JP2014005373A - 熱可塑性エラストマー組成物及びそれを用いた鉄道車両用特別高圧ケーブル - Google Patents

熱可塑性エラストマー組成物及びそれを用いた鉄道車両用特別高圧ケーブル Download PDF

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Abstract

【課題】優れた機械的特性、耐熱性、耐油性、可撓性、及び難燃性を有するとともに、生産効率の高い熱可塑性エラストマー組成物を提供する。
【解決手段】樹脂成分として、酢酸ビニル含有量が20質量%以上のシラングラフト化エチレン−酢酸ビニル共重合体(A)と融点が80℃以上の結晶性ポリオレフィン系樹脂(B)とを50:50〜80:20の範囲内の割合で含有し、樹脂成分100質量部に対してシラン処理された金属水酸化物(C)を50〜200質量部含有し、(A)成分がシラン架橋しており、引張強さが7MPa以上、破断伸びが125%以上、加熱後の引張強さ残率及び破断伸び残率が70%以上、試験油に浸漬後の引張強さ残率及び破断伸び残率が70%以上であり、曲げ弾性率が90MPa以上であり、BS4066−3に準拠した垂直燃焼試験の炭化長が2.5m以下の熱可塑性エラストマー組成物。
【選択図】図1

Description

本発明は、熱可塑性エラストマー組成物に関し、特に鉄道車両用特別高圧ケーブルの被覆層に用いられる熱可塑性エラストマー組成物に関する。
鉄道用車両においては、走行速度の更なる向上のため、より高電圧な電力を架線からパンタグラフを介して車両内に取り込んでいる。この際、ケーブルとして、いわゆる特別高圧ケーブルが使用される(例えば特許文献1参照)。ケーブルは、「電気設備に関する技術基準を定める省令(電気設備基準)」において定格電圧により低圧、高圧、特別高圧の3段階に区別されており、特別高圧ケーブルは7000Vを超えるものに相当する。係る特別高圧ケーブルは、主にパンタグラフと車両床下部に設置されたトランスとを結ぶ引通しケーブルや車両間をつなぎ電力を供給する車両渡りケーブルとして使用されている。
この種の鉄道車両用特別高圧ケーブルにおいては、電気特性はもちろんのこと、外傷や摩耗などに対する機械的特性、耐熱性などの耐環境性、耐油性、難燃性そして、電車床下部の各機器の間をぬって配線されるため可撓性が要求される。これらの特性は、主にケーブルの被覆層(シース)に用いられるシース材(樹脂組成物)に起因する。
従来、特別高圧ケーブルのシース材には、樹脂成分としてクロロプレンゴムが使用されていた。クロロプレンゴムを使用した特別高圧ケーブルは燃焼時に不燃性のハロゲン系ガスなどを大量に発生させ、それにより特別高圧ケーブルの周囲における酸素を遮断し燃焼を防止することで難燃特性を発揮する。しかし、燃焼の際に発生するハロゲン系ガス等は有毒ガスを含んだ煙を大量に発生させるという問題がある。
この点、上記クロロプレンゴムに代えてポリオレフィン系樹脂を用いて、それに難燃剤である水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウム等の金属水酸化物を混合した樹脂組成物がある。この樹脂組成物においては、耐熱性や耐油性を備えるべく、電子線照射装置などによって樹脂成分が架橋されている。
特開2004−32852号公報
しかしながら、ポリオレフィン系樹脂を用いたシース材においては、架橋により弾性率が増大するため、形成されるシースが硬くなり、ケーブルの可撓性を得ることが困難となる。
また、ポリオレフィン系樹脂を用いたシース材(樹脂組成物)においては、架橋する工程を別途設ける必要性があるばかりか、架橋の際に電子線照射装置等の大掛かりな設備が必要となるため、ケーブルの生産効率が低下することになる。
本発明は、このような問題に鑑みて成されたもので、その目的は、優れた機械的特性、耐熱性、耐油性、可撓性、及び難燃性を有するとともに、生産効率の高い熱可塑性エラストマー組成物及びそれを用いた鉄道車両用特別高圧ケーブルを提供することにある。
本発明の第1の態様によれば、樹脂成分として、酢酸ビニルの含有量が20質量%以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体にシランカップリング剤がグラフト共重合されたシラングラフト化エチレン−酢酸ビニル共重合体(A)と、融点が80℃以上の結晶性ポリオレフィン系樹脂(B)とを、質量比(A:B)で50:50 〜 80:20の範囲内の割合で含有し、かつ、前記樹脂成分100質量部に対して、表面がシラン処理された金属水酸化物(C)を50質量部以上200質量部以下含有し、前記樹脂成分のうち前記シラングラフト化エチレン−酢酸ビニル共重合体(A)がシラン架橋しており、JIS C3005に準拠した試験における、引張強さが7MPa以上、破断伸びが125%以上、120℃で240時間の加熱後の引張強さ残率及び破断伸び残率がそれぞれ70%以上、70℃の試験油に4時間浸漬後の引張強さ残率及び破断伸び残率がそれぞれ70%以上であり、JIS K7171に準拠した試験における曲げ弾性率が90MPa以上であり、BS4066−3に準拠した垂直燃焼試験における炭化長が2.5m以下である熱可塑性エラストマー組成物が提供される。
本発明の第2の態様によれば、前記結晶性ポリオレフィン系樹脂(B)中に、シラン架橋した前記シラングラフト化エチレン−酢酸ビニル共重合体(A)が分散している第1の態様の熱可塑性エラストマー組成物が提供される。
本発明の第3の態様によれば、前記結晶性ポリオレフィン系樹脂(B)が、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−ヘキセン−1共重合体、エチレン−オクテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体の中から選ばれる1種類の樹脂、又は2種類以上の混合樹脂である第1の態様又は第2の態様の熱可塑性エラストマー組成物が提供される。
