JP2014124643A - 鋼材の被覆方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】鋼材の表面を耐食性金属板で被覆するに際して、高い信頼性でかつ簡便に被覆することができる鋼材の被覆方法を提供する。
【解決手段】鋼材10の表面に複数の被覆板12を隣り合う被覆板12の端部同士が重なり合うように配置し、ローラ電極32a,32bによって圧力をかけながら複数の被覆板12の重なり部17と交差する一辺部11a1を鋼材10に重なり部17を挟んで連続的に抵抗シーム溶接する。その後、複数の被覆板12の一辺部11a1の境界を鋼材10に、一辺部11a1と鋼材10との間に生ずるすきまを塞ぐように本溶接する
【選択図】 図2

Description

本発明は、橋梁、鉄塔、水槽、タンク、桟橋、ポンツーン等の鋼構造物(鋼材)を金属板によって被覆する鋼材の被覆構造及び方法に関し、特に鋼材を耐食性金属板で被覆して長期耐久性を高める鋼材の被覆構造及び方法に関する。
橋梁、鉄塔、水槽、タンク、桟橋、ポンツーン等の鋼構造物は、腐食により赤錆や黄褐色の浮き錆、流れ錆を生じ、景観を損なうばかりでなく、腐食による肉厚減少に起因して構造物としての強度低下を来たす。このため、なんらかの防食対策が必要とされる。鋼構造物の防食対策としては、塗装工法が一般的であり、長期耐久性を高めた重防食塗装も知られているものの、耐用年数に限りがあるという問題がある。定期的な塗り替えも必要であることからメンテナンスも高いという問題がある。
塗装工法のこれらの問題を解決するために、鋼構造物の表面を耐食性のある金属(耐食性金属)の薄板で被覆する方法が知られている。耐食性金属としてはステンレス鋼、ニッケル基合金等が用いられる。これらの金属は耐食性が高く、鋼構造物の表面をこれらの耐食性金属板で覆うことにより、理論的には半永久的な使用が可能になる。
耐食性金属板の鋼材への固定方法として、接着剤、はぜ折り(特許文献1参照)、嵌め合い(特許文献2参照)、モルタル、コンクリート(特許文献3参照)、溶接(特許文献4−6参照)を使用した耐食性金属板の被覆方法が知られている。
特開2003−253820号公報 特開2005−213810号公報 特開平8−232261号公報 特開平11−129090号公報 特開平11−179552号公報 特開2007−162117号公報
しかし、上記の耐食性金属板の被覆方法には以下の問題がある。
社会インフラストラクチャーには50〜100年の耐用年数が要求されるようになっているところ、接着剤を用いた耐食性金属板の被覆方法にあっては、接着剤によって耐食性金属板を貼り付けるだけでは、接合強度が低く、耐食性金属板の脱落が懸念される。
特許文献1(はぜ折り)に記載の被覆方法にあっては、施工が容易なものの隙間から水分が浸透し、鋼材が腐食することがある。また、耐食性金属板の板厚が薄い場合、継手部(はぜ折部)の引張強度が弱いといった欠点がある。
また、特許文献1(はぜ折り)及び特許文献2(嵌め合い)に記載の被覆方法にあっては、鋼材と耐食性金属板の接合が耐食性金属板の周囲のみで行われており、耐食性金属板全体の付着強度が低いという問題がある。また、耐食性金属板同士の接合は、耐食性金属板同士の溶接ではなく、耐食性金属板同士を折り曲げて樹脂でシールしたり、金属板を折り曲げて金属板の上の樹脂フィルム同士を接合したりすることで行われているが、耐食性金属板同士の溶接ほど長期耐久性が高くないという問題がある。
特許文献3(モルタル、コンクリート)に記載の被覆方法にあっては、鋼材と耐食性金属板の接合に有機系接着剤やモルタル、コンクリートが用いられており、耐食性金属板の周囲を溶接しない場合、隙間に入り込んだ腐食因子(例えば、塩化物イオン)が濃縮し、隙間腐食を生じたり、金属板が剥離するおそれがある。
