般式(1−2)で表される化合物において、前記条件(B)を充足し、且つ上記(D1)、(D2)、(D3)、(D4)および/または(D5)に列挙された各基を組み合わせたものである。
本ペプチド誘導体の具体例としては、特許第2855143号公報に開示された、前記式(2)で表される化合物(AP564)、前記式(3)で表される化合物(AP568)、前記式(4)で表される化合物(AP574)、前記式(5)で表される化合物(AP704)、前記式(6)で表される化合物(AP790)、前記式(7)で表される化合物(AP791)、前記式(8)で表される化合物(AP792)、前記式(9)で表される化合物(AP793)、前記式(10)で表される化合物(AP794)、前記式(11)で表される化合物(AP795)、前記式(12)で表される化合物(AP796)、前記式(13)で表される化合物(AP816)、前記式(14)で表される化合物(AP817)、前記式(15)で表される化合物(AP818)、前記式(16)で表される化合物(AP819)、前記式(17)で表される化合物(AP538)、前記式(18)で表される化合物(AP539)、前記式(19)で表される化合物(AP560)、前記式(20)で表される化合物(AP562)、前記式(21)で表される化合物(AP557)、前記式(22)で表される化合物(AP810)、前記式(23)で表される化合物(AP811)、前記式(24)で表される化合物(AP812)および前記式(25)で表される化合物(AP813)が挙げられるが、前記式(23)で表される化合物が特に好ましい。
本ペプチド誘導体の特に好ましい例は、前記式(23)で表される化合物の各アミノ酸がL型である前記式(26)の化合物(化合物A)である。
本ペプチド誘導体は、特許第2855143号公報に記載された方法に従って製造することもできるし、化合物Aについては、California Peptide Research, Inc.社から市販されているもの(AP−811/NPR−C receptor ligand)を用いることもできる。
本ペプチド誘導体の塩としては、医薬として許容される塩であれば特に制限はなく、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸などの無機酸との塩、酢酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸、アジピン酸、グルコン酸、グルコヘプト酸、グルクロン酸、テレフタル酸、メタンスルホン酸、乳酸、馬尿酸、1,2−エタンジスルホン酸、イセチオン酸、ラクトビオン酸、オレイン酸、パモ酸、ポリガラクツロン酸、ステアリン酸、タンニン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、硫酸ラウリルエステル、硫酸メチル、ナフタレンスルホン酸、スルホサリチル酸などの有機酸との塩;臭化メチル、ヨウ化メチルなどとの四級アンモニウム塩;臭素イオン、塩素イオン、ヨウ素イオンなどのハロゲンイオンとの塩;リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属との塩;カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属との塩;鉄、亜鉛などとの金属塩;アンモニアとの塩;トリエチレンジアミン、2−アミノエタノール、2,2−イミノビス(エタノール)、1−デオキシ−1−(メチルアミノ)−2−D−ソルビトール、2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、プロカイン、N,N−ビス(フェニルメチル)−1,2−エタンジアミンなどの有機アミンとの塩などが挙げられる。
また、本ペプチド誘導体またはその塩は、水和物または溶媒和物の形態をとっていてもよい。
本ペプチド誘導体またはその塩に幾何異性体または光学異性体が存在する場合は、当該異性体またはそれらの塩も本発明の範囲に含まれる。また、本ペプチド誘導体またはその塩にプロトン互変異性が存在する場合には、当該互変異性体またはそれらの塩も本発明の範囲に含まれる。
本ペプチド誘導体またはその塩(水和物または溶媒和物も含む)に結晶多形および結晶多形群(結晶多形システム)が存在する場合には、それらの結晶多形および結晶多形群(結晶多形システム)も本発明の範囲に含まれる。ここで、結晶多形群(結晶多形システム)とは、それら結晶の製造、晶出、保存などの条件および状態(なお、本状態には製剤化した状態も含む)により、結晶形が変化する場合の各段階における個々の結晶形およびその過程全体を意味する。
