JP2014141567A - ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物およびその製造方法 - Google Patents

ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物およびその製造方法 Download PDF

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圭 齋藤
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宏之 井砂
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Abstract

【課題】高い引張伸度が発現すると共に、優れたクリープ特性、電気特性を兼ね備えたポリフェニレンスルフィド樹脂組成物およびその製造方法を得ることを課題とする。
【解決手段】
(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂85〜51重量%、(b)ポリフェニレンエーテル樹脂15〜49重量%からなる樹脂組成物であって、(a)成分が連続相(海相)を、(b)成分が分散相(島相)を形成すると共に、(b)成分からなる分散相中に(a)成分からなる分散粒子が存在することを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は靱性に優れると共に、誘電率が低く抑制されたポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、その製造方法に関するものである。
ポリフェニレンスルフィド(以下PPSと略すことがある)樹脂は、優れた耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性、耐湿熱性など、エンジニアリングプラスチックとして好適な性質を有している。このため、電気・電子部品、通信機器部品、自動車部品などに幅広く利用されているものの、靱性が比較的低く、誘電率も高いなどの課題が指摘されている。特に、電気・電子、通信の分野においては、情報の高速処理、高速伝達を目的とした高周波数化に伴い、誘電率の低い材料が求められている昨今の現状である。
一方、ポリフェニレンエーテル(以下PPEと略すことがある)樹脂は、成形加工性にやや難があるものの、PPS樹脂同様、耐熱性が高く、誘電率も比較的低い材料である。
このため、ポリフェニレンスルフィド樹脂にポリフェニレンエーテル樹脂を配合する試みがこれまでにもいくつか報告されている。例えば、特許文献1には、ポリフェニレンエーテル、ポリアリーレンスルフィド、エポキシ化合物からなるポリマー混合物が開示されている。特許文献2には、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、カップリング剤を含む樹脂組成物が開示されている。特許文献3には、溶融粘度が30Pa・s以下のポリアリーレンスルフィド樹脂とポリアリーレンエーテル樹脂を含有する樹脂組成物が開示されている。特許文献4には、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、エチレン/エチレン系不飽和カルボン酸グリシジルエステル/酢酸ビニル共重合体を配合してなる樹脂組成物が開示されている。
しかしながら、通常、樹脂組成物の誘電率は、配合する個々の樹脂の誘電率とその配合割合に大きく依存する。具体的に、ポリフェニレンスルフィドの誘電率は約3.5、ポリフェニレンエーテルが約2.6、ポリエチレンが約2.2であるが、耐熱性、耐薬品性の観点からポリフェニレンスルフィドを主成分とした相構造を構築するためには、ポリフェニレンエーテルやポリエチレンなどの低誘電ポリマーを配合する量が必然的に制限されるため、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の低誘電率化も実質的に限界があり、必ずしも市場の要求を満足することができていない現状である。また、ポリエチレンなどのようなオレフィン系樹脂は、その柔軟性から、ポリフェニレンスルフィドのクリープ歪み量を著しく大きくしてしまうなどの新たな課題も生じる。
特開平2−36262号公報 特開平3−79661号公報 特開2002−121383号公報 特開2011−57720号公報
本発明はポリフェニレンスルフィド樹脂が本来有する耐熱性や耐薬品性、機械的強度を損なうことなく、靱性が優れると共に、誘電率が低く、クリープ歪みも小さく抑制されたポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を提供することを課題とするものである。
そこで本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリフェニレンスルフィド樹脂にポリフェニレンエーテル樹脂を配合した樹脂組成物について、ポリフェニレンスルフィド樹脂が連続相(海相)を、ポリフェニレンエーテル樹脂が分散相(島相)を形成すると共に、ポリフェニレンエーテル樹脂からなる分散相中に、ポリフェニレンスルフィド樹脂からなる分散粒子が存在する特定の相構造を形成することにより、優れた靱性を有しながら、誘電率とクリープ歪みが飛躍的に低下することを見出し本発明に到達した。
即ち、本発明は以下の通りである。
1.(a)成分と(b)成分の合計を100重量%として、(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂85〜51重量%、(b)ポリフェニレンエーテル樹脂15〜49重量%からなる樹脂組成物であって、前記樹脂組成物からなる成形品の電子顕微鏡で観察されるモルフォロジーにおいて、(a)成分が連続相(海相)を、(b)成分が分散相(島相)を形成すると共に、(b)成分からなる分散相中に、(a)成分からなる分散粒子が存在することを特徴とするポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、
2.前記(b)ポリフェニレンエーテル樹脂からなる分散相中に、前記(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂からなる分散粒子が、1〜200nmの数平均粒子径で存在することを特徴とする1に記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、
3.前記(b)ポリフェニレンエーテル樹脂からなる分散相中に、前記(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂からなる分散粒子が、分散相の面積を基準として2〜50%の面積割合で存在することを特徴とする1〜2のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、
4.前記(b)ポリフェニレンエーテル樹脂からなる分散相が、300nmを超える粒子径からなる分散相(A)と、300nm以下の粒子径からなる分散相(B)との2群からなると共に、分散相(A)についてのみ、前記(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂からなる分散粒子を含有することを特徴とする1〜3のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、
5.前記(b)ポリフェニレンエーテル樹脂からなる分散相(A)の分散粒子数nと分散相(B)の分散粒子数nの比(n/n)が0.05〜1.00であることを特徴とする4に記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、
6.前記(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂と前記(b)ポリフェニレンエーテル樹脂の合計を100重量部として、さらに(c)エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基から選択される少なくとも1種の官能基を含有するシランカップリング化合物0.1〜5重量部を含有することを特徴とする1〜5のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、
7.前記(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂と前記(b)ポリフェニレンエーテル樹脂の合計を100重量部として、さらに(d)オレフィン系樹脂1〜45重量部を含有することを特徴とする1〜6のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、
8.スクリュー長さLとスクリュー直径Dの比(L/D)が10以上であり、かつ前記L/Dのうちの3〜20%が、スクリューフライトに切り欠き部を有する撹拌スクリューエレメントで構成される二軸押出機を用いて溶融混練することを特徴とする1〜7のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の製造方法、