金属板を鋼材に溶接すれば、特許文献1−3に記載の被覆方法の上記問題を解決することができる。金属板を鋼材に溶接する一般的な溶接方法として、アーク溶接に分類されるプラグ溶接やストリップ溶接が用いられるが、これらの溶接を行うためには、通常0.8mm以上の板厚の耐食性金属板が必要である。これ以下の板厚の耐食性金属薄板を用いる場合、少しでも鋼材表面と耐食性金属板との間に隙間があると、溶接時の熱が放散しにくく、溶接時の熱によって耐食性金属板が溶損する(溶けて無くなる)という問題がある。
特許文献4(溶接)には、0.8mm以下の板厚の耐食性金属板を鋼材に溶接する方法が記載されている。しかし、特許文献4には、鋼材に一層の耐食性金属板を溶接する方法が記載されているのみであり、複数の耐食性金属板をお互いの端部同士が重なり合うように配置した場合の溶接方法は記載されていない。大面積の鋼材を被覆する場合には、複数の耐食性金属板をお互いの端部同士が重なり合うように配置する必要がある。
特許文献5(溶接)には、複数の耐食性金属板をお互いの端部同士が重なり合うように配置し、隣り合う耐食性金属板の重なり合う端部同士を重なり部に沿って連続的に抵抗シーム溶接することが記載されている。しかし、抵抗シーム溶接だけでは、重なり部に不可避的にすきまができるので、すきまから海水が浸入するおそれがある。
特許文献6(溶接)には、図6に示すように、鋼管1の外周に円周方向に複数の被覆材2を隣り合う被覆材の端部同士が重なり合うように配置し、隣り合う被覆材2の重なり合う端部同士を管軸方向に連続的に抵抗シーム溶接し(連続の抵抗シーム溶接部を符号3で示す)、また、複数の被覆材2の端部を鋼管1の周方向に重なり部を避けるようにして不連続に抵抗シーム溶接し(不連続の抵抗シーム溶接部を符号4で示す)、被覆材用帯状部材5を複数の被覆材2の境界を覆うように鋼管1に周方向に巻き付け、被覆材用帯状部材5の一方の端部を鋼管1にTIG溶接し(TIG溶接部を符号6で示す)、被覆材用帯状部材5の他方の端部を被覆材2にTIG溶接する(TIG溶接部を符号7で示す)鋼管の被覆方法が記載されている。
特許文献6に記載の被覆方法によれば、被覆材用帯状部材5によって複数の被覆材2と鋼管1との間に生ずるすきまを塞ぐことができる。また、被覆材用帯状部材5を被覆材2にTIG溶接するときに発生する熱は被覆材2の抵抗シーム溶接部4を介して鋼管1に逃げる。このため、薄い被覆材2が溶損するのを防止することができる。
しかし、特許文献6に記載の鋼管の被覆方法にあっては、被覆材用帯状部材5を必要とするので、溶接に手間がかかるという問題がある。
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、鋼材の表面を耐食性金属板で被覆するに際して、高い信頼性でかつ簡便に被覆することができる鋼材の被覆方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、鋼材の表面に複数の被覆板を隣り合う被覆板の端部同士が重なり合うように配置し、ローラ電極によって圧力をかけながら前記複数の被覆板の重なり部と垂直な一辺部を前記鋼材に前記重なり部を挟んで連続的に抵抗シーム溶接し、その後、前記複数の被覆板の前記一辺部の境界を前記鋼材に、前記一辺部と前記鋼材との間に生ずるすきまを塞ぐように本溶接することを特徴とする鋼材の被覆方法である。
本発明によれば、ローラ電極の圧力によって複数の被覆板の重なり部と垂直な一辺部を重なり部の段差にならって変形させ、一辺部と鋼材との間のすきまをできるだけ無くした状態で、一辺部を鋼材に抵抗シーム溶接することができる。複数の被覆板の一辺部の境界を鋼材に本溶接するときに発生する熱は、一辺部の抵抗シーム溶接部を介して鋼材に逃げる。このため、複数の被覆板が溶損するのを防止できる。複数の被覆板の一辺部の境界を覆う金属板を必要としないので、簡便な被覆方法になる。