本発明の第4の態様によれば、前記金属水酸化物(C)が、水酸化マグネシウム又は水酸化アルミニウムである第1〜第3の態様の熱可塑性エラストマー組成物が提供される。
本発明の第5の態様によれば、第1〜第4の態様の熱可塑性エラストマー組成物からなる被覆層が、導体上に絶縁層を有する絶縁電線又は前記絶縁電線を複数撚り合わせてなるコア上に形成されている鉄道車両用特別高圧ケーブルが提供される。
本発明によれば、優れた機械的特性、耐熱性、耐油性、可撓性、及び難燃性を有するとともに、生産効率の高い熱可塑性エラストマー組成物及びそれを用いた鉄道車両用特別高圧ケーブルが得られる。
本発明の一実施形態に係る熱可塑性エラストマー組成物の製造方法を示す工程図である。 本発明の一実施形態に係る鉄道車両用特別高圧ケーブルの断面図である。
本発明者らは、上記目的を達成するため、動的架橋型の熱可塑性エラストマー組成物に着目した。動的架橋とは、2種以上の樹脂成分を含む混合物を混練しながら特定の樹脂成分を架橋させる方法であって、動的架橋型の熱可塑性エラストマー組成物としては、例えば流動成分であるポリオレフィン系樹脂の連続相中に架橋ゴム成分を分散させた組成物などがある。
この点、本発明者らは架橋ゴム成分の架橋方法について鋭意検討を行ったところ、シランカップリング剤によるシラン架橋が有効であることを見出した。
従来、シラン架橋は硫黄や有機過酸化物を用いた系と比べて架橋反応が遅いため、成形後にシラノール縮合触媒の存在下で水分と接触させて架橋させる工程が必要であった。しかし、ポリオレフィン系樹脂と、エチレン−酢酸ビニル共重合体にシラン化合物をグラフト共重合させたゴム成分と、金属水酸化物と、シラノール縮合触媒と、を混練することでシラン架橋を促進させ、ゴム成分を動的架橋できることを見出した。さらに、ゴム成分のみをシラン架橋してポリオレフィン系樹脂中にゴム成分の分散相を形成することによって、樹脂組成物の可撓性等の種々の特性を向上できることを見出した。以上の知見に基づいて本発明者は本発明を創作するに至った。
以下に、本発明の一実施形態に係る熱可塑性エラストマー組成物及びそれを用いたケーブルについて説明する。まず、本実施形態に係る熱可塑性エラストマー組成物の製造方法について、図1を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る熱可塑性エラストマー組成物の製造方法を示す工程図である。
(1)熱可塑性エラストマー組成物の製造方法
本実施形態の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法は、樹脂成分として、酢酸ビニルの含有量が20質量%以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体にシランカップリング剤がグラフト共重合されたシラングラフト化エチレン−酢酸ビニル共重合体(A)と、融点が80℃以上の結晶性ポリオレフィン系樹脂(B)とを、質量比で50:50 〜 80:20の割合とし、樹脂成分100質量部に対して、表面がシラン処理された金属水酸化物(C)を50質量部以上200質量部以下添加した混合物を形成する工程と、混合物を混練するとともに樹脂成分のうちシラングラフト化エチレン−酢酸ビニル共重合体(A)をシラン架橋する工程と、を有する。
[添加剤]
まず、製造方法において用いるシラングラフト化エチレン−酢酸ビニル共重合体(A)、結晶性ポリオレフィン系樹脂(B)、及び金属水酸化物(C)についてそれぞれ説明する。
(シラングラフト化エチレン−酢酸ビニル共重合体)
シラングラフト化エチレン−酢酸ビニル共重合体は、エチレン−酢酸ビニル共重合体にシランカップリング剤がグラフト共重合されたものであって、架橋可能な構造を有している。シラングラフト化エチレン−酢酸ビニル共重合体は、熱可塑性エラストマー組成物のベースポリマの1つであり、主に熱可塑性エラストマー組成物の可撓性を向上させる。
エチレン−酢酸ビニル共重合体は、酢酸ビニル含有量(以下、VA量ともいう)が低い場合、結晶性が高くなるため、耐熱性に優れる傾向がある。その反面、結晶性が高いため柔軟性や可撓性が劣ることになる。しかも、極性が小さいため耐油性も劣ることになる。エチレン−酢酸ビニル共重合体は、酢酸ビニル含有量が増加するにつれて結晶性が低下するため、耐熱性が低下する一方、柔軟性や可撓性が向上することになる。また、酢酸ビニル含有量の増加にともない極性が大きくなるため、耐油性も向上することになる。この点、本実施形態においては、エチレン−酢酸ビニル共重合体として、酢酸ビニル含有量が20質量%以上のものを用いる。エチレン−酢酸ビニル共重合体の架橋度は、シランカップリング剤の添加量や以下で説明する製造条件との関係において決定される。このため、エチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含有量の上限値は特に限定されないが、入手可能性の点において90質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、酢酸ビニル含
有量が20質量%以上30質量%以下のエチレン−酢酸ビニル共重合体を用いることが好ましい。VA量が20質量%未満のエチレン−酢酸ビニル共重合体は、結晶性が大きく硬いため、熱可塑性エラストマー組成物の可撓性などの特性を低下させることになる。なお、エチレン−酢酸ビニル共重合体としては、上記VA量の範囲内である限り、分子量や溶融粘度には特に限定がなく、任意のものを使用することができる。
また、上記エチレン−酢酸ビニル共重合体は、その一部に不飽和カルボン酸又はその誘導体を共重合させたものを用いることもできる。不飽和カルボン酸又はその誘導体を共重合されたエチレン−酢酸ビニル共重合体においては、不飽和カルボン酸又はその誘導体と金属水酸化物(C)との間で反応が生じ、密着性が向上することによって、熱可塑性エラストマー組成物の機械的強度などの機械的特性をさらに向上させることができる。不飽和カルボン酸又はその誘導体は、特に限定されないが、無水マレイン酸が好ましい。また、共重合させる量は任意であるが、エチレン−酢酸ビニル共重合体に対して、0.5質量%以上10質量%以下とすることが好ましい。