である。
本発明によれば、優れた靱性と共に誘電率、クリープ歪みが飛躍的に低下したポリフェニレンスルフィド樹脂組成物が得られる。誘電率の低下は、信号の電波遅延時間を短くすることができることから、電気・電子機器、通信機器などの高周波用途に好適である。
(a)PPSが連続相()を、(b)PPEが分散相()を形成すると共に、(b)PPE成分からなる分散相中に(a)PPS成分からなる分散粒子()が存在する本発明の樹脂組成物の相構造の模式図である。
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂
本発明で用いられる(a)PPS樹脂は、下記構造式で示される繰り返し単位を有する重合体であり、
耐熱性の観点からは上記構造式で示される繰り返し単位を含む重合体を70モル%以上、更には90モル%以上含む重合体が好ましい。また(a)PPS樹脂はその繰り返し単位の30モル%未満程度が、下記の構造を有する繰り返し単位等で構成されていてもよい。
かかる構造を一部有するPPS共重合体は、融点が低くなるため、このような樹脂組成物は成形性の点で有利となる。
本発明で用いられる(a)PPS樹脂の溶融粘度に特に制限はないが、より優れた引張破断伸度を得る意味からその溶融粘度は高い方が好ましい。例えば30Pa・s(310℃、剪断速度1000/s)を越える範囲が好ましく、50Pa・s以上がさらに好ましく、100Pa・s以上がさらに好ましい。上限については溶融流動性保持の点から600Pa・s以下であることが好ましい。
なお、本発明における溶融粘度は、310℃、剪断速度1000/sの条件下、東洋精機製キャピログラフを用いて測定した値である。
以下に、本発明に用いる(a)PPS樹脂の製造方法について説明するが、上記構造の(a)PPS樹脂が得られれば下記方法に限定されるものではない。
まず、製造方法において使用するポリハロゲン芳香族化合物、スルフィド化剤、重合溶媒、分子量調節剤、重合助剤および重合安定剤の内容について説明する。
[ポリハロゲン化芳香族化合物]
ポリハロゲン化芳香族化合物とは、1分子中にハロゲン原子を2個以上有する化合物をいう。具体例としては、p−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,2,4,5−テトラクロロベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、2,5−ジクロロトルエン、2,5−ジクロロ-p-キシレン、1,4−ジブロモベンゼン、1,4−ジヨードベンゼン、1−メトキシ−2,5−ジクロロベンゼンなどのポリハロゲン化芳香族化合物が挙げられ、好ましくはp−ジクロロベンゼンが用いられる。また、異なる2種以上のポリハロゲン化芳香族化合物を組み合わせて共重合体とすることも可能であるが、p−ジハロゲン化芳香族化合物を主要成分とすることが好ましい。
ポリハロゲン化芳香族化合物の使用量は、加工に適した粘度の(a)PPS樹脂を得る点から、スルフィド化剤1モル当たり0.9から2.0モル、好ましくは0.95から1.5モル、更に好ましくは1.005から1.2モルの範囲が例示できる。
[スルフィド化剤]
スルフィド化剤としては、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物、および硫化水素が挙げられる。
アルカリ金属硫化物の具体例としては、例えば硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を挙げることができ、なかでも硫化ナトリウムが好ましく用いられる。これらのアルカリ金属硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。
アルカリ金属水硫化物の具体例としては、例えば水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水硫化リチウム、水硫化ルビジウム、水硫化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を挙げることができ、なかでも水硫化ナトリウムが好ましく用いられる。これらのアルカリ金属水硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。
また、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から、反応系においてin situで調製されるアルカリ金属硫化物も用いることができる。また、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物からアルカリ金属硫化物を調整し、これを重合槽に移して用いることができる。
あるいは、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素から反応系においてin situで調製されるアルカリ金属硫化物も用いることができる。また、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素からアルカリ金属硫化物を調整し、これを重合槽に移して用いることができる。
仕込みスルフィド化剤の量は、脱水操作などにより重合反応開始前にスルフィド化剤の一部損失が生じる場合には、実際の仕込み量から当該損失分を差し引いた残存量を意味するものとする。
なお、スルフィド化剤と共に、アルカリ金属水酸化物および/またはアルカリ土類金属水酸化物を併用することも可能である。アルカリ金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を好ましいものとして挙げることができ、アルカリ土類金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムなどが挙げられ、なかでも水酸化ナトリウムが好ましく用いられる。
スルフィド化剤として、アルカリ金属水硫化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましいが、この使用量はアルカリ金属水硫化物1モルに対し0.95から1.20モル、好ましくは1.00から1.15モル、更に好ましくは1.005から1.100モルの範囲が例示できる。
[重合溶媒]
重合溶媒としては有機極性溶媒を用いるのが好ましい。具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドンなどのN−アルキルピロリドン類、N−メチル−ε−カプロラクタムなどのカプロラクタム類、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホキシドなどに代表されるアプロチック有機溶媒、およびこれらの混合物などが挙げられ、これらはいずれも反応の安定性が高いために好ましく使用される。これらのなかでも、特にN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略記することもある)が好ましく用いられる。
有機極性溶媒の使用量は、スルフィド化剤1モル当たり2.0モルから10モル、好ましくは2.25から6.0モル、より好ましくは2.5から5.5モルの範囲が選ばれる。
[分子量調節剤]
生成する(a)PPS樹脂の末端を形成させるか、あるいは重合反応や分子量を調節するなどのために、モノハロゲン化合物(必ずしも芳香族化合物でなくともよい)を、上記ポリハロゲン化芳香族化合物と併用することができる。
[重合助剤]
比較的高重合度の(a)PPS樹脂をより短時間で得るために重合助剤を用いることも好ましい態様の一つである。ここで重合助剤とは得られる(a)PPS樹脂の粘度を増大させる作用を有する物質を意味する。このような重合助剤の具体例としては、例えば有機カルボン酸塩、水、アルカリ金属塩化物、有機スルホン酸塩、硫酸アルカリ金属塩、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属リン酸塩およびアルカリ土類金属リン酸塩などが挙げられる。これらは単独であっても、また2種以上を同時に用いることもできる。なかでも、有機カルボン酸塩、水、およびアルカリ金属塩化物が好ましく、さらに有機カルボン酸塩としてはアルカリ金属カルボン酸塩が、アルカリ金属塩化物としては塩化リチウムが好ましい。
上記アルカリ金属カルボン酸塩とは、一般式R(COOM)n(式中、Rは、炭素数1〜20を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基またはアリールアルキル基である。Mは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムから選ばれるアルカリ金属である。nは1〜3の整数である。)で表される化合物である。アルカリ金属カルボン酸塩は、水和物、無水物または水溶液としても用いることができる。アルカリ金属カルボン酸塩の具体例としては、例えば、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、吉草酸リチウム、安息香酸ナトリウム、フェニル酢酸ナトリウム、p−トルイル酸カリウム、およびそれらの混合物などを挙げることができる。
