JP2014105548A - 河川利水運用に関わる方法及び装置 - Google Patents

河川利水運用に関わる方法及び装置 Download PDF

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Abstract

【課題】ダムに接続された河川に堰上げ施設を直列に連ねて多段に配置し、各堰上げ施設にて取水して各受益ブロックへ分水する水系において、水系全体の一元的な集中管理により水資源の有効利用、効率的な水管理、公平な水配分のための利水運用計画の立案をすることができる河川利水運用に関わる方法及び装置を提供する。
【解決手段】各堰上げ施設をタンクに見立てて流下距離に応じた到達遅れ時間を可変パラメータとした上、少なくともダム利水放流量、河川自流量、河川に合流する支川からの補給水量、各堰上げ施設における水使用量、上流取水の返水流量である下流への注水量を変数とし、ダム利水放流を起点に最上流堰上げ施設から最下流堰上げ施設まで各堰上げ施設の流入出の水収支計算を行い、ダム利水放流量の計画と各堰上げ施設における水使用量の計画と各堰上げ施設における貯水量変動及び/又は水位変動のシミュレーションを行う。
【選択図】図3

Description

本発明は、ダムに接続された河川に堰上げ施設を多数配置し、各堰上げ施設にて取水して各受益ブロックへ分水を行う水系において、ダムの利水放流量や各堰上げ施設における取水量などの利水運用に関わる方法及び装置に関するものである。
近年、水需要が増大しつつあり、貴重な水資源の有効活用と受益者への公平で合理的な水配分がきわめて重要なテーマとなってきている。従来、受益ブロック毎の個別水使用と、ダム貯水率に応じたダム利水放流の分散的なマニュアル運用であり、例えば、無効流下量(有効利用されずに流下する流量)の制御がなされないために、水利用が非効率であったり、取水過大となっているブロックや河川自流量が不足気味のブロックより下流域で水不足などを生じていた。
特公平5−2768号公報
ダムに接続された河川に堰上げ施設を直列に連ねて配置した水系においては、各堰上げ施設には受益ブロックからの取水があり、その取水量は日中と夜間とで同じでない。また、堰上げ施設は河川の上流から下流にわたって多数配置されるので、下流の堰上げ施設に水が到達するまでの時間遅れは相当な程度になり、支流からの流れ込みが加りまた流下距離も長くなるので、水系全体が非常に複雑となる。さらに、受益ブロックから返送される戻り水もあり、降雨の影響がこれに加わることになる。
このように、いくつもの要素が加重される水系全体において、一元的な集中管理により水資源の有効利用を図ること、および各受益ブロックへの水配分を公平に行うことはきわめて重要な課題と言える。
また、渇水時にはいずれかの堰上げ施設でオーバーフロー(越流)が止まり貯水量を削減せざるを得ない事態が想定される。堰上げ施設で貯水率が低下する事態が発生すると、数日は水位が回復せず水不足の解消に時間がかかってしまう。水利用が制限を受けることは該当する受益ブロックに多大な影響を与えることになるので、そのような事態が発生する前に予測を立てておき、何らかの対策を行う必要がある。ダムの放水量が大幅に減ると予想された時も同様である。そのような場合に、早めに各受益ブロックへの水配分を減らす等の渇水運用を実施する必要がある。さらに、堰上げ施設での貯水量が底をつくことは、河川の生態系に多大な影響を及ぼすので、そのような事態が発生することは極力避けなければならない。
本発明は、上述の点に鑑みてなされたもので、ダムに接続された河川に堰上げ施設を直列多段に配置し、各堰上げ施設にて取水して各受益ブロックへ分水する水系において、水系全体の一元的な集中管理により水資源の有効利用、効率的な水管理、公平な水配分のための利水運用計画を立案することができる河川利水運用に関わる方法及び装置を提供することを目的とする。
