JP2014129577A - 鋼板の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】排水処理の負荷が小さく、洗浄後の鋼板等を乾燥させるためのエネルギーコストを低減できる、鋼板の製造方法を提供すること。
【解決手段】冷間圧延後の鋼板を洗浄する洗浄工程(1)、洗浄工程(1)が施された後の鋼板をすすぐすすぎ工程(2)、すすぎ工程(2)が施された後の鋼板を乾燥させる乾燥工程(3)を含む鋼板の製造方法であって、すすぎ工程(2)が1以上のすすぐ処理を含み、最後のすすぐ処理に用いるリンス剤αが、下記一般式(1):
【化1】


で表される成分(a)を含有し、成分(a)の濃度が、リンス剤α中、150mg/kg以下であり、リンス剤αの無機塩のカチオン濃度が2.0mmol/kg以上18.0mmol/kg以下であり、硫酸イオン濃度が0.75mmol/kg以下である、鋼板の製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、鋼板の製造方法に関する。
冷延鋼板及び冷延コイルを製造する際、種々の処理工程を経る。酸化層を除去する酸洗浄工程、あるいは圧延油や防錆油を除去するアルカリ洗浄工程がある。これらの洗浄工程では酸性やアルカリ性の洗浄液を温水ですすいで熱風で乾燥する。乾燥が不十分であると錆が発生するため、鋼板に付着した水を除去する水切りは重要なプロセスであり、種々の水切り方法が実施されている。リンガーロールと呼ばれるゴムロールにより機械的に水を絞ったり、熱風乾燥の前にエアーワイパーを取り付けてできるだけ鋼板に付着した水をとばしたりしている。また、洗浄液をすすぐ時のすすぎ水の温度は乾燥性を高めるために70℃以上が一般的である。しかしながら、このすすぎには多量の水を使用するため所定の温度まで昇温するのに多くのエネルギーコストがかかるのが現状である。
特許文献1には、すすぎの水の使用を抑制するため、鋼板表面を撥水化して水を切る方法として、金属に適用しても錆の発生を防止できる水溶液型の水切り剤として、アミン又は/及びイミンと脂肪族系カルボン酸との塩を有効成分とすることを特徴とする水切り剤が開示されている。
特許文献2には、安全性に優れ環境汚染がなく、水切り性能に優れ、水じみの発生を抑え、金属部品では変色防止や防錆効果があり、また、乾燥することにより、水切り剤の成分が揮発し部品表面には残留しにくい水切り剤として、特定の含窒素化合物を含有する水切り剤が開示されている。
特許文献3には、安全性に優れ環境汚染がなく、洗浄工程中で使用すると被処理物である各種の部品の表面が疎水化されて最後の純水置換において部品への付着水の量を減らし、水シミの発生を防止して乾燥時間を短縮し、また、金属部品に対しては防錆効果があり、処理後の部品において、導電性接着剤を使用したときに必要でない箇所への接着剤の濡れ広がりを防止することができる表面処理剤として、特定のアミノ基又は4級アンモニウム基を有する化合物を含有する水切り剤が開示されている。
特許文献4には、少ない添加量で鋼板表面を撥水化させて、40℃以下の低温でも良好な水切り性を得ることができ、エネルギーコストを低減でき、乾燥負荷を低減でき、水が残留した場合でも良好な防錆効果を有し、更に抑泡性にも優れる鋼板用リンス剤組成物として、特定のカチオン性化合物、さらに、特定の非イオン性化合物を含有する鋼板用リンス剤組成物が開示されている。
特開平6−238102号公報 特開平9−255940号公報 特開平9−57005号公報 特開2006−265726号公報
特許文献1〜4には、特定のアミン化合物、さらには特定のノニオン性界面活性剤を配合した水きり剤や鋼板用リンス剤が記載されている。しかし、鋼板を撥水させるためには、ある程度の濃度での使用が必要であった。
本発明の課題は、従来のリンス剤よりも、低濃度のアミン化合物とノニオン性界面活性剤を用いて撥水させることで、排水処理の負荷が小さく、洗浄後の鋼板等を乾燥させるためのエネルギーコストを低減できる、鋼板の製造方法を提供することにある。
本発明者は、鋼板の製造工場で用いられる工業用水等の水の種類によってリンス剤の濃度が希薄であっても十分な撥水効果を発現する場合があることを見出した。そして、リンス剤の無機塩のカチオン濃度に着目し、特定範囲のカチオン濃度に調整することにより、アミン化合物とノニオン性界面活性剤の使用量が削減でき、洗浄後の鋼板等を乾燥させるためのエネルギーコストを低減できる知見を得、本発明を完成した。
本発明の鋼板の製造方法は、冷間圧延後の鋼板を洗浄する洗浄工程(1)、前記洗浄工程(1)が施された後の鋼板をすすぐすすぎ工程(2)、前記すすぎ工程(2)が施された後の鋼板を乾燥させる乾燥工程(3)を含む鋼板の製造方法であって、前記すすぎ工程(2)が1以上のすすぐ処理を含み、最後のすすぐ処理に用いるリンス剤αが、下記一般式(1):


(式中、Rは炭素数6以上22以下の炭化水素基を示し、Rは水素原子又は炭素数1以上22以下の炭化水素基、R及びRは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1以上3以下の炭化水素基を示す。Xは無機アニオンあるいは有機アニオンを示す。)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種である成分(a)を含有し、前記成分(a)の濃度が、前記リンス剤α中、150mg/kg以下であり、前記リンス剤αの無機塩のカチオン濃度P(mmol/kg)(P=Σ(A×i)(式中、Aはカチオン1成分の濃度(mmol/kg)、iはカチオンの価数を表す。))が2.0mmol/kg以上18.0mmol/kg以下であり、硫酸イオン濃度が0.75mmol/kg以下である。
