まず、本発明の概要について説明する。凹凸構造による反射防止機能は、光学的な有効媒質近似作用により達成される。有効媒質近似作用は、光からみてその波長よりも十分に小さな凹凸構造がある場合、光は凹凸構造を認識せず、凹凸構造とその周囲を取り囲む媒質の体積平均的屈折率の薄膜に対する光学挙動が観察される現象である。より詳細には、凹凸構造に対し光が入光する時、凹凸構造の入光面側から出光面側へと、凹凸構造を構成する材料の屈折率と凹凸構造を取り囲む媒質の屈折率の体積平均的屈折率が徐々に変化するように、光学挙動が観察される現象である。
ところで、光の反射は、光が異なる媒質界面に到達した場合に生じる現象である。ここで、光から見た媒質は、屈折率により定義される。
すなわち、上記説明したように、屈折率が徐々に変化する場合、光からみて、屈折率の界面がなくなるため、光学的反射現象が抑制される。
このような、有効媒質近似作用を発現可能な凹凸構造は、光の波長からみて十分に小さな凹凸構造である。ここで、凹凸構造が微小になるほど、凹凸構造の物理強度は低下する。即ち、凹凸構造の強度を重視した場合、有効媒質近似作用は機能しづらくなり、反射率が増加する。一方、反射性能を重視した場合、凹凸構造はより微小な構造になるため、物理強度が低下する。
そこで、互いにトレードオフの関係にある反射防止性能と強度の原理の違いに着目した。
反射防止を凹凸構造により発現させる場合、上記説明したように有効媒質近似作用を効果的に発現させる必要がある。有効媒質近似作用を発現させ、反射率を大きく低下させるためには、有効媒質近似的屈折率の変化をよりなだらかにする必要がある。
一方で、凹凸構造の物理強度を向上させるためには、凹凸構造の外力に対する耐性を向上させる必要がある。外力に対する耐性は、物理的破壊強度の絶対値と、応力集中を緩和する応力分散により決定することができる。
以上から、反射防止体の反射防止性能と強度を同時に改善するためには、反射防止性能を改善できる一方の凹凸構造と物理強度を改善できる他方の凹凸構造をそれぞれ設けること、及び、互いの凹凸構造がそれぞれの機能に支障をきたさないような配置が重要であることを発見し、本発明を完成させるに至った。
本発明においては、反射防止性能を改善する一方の凹凸構造と物理強度を改善する他方の凹凸構造とは、凹凸構造の平均ピッチ(pav)の違いにより決定した。即ち、本発明の反射防止体の凹凸構造は、第1の平均ピッチ(PS)を有する凹凸構造(S)と、第2の平均ピッチ(PL)を有する第2の凹凸構造(L)を具備し、第1の平均ピッチ(PS)は第2の平均ピッチ(PL)よりも小さいことを特徴とする。ここで、第1の平均ピッチ(PS)を有する第1の凹凸構造(S)により反射防止性能が、第2の平均ピッチ(PL)を有する凹凸構造(L)により物理強度が発現される。更に、それぞれの凹凸構造の機能を相乗させ互いに補完させるために、換言すれば反射防止性能を改善する第1の凹凸構造(S)により物理強度が低下することなく、物理強度を向上する第2の凹凸構造(L)により反射防止性能が低下することのないために、第1の凹凸構造(S)の凸部頂部平均位置よりも第2の凹凸構造(Lの)凸部頂部平均位置が、反射防止体を構成する基材の面外方向に位置するように第1の凹凸構造(S)及び第2の凹凸構造(L)と、が配置されることを特徴とする。
また、本発明には、上記の本発明の反射防止体が巻き取られたことを特徴とする反射防止ロールが包含される。
また、本発明には、上記の本発明の反射防止体を製造するために使用されることを特徴とする円筒状マスターが包含される。
また、本発明には、上記の本発明の反射防止体及び反射防止ロールの製造方法が包含される。
次に、本発明の一実施の形態(以下、「実施の形態」と略記する。)について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
以下、図面を参照し反射防止体について説明する。図1は、本実施の形態に係る反射防止体を示す断面模式図である。図1Aは、反射防止体10を構成する基材11と凹凸構造面20と、が同一の物質である場合を、図1Bは、基材11と凹凸構造面20と、が異なる物質の場合をそれぞれ示している。即ち、反射防止体10は、基材11を直接加工して表面に凹凸構造面20を作製することで製造されても、基材11上に別途凹凸構造面20を有する層12を設けることで製造されてもよい。図1A及び図1Bでは、凹凸構造面20が凸部の単純な繰り返しとして図示されているが、凹凸構造面20は、平均ピッチPSを有する第1の凹凸構造S及び平均ピッチPSよりも大きな平均ピッチPLを有する第2の凹凸構造Lにより構成される。そして、凹凸構造S及び凹凸構造Lが、凹凸構造Sの凸部頂部平均位置よりも、凹凸構造Lの凸部頂部平均位置が、基材11の面外方向に位置するように配置されている。
図2は、本実施の形態に係る反射防止体を示す断面模式図である。図2では、基材11の両面に凹凸構造面20が設けられている場合を示している。基材11の両面に設けられる凹凸構造面20は、図1A及び図1Bを参照して説明したように、基材11との物質が同一であっても異なっていてもよい。また、基材11の両面に凹凸構造面20が設けられる場合、少なくとも一方の凹凸構造面20が、凹凸構造S及び凹凸構造Lより構成されれば良い。そして、凹凸構造S及び凹凸構造Lが、凹凸構造Sの凸部頂部平均位置よりも、凹凸構造Lの凸部頂部平均位置が、基材11の面外方向に位置するように配置されればよい。
図3は、本実施の形態に係る反射防止体を示す断面模式図である。図3に示すように、反射防止体10の表面に平均ピッチPSを有する凹凸構造Sが設けられ、凹凸構造Sの表面の少なくとも一部に平均ピッチPLの凹凸構造Lが設けられている。
より詳細に説明すると、基材11の主面に、複数の凸部1及び凹部2で構成された凹凸構造Sが形成され、さらに凹凸構造Sの表面が一部露出するように互いに離間して複数の凸部3が形成され、凹凸構造Lを構成している。
このような構成をとることにより、露出する凹凸構造Sにより反射防止性能を向上させることが可能となり、凹凸構造Lによる強度を向上させることができる。
本実施の形態に係る反射防止体はフィルム状であると好ましい。ここでフィルム状とは、反射防止体が屈曲性を有す状態であり、特に、以下に説明する反射防止ロールの形態をとれる状態である。例えば、基材としてPETフィルム、TACフィルム、PENフィルムに代表されるプラスチックフィルムを選定し、凹凸構造面が樹脂より構成される場合、反射防止体は屈曲性を有す。このようなフィルム状の反射防止体とすることにより、デバイスに対して実装する際のハンドリング性が向上すると共に、適用可能なデバイスへの実装箇所を増加させることができる。
次に、本実施の形態に係る反射防止ロールについて説明する。図4Aは、本実施の形態に係る反射防止ロールを示す説明図であり、図4Bは、図4Aに示す反射防止ロールの側面の一部を拡大した拡大概略図である。図4Aに示す反射防止ロール30は、フィルム状の反射防止体10をロール芯部31の周面上に巻き取ったものである。本実施の形態に係る反射防止体10においては、凹凸構造Lにより強度を向上させることができるため、巻き取った場合であっても凹凸構造面20の破壊を抑制することができる。このような巻き取ったロールの形態にすることにより、使用に好適な場所において反射防止体10を使用することが可能となる。なお、図4Bに示すように、凹凸構造面20は、一つ内側に巻き回された反射防止体10の基材11と接しているが、凹凸構造面20上にカバーフィルムを合わせ、その状態で巻き取ってもよい。この場合、カバーフィルムによる凹凸構造Sの汚染を、凹凸構造Lにより抑制することができる。
本実施の形態に係る反射防止体10を使用することで、反射防止性能と強度とが同時に向上する。その理由は以下の通りである。
既に説明したように、反射防止性能は主に凹凸構造Sにより発現される。凹凸構造Sの平均ピッチPSは、凹凸構造Lの平均ピッチPLに比べて小さい。このため、凹凸構造Sは微小な凹凸構造となる。このため、有効媒質近似作用を効果的に発現することが可能となり、反射率が低下する。
しかしながら、有効媒質近似作用を有効に機能させ、有効媒質近似的屈折率をなだらかに変化させる場合、凹凸構造S単体のみでは、物理強度が低下し、凹凸構造Sの破壊が生じる。凹凸構造Sが破壊された場合、反射率は大きく増加する。これは、凹凸構造Sが複数の凸部より構成された場合、凸部が1つ欠落した場合であっても生じる現象である。例えば、正六方配列した複数の凸部のある場合、隣接する凸部の距離は全て一定となる。ここで、1つの凸部が欠落した場合、凸部の隣接距離が2倍になる部位が発生する。このような部位は、光の波長からみた有効媒質近似的作用が生じにくいため、反射率が増加する。反射率の増加程度は、破壊される凹凸構造Sの割合に応じ増加する。