上述の目的を達成するため、本発明の河川利水運用計画方法は、ダムに接続された河川に堰上げ施設が複数直列に配置されて各堰上げ施設にて取水して各受益ブロックへ分水する水系における利水運用方法において、各堰上げ施設をタンクに見立てて流下距離に応じた到達遅れ時間を可変パラメータとした上、少なくともダム利水放流量、河川自流量、河川に合流する支川からの補給水量、各堰上げ施設における水使用量、上流取水の返水流量である下流への注水量を変数とし、ダム利水放流を起点に最上流堰上げ施設から最下流堰上げ施設まで各堰上げ施設の流入出の水収支計算を行い、ダム利水放流量の計画と各堰上げ施設における水使用量の計画と各堰上げ施設における貯水量変動及び/又は水位変動のシミュレーションを行うことを特徴とする。
本発明の好ましい態様によれば、各堰上げ施設の有効貯水容量に対する現時刻の堰上げ施設貯水量の割合を示す貯水率と、各堰上げ施設における日間サイクルで変動する貯水量及び/又は水位に対して日間サイクルで堰越流水位まで復帰させる貯水回復率とを求めることを特徴とする。
本発明の好ましい態様によれば、ダム利水放流量の計画、水使用量の計画、補給水量の計画を設定して最上流堰上げ施設から順番に計算を行っていくことで当日もしくは翌日以降数日間の貯水量変動予測を立て、期待した結果が得られない場合には、ダム利水放流量の計画、水使用量の計画、補給水量の計画を再度設定して最上流堰上げ施設から順番に計算を行っていくことで当日もしくは翌日以降数日間の貯水量変動予測を立て直すことを特徴とする。
本発明の河川利水運用計画装置は、ダムに接続された河川に堰上げ施設が複数直列に配置されて各堰上げ施設にて取水して各受益ブロックへ分水する水系における利水運用装置において、各堰上げ施設をタンクに見立てて流下距離に応じた到達遅れ時間を可変パラメータとして設定する手段と、少なくともダム利水放流量、河川自流量、河川に合流する支川からの補給水量、各堰上げ施設における水使用量、上流取水の返水流量である下流への注水量を変数として設定する手段と、ダム利水放流を起点に最上流堰上げ施設から最下流堰上げ施設まで各堰上げ施設の流入出の水収支計算を行う手段と、ダム利水放流量の計画と各堰上げ施設における水使用量の計画と各堰上げ施設における貯水量変動及び/又は水位変動のシミュレーションを行う手段とを備えたことを特徴とする。
本発明の好ましい態様によれば、各堰上げ施設の有効貯水容量に対する現時刻の堰上げ施設貯水量の割合を示す貯水率と、各堰上げ施設における日間サイクルで変動する貯水量及び/又は水位に対して日間サイクルで堰越流水位まで復帰させる貯水回復率とを求めることを特徴とする。
本発明の好ましい態様によれば、ダム利水放流量の計画、水使用量の計画、補給水量の計画を設定して最上流堰上げ施設から順番に計算を行っていくことで当日もしくは翌日以降数日間の貯水量変動予測を立て、期待した結果が得られない場合には、ダム利水放流量の計画、水使用量の計画、補給水量の計画を再度設定して最上流堰上げ施設から順番に計算を行っていくことで当日もしくは翌日以降数日間の貯水量変動予測を立て直すことを特徴とする。
本発明によれば、以下に列挙する優れた効果が期待できる。
(1)水系全体の一元的な集中管理により水資源の有効利用、効率的な水管理、公平な水配分のための利水運用計画を立案することができる。
(2)河川環境維持のために、各堰上げ施設で越流(オーバーフロー)が可能となるような自流量の確保を図ることができる。
(3)下流側への給水を確保して安定させ、且つ無効流下量を最小にした効率的な水運用計画を立案することができる。
(4)水の到達時間差による灌漑時間や水配分の不均衡を効果的に防止した公平な水配分の水運用計画を立案することができる。
(5)水需給の状態管理により、送水障害や溢水の防止を図ることができる。