本発明において、緑内障には、原発性開放隅角緑内障、正常眼圧緑内障、房水産生過多緑内障、高眼圧症、急性閉塞隅角緑内障、慢性閉塞隅角緑内障、混合型緑内障、ステロイド緑内障、アミロイド緑内障、血管新生緑内障、悪性緑内障、水晶体の嚢性緑内障、台地状虹彩シンドローム(plateau iris syndrome)などが含まれる。
本発明において、緑内障治療剤とは、緑内障を治療および/または予防する医薬を意味する。また、本発明の緑内障治療剤には眼圧下降剤が含まれるものとする。
本発明において、本ペプチド誘導体は患者に対して経口的または非経口的に投与することができるが、非経口的に投与されることが好ましく、眼局所投与されることがさらに好ましく、前眼部に投与されることが特に好ましい。
本発明において、「前眼部に投与」とは、前房内に薬物を移行させるための眼局所投与であって、且つ、硝子体、網膜注射などの後眼部への薬物投与を含まない投与形態であって、(1)本ペプチド誘導体を点眼液または眼軟膏に製剤化して点眼(点入も含むものとする)すること、(2)本ペプチド誘導体を注射剤または眼内インプラント製剤に製剤化して前房内投与すること、(3)本ペプチド誘導体を注射剤または眼内インプラント製剤に製剤化して結膜下投与すること、(4)本ペプチド誘導体を注射剤または眼内インプラント製剤に製剤化してテノン嚢下投与すること、(5)本ペプチド誘導体を挿入剤に製剤化して結膜嚢(cul−de−sac)に投与すること、または(6)本ペプチド誘導体を眼内インプラント製剤(涙点プラグ)に製剤化して涙点に投与することを含むものとする。
本発明においては、本ペプチド誘導体は、必要に応じて製薬学的に許容され得る添加剤と共に、投与に適した剤型に製剤化される。経口投与に適した剤型としては、例えば、カプセル剤(capsules)、細粒剤(subtle granules)、顆粒剤(granules)、散剤(powder)、丸剤(pills)、錠剤(tablets)などが挙げられる。また、非経口投与に適した剤型としては、例えば、点眼剤、眼軟膏、注射剤、眼内インプラント用製剤(涙点プラグを含む)、挿入剤、貼布剤、ゲルなどが挙げられる。なお、これらは当該分野で汎用されている通常の技術を用いて調製することができる。さらに、本ペプチド誘導体は、マイクロスフェアーなどのDDS(ドラッグデリバリーシステム)化された製剤にすることもできる。
前述したように、本ペプチド誘導体は前眼部に投与されることが好ましいことから、本ペプチド誘導体の好ましい剤型は、点眼剤、眼軟膏、注射剤、眼内インプラント用製剤(涙点プラグを含む)または挿入剤である。
本ペプチド誘導体は、例えば、結晶セルロース、乳糖、ブドウ糖、D−マンニトール、無水酸水素カルシウム、デンプン、ショ糖等の賦形剤(diluents);カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポピドン、デンプン、部分アルファー化デンプン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等の崩壊剤(disintegrants);ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、アラビアゴム、デンプン、部分アルファー化デンプン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等の結合剤(binders);ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、含水二酸化ケイ素、硬化油等の滑沢剤(luburicants);精製白糖、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン等のコーティング剤(coating agents);クエン酸、アスパルテーム、アスコルビン酸、メントール等の矯味剤(flavoring substance)などを適宜選択して添加することで、カプセル剤、細粒剤、顆粒剤、散剤、丸剤または錠剤として調製することができる。
本発明において、点眼剤は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、濃グリセリンなどの等張化剤;リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、イプシロン−アミノカプロン酸などの緩衝化剤;ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などの界面活性剤;クエン酸ナトリウム、エデト酸ナトリウムなどの安定化剤;ベンザルコニウム塩化物、パラベンなどの防腐剤などから必要に応じて選択して用い、調製することができる。点眼液のpHは眼科製剤に許容される範囲内にあればよいが、通常4〜8の範囲内が好ましい。