ここで、平均ピッチPSの凹凸構造Sの凸部頂部平均位置よりも、平均ピッチPSよりも大きな平均ピッチPLの凹凸構造Lの凸部頂部平均位置が、反射防止体10の基材11の面外方向に位置するように凹凸構造S及び凹凸構造Lを配置することで、凹凸構造Lにより凹凸構造Sに対する応力の集中を抑制することができるため、物理強度が向上する。更に、凹凸構造Lの平均凸部頂部位置と凹凸構造Sの平均凸部頂部位置と、が所定の範囲を満たすことから、凹凸構造Lを設けることによる反射防止性能の劣化は抑制されると考えられる。即ち、凹凸構造Sにより反射防止性能を向上させ、且つ反射防止性能を維持した状態にて凹凸構造Lにより強度を改善できると考えられる。
次に、本実施の形態に係る反射防止体10の凹凸構造面20について説明する。
凹凸構造面20は、平均ピッチ(pav)の異なる2つの凹凸構造により構成される。ここで2つの凹凸構造をそれぞれ、凹凸構造S、凹凸構造Lと呼ぶ。凹凸構造Sの平均ピッチはPSであり、凹凸構造Lの平均ピッチはPLである。平均ピッチPLは平均ピッチPSよりも大きい。
なお、凹凸構造Lと凹凸構造Sと、は光学的に連続していても、光学的界面を有してもよい。これは、光学的界面、即ち屈折率の差が凹凸構造Lと凹凸構造Sと、の間に設けられる場合であっても、該界面には凹凸構造Sが配置されるため、有効媒質近似作用が機能し、該界面における反射を抑制できるためである。換言すれば、凹凸構造Sを構成する物質の屈折率nSと凹凸構造Lを構成する物質の屈折率nLと、は異なっていても同一であってもよい。特に、|nL−nS|≦0.2を満たすことで、上記説明した凹凸構造Lと凹凸構造Sと、の界面における反射を効果的に抑制できるため好ましい。
凹凸構造面20は、凸部及び凹部を有していれば、その形状や配列は限定されず、上記説明したように凹凸構造Lと凹凸構造Sとの位置関係及び凹凸構造Lの平均ピッチPLが凹凸構造Sの平均ピッチPSよりも大きければ、反射防止性能を維持した状態で強度を強くすることができる。このため、例えば、複数の柵状体が配列したラインアンドスペース構造、複数の柵状体が交差した格子構造、複数のドット(凸部、突起)状構造が配列したドット構造、及び、複数のホール(凹部)状構造が配列したホール構造などを採用できる。ドット構造やホール構造は、例えば、円錐、円柱、四角錐、四角柱、六角錐、六角柱、多角錐、多角柱、二重リング状、多重リング状などの構造が挙げられる。なお、これらの形状は底面の外径が歪んだ形状や、側面が湾曲した形状を含む。
いずれの形状を採用した場合であっても、凹凸構造Sにおいては、反射防止性能を向上させる観点から、凸部の径は、凸部の底部から頂部へと向かうに従い小さくなることが好ましい。これは、有効媒質近似的屈折率の変化をなだらかにするためである。更に、凸部頂部と凸部側面部と、は連続的になめらかにつながっていることが好ましい。中でも、凸部頂部の幅が0に漸近する形状であると、凹凸構造Sの凸部頂部位置における有効媒質近似的屈折率の変化がなだらかになるため、好ましい。
なお、ドット構造とは、複数の凸部が互いに独立して配置された構造である。即ち、各凸部は連続した凹部により隔てられる。なお、各凸部は連続した凹部により滑らかに接続されてもよい。一方、ホール構造とは、複数の凹部が互いに独立して配置された構造である。即ち、各凹部は連続した凸部により隔てられる。なお、各凹部は連続した凸部により滑らかに接続されてもよい。中でも反射防止性能を向上させる観点から凹凸構造面20は、ドット状構造であると好ましい。特に、反射防止性能を向上させるために、凹凸構造Sは、ドット状構造の中でも、凸部頂部に平坦面を有さない構造であると好ましい。更に、凹凸構造Sの凹部底部は平坦面を有さないことがより好ましい。また、凹凸構造Lにおいては、強度を向上させ、且つ反射防止性能を維持する観点から、ドット状構造であって、凸部頂部と凸部側面部と、が滑らかにつながった構造であると好ましい。
続いて、凹凸構造面20の説明に使用する定義について説明する。なお、以下の説明において、凹凸構造面20は、凹凸構造S及び凹凸構造Lにより構成されており、特に明記する場合を除き、凹凸構造L及び凹凸構造Sの双方を単に「凹凸構造」と呼ぶ。
<平均ピッチ(pav)>
図5は、本実施の形態に係る反射防止体を凹凸構造面側から見た上面図である。図5に示すように、凹凸構造面20が、複数の凸部1が配置されたドット構造である場合、ある凸部A1の中心とこの凸部A1に隣接する凸部B1−1〜凸部B1−6の中心との間の距離pA1B1−1〜距離pA1B1−6を、ピッチpと定義する。しかし、この図5に示すように、隣接する凸部によりピッチpが異なる場合は次の手順に従い、平均ピッチ(pav)を決定する。(1)任意の複数の凸部A1,A2…ANを選択する。(2)凸部AMと凸部AM(1≦M≦N)に隣接する凸部(BM−1〜BM−k)と、のピッチpAMBM−1〜pAMBM−kを測定する。(3)凸部A1〜凸部ANについても、(2)と同様にピッチpを測定する。(4)ピッチpA1B1−1〜pANBN−kの相加平均値を平均ピッチ(pav)として定義する。但し、Nは5以上10以下、kは4以上6以下とする。なお、ホール構造の場合、上記ドット構造にて説明した凸部を凹部開口部と読み替えることで、平均ピッチ(pav)を定義することができる。なお、凹凸構造Sに対して測定された平均ピッチ(pav)が平均ピッチPSであり、凹凸構造Lに対して測定された平均ピッチ(pav)が平均ピッチPLである。
<高さH>
凹凸構造面20を構成する凹凸構造の高さは、凹凸構造の凹部底部の平均位置と凹凸構造の凸部頂部の平均位置との最短距離として定義する。平均位置を算出する際のサンプル点数は10点以上であることが好ましい。また、凹凸構造Lの高さは、凹凸構造Lに対し測定され、凹凸構造Sの高さは凹凸構造Sに対して測定されるものとする。
<凸部頂部幅lcvt、凹部開口幅lcct、凸部底部幅lcvb、凹部底部幅lcc>
図6は、本実施の形態に係る反射防止体の凹凸構造面を構成する凹凸構造がドット構造の場合の上面図である。図6中に示す破線で示す線分は、ある凸部1の中心と該凸部1に最近接する凸部1の中心との距離であり、上記説明したピッチpを意味する。図5中に示したピッチpに相当する線分位置における凹凸構造の断面模式図を示したのが図7A及び図7Bである。
図7Aに示すように、凸部頂部幅lcvtは凸部頂面の幅として定義され、凹部開口幅lcctは、ピッチpと凸部頂部幅lcvtと、の差分値(p―lcvt)として定義される。
図7Bに示すように、凸部底部幅lcvbは凸部底部の幅として定義され、凹部底部幅lccbは、ピッチpと凸部底部幅lcvbと、の差分値(p―lcvb)として定義される。
図8は、凹凸構造面20がホール構造の場合の上面図を示している。図8中に破線で示す線分は、ある凹部2の中心と該凹部2に最近接する凹部の中心との距離であり、上記説明したピッチpを意味する。図8中に示したピッチpに相当する線分位置における凹凸構造面20の断面模式図を示したのが図9A及び図9Bである。
図9Aに示すように、凹部開口幅lcctは凹部2の開口径として定義され、凸部頂部幅lcvtは、ピッチpと凹部開口幅lcctと、の差分値(p―lcct)として定義される。
図9Bに示すように、凸部底部幅lcvbは凸部底部の幅として定義され、凹部底部幅lccbは、ピッチpと凸部底部幅lcvbと、の差分値(p―lcvb)として定義される。
また、凹凸構造Lの凸部頂部幅lcvt、凹部開口幅lcct、凸部底部幅lcvb、凹部底部幅lccbは、凹凸構造Lに対し測定され、凹凸構造Sの凸部頂部幅lcvt、凹部開口幅lcct、凸部底部幅lcvb、凹部底部幅lccは凹凸構造Sに対して測定されるものとする。
<充填率>
凹凸構造の充填率は、凹凸構造がドット状の場合、単位面積内に含まれる凸部底部の面積の割合として定義される。例えば、凸部底部の外形が円形の場合、上記説明した凸部底部幅lcvbを用い以下のように定義できる。
充填率(%)=(lcvb/2)×(lcvb/2)×π×N÷S
但し、Sは単位面積である。また、Nは単位面積内に含まれる凸部の数である。
例えば、単位面積内に完全に収まる凸部が1個、凸部底部面積の1/3の領域のみ収まる凸部が6個含まれる場合、N=1+(1/3)×6=3となる。なお、滑らかな凹部を通じて凸部が隣接配置される場合、上記定義に従えば、充填率は100%となる。