本発明によれば、従来のリンス剤よりも排水処理の負荷が小さく、洗浄後の鋼板等を乾燥させるためのエネルギーコストを低減させることができる鋼板の製造方法を提供することができる。
本実施形態の鋼板の製造方法は、冷間圧延後の鋼板を洗浄する洗浄工程(1)、前記洗浄工程(1)が施された後の鋼板をすすぐすすぎ工程(2)、前記すすぎ工程(2)が施された後の鋼板を乾燥させる乾燥工程(3)を含む鋼板の製造方法であって、前記すすぎ工程(2)が1以上のすすぐ処理を含み、最後のすすぐ処理に用いるリンス剤αが、前記一般式(1)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種である成分(a)を含有し、前記成分(a)の濃度が、前記リンス剤α中、150mg/kg以下であり、前記リンス剤αの無機塩のカチオン濃度P(mmol/kg)(P=Σ(A×i)(式中、Aはカチオン1成分の濃度(mmol/kg)、iはカチオンの価数を表す。))が2.0mmol/kg以上18.0mmol/kg以下であり、硫酸イオン濃度が0.75mmol/kg以下である。
本実施形態の鋼板の製造方法によれば、排水処理の負荷、及び洗浄後の鋼板等を乾燥させるためのエネルギーコストを低減させることができる。このような効果を発現する理由は定かではないが、以下のように考えられる。
リンス剤の無機塩のカチオン濃度を特定範囲とする事で前記成分(a)の電荷が変化し、前記成分(a)が鋼板表面に吸着しやすい領域になっていると考えられる。そして、前記成分(a)が鋼板表面に吸着することで撥水性を発現し、鋼板表面の水の付着を抑制すると考えられる。また、硫酸イオンが多すぎると、前記成分(a)と硫酸イオンが複合体を形成し、前記成分(a)の鋼板表面への吸着が阻害されると考えられる。
〔冷間圧延後の鋼板を洗浄する洗浄工程(1)〕
洗浄工程(1)では、常法の条件に従って、鋼板に付着する圧延油等の汚れを洗浄剤により洗浄する。鋼板は、いずれの金属であってもよいが、乾燥を促進させ防錆する観点から鉄を対象とすることが好ましい。洗浄剤として、例えば特開平10−280179号公報、特開平10−324900号公報に記載されているようなアルカリ洗浄剤を用いることができる。
アルカリ洗浄剤は、アルカリ剤を含有する水溶液が用いられる。アルカリ剤は、油汚れの除去性を確保するため、水溶性のアルカリ剤であればいずれのものも使用できる。アルカリ剤の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、オルソ珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、セスキ珪酸ナトリウム等の珪酸塩、リン酸三ナトリウム等のリン酸塩、炭酸二ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸二カリウム等の炭酸塩、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩等が挙げられる。二種以上の水溶性アルカリ剤を組み合わせてもよい。アルカリ剤の含有量は、アルカリ洗浄剤中、0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、そして、10質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましい。
アルカリ洗浄剤には、アルカリ剤に加えて、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等の非イオン界面活性剤;鉄石けん等の汚れに作用して鉄イオン等をキレートし、脂肪酸石けんにして汚れを溶解し易くして、洗浄性を向上させるキレート剤;保存時の安定性と、保存後の効果の安定性を確保する観点から、脂肪族カルボン酸又はその塩等を加えることができる。また、当該アルカリ洗浄剤には任意の添加剤を加えることができ、例えば、一般的に使用されている洗浄性を向上させる有機ビルダー等の添加剤を、コストの上昇等を考慮した上で配合することができる。アルカリ洗浄剤中の、アルカリ剤以外の成分の割合は適宜に決定されるが、アルカリ剤1質量部に対して、1質量部以下が好ましく、0.5質量部以下がより好ましい。また、アルカリ洗浄剤は、アルカリ剤およびアルカリ剤以外の成分を含む不揮発分の割合が、1質量%以上10質量%以下が好ましい。
洗浄工程(1)としては、浸漬洗浄、スプレー洗浄、ブラシ洗浄、電解洗浄等が挙げられる。電解洗浄は洗浄液中で鋼板をプラス(又はマイナス)にし、直流電流を流す洗浄方法であり、電流により鋼板から発生する酸素(又は水素)の気泡を利用し、物理力により鋼板に付着した油汚れや鉄粉などの固体汚れを取る工程である。また、鋼板表面に生成した酸化被膜を酸洗浄剤により除去する酸洗浄でも良い。
〔洗浄工程(1)が施された後の鋼板をすすぐすすぎ工程(2)〕
すすぎ工程(2)では、前記洗浄工程(1)を施した後の鋼板を水又はリンス剤ですすいで洗浄剤及び残存している圧延油を除去するが、当該すすぎ工程(2)の最後の処理に用いるリンス剤(以下、リンス剤αと称する)は、前記成分(a)を含有し、カチオン濃度及び硫酸イオン濃度が特定の範囲のものを用いる。