シランカップリング剤は、上記エチレン−酢酸ビニル共重合体に架橋可能な構造を導入するものであって、上記エチレン−酢酸ビニル共重合体に反応可能な基(反応性官能基)及びシラノール縮合によりシラン架橋する基(加水分解性基)を有する。反応性官能基としては、ビニル基、アミノ基、エポキシ基、アクリル基、メルカプト基などがある。加水分解性基としては、メトキシ基やエトキシ基などのアルコキシ基がある。シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン等のビニルシラン化合物、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フエニルーγ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン化合物、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のエポキシシラン化合物、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリルシラン化合物、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィドなどのポリスルフィドシラン化合物、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのメルカプトシラン化合物等を挙げることができる。
(結晶性ポリオレフィン系樹脂)
結晶性ポリオレフィン系樹脂(B)は、その構造中に結晶状態を含んでおり、所定の融点を有する樹脂である。結晶性ポリオレフィン系樹脂(B)は、上記シラングラフト化エチレン−酢酸ビニル共重合体に混合される樹脂であって、主に熱可塑性エラストマー組成物の機械的特性、耐熱性、耐油性を向上させる。本実施形態においては、融点が80℃以上の結晶性ポリオレフィン系樹脂(B)を用いる。融点が80℃未満の場合、所定の耐熱性を得ることが困難となるばかりか耐油性を得ることも困難となる。ここで、融点は、示差走査熱量分析(DSC法)により昇温速度10℃/minの条件で測定される温度を示す。
融点が80℃以上の結晶性ポリオレフィン系樹脂(B)としては、公知のものを用いることが可能であり、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−ヘキセン−1共重合体、エチレン−オクテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体の中から選ばれる1種類の樹脂、又は2種類以上の混合樹脂であることが好ましい。上記ポリプロピレンとしては、ホモポリマーの他にエチレンに代表されるα−オレフィンを共重合したブロック共重合体やランダム共重合体およびエチレンプ
ロピレンゴムに代表されるゴム成分を重合段階で導入したポリプロピレンを含むものとする。上記エチレン−酢酸ビニル共重合体としては結晶性を有した酢酸ビニル含有量が20wt%より少ないものを用いることができる。また、その他に使用できるものとしては低密度ポリエチレン、ポリブテン、ポリ−4−メチル−ペンテン−1、エチレン−ブテン−ヘキセン三元共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体などが挙げられる。
結晶性ポリオレフィン系樹脂(B)の融点の上限値は特に限定されないが、上記で列挙した樹脂の融点を考慮すると、200℃以下とすることが好ましい。
また、上記結晶性ポリオレフィン系樹脂(B)は、その一部に不飽和カルボン酸又はその誘導体を共重合させたものを用いることもできる。不飽和カルボン酸又はその誘導体を共重合された結晶性ポリオレフィン系樹脂においては、不飽和カルボン酸又はその誘導体と金属水酸化物(C)との間で反応が生じ、密着性が向上することによって、熱可塑性エラストマー組成物の機械的強度などの機械的特性をさらに向上させることができる。不飽和カルボン酸又はその誘導体は、特に限定されないが、無水マレイン酸が好ましい。また、共重合させる量は任意であるが、結晶性ポリオレフィン系樹脂(B)に対して、0.5質量%以上10質量%以下とすることが好ましい。
(金属水酸化物)
金属水酸化物(C)は、熱可塑性エラストマー組成物に難燃性を付与する難燃剤である。さらに、シラノール縮合触媒とともにシラン架橋を促進させ、混練中のシラン架橋(動的架橋)を可能にする。金属水酸化物のシラン架橋を促進させる機構としては、詳細は不明であるが、金属水酸化物に含まれる水分が、エチレン−酢酸ビニル共重合体にグラフト共重合されたシランカップリング剤中の加水分解性基(例えばアルコキシ基など)の加水分解を促進させ、シラノール縮合触媒がシラノール基の脱水縮合を促進するものと考えられる。
また、本実施形態においては、熱可塑性エラストマー組成物への分散性の観点から、表面が処理された金属水酸化物を用いる。表面処理としては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、脂肪酸又は脂肪酸金属塩等の表面処理剤による表面処理があるが、樹脂と金属水酸化物との密着性を向上させるとともに耐熱性を向上させる点から、シランカップリング剤により表面がシラン処理された金属水酸化物を用いる。表面処理されていない金属水酸化物やシランカップリング剤以外で表面処理された金属水酸化物においては、熱可塑性エラストマー組成物の耐熱性が劣化することとなり、高温によって著しい変形が生じることになる。
金属水酸化物としては、例えば水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム等があるが、その中でも難燃効果の高い水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムが好ましい。
また、金属水酸化物の平均粒子径としては、機械的特性、分散性、難燃性の点から4μm以下のものが好ましい。