アルカリ金属カルボン酸塩は、有機酸と、水酸化アルカリ金属、炭酸アルカリ金属塩および重炭酸アルカリ金属塩よりなる群から選ばれる一種以上の化合物とを、ほぼ等化学当量ずつ添加して反応させることにより形成させてもよい。上記アルカリ金属カルボン酸塩の中で、リチウム塩は反応系への溶解性が高く助剤効果が大きいが高価であり、カリウム、ルビジウムおよびセシウム塩は反応系への溶解性が不十分であると思われるため、安価で、重合系への適度な溶解性を有する酢酸ナトリウムが最も好ましく用いられる。
これらアルカリ金属カルボン酸塩を重合助剤として用いる場合の使用量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対し、通常0.01モル〜2モルの範囲であり、より高い重合度を得る意味においては0.1〜0.6モルの範囲が好ましく、0.2〜0.5モルの範囲がより好ましい。
また水を重合助剤として用いる場合の添加量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対し、通常0.3モル〜15モルの範囲であり、より高い重合度を得る意味においては0.6〜10モルの範囲が好ましく、1〜5モルの範囲がより好ましい。
これら重合助剤は2種以上を併用することももちろん可能であり、例えばアルカリ金属カルボン酸塩と水を併用すると、それぞれより少量で高分子量化が可能となる。
これら重合助剤の添加時期には特に指定はなく、後述する前工程時、重合開始時、重合途中のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよいが、重合助剤としてアルカリ金属カルボン酸塩を用いる場合は前工程開始時或いは重合開始時に同時に添加することが、添加が容易である点からより好ましい。また水を重合助剤として用いる場合は、ポリハロゲン化芳香族化合物を仕込んだ後、重合反応途中で添加することが効果的である。
[重合安定剤]
重合反応系を安定化し、副反応を防止するために、重合安定剤を用いることもできる。重合安定剤は、重合反応系の安定化に寄与し、望ましくない副反応を抑制する。副反応の一つの目安としては、チオフェノールの生成が挙げられ、重合安定剤の添加によりチオフェノールの生成を抑えることができる。重合安定剤の具体例としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属水酸化物、およびアルカリ土類金属炭酸塩などの化合物が挙げられる。そのなかでも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物が好ましい。上述のアルカリ金属カルボン酸塩も重合安定剤として作用するので、重合安定剤の一つに入る。また、スルフィド化剤としてアルカリ金属水硫化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましいことを前述したが、ここでスルフィド化剤に対して過剰となるアルカリ金属水酸化物も重合安定剤となり得る。
これら重合安定剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。重合安定剤は、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対して、通常0.02〜0.2モル、好ましくは0.03〜0.1モル、より好ましくは0.04〜0.09モルの割合で使用することが好ましい。この割合が少ないと安定化効果が不十分であり、逆に多すぎても経済的に不利益であったり、ポリマー収率が低下する傾向となる。
重合安定剤の添加時期には特に指定はなく、後述する前工程時、重合開始時、重合途中のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよいが、前工程開始時或いは重合開始時に同時に添加することが容易である点からより好ましい。
次に、本発明に用いる(a)PPS樹脂の好ましい製造方法について、前工程、重合反応工程、回収工程、および後処理工程と、順を追って具体的に説明するが、勿論この方法に限定されるものではない。
[前工程]
(a)PPS樹脂の製造方法において、スルフィド化剤は通常水和物の形で使用されるが、ポリハロゲン化芳香族化合物を添加する前に、有機極性溶媒とスルフィド化剤を含む混合物を昇温し、過剰量の水を系外に除去することが好ましい。
また、上述したように、スルフィド化剤として、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から、反応系においてin situで、あるいは重合槽とは別の槽で調製されるスルフィド化剤も用いることができる。この方法には特に制限はないが、望ましくは不活性ガス雰囲気下、常温〜150℃、好ましくは常温から100℃の温度範囲で、有機極性溶媒にアルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物を加え、常圧または減圧下、少なくとも150℃以上、好ましくは180〜260℃まで昇温し、水分を留去させる方法が挙げられる。この段階で重合助剤を加えてもよい。また、水分の留去を促進するために、トルエンなどを加えて反応を行ってもよい。
重合反応における、重合系内の水分量は、仕込みスルフィド化剤1モル当たり0.3〜10.0モルであることが好ましい。ここで重合系内の水分量とは重合系に仕込まれた水分量から重合系外に除去された水分量を差し引いた量である。また、仕込まれる水は、水、水溶液、結晶水などのいずれの形態であってもよい。
[重合反応工程]
有機極性溶媒中でスルフィド化剤とポリハロゲン化芳香族化合物とを200℃以上290℃未満の温度範囲内で反応させることにより(a)PPS樹脂を製造する。
重合反応工程を開始するに際しては、望ましくは不活性ガス雰囲気下、常温〜240℃、好ましくは100〜230℃の温度範囲で、有機極性溶媒とスルフィド化剤とポリハロゲン化芳香族化合物を混合する。この段階で重合助剤を加えてもよい。これらの原料の仕込み順序は、順不同であってもよく、同時であってもさしつかえない。
かかる混合物を通常200℃〜290℃の範囲に昇温する。昇温速度に特に制限はないが、通常0.01〜5℃/分の速度が選択され、0.1〜3℃/分の範囲がより好ましい。
一般に、最終的には250〜290℃の温度まで昇温し、その温度で通常0.25〜50時間、好ましくは0.5〜20時間反応させる。
最終温度に到達させる前の段階で、例えば200℃〜260℃で一定時間反応させた後、270〜290℃に昇温する方法は、より高い重合度を得る上で有効である。この際、200℃〜260℃での反応時間としては、通常0.25時間から20時間の範囲が選択され、好ましくは0.25〜10時間の範囲が選ばれる。
なお、より高重合度のポリマーを得るためには、複数段階で重合を行うことが有効である場合がある。複数段階で重合を行う際は、245℃における系内のポリハロゲン化芳香族化合物の転化率が、40モル%以上、好ましくは60モル%に達した時点であることが有効である。
なお、ポリハロゲン化芳香族化合物(ここではPHAと略記)の転化率は、以下の式で算出した値である。PHA残存量は、通常、ガスクロマトグラフ法によって求めることができる。
(A)ポリハロゲン化芳香族化合物をアルカリ金属硫化物に対しモル比で過剰に添加した場合
転化率=〔PHA仕込み量(モル)−PHA残存量(モル)〕/〔PHA仕込み量(モル)−PHA過剰量(モル)〕
(B)上記(A)以外の場合
転化率=〔PHA仕込み量(モル)−PHA残存量(モル)〕/〔PHA仕込み量(モル)〕
[回収工程]
(a)PPS樹脂の製造方法においては、重合終了後に、重合体、溶媒などを含む重合反応物から固形物を回収する。回収方法については、公知の如何なる方法を採用しても良い。
例えば、重合反応終了後、徐冷して粒子状のポリマーを回収する方法を用いても良い。この際の徐冷速度には特に制限は無いが、通常0.1℃/分〜3℃/分程度である。徐冷工程の全行程において同一速度で徐冷する必要はなく、ポリマー粒子が結晶化析出するまでは0.1〜1℃/分、その後1℃/分以上の速度で徐冷する方法などを採用しても良い。
また上記の回収を急冷条件下に行うことも好ましい方法の一つであり、この回収方法の好ましい一つの方法としてはフラッシュ法が挙げられる。フラッシュ法とは、重合反応物を高温高圧(通常250℃以上、8kg/cm以上)の状態から常圧もしくは減圧の雰囲気中へフラッシュさせ、溶媒回収と同時に重合体を粉末状にして回収する方法であり、ここでいうフラッシュとは、重合反応物をノズルから噴出させることを意味する。フラッシュさせる雰囲気は、具体的には例えば常圧中の窒素または水蒸気が挙げられ、その温度は通常150℃〜250℃の範囲が選ばれる。