図1は、ダムに接続された河川に堰上げ施設が複数直列に配置され、各堰上げ施設にて取水して各受益ブロックへ分水される水系全体を示す模式図である。 図2は、堰上げ施設の水収支に関わる諸量を表す模式図である。 図3は、各堰上げ施設を貯留タンクに見立てたモデルにより、流下距離に応じた到達遅れ時間を考慮した上、水収支計算を上流側から行う場合の演算のモデルを表す模式図である。 図4は、利水運用計画のフローの概要を表す模式図である。 図5は、利水運用計画のフローにおいて各堰上げ施設運用計画についての概要を表す模式図である。 図6は、利水運用計画のフローにおいて各堰上げ施設運用計画についての概要を表す模式図である。 図7は、図5及び図6の運用計画の結果得られる堰上げ施設における貯水量変化の日間サイクルすなわち貯水量の1日における変化の様子を表す模式図である。
以下、本発明に係る河川利水運用に関わる方法及び装置の実施形態を図1乃至図7を参照して説明する。図1乃至図7において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図1は、ダムに接続された河川に複数の堰上げ施設が直列に配置され、各堰上げ施設にて取水して各受益ブロックへ分水される水系全体を示す模式図である。
図1に示すように、ダム1に接続された河川2には、堰上げ施設3−1,3−2,3−3,3−4,3−5,3−6が直列に配置されている。河川2には、ダム1から放流される放流水が自流に流れ込み、堰上げ施設3−1でオーバーフローして堰上げ施設3−2に向かって流れ、順次下流側の堰上げ施設に向かって流れる。ダム1からの放流水は、堰上げ施設までの距離に応じて到達遅れが生ずる。堰上げ施設で区切られる各ブロック(すなわち、最上流側では堰上げ施設3−1までのブロック、堰上げ施設3−1より下流側では各堰上げ施設で区切られるブロック)の水位は、ファームポンド(小溜池)のように、満水と水位低下を繰り返す。次ブロックへの水の流下は各堰上げ施設における越流(オーバーフロー)によるため、上流側のブロックが満水の時のみ、次ブロックへ水が流下する。
図1に示すように、各堰上げ施設3−1〜3−6において取水され、各受益ブロックへ分水される。図1に示す例においては、堰上げ施設3−4のブロックで貯水量の低下による水不足が生じている。この場合、ダム放流水を増やしてもダム放流水が水不足ブロックへ届くのに時間が掛かってしまう。そのため、堰上げ施設3−3に設けられた注水ゲートGを開くことで、このブロックの水位回復の時間短縮が期待できる。また、非常手段として堰上げ施設3−3における堰上げゲートの下端放流を行うこともできる。
図1に示すような水系全体においては、日間サイクルの貯留水量変動つまり堰上げ水位変動に対し、貯留水量の低下が特に大きいと見込まれる区間の堰上げ水位を堰越流水位まで復帰させることで下流側への給水を確保して安定させ、且つ極力無効流下量を抑えた効率的な水運用を図る上で大きく影響するダムからの利水放流パターン(利水放流量・利水放流時間)及び水使用パターン(水使用量・使用時間)の運用管理が利水運用における最大の課題である。
図2は、堰上げ施設の水収支に関わる諸量を表す模式図である。
図2では、ダムに接続された最上流の堰上げ施設からi番目の堰上げ施設の水収支を示している。図2において、本川自流入量をQin ,支川等を含む他からの補給水をqin ,注水量(取水後の余水量)をqinp ,魚道流入量をqinf とすると、堰上げ施設への供給水量Qins は、次式で表される。なお、図2中、L は堰上げゲート天端水位(オーバーフロー水位)である。
ins =Qin +qin +qinp +qinf ・・・(1)
一方、i番目の堰上げ施設3−iから(i+1)番目の堰上げ施設3−(i+1)への流下流量Qouts は次式で表される。
outs =Qout +Q +qoutf ・・・(2)
ここで、Qout は本川自流出量、Q は取水量、qoutf は魚道流出量である。
堰上げ貯留水変化量ΔV/ΔTは次式で表される。
ΔV/ΔT=供給水量Qins −流下流量Qouts
=Qin +qin +qinp +qinf −(Qout +Q +qoutf )・・・(3)
すなわち、(3)式によりi番目の堰上げ施設3−iにおける単位時間当たりの貯留水変化量がわかる。