<成分(a)>
リンス剤αに含有される成分(a)は、前記一般式(1)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種以上の有機のカチオン性化合物であり、好ましくはアルキルアミンの酸塩及びアルキルアンモニウム塩であり、より好ましくはアルキルアミンの酸塩である。
前記一般式(1)において、Rは炭素数6以上であり、鋼板表面を充分に疎水化する観点から、好ましくは8以上、より好ましくは12以上、更に好ましくは16以上であり、そして、22以下、好ましくは18以下であり、鋼板表面を充分に疎水化する観点から、直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基が好ましく、直鎖のアルキル基又はアルケニル基が好ましい。当該Rとしては、例えば、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ラウリル(ドデシル)基、トリデシル基、ミリスチル(テトラデシル)基、パルミチル(ヘキサデシル)基、ステアリル(オクタデシル)基、ベヘニル基、オレイル基等が挙げられ、鋼板表面を充分に疎水化する観点から、ヘキシル基、オクチル基、ラウリル(ドデシル)基、トリデシル基、ミリスチル(テトラデシル)基、パルミチル(ヘキサデシル)基、ステアリル(オクタデシル)基、ベヘニル基、オレイル基が好ましく、パルミチル(ヘキサデシル)基、ステアリル(オクタデシル)基、ベヘニル基、オレイル基がより好ましい。
前記一般式(1)において、Rは水素原子、又は炭素数1以上、鋼板表面を充分に疎水化する観点から、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは12以上、より更に好ましくは16以上であり、そして、22以下、好ましくは18以下であり、鋼板表面を充分に疎水化する観点から、直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基が好ましく、直鎖のアルキル基又はアルケニル基がより好ましい。当該Rとしては、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ラウリル(ドデシル)基、トリデシル基、ミリスチル(テトラデシル)基、パルミチル(ヘキサデシル)基、ステアリル(オクタデシル)基、ベヘニル基、オレイル基等が挙げられる。Rは、鋼板表面を充分に疎水化する観点から、水素原子が好ましい。
及びRは、同一又は異なって、水素原子又はメチル基、エチル基、イソプロピル基等の炭素数1以上3以下の炭化水素基を示し、鋼板表面を充分に疎水化する観点から、水素原子が好ましい。
の具体例としては、塩化物イオン、臭化物イオン等のハロゲン化物イオン、酢酸、乳酸もしくはクエン酸等の有機酸からプロトンを除去した有機陰イオン、アルキル炭酸イオン(CHCO )、アルキルホスフェートイオン等を挙げることができ、鋼板表面を充分に疎水化する観点から、塩化物イオン、臭化物イオン等のハロゲン化物イオン及びCHCO 等の有機陰イオンが好ましく、有機陰イオンがより好ましい。また、硫酸イオンも用いることができるが、その場合はリンス剤α中の硫酸イオンの濃度が0.75mmol/kg以下にする。
前記成分(a)として、ジオクチルアミン、ジデシルアミン、ジラウリルアミン、ジミリスチルアミン、デシルオクチルアミン、ラウリルオクチルアミン、ラウリルアミン、ラウリルジメチルアミン、ミリスチルアミン、ミリスチルジメチルアミン、パルミチルアミン、パルミチルジメチルアミン、ステアリルアミン、ステアリルジメチルアミン、オレイルアミン、オレイルジメチルアミンの酸中和物あるいは4級アンモニウム塩が挙げられる。酸中和物の場合は、R、R、Rの内、少なくとも1つは水素原子となる。
酸中和物を得るための好ましい酸としては、塩酸、硝酸、リン酸、酢酸、ギ酸、マレイン酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、アジピン酸、スルファミン酸、トルエンスルホン酸、乳酸、ピロリドン−2−カルボン酸、コハク酸等が挙げられ、鋼板表面を充分に疎水化する観点から、塩酸及び酢酸が好ましく、酢酸がより好ましい。また、4級アンモニウム塩を得るための好ましい4級化剤としては、塩化メチル、塩化エチル、臭化メチル、ヨウ化メチル等のハロゲン化アルキル等の一般的なアルキル化剤が挙げられる。
前記成分(a)は、炭素数が6以上22以下のモノアルキルアミンの酸中和物、炭素数が6以上22以下のモノアルキルメチルアミンの酸中和物、炭素数が6以上22以下のモノアルキルジメチルアミンの酸中和物、炭素数が1以上22以下のジアルキルメチルアミンの酸中和物、炭素数が1以上22以下のジアルキルジメチルアミンの酸中和物、炭素数が6以上22以下のアルキルトリメチルアンモニウム、炭素数が1以上22以下のジアルキルアンモニウム等が挙げられる。