一方、凹凸構造がホール状の場合、単位面積内に含まれる凹部開口部の面積の割合として充填率が定義される。例えば、凹部開口部の外形が円形の場合、上記説明した凹部開口幅lcctを用いて以下のように定義できる。
充填率(%)=(lcct/2)×(lcct/2)×π×N÷S
但し、Sは単位面積である。また、Nは単位面積内に含まれる凹部の数である。
例えば、単位面積内に完全に収まる凹部が1個、凹部開口部面積の1/3の領域のみ収まる凹部が6個含まれる場合、N=1+(1/3)×6=3となる。なお、滑らかな凸部を通じて凹部が隣接配置される場合、上記定義に従えば、充填率は100%となる。
<デューティ>
凸部底部幅lcvbとピッチpと、の比率(lcvb/p)で表される。また、凹凸構造Lのデューティは、凹凸構造Lに対し測定され、凹凸構造Sのデューティは凹凸構造Sに対して測定されるものとする。
<アスペクト比>
凹凸構造がドット構造の場合、アスペクト比は、上記説明したlcvbを用いて、凹凸構造の高さ/lcvbとして定義される。一方、凹凸構造がホール構造の場合、アスペクト比は、上記説明したlcctを用いて、凹凸構造の深さ/lcctとして定義される。また、凹凸構造Lのアスペクト比は、凹凸構造Lに対し測定され、凹凸構造Sのアスペクト比は凹凸構造Sに対して測定されるものとする。
<凸部底部外接円径φout、凸部底部内接円径φin>
図10Aから図10Eに反射防止体10を凹凸構造面側より観察した場合の上面像を示した。本実施の形態に係る反射防止体10の凹凸構造の凸部は撓んだ形状であってもよい。反射防止体10を凹凸構造面側より観察した場合の輪郭(以下、凸部底部輪郭という)を、図10Aから図10Eに「A」で示す。ここで、凸部底部輪郭Aが真円ではない場合、凸部底部輪郭Aに対する内接円と外接円と、は一致しない。図10Aから図10Eにおいて、内接円を「B」で示し、外接円を「C」で示す。
凸部底部輪郭Aに対する内接円Bの直径を凸部底部内接円径φinと定義する。なお、φinは、内接円Bの大きさが最大になるときの内接円Bの直径とする。なお、内接円Bは凸部底部輪郭Aより内側に配置される円であり、凸部底部輪郭Aの一部に接し、且つ、凸部底部輪郭Aより外側にはみ出すことのない円である。
一方、凸部底部輪郭Aに対する外接円Cの直径を凸部底部外接円径φoutと定義する。Φoutは、外接円Cの大きさが最小となる時の外接円Cの直径とする。なお、外接円Cは、凸部底部輪郭Aより外側に配置される円であり、凸部底部輪郭Aの一部に接し、且つ、凸部底部輪郭Aより内側に侵入することのない円である。
また、凹凸構造Lの凸部底部外接円径φout、凸部底部内接円径φinは、凹凸構造Lに対し測定され、凹凸構造Sの凸部底部外接円径φout、凸部底部内接円径φinは凹凸構造Sに対して測定されるものとする。
なお、凹凸構造が複数の凹部から構成される場合、上記「凸部底部」という文言を「凹部開口部」と読み替えることができる。
<凸部側面傾斜角Θ>
凸部側面の傾斜角度Θは、上記説明した凹凸構造の形状パラメータより決定される。凹部側面傾斜角Θも同様に決定される。また、凹凸構造Lの凸部側面傾斜角Θは、凹凸構造Lに対し測定され、凹凸構造Sの凸部側面傾斜角Θは凹凸構造Sに対して測定されるものとする。
<凹凸構造の乱れ>
凹凸構造面20は以下に説明する乱れを含むことができる。乱れを含むことにより、反射防止性能を向上させることができると推定される。より具体的には、波長λがA以上B以下の範囲にて凹凸構造面20により低反射率を実現した場合、波長λがC(<A)の光の反射率は大きくなる。ここで、有効媒質近似作用を効果的に発現させるためには、凹凸構造Sの配列は規則性を帯びることが好ましい。この観点からみると、波長λがCの光は、有効媒質近似作用が弱まるため光回折を生じることとなる。例えば、上記Aを視感度の高い550nmに設定し、反射防止体10を正六方配列の凹凸構造Sのみから設計した場合、550nmに対する反射率は有効媒質近似作用により効果的に低下するため透明な反射防止体10を作製することができた。しかしながら、紫外光は光回折する。このため、僅かではあるが青みを観察することができた。凹凸構造面20に乱れを含めることにより、上記光回折を乱すことが可能となるため、回折色を弱めることが可能となる。回折色を弱める観点から、凹凸構造面20の乱れは、凹凸構造S或いは凹凸構造Lの少なくとも一方に設けられると好ましい。特に、凹凸構造Lに対して乱れを加えることで、回折色を弱める効果がより向上するため好ましい。
乱れを有す凹凸構造の要素は特に限定されないが、凹凸構造の乱れの要因となる要素として、例えば、ピッチp、デューティ、アスペクト比、凸部頂部幅lcvt、凸部底部幅lcvb、凹部開口幅lcct、凹部底部幅lccb、凸部側面の傾斜角度、凸部側面の傾斜角度の切り替わり数、凸部底部内接円径φin、凸部底部外接円径φout、凸部高さ、凸部頂部の面積、凸部表面の微小突起数(密度)や、これらの比率、又凹凸構造の配列より類推できる情報(例えば、凹部の形状)が挙げられる。
これらのような要素の中で、ピッチpは凹凸構造の配列の乱れを意味し、ピッチ以外の要素は凹凸構造の形状の乱れを意味する。これらの乱れは上記要素1種のみの乱れでも、複合された乱れでもよい。特に、上記説明した回折色を弱める観点から、複数の要素が以下に説明する式(1)に示される乱れを同時に満たすことが好ましい。なかでも、ピッチp、デューティ、高さH、アスペクト、凸部底部外接円径φout或いは比率(φout/φin)が乱れを有す場合、光回折を乱し回折色を弱める効果が大きくなると考えられる。これらのうち、2以上の乱れを同時に含むことで、上記説明した光回折を乱す効果がより顕著になる。中でも、ピッチp、高さH、凸部底部外接円径φout及び凸部底部外接円径φout/凸部底部内接円径φinのいずれかが以下に説明する(1)を満たすとより好ましい。なお、上記乱れに規則性のある場合、凹凸構造Sにより反射防止性能を向上させ、且つ規則的乱れにより所定の波長を抽出することもできる。
凹凸構造の乱れの要因となっている要素の乱れは、下記式(1)に示す(標準偏差/相加平均)、即ち変動係数を有する。式(1)において、凹凸構造の(標準偏差/相加平均)は、凹凸構造を構成する要素に対する値である。例えば、凹凸構造が要素A、B、Cの三つから構成される場合、要素Aに対する標準偏差/要素Aに対する相加平均といったように、同一の要素に対する標準偏差及び相加平均に対する比率として定義する。
0.025≦(標準偏差/相加平均)≦0.8 (1)
(相加平均)
ある要素(変量)の分布のN個の測定値をx1、x2…、xnとした場合に、相加平均値は、次式にて定義される。
(標準偏差)
要素(変量)の分布のN個の測定値をx1、x2…、xnとした場合に、上記定義された相加平均値を使用し、次式にて定義される。
相加平均を算出する際のサンプル点数Nは、10以上として定義する。また、標準偏差算出時のサンプル点数は、相加平均算出時のサンプル点数Nと同様とする。
また、(標準偏差/相加平均)は、反射防止体10の凹凸構造面20の面内における値ではなく、反射防止体10の局所的な部位に対する値として定義する。即ち、凹凸構造面20の面内に渡りN点の計測を行い(標準偏差/相加平均)を算出するのではなく、反射防止体10の局所的観察を行い、該観察範囲内における(標準偏差/相加平均)を算出する。ここで、観察に使用する局所的範囲とは、凹凸構造の平均ピッチ(pav)の5倍〜50倍程度の範囲として定義する。例えば、平均ピッチ(pav)が300nmであれば、1500nm〜15000nmの観察範囲の中で観察を行う。そのため、例えば2500nmの視野像を撮像し、該撮像を使用して標準偏差と相加平均を求め、(標準偏差/相加平均)を算出する。なお、凹凸構造Lの乱れに対しては、平均ピッチPLを使用し、凹凸構造Sの乱れに対しては、平均ピッチPSを使用する。
(標準偏差/相加平均)は、凹凸構造を構成する要素毎に最適値が存在するが、凹凸構造の乱れの要因となる要素によらず式(1)を満たすことで、反射防止性能と強度を維持した状態にて、上記説明した光回折を乱し回折色を弱めることができる。上記説明した光回折を乱す効果を発現する観点から、下限値は0.03以上であることがより好ましい。一方上限値は、反射防止性能と強度の双方を維持する観点から、0.5以下であることが好ましく、0.35以下であることが好ましく、0.25以下であることがより好ましく、0.15以下であることが最も好ましい。
続いて、凹凸構造面20を構成する凹凸構造L及び凹凸構造Sについて説明する。