[後処理工程]
(a)PPS樹脂は、上記重合、回収工程を経て生成した後、酸処理、熱水処理、有機溶媒による洗浄、アルカリ金属やアルカリ土類金属処理を施されたものであってもよい。
酸処理を行う場合は次のとおりである。(a)PPS樹脂の酸処理に用いる酸は、(a)PPS樹脂を分解する作用を有しないものであれば特に制限はなく、酢酸、塩酸、硫酸、リン酸、珪酸、炭酸およびプロピル酸などが挙げられ、なかでも酢酸および塩酸がより好ましく用いられるが、硝酸のような(a)PPS樹脂を分解、劣化させるものは好ましくない。
酸処理の方法は、酸または酸の水溶液に(a)PPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。例えば、酢酸を用いる場合、PH4の水溶液を80〜200℃に加熱した中にPPS樹脂粉末を浸漬し、30分間撹拌することにより十分な効果が得られる。処理後のPHは4以上例えばPH4〜8程度となっても良い。酸処理を施された(a)PPS樹脂は残留している酸または塩などを除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。洗浄に用いる水は、酸処理による(a)PPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を損なわない意味で、蒸留水、脱イオン水であることが好ましい。
熱水処理を行う場合は次のとおりである。(a)PPS樹脂を熱水処理するにあたり、熱水の温度を100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは150℃以上、特に好ましくは170℃以上とすることが好ましい。100℃未満では(a)PPS樹脂の好ましい化学的変性の効果が小さいため好ましくない。
熱水洗浄による(a)PPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を発現するため、使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。熱水処理の操作に特に制限は無く、所定量の水に所定量の(a)PPS樹脂を投入し、圧力容器内で加熱、撹拌する方法、連続的に熱水処理を施す方法などにより行われる。(a)PPS樹脂と水との割合は、水の多い方が好ましいが、通常、水1リットルに対し、(a)PPS樹脂200g以下の浴比が選ばれる。
また、処理の雰囲気は、末端基の分解が好ましくないので、これを回避するため不活性雰囲気下とすることが望ましい。さらに、この熱水処理操作を終えた(a)PPS樹脂は、残留している成分を除去するため温水で数回洗浄するのが好ましい。
有機溶媒で洗浄する場合は次のとおりである。(a)PPS樹脂の洗浄に用いる有機溶媒は、(a)PPS樹脂を分解する作用などを有しないものであれば特に制限はなく、例えばN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホラスアミド、ピペラジノン類などの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホランなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、パークロルエチレン、モノクロルエタン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、パークロルエタン、クロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒およびベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などが挙げられる。これらの有機溶媒のうちでも、N−メチル−2−ピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミドおよびクロロホルムなどの使用が特に好ましい。また、これらの有機溶媒は、1種類または2種類以上の混合で使用される。
有機溶媒による洗浄の方法としては、有機溶媒中に(a)PPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。有機溶媒で(a)PPS樹脂を洗浄する際の洗浄温度については特に制限はなく、常温〜300℃程度の任意の温度が選択できる。洗浄温度が高くなる程洗浄効率が高くなる傾向があるが、通常は常温〜150℃の洗浄温度で十分効果が得られる。圧力容器中で、有機溶媒の沸点以上の温度で加圧下に洗浄することも可能である。また、洗浄時間についても特に制限はない。洗浄条件にもよるが、バッチ式洗浄の場合、通常5分間以上洗浄することにより十分な効果が得られる。また連続式で洗浄することも可能である。
アルカリ金属、アルカリ土類金属処理する方法としては、上記前工程の前、前工程中、前工程後にアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩を添加する方法、重合行程前、重合行程中、重合行程後に重合釜内にアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩を添加する方法、あるいは上記洗浄工程の最初、中間、最後の段階でアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩を添加する方法などが挙げられる。中でももっとも容易な方法としては、有機溶剤洗浄や、温水または熱水洗浄で残留オリゴマーや残留塩を除いた後にアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩を添加する方法が挙げられる。アルカリ金属、アルカリ土類金属は、酢酸塩、水酸化物、炭酸塩などのアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンの形でPPS中に導入するのが好ましい。また過剰のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩は温水洗浄などにより取り除く方が好ましい。上記アルカリ金属、アルカリ土類金属導入の際のアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン濃度としてはPPS1gに対して0.001mmol以上が好ましく、0.01mmol以上がより好ましい。温度としては、50℃以上が好ましく、75℃以上がより好ましく、90℃以上が特に好ましい。上限温度は特にないが、操作性の観点から通常280℃以下が好ましい。浴比(乾燥PPS重量に対する洗浄液重量)としては0.5以上が好ましく、3以上がより好ましく、5以上が更に好ましい。
本発明においては、靱性の優れたポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を得る観点から、有機溶媒洗浄と80℃程度の温水または前記した熱水洗浄を数回繰り返すことにより残留オリゴマーや残留塩を除いた後、酸処理もしくはアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩で処理する方法が好ましい。
その他、(a)PPS樹脂は、重合終了後に酸素雰囲気下においての加熱および過酸化物などの架橋剤を添加しての加熱による熱酸化架橋処理により高分子量化して用いることも可能である。
熱酸化架橋による高分子量化を目的として乾式熱処理する場合には、その温度は160〜260℃が好ましく、170〜250℃の範囲がより好ましい。また、酸素濃度は5体積%以上、更には8体積%以上とすることが望ましい。酸素濃度の上限には特に制限はないが、50体積%程度が限界である。処理時間は、0.5〜100時間が好ましく、1〜50時間がより好ましく、2〜25時間がさらに好ましい。加熱処理の装置は通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よく、しかもより均一に処理する場合は、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
また、熱酸化架橋を抑制し、揮発分除去を目的として乾式熱処理を行うことも可能である。その温度は130〜250℃が好ましく、160〜250℃の範囲がより好ましい。また、この場合の酸素濃度は5体積%未満、更には2体積%未満とすることが望ましい。処理時間は、0.5〜50時間が好ましく、1〜20時間がより好ましく、1〜10時間がさらに好ましい。加熱処理の装置は通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よく、しかもより均一に処理する場合は、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
