JP2014005497A - 高耐食オーステナイト系ステンレス鋼 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐食性や機械的性質を損わず加工し得る高耐食オーステナイトステンレス鋼の提供。
【解決手段】C:0.001〜0.100%、Si:0.01〜2.00%、Mn:0.01〜2.00%、S:≦0.0100%、Ni:5.0〜25.0%、Cr:5.0〜35.0%、Mo:2.0〜10.00%、Cu:0.10〜5.00%、Ti:0.001〜0.010%、Al:0.001〜0.050%、N:0.001〜0.500%、Ca:0.0001〜0.0200%、B:0.0001〜0.0100%を含み、残部Feと不可避不純物の鋼で、鋼の成分式のfn1=[Cr]+3.3[Mo]+16[N]=35.0〜60.0、fn2=8.4[C]+30.8[N]+5.0[B]+17.3[Mo]+2.5[Si]+1.7[Mn]=70〜200、fn3=([Ca]/[S])+([B]×103)=1.0〜12.0等を満たす鋼。
【選択図】図1
【解決手段】C:0.001〜0.100%、Si:0.01〜2.00%、Mn:0.01〜2.00%、S:≦0.0100%、Ni:5.0〜25.0%、Cr:5.0〜35.0%、Mo:2.0〜10.00%、Cu:0.10〜5.00%、Ti:0.001〜0.010%、Al:0.001〜0.050%、N:0.001〜0.500%、Ca:0.0001〜0.0200%、B:0.0001〜0.0100%を含み、残部Feと不可避不純物の鋼で、鋼の成分式のfn1=[Cr]+3.3[Mo]+16[N]=35.0〜60.0、fn2=8.4[C]+30.8[N]+5.0[B]+17.3[Mo]+2.5[Si]+1.7[Mn]=70〜200、fn3=([Ca]/[S])+([B]×103)=1.0〜12.0等を満たす鋼。
【選択図】図1
Description
本発明は、化学プラント用部材や配管や海水を用いた熱交換器などに使用されて、各種の腐食環境下で優れた耐食性を有すると共に、熱間および冷間での加工性にも優れた、高耐食オーステナイト系ステンレス鋼に関する。
Cr、CuやあるいはMoを含むオーステナイト系ステンレス鋼は、多くの腐食環境下において優れた耐食性を示す。しかし、これらのステンレス鋼は、加工性においては、熱間、冷間での変形抵抗が高く、延性が低いため、設備負荷が大きい上に、熱間や冷間での加工時に割れやキズが発生しやすく、加工寸法の制限や歩留りの悪化が生じ、生産性を阻害している。
高Moかつ高Nの高耐食オーステナイト系ステンレス鋼で、Bを利用して熱間加工性の改善を試みている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、この文献には、Bが耐食性や冷間加工性に及ぼす影響については言及されていない。したがって、このステンレス鋼では、耐食性および冷間加工性を阻害する硬質介在物の生成を抑制する合金設計が必要と考える。
米国の規格であるUNS S31254などの高Moオーステナイト系ステンレス鋼は、CrやCuやNを含み、その化学組成から硫酸、燐酸、硝酸、海水などの多くの腐食環境において優れた耐食性を有し、さらに高強度でもある。そこで、この高Moオーステナイト系ステンレス鋼は化学プラント用の部材や配管や海水を用いた熱交換器などに使用されている。しかし、加工性においては、このUNS S31254などの高Moオーステナイト系ステンレス鋼はSUS304などの汎用オーステナイト系ステンレス鋼と比べて、変形抵抗が高く、延性が低いため、設備負荷が大きい上に、熱間や冷間での加工時に割れやキズが発生しやすく、加工寸法の制限や歩留りの悪化が生じ、生産性を阻害している。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、優れた耐食性や機械的性質を損なうことなく、熱間加工および冷間加工を容易に実施できる高耐食オーステナイト系ステンレス鋼を提供することである。