上述のように、凹凸構造Sの主たる機能は反射防止性能の向上である。一方、凹凸構造Lの主たる機能は強度の向上である。強度と反射防止性能を両立する観点から、凹凸構造Sを構成する物質の屈折率(nS)、凹凸構造Lを構成する物質の屈折率(nL)及び基材11を構成する物質の屈折率(nB)は、以下の関係を満たすことが好ましい。|nL−nS|及び|nS−nB|は、0.2以下であると各界面における反射を抑制できるため好ましい。この効果をより発揮する観点から、|nL−nS|及び|nS−nB|は、0.15以下であるとより好ましく、0.1以下であると最も好ましい。
また、nL≦nSであると反射防止性能をより向上できるため好ましい。
凹凸構造S、凹凸構造L、及び基材11を構成する物質は、上記屈折率関係を満たせば特に限定されない。
特に、凹凸構造Lを構成する物質として低屈折率材料を選択することができる。ここで、低屈折率材料とは、屈折率が1.45以下の物質として定義する。屈折率nLが1.45以下であることにより、凹凸構造Lによる反射防止性能の低下をより抑制することができる。この観点から、屈折率nLは、1.4以下であることが好ましく、1.35以下であることが最も好ましい。
凹凸構造Sの平均凸部頂部位置と凹凸構造Lの平均凸部頂部位置との最短距離は、0nm超100μm以下を満たす。特に、0nm超を満たすことにより強度が向上し、100μm以下を満たすことにより反射防止性能を維持することができる。同様の観点から、該最短距離は10nm以上を満たすことがより好ましく、100nm以上を満たすことがより好ましく、1000μm以上を満たすことが最も好ましい。一方上限値は、同様の効果から80μm以下を満たすことが好ましく、50μm以下を満たすことがより好ましく、10μm以下を満たすことが最も好ましい。
次に、凹凸構造L及び凹凸構造Sを詳細に説明する。
<凹凸構造L>
凹凸構造Lの主たる機能は強度の向上である。配列としては、六方配列、準六方配列、準四方配列、四方配列、又はこれらの配列を組み合わせた配列、或いは規則性の低い配列などを採用することができる。特に、凹凸構造Lの配列規則性が高い程、外力の緩和効果が大きくなるほど好ましい。更に、凹凸構造Lの配列は点対称な配列であると、応力の分散効果が高まるため好ましい。これらの観点から、六方配列或いは四方配列が好ましく、六方配列が最も好ましい。
凹凸構造Lの充填率は、0.0003%以上25%以下であると好ましい。0.0003%以上であることにより、強度を向上させることができる。同様の観点から、0.04%以上であることが好ましく、0.06%以上であることがより好ましく、0.1%以上であることが最も好ましい。一方上限値が25%以下であることにより反射防止性能を向上させることができる。同様の観点から、上限値は15%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、6%以下であることが最も好ましい。
平均ピッチPLは、平均ピッチPSより大きい範囲において、800nm以上100μm以下であると好ましい。特に、平均ピッチPLが800nm以上であることにより、強度を向上させることができる。同様の効果から、1000nm以上であることが好ましく、5000nm以上であることがより好ましく、10000nm以上であることが最も好ましい。一方上限値が100μm以下の範囲を満たすことにより、反射防止性能を向上させることができる。同様の観点から、75μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、45μm以下であることが最も好ましい。
また、凹凸構造Lのピッチpに、上記説明した乱れを加えることで、凹凸構造Lにより生じる回折光を弱めることができる。凹凸構造Lのピッチpに対する(標準偏差/相加平均)は、上記最も広い範囲(0.025以上0.8以下)の中において、0.03以上0.4以下であると好ましい。特に、0.03以上であることにより、光回折を乱す効果が大きくなり、0.4以下であることにより反射防止性能を向上させることができる。同様の観点から、0.035以上が好ましく、0.04以上がより好ましい。また、0.35以下が好ましく、0.25以下がより好ましく、0.15以下が最も好ましい。
なお、凹凸構造Lのピッチpの乱れは、高い規則性を有しても規則性が低くてもよい。例えば、六方配列、準六方配列、準四方配列、及び四方配列を非規則的に含む特異構造を含む凹凸構造の場合、凹凸構造Lのピッチpの乱れの規則性は低下するため、光回折を弱める効果が大きくなる。一方、正六方配列において、ピッチpの増減が周期的に生じるような特異構造を含む凹凸構造の場合、ピッチpの乱れは高い規則性を有すこととなるため、凹凸構造Sにより反射防止性能を発現すると共に、所定の波長の光を抽出することができる。また、例えば、基本構造である正六方配列の中に局所的に特異構造である非正六方配列(例えば、四方配列)部位が配置される場合、該特異構造が非規則的に散在すれば、凹凸構造Lのピッチpの乱れの規則性は低下するため、光回折を弱める効果が大きくなる。一方、基本構造である正六方配列の中に局所的に特異構造である非正六方配列(例えば、四方配列)部位が配置され、該特異構造が規則的に設けられる場合、凹凸構造Lのピッチpの乱れは高い規則性を有すこととなるため、凹凸構造Sにより反射防止性能を発現すると共に、所定の波長の光を抽出することができる。
凹凸構造Lの凸部頂部幅lcvtと凹部開口幅lcctと、の比率(lcvt/lcct)は、小さい程好ましく、実質的に0であると最も好ましい。なお、lcvt/lcct=0とは、凹凸構造Lの凸部頂部に平坦面のない場合を意味する。換言すれば、凹凸構造Lの凸部頂部が鋭角にとがっている場合或いは、凸部頂部が丸みを帯びている場合がlcvt/lcct=0である。特に、強度を向上させ、且つ反射防止性能を維持する観点から、凹凸構造Lの凸部頂部は丸みを帯びた形状であると好ましい。比率(lcvt/lcct)が3以下であると、反射防止性能を維持する効果が大きくなるため好ましい。更に、(lcvt/lcct)が1以下であることにより、凸部頂部における反射を抑制できるため好ましく、0.4以下であることで凸部頂部と凸部側面と、を滑らかに接続できるため好ましい。前記効果を発揮し反射防止性能と強度を同時に向上させる観点から、0.2以下がより好ましく、0.15以下がなお好ましい。
更に、凸部頂部幅lcvtは凸部底部幅lcvbよりも小さい形状であると、上記説明した比率(lcvt/lcct)を満たすことが容易となり、このため、既に説明したメカニズムにより、強度の向上と反射防止性能の向上を同時に実現できる。
凸部底部幅lcvbとピッチpと、の比率(lcvb/p)で表されるデューティは、0.03以上0.5以下であると好ましい。0.03以上であることにより、強度の向上効果が大きくなる。同様の効果から、比率(lcvb/p)は0.05以上であることがより好ましく、0.10以上であることが最も好ましい。一方、0.83以下であることにより、反射防止性能の維持効果が良好となる。同様の効果から、比率(lcvb/p)は0.4以下がより好ましく、0.4以下であることが最も好ましい。
なお、以下に説明する凸部底部外接円径φout及び凸部底部外接円径φout/凸部底部内接円径φinが上記式(1)を満たすことで、回折光を弱める効果が大きくなるため好ましい。凸部底部外接円径φoutが乱れを有すことは、デューティが乱れを有すことを意味する。
アスペクト比が0.1以上であることにより、凹凸構造Sの破壊を抑制する効果が得られる。同様の観点から、0.3以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、0.8以上が最も好ましい。一方、アスペクト比は5以下であることにより、凹凸構造Lの破壊を抑制することができる。同様の効果から、2以下が好ましく、1.5以下がより好ましく、1.0以下が最も好ましい。
なお、以下に説明する高さHが上記式(1)を満たす乱れを有す場合、光回折を抑制する効果が大きくなるため好ましい。この場合、同時にアスペクト比も乱れを有すこととなる。なお、凹凸構造Lの高さHの乱れは、高い規則性を有しても規則性が低くてもよい。即ち、アスペクト比の乱れは、高い規則性を有しても規則性が低くてもよい。例えば、中心高さH0、最小高さH1、最大高さH2の凹凸構造Lがあり、高さHが前記範囲内で規則性低く乱れを有す特異構造を含む凹凸構造Lの場合、凹凸構造Lの高さHの乱れの規則性は低下し、光回折を抑制する効果が発現される。一方、高さHの増減が周期的に生じる特異構造を含む凹凸構造の場合、高さHの乱れは高い規則性を有すこととなり、凹凸構造Sにより反射防止性能を発現すると共に、所定の波長の光を抽出することができる。また、例えば、高さH1の集合である基本構造の中に局所的に高さH2の特異部位が配置される場合、該特異部位が非規則的に散在すれば、凹凸構造Lの高さHの乱れの規則性は低下し、光回折を抑制する効果が発現される。一方、高さH1の集合である基本構造の中に局所的に高さH2の特異部位が配置され、該特異部位が規則的に設けられる場合、高さHの乱れは高い規則性を有すこととなり、凹凸構造Sにより反射防止性能を発現すると共に、所定の波長の光を抽出することができる。