金属水酸化物の表面処理方法としては、湿式法、乾式法、直接混練法などの公知の方法を用いることができる。
シランカップリング剤の表面処理量は特に限定されないが、金属水酸化物に対して、0.1質量%以上0.5質量%以下とすることが好ましい。
また、金属水酸化物を表面処理するシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン等のビニルシラン化合物、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フエニルーγ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン化合物、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のエポキシシラン化合物、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリルシラン化合物、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィドなどのポリスルフィドシラン化合物、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのメルカプトシラン化合物等を用いることができる。
[製造工程]
(シラングラフト化エチレン−酢酸ビニル共重合体の準備工程S10)
まず、所定のVA量のシラングラフト化エチレン−酢酸ビニル共重合体(A)を準備する。図1のS10に示すように、所定のVA量のエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)に対してシランカップリング剤を混合し、グラフト共重合させることによってシラングラフト化エチレン−酢酸ビニル共重合体(シラングラフト化EVA)を製造する。具体的には、酢酸ビニル含有量が20質量%以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体と、シランカップリング剤と、遊離ラジカル発生剤とを混合し、80℃〜200℃の温度で溶融混練することでグラフト共重合する。グラフト共重合においては、加熱により遊離ラジカル発生剤が熱分解してラジカルを発生させ、そのラジカルによってエチレン−酢酸ビニル共重合体にシランカップリング剤がグラフト共重合されることになる。
グラフト共重合において、シランカップリング剤の添加量は特に限定されないが、エチレン−酢酸ビニル共重合体100質量部に対して、0.5質量部以上10質量部以下とすることが好ましい。0.5質量部未満の場合では、エチレン−酢酸ビニル共重合体への加水分解性基の導入が少ないため、シラン架橋の十分な効果を得ることが困難となる。一方、10質量部を超える場合では、シラングラフト化エチレン−酢酸ビニル共重合体の加工性が低下する傾向になる。
グラフト共重合において、添加される遊離ラジカル発生剤としては、例えばジクミルパーオキサイドなどの有機過酸化物を用いることができる。遊離ラジカル発生剤の添加量は、エチレン−酢酸ビニル共重合体100質量部に対して、0.001質量部以上3.0質量部以下であることが好ましい。0.001質量部未満の場合、エチレン−酢酸ビニル共重合体に対してシランカップリング剤をグラフト共重合することが困難となり、シラン架橋の十分な効果を得ることが困難となる。3.0質量部を超える場合、エチレン−酢酸ビニル共重合体のスコーチが生じやすくなる。
(混合工程S20)
次に、図1のS20に示すように、樹脂成分として、酢酸ビニル含有量が20質量%以上のシラングラフト化EVA(A)及び融点が80℃以上の結晶性ポリオレフィン系樹脂(B)と、表面がシラン処理された金属水酸化物(C)と、シラノール縮合触媒と、を混合して、混合物を形成する。
本実施形態においては、樹脂成分として、シラングラフト化エチレン−酢酸ビニル共重合体(A)と結晶性ポリオレフィン系樹脂(B)との質量比(A:B)を、50:50
〜 80:20の範囲内の割合とする。すなわち、樹脂成分を100質量部とするように
、(A)成分の含有量を50質量部〜80質量部、(B)成分の含有量を50質量部〜20質量部とする。(A)成分の含有量が50質量部未満となり、(B)成分の含有量が50質量部を超える場合、熱可塑性エラストマー組成物の良好な可撓性を得ることが困難となる。一方、(A)成分の含有量が80質量部を超え、(B)成分の含有量が20質量部未満となる場合、熱可塑性エラストマー組成物の成形性が低下して、押出し外観が悪化する。
上記樹脂成分において、(A)成分と(B)成分との質量比(A:B)が上記範囲内である限りは、(A)成分及び(B)成分以外に他のポリマを含有することも可能である。
金属水酸化物(C)の添加量は、上記樹脂成分100質量部対して、50質量部以上20質量部以下とする。添加量が50質量部未満となると、熱可塑性エラストマー組成物の難燃性が低下する一方、200質量部を超えると、可撓性や機械的特性(機械的強度等)が低下する。
シラノール縮合触媒は、シラングラフト化エチレン−酢酸ビニル共重合体の架橋速度を向上させる触媒である。シラノール縮合触媒としては、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクタエート、酢酸第1錫、カプリル酸第1錫、カプリル酸亜鉛、ナフテン酸鉛、ナフテン酸コバルト等があり、その添加量は触媒の種類によるが、樹脂成分100質量部に対して0.001〜0.1質量部とすることが好ましい。シラノール縮合触媒の添加方法としては、そのまま添加する方法以外にエチレン−酢酸ビニル共重合体や結晶性ポリオレフィン系樹脂に予め混ぜたマスターバッチを使用する方法などがある。
なお、上記添加剤以外に、必要に応じてプロセス油、加工助剤、難燃助剤、架橋剤、架橋助剤、酸化防止剤、滑剤、無機充填剤、相溶化剤、安定剤、カーボンブラック、着色剤等の添加物を加えることも可能である。