図3は、各堰上げ施設を貯留タンクに見立てたモデルにより、流下距離に応じた到達遅れ時間を考慮した上、水収支計算を最上流から行う場合の演算モデルを表す模式図である。
図3に示すように、堰上げ施設3−1にはダムからの放流量(取水量)Q ,本川自流入量Qin ,支川等を含む他からの補給水量qin が流入する。そして、堰上げ施設3−1から、本川自流出量Qout ,取水量Q ,魚道流出量qoutf が流出する。堰上げ施設3−1から堰上げ施設3−2へは、Qout +qoutf =Qin +qinf の流量が到達遅れ時間Tdelay をもって流入する。
堰上げ施設3−2では、Qin +qinf の流入量に加えて、注水量(取水後の余水量)qinp および支川等を含む他からの補給水量qin が流入する。そして、堰上げ施設3−2から、本川自流量Qout ,取水量Q ,魚道流出量qoutf が流出する。
同様に、i番目の堰上げ施設3−iでは、Qin +qinf の流入量に加えて、注水量(取水後の余水量)qinp および支川等を含む他からの補給水量qin が流入する。そして、i番目の堰上げ施設3−iから、本川自流出量Qout ,取水量Q ,魚道流出量qoutf が流出する。堰上げ施設3−iから堰上げ施設3−(i+1)へは、Qout +qoutf =Qin (i+1)+qinf (i+1)の流量が到達遅れ時間Tdelay をもって流入する。
図3に示すように、各堰上げ施設を貯留タンクに見立てたモデルにより、流下距離に応じた到達遅れ時間を考慮した上、流入・流出の水収支計算を最上流から行い、下流への余水補給を加えながら下流側まで水収支計算を行い、当日もしくは翌日の予測を立てるものである。ダム利水放流の計画パターン、水使用計画パターン、供給水量予測パターンを設定して、最上流堰上げ施設から順番に計算を行っていくもので、期待した結果が得られない場合には、再度取水パターンを変更して計算を行うリトライ(再試行)が行えるようにすることで、望ましい取水パターンを模索できるようにする。
図4は、利水運用計画立案のフローの概要を表す模式図である。
図4に示すように、ダム利水放流量計画と、供給水量計画と、水使用量計画とが入力される。この場合、ダム利水放流量計画は0時から24時までの1日における時間毎のダム利水放流量Q であり、供給水量計画は0時から24時までの1日における時間毎の(本川自流入量Qin +補給水量qin )であり、水使用量計画は0時から24時までの1日における時間毎の利水放流量Q である。これらの計画流量を入力することにより、堰上げ施設3−1における水収支計算および水位・貯留量の増減を予測する。
次に、予測時間における河川自流出量を演算する。この場合、河川自流出量は(堰越流量+魚道流量)であり、すなわちQout +qoutf である。魚道流量qoutf はH−Q演算(ヘッド−流量演算)で求める。このとき、到達遅れ時間Tdelay は可変パラメータ(ユーザーが任意に設定できるパラメータのこと)として設定される。
上記演算処理を最上流から最下流に向かって各堰上げ施設毎に行う。図4では、i番目の堰上げ施設3−iにおける演算処理が示されており、堰上げ施設3−(i−1)における演算で得た河川自流出量Qout (i−1)+qoutf (i−1)、すなわち河川自流入量Qin +qinf と、支川等の他からの補給水量計画qin と、堰上げ施設3−(i−1)からの注水量計画qinp と、水使用量計画Q とを入力する。各計画値は、堰上げ施設3−1における演算工程で説明したように、0時から24時までの1日における時間毎の計画流量である。これらの計画流量を入力することにより、i番目の堰上げ施設3−iにおける水収支計算および水位・貯留量の増減を予測する。
次に、予測時刻における河川自流出量を演算する。この場合、河川自流出量は(堰越流量+魚道流量)であり、すなわちQout +qoutf である。このとき、到達遅れ時間Tdelay は可変パラメータとして設定される。