本発明の第一の実施形態の鋼材の被覆方法の工程図(鋼材に被覆板を抵抗シーム溶接した段階を示し、図1(a)は平面図、図1(b)は図1(a)のb−b線断面図、図1(c)は図1(a)のc部断面図である) 本実施形態の鋼材の被覆方法の工程図(鋼材に被覆板を本溶接し、被覆板に金属板を本溶接した段階を示し、図2(a)は平面図、図2(b)は図2(a)のb−b線断面図、図2(c)は図2(a)のc部断面図である) 本実施形態の鋼材の被覆方法の工程図(金属板に封止板を溶接した段階を示す平面図である) 本実施形態の鋼材の被覆方法を用いて鋼管に被覆板を被覆した例を示す斜視図 本実施形態の鋼材の被覆方法で用いられるインダイレクト抵抗シーム溶接機の概略図(図5(a)は一枚の被覆板を鋼材に溶接する例を示し、図5(b)は二枚の被覆板の重なり部分溶接する例を示す) 従来の鋼管の被覆構造の側面図
以下、本実施形態の鋼材の被覆方法を詳細に説明する。図1ないし図3は本発明の一実施形態の鋼材の被覆方法の工程図を示す。図1は鋼材10に複数の被覆板12からなる被覆材11a,11b,11cをX軸方向に並べ、被覆材11a,11b,11cを鋼材10に抵抗シーム溶接した段階を示し、図2は被覆材11a,11cを鋼材10に本溶接し、さらに被覆材11a,11b,11cの端部に帯状の金属板15を溶接した段階を示す。図3は金属板15に封止板16を溶接した段階を示す。明細書を通して同一の構成には同一の符号を附す。
図1に示すように、この実施形態の鋼材10の表面は平面に形成される。鋼材10の表面の幅方向をX軸方向と定義し、幅方向と直交する方向をY軸方向と定義する。複数の被覆材11a,11b,11cはX軸方向に所定の間隔を開けて並べられる。第一の被覆材11aの左側の領域、第一の被覆材11aと第二の被覆材11bとの間、第二の被覆材11bと第三の被覆材11cとの間、及び第三の被覆材11cの右側の領域が鋼材の露出部になる。
被覆材11a,11b,11cは、隣り合う被覆板12の端部同士が重なり合うように配置した複数の四角形の被覆板12からなる。複数の被覆板12はY軸方向の端部同士が重なり合うように並べられる(図1(b)の断面図参照)。重なり部17はX軸方向に細長く伸びる。複数の被覆板12はY軸方向のみ重なり合うように並べられていて、X軸方向には重なり合うように並べられていない。すなわち、隣り合う被覆板12は2枚が重なるようには並べられるが、3枚以上重ならないように並べられる。被覆板12は薄いので、3枚以上重ねて溶接すると、溶接時の熱が放散しにくく、欠陥が発生し易いからである。
被覆板12には孔食指数(PI:Pitting Index)が40以上の耐海水性ステンレス鋼又はニッケル基合金が用いられる。ここで、PI=Cr[%]+3.3×Mo[%]+16×N[%]である。タングステンWを含む場合は、PI=Cr[%]+3.3×(Mo[%]+0.5W[%])+16×N[%]である。なお、PIが40未満の被覆板を用いた場合、海水中で腐食が発生するという問題がある。
被覆材11aの重なり部17と垂直な一辺部11a1は、鋼材10にY軸方向に抵抗シーム溶接される。抵抗シーム溶接部14bを破線で示す。抵抗シーム溶接は、抵抗溶接(溶接継手部に大電流を流し、ここに発生する抵抗熱によって加熱し、圧力を加えて行う溶接)の一種であり、重ね合わせた母材の溶接継手に沿って連続的に行う抵抗溶接である。抵抗シーム溶接は、ローラ電極を回転させながら加圧・通電することによって連続的に溶接を行うものである。抵抗シーム溶接機については後述する。
被覆材11aの一辺部11a1は重なり部17を挟んで連続的に抵抗シーム溶接される。重なり部17には下側の被覆板12よって段差が形成されており、上側の被覆板12と鋼材10との間に下側の被覆板12の厚さの分だけすきまが空く。抵抗シーム溶接機のローラ電極で圧力をかけて上側の被覆板12を段差にならって曲げ、上側の被覆板12と鋼材10との間のすきまをできるだけ無くした状態で、上側の被覆板12を鋼材10に抵抗シーム溶接する。図1(b)に示すように、上側の被覆板12と鋼材10との間には抵抗シーム溶接部14a1(ナゲット)が形成される。重なり部17では、上側の被覆板12と下側の被覆板12との間にも抵抗シーム溶接部14a1(ナゲット)が形成される。