具体的には、ジオクチルアミンの塩酸塩、ジオクチルジメチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ジミリスチルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジオレイルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルトリメチルアンモニウムブロマイド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、オレイルトリメチルアンモニウムクロライド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ラウリルアミンの塩酸塩、ステアリルアミンの塩酸塩、オレイルアミンの塩酸塩、ラウリルアミンの酢酸塩、ミリスチルアミンの酢酸塩、ミリスチルトリメチルアンモニウムクロライド、パルミチルアミンの酢酸塩、パルミチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルアミンの酢酸塩、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、オレイルアミンの酢酸塩、ヘキシルアミンの酢酸塩、ベヘニルアミンの酢酸塩、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられ、鋼板表面を充分に疎水化する観点から、ヘキシルアミンの酢酸塩、オクチルアミンの酢酸塩、ラウリルアミンの酢酸塩、ヘキサデシルアミンの酢酸塩、オレイルアミンの酢酸塩、ステアリルアミンの酢酸塩、ベヘニルアミンの酢酸塩、ヘキシルアミンの塩酸塩、オクチルアミンの塩酸塩、ラウリルアミンの塩酸塩、ヘキサデシルアミンの塩酸塩、オレイルアミンの塩酸塩、ステアリルアミンの塩酸塩、ベヘニルアミンの塩酸塩が好ましく、ヘキサデシルアミンの塩酸塩、オレイルアミンの塩酸塩がより好ましい。
リンス剤α中の成分(a)の濃度は、鋼板表面を充分に疎水化する観点から、5mg/kg以上が好ましく、10mg/kg以上がより好ましく、20mg/kg以上が更に好ましく、そして、過剰の成分(a)が鋼板に付着して、その後の焼鈍工程やメッキ工程の障害とならないようにする観点から、150mg/kg以下であり、148mg/kg以下が好ましく、145mg/kg以下がより好ましく、120mg/kg以下が更に好ましく、110mg/kg以下がより更に好ましい。
前記リンス剤αは無機塩のカチオン濃度P(mmol/kg)が2.0mmol/kg以上18.0mmol/kg以下である。無機塩のカチオン濃度Pの調製は、リンス剤αを調製する際の水のカチオン濃度を調整することにより行うことができる。例えば、鋼板の製造工場で用いる工業用水のカチオン濃度が低い場合は、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等の塩を工業用水に添加して、カチオン濃度を高めることができる。前記工業用水のカチオン濃度が高い場合は、イオン交換水等のカチオン濃度が低い水を工業用水に混合して、カチオン濃度を低くすることができる。前記カチオン濃度が対象とするカチオンは無機のカチオンであり、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン等のアルカリ土類金属イオンである。リンス剤αを調製するための水の無機塩のカチオン濃度を測定する工程と、測定値に基づいて無機塩のカチオン濃度が上記範囲内になるように、すすぎ工程(2)で用いるリンス剤αを調製する工程を有することが好ましい。
前記リンス剤αは、撥水性を発現し、鋼板表面の水の付着を抑制する観点から、無機塩のカチオン濃度Pcが2.0mmol/kg以上であり、4.0mmol/kg以上が好ましく、6.0mmol/kg以上がより好ましく、そして、18.0mmol/kg以下であり、17.0mmol/kg以下が好ましく、10.0mmol/kg以下がより好ましい。
本明細書において、無機塩のカチオン濃度Pcは下記計算式(a)で求められる。
Pc(mmol/kg)=Σ(A×i) (a)
(式中、Aはカチオン1成分の濃度(mmol/kg)、iはカチオンの価数を表す。)
また、前記リンス剤αは、硫酸イオンが0.75mmol/kgを超えると撥水性が低下する。これは硫酸イオン多すぎると、前記成分(a)と硫酸イオンが複合体を形成し、前記成分(a)の鋼板表面への吸着が阻害されるためと考えられる。前記リンス剤αは、撥水性を発現し、鋼板表面の水の付着を抑制する観点から、硫酸イオン濃度が0.75mmol/kg以下であり、0.70mmol/kg以下が好ましく、0.40mmol/kg以下がより好ましく、硫酸イオンを含まないことが更に好ましい。硫酸イオン濃度が高い場合、その調整は、イオン交換水等の硫酸イオン濃度が低い水を混合して、硫酸イオン濃度を低くすることができる。リンス剤αを調製するための水の硫酸イオン濃度を測定する工程と、測定値に基づいて硫酸イオンが上記範囲内になるように、すすぎ工程(2)で用いるリンス剤αを調製する工程を有することが好ましい。
前記リンス剤αは、前記成分(a)を含有する水系組成物であり、水系媒体として水が用いられる。水としては、脱イオン水、イオン交換水、水道水、工業用水等が好ましく用いることができる。カチオン濃度Pc及び硫酸イオン濃度の調製の観点からは、カチオン濃度Pc及び硫酸イオン濃度が前記範囲である水が好ましい。
前記リンス剤αは、本発明の効果がある範囲で、さらに、消泡剤、キレート剤、防腐剤などを含有してもよい。ただし、消泡剤、キレート剤、防腐剤などを含有しても前記リンス剤α中の無機塩のカチオン濃度P及び硫酸イオン濃度が前記範囲内になるよう調整する。また、前記リンス剤αは、鋼帯表面の撥水化の観点から、pHが3以上が好ましく、5以上がより好ましく、6以上がさらに好ましく、そして、10以下が好ましく、9以下がより好ましい。