また、シラングラフト化エチレン−酢酸ビニル共重合体(A)、結晶性ポリオレフィン系樹脂(B)および金属水酸化物(C)の三成分を混練する時の順序は任意であり、(1)(A)成分と(C)成分とを先に混練し、(B)成分を後に加える方法、(2)(A)成分と(B)成分とを先に混練し、(C)成分を後に加える方法、(3)全てを一括して混練する方法などがある。また、シラノール縮合触媒は最後に加えるのが最適である。その他、酸化防止剤や着色剤などの配合剤はどのタイミングで加えても良い。
(混練・シラン架橋工程S30)
次に、図1のS30に示すように、上記混合物を混練するとともに、樹脂成分のうち、シラングラフト化エチレン−酢酸ビニル共重合体(A)をシラン架橋する。
混合物の混練においては、結晶性ポリオレフィン系樹脂(B)中に、シラングラフト化エチレン−酢酸ビニル共重合体(A)を分散させることによって、(B)成分を連続相として、(A)成分を連続相中に分散する分散相とすることが好ましい。本実施形態において、上記混合物を混練する方法は特に限定されないが、ニーダー、バンバリーミキサー、ロール、二軸押出機などの汎用のものが使用できる。この中でも、ニーダーにより混練することが好ましい。ニーダーによれば、混練時間の調整が可能であり、二軸押出機と比較して長時間の混練が可能である。このため、シランカップリング剤同士の加水分解性基を近接に配置して、架橋度を向上することができる。また、ニーダーによれば、二軸押出機のスクリューと比較して、ブレードのクリアランスが大きい。このため、添加剤が押し潰されて塊を形成するような不具合が生じにくく、分散性を向上させ、機械特性や難燃性を向上することができる。また、ニーダーによれば、低速での混練が可能となる。このため
、材料に作用するせん断力、高分子材料への機械的ダメージを低く抑制することができる。しかも、混練による発熱も抑制し、温度調整を容易にすることで、高分子材料の熱劣化も抑制することができる。
また、混練条件としては、例えば加熱温度を160℃以上250℃以下、スクリューの回転数を10rpm以上50rpm以下、触媒添加後の混練時間を5分以上30分以下とすることが好ましい。
さらに、混合物の混練とともにシラン架橋を行う。シラン架橋においては、架橋可能な構造を有するシラングラフト化エチレン−酢酸ビニル共重合体(A)が架橋する。(A)成分には、シランカップリング剤がグラフト共重合されているため、アルコキシ基等の加水分解性基が導入されている。加水分解性基は加水分解することによって、シラノール基となり、シラノール縮合(脱水縮合)を起こし架橋する。一方、架橋構造が導入されていない結晶性ポリオレフィン系樹脂(B)は、非架橋のまま存在することになる。すなわち、熱可塑性エラストマー組成物においては、シラン架橋した(A)成分がゴム成分となる一方、非架橋の(B)成分が流動成分となる。この結果、(B)成分は連続相(海相)となり、(A)成分は連続相に分散する分散相(島相)となる。また、本実施形態においては、ニーダーにより混練されることで、分散相が微細となるとともに連続相中に均一に分布することになる。
本実施形態においては、エチレン−酢酸ビニル共重合体とシランカップリング剤とを予めグラフト共重合してシラングラフト化エチレン−酢酸ビニル共重合体を調整することで、結晶性ポリオレフィン系樹脂(B)へのシランカップリング剤のグラフト共重合を防止することができる。このため、シラン架橋の際に、結晶性ポリオレフィン系樹脂(B)の架橋を防止して、エラストマー組成物の流動性の低下を抑制することができる。
また、シラングラフト化エチレン−酢酸ビニル共重合体(A)のシラン架橋前に、結晶性ポリオレフィン系樹脂(B)及び金属水酸化物(C)を添加し、混練することで、結晶性ポリオレフィン系樹脂(B)へのシラングラフト化エチレン−酢酸ビニル共重合体(A)の分散性を向上することができる。また分散性の向上にともない、架橋によるシラングラフト化エチレン−酢酸ビニル共重合体(A)の粗大化を抑制し、エラストマー組成物の押出外観や種々の特性の低下を抑制することができる。
また、混練中にシラン架橋を同時に行えるため、製造工程を簡略化することができる。さらに、シランカップリング剤によるシラン架橋のため、従来必要とされた電子線照射装置等の大型の設備を必要としないため、生産効率を向上することができる。
なお、上記実施形態においては、グラフト共重合工程と、混練・シラン架橋工程とを別々に分けて行う場合について説明したが、2つの工程を一度に行うことも可能である。
(2)熱可塑性エラストマー組成物
上述した製造方法により得られる熱可塑性エラストマー組成物は、樹脂成分として、酢酸ビニルの含有量が20質量%以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体にシランカップリング剤がグラフト共重合されたシラングラフト化エチレン−酢酸ビニル共重合体(A)と、融点が80℃以上の結晶性ポリオレフィン系樹脂(B)とを、質量比(A:B)で50:50 〜 80:20の範囲内の割合で含有し、かつ、樹脂成分100質量部に対して、表面がシラン処理された金属水酸化物(C)を50質量部以上200質量部以下含有し、樹脂成分のうちシラングラフト化エチレン−酢酸ビニル共重合体(A)がシラン架橋している。
そして、本実施形態の熱可塑性エラストマー組成物は、ケーブルの被覆層に用いた場合、JIS C3005に準拠した試験における、引張強さが7MPa以上、破断伸びが1
25%以上となり、所定の機械的特性を有する。試験条件は、試料形状をダンベル3号として、クロスヘッド速度200mm/minで行う。
また、JIS C3005に準拠した試験における、120℃で240時間の加熱後の引張強さ残率及び破断伸び残率がそれぞれ70%以上であり、所定の耐熱性を有する。試験条件は、試料形状をダンベル3号として、クロスヘッド速度200mm/minで行う。
また、JIS C3005に準拠した試験における、70℃の試験油に4時間浸漬後の引張強さ残率及び破断伸び残率がそれぞれ70%以上であり、所定の耐油性を有する。試験条件は、試料形状をダンベル3号として、クロスヘッド速度200mm/minで行う。