このように、図4は利水運用計画立案のフロー概要を表し、ダム利水放流を起点に上流側堰上げ施設から堰上げゲート天端水位に相当する堰上げ貯留水量を超える容量を下流側堰上げ施設へかけ流して、順次最下流の堰上げ施設まで各堰上げ施設の流入出の水収支計算を行うことにより、ダム利水放流量のパターン及び各堰上げ施設からの取水量の水使用パターンの計画と各堰上げ施設の水位・貯水変動のシミュレーションを行うことができる。
図5および図6は、利水運用計画立案のフローにおいて各堰上げ施設運用計画についての概要を表す模式図である。
図5は、i番目の堰上げ施設3−iにおける利水運用計画を示す図である。図5に示す例においては、直上流側の堰上げ施設3−(i−1)からの堰越流がない場合であり、堰上げ施設3−iには補給水量qin と注水量qinp が流入する。補給水量計画qin には、前日実績の日間補給水量又は当日予測日間補給水量のいずれかを用いる。前日実績の場合および当日予測の場合のいずれも、0時から24時までの1日における時間毎の補給水量である。
上流側からの堰越流量がないため、堰上げ施設3−iにおいても越流はなく、取水量(水使用量)Q のみが流出する。水使用量計画Q には、前日実績の日間水使用量又は当日予測日間水使用量を用いる。前日実績の場合および当日予測の場合のいずれも、0時から24時までの1日における時間毎の水使用量である。
次に、補給水量計画qin から水使用量計画Q を差し引いて当日の流量変動を予測する。次に、求めた当日流量変動に当日初期貯水量V を加えて、当日の貯水量(時系列)と水収支を予測する。そして、当日の貯水量の経時的な変化と、貯水量を水位に換算することにより当日の水位の経時的な変化とを得る。図5において、貯水量のグラフは、横軸が時間(0時〜24時)、縦軸が貯水量である。水位のグラフは、横軸が時間(0時〜24時)、縦軸が水位である。図5に示す例では、水位が復帰せず、水収支もマイナスとなるパターンが示されている。
図6は、直上流の堰上げ施設3−(i−1)からの堰越流がある場合のi番目の堰上げ施設3−iにおける利用運用計画を示す図である。
図6に示すように、図5で求めた当日の貯水量の経時的な変化に、(i−1)番目の堰上げ施設3−(i−1)における河川自流出量Qout i−1+qoutf i−1、すなわちi番目の堰上げ施設3−iへの河川自流入量Qin +qinf を加える。このとき、到達遅れ時間Tdelay i−1も設定する。この演算により堰上げ施設3−iにおける当日の貯水量(時系列)を得る。また、貯水量を水位に換算することにより堰上げ施設3−iにおける当日の水位(時系列)を得る。堰上げ施設3−iにおける当日の貯水量から、次段の堰上げ施設3−(i+1)に流出する河川自流出量を演算し、演算結果を(i+1)番目の堰上げ施設3−(i+1)の運用計画立案に利用する。
次に、堰上げ施設3−iの水位が堰上げゲート天端水位L より高いか否かを判断し、堰上げ施設3−iの水位が堰上げゲート天端水位L (図2参照)より低い場合に、その程度に応じて小渇水運用か渇水運用を行う。また、図6では図示していないが、堰上げ施設3−iの水位が堰上げゲート天端水位L より低い場合には、最初に戻って堰上げ施設3−1における運用計画からやり直す場合もある。小渇水運用では、時間遅れを考慮して注水ゲート操作や上流側機側主ゲート寸開操作などを行う。小渇水とは、1日の貯水量の合計では、堰を越流するだけの貯水量がある(すなわちδ>0)が、不足する時間帯が発生する場合である。ここでδは各堰上げ施設ごとの水収支係数で、堰上げ施設への流入量から下流側への流出量を差し引いた量であり、日毎の水収支量(m)の他例えば時間流量(m/h)として求める。注水ゲート操作とは、図1に示す注水ゲートGを開くことである。上流側機側主ゲート寸開操作とは、堰を形成している堰上げゲートの下端を少し開けることである。渇水運用では、貯水量不足か否かを判断して、貯水量が不足の場合には、取水制限(一律公平制限)やローテーション調整による取水抑制を行う。