但し、本発明の(a)PPS樹脂は、優れた靱性を発現する観点から、熱酸化架橋処理による高分子量化を行わない実質的に直鎖状のPPS樹脂であることが好ましい。その一方で、熱酸化架橋処理を施したPPS樹脂は、クリープ歪みを小さく抑制する観点からは好適であり、適宜、直線状のPPS樹脂と混合して使用することも可能である。また、本発明では、溶融粘度の異なる複数の(a)PPS樹脂を混合して使用しても良い。
本発明の(a)PPS樹脂は、(b)PPE樹脂との親和性を向上する観点から、カルボキシル基およびその誘導体基を含むことも好ましい態様として挙げられる。(a)PPS樹脂中に、カルボキシル基およびその誘導体基を導入する方法としては、カルボキシル基およびその誘導体基を含むポリハロゲン化芳香族化合物を共重合する方法や、カルボキシル基およびその誘導体基を含む化合物、例えば無水マレイン酸、ソルビン酸などを添加して、(a)PPS樹脂と溶融混練しながら反応せしめることにより導入する方法などを例示できる。
(b)ポリフェニレンエーテル樹脂
本発明で用いられるポリフェニレンエーテル樹脂とは、下記構造式で示される構造単位を主鎖に含む重合体であり、ホモポリマー、コポリマーまたはグラフトポリマーのいずれを用いても良い。
ここで、R1〜R4は、水素、ハロゲン、炭素数1〜7のアルキル基、フェニル基、ハロアルキル基、アミノアルキル基などから選択される。R1およびR2は、それぞれ独立した炭素数1〜3の第一級アルキル基であることが好ましく、R3およびR4は水素であることが好ましい。
かかるポリフェニレンエーテル樹脂は、フェノール化合物の1種または2種以上と酸化カップリング触媒を用い、酸素または酸素含有ガスの存在下で酸化重合して得ることができる。
上記構造式で示される以外の単位としては、ビニル芳香族化合物が挙げられる。例えば、上記構造式で示される単位からなる重合体に、ビニル芳香族化合物をグラフト重合したものを用いることができる。
ポリフェニレンエーテル樹脂のより具体的な構造としては、ポリ(2、6−ジメチル−1、4−フェニレン)エーテル、ポリ(2、6−ジエチル−1、4−フェニレン)エーテル、ポリ(2、6−ジプロピル−1、4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−1、4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−プロピル−1、4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−プロピル−1、4−フェニレン)エーテル、2,6−ジメチルフェノール/2,3,6−トリエチルフェノール共重合体、2,6−ジエチルフェノール/2,3,6−トリメチルフェノール共重合体、2,6−ジプロピルフェノール/2,3,6−トリメチルフェノール共重合体などが挙げられる。
また、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)にスチレンをグラフト重合した共重合体、2,6−ジメチルフェノール/2,3,6−トリメチルフェノール共重合体にスチレンをグラフトした共重合体などが挙げられる。
中でもポリ(2、6−ジメチル−1、4−フェニレン)エーテル、2、6−ジメチルフェノールと2、3、6−トリメチルフェノールの共重合体などが好ましい。
その他、無水マレイン酸や、グリシジルメタクリレートなどによって変性されたポリフェニレンエーテルも好ましく使用される。特に、本願発明のPPS樹脂組成物について、伸度を向上する観点からは、無水マレイン酸で変性されたポリフェニレンエーテルがより好ましく用いられる。但し、過剰の無水マレイン酸で変性されたポリフェニレンエーテルの場合、樹脂組成物の溶融粘度が高くなりすぎ成形下限圧が上昇するため、ポリフェニレンエーテル100重量部に対して、無水マレイン酸の添加量を5部以下として変性することが好ましい。更に流動性が重視される場合には、無変性のポリフェニレンエーテルが好適で有り、変性されたポリフェニレンエーテルと併用することも勿論可能である。
(c)エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基から選択される少なくとも1種の官能基を含有するシランカップリング化合物
本発明の(c)エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基から選択される少なくとも1種の官能基を含有するシランカップリング化合物の内、エポキシ基を有する化合物(但し、オレフィン系樹脂を除く)としては、一分子中にエポキシ基を1個以上有し、アルコキシ基を2個あるいは3個有するシラン化合物が挙げられる。例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどが例示できる。
本発明の(c)エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基から選択される少なくとも1種の官能基を含有するシランカップリング化合物の内、アミノ基を有する化合物としては、一分子中にアミノ基を1個以上有し、アルコキシ基を2個あるいは3個有するシラン化合物が挙げられる。例えば、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどが例示できる。
本発明の(c)エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基から選択される少なくとも1種の官能基を含有するシランカップリング化合物の内、イソシアネート基を有する化合物としては、一分子中にイソシアネート基を1個以上有し、アルコキシ基を2個あるいは3個有するシラン化合物を挙げることができる。例えば、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリクロロシランなどが挙げられる。
これら、シランカップリング化合物の添加により、PPS樹脂組成物の引張伸度が向上し易くなるが、中でも安定して優れた靱性を発現する上で、エポキシシクロヘキシル基またはイソシアネート基を有するアルコキシシラン化合物が好ましく、さらにイソシアネート基を含有するアルコキシシラン化合物であることがより好ましい。
(d)オレフィン系樹脂
本発明で用いられる(b)オレフィン系樹脂は、オレフィン重合体もしくはオレフィン共重合体のどちらであっても良い。
オレフィン重合体もしくは共重合体の例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4ジメチル−1−ヘキセン、4,4ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセンなどのα−オレフィン単独または2種以上を重合して得られる重合体、α−オレフィンとアクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなどのα、β−不飽和カルボン酸およびそのアルキルエステルとの共重合体などが挙げられる。
その他、エポキシ基を含有するオレフィンとして、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジルなどの単量体を挙げることができる。
また、カルボキシル基およびその塩、酸無水物基を含有するオレフィンの例としては、無水マレイン酸、無水フマル酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、エンドビシクロ−(2,2,1)−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物などの単量体などが挙げられる。
これらのエポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基などを含有する単量体成分を導入する場合の方法としては、重合時に共重合せしめたり、オレフィン重合体もしくはオレフィン共重合体にラジカル開始剤を用いてグラフト導入するなどの方法を用いることができる。
エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基を含有する単量体成分を導入した場合、その導入量は、オレフィン系樹脂全体に対して0.001〜40モル%、好ましくは0.01〜35モル%の範囲内であるのが好ましい。
本発明で特に有用なエポキシ基を含有するオレフィン系共重合体としては、α−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステルを必須共重合成分とするオレフィン共重合体が挙げられる。上記α−オレフィンとしては、エチレンが好ましく挙げられる。また、これら共重合体にはさらに、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなどのα,β−不飽和カルボン酸およびそのアルキルエステル等を共重合することも可能である。
本発明においては、α−オレフィン80〜99重量%とα,β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステル1〜20重量%を必須共重合成分とするオレフィン共重合体が好ましく、α−オレフィン90〜99重量%とα,β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステル1〜10重量%を必須共重合成分とするオレフィン共重合体が特に好ましい。