本発明において、眼軟膏は、白色ワセリン、流動パラフィンなどの汎用される基剤を用い、調製することができる。
本発明において、注射剤は、塩化ナトリウムなどの等張化剤;リン酸ナトリウムなどの緩衝化剤;ポリオキシエチレンソルビタンモノオレートなどの界面活性剤;メチルセルロースなどの増粘剤などから必要に応じて選択して用い、調製することができる。
本発明において、眼内インプラント用製剤は、生体分解性ポリマー、たとえば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸・グリコール酸共重合体、ヒドロキシプロピルセルロースなどの生体分解性ポリマーを用い、調製することができる。なお、涙点プラグは、特表2011−525388号公報に開示された方法などで製造することができる。
本発明において、挿入剤は、生体分解性ポリマー、たとえばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸などの生体分解性ポリマーを本化合物とともに粉砕混合し、この粉末を圧縮成型することにより、調製することができ、必要に応じて、賦形剤、結合剤、安定化剤、pH調整剤などを用いることができる。
本発明において、本ペプチド誘導体の投与量は、剤型、投与すべき患者の症状の軽重、年令、体重、医師の判断などに応じて適宜変えることができるが、一般には、成人に対し1日あたり0.000001〜1000mgを1回または数回に分けて投与することができる。
本ペプチド誘導体を点眼剤として前眼部に投与する場合、一般には、成人に対し0.01〜10%(w/v)、好ましくは0.1〜10(w/v)、より好ましくは1〜5(w/v)の有効成分濃度のものを1日1回または数回投与することができる。また、本ペプチド誘導体を眼軟膏として前眼部に点眼(点入)する場合、一般には、成人に対し0.01〜10%(w/w)、好ましくは0.1〜10(w/w)、より好ましくは1〜5(w/w)の有効成分濃度のものを1日1回または数回投与することができる。
本ペプチド誘導体を注射剤として前眼部に投与する場合、一般には、成人に対し1日あたり0.000001〜1000mg、好ましくは0.00001〜100mg、より好ましくは0.0001〜10mgを1回または数回に分けて投与することができる。
本ペプチド誘導体を眼内インプラント用製剤(涙点プラグを含む)として前眼部に投与する場合、成人に対し0.000001〜1000mgの有効成分を含有する眼内インプラント用製剤(涙点プラグを含む)をインプラントすることができる。
本ペプチド誘導体を挿入剤として前眼部に投与する場合、成人に対し0.000001〜1000mgの有効成分を含有する挿入剤を挿入することができる。
以下に、薬理試験および製剤例の結果を示すが、これらの例は本発明をよりよく理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
[前房内投与試験−1]
化合物Aの前房内投与が正常眼圧のウサギの眼圧に及ぼす影響を検討した。
(試料調製)
・10−3M 化合物A溶液:1mgの化合物Aを5μLのジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、生理食塩液1.04mLを添加して調製した。なお、化合物Aについては、California Peptide Research, Inc.社から購入したものを使用した(以下、実施例において同じ)。
・10−4M 化合物A溶液:10−3M 化合物A溶液を0.5%DMSO含有生理食塩液で10倍希釈して調製した。
・基剤:0.5%DMSO含有生理食塩液を使用した。
(実験動物)
馴化を行った正常眼圧の日本白色ウサギ(系統:JW、性別:雄性)を用いた(一群6匹)。
(薬物投与方法および試験方法)
・10−3M 化合物A溶液投与群
薬物投与直前に上記実験動物(6匹)の両眼に0.4%塩酸オキシブプロカイン(商品名:ベノキシール(登録商標)点眼液0.4%)を点眼し、圧平式眼圧測定器を用いて眼圧測定を行い、これを初期眼圧とした。その後、マイクロシリンジを用いて各実験動物の片眼に、10−3M 化合物A溶液20μLを前房内投与した(対側眼は無処置)。前房内投与2、4または6時間後に、前述した方法と同様にして眼圧測定を行った。なお、眼圧は各3回測定し、その平均値を当該測定時間における眼圧値とした。
・10−4M 化合物A溶液投与群
投与薬物を10−4M 化合物A溶液とした以外は、10−3M 化合物A溶液投与群と同様である。
・基剤投与群
投与薬物を基剤とした以外は、10−3M 化合物A溶液投与群と同様である。
(試験結果)