すすぎ工程(2)では、リンス剤を昇温するのにかかるエネルギーコストを低減するために、前記リンス剤αを、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下、更に好ましくは30℃以下で用いる。下限は特にないが、通常5℃以上である。
すすぎ工程(2)では、1以上のすすぐ処理を含むことができるが、乾燥工程に至る前の最後のすすぎ処理で前記鋼板に前記リンス剤αを接触させ、前記洗浄工程(1)が施された前記鋼板を処理する。2以上のすすぐ処理を含む場合は、すすぎ工程(2)でリンス剤α以外のリンス剤や水を用いてリンス処理をすることができるが、すすぎ工程(2)の最後のすすぐ処理ではリンス剤αを用いることが必要である。
すすぎ工程(2)の最後のすすぐ処理で行われるリンス剤αを用いたリンス剤処理の具体例としては、ブラシしながらスプレーして前記鋼板をすすぐブラシリンス処理、スプレーしてブラシせずに前記鋼板をすすぐスプレーリンス処理、その他、前記鋼板を浸漬してすすぐ浸漬リンス処理があげられる。これらの中でも、リンス剤αを効率よく鋼板に作用させる観点から、浸漬リンス処理及び/又はスプレーリンス処理が好ましく、リンス剤αを鋼板に直接効率的に作用させることができる点で、スプレーリンス処理がより好ましい。リンス剤αを再利用する観点から、リンス剤αでスプレー処理し、スプレー処理後に鋼板表面から留出したリンス剤αを浸漬槽に導入し、浸漬リンス処理に用いることが好ましい。
ブラシリンス処理においては、ブラシロール間またはブラシロールと搬送ロール間に、鋼板を搬送させながら、鋼板およびブラシロールにリンス剤αをスプレーすることにより、鋼板にリンス剤αを接触させる。ブラシロールの回転速度は100回転/分以上が好ましく、500回転/分以上がより好ましく、そして、1200回転/分以下が好ましく、1000回転/分以下がより好ましい。
スプレーリンス処理においては、鋼板にリンス剤αを直接スプレーして、鋼板にリンス剤αを接触させる。スプレーの条件は、スプレー圧が0.05MPa以上が好ましく、0.1MPa以上がより好ましく、そして、1.5MPa以下が好ましく、1MPa以下がより好ましい。スプレー量は1m/時間以上が好ましく、5m/時間以上がより好ましく、7m/時間以上が更に好ましく、そして、100m/時間以下が好ましく、70m/時間以下がより好ましく、60m/時間以下が更に好ましい。スプレー時間(スプレーリンス処理における接触時間)は0.01秒以上が好ましく、0.1秒以上がより好ましく、1秒以上が更に好ましく、そして、30秒以下が好ましく、10秒以下がより好ましい。
浸漬リンス処理においては、リンス剤αへの浸漬時間は、1秒以上5秒以下が好ましく、シャワーする場合は、スプレー圧0.05MPa以上1.5MPa以下で、0.1秒以上5秒以下が好ましい。
すすぎ工程(2)で2以上のすすぐ処理を含む場合において、水やリンス剤α以外のリンス剤で前記鋼板を処理する場合は、水やリンス剤α以外のリンス剤でブラシリンス処理しリンス剤αで浸漬リンス処理をする方法及び水やリンス剤α以外のリンス剤で浸漬リンス処理しリンス剤αでスプレーリンス処理をする方法が好ましい。排水処理の負荷を低減する観点から、水で処理した後リンス剤αで処理することがより好ましい。具体的には、水でブラシリンス処理しリンス剤αで浸漬リンス処理をする方法及び水で浸漬リンス処理しリンス剤αでスプレーリンス処理をする方法がより好ましい。
また、例えば、水やリンス剤α以外のリンス剤で処理する場合、用いる水の温度は、エネルギーコストを低減するために、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、そして、好ましくは40℃以下、より好ましくは30℃以下である。水で処理する方法としては鋼板を水やリンス剤に浸漬してもよく、シャワーなどですすぎ洗いをしてもよい。鋼板を水やリンス剤に浸漬する場合、浸漬時間は、1秒以上5秒以下が好ましく、シャワーする場合は、スプレー圧0.05MPa以上1.5MPa以下で、0.1秒以上5秒以下が好ましい。
ブラシリンス処理においては、ブラシロール間またはブラシロールと搬送ロール間に、鋼板を搬送させながら、鋼板およびブラシロールにスプレーすることにより、鋼板に水やリンス剤を接触させる。ブラシロールの回転速度は100回転/分以上が好ましく、500回転/分以上がより好ましく、そして、1200回転/分以下が好ましく、1000回転/分以下がより好ましい。
スプレーリンス処理においては、鋼板に水やリンス剤を直接スプレーして、鋼板に水やリンス剤を接触させる。スプレーの条件は、スプレー圧が0.05MPa以上が好ましく、0.1MPa以上がより好ましく、そして、1.5MPa以下が好ましく、1MPa以下がより好ましい。スプレー量は1m/時間以上が好ましく、5m/時間以上がより好ましく、7m/時間以上が更に好ましく、そして、100m/時間以下が好ましく、70m/時間以下がより好ましく、60m/時間以下が更に好ましい。スプレー時間(スプレーリンス処理における接触時間)は0.01秒以上が好ましく、0.1秒以上がより好ましく、1秒以上が更に好ましく、そして、30秒以下が好ましく、10秒以下がより好ましい。