凸部底部外接円径φoutと凸部底部内接円径φinとの比率(φout/φin)は、凸部底部輪郭Aの歪を表す尺度である。該比率(φout/φin)は、1以上3以下であることが好ましい。比率(φout/φin)が1の場合、凸部底部輪郭Aは真円となる。この場合、凹凸構造Lの設計に際し、光学シミュレーションを好適に作用させることが可能となると共に、凹凸構造Lの凸部の強度が向上する。一方、比率(φout/φin)が3以下であることにより、凹凸構造Sの破壊を抑制する効果が大きくなる。同様の効果から、2以下がより好ましく、1.5以下が最も好ましい。
また、凸部底部外接円径φoutの乱れにより光回折を抑制する観点から、乱れの要因となっている凹凸構造Lの凸部底部外接円径φoutに対する(標準偏差/相加平均)は、上記最も広い範囲(0.025〜0.8)の中において、0.03以上0.4以下であると好ましい。特に、0.03以上であることにより、光回折の乱れが大きくなるため好ましい。0.4以下であることにより強度と反射防止性能を維持する効果が大きくなる。同様の観点から、0.04以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、0.06以上が最も好ましい。また、0.35以下が好ましく、0.25以下がより好ましく、0.15以下が最も好ましい。
また、比率(φout/φin)の乱れにより光回折を抑制する観点から、乱れの要因となっている凹凸構造の比率(φout/φin)に対する(標準偏差/相加平均)は、上記最も広い範囲(0.025〜0.8)の中において、0.03以上0.35以下であると好ましい。特に、0.03以上であることに光回折を乱す効果が大きくなる。0.35以下であることにより強度と反射防止性能を維持する効果が大きくなる。同様の観点から、0.04以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、0.06以上が最も好ましい。また、0.25以下が好ましく、0.15以下がより好ましく、0.10以下が最も好ましい。
上記凸部底部外接円径φout及び凸部底部外接円径φout/凸部底部内接円径φinが、上記範囲を満たす場合、凹凸構造の乱れに基づく光回折を抑制する効果が大きくなるため好ましい。
また、凸部底部外接円径φoutと上記説明した高さHと、が上記式(1)の範囲を満たすことで、乱れに相当する部位の体積変化が大きくなることから、光回折の抑制がいっそう良好となる。同様の効果から、凸部底部外接円径φout、高さH及びピッチpが上記式(1)を満たすと好ましく、凸部底部外接円径φout、高さH、ピッチp及び凸部底部外接円径φout/凸部底部内接円径φinが上記式(1)を満たすとより好ましい。
また、高さHの乱れにより光回折を抑制する観点から、乱れの要因となっている凹凸構造Lの高さHに対する(標準偏差/相加平均)は、上記最も広い範囲(0.025〜0.8)の中において、0.03以上0.40以下であると好ましい。特に、0.03以上であることにより、光回折の抑制効果が大きくなる。0.40以下であることにより強度と反射防止性能を維持する効果が大きくなる。同様の観点から、0.04以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、0.12以上が最も好ましい。また、0.35以下が好ましく、0.3以下がより好ましく、0.25以下が最も好ましい。
上記高さHが、上記範囲を満たす場合、凹凸構造Lの乱れに基づく光回折の抑制効果が大きくなるため好ましい。同様の原理から、高さH、ピッチp及び凸部底部外接円径φoutが上記式(1)を満たすとより好ましく、高さH、ピッチp、凸部底部外接円径φout、及び凸部底部外接円径φout/凸部底部内接円径φinが上記式(1)を満たすとより好ましい。
なお、高さHの乱れは、高い規則性を有しても規則性が低くてもよい。例えば、中心高さH0、最小高さH1、最大高さH2の凹凸構造Lがあり、高さHが前記範囲内で規則性低く乱れを有す特異構造を含む凹凸構造Lの場合、凹凸構造Lの高さHの乱れの規則性は低下し、光回折を乱す効果が大きくなる。一方、高さHの増減が周期的に生じる特異構造を含む凹凸構造Lの場合、高さHの乱れは高い規則性を有すこととなり、凹凸構造Sにより反射防止性能を発現すると共に、特定の波長の光を抽出することができる。また、例えば、高さH1の集合である基本構造の中に局所的に高さH2の特異部位が配置される場合、該特異部位が非規則的に散在すれば、凹凸構造Lの高さHの乱れの規則性は低下し、光回折を乱す効果が大きくなる。一方、高さH1の集合である基本構造の中に局所的に高さH2の特異部位が配置され、該特異部位が規則的に設けられる場合、高さHの乱れは高い規則性を有すこととなり、凹凸構造Sにより反射防止性能を発現すると共に、特定の波長の光を抽出することができる。
<凹凸構造S>
凹凸構造Sの主たる機能は反射防止性能の向上、即ち低反射率を実現することである。
凹凸構造Sの充填率は、有効媒質近似を好適に作用させ反射率を低減する観点から、65%以上であることが好ましい。特に、70%以上であることにより、有効媒質近似的屈折率の急峻な変化を抑制できるため好ましい。同様の効果から、80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることが最も好ましい。なお、充填率が100%の場合は、隣接する凸部同士が滑らかな凹部を通じつながった状態であり、反射抑制の効果が特に大きいため好ましい。
凹凸構造Sの平均ピッチPSは、反射防止性能を発現可能な光の波長帯域を増加させる観点から、50nm以上800nm以下であることが好ましい。特に、可視光域において低反射率を実現するために、50nm以上400nm以下を満たすことが好ましく、50nm以上300nm以下を満たすことがより好ましく、50nm以上250nm以下を満たすことが最も好ましい。
また、凹凸構造Sのピッチpに、上記説明した乱れを加えることで、凹凸構造Sによる光回折を抑制することができる。凹凸構造Sのピッチpに対する(標準偏差/相加平均)は、上記最も広い範囲(0.025以上0.8以下)の中において、0.03以上0.5以下であると好ましい。特に、0.03以上であることにより、光回折を乱す効果が大きくなる。一方、0.4以下であることにより低反射率を維持することができる。同様の観点から、0.035以上が好ましく、0.04以上がより好ましい。また、0.35以下が好ましく、0.25以下がより好ましく、0.15以下が最も好ましい。
なお、凹凸構造Sのピッチpの乱れは、上記説明した凹凸構造Lのピッチpの乱れと同様に高い規則性を有しても規則性が低くてもよい。
凹凸構造Sの配列は、低反射率を実現する観点から、六方配列、準六方配列、準四方配列、四方配列、又はこれらの組み合わされた配列、或いは規則性の低い配列を採用できる。特に、凹凸構造Sの充填率を向上させるために、六方配列であることが好ましい。
凹凸構造Sの凸部頂部幅lcvtは、小さい程好ましい。これは、有効媒質近似的屈折率の急峻な変化を抑制するためである。凹凸構造Sの凸部頂部幅lcvtと凹部開口幅lcctと、の比率(lcvt/lcct)は、小さい程好ましく、実質的に0であると最も好ましい。なお、lcvt/lcct=0とは、lcvt=0nmであることを意味する。しかしながら、例えば、走査型電子顕微鏡によりlcvtを測定した場合であっても、0nmは正確には計測できない。よって、ここでのlcvtは測定分解能以下の場合全てを含むものとする。比率(lcvt/lcct)が3以下であると、凸部頂部面積が減少し、有効媒質近似的屈折率がなだらかに変化するため好ましい。更に、(lcvt/lcct)が1以下であることにより、凸部の体積変化を小さくすることができるため、反射率を小さくすることができる。前記効果をより発揮する観点から、(lcvt/lcct)は、0.4以下が好ましく、0.2以下がより好ましく、0.15以下がなお好ましい。