被覆材11cの重なり部17と垂直な一辺部11c2は、被覆材11aの一辺部11a1と同様に鋼材10にY軸方向に抵抗シーム溶接される。抵抗シーム溶接部14a1を破線で示す。
図1(a)に示すように、重なり部17は、X軸方向にも連続的に抵抗シーム溶接される。抵抗シーム溶接部を符号14bで示す。図1(c)のY軸方向に沿った断面図に示すように、上側の被覆板12と下側の被覆板12との間、及び下側の被覆板12と鋼材10との間には抵抗シーム溶接部14b(ナゲット)が形成される。
さらに、互いに対向する第一の被覆材11aの端部11a2及び第二の被覆材11bの端部11b1も、Y軸方向に連続的に抵抗シーム溶接される。互いに対向する第二の被覆材11bの端部11b2及び第三の被覆材11cの端部11c1も、Y軸方向に連続的に抵抗シーム溶接される。抵抗シーム溶接部を符号14aで示す。
図2(a)に示すように、被覆材11aの重なり部17と垂直な一辺部11a1の境界は、抵抗シーム溶接後、被覆材11aと鋼材10との間のすきまを塞ぐように本溶接される。本溶接部を符号14dで示す(図2(b)の断面図も参照)。本溶接には、TIG溶接、MIG溶接、被覆アーク溶接、プラズマ溶接の少なくとも一つが用いられる。本溶接の溶材にはニッケル合金溶加棒(JIS Z 3334 YNiCrMo−3)など被覆板12よりも耐食性の高い材料が用いられる。被覆材11aの一辺部11a1には予め抵抗シーム溶接部14a1が形成されているので、本溶接時に発生する熱が抵抗シーム溶接部14a1を介して鋼材10に逃げる。このため、本溶接時に発生する熱によって薄い被覆板12が溶損する(溶けて無くなる)のを防止できる。
被覆材11cの重なり部17と垂直な一辺部11c2の境界も、被覆材11aの一辺部11a1と同様に、抵抗シーム溶接後、被覆材11cと鋼材10との間のすきまを塞ぐように本溶接される。
図2(c)のY軸に沿った断面図に示すように、重なり部17も抵抗シーム溶接後、重なり部17に生ずるすきまを塞ぐように本溶接される。本溶接部を符号14cで示す。上側の被覆板12は端部のみが溶けて下側の被覆板12に結合される。重なり合う被覆板12同士の間には抵抗シーム溶接部14bが形成され、下側の被覆板12と鋼材10との間にも抵抗シーム溶接部14bが形成されているので、本溶接時に発生する熱が抵抗シーム溶接部14bを介して鋼材10に逃げる。このため、本溶接時に発生する熱によって薄板の被覆板12が溶損する(溶けて無くなる)のを防止することができる。
図2(a)に示すように、互いに対向する第一の被覆材11aの端部11a2及び第二の被覆材11bの端部11b1には、被覆材11a,11bの端部に沿って細長く伸びる帯状の金属板15が溶接される。溶接には、TIG溶接、MIG溶接、被覆アーク溶接、プラズマ溶接の少なくとも一つが用いられる。金属板15は、第一の被覆材11aの境界を覆う。金属板15の幅方向(X軸方向)の一方の端部が第一の被覆材11aに溶接される。金属板15の幅方向の一方の端部は、第一の被覆材11aの抵抗シーム溶接部14aに位置決めされている。金属板15を溶接するときの熱は抵抗シーム溶接部14aを介して鋼材10に逃げるので、第一の被覆材11aが溶損するのを防止することができる。金属板15の幅方向の他方の端部は鋼材10に溶接される。互いに対向する第二の被覆材11bの端部11b2及び第三の被覆材11cの端部11c1にも、帯状の金属板15が本溶接される。金属板15は、孔食指数(PI:Pitting Index)が40以上の耐海水性ステンレス鋼又はニッケル基合金からなる。PIが40未満の金属板を用いた場合、海水中で腐食が発生するという問題がある。金属板15の板厚は0.8mm以上、好ましくは1.2mm以上に設定される。板厚が0.8mm未満の場合、TIG溶接など一般的な溶接ができないという問題がある。