また、すすぎ工程(2)で鋼板を水やリンス剤に浸漬処理する場合、鋼板の水やリンス剤への浸漬時間は、0.5秒以上が好ましく、1秒以上がより好ましく、そして、10秒以下が好ましく、5秒以下がより好ましい。
前記洗浄工程(1)及びすすぎ工程(2)は、通常、鋼板を搬送する連続したラインとして設けられる。鋼板の搬送速度は、通常、30m/分以上、好ましくは50m/分以上、そして、1000m/分以下、好ましくは800m/分以下であり、かかる搬送ライン速度を考慮して、前記洗浄工程(1)及びすすぎ工程(2)における、各処理時間が設定される。
さらに、乾燥工程(3)での負荷を低減する観点から、洗浄剤αを用いたリンス剤処理と乾燥工程(3)の間に、洗浄剤αを用いたリンス剤処理された鋼板の表面を地面に対して略垂直に保持する処理を行うことが好ましい。この処理により、洗浄剤αで撥水性を付与された鋼板表面の水が重力によって落下し鋼板表面に残留する水の量が低減される。略垂直に保持する時間は、鋼板表面の水分量を低減する観点から、1秒以上が好ましく、3秒以上がよりこの好ましく、そして、鋼板の搬送の観点から、30秒以下が好ましく、20秒以下がより好ましい。
また、乾燥工程(3)での負荷を低減する観点から、洗浄剤αを用いたリンス剤処理と乾燥工程(3)の間に、鋼板表面に空気等の気体を噴射し、鋼板上の水分を吹き飛ばす処理を行うことが好ましい。
〔前記すすぎ工程(2)が施された後の鋼板を乾燥させる乾燥工程(3)〕
乾燥工程(3)では、前記すすぎ工程(2)が施され、リンス剤αが付着している鋼板を乾燥させる。当該乾燥工程(3)では、常法の条件に従って、リンス剤αが付着した鋼板を乾燥させる。乾燥工程における乾燥手段としては、例えば80℃以上150℃以下、好ましくは120℃以下のオーブンに入れる方法が挙げられる。また、これらの温度に調整した空気等の気体を鋼板表面に噴射する方法が挙げられる。乾燥時間は、例えば、鋼板を搬送する連続したラインにおける加熱機の数を低減でき、エネルギーコストを低減する観点から、60秒以下が好ましく、40秒以下がより好ましく、20秒以下がより好ましい。鋼板工場の製造設備では、80℃以上150℃以下、好ましくは120℃以下で3秒から10秒加熱し乾燥させる方法が挙げられる。
洗浄後に得られる鋼板は自動車用鋼板や缶詰などの飲料用鋼板、家電用鋼板など様々な用途に用いることができる。洗浄後の鋼板表面の油汚れなどの付着量は、鋼板の用途により異なるが、洗浄前の鋼板の炭素付着質量を100%とした時、洗浄後に10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、3%以下であることがより好ましい。
上述した実施形態に関し、本明細書はさらに以下の製造方法、組成物、或いは用途を開示する。
<1>冷間圧延後の鋼板を洗浄する洗浄工程(1)、前記洗浄工程(1)が施された後の鋼板をすすぐすすぎ工程(2)、前記すすぎ工程(2)が施された後の鋼板を乾燥させる乾燥工程(3)を含む鋼板の製造方法であって、前記すすぎ工程(2)が1以上のすすぐ処理を含み、最後のすすぐ処理に用いるリンス剤αが、下記一般式(1):


(式中、Rは炭素数6以上22以下の炭化水素基を示し、Rは水素原子又は炭素数1以上22以下の炭化水素基、R及びRは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1以上3以下の炭化水素基を示す。Xは無機アニオンあるいは有機アニオンを示す。)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種である成分(a)を含有し、前記成分(a)の濃度が、前記リンス剤α中、150mg/kg以下であり、前記リンス剤αの無機塩のカチオン濃度P(mmol/kg)(P=Σ(A×i)(式中、Aはカチオン1成分の濃度(mmol/kg)、iはカチオンの価数を表す。))が2.0mmol/kg以上18.0mmol/kg以下であり、硫酸イオン濃度が0.75mmol/kg以下である、鋼板の製造方法。
<2>前記R1が、炭素数6以上であり、好ましくは8以上、より好ましくは12以上、更に好ましくは16以上であり、そして、22以下であり、好ましくは18以下である直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基である、前記<1>記載の鋼板の製造方法。
<3>前記Rは水素原子、又は炭素数1以上、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは12以上、より更に好ましくは16以上であり、そして、22以下、好ましくは18以下であり、好ましくは直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、より好ましくは直鎖のアルキル基又はアルケニル基である、前記<1>又は<2>記載の鋼板の製造方法。
<4>前記成分(a)のリンス剤α中の濃度が、好ましくは5mg/kg以上、より好ましくは10mg/kg以上、更に好ましくは20mg/kg以上、そして、150mg/kg以下、好ましくは148mg/kg以下、より好ましくは145mg/kg以下、更に好ましくは120mg/kg以下、より更に好ましくは110mg/kg以下である、前記<1>〜<3>いずれかに記載の鋼板の製造方法。