発明者は、優れた耐食性および機械的性質を有し、熱間加工性および冷間加工性の悪化の原因である材料自体の高い変形抵抗と低い延性、並びに熱間加工での低オーバーヒート温度や低融点化合物の析出および冷間加工でのAlN、TiNおよびBNといった硬質介在物の析出による割れやキズの発生などを抑制する高耐食オーステナイト系ステンレス鋼を鋭意研究して開発した。
上記の課題を解決するための本発明の手段は、質量%で、C:0.001〜0.100%、Si:0.01〜2.00%、Mn:0.01〜2.00%、S:0.0100%以下、Ni:5.0〜25.0%、Cr:5.0〜35.0%、Mo:2.0〜10.00%、Cu:0.10〜5.00%、Ti:0.001〜0.010%、Al:0.001〜0.050%、N:0.001〜0.500%、Ca:0.0001〜0.0200%、B:0.0001〜0.0100%を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼である。
そして、この鋼の化学成分からなる関係を規定する計算式の、
fn1=[Cr]+3.3[Mo]+16[N]=35.0〜60.0
fn2=8.4[C]+30.8[N]+5.0[B]+17.3[Mo]+2.5[Si]+1.7[Mn]=70〜200
fn3=([Ca]/[S])+([B]×103)=1.0〜12.0
fn4=100[N]×(1.3[B]+0.5[Al]+0.3[Ti])≦0.60
を満足することを特徴とする高耐食オーステナイト系ステンレス鋼である。
そして、この鋼の化学成分からなる関係を規定する計算式の、
fn1=[Cr]+3.3[Mo]+16[N]=35.0〜60.0
fn2=8.4[C]+30.8[N]+5.0[B]+17.3[Mo]+2.5[Si]+1.7[Mn]=70〜200
fn3=([Ca]/[S])+([B]×103)=1.0〜12.0
fn4=100[N]×(1.3[B]+0.5[Al]+0.3[Ti])≦0.60
を満足することを特徴とする高耐食オーステナイト系ステンレス鋼である。
ここで、本発明の高耐食オーステナイト系ステンレス鋼のFeを除く化学成分の範囲の限定理由および計算式の値の限定理由を以下に説明する。なお、%は質量%を示す。
C:0.001〜0.100%
Cは、固溶強化を図るために必要な元素である。このためには、Cは0.001%以上必要である。しかし、Cが0.100%を超えると、CrとCr炭化物を形成し、鋼の耐粒界腐食性が低下し、また、鋼材の融点を下げて変形抵抗を上げるために、熱間加工性および冷間加工性が低下する。そこで、Cは0.001〜0.100%とする。
Cは、固溶強化を図るために必要な元素である。このためには、Cは0.001%以上必要である。しかし、Cが0.100%を超えると、CrとCr炭化物を形成し、鋼の耐粒界腐食性が低下し、また、鋼材の融点を下げて変形抵抗を上げるために、熱間加工性および冷間加工性が低下する。そこで、Cは0.001〜0.100%とする。
Si:0.01〜2.00%
Siは、製造時に脱酸剤として添加される元素である。このためには、Cは0.01%以上必要である。しかし、Siが2.00%を超えると、鋼材の延性を低下させる。そこで、Siは0.01〜2.00%とする。
Siは、製造時に脱酸剤として添加される元素である。このためには、Cは0.01%以上必要である。しかし、Siが2.00%を超えると、鋼材の延性を低下させる。そこで、Siは0.01〜2.00%とする。
Mn:0.01〜2.00%
Mnは、S固定による熱間加工性の改善の効果を得るためと、鋼のγ相の安定化のために必要な元素である。このためには、Mnは0.01%以上必要である。しかし、Mnが2.00%超えてもこれらの効果は飽和する。そこで、Mnは0.01〜2.00%とする。
Mnは、S固定による熱間加工性の改善の効果を得るためと、鋼のγ相の安定化のために必要な元素である。このためには、Mnは0.01%以上必要である。しかし、Mnが2.00%超えてもこれらの効果は飽和する。そこで、Mnは0.01〜2.00%とする。