図3は、封止板16を金属板15に溶接した段階を示す。封止板16は隣接する一対の金属板15の間の鋼材10の露出部分を覆う。封止板16は隣接する一対の金属板15に跨るように溶接される。封止板16の幅方向の一方の端部は金属板15に溶接され、封止板16の幅方向の他方の端部は残りの金属板15に溶接される。溶接には、TIG溶接、MIG溶接、被覆アーク溶接、プラズマ溶接の少なくとも一つが用いられる。封止板16は孔食指数(PI:Pitting Index)が40以上の耐海水性ステンレス鋼又はニッケル基合金からなる。PIが40未満の金属板を用いた場合、海水中で腐食が発生するという問題がある。封止板16の板厚は0.8mm以上、好ましくは1.2mm以上に設定される。板厚が0.8mm未満の場合、TIG溶接など一般的な溶接ができないという問題がある。
金属板15は0.8mm以上に設定されるので、金属板15に封止板16を溶接するときの熱は金属板15に逃げ、金属板15に封止板16を問題なく溶接できる。封止板16を金属板15に溶接した後、各被覆板12を鋼材10にスポット溶接してもよい。スポット溶接することで、大面積の被覆板12が波打つのが防止される。
以上のように封止板16を一対の金属板15に溶接することで、X軸方向に並べた被覆材11a,11b,11cを連結することができ、大きな面積の鋼材10を被覆材11a,11b,11cで一面に覆うことができる。また、被覆材11a,11cのX軸方向の一辺部11a1,11c2は、鋼材10に抵抗シーム溶接後、本溶接される。したがって、被覆材11a,11cの一辺部11a1,11c2から被覆材11a,11c内に海水が浸入することを防止できる。なお、上記実施形態では説明を省略したが、Y軸方向に並べられた複数の被覆板12は鋼材10の周囲に巻かれて無端状に連結される。
上記実施形態の被覆方法は工場内で行うこともできるし、設置現場で行うこともできる。大きな構造物を製造する場合、工場で鋼材10の分割体を製造し、設置現場で分割体を結合・溶接することが行われる。この場合、鋼材10の分割体に被覆材11a,11b,11c及び金属板15を溶接するまでの工程が工場で行われ、鋼材10の分割体を溶接し、封止板16を溶接する工程が現場で行われる。封止板16は鋼材10の分割体同士の溶接部を覆うことになる。被覆材11a,11b,11cは鋼材10同士の溶接時の熱の影響を受けないように、鋼材10の分割体同士の溶接部から離れた位置に配置される。
構造物たる鋼材10の形状は、上記実施形態のように平面を持つ形状に形成されてもよいし、例えばジャケットを支持する鋼管柱のように円筒形に形成されてもよい。図4は鋼管21を複数の被覆板22で覆った例を示す。複数の被覆板12は端部同士が重なるように円周方向に並べられる。複数の被覆板22の重なり部23と垂直な一辺部22aは鋼材10に抵抗シーム溶接後、一辺部22aの境界が一辺部22aと鋼管21との間のすきまを塞ぐように本溶接される。抵抗シーム溶接部を符号26で示し、本溶接部を符号27で示す。また、複数の被覆板22の重なり部23も抵抗シーム溶接後、本溶接される。抵抗シーム溶接部を符号28で示し、本溶接部を符号29で示す。これにより、鋼管21と複数の被覆板22との間に生ずるすきまを全て塞ぐことが可能になる。なお、平面に展開したときに重なり部17と垂直な一辺部22aであれば、重なり部17に垂直な一辺部22aであるという。
図5は、本実施形態の被覆方法で使用されるインダイレクト抵抗シーム溶接機の概略図を示す。図5(a)に示すように、インダイレクト抵抗シーム溶接機は、紙面と直交する方向に移動可能な移動台31と、移動台31に支持される加圧装置31a,31bと、加圧装置31aによって加圧される溶接側ローラ電極32aと、加圧装置31bによって加圧されるアース側ローラ電極32bと、を備える。溶接側ローラ電極32aは被覆板12の上に載せられ、アース側ローラ電極32bは鋼材10の上に載せられる。アース側ローラ電極32bの加圧力は溶接側ローラ電極32aの加圧力よりも大きく設定される。