また、JIS K7171に準拠した試験における曲げ弾性率が90MPa以上であり、所定の可撓性を有する。試験条件は、試料形状を80mm×10mm×4mmの短冊状として、クロスヘッド速度を1mm/minで圧縮試験を行い、得られた応力−歪み曲線の弾性領域より弾性率を算出する。
また、BS4066−3に準拠した垂直難燃試験における炭化長が2.5m以下であり、所定の難燃性を有する。本実施形態においては、BS4066−3に準拠した垂直難燃試験を行うが、布設するサンプル、布設方法、及び判定はBS6853に準拠する。具体的には、長さ3.5m、外径54mmのケーブルを1条布設し、バーナーの底部縁からの燃焼距離を測定する。
本実施形態の熱可塑性エラストマー組成物によれば、所定の機械的特性、耐熱性、耐油性、可撓性、難燃性が得られる。また、樹脂成分としてハロゲンを含有しない樹脂を、難燃剤として金属水酸化物をそれぞれ用いているため、燃焼にともなう有毒ガスの発生を防止することができる。また、熱可塑性エラストマー組成物は、押出成形する際の加熱により溶融し容易に成形することができる。
本実施形態の熱可塑性エラストマー組成物において、シラン架橋したシラングラフト化エチレン−酢酸ビニル共重合体(A)が、結晶性ポリオレフィン系樹脂(B)中に分散していることが好ましい。この構成によれば、非架橋であって流動成分である(B)成分中に、シラン架橋した(A)成分が分散するため、押出成形時の押出外観が良好となる。
(3)特別高圧ケーブル
次に、上記熱可塑性エラストマー組成物からなる被覆層(シース)を備える特別高圧ケーブルについて説明する。図2は、本発明の一実施形態に係る特別高圧ケーブルの断面図を示す。図2に示すように、特別高圧ケーブル1は、導体11上に内部半導電層12を介して被覆形成される絶縁層13を有する絶縁電線10と、絶縁電線10の外周に、外部半導電層20と、遮蔽層30と、押えテープ40と、シース50と、を有する。
導体11としては、例えば、直径0.45mmのスズメッキ軟銅線を集合撚りした集合撚り線を用いることができる。内部半導電層12としては、例えば、半導電性テープを巻き回したもの及び半導電性ゴムを用いることができる。絶縁層13としては、EPゴム、塩化ビニル、架橋ポリエチレン、シリコンゴム、フッ素系材料を用いることができるが、電気特性及び可撓性を考慮するとEPゴムが好ましい。外部半導電層20としては、例えば半導電性ゴムをテープ巻きしたものを用いることができる。遮蔽層30としては、例えばスズメッキ軟銅線を交互に編んだ編組の構造を用いることができるが、上記軟銅線をスパイラル状に横巻きした横巻き構造であってもよい。押えテープ40としては布又は不織
布からなるテープを巻き回したものを用いることができる。そして、シース50としては上記熱可塑性エラストマー組成物を用いる。
上記特別高圧ケーブルの製造方法としては、内部半導電層12を被覆した導体11の上に絶縁体13を押出被覆し、絶縁層13の上に外部半導電層20、遮蔽層30、押えテープ40の順に形成する。そして、形成された押えテープ40上に、加熱した熱可塑性エラストマー組成物を所定の厚さで押出被覆して、シース50を形成し、本実施形態の特別高圧ケーブルを製造する。
なお、本実施形態の熱可塑性エラストマー組成物は、絶縁層13にも適用可能であるが、シース50に適用することで、特に優れた成形性、高い機械的特性、耐熱性、耐油性、可とう性、難燃性を有する特別高圧ケーブルを形成することができる。また、図2においては、1本の絶縁電線10を使用する例を用いて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、1本の絶縁電線に代えて複数本の絶縁電線を撚り合わせてなるコアを用いることもできる。
以下の方法および条件で、本発明に係る熱可塑性エラストマー組成物及びケーブルを製造した。これらの実施例は、本発明に係る熱可塑性エラストマー組成物及びケーブルの一例であって、本発明はこれらの実施例により限定されない。
まず、シラングラフト化エチレン−酢酸ビニル共重合体(A)、結晶性ポリオレフィン系樹脂(B)、及び金属水酸化物(C)を準備する。
シラングラフト化エチレン−酢酸ビニル共重合体(A)としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体に対して、シランカップリング剤を混合し、グラフト共重合させたものを用いた。具体的には、所定の酢酸ビニル含有量(以下、VA量とする)のエチレン−酢酸ビニル共重合体100質量部に対して、シランカップリング剤のビニルトリメトキシシランと有機過酸化物のジクミルパーオキサイドとを、それぞれ3質量部、0.01質量部、又は5質量部、0.02質量部添加し混合して、これらの混合物を、200℃の40mm押出機(L/D=24)で滞留時間が約5分となるように押出し、グラフト反応させて、所定のVA量のシラングラフト化エチレン−酢酸ビニル共重合体を得た。本実施例では、VA量が25質量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体(EV360、三井デュポンポリケミカル製)、VA量が28質量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体(EV260、三井デュポンポリケミカル製)を用いて、所定のVA量のシラングラフト化エチレン−酢酸ビニル共重合体(シラングラフト化EVA)を得た。
また、結晶性ポリオレフィン系樹脂(B)としては、融点が94℃のエチレン−酢酸ビニル共重合体(P1007、三井デュポンポリケミカル製、VA量:10質量%)、融点が84℃のエチレン−酢酸ビニル共重合体(EV450、三井デュポンポリケミカル製、VA量:19質量%)を用いた。
また、金属水酸化物(C)としては、表面がシラン処理されたMg(OH)(マグシーズS4、神島化学工業株式会社製)、表面がシラン処理されたAl(OH)(B1403−ST、日本軽金属株式会社製)を用いた。
(実施例1)
実施例1では、以下の表1に示すように、(A)成分としてVA量が28質量%のシラングラフト化エチレン−酢酸ビニル共重合体80質量部、(B)成分として融点94℃のエチレン−酢酸ビニル共重合体20質量部、(C)成分として水酸化マグネシウムMg(