試験結果を図1に示す。縦軸は初期眼圧からの眼圧変化値(mmHg)を示し、横軸は投与後の経過時間(hr)を示す。なお、基剤投与群、10−4M 化合物A溶液投与群、10−3M 化合物A溶液投与群の初期眼圧は、それぞれ17.3mmHg、17.0mmHgおよび16.8mmHgであった。また、データは1群6匹の平均値を示す。
なお、図1中、**P<0.01、***P<0.001 vs 基剤(Dunnett’s多重比較検定法)である。
図1から明らかなように、10−4M 化合物A溶液投与群および10−3M 化合物A溶液投与群では濃度依存的な眼圧下降が確認された。特に、10−3M 化合物A溶液投与群では、投与後6時間においても統計的に有意な眼圧下降が認められた。
(考察)
化合物Aの前房内投与は持続的に眼圧を下降させることから、何らかの方法で本ペプチド誘導体を前房内に送達せしめることで、持続的な眼圧下降が得られる可能性が示唆された。
[前房内投与試験−2]
自動眼圧測定系を用いて、化合物Aの前房内投与が正常眼圧のウサギの眼圧に及ぼす影響を検討した。
(試料調製)
前房内投与試験−1と同様である。
(実験動物)
Biol. Pharm. Bull., 31(5), 970−975(2008)に開示された方法に従い、眼内に埋め込まれた送信機により、測定された圧力値(眼圧値)が自動的にコンピューター上に受信・入力されるシステムを構築した。すなわち、インドメタシン10mg/kg腹腔内投与、ジクロード(登録商標)点眼液の点眼投与処置下においてケタミン40mg/kg筋肉内投与およびキシラジン4mg/kg筋肉内投与により全身麻酔を施した後、テレメトリー送信機(TA11PA−C40 Implant)を右ほほの皮下に挿入し縫合することで固定した。その後、テレメトリー送信機につながったカテーテルを眼瞼結膜まで皮下を通す。結膜を切開して上直筋の下を通し、18〜20G針を用いて角膜輪部、上直筋からともに5mm程度離れた強膜に穴を開けカテーテルを硝子体内に挿入する。その後、カテーテルを強膜に縫合することで固定し、結膜を縫合した。手術後は0.3%オフロキサシン(商品名:タリビッド(登録商標)点眼液0.3%)を術後3日まで、0.1%ジクロフェナクナトリウム(商品名:ジクロード(登録商標)点眼液0.1%)を術後7日まで処置した。試験実施前に、テレメトリー送信機からパソコンへのデータの受信・入力が正常に行われていることを確認した。
(薬物投与方法および試験方法)
・10−3M 化合物A溶液投与群
上記実験動物(6匹)の片眼に、10−3M 化合物A溶液20μLを前房内投与した(対側眼は無処置)。薬物投与前後の眼圧値は、自動眼圧測定系で測定したデータを解析し、算出した。すなわち、自動眼圧測定系では2.5分毎に眼圧が測定されるが、測定された眼圧値を1時間毎に平均し、当該測定時間の眼圧値とした。なお、投与直前の眼圧値を初期眼圧とした。
・基剤投与群
投与薬物を基剤とした以外は、10−3M 化合物A溶液投与群と同様である。
(試験結果)
試験結果を図2に示す。縦軸は初期眼圧からの眼圧変化値(mmHg)を示し、横軸は投与後の経過時間(hr)を示す。なお、データは1群6匹の平均値を示す。
図2から明らかなように、10−3M 化合物A溶液投与群では24時間以上の持続的な眼圧下降が確認された。
(考察)
上記試験結果から、本ペプチド誘導体を、注射剤または眼内インプラント製剤に製剤化して前房内投与することにより、持続的な眼圧下降が得られる可能性が示された。さらには、本ペプチド誘導体を、注射剤または眼内インプラント製剤に製剤化して結膜下またはテノン嚢下投与すること、挿入剤に製剤化して結膜嚢(cul−de−sac)に投与すること、眼内インプラント製剤(涙点プラグ)に製剤化して涙点に投与すること等により、前房内に送達せしめることによっても、持続的な眼圧下降作用が得られることが期待される。
[点眼試験]
化合物Aの点眼が正常眼圧のウサギの眼圧に及ぼす影響を検討した。
(試料調製)
・4% 化合物A溶液:20mgの化合物Aを12.5μLのDMSOに溶解し、MilliQ−水0.488mLを添加して調製した。
・基剤:2.5%DMSO含有MilliQ−水を使用した。
(実験動物)
馴化を行った正常眼圧の日本白色ウサギ(系統:JW、性別:雄性)を用いた(一群6匹)。
(薬物投与方法および試験方法)
・4% 化合物A溶液点眼群
点眼直前に上記実験動物(6匹)の両眼に0.4% 塩酸オキシブプロカイン(商品名:ベノキシール(登録商標)点眼液0.4%)を点眼し、圧平式眼圧測定器を用いて眼圧測定を行い、これを初期眼圧とした。その後、各実験動物の片眼に4% 化合物A溶液50μLを点眼した(対側眼は無処置)。点眼2、4または6時間後に、前述した方法と同様にして眼圧測定を行った。なお、眼圧は各3回測定し、その平均値を当該測定時間における眼圧値とした。