ローラ電極32a,32bの回転軸を含む断面で見たとき、ローラ電極32a,32bの周面には、ローラ電極32a,32bの接触面積を小さくするように傾斜面からなるテーパ部34が設けられる。テーパ部34はローラ電極32a,32bの周面の幅方向の両端部に設けられる。テーパ部34を設けることによって、ローラ電極32a,32bには幅3mm以下の平坦部35が形成される。平坦部35の幅はローラ電極32a,32bの幅よりも小さい。また、ローラ電極32a,32bの周面の幅方向の両端部にテーパ部34の替わりに円弧部を設けることもできるし、ローラ電極32a,32bの周面の全体を円弧部に形成することもできる。ローラ電極32a,32bの直径は100mm〜300mmである。
このようにローラ電極32a,32bに幅3mm以下の平坦部35を形成し、又はローラ電極32a,32bの周面の全体を円弧部に形成することで、ローラ電極32a,32bの接触面積が小さくなるので、ローラ電極32a,32bの加圧力を高くすることができる。このため、被覆板12を段差にならって曲げることが可能になる。被覆板12の板厚は0.3〜0.8mmであり、溶接側ローラ電極32aの加圧力は2000〜6000N、望ましくは3000〜5000Nに設定される。被覆板12の板厚が0.3mm未満であると、溶接側ローラ電極32aで押さえた際に被覆板12にしわが入り、溶接が困難になる。被覆板12の板厚が0.8mmを超えると、被覆板12を変形させることができず、被覆板12が鋼材10に付かなくなる。また、溶接側ローラ電極32aの加圧力が2000N未満であると、被覆板12を変形させることができず、被覆板12が鋼材10に付かなくなる。ローラ電極32aの加圧力が6000Nを超えると、溶接側ローラ電極32aの端部が変形するため、良好なインダイレクト抵抗シーム溶接できる長さが短くなる。
なお、図5(a)には、ローラ電極32a,32bの移動方向から見た正面図が示されているが、図5(a)のローラ電極32a,32bの外形はローラ電極32a,32bの断面形状に一致する。
二つのローラ電極32a,32bは電源を介して電気的に接続される。溶接側ローラ電極32a及びアース側ローラ電極32bを加圧しながら電流を流すと、抵抗の最も大きい被覆板12と鋼材10の接触部分が発熱して接触部分の一部が溶ける。溶けた部分が被覆板12と鋼材10とを固定する抵抗シーム溶接部14a1となる。移動台31を紙面と直交方向に移動させ、溶接側ローラ電極32a及びアース側ローラ電極32bを転がすと、移動方向に細長い連続的な抵抗シーム溶接部14a1が形成される。
図5(b)は、被覆板12の重なり部17を溶接するときのインダイレクト抵抗シーム溶接機を示す。溶接側ローラ電極32aは一枚のみの被覆板12の上から重なり部17に乗り上げる。アース側ローラ電極32bは鋼材10の表面に載せられたままである。溶接側ローラ電極32a及びアース側ローラ電極32bを加圧しながら電流を流すと、上側の被覆板12と鋼材10との間のすきまをできるだけ少なくした状態で、上側の被覆板12を鋼材10に抵抗シーム溶接することが可能になる(図1(b)も参照)。
複数の被覆板12の端部同士を重ね合わせ、複数の被覆板12の重なり部17と垂直な一辺部11a1を鋼材10に抵抗シーム溶接した。被覆板12の材質及び板厚、インダイレクト抵抗シーム溶接条件は下記の表1のとおりである。なお、すべての実施例及び比較例において、材質:SM490YB、板厚:32mmの鋼材10を用いた。
表1において、SUS312L(UNS S31254)は、20Cr-18Ni-6Mo-0.8Cu-0.2Nの組成を有するステンレス鋼、SUS836L(UNS S32053)は、23Cr-25Ni-5.5Mo-0.2Nの組成を有するステンレス鋼、UNS N08354は、23Cr-35Ni-7.5Mo-0.2Nの組成を有するステンレス鋼である。なお、すべての実施例及び比較例において、材質:SM490YB、板厚:32mmの鋼材10を用いた。また、端部30Rとは、ローラ電極の周面の全体に半径30mmの円弧部が形成されることを意味する。