更に、凸部頂部幅lcvtは凸部底部幅lcvbよりも小さい形状であると、有効媒質近似的屈折率の急峻な変化を効果的に抑制できるため、反射防止性能を向上させることができる。
また、凹凸構造Sは、ドット構造であると凸部頂部幅lcvt及び凸部底部幅lcvbの制御が容易となり、比率(lcvt/lcct)を満たすことが容易となり、このため、既に説明したメカニズムにより、反射防止性能が向上する。
アスペクト比が0.5以上であることにより、凹凸構造Sによる反射防止性能が発現される。一方、凹凸構造Sの破壊を抑制する観点から、アスペクト比は5以下であることが好ましい。有効媒質近似的屈折率の変化をよりなだらかにする観点から、1.0以上が好ましく、1.2以上がより好ましく、1.5以上最も好ましい。一方、凹凸構造Sに加わるモーメントエネルギーを小さくし、破壊を抑制する観点から、アスペクト比は4以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましく、2以下であることが最も好ましい。
なお、以下に説明する高さHが上記式(1)を満たす乱れを有す場合、上記凹凸構造Lにおいて説明したのと同様に光回折を抑制することができる。この場合、同時にアスペクト比も乱れを有すこととなる。なお、凹凸構造Sの高さHの乱れは、高い規則性を有しても規則性が低くてもよい。即ち、アスペクト比の乱れは、高い規則性を有しても規則性が低くてもよい。例えば、中心高さH0、最小高さH1、最大高さH2の凹凸構造Sがあり、高さHが前記範囲内で規則性低く乱れを有す特異構造を含む凹凸構造Sの場合、凹凸構造Sの高さHの乱れの規則性は低下し、光回折を効果的に乱すことができる。一方、高さHの増減が周期的に生じる特異構造を含む凹凸構造の場合、高さHの乱れは高い規則性を有すこととなり、反射防止性能を発現しつつ、所定の光を抽出することが可能となる。また、例えば、高さH1の集合である基本構造の中に局所的に高さH2の特異部位が配置される場合、該特異部位が非規則的に散在すれば、凹凸構造Sの高さHの乱れの規則性は低下し、光回折を乱す効果が大きくなる。一方、高さH1の集合である基本構造の中に局所的に高さH2の特異部位が配置され、該特異部位が規則的に設けられる場合、高さHの乱れは高い規則性を有すこととなり、反射防止性能を発現すると共に、所定の光を抽出することができる。
凸部底部外接円径φoutと凸部底部内接円径φinとの比率(φout/φin)は、凸部底部輪郭Aの歪を表す尺度である。該比率(φout/φin)は、1以上5以下であることが好ましい。比率(φout/φin)が1の場合、凸部底部輪郭Aは真円となる。この場合、凹凸構造Sの設計に際し、光学シミュレーションを好適に作用させることが可能となると共に、充填率が向上するため反射防止性能が向上する。一方、比率(φout/φin)が5以下であることにより、反射防止性能を維持すると共に、強度が向上する。特に、強度をより向上させる観点から、比率(φout/φin)は、3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましく、1.5以下であることが最も好ましい。
また、凸部底部外接円径φoutの乱れにより光回折を抑制する観点から、比率(φout/φin)に対する(標準偏差/相加平均)は、上記凹凸構造Lにて説明した範囲を満たすことができる。
上記凸部底部外接円径φout及び凸部底部外接円径φout/凸部底部内接円径φinが、上記範囲を満たす場合、凹凸構造の乱れにより光回折を効果的に抑制することができる。また、凸部底部外接円径φoutと上記説明した高さHと、が上記式(1)の範囲を満たすことで、乱れ部位における凹凸構造の体積変化が大きくなり、光回折を抑制する効果が大きくなる。同様の効果から、凸部底部外接円径φout、高さH及びピッチpが上記式(1)を満たすと好ましく、凸部底部外接円径φout、高さH、ピッチp及び凸部底部外接円径φout/凸部底部内接円径φinが上記式(1)を満たすとより好ましい。
凹凸構造Sの凸部の高さHは、平均ピッチ(pav)の3倍以下であると、凹凸構造Sの強度が向上する。強度と反射防止性能を両立する観点から、2倍以下であることがより好ましく、1.5倍以下であることが最も好ましい。
また、高さHの乱れにより光回折を抑制する観点から、乱れの要因となっている凹凸構造Sの高さHに対する(標準偏差/相加平均)は、上記凹凸構造Lにて説明した範囲を満たすことができる。
上記高さHが、上記範囲を満たす場合、凹凸構造Sの乱れにより光回折を抑制することができる。同様の原理から、高さH、ピッチp及び凸部底部外接円径φoutが上記式(1)を満たすとより好ましく、高さH、ピッチp、凸部底部外接円径φout、及び凸部底部外接円径φout/凸部底部内接円径φinが上記式(1)を満たすとより好ましい。
なお、高さHの乱れは、高い規則性を有しても規則性が低くてもよい。例えば、中心高さH0、最小高さH1、最大高さH2の凹凸構造Sがあり、高さHが前記範囲内で規則性低く乱れを有す特異構造を含む凹凸構造Sの場合、凹凸構造Sの高さHの乱れの規則性は低下し、光回折を抑制することができる。一方、高さHの増減が周期的に生じる特異構造を含む凹凸構造Sの場合、高さHの乱れは高い規則性を有すこととなり、反射防止性能を発現すると共に、所定の波長の光を抽出することができる。また、例えば、高さH1の集合である基本構造の中に局所的に高さH2の特異部位が配置される場合、該特異部位が非規則的に散在すれば、凹凸構造Sの高さHの乱れの規則性は低下し、光回折を抑制することができる。一方、高さH1の集合である基本構造の中に局所的に高さH2の特異部位が配置され、該特異部位が規則的に設けられる場合、高さHの乱れは高い規則性を有すこととなり、反射防止性能を発現すると共に、所定の波長の光を抽出することができる。
次に凹凸構造S、凹凸構造L及び基材11を構成する物質について説明する。凹凸構造S、凹凸構造L及び基材11を構成する物質は、上記説明した屈折率の関係を満たせば、反射防止性能を発現可能なため限定されず、光硬化性樹脂の硬化物、熱硬化性樹脂の硬化物、熱可塑性樹脂、無機前駆体の硬化物、硬化性有機無機混合物の硬化物、硬化性有機無機ハイブリッド樹脂の硬化物、絶縁無機物、導電無機物、半導体などを使用することができる。
中でも、反射防止により高透過率にて透過した出光光を利用する観点から、凹凸構造S、凹凸構造L及び基材11を構成する物質は光学的に透明な物質であると好ましい。ここで、光学的に透明とは、消衰係数(k)が0であることと定義する。k=0であることにより、吸収係数を0にすることが可能となる。このため、光が反射防止体内部にて吸収され減衰するのを抑制することができる。ここで、吸収係数kが0である場合とは、k≦0.01を満たす範囲と定義する。この範囲を満たすことで上記効果を得られるため好ましい。特に、多重反射を抑制する観点からk≦0.001であるとより好ましい。なお、kは小さい程好ましい。
次に、本実施の形態に係る反射防止体10の製造方法について説明する。
本実施の形態に係る反射防止体10の製造方法は、上記説明した条件を満たした凹凸構造面を基板の表面に作製できれば特に限定されない。
凹凸構造面20は、凹凸構造面20の反転形状である微細パタンを具備した鋳型を用いた、転写法或は射出成型により作製することができる。
また、凹凸構造Sを作製し、続いて凹凸構造Lを作製することでも、凹凸構造面20を作製することができる。凹凸構造Sの作製方法は2つに分類できる。
(1)基材を直接加工し凹凸構造Sを設ける場合
基材11を直接加工し凹凸構造Sを設ける方法としては、転写法、フォトリソグラフィ法、熱リソグラフィ法、電子線描画法、干渉露光法、ナノ粒子をマスクとしたリソグラフィ法、自己組織化構造をマスクとしたリソグラフィ法などを挙げることができる。基材11が無機物の場合はフォトリソグラフィ法、干渉露光法が有用である。また、基材11が有機物の場合は、転写法が有効である。転写法については後述する。
(2)凹凸構造Sを基材上に別途設ける場合
凹凸構造Sを基材11上に別途設ける方法としては、転写法、粒子を内包する薄膜を基材11上に成膜する方法、ナノ粒子を自己配列させる方法、基材11上に成膜したレジストの一部を除去し、除去された部分に凹凸構造Sを構成する材料を満たし(例えば、蒸着やスパッタ法、電鋳法)、最後にレジストを除去する方法、基材11上に凹凸構造Sの材料を成膜し、成膜された凹凸構造Sの材料を直接加工する方法、ブロックコポリマーの自己組織化を用いる方法、エレクトロスピニング法、化学蒸着法、化学溶液析出法(Liquid Phase Deposition法)、交互吸着法(Layre by Layer Adsorption法)などが挙げられる。中でも、凹凸構造を精度高く、且つ生産性高く製造できるため転写法を採用すると好ましい。転写法については後述する。