・基剤投与群
点眼薬物を基剤とした以外は、4% 化合物A溶液点眼群と同様である。
(試験結果)
試験結果を図3に示す。縦軸は初期眼圧からの眼圧変化値(mmHg)を示し、横軸は投与後の経過時間(hr)を示す。なお、基剤投与群および4% 化合物A溶液投与群の初期眼圧は、それぞれ16.3mmHgおよび16.1mmHgであった。また、データは1群6匹の平均値を示す。
なお、図3中、*P < 0.05 vs 基剤 (Aspin−Welch t検定法)である。
図3から明らかなように、4% 化合物A溶液点眼群では有意な眼圧下降が確認された。
(考察)
上記試験結果から、本ペプチド誘導体を点眼液に製剤化して点眼することにより、優れた眼圧下降作用が得られる可能性が示された。さらには、本ペプチド誘導体を眼軟膏に製剤化して点入することによっても、優れた眼圧下降作用が得られることが期待される。
[製剤例]
製剤例を挙げて本発明の薬剤をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの製剤例にのみ限定されるものではない。
(処方例1)
点眼剤(4%(w/v)) 100ml中
化合物A 4g
塩化ナトリウム 0.9g
リン酸水素ナトリウム水和物 適量
滅菌精製水 適量
滅菌精製水に化合物Aおよびそれ以外の上記成分を加え、これらを十分に混合することで点眼剤を調製する。化合物Aの配合量を変えることにより、化合物Aの濃度が0.1%(w/v)、0.5%(w/v)または1%(w/v)の点眼液を調製できる。
(処方例2)
眼軟膏(4%(w/w)) 100g中
化合物A 4g
流動パラフィン 適量
白色ワセリン 適量
均一に溶融した白色ワセリンおよび流動パラフィンに化合物Aを加え、これらを十分に混合した後に徐々に冷却することで眼軟膏を調製する。化合物Aの配合量を変えることにより、化合物Aの濃度が0.1%(w/w)、0.5%(w/v)または1%(w/v)の点眼液を調製できる。
本ペプチド誘導体は前房内投与または点眼により、ウサギの眼圧を強力且つ持続的に下降させることから、新たな緑内障の治療剤となることが期待される。

Claims (9)

  1. 下記一般式(1)で表されるペプチド誘導体またはその塩を含有する緑内障治療剤。
    Figure 2014005276
    [式中、Rは2−(2−ナフチル)エチルアミノ基、2−ナフチルアセチル基、2−ナフチルアセチルアミノ基、2−ナフチルアセチルアミノメチル基、2−ナフトイル基、2−ナフトイルメチル基、2−ナフトイルメチルアミノ基、2−ナフトイルアミノ基、2−ナフトイルアミノメチル基、2−ナフトキシアセチル基、2−ナフトキシアセチルアミノ基、2−ブロモアセチルフェニルアミノ基、2−クロロ−2−フェニルアセチルアミノ基または2−ブロモ−2−フェニルアセチルアミノ基を示し;
    Xは炭素原子または窒素原子を示し;
    Xが炭素原子の場合には破線は単結合または二重結合を示し、Xが窒素原子の場合には破線は単結合を示し;
    Yは−CH−、−CHNH−、−CHCHNH−、−CHCO−または−CO−を示し;
    ZはIleまたは共有結合を示し;
    は水素原子または2−メチルブチル基を示す。]
  2. 上記一般式(1)において、Zが共有結合を示す、請求項1記載の治療剤。
  3. 上記一般式(1)において、
    は2−ナフチルアセチル基、2−ナフトイルアミノ基、2−ナフトキシアセチル基または2−ナフトキシアセチルアミノ基を示し;
    Xが炭素原子の場合には破線は二重結合を示し、Xが窒素原子の場合には破線は単結合を示し;
    Yは−CHNH−、−CHCO−または−CO−を示し;
    Zは共有結合を示し;
    は2−メチルブチル基を示す、請求項1記載の治療剤。
  4. 前記ペプチド誘導体が下記式(2)〜(25)で表される、請求項1記載の治療剤。
    Figure 2014005276
    Figure 2014005276
    Figure 2014005276
  5. 前記ペプチド誘導体が下記式(26)で表される、請求項1記載の治療剤。
    Figure 2014005276
  6. 前眼部に投与されることを特徴とする、請求項1記載の治療剤。
  7. 点眼、前房内投与、結膜下投与、テノン嚢下投与、または結膜嚢もしくは涙点に投与されることを特徴とする、請求項6記載の治療剤。
  8. 剤型が点眼剤、眼軟膏、注射剤、眼内インプラント製剤または挿入剤であることを特徴とする、請求項6記載の治療剤。
  9. 前眼部に投与されることを特徴とする、請求項5記載の治療剤。
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