OH)(シラン処理)60質量部、シラノール縮合触媒のジ−n−ブチル錫ジラウレート(昭和化学株式会社製)0.2質量部、及び酸化防止剤のペンタエルスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](IRGANOX1010、長瀬産業株式会社製)2質量部を、55Lワンダーニーダーに一括して投入し、混合した。投入された原料を、55Lワンダーニーダーにより温度200℃、回転数30rpmで混練し、(A)成分のみを架橋することで、実施例1の熱可塑性エラストマー組成物を得た。
また、得られた実施例1の熱可塑性エラストマー組成物を用いてケーブルを製造した。具体的には、180℃に予熱した40mm押出機(L/D=24)を用いて、ケーブルコアに、上記熱可塑性エラストマー組成物を厚さ1.5mmで押出被覆し、被覆層(シース)を形成して、実施例1のケーブルを製造した。なお、ケーブルコアとしては、外径2mmの銅導体にポリエチレンを厚さ0.8mmで被覆したものを、介材と共に4心撚合わせ、クラフト紙テープにより押え巻きを施したものを使用した。
(実施例2〜8)
実施例2〜8では、上記表1に示すように、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の種類や添加量を変更した以外は、実施例1と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物及びケーブルを製造した。
(評価方法)
得られた実施例1〜8のケーブルについて、以下に示される試験方法により、そのシースの各種特性を評価した。
〈成形性〉
熱可塑性エラストマー組成物の成形性としては、ケーブルコアにシースを押出形成する際の外観で判断し、合格を「○」、不合格を「×」とした。
実施例1〜8の熱可塑性エラストマー組成物の成形性を評価したところ、良好な外観であり、合格「○」であった。
〈機械的特性、耐熱性、耐油性〉
実施例1〜8のケーブルからシースのみをサンプリングし、厚さ1mmのシートに切削加工して、JISC3005に準拠して、機械的特性、耐熱性、及び耐油性を評価した。
機械的特性としては、引張強さが7MPa以上、破断伸びが125%以上のものを合格とした。
耐熱性としては、恒温槽内において、シースを120℃、240時間加熱して、引張強さ残率及び破断伸び残率が70%以上であるものを合格とした。
耐油性としては、試験油であるlRM902号油に、シースを70℃、4時間浸漬させ、引張強さ残率及び破断伸び残率が65%以上であるものを合格とした。
実施例1〜8のシースを評価したところ、いずれのシースにおいても、機械的特性において、引張強さが7MPa以上、破断伸びが125%以上であり、優れた機械的特性を有することがわかった。
また、耐熱性においても同様に、引張強さ残率及び破断伸び残率が70%となり、優れた耐熱性を有することがわかった。
また、耐油性においても、引張強さ残率及び破断伸び残率が70%以上であり、優れた耐油性を有することがわかった。
〈可撓性〉
可撓性は、JlS K7171に準拠して評価し、曲げ弾性率が90MPa以下のもの
を合格とした。
実施例1〜8のケーブルを評価したところ、曲げ弾性率が90MPa以下であり、優れた可撓性を有することがわかった。
〈難燃性〉
難燃性はBS4066−3に準拠して垂直燃焼試験(1条布設)を行い、炭化長2.5m以下を合格とした。ただし、垂直燃焼試験に際しては、布設するサンプル、布設方法、及び判定はBS6853に準拠した。
実施例1〜8のケーブルを評価したところ、炭化長が2.5m以下であり、優れた難燃性を有することがわかった。
〈架橋の有無〉
実施例1〜8のシースについて、シラン架橋の有無を確認した。具体的には、130℃の熱キシレン中で24時間シース材の抽出を行って、残存不溶ポリマがあれば架橋が導入されたと判定し「○」として、残存不溶ポリマがなければ架橋が導入されなかったと判定し「×」とした。
実施例1〜8のケーブルでは残存不溶ポリマが確認され、シラングラフト化エチレン−酢酸ビニル共重合体(A)が架橋していることが確認された。
〈モルフォロジー〉
実施例1〜8のシースにおける、シラングラフト化エチレン−酢酸ビニル共重合体(A)と結晶性ポリオレフィン系樹脂(B)との混合の具合(分散性)を評価した。具体的には、シースの薄膜切片を染色した後、シースの微細組織を透過型電子顕微鏡によって観察し、シラングラフト化エチレン−酢酸ビニル共重合体(A)のモルフォロジーが分散相の場合は「○」、連続相の場合は「×」とした。
実施例1〜8のケーブルでは、結晶性ポリオレフィン系樹脂(B)中に、シラングラフト化エチレン−酢酸ビニル共重合体(A)が分散相となっていることが確認された。
以上の試験による特性の評価結果を以下の表2に示す。表2に示すように、実施例1〜8のケーブルは、成形性、機械的特性、耐熱性、耐油性、可撓性、難燃性に優れることがわかった。また、実施例1〜8のケーブルは、シラングラフト化エチレン−酢酸ビニル共重合体(A)の架橋が確認されるとともに、結晶性ポリオレフィン系樹脂(B)の連続層に、シラングラフト化エチレン−酢酸ビニル共重合体(A)が分散し、分散層を形成していることが確認された。
(比較例1・比較例2)
比較例1及び比較例2では、表3に示すように、(A)成分及び(B)成分の質量比を変更して本発明の範囲外とした以外は、実施例と同様に熱可塑性エラストマー組成物及びケーブルを製造した。なお、表3においては、本発明の範囲から外れる構成について下線で示している。
(比較例3)
比較例3では、表3に示すように、VA量が19質量%のシラングラフト化エチレン−酢酸ビニル共重合体を用いた以外は、実施例と同様に熱可塑性エラストマー組成物及びケーブルを製造した。なお、VA量が19質量%のシラングラフト化エチレン−酢酸ビニル共重合体は、VA量が19質量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体(EV450、三井デュポンポリケミカル製)にシランカップリング剤をグラフト共重合させた。