インダイレクト抵抗シーム溶接後、被覆板12の一辺部11a1の境界を鋼材10に本溶接した。実施例1〜10では、本溶接時に発生する熱で被覆板12が溶損することはなかった。比較例1では、溶接側ローラ電極32aで押さえた際に被覆板12にしわが入ったため溶接できなかった。比較例2では、段差部で溶接が不連続となった。比較例3では、被覆板12が鋼材10に付かなかった。比較例4では、溶接側ローラ電極32aの端部が変形するため良好な溶接が0.5m程度しかできなかった。
Figure 2014124643
なお、本発明は上記実施形態に具現化されるのに限定されることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲でさまざまな実施形態に変更可能である。
例えば上記実施形態では、複数の被覆板の一辺部は重なり部に垂直であるが、垂直でなくても交差していればよい。
構造物たる鋼材の形状は、箱形に形成されてもよい。鋼材が箱形の場合、被覆板が鋼材の角に合わせて90度折り曲げられる。
複数の被覆板の少なくとも一部を塗装してもよい。例えば、ジャケットと鋼管柱の接続部分は、平面と円筒との接続になるので被覆するのが困難である。このような被覆が困難な部分で腐食が緩和される部分には、耐食性金属板を被覆することなく、耐食性金属板にオーバーラップするように塗装するのが望ましい。
10,21…鋼材
12,22…被覆板
17,23…重なり部
11a1,22a…被覆板の重なり部に垂直な一辺部
32a,32b…ローラ電極
34…ローラ電極のテーパ部
35…ローラ電極の平坦部
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、鋼材の表面に板厚0.3〜0.8mmの複数の被覆板を隣り合う被覆板の端部同士が重なり合うように配置し、ローラ電極によって2000〜6000Nの圧力をかけながら前記複数の被覆板の重なり部と交差する一辺部を前記鋼材に前記重なり部を挟んで連続的に抵抗シーム溶接し、その後、前記複数の被覆板の前記一辺部の境界を前記鋼材に、前記一辺部と前記鋼材との間に生ずるすきまを塞ぐように本溶接することを特徴とする鋼材の被覆方法である。

Claims (7)

  1. 鋼材の表面に複数の被覆板を隣り合う被覆板の端部同士が重なり合うように配置し、
    ローラ電極によって圧力をかけながら前記複数の被覆板の重なり部と交差する一辺部を前記鋼材に前記重なり部を挟んで連続的に抵抗シーム溶接し、
    その後、前記複数の被覆板の前記一辺部の境界を前記鋼材に、前記一辺部と前記鋼材との間に生ずるすきまを塞ぐように本溶接することを特徴とする鋼材の被覆方法。
  2. 前記隣り合う被覆板の重なり合う端部同士、及び下側の被覆板と鋼材とを前記重なり部に沿って連続的に抵抗シーム溶接し、
    その後、前記隣り合う被覆板の重なり合う端部同士をこれらの間に生ずるすきまを塞ぐように本溶接することを特徴とする請求項1に記載の鋼材の被覆方法。
  3. ローラ電極の回転軸を含む断面で見たとき、前記ローラ電極の周面には、前記ローラ電極の接触面積を小さくするように円弧部又はテーパ部が設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の鋼材の被覆方法。
  4. 前記ローラ電極の周面には、幅3mm以下の平坦部が設けられることを特徴とする請求項3に記載の鋼材の被覆方法。
  5. 前記被覆板の板厚は0.3〜0.8mmに設定され、溶接側ローラ電極の加圧力は2000〜6000Nに設定されることを特徴とする請求項3又は4に記載の鋼材の被覆方法。
  6. 請求項1ないし5のいずれかに記載の鋼材の被覆方法で製造した被覆構造物。
  7. 請求項1ないし5のいずれかに記載の鋼材の被覆方法に用いられる抵抗シーム溶接機。




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