S:0.0100%以下
Sは添加しなくとも良い元素である。しかし、Sが0.0100%を超えると、低融点硫化物の生成による鋼材の熱間加工性を悪化する。そこで、Sは0.0100%以下とする。
Sは添加しなくとも良い元素である。しかし、Sが0.0100%を超えると、低融点硫化物の生成による鋼材の熱間加工性を悪化する。そこで、Sは0.0100%以下とする。
Ni:5.0〜25.0%
Niは、鋼のγ相の安定化に有効な元素である。このためには、Niは5.0%以上必要である。しかし、Niは高価な稀少な金属であるので、25%を超えるとコストを上げる。そこで、Niは5.0〜25.0%とする。
Niは、鋼のγ相の安定化に有効な元素である。このためには、Niは5.0%以上必要である。しかし、Niは高価な稀少な金属であるので、25%を超えるとコストを上げる。そこで、Niは5.0〜25.0%とする。
Cr:5.0〜35.0%
Crは、耐食性の向上に必須の元素である。このためには、Crは5.0%以上が必要である。しかし、Crは35.0%を超えて含有されると、鋼の融点を下げ、変形抵抗を上げるために、鋼材の熱間加工性および冷間加工性が低下する。そこで、Crは5.0〜35.0%とする。
Crは、耐食性の向上に必須の元素である。このためには、Crは5.0%以上が必要である。しかし、Crは35.0%を超えて含有されると、鋼の融点を下げ、変形抵抗を上げるために、鋼材の熱間加工性および冷間加工性が低下する。そこで、Crは5.0〜35.0%とする。
Mo:2.0〜10.00%
Moは、耐食性の向上に必須の元素である。このためには、Moは2.0%以上が必要である。しかし、Moは10.00%を超えて含有されると、鋼の融点を下げ、変形抵抗を上げるために、鋼材の熱間加工性および冷間加工性を低下させ、さらに、コストを上げる。そこで、Moは2.0〜10.00%とする。好ましくは4.0〜8.00%である。
Moは、耐食性の向上に必須の元素である。このためには、Moは2.0%以上が必要である。しかし、Moは10.00%を超えて含有されると、鋼の融点を下げ、変形抵抗を上げるために、鋼材の熱間加工性および冷間加工性を低下させ、さらに、コストを上げる。そこで、Moは2.0〜10.00%とする。好ましくは4.0〜8.00%である。
Cu:0.10〜5.00%
Cuは、耐食性の向上に必須の元素であり、さらにγ相の安定化に必要な元素である。このためには、Cuは0.10%以上が必要である。しかし、Cuは5.00%を超えると鋼の熱間加工性を低下させ、コストをあげる。そこで、Cuは0.10〜5.00%とする。
Cuは、耐食性の向上に必須の元素であり、さらにγ相の安定化に必要な元素である。このためには、Cuは0.10%以上が必要である。しかし、Cuは5.00%を超えると鋼の熱間加工性を低下させ、コストをあげる。そこで、Cuは0.10〜5.00%とする。
Ti:0.001〜0.010%
Tiは、C固定による耐食性を向上する元素であり、TiCやTiNの生成によるピン止め効果により、結晶粒微細化による強度および靱性の向上に寄与する。このためには、Tiは0.001%以上が必要である。しかし、Tiは0.010%を超えると、多量のTiNを生成させ、耐食性を悪化させると共に冷間加工での割れや疵の発生起点となる。また、鋼材の融点を下げ、変形抵抗を上げるため、熱間加工性や冷間加工性を悪化する。そこで、Tiは0.001〜0.010%とする。
Tiは、C固定による耐食性を向上する元素であり、TiCやTiNの生成によるピン止め効果により、結晶粒微細化による強度および靱性の向上に寄与する。このためには、Tiは0.001%以上が必要である。しかし、Tiは0.010%を超えると、多量のTiNを生成させ、耐食性を悪化させると共に冷間加工での割れや疵の発生起点となる。また、鋼材の融点を下げ、変形抵抗を上げるため、熱間加工性や冷間加工性を悪化する。そこで、Tiは0.001〜0.010%とする。