上記α,β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステルは、
(Rは水素原子または低級アルキル基を示す)で示される化合物であり、具体的にはアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルおよびエタクリル酸グリシジルなどが挙げられるが、中でもメタクリル酸グリシジルが好ましく使用される。α−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステルを必須共重合成分とするオレフィン共重合体の具体例としては、エチレン/プロピレン−g−メタクリル酸グリシジル共重合体(”g”はグラフトを表す、以下同じ)、エチレン/ブテン−1−g−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/アクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/アクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体およびエチレン/メタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体が挙げられる。中でも、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/アクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体およびエチレン/メタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体から選ばれた共重合体が好ましく用いられる。
本発明で特に有用なカルボキシル基、酸無水物基を含有するオレフィン系共重合体としては、炭素数6〜12のα−オレフィンを用いたエチレン・α−オレフィン共重合体に、カルボキシル基、酸無水物基が導入されたものが好ましく、中でもエチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・プロピレン共重合体にカルボキシル基、酸無水物基が導入されたものがより好ましい。
本発明の(d)オレフィン系樹脂は、ASTM−D1238に従って190℃、2160g荷重で測定したメルトフローレート(以下MFRと略す)が、0.01〜70g/10分であることが好ましく、さらに好ましくは0.03〜60g/10分である。MFRが0.01g/10分未満の場合は、樹脂組成物の流動性が低くなり好ましくない。MFRが70g/10分を超える場合は、成形品の形状によっては、その衝撃強度が低くなる場合もあり好ましくない。
本発明の(d)オレフィン系樹脂の密度は850〜990kg/mが好ましい。密度が990kg/mを越えると靭性が低下する傾向を示し、好ましくない。密度が850kg/m未満ではハンドリング性が低下するため好ましくない。
本発明における(a)PPS樹脂と(b)PPE樹脂の配合割合は、(a)成分と(b)成分の合計を100重量%として、(a)PPS樹脂85〜51重量%、(b)PPE樹脂15〜49重量%である必要がある。(b)PPE樹脂が15重量%を下回る場合、十分な低誘電率化効果が得られないばかりかクリープ歪みを低減する効果も小さくなる。一方、(b)PPE樹脂が49重量%を上回る場合には、樹脂組成物の耐熱性、耐薬品性が著しく低下してしまうため好ましくない。(a)PPS樹脂と(b)PPE樹脂のより好ましい配合割合は、(a)PPS樹脂80〜51重量%、(b)PPE樹脂20〜49重量%であり、誘電率を効果的に低下させる観点からは(a)PPS樹脂70〜51重量%、(b)PPE樹脂30〜49重量%であることがさらに好ましい。
本発明における(c)エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基から選択される少なくとも1種の官能基を含有するシランカップリング化合物の配合割合は、(a)PPS樹脂と(b)PPE樹脂の合計を100重量部として、0.1〜5重量部であることが好ましい。(c)シランカップリング化合物が0.1重量部を下回る場合、樹脂組成物の伸度向上が図りにくくなるため好ましくない。一方、(c)シランカップリング化合物が5重量部を上回る場合、樹脂組成物の溶融粘度が極度に上昇して成形下限圧が上昇するなど、成形加工上の問題が生じるため好ましくない。(c)シランカップリング化合物のより好ましい配合量としては、0.2〜3.0重量部であり、溶融粘度の上昇を抑制する他、原料コストの上昇を最小限に抑える観点からも0.4〜2.0重量部であることが更に好ましい。
本発明における(d)オレフィン系樹脂の配合割合は、(a)PPS樹脂と(b)PPE樹脂の合計を100重量部として、1〜45重量部であることが好ましい。(d)オレフィン系樹脂が1重量部を下回る場合、樹脂組成物の伸度向上が図りにくくなるばかりか、誘電率を低下させる効果も減退してしまうため好ましくない。一方、(d)オレフィン系樹脂が45重量部を上回る場合には、樹脂組成物の溶融粘度が著しく増加してしまうほか、耐熱性が低下してしまうため好ましくない。(d)オレフィン系樹脂のより好ましい配合量としては、5〜40重量部であり、耐熱性、伸度向上効果、誘電率低下効果の観点からは10〜35重量部が更に好ましい範囲として例示できる。
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、電子顕微鏡で観察されるモルフォロジーにおいて、(a)PPS樹脂が連続相(海相)を、(b)PPE樹脂が分散相(島相)を形成すると共に、(b)PPE樹脂からなる分散相中に、(a)PPS樹脂からなる分散粒子が存在する必要がある。
図1には模式図を示したが、かかる相構造を有することにより、(a)PPS樹脂、(b)PPE樹脂それぞれの誘電率と、(a)PPS樹脂および(b)PPE樹脂の配合量とから推定される誘電率よりも一層、誘電率が低下する効果が得られる。
なお、(b)PPE樹脂からなる分散相中に存在する(a)PPS樹脂からなる分散粒子とは、基本的に(a)PPS樹脂を主成分とするものであるが、(a)PPS樹脂以外の樹脂や(a)PPS樹脂とそれ以外の樹脂の反応物を一部含んでいても良い。しかし、効果的に誘電率を低下させる観点からは、(a)PPS樹脂が90%以上の割合で含まれていることが好ましい。
また、この際、(a)PPS樹脂からなる分散粒子が、数平均粒子径1〜200nmの範囲で、(b)PPE樹脂からなる分散相中に存在することがより好ましい。(a)PPS樹脂からなる分散粒子が、数平均粒子径1〜200nmの範囲で微粒子化することにより、PPS樹脂組成物の低誘電率化効果は更に向上する。(a)PPS樹脂からなる分散粒子の数平均粒子径が1nmを下回る場合、部分相溶系に近づくため、優れた低誘電率化効果はむしろ得られにくい。一方、200nmを上回る場合、(a)PPS樹脂と(b)PPE樹脂の接触界面が少なくなるため、同じく優れた低誘電率化効果は得られにくい。(a)PPS樹脂からなる分散粒子について、より好ましい数平均粒子径の範囲は5〜180nmであり、更には10〜150nmが生産性の観点からより好ましい。
さらに、この際、(b)PPE樹脂からなる分散相中に、(a)PPS樹脂からなる分散粒子が、面積割合として2〜50%で存在することも好ましい相構造として例示できる。(a)PPS樹脂からなる分散粒子の面積割合が、(b)PPE樹脂からなる分散相に対して、2〜50%となることにより、PPS樹脂組成物の低誘電率化効果は更に向上する。(a)PPS樹脂からなる分散粒子の面積割合が2%を下回る場合、(a)PPS樹脂と(b)PPE樹脂の接触界面が少なくなるため、優れた低誘電率化効果は得られにくい。一方、50%を上回る場合には、優れた低誘電率化効果は得られるものの、引張伸度が著しく低下してしまうために好ましくない。(a)PPS樹脂からなる分散粒子のより好ましい面積割合は、3〜30%であり、更には5〜20%であることが生産性の観点から好ましい。
その他、(b)PPE樹脂からなる分散相が、数平均粒子径300nmを超える分散相(A)と、300nm以下である分散相(B)との2群からなると共に、分散相(A)についてのみ、(a)PPS樹脂からなる分散粒子を含有する相構造が好ましく例示できる。この様に、粒子径300nmを超える(b)PPE樹脂からなる分散相(A)が存在することにより、比較的高い引張伸度が発現しやすくなる。一方で、粒子径300nm以下である(b)PPE樹脂からなる分散相(B)が存在することによって、誘電率が低下しやすくなり、伸度と低誘電率の両立が図られ易くなる。この(b)PPE樹脂からなる、粒子径300nmを超える分散相(A)の数nと、300nm以下である分散相(B)の数nの比(n/n)は0.05〜1.00であることが、伸度と低誘電率が両立する観点から好ましい。誘電率をより低下させる為には、0.1〜0.5の範囲がより好ましく、伸度をより向上させやすくする為には0.5〜0.9の範囲がより好ましい。