(比較例4)
比較例4では、表3に示すように、シランカップリング剤がグラフト共重合されていないエチレン−酢酸ビニル共重合体(VA量:28質量%)を用いて、エチレン−酢酸ビニ
ル共重合体を架橋させない以外は、実施例と同様に熱可塑性エラストマー組成物及びケーブルを製造した。
(比較例5)
比較例5では、表3に示すように、結晶性ポリオレフィン系樹脂として、融点が80℃未満のエチレン−酢酸ビニル共重合体(VA量:25質量%、融点77℃)を用いた以外は、実施例と同様に熱可塑性エラストマー組成物及びケーブルを製造した。
(比較例6)
比較例6では、表3に示すように、金属水酸化物として、表面が脂肪酸処理されたMg(OH)(マグシーズN4、神島化学工業株式会社製)を用いた以外は、実施例と同様に熱可塑性エラストマー組成物及びケーブルを製造した。
(比較例7・比較例8)
比較例7及び比較例8では、表3に示すように、(C)成分の含有量を変更して、本発明の範囲外とした以外は実施例と同様に熱可塑性エラストマー組成物及びケーブルを製造した。
また、比較例1〜8のケーブルについて、実施例1と同様に特性を評価した。その結果を以下の表4に示す。なお、表4においては、特性の得られなかった項目について、下線で示している。
表4に示すように、比較例1では、(A)成分の質量比が本発明の規定する範囲より大きく、架橋した(A)成分中に(B)成分が分散する組織となっており、押出外観が凹凸となったため、特性を測定することができなかった。
比較例2では、(A)成分の質量比が本発明の規定する範囲より小さいため、曲げ弾性率が大きく、十分な可撓性を得ることができなかった。
比較例3では、酢酸ビニル含有量が20質量%未満のシラングラフト化エチレン−酢酸ビニル共重合体を用いたため、曲げ弾性率が大きく、十分な可撓性を得ることができなかった。
比較例4では、架橋構造を有さないエチレン−酢酸ビニル共重合体を用いており、熱可塑性エラストマー組成物中で、エチレン−酢酸ビニル共重合体がシラン架橋していなかった。そして、耐熱性の評価の際に試料が変形し、十分な耐熱性を得ることができなかった。また、耐油性においても、十分な特性を得ることができなかった。
比較例5では、融点が80℃未満の結晶性ポリオレフィン系樹脂を用いたため、加熱により試料が変形し、十分な耐熱性が得られなかった。
比較例6では、表面が脂肪酸処理された金属水酸化物を用いたため、比較例5と同様に、十分な耐熱性及び耐油性を得られなかった。
比較例7では、(C)成分の含有量が本発明の規定する量よりも少ないため、十分な難燃性が得られなかった。
比較例8では、(C)成分の含有量が本発明の規定する量よりも多いため、十分な機械的特性及び可撓性を得ることができなかった。
以上のように、本発明の熱可塑性エラストマー組成物からなるシースを備えるケーブルにおいては、可撓性及び難燃性に優れるばかりか、高い機械的特性、耐熱性、及び耐油性を得ることができる。このため、高い特性が要求される鉄道車両用特別高圧ケーブルとして用いることが可能である。
1 特別高圧ケーブル
10 絶縁電線
11 導体
12 内部半導電層
13 絶縁層
20 外部半導電層
30 遮蔽層
40 押えテープ
50 被覆層(シース)

Claims (5)

  1. 樹脂成分として、酢酸ビニルの含有量が20質量%以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体にシランカップリング剤がグラフト共重合されたシラングラフト化エチレン−酢酸ビニル共重合体(A)と、融点が80℃以上の結晶性ポリオレフィン系樹脂(B)とを、質量比(A:B)で50:50 〜 80:20の範囲内の割合で含有し、かつ、
    前記樹脂成分100質量部に対して、表面がシラン処理された金属水酸化物(C)を50質量部以上200質量部以下含有し、
    前記樹脂成分のうち前記シラングラフト化エチレン−酢酸ビニル共重合体(A)がシラン架橋しており、
    JIS C3005に準拠した試験における、
    引張強さが7MPa以上、
    破断伸びが125%以上、
    120℃で240時間の加熱後の引張強さ残率及び破断伸び残率がそれぞれ70%以上、70℃の試験油に4時間浸漬後の引張強さ残率及び破断伸び残率がそれぞれ70%以上であり、
    JIS K7171に準拠した試験における曲げ弾性率が90MPa以上であり、
    BS4066−3に準拠した垂直燃焼試験における炭化長が2.5m以下である
    ことを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物。
  2. 前記結晶性ポリオレフィン系樹脂(B)中に、シラン架橋した前記シラングラフト化エチレン−酢酸ビニル共重合体(A)が分散している
    ことを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  3. 前記結晶性ポリオレフィン系樹脂(B)が、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−ヘキセン−1共重合体、エチレン−オクテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体の中から選ばれる1種類の樹脂、又は2種類以上の混合樹脂である
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  4. 前記金属水酸化物(C)が、水酸化マグネシウム又は水酸化アルミニウムである
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物からなる被覆層が、導体上に絶縁層を有する絶縁電線又は前記絶縁電線を複数撚り合わせてなるコア上に形成されていることを特徴とする鉄道車両用特別高圧ケーブル。
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