Al:0.001〜0.050%
Alは、製鋼時の脱酸材として添加する元素であり、また、AlNの生成によるピン止め効果により結晶粒微細化による強度、靱性の向上に寄与する元素である。このためには、Alは0.001%以上が必要である。しかし、Alは0.050%を超えて含有してもその効果は飽和し、コストを上げることとなり、さらに、多量のAlNを生成して耐食性を悪化させると共に、冷間加工での割れや疵の発生起点となる。そこで、Alは0.001〜0.050%とする。好ましくは0.005〜0.030%である。
Alは、製鋼時の脱酸材として添加する元素であり、また、AlNの生成によるピン止め効果により結晶粒微細化による強度、靱性の向上に寄与する元素である。このためには、Alは0.001%以上が必要である。しかし、Alは0.050%を超えて含有してもその効果は飽和し、コストを上げることとなり、さらに、多量のAlNを生成して耐食性を悪化させると共に、冷間加工での割れや疵の発生起点となる。そこで、Alは0.001〜0.050%とする。好ましくは0.005〜0.030%である。
N:0.001〜0.500%
Nは、γ相を安定化し、耐食性の向上を図る元素である。このためには、Nは0.001%以上が必要である。しかし、Nは0.500%を超えて含有すると、窒化物の生成により鋼材の熱間加工性が悪化する。そこで、Nは0.001〜0.500%とする。好ましくは0.050〜0.300%である。
Nは、γ相を安定化し、耐食性の向上を図る元素である。このためには、Nは0.001%以上が必要である。しかし、Nは0.500%を超えて含有すると、窒化物の生成により鋼材の熱間加工性が悪化する。そこで、Nは0.001〜0.500%とする。好ましくは0.050〜0.300%である。
Ca:0.0001〜0.0200%
Caは、Sを固定し熱間加工性の改善に寄与する元素である。このためには、Caは0.0001%以上が必要である。しかし、Caは0.0200%を超えて含有されると、低融点化合物の生成により、鋼材の熱間加工性が悪化する。そこで、Caは0.0001〜0.0200%とする。
Caは、Sを固定し熱間加工性の改善に寄与する元素である。このためには、Caは0.0001%以上が必要である。しかし、Caは0.0200%を超えて含有されると、低融点化合物の生成により、鋼材の熱間加工性が悪化する。そこで、Caは0.0001〜0.0200%とする。
B:0.0001〜0.0100%
Bは粒界偏析による粒界を強化する元素である。そのためには、Bは0.0001%以上が必要である。しかし、Bは0.0100%を超えて含有されると、鋼材のオーバーヒート温度を低下させ、窒化物の生成により、耐食性と冷間加工性が悪化する。そこで、Bは0.0001〜0.0100%とする。好ましくは0.0010〜0.0050%である。
Bは粒界偏析による粒界を強化する元素である。そのためには、Bは0.0001%以上が必要である。しかし、Bは0.0100%を超えて含有されると、鋼材のオーバーヒート温度を低下させ、窒化物の生成により、耐食性と冷間加工性が悪化する。そこで、Bは0.0001〜0.0100%とする。好ましくは0.0010〜0.0050%である。
fn1=[Cr]+3.3[Mo]+16[N]=35.0〜60.0
fn1の値は、鋼の耐孔食性の向上を示す値である。そのためには、fn1の値は35.0以上である必要がある。しかし、fn1の値が60.0を超えると、固溶強化の過剰により、強度過剰となって加工性が悪化して、生産性を阻害する。そこで、fn1の値は35.0〜60.0とする。好ましくは40.0〜55.0である。
fn1の値は、鋼の耐孔食性の向上を示す値である。そのためには、fn1の値は35.0以上である必要がある。しかし、fn1の値が60.0を超えると、固溶強化の過剰により、強度過剰となって加工性が悪化して、生産性を阻害する。そこで、fn1の値は35.0〜60.0とする。好ましくは40.0〜55.0である。