なお、ここで言う電子顕微鏡で観察される相構造とは、本発明の樹脂組成物を射出成形したASTM1号ダンベル試験片について、その中央部を樹脂の流れ方向に対して直角方向に切断し、その断面の中心部から、−20℃で0.1μm以下の薄片を切削し、日立製作所製H−7100型透過型電子顕微鏡(分解能(粒子像)0.38nm、倍率50〜60万倍)にて、1万倍に拡大して写真撮影したものである。
この観察写真を基に、(b)PPE分散相中に存在する(a)PPS分散粒子の有無を確認した。
また、(b)PPE分散相中に存在する(a)PPS分散粒子の数平均粒径に関しては、任意の(a)PPS分散粒子部分について、まずそれぞれの最大径と最小径を測定して平均値をその分散粒子径とし、その後それらの平均値として求めた。
(b)PPE分散相中に存在する(a)PPS分散粒子の面積割合に関しては、前記したモルフォロジー観察写真を更に4倍に拡大してから、任意の(b)PPE分散相について、(b)PPEの面積部分を切り出して秤量した重量(X)と(b)PPE分散相中に存在する(a)PPS分散粒子の面積部分を切り出して秤量した重量(Y)から、(Y)/((X)+(Y))の計算式に従って求めた。なお、(b)PPE分散相が、300nmを超える粒子径からなる分散相(A)と、300nm以下の粒子径からなる分散相(B)との2群に分かれているときは、(a)PPS分散粒子を含有する分散相(A)のみを対象として面積割合を見積もった。
(b)PPE分散相のうち、300nmを超える粒子径からなる分散相(A)の粒子数nと、300nm以下の粒子径からなる分散相(B)の粒子数nの比(n/n)に関しては、(a)PPS連続相中に存在する任意の(b)PPE分散粒子について、それぞれの粒子数n、nを数えた後、n/nの計算式に従って求めた。
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、誘電率が低く抑制されたものであるが、実用性の観点から、誘電率は3.2以下であることが望ましい。なお、ここで言う誘電率とは、いわゆる真空の誘電率との比である比誘電率の事であり、(縦)100mm×(横)70mm×(厚み)3mmの角板試験片について、周波数1MHz、測定温度23℃、50%RHの条件下、ASTMD 150に準拠した変成器ブリッジ法により測定したものである。
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、誘電率が低く抑制される他、優れた引張伸度を有するものであるが、実用性の観点から、ASTM1号ダンベル成形片の引張破断伸び(インストロン製5581型引張試験機を用いて試験間距離100mm、引張速度10mm/minで測定)が5%以上であることが望ましく、さらには8%以上であることがより好ましい。引張破断伸びが5%を下回る場合、本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物からなる各種成形品の靱性不足により、十分な耐久性を持たないために好ましくない。
ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の製造方法
本発明の熱可塑性樹脂組成物を製造する方法としては、溶融状態での製造や溶液状態での製造等が使用できるが、簡便さの観点から、溶融状態での製造が好ましく使用できる。溶融状態での製造については、押出機による溶融混練や、ニーダーによる溶融混練等が使用できるが、生産性の観点から、連続的に製造可能な押出機による溶融混練が好ましく使用できる。押出機による溶融混練については、単軸押出機、二軸押出機、四軸押出機等の多軸押出機、二軸単軸複合押出機等の押出機を1台以上で使用できるが、混練性、反応性、生産性向上の点から、二軸押出機、四軸押出機等の多軸押出機が好ましく使用でき、二軸押出機による溶融混練が最も好ましい。
本発明の樹脂組成物を製造するより具体的な方法としては、必ずしもこの限りでは無いが、L/D(L:スクリュー長さ、D:スクリュー直径)が10以上、好ましくは20以上であり、ニーディング部を2箇所以上、好ましくは3箇所以上有すると共に、スクリューフライトに切り欠き部を有する撹拌スクリューエレメントを、全L/Dのうちの3〜20%の長さで使用した二軸押出機を使用することが好ましい。スクリューフライトに切り欠き部を有する撹拌スクリューエレメントを、前記した特定の長さで使用することにより、本発明の(b)PPE樹脂分散相中に、(a)PPS樹脂からなる分散粒子が存在する特定の相構造を形成し易くすることができる。切り欠き部を有する撹拌スクリューとしては、スクリューフライト部における切り欠き数が1ピッチ当たり10〜15個であることが好ましい。切り欠き部を有する撹拌スクリューエレメントのより好ましい長さとしては5〜15%が例示でき、7〜13%が更に好ましい範囲として例示できる。
その他、二軸押出機のスクリュー回転数については150〜1000回転/分、好ましくは300〜1000回転/分とし、混合時の樹脂温度が(a)PPS樹脂の融解ピーク温度+10〜70℃となるように混練する方法が好ましい。
なお、二軸押出機のL/Dの上限については特に制限しないが、60以下が経済性の観点から好ましい。また、ニーディング部箇所の上限についても特に制限しないが、生産性の観点から10箇所以下であることが好ましい。
原料の混合順序については特に制限はなく、全ての原材料を配合後上記の方法により溶融混練する方法、一部の原材料を配合後上記の方法により溶融混練し、これと更に残りの原材料を配合し溶融混練する方法、あるいは一部の原材料を配合後、2軸の押出機により溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法など、いずれの方法を用いてもよい。また、少量添加剤成分については、他の成分を上記の方法などで混練しペレット化した後、成形前に添加して成形に供することも勿論可能である。
本発明の樹脂組成物において、変性された(b)PPE樹脂を、(c)シランカップリング剤と共に用いる場合には、(a)PPS樹脂と(c)シランカップリング剤とを予め溶融混練した後、さらに(b)PPE樹脂と溶融混練する手法が、より誘電率を低下する観点から好ましい手法として挙げられる。この場合、(a)PPS樹脂と(c)シランカップリング剤を予め溶融混練してペレット化した後、(b)PPE樹脂と混合してさらに溶融混練しても良いし、(a)PPS樹脂と(c)シランカップリング剤を予め溶融混練中に、サイドフィーダーを用いて(b)PPE樹脂と混合しても良い。
更に、(d)オレフィン系樹脂を併用する場合には、その他の原料を溶融混練中にサイドフィーダーを用いて(d)オレフィン系樹脂を混合する手法が、(d)オレフィン系樹脂の熱酸化劣化を抑制する点で好ましい。
無機フィラー
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物には、必須成分ではないが、本発明の効果を損なわない範囲で無機フィラーが配合されていても問題ない。かかる無機フィラーの具体例としてはガラス繊維、炭素繊維、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、炭酸カルシウムウィスカー、ワラステナイトウィスカー、硼酸アルミニウムウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維などの繊維状充填材、あるいはフラーレン、タルク、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、マイカ、カオリン、クレー、パイロフィライト、シリカ、ベントナイト、アスベスト、アルミナシリケートなどの珪酸塩、酸化珪素、酸化マグネシウム、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、銅、ニッケル、亜鉛、コバルト、鉄、マンガンなどの金属粉末または合金、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラス粉、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素、カーボンブラックおよびシリカ、黒鉛などの非繊維状充填材が用いられ、なかでもガラス繊維、シリカ、炭酸カルシウムが好ましく、さらに炭酸カルシウムやシリカが、防食材、滑材の効果の点から特に好ましい。またこれらの無機フィラーは中空であってもよく、さらに2種類以上併用することも可能である。また、これらの無機フィラーをイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用してもよい。中でも炭酸カルシウムやシリカ、カーボンブラックが、防食材、滑材、導電性付与の効果の点から好ましい。