図7では、図5及び図6の運用計画の結果得られる堰上げ施設における貯水量変化の日間サイクルのイメージを表す模式図である。
図7に示すように、通常、日中に水が使用されるので、早朝(図7では6時)に満水にしておき、日中に水位が低下し、夜間に水位を復帰させて早朝までに満水にする貯水量パターンが水利用にとって好ましい。図7において、左側の図は好ましい貯水量パターンであるが、右側の図は早朝までに満水はおろか堰上げ水位まで達しない、好ましくない貯水量パターンである。
このように、基本的な運用は、河川水位が日中水使用により水位が減り、水使用がなくなる夜間時に水位を復帰させて翌日の水使用前に満水とするようないわゆる朝方満水運用となるものである。その運用の中で、水位が越流水位を割ってしまうと上流から水を補給するにしても、いったん低下した堰上げ施設の水位を再度越流水深まで復帰させて直下の下流側へ水を補給させるには1日サイクルの周期となると考えられる。このことより、貯水率が低下して、越流水位まで復帰せずに水位低下が大きくなった堰上げ水位を復帰させるためには、ダム利水放流により上流側堰上げ水位を越流水位まで復帰させながら流下させることとなるため、数日間かかることが懸念される。よって、数日間分の予想ができるものとする。
本発明による具体的なガイダンスとしては、(1)水不足が生じている堰上げ施設において越流水位に復帰するか否か、また、いつ頃復帰しそうか、(2)各堰上げ施設においてどこまで水位が下がりそうか(最低水位)といったことの判断材料を提示するものである。
次に、本発明による利水運用計画のために好適な演算項目例を示す。
各堰上げ施設で区切られたブロック別の河川のH−V曲線により堰上げゲート上流水位に対して貯水量と単位時間当たりの貯水変化量を演算する。ここでHは河川水位、Vは河川の貯留水量である。貯水量は、各堰上げゲート全閉時のゲート天端水位レベルの場合の堰上げ貯水量から、取水口敷高以下の死水容量を差し引いた有効堰上げ貯水量に対する比率とする貯水率も演算する。
各堰上げ施設で区切られたブロック毎の上流側堰上げゲートにおけるゲート天端からの越流量とゲート下端からの放流量を下記の(1)、(2)により求め、(1)+(2)を河川自流入量として演算する。
(1)上流側堰上げゲート上流水位により得られる上流側堰上げゲート堰天端高からの越流水深から堰越流のH−Q曲線により演算する。ここでHはゲート越流水深、Qは越流流量を表す。
(2)上流側堰上げゲート上流水位と上流側堰上げゲート開度からHenry式により演算する。ここで、Henryの式とは、ゲートの単位幅当たりの流出量qが流出係数C、ゲートの開口高さ、即ちゲート開度z、ゲートの一次側の水深hにより与えられるものとした次式である。
Figure 2014105548
各堰上げ施設で区切られたブロック毎の当該堰上げゲートにおけるゲート天端からの越流量とゲート下端からの放流量を下記の(1)、(2)により求め、(1)+(2)をブロック別実績河川自流出量として演算する。
(1)当該堰上げゲート上流水位により得られる堰上げゲート天端高からの越流水深から堰越流のH−Q曲線により演算する。
(2)当該堰上げゲート上・下流水位と当該堰上げゲート開度からHZQ式により演算する。
各堰上げ施設で区切られたブロック毎に上流側堰上げ施設での取水に対して当該堰上げ施設への余水の注水量、即ち当該堰上げ施設ブロックへ注水する上流側堰上げ施設の放流量を当該堰上げ施設への注水量として演算する。
なお、魚道流下量・余水、その他受益地からの還元水の余水、注水は、支川からの合流量などと合わせた補給水量として勘案する。
各堰上げ施設で区切られたブロック毎に上記注水量として計算できない魚道や余水などの上流からの供給水や、ブロック内に合流する支川からの流入、及びブロック内へ受益地から還元される還元水をまとめた水量を当該堰上げ施設への補給水量として演算する。貯水量変化を加味することによりブロック毎の水収支計算にて算出される。