<5>前記カチオン濃度が2.0mmol/kg以上、好ましくは4.0mmol/kg以上、より好ましくは6.0mmol/kg以上、そして、18.0mmol/kg以下、好ましくは17.0mmol/kg以下、より好ましくは10.0mmol/kg以下である、<1>〜<4>いずれかに記載の鋼板の製造方法。
<6>前記硫酸イオン濃度が、0.75mmol/kg以下、好ましくは0.70mmol/kg以下、より好ましくは0.40mmol/kg以下、更に好ましくは硫酸イオンを含まない、<1>〜<5>いずれかに記載の鋼板の製造方法。
<7>前記すすぎ工程(2)において、リンス剤αが、5℃以上が好ましく、そして、40℃以下が好ましく、30℃以下がより好ましい、前記<1>〜<6>いずれかに記載の鋼板の製造方法。
<8>前記すすぎ工程(2)の最後のすすぐ処理がスプレーリンス処理である、<1>〜<7>いずれかに記載の鋼板の製造方法。
<9>前記すすぎ工程(2)の最後のすすぐ処理を、水によるリンス処理の後に行う、<1>〜<8>いずれかに記載の鋼板の製造方法。
<10>前記すすぎ工程(2)の最後のすすぐ処理と乾燥工程(3)との間に、鋼板の表面を地面に対して略垂直に保持する処理を行う、<1>〜<9>いずれかに記載の鋼板の製造方法。
<11>さらに、リンス剤αを調製するための水の無機塩のカチオン濃度を測定する工程と、測定値に基づいてすすぎ工程(2)で用いるリンス剤αを調製する工程を有する、<1>〜<10>いずれかに記載の鋼板の製造方法。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
<リンス剤処理のタイミングの影響>
〔洗浄剤の調製〕
水酸化ナトリウム2質量%、グルコン酸ナトリウム0.2質量%、エチレンジアミン4酢酸ナトリウム0.1質量%、ノニオン界面活性剤〔C1429O(EO)(PO)(EO)H〕0.023質量%、ポリアクリル酸ナトリウム0.025質量%、水97.652質量%を添加混合した水溶液を洗浄剤Aとして使用した。
〔試験水の調製〕
鋼板の製造工場で用いられる工業用水等のイオンを含む水のモデルとして、試験水を調製し実験に用いた。イオン交換水に、塩化ナトリウム、塩化カルシウム(2水和物)、塩化マグネシウム(6水和物)及び硫酸ナトリウムから選ばれる一種以上の無機塩を添加し、撹拌して完全に溶解し、試験水W−1〜W−19を調製した。各試験水のカチオン濃度と硫酸イオン濃度の分析値を表1に示した。
カチオン濃度と硫酸イオン濃度は以下の方法で測定した。
(ナトリウムイオン及びカリウムイオン)
原子吸光法を用いて測定した。
測定条件:バリアン社製SpectraAA、波長:Na589.0nm,K766.5nm、フレーム アセチレン(1.7L/min)−空気(15L/min)、バーナー高さ7.5mm、積算時間3秒(×3回平均)
(カルシウムイオン及びマグネシウムイオン)
ICP発光分析法を用いて測定した。
測定条件:パーキンエルマー社製 Optima5300DV、波長:Ca317.933nm、Mg285.213nm、積算時間自動(1〜5秒×3回平均)、高周波出力1.3KW、プラズマガス15L/min 補助ガス0.2L/min、シースガス0.7mL/min
(硫酸イオン)
イオンクロマトグラフィー法を用いて測定した。
測定条件:Dionex社製DX320、カラムDionex社製Ion Pac AS11−HCとIon Pac AG11−HC(ガードカラム)、溶離液KOH、グラジエント溶出にて分析、流量1.5mL/分、検出器 電気伝導度、検出器温度35℃、サンプル注入量は25μL
〔リンス剤A〜C及びaの調製〕
試験水W−3の1kgを80℃に加温して、成分(a)として酸(酢酸)5.3mgとアルキルアミン(オレイルアミン)23.7mg(オレイルアミンの酢酸塩として29.0mg)を、この順に添加、溶解し、リンス剤Aを調製した。また、表2に示した濃度になるよう成分(a)の添加量を変えた以外はリンス剤Aと同様にしてリンス剤B〜C及びaを調製した。そして、25℃に調整したリンス剤A〜C及びaを表3に示した工程で使用した。
<実施例A〜C及び比較例a>
<洗浄工程:アルカリ洗浄>
縦70mm、横100mmにカットした厚さ0.7mmの冷間圧延鋼板(汚れ:鉄粉及び圧延油)を、アルカリ洗浄槽内の洗浄剤Aに浸漬(浸漬時間2秒)し、アルカリ洗浄槽から引き上げた。
<洗浄工程:電解洗浄>
前記アルカリ洗浄工程を施した鋼板を、電解洗浄槽内の前記洗浄剤Aに浸漬し、電解洗浄(電解時間 負極と正極のスイッチング間隔が各0.4秒、電流密度14A/dm)し、電解洗浄槽から引き上げた。
<洗浄工程:ブラシ洗浄>
前記電解洗浄工程を施した後の鋼板を、ノズル(株式会社いけうち社製スプレーノズル1/4MVE11578)を用い、スプレー圧0.2MPa、スプレー量10ml/秒で試験水W−1をスプレーしながら、ブラシロール洗浄試験機(昭和工業株式会社製、ナイロンブラシ、ブラシ回転数500回転/分、ブラシ圧下量1mm、鋼板送り速度60m/分)でブラシ洗浄を行った。
<すすぎ工程:浸漬リンス処理>
ブラシ洗浄工程後の鋼板を、試験水W−1に浸漬(浸漬時間2秒)し、水リンス浸漬槽から引き上げた。
<すすぎ工程:スプレーリンス処理>
ノズル(株式会社いけうち社製スプレーノズル1/4MJ100NBW)を用い、スプレー圧0.2MPa、スプレー量33ml/秒で3秒間、表3に示したリンス剤を鋼板にスプレーした。そして、リンス剤処理した鋼板の表面が地面に対して垂直になるようにして5秒間保持した。
<乾燥工程>