fn2=8.4[C]+30.8[N]+5.0[B]+17.3[Mo]+2.5[Si]+1.7[Mn]=70〜200
fn2の値は、鋼の強度の上昇を示す値である。そのためには、fn2の値は70以上である必要がある。しかし、fn2の値が200を超えると、固溶強化の過剰により、強度過剰となって加工性が悪化して、生産性を阻害する。一方、fn2の値は70未満であると、強度が不足する。そこで、fn2の値は70〜200とする。好ましくは80〜140である。
fn2の値は、鋼の強度の上昇を示す値である。そのためには、fn2の値は70以上である必要がある。しかし、fn2の値が200を超えると、固溶強化の過剰により、強度過剰となって加工性が悪化して、生産性を阻害する。一方、fn2の値は70未満であると、強度が不足する。そこで、fn2の値は70〜200とする。好ましくは80〜140である。
fn3=([Ca]/[S])+([B]×103)=1.0〜12.0
fn3の値は、鋼の熱間加工性の向上を示す値である。そのためには、fn3の値は1.0以上である必要がある。しかし、fn3の値が12.0を超えると、Sに対するCaの過剰添加により、鋼の熱間加工性を低下する。そこで、fn3の値は1.0〜12.0とする。好ましくは1.5〜10.0である。
fn3の値は、鋼の熱間加工性の向上を示す値である。そのためには、fn3の値は1.0以上である必要がある。しかし、fn3の値が12.0を超えると、Sに対するCaの過剰添加により、鋼の熱間加工性を低下する。そこで、fn3の値は1.0〜12.0とする。好ましくは1.5〜10.0である。
fn4=100[N]×(1.3[B]+0.5[Al]+0.3[Ti])≦0.60
fn4の値は、鋼の耐食性および冷間加工性を示す値である。すなわち、fn4の値が0.60を超えると、窒化物の生成過剰により鋼の耐食性および冷間加工性を悪化する。そこで、fn4の値は0.60以下とする。好ましくは0.50以下である。
fn4の値は、鋼の耐食性および冷間加工性を示す値である。すなわち、fn4の値が0.60を超えると、窒化物の生成過剰により鋼の耐食性および冷間加工性を悪化する。そこで、fn4の値は0.60以下とする。好ましくは0.50以下である。
上記の課題を解決するための手段としたことで、優れた耐食性や機械的性質を損なうことなく、熱間加工および冷間加工を容易に実施できる高耐食オーステナイト系ステンレス鋼が得られる。
発明の実施の形態について、表1および表2および図1および図2をそれぞれ参照して以下に説明する。
表1に示す化学成分を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなり、fn1〜4の値を有する、No.1〜13の発明鋼およびNo.14〜25の比較鋼に示す鋼を、VIM(真空誘導溶解)法により溶解して100kgのインゴットに鋳造した後、これらを1180℃に加熱し、径15mm、径18mm、径25mmの棒鋼にそれぞれ鍛伸した。
さらに、表1の化学成分を含有する鋼材の熱間加工性を評価するため、径15mmの棒鋼からなる鋼材を1180℃で30分保持した後、水冷により焼入れする前熱処理(熱間加工時の加熱温度からの水冷による焼入れに相当)を実施した。次いで、この棒鋼から径8mm、長さ100mmの高温試験のグリーブル試験片を作製した。さらにグリーブル試験機を用いて、1180℃に加熱後、毎秒当たり50mmの引張速度で引張試験を行い、絞りと引張速度を測定した。この高温における引張試験による結果の評価として、表2に熱加工性である絞りと変形抵抗を示し、1180℃における絞りが75%以上、かつ変形抵抗が200MPa以下を満足するものを、熱間加工性が良好であるとして白丸で示した。一方、絞りが75%以上あるいは変形抵抗が200MPa以下のいずれかを満足しないもの、または両者を満足しないものを、熱間加工性が良好でないとして黒丸で示した。