各堰上げ施設で区切られたブロック毎に堰上げゲートからの越流量・放流量と注水量を合わせ区間流下量として演算する。
各堰上げ施設で区切られたブロック毎に上流側堰上げゲートからの越流量・放流量、上流側からの注水量、魚道や余水などの上流からの補給水やブロック内に合流する支川からの流入及びブロック内へ受益地から還元される還元水をまとめた補給水量を合わせて供給水量として演算する。
最上流堰上げ施設における上流からの供給水量の中には、ダムの利水放流量が上流からの注水量に代わる上流からの流入分として含められる。
各堰上げ施設で区切られたブロック毎の取水量を水使用量として演算する。
以下に、本機能を装備する好適なシステム例を示す。
監視制御機能とは切り離したオフライン処理もしくは本機能による運用計画に基づいた制御をおこなうオンライン処理とすることもできる。オンライン処理で前日実績値の入力や現在値の入力が可能なようなシステムとする。
必要なデータをデータベースとして記録・蓄積できるものとし、データは汎用ソフト(Excel)にて扱えるものとする。また、帳票出力などの印刷が行えるものとする。
計算は1時間サイクル程度とし、シミュレーション開始時刻(予想開始時刻)設定は計算開始しようとする時刻の直近の正時刻か過去の正時刻とする。
下記項目は可変パラメータとする。
(1)各ブロック毎流達遅れ
(2)堰上げゲート全閉時天端高と取水口敷高
(3)各ブロック毎H−V及び堰上げゲート天端水位での堰上げ有効貯留水量
河道の流達遅れについてはブロック毎に可変パラメータとして時間設定する。
計算時間範囲は数日分程度とし、日毎の時間範囲の選択が可能なものとする。
計算を行う上でのパターン入力設定項目は以下のような項目が考えられる。
(1)ダム利水放流量(取水量)
(2)各堰上げ施設水使用量
(3)各堰上げ施設補給水量
(4)最上流堰上げ施設については上流からの河川自流量を加味したダム利水放流量以外の供給水量
(5)注水量
上記項目は、前日の実績値、または手入力が行えるようにする。尚、魚道流量は計算による。
計算結果表示項目例は以下の通りである。
(1)各堰上げ施設堰上流水位時系列グラフ(表示窓は一つで堰上げ施設毎ボタン切り替え)
グラフ上に、堰上げゲート天端高と取水口敷高のラインを閾値として表示する。
(2)主要諸量の実績値と予想値・計画値を併記し、予・実比較できるようにする(いずれも日間量)。上記時系列グラフと合わせて1画面程度とする。
表示項目は以下のような項目について実績値と予想値・計画値を併記することが考えられる。
・貯留水量、貯水率
・回復率
・供給水量
・水使用量
・水収支
・最下流堰日間無効放流量
実績データを入出力処理できる構成とし、過去数年程度のデータ蓄積と参照ができるようにする。また、運用計画支援機能計算開始時の初期値設定に現時刻までの実績データを引用できるようにする。実績データ蓄積により傾向が管理できるようにする。
運用計画支援装置にてシミュレーションした結果は計算終了後の保存選択により、一式まとめてCSVデータにて保存可能なものとする。
以下の方法により、水系全体の実績値のデータベース化及び水運用計画立案を行うことが可能になり、ダム利水放流量や水使用量の融通運用を図ることが可能になる。
(1)数日分の予想を行うことで、水不足とならないような、ダム利水放流タイミングのケーススタディを行い、適切なダム利水放流量と取水タイミングの計画を立案できる。
(2)前日までに連絡を受ける水使用予定量や前日の水使用実績値に基づき計画立案したときに水使用量が計画値より過剰に取水してダム利水放流による対応では限界があった場合には、受益者に注意を促すことができ、計画値による見直し立案を行うことができる。
(3)計画の結果、ダム利水放流による対応では限界があった場合に、水不足が発生するブロックがある場合に、上流側ブロックからの注水計画を立てることができる。
(4)注水量では賄いきれない場合には、上流ブロックの堰上げゲートの下端放流操作による対応を図り上流側余剰水の融通運用を図ることができる。