すすぎ工程が終了した鋼板を80℃にした乾燥機(東京理化器械株式会社製送風定温乾燥機「WFO−401W」)に入れて乾燥させた。その際、目視にて鋼板表面の水分が乾燥するまでの時間を測定した。表3に結果を示した。表3では1分で乾燥しない場合は1分以上と、すすぎ工程の終了段階ですでに水分が観察されない場合は※と、記載した。
<比較例b、及び比較例A〜C>
前記浸漬リンス工程で試験水W−1の代わりに表3に示したリンス剤を用い、スプレーリンス工程で試験水W−1を用いた以外は実施例Aと同様の処理をした。
<比較例D、E>
前記ブラシ洗浄工程で試験水W−1の代わりに表3に示したリンス剤を用い、スプレーリンス工程で試験水W−1を用いた以外は実施例Aと同様の処理をした。
<比較例F、G>
前記電解洗浄工程で洗浄剤Aの代わりに表3に示したリンス剤を用い、スプレーリンス工程で試験水W−1を用いた以外は実施例Aと同様の処理をした。
<比較例H、I>
前記アルカリ洗浄工程で洗浄剤Aの代わりに表3に示したリンス剤を用い、スプレーリンス工程で試験水W−1を用いた以外は実施例Aと同様の処理をした。
<鋼板乾燥性の評価>
乾燥工程ですすぎ工程が終了した鋼板を80℃にした乾燥機に入れ、鋼板表面の水分の乾燥が目視で確認できるまでの時間を乾燥時間とした。乾燥時間が短いほど乾燥性が良いことを表す。評価結果を表3に示す。すすぎ工程の後の鋼板表面の水濡れ性は、水濡れ性を面積で表す指標(WB:ウォーターブレーク)により評価した。WBの測定は前記乾燥工程前の鋼板の写真を撮影し、水濡れ部分の面積を方眼紙(最小目盛1mm)を透明フィルムにコピーしたものにあてはめて算出した。WBの値が小さい程、乾燥性が良いことを表す。各工程で用いた洗浄剤、リンス剤及び水の種類と、評価結果を表3に示す。乾燥工程では薬剤や水を使用しないので「−」を記載した。
表3の結果から、乾燥工程直前に特定のカチオン濃度の水を用いたリンス剤によってリンス剤処理することにより、乾燥工程での乾燥するまでの時間及びすすぎ工程での鋼板表面の水分量が減少し乾燥性が向上することが解る。また、乾燥工程の乾燥時間は、すすぎ工程後のウォーターブレークと相関があることが解る。また、成分(a)のリンス剤中の濃度が200mg/kgでは、リンス剤で処理した後に水で処理をした場合でも乾燥性が向上するが(比較例a、b)、乾燥工程直前で特定のカチオン濃度の水を用いたリンス剤で処理すれば、成分(a)の含有量を減らしても乾燥性が向上することがわかる(実施例A〜C、比較例A〜C)。
<カチオン濃度の影響>
<実施例A―1〜A―10、比較例1〜9>
試験水W−1〜W−19を用いた以外は、実施例Aと同様にリンス剤を調製し、すすぎ工程後のウォーターブレークで乾燥性を評価した。評価結果を表4及び表5に示す。
表4及び表5の結果から、リンス剤の無機塩のカチオン濃度を一定の範囲にすることにより、鋼板の乾燥性が向上することが解る。
<酸、及びアルキルアミンの酸塩の影響>
<実施例1〜7>
試験水W−3に、表6に記載した濃度及び組成になるように配合したこと以外は実施例Aと同様にリンス剤を調製し、すすぎ工程後のウォーターブレークで乾燥性を評価した。評価結果を表6に示す。
表6の結果から、特定のアミンの酸塩が、成分(a)であることにより、鋼板の乾燥性が向上することが解る。

Claims (5)

  1. 冷間圧延後の鋼板を洗浄する洗浄工程(1)、
    前記洗浄工程(1)が施された後の鋼板をすすぐすすぎ工程(2)、
    前記すすぎ工程(2)が施された後の鋼板を乾燥させる乾燥工程(3)を含む鋼板の製造方法であって、
    前記すすぎ工程(2)が1以上のすすぐ処理を含み、最後のすすぐ処理に用いるリンス剤αが、下記一般式(1):


    (式中、Rは炭素数6以上22以下の炭化水素基を示し、Rは水素原子又は炭素数1以上22以下の炭化水素基、R及びRは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1以上3以下の炭化水素基を示す。Xは無機アニオンあるいは有機アニオンを示す。)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種である成分(a)を含有し、
    前記成分(a)の濃度が、前記リンス剤α中、150mg/kg以下であり、
    前記リンス剤αの無機塩のカチオン濃度P(mmol/kg)(P=Σ(A×i)(式中、Aはカチオン1成分の濃度(mmol/kg)、iはカチオンの価数を表す。))が2.0mmol/kg以上18.0mmol/kg以下であり、
    硫酸イオン濃度が0.75mmol/kg以下である、鋼板の製造方法。
  2. 前記すすぎ工程(2)の最後のすすぐ処理がスプレーリンス処理である、請求項1に記載の鋼板の製造方法。
  3. 前記すすぎ工程(2)の最後のすすぐ処理を、水によるリンス処理の後に行う、請求項1又は2に記載の鋼板の製造方法。
  4. 前記すすぎ工程(2)の最後のすすぐ処理と乾燥工程(3)との間に、鋼板の表面を地面に対して略垂直に保持する処理を行う、請求項1〜3のいずれかに記載の鋼板の製造方法。
  5. さらに、リンス剤αを調製するための水の無機塩のカチオン濃度を測定する工程と、測定値に基づいてすすぎ工程(2)で用いるリンス剤αを調製する工程を有する、請求項1〜4のいずれかに記載の鋼板の製造方法。
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