さらに、上記で得られた鋼材の冷間加工性を評価するために、上記の1180℃に加熱し、鍛伸した棒鋼のうち、径18mmの棒鋼を1150℃で15分保持した後、水冷により焼入れする前熱処理(固溶化処理に相当)を実施し、次いで、この棒鋼から径14mm、長さ21mmの据込み試験用試料を作製した。この試験用試料を用いて室温で据込み試験を行い、50%加工時の割れの有無と、50%加工時の変形抵抗を測定した。この冷間による据込み試験による結果の評価として、表2に冷間加工性である室温で50%加工時の割れの有無と変形抵抗を示し、割れが無く、かつ変形抵抗が1400MPa以下を満足するものを冷間加工性が良好であるとして白丸で示した。一方、割れが無く、かつ変形抵抗が1400MPa以下のいずれかを満足しないものまたは両者を満足しないものを冷間加工性が良好でないとして黒丸で示した。
さらに、上記で得られた鋼材の耐食性を評価するために、上記の1180℃に加熱し、鍛伸した棒鋼のうち、径15mmの棒鋼を1150℃で15分保持した後、水冷により焼入れする前熱処理(固溶化処理に相当)を実施し、次いで、この棒鋼から径12mm、長さ21mmの腐食試験用試料を作製した。この試験用試料を用いてJISに規定されている65%硝酸による粒界腐食と、グリーンデス(green death)試験溶液による孔食試験に供した。
この中の粒界腐食に対して、65%硝酸粒界腐食試験:[JIS G0573に規定]として、沸騰した65%硝酸溶液に試験用試料を48時間浸漬して、これを5回繰り返して試験し、試験試料の腐食度(g/m2h)を測定し、これらの5回の平均値を腐食度として結果の評価として、表2に耐粒界腐食性を示し、腐食度0.50(g/m2h)以下を満足するものを耐粒界腐食性は良好であるとして白丸で示した。一方、腐食度0.50(g/m2h)を超えるものを耐粒界腐食性は良好でないとして黒丸で示した。
この中の粒界腐食に対して、65%硝酸粒界腐食試験:[JIS G0573に規定]として、沸騰した65%硝酸溶液に試験用試料を48時間浸漬して、これを5回繰り返して試験し、試験試料の腐食度(g/m2h)を測定し、これらの5回の平均値を腐食度として結果の評価として、表2に耐粒界腐食性を示し、腐食度0.50(g/m2h)以下を満足するものを耐粒界腐食性は良好であるとして白丸で示した。一方、腐食度0.50(g/m2h)を超えるものを耐粒界腐食性は良好でないとして黒丸で示した。
さらに、グリーンデス試験溶液による孔食試験として、7%H2SO4溶液、3v%HCl溶液、1%CuCl2溶液、1%FeCl3・6H2Oの溶液からなるグリーンデス試験溶液を65℃に加熱した中に上記の径12mm、長さ21mmの試験片を24時間浸漬して腐食度(g/m2h)を測定し、腐食度が15.0(g/m2h)以下を満足するものを耐孔食性が良好であるとして白丸で示した。一方、腐食度15.0(g/m2h)を超えるものを耐孔食性は良好でないとして黒丸で示した。
さらに、上記で得られた鋼材の機械的性質を評価するために、上記の1180℃に加熱し、鍛伸した棒鋼のうち、径25mmの棒鋼を1150℃で15分間保持した後、水冷により焼入れする前熱処理(固溶化処理に相当)を実施し、JISに規定する10号試験片に加工して、引張試験を行って、引張強さおよび伸びを測定した。この引張試験の結果の評価として、表2に機械的性質の引張強さおよび全伸びを示し、引張強さが650MPa以上でかつ全伸びが40%以上を機械的性質が良好であるとして白丸で示した。一方、強さが650MPa以上あるいは全伸びが40%以上のいずれかまたは両者を満足しないものを機械的性質が良好でないとして黒丸で示した。