上記説明した方法により凹凸構造Sを作製し、続いて凹凸構造Lを作製することで凹凸構造面20を作製できる。
凹凸構造Lを凹凸構造S上に設ける方法としては、転写法、インクジェット法、ノズルに強電場を加えるインクジェット法、キャスト法、エレクトロスピニング法、マイクロ粒子を配列させる方法、フォトリソグラフィ法、熱リソグラフィ法、電子線描画法、干渉露光法、ナノ粒子をマスクとしたリソグラフィ法、自己組織化構造をマスクとしたリソグラフィ法などが挙げられる。転写法、インクジェット法、キャスト法を採用すると好ましい。転写法については後述する。
(転写法)
転写法を、表面に微細パタンを具備したモールドの、微細パタンを被処理体に転写する工程を含む方法として定義する。即ち、モールドの微細パタンと被処理体とを転写材を介して貼合する工程と、モールドを剥離する工程と、を少なくとも含む方法である。なお、基材11と凹凸構造面20とが同じ材料よりなる場合、前記転写材は被処理体と同義である。より具体的に、転写法は2つに分類することができる。
第1に、基材11を直接変形させる方法である。この場合、被処理体(基材11)の変形可能な温度以上の温度にて、モールドの微細パタンを被処理体に対し押圧し、冷却後モールドを剥離することができる。例えば、基材として、ガラスや熱可塑性樹脂を採用することができる。
第2に、基材11上に別途凹凸構造を設ける場合である。モールドの微細パタンを転写材を介し被処理体上に押圧する工程(1)と、転写材を硬化させる工程(2)と、微細パタンを除去する工程(3)と、を含む方法である。転写材がエネルギー線硬化性樹脂の場合、工程(2)においては、エネルギー線を照射し、転写材を硬化させる。転写材が熱硬化性樹脂の場合は、工程(2)において、加熱を行い転写材を硬化させる。
特に、転写法を採用する場合、ロール・ツー・ロール法を採用することができるため、凹凸構造の精度及び生産性を向上させることができる。この場合、モールドは円筒状のモールド、すなわち円筒状マスターであり、円筒表面に微細パタンが設けられる。
即ち、本実施の形態に係る円筒状マスターは、転写法に使用される鋳型であり、上記説明した凹凸構造面20の反転形状をした微細パタンを円筒の表面に具備する。円筒表面の材質は特に限定されず、ガラス、石英、アルミ、酸化アルミ、クロム、酸化クロムなどを採用できる。また、円筒状マスターの微細パタン表面にメチル基或いはフッ素を含む基を担持することで、転写法の精度が向上するため好ましい。
円筒状マスターの具備する微細パタンが、上記説明した凹凸構造の反転形状であることにより、円筒状マスターより反射防止体10を剥離する際に加わる、凹凸構造Sに対する外力を弱め、且つ凹凸構造Sに対する応力を分散化できるため、反射防止体10の凹凸構造面の精度を向上させることができる。
以下、本発明の効果を確認するために行った実施例について説明する。
以下の説明において使用する記号は、以下の意味を示す。
・DACHP…フッ素含有ウレタン(メタ)アクリレート(OPTOOL DAC HP(ダイキン工業社製))
・M350…トリメチロールプロパン(EO変性)トリアクリレート(東亞合成社製 M350)
・I.184…1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製 Irgacure(登録商標) 184)
・I.369…2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(BASF社製 Irgacure(登録商標) 369)
・TTB…チタニウム(IV)テトラブトキシドモノマー(和光純薬工業社製)
・SH710…フェニル変性シリコーン(東レ・ダウコーニング社製)
・3APTMS…3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM5103(信越シリコーン社製))
・DIBK…ジイソブチルケトン
・MEK…メチルエチルケトン
・MIBK…メチルイソブチルケトン
・DR833…トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(SR833(SARTOMER社製))
・SR368…トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート(SR833(SARTOMER社製)
(実施例1、2)
表面に凹凸構造面を具備する反射防止体を作製し、反射防止体の強度と反射率を比較した。
(実施例1)
以下の検討においては、表面に凹凸構造面を具備する反射防止体を作製するために、凹凸構造Sを作製し、続いて凹凸構造Lを凹凸構造Sの表面上に作製した。
・凹凸構造Sの作製
凹凸構造Sは、微細パタンを表面に具備する円筒状マスターモールを作製し、続いて円筒状マスターモールドの微細パタンを転写法により連続的にフィルムへと写し取ることで作製した。
(1)円筒状マスターモールドの作製
半導体レーザを用いた直接描画リソグラフィ法により円筒状石英ガラスの表面に、凹凸構造Sの反転形状を形成した。まず円筒状石英ガラス表面上に、スパッタリング法によりレジスト層を成膜した。スパッタリング法は、ターゲット(レジスト層)として、φ3インチのCuO(8atm%Si含有)を用いて、RF100Wの電力で実施し、20nmのレジスト層を成膜した。続いて、円筒状石英ガラスを回転させながら、波長405nmn半導体レーザを用いレジスト層全面に露光を行った。続いて、一度露光されたレジスト層に対し、波長405nmの半導体レーザを用い、パルス露光を行った。パルスの間隔は、円周方向に200nmとし、軸方向に173nmとした。また、パルスの配列は六方配列とした。パルス露光後に、レジスト層の現像を行った。現像は、0.03wt%のグリシン水溶液を用いて、240sec処理とした。次に、現像したレジスト層をマスクとし、ドライエッチングによるエッチング層(石英ガラス)のエッチングを行った。ドライエッチングは、エッチングガスとしてSF6を用い、処理ガス圧1Pa、処理電力300W、処理時間5分の条件で実施した。最後に、表面に微細パタンが付与された円筒状石英ガラスから、レジスト層残渣のみを、pH1の塩酸を用い剥離した。剥離時間は6分間とした。
得られた円筒状石英ガラスの微細パタンに対し、フッ素系離型剤であるデュラサーフHD−1101Z(ダイキン化学工業社製)を塗布し、60℃で1時間加熱後、室温で24時間静置し固定化した。その後、デュラサーフHD−ZV(ダイキン化学工業社製)で3回洗浄し、円筒状マスターモールドを得た。
(2)凹凸構造Sを具備したリールの作製
作製した円筒状マスターモールドを鋳型とし、光ナノインプリント法を適用し、連続的にリール表面に凹凸構造Sを作製した。
幅300mm、長さ200mのTAC(トリアセチルセルロース)フィルムから保護フィルムを剥離し、保護フィルムの合わさっていた面に対してマイクログラビアコーティング(廉井精機社製)により、塗布膜厚3μmになるように以下に示す転写材料を塗布した。次いで、円筒状マスターモールドに対し、材料1が塗布されたTACフィルムをニップロールで押し付け、大気下、温度25℃、湿度60%で、ランプ中心下での積算露光量が1500mJ/cm2となるように、フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製UV露光装置(Hバルブ)を用いて紫外線を照射し、連続的に光硬化を実施し、表面に凹凸構造Sが転写されたリール(長さ200m、幅300mm)を得た。なお、転写材料としては、光硬化性アクリレート樹脂を使用した。光硬化性アクリレートは、硬化後の屈折率が1.53(550nm)のものを使用した。
得られたリール表面の凹凸構造Sを走査型電子顕微鏡を用い観察したところ、凹凸構造Sの配列及び形状は以下の通りであった。
配列・・・六方配列であった。フィルム長手方向のピッチが200nmであった。平均ピッチPSが200nmであった。
形状・・・凸部高さHが250nmであった。凸部底部の径は190nm。凸部底部から凸部頂部に向かうに従い、凸部の径は細くなっていた。また、凸部頂部に平坦面はなかった。
・凹凸構造面の作製
上記のようにして得た凹凸構造Sを具備するリールの凹凸構造S面上に凹凸構造Lを作製することで、凹凸構造S及び凹凸構造Lで構成された凹凸構造面を具備するリール状反射防止体を得た。