(5)ダム貯水率が大きく低下する渇水時には、受益ブロック間で公平な水使用量一律制限やブロック毎にローテーションで水使用を行うなどの水使用抑制を図り、その水使用量や水使用タイミングの計画立案を行うことができる。
これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術思想の範囲内において、種々の異なる形態で実施されてよいことは勿論である。
1 ダム
2 河川
3−1,3−2,3−3,3−4,3−5,3−6,3−i 堰上げ施設
G 注水ゲート

Claims (6)

  1. ダムに接続された河川に堰上げ施設が複数直列に配置されて各堰上げ施設にて取水して各受益ブロックへ分水する水系における利水運用方法において、
    各堰上げ施設をタンクに見立てて流下距離に応じた到達遅れ時間を可変パラメータとした上、
    少なくともダム利水放流量、河川自流量、河川に合流する支川からの補給水量、各堰上げ施設における水使用量、上流取水の返水流量である下流への注水量を変数とし、
    ダム利水放流を起点に最上流堰上げ施設から最下流堰上げ施設まで各堰上げ施設の流入出の水収支計算を行い、
    ダム利水放流量の計画と各堰上げ施設における水使用量の計画と各堰上げ施設における貯水量変動及び/又は水位変動のシミュレーションを行うことを特徴とする河川利水運用計画方法。
  2. 各堰上げ施設の有効貯水容量に対する現時刻の堰上げ施設貯水量の割合を示す貯水率と、各堰上げ施設における日間サイクルで変動する貯水量及び/又は水位に対して日間サイクルで堰越流水位まで復帰させる貯水回復率とを求めることを特徴とする請求項1記載の河川利水運用計画方法。
  3. ダム利水放流量の計画、水使用量の計画、補給水量の計画を設定して最上流堰上げ施設から順番に計算を行っていくことで当日もしくは翌日以降数日間の貯水量変動予測を立て、
    期待した結果が得られない場合には、ダム利水放流量の計画、水使用量の計画、補給水量の計画を再度設定して最上流堰上げ施設から順番に計算を行っていくことで当日もしくは翌日以降数日間の貯水量変動予測を立て直すことを特徴とする請求項1記載の河川利水運用計画方法。
  4. ダムに接続された河川に堰上げ施設が複数直列に配置されて各堰上げ施設にて取水して各受益ブロックへ分水する水系における利水運用装置において、
    各堰上げ施設をタンクに見立てて流下距離に応じた到達遅れ時間を可変パラメータとして設定する手段と、
    少なくともダム利水放流量、河川自流量、河川に合流する支川からの補給水量、各堰上げ施設における水使用量、上流取水の返水流量である下流への注水量を変数として設定する手段と、
    ダム利水放流を起点に最上流堰上げ施設から最下流堰上げ施設まで各堰上げ施設の流入出の水収支計算を行う手段と、
    ダム利水放流量の計画と各堰上げ施設における水使用量の計画と各堰上げ施設における貯水量変動及び/又は水位変動のシミュレーションを行う手段とを備えたことを特徴とする河川利水運用計画装置。
  5. 各堰上げ施設の有効貯水容量に対する現時刻の堰上げ施設貯水量の割合を示す貯水率と、各堰上げ施設における日間サイクルで変動する貯水量及び/又は水位に対して日間サイクルで堰越流水位まで復帰させる貯水回復率とを求めることを特徴とする請求項4記載の河川利水運用計画装置。
  6. ダム利水放流量の計画、水使用量の計画、補給水量の計画を設定して最上流堰上げ施設から順番に計算を行っていくことで当日もしくは翌日以降数日間の貯水量変動予測を立て、
    期待した結果が得られない場合には、ダム利水放流量の計画、水使用量の計画、補給水量の計画を再度設定して最上流堰上げ施設から順番に計算を行っていくことで当日もしくは翌日以降数日間の貯水量変動予測を立て直すことを特徴とする請求項4記載の河川利水運用計画装置。
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