図1は、本発明の特許請求の範囲の請求項における耐食オーステナイト系ステンレス鋼の、化学成分の関係を規定する式であるfn1を横軸にfn2を縦軸にとり、請求項に記載のfn1の値およびfn2の値の範囲で横軸と縦軸を区画して、鋼の耐孔食性と材料強度の関係を示すグラフである。このグラフにおける、横軸のfn1の値の35.0〜60.0および縦軸のfn2の値の70〜200の領域内が本発明の範囲であり、この範囲内に表1に示す実施例である発明鋼のNo.1〜13が総て含まれている。これらは、鋼の耐孔食性が優れているもの、すなわち上記の段落0035に記載の試験における、腐食度が15.0(g/m2h)以下を満足するものであり、さらに、材料強度が優れているもの、すなわち上記の段落0036に記載の引張試験における引張強さ650MPa以上を満足するものであり、したがって、表1の発明鋼のNo.1〜13を図1に白丸で示している。これに対して、本発明の範囲外である、図1における、横軸のfn1の値の35.0〜60.0の領域の範囲からおよび縦軸のfn2の値の70〜200の領域の範囲から、それぞれ外れる領域では、すなわち、横軸のfn1の値が35.0未満の領域では、耐孔食性が悪化しており、横軸のfn1の値が60.0を超える領域では、段落0023に記載したように、固溶強化の過剰により、強度過剰となって加工性を悪化している。また、縦軸のfn2の値が200を超える領域では固溶強化の過剰によって強度過剰で加工性を悪化しており、さらにfn2の値が70未満である領域では、強度が不足している。
図2は、本発明の特許請求の範囲の請求項における耐食オーステナイト系ステンレス鋼の、化学成分の関係を規定する式であるfn3を横軸にfn4を縦軸にとり、請求項に記載のfn3の値およびfn4の値の範囲で横軸と縦軸を区画して、鋼の熱間及び冷間の加工性と耐食性の関係を示すグラフである。このグラフにおける、横軸のfn3の値の1.0〜12.0および縦軸のfn4の値の0.60以下の領域内が本発明の範囲であり、この範囲内に表1に示す実施例である発明鋼のNo.1〜13が総て含まれている。これらは鋼の加工性および耐食性が優れているもの、すなわち上記の段落0034に記載の試験における、腐食度が0.50(g/m2h)以下を満足するものである。さらに、これらは材料強度が優れているもの、すなわち上記の段落0036に記載の引張試験における引張強さ650MPa以上を満足するものであり、したがって、表1の発明鋼のNo.1〜13を図1に白丸で示している。これに対して、本発明の範囲外である、図1における、横軸のfn3の値の1.0〜12.0の領域の範囲からおよび縦軸のfn4の値の0.60以下の領域の範囲から、それぞれ外れる領域では、すなわち、横軸のfn3の値が1.0未満および12.0超の領域で、かつ縦軸のfn4の値が0.60超の範囲では、耐食性及び冷間加工性が悪化しており、横軸のfn3の値が1.0未満および12.0超の領域では、段落0025に記載したように、Sに対するCaの過剰添加により、熱間加工性を悪化している。また、縦軸のfn4の値が0.60を超える領域では、窒化物の生成過剰により鋼の耐食性および冷間加工性が悪化している。
Claims (1)
- 質量%で、C:0.001〜0.100%、Si:0.01〜2.00%、Mn:0.01〜2.00%、S:0.0100%以下、Ni:5.0〜25.0%、Cr:5.0〜35.0%、Mo:2.0〜10.00%、Cu:0.10〜5.00%、Ti:0.001〜0.010%、Al:0.001〜0.050%、N:0.001〜0.500%、Ca:0.0001〜0.0200%、B:0.0001〜0.0100%を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼で、化学成分の関係が、
fn1=35.0〜60.0、
fn2=70〜200、
fn3=1.0〜12.0、
fn4≦0.60
をいずれも満足することを特徴とする高耐食オーステナイト系ステンレス鋼。
ただしfn1からfn4は次のとおりである。
fn1=[Cr]+3.3[Mo]+16[N]、
fn2=8.4[C]+30.8[N]+5.0[B]+17.3[Mo]+2.5[Si]+1.7[Mn]、
fn3=([Ca]/[S])+([B]×103)、
fn4=100[N]×(1.3[B]+0.5[Al]+0.3[Ti])
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