凹凸構造Sの表面に、凹凸構造Sと同様の原料をインクジェット法により滴下した。続いて、窒素パージにより酸素濃度を減少させた環境中にて、高圧水銀灯により光照射を行い、インクジェットにより滴下された液滴を硬化させた。
得られたリール状反射防止体が具備する凹凸構造面を、走査型電子顕微鏡を用い観察したところ、凹凸構造Sの形状に変化はないことがわかった。また、凹凸構造Lの配列及び形状は以下の通りであった。
配列・・・六方配列であった。平均ピッチは200μmであった。
形状・・・凸部底部の平均径は、5μm又は10μmであった。凸部底部の形状は、真円に近いものから、輪郭の歪んだものまで含まれていた。また、凸部頂部と凸部側面とは連続的に滑らかにつながっていた。
また、凹凸構造Sの平均凸部頂部位置と凹凸構造Lの平均凸部頂部位置との距離は、0.5μm〜5μmであった。
表1に、実施例1で得られたサンプルNo.1及びNo.2のリール状反射防止体について、凹凸構造S及び凹凸構造Lの、配列、平均ピッチpav、凸部底部径lcvb及び充填率、並びに、凹凸構造Sの平均凸部頂部位置と凹凸構造Lの平均凸部頂部位置との距離(表1中、単に「距離」と記す)を記載した。なお、表1中で、「Hex」とは、六方配列を意味する。
(実施例2)
実施例2においては、凹凸構造L及び凹凸構造Sの反転形状で構成される微細パタンを具備する平板状マスターを製造し、平板状マスターの微細パタンを転写法により、リール表面へと写し取ることで、凹凸構造S及び凹凸構造Lで構成された凹凸構造面を具備する反射防止体を作製した。
(1)平板状マスターモールドの作製
半導体レーザを用いた直接描画リソグラフィ法により平板状石英ガラスの表面に、凹凸構造Sの反転形状を形成した。まず平板状石英ガラス表面上に、スパッタリング法によりレジスト層を成膜した。スパッタリング法は、ターゲット(レジスト層)として、φ3インチのCuO(8atm%Si含有)を用いて、RF100Wの電力で実施し、20nmのレジスト層を成膜した。続いて、平板状石英ガラスを回転させながら、波長405nmn半導体レーザを用いレジスト層全面に露光を行った。続いて、一度露光されたレジスト層に対し、波長405nmの半導体レーザを用い、パルス露光を行った。パルスの間隔は、円周方向に200nmとし、軸方向に173nmとした。また、パルスの配列は六方配列とした。パルス露光後に、レジスト層の現像を行った。現像は、0.03wt%のグリシン水溶液を用いて、240sec処理とした。次に、現像したレジスト層をマスクとし、ドライエッチングによるエッチング層(石英ガラス)のエッチングを行った。ドライエッチングは、エッチングガスとしてSF6を用い、処理ガス圧1Pa、処理電力300W、処理時間5分の条件で実施した。最後に、表面に凹凸構造Sに対応する微細パタンが付与された円筒状石英ガラスから、レジスト層残渣のみを、pH1の塩酸を用い剥離した。剥離時間は6分間とした。
続いて、凹凸構造Sの反転形状を具備する平板状石英ガラスの微細パタン面側からフォトリソグラフィ法により、凹凸構造Lに対応する微細パタンを作製した。このようにして、平板状石英ガラスの表面に凹凸構造S及び凹凸構造Lの反転形状で構成された微細パタンを形成した。
得られた平板状石英ガラスの微細パタンに対し、フッ素系離型剤であるデュラサーフHD−1101Z(ダイキン化学工業社製)を塗布し、60℃で1時間加熱後、室温で24時間静置し固定化した。その後、デュラサーフHD−ZV(ダイキン化学工業社製)で3回洗浄し、平板状マスターモールドを得た。
(2)反射防止体の作製
作製した平板状マスターモールドを鋳型とし、光ナノインプリント法を適用し、反射防止フィルムを作製した。
幅150mm、長さ200mmのTAC(トリアセチルセルロース)フィルムから保護フィルムを剥離し、保護フィルムの合わさっていた面に対してバーコータを用い、転写材料を塗布した。塗布膜厚は5μmとした。続いて、転写材料面を平板状マスターの微細パタン面にラミネーションし、平板状マスター面側より、高圧水銀灯を用い、積算光量が1500mJ/cm2になるように光照射を行った。最後に、TACフィルムを剥離することで、フィルム状の反射防止体を得た。なお、転写材料としては、実施例1と同様の光硬化性アクリレート樹脂を使用した。
得られた反射防止体が具備する凹凸構造面を走査型電子顕微鏡を用い観察したところ、凹凸構造面の配列及び形状は以下の通りであった。
・凹凸構造S
配列・・・六方配列であった。ピッチが200nmであった。平均ピッチPSが200nmであった。
形状・・・凸部高さHが250nmであった。凸部底部の径は190nm。凸部底部から凸部頂部に向かうに従い、凸部の径は細くなっていた。また、凸部頂部に平坦面はなかった。
・凹凸構造L
配列・・・六方配列であった。平均ピッチは50μmであった。
形状・・・凸部底部の平均径は、1μm、5μm、或いは10μmのいずれかであった。凸部底部の形状は、真円に近いものから、輪郭の歪んだものまで含まれていた。また、凸部頂部と凸部側面とは連続的に滑らかにつながっていた。
また、凹凸構造Sの平均凸部頂部位置と凹凸構造Lの平均凸部頂部位置と、の距離は、0.2μm〜1μmであった。
表1に、実施例2で得られたサンプルNo.3〜No.5の反射防止フィルムについて、凹凸構造S及び凹凸構造Lの、配列、平均ピッチpav、凸部底部径lcvb及び充填率、並びに、凹凸構造Sの平均凸部頂部位置と凹凸構造Lの平均凸部頂部位置との距離(表1中、単に「距離」と記す)を記載した。なお、表1中で、「Hex」とは、六方配列を意味する。
(比較例)
比較例として、以下の3つのサンプルを作製した。
A、B…上記転写材料の硬化物からなる凹凸構造Lのみを具備したTACフィルム
C…上記転写材料の硬化物からなる凹凸構造Sのみを具備したTACフィルム
表1に、比較例で得られたサンプルA〜Cの反射防止フィルムについて、凹凸構造S及び凹凸構造Lの、配列、平均ピッチpav、凸部底部径lcvb及び充填率、並びに、凹凸構造Sの平均凸部頂部位置と凹凸構造Lの平均凸部頂部位置との距離(表1中、単に「距離」と記す)を記載した。なお、表1中で、「Hex」とは、六方配列を意味する。
(評価)
以上、実施例1、2並びに比較例で作製した反射防止体に対し、以下2つの検討を行った。
・試験1:強度
上記実施例1、2及び比較例にて作製した反射防止体の凹凸構造面側を、乾燥した布で50回(往復)ふきあげた。ふきあげ後、目視にて観察した。傷や濁り(ヘイズ)が観察された場合を×と表記し、ふきあげ前後で変化がなかった場合を○と表記した。
・試験2:光学性能
上記実施例1、2及び比較例にて作製した反射防止体を、携帯電話の液晶画面上に光学接着剤を介し接着した。
2−1:反射防止体を備えた携帯電話を1週間使用し、反射防止体を備えない携帯電話に比べて、液晶画面の鮮明さに欠けるといった違和感を覚えた回数を集計し統計処理した。反射防止体を備えない場合よりも鮮明さが増加していた場合を◎、同程度の場合を〇、僅かに鮮明さが欠けた場合を△、画像が見づらい場合を×とした。
2−2:外光(太陽光)反射により液晶画面の視認性が低下したと認識した回数Nを記録した。最後に、太陽光下にて携帯電話を操作した総合時間Tにて、該回数Nを除し、N/Tを算出した。
以上の試験1及び2並びに総合評価の結果を表1に記載した。
表1からわかるように、凹凸構造S及び凹凸構造Lを所定の位置関係にて具備することで、強度が向上することがわかる。これは、凹凸構造Lにより、凹凸構造Sに加わる応力を抑制できたためと推定される。一方で、凹凸構造Lのみの比較例のサンプルA及びBの場合、強度が強いが携帯電話に搭載した場合の違和感が大きいことがわかる。これは、凹凸構造Sを備えないこと、又凹凸構造Lによる散乱性が強く発現されたためである。凹凸構造Sのみを備える比較例のサンプルCの場合、携帯電話に搭載することで違和感は減少し、画像がより鮮明になった。これは、凹凸構造Sによる反射防止機能が発現されためである。しかしながら、強度が弱い。また、外光による視認性低下回数も多い。これは、凹凸構造Sの場合、有効媒質近似的作用により反射防止を実現するため、臨界角が存在することによる。携帯電話の画面と視線と、が垂直な関係にある場合に有効媒質近似作用が最も効果的に発現するが、視線が画面に対して大きな角度となり、所定角度を超えると全反射が生じるためである。実施例1、2にて作製したサンプルNo.1〜No.5のように凹凸構造Lを設けることで、外光に対する視認性も向上することがわかった。これは、凹凸構造Lによる散乱性を発現するためと推定される。
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。