かかる無機フィラーの配合量は、(a)PPS樹脂と(b)PPE樹脂の合計100重量部に対して、1〜300重量部の範囲が例示できる。
その他の添加物
さらに、本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の樹脂を添加配合しても良い。その具体例としては、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリアリルサルフォン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリアリレート樹脂、液晶ポリマー、ポリエーテルケトン樹脂、ポリチオエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、四フッ化ポリエチレン樹脂、などが挙げられる。
また、改質を目的として、以下のような化合物の添加が可能である。ポリアルキレンオキサイドオリゴマ系化合物、チオエーテル系化合物、エステル系化合物、有機リン系化合物などの可塑剤、有機リン化合物、ポリエーテルエーテルケトンなどの結晶核剤、モンタン酸ワックス類、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸アルミ等の金属石鹸、エチレンジアミン・ステアリン酸・セバシン酸重縮合物、シリコーン系化合物などの離型剤、次亜リン酸塩などの着色防止剤、(3,9−ビス[2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)などの様なフェノール系酸化防止剤、(ビス(2,4−ジ−クミルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト)などのようなリン系酸化防止剤、その他、水、滑剤、紫外線防止剤、着色剤、発泡剤などの通常の添加剤を配合することができる。上記化合物は何れも組成物全体の20重量%を越えると本発明の特性が損なわれるため好ましくなく、10重量%以下、更に好ましくは1重量%以下の添加がよい。
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、射出成形、押出成形、圧縮成形、吹込成形、射出圧縮成形など、各種成形手法により成形可能であるが、中でも射出成形用途として有用である。
また、本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、引張破断伸度に優れるとともに、誘電率が低く、クリープ変形量も小さい特徴から、電気電子部品、通信機器部品、自動車部品、家電部品、OA機器部品などに利用するのに適しており、例えばケーブル、チューブ、繊維、ブロー成形品、フィルム、シートなどにも幅広く利用することができる。
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
以下の実施例において、材料特性については下記の方法により評価した。
[射出成形]
住友重機械製射出成形機SE75−DUZを用い、樹脂温度320℃、金型温度150℃とする条件にて、ASTM1号ダンベル試験片および(縦)100mm×(横)70mm×(厚み)3mm(ゲート形状:フィルムゲート)の角板試験片を成形した。
[モルフォロジー観察]
前記、射出成形したASTM1号ダンベル試験片の中央部を樹脂の流れ方向に対して直角方向に切断し、その断面の中心部から、−20℃で0.1μm以下の薄片を切削し、日立製作所製H−7100型透過型電子顕微鏡(分解能(粒子像)0.38nm、倍率50〜60万倍)にて、1万倍に拡大して写真撮影した後、(b)PPE分散相中に存在する(a)PPS分散粒子の有無を確認した。
(b)PPE分散相中に存在する(a)PPS分散粒子の数平均粒径に関しては、任意の(a)PPS分散粒子部分について、まずそれぞれの最大径と最小径を測定して平均値をその分散粒子径とし、その後それらの平均値として求めた。
(b)PPE分散相中に存在する(a)PPS分散粒子の面積割合に関しては、前記したモルフォロジー観察写真を更に4倍に拡大してから、任意の(b)PPE分散相について、(b)PPEの面積部分を切り出して秤量した重量(X)と(b)PPE分散相中に存在する(a)PPS分散粒子の面積部分を切り出して秤量した重量(Y)から、(Y)/((X)+(Y))の計算式に従って求めた。なお、(b)PPE分散相が、300nmを超える粒子径からなる分散相(A)と、300nm以下の粒子径からなる分散相(B)との2群に分かれているときは、(a)PPS分散粒子を含有する分散相(A)のみを対象として面積割合を見積もった。
(b)PPE分散相のうち、300nmを超える粒子径からなる分散相(A)の粒子数nと、300nm以下の粒子径からなる分散相(B)の粒子数nの比(n/n)に関しては、(a)PPS連続相中に存在する任意の(b)PPE分散粒子について、それぞれの粒子数n、nを数えた後、n/nの計算式に従って求めた。
[引張伸度]
前記、射出成形したASTM1号ダンベル試験片について、インストロン製5581型引張試験機を用い、雰囲気温度23℃、引張速度10mm/分、試験間距離100mmの条件にて引張試験を行った。
[クリープ歪み]
前記、射出成形したASTM1号ダンベル試験片について、(株)オリエンテック製6本掛けクリープ試験機CP6−L−10KNを用い、雰囲気温度80℃、荷重20MPa、試験間距離100mmの条件にて引張クリープ試験を行った。100時間経過時の変位量について、以下の計算式によりクリープ歪み(%)を算出した。
(変位量(mm)−初期歪み量(mm))/100(mm)×100(%)
[誘電率]
前記、射出成形した(縦)100mm×(横)70mm×(厚み)3mmの角板試験片について、周波数1MHz、測定温度23℃、50%RHの条件下、ASTMD 150に準拠した変成器ブリッジ法により、誘電率を測定した。
[参考例1](a)PPS樹脂の重合(a−1)
撹拌機付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8267.37g(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2957.21g(70.97モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11434.50g(115.50モル)、酢酸ナトリウム2583.00g(31.50モル)、及びイオン交換水10500gを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14780.1gおよびNMP280gを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。
次にp−ジクロロベンゼン10235.46g(69.63モル)、NMP9009.00g(91.00モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら、0.6℃/分の速度で238℃まで昇温した。238℃で95分反応を行った後、0.8℃/分の速度で270℃まで昇温した。270℃で100分反応を行った後、1260g(70モル)の水を15分かけて圧入しながら250℃まで1.3℃/分の速度で冷却した。その後200℃まで1.0℃/分の速度で冷却してから、室温近傍まで急冷した。
内容物を取り出し、26300gのNMPで希釈後、溶剤と固形物をふるい(80mesh)で濾別し、得られた粒子を31900gのNMPで洗浄、濾別した。これを、56000gのイオン交換水で数回洗浄、濾別した後、0.05重量%酢酸水溶液70000gで洗浄、濾別した。70000gのイオン交換水で洗浄、濾別した後、得られた含水PPS粒子を80℃で熱風乾燥し、120℃で減圧乾燥した。得られたPPS(a−1)は、溶融粘度が200Pa・s(310℃、剪断速度1000/s)であった。
[参考例2](a)PPS樹脂の重合(a−2)
撹拌機付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8267.37g(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2962.50g(71.10モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11434.50g(115.50モル)、酢酸ナトリウム516.60g(6.30モル)、及びイオン交換水10500gを仕込み、常圧で窒素を通じながら230℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14780.1gおよびNMP280gを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.017モルであった。
次にp−ジクロロベンゼン10363.50g(70.50モル)、NMP9078.30g(91.70モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら、0.6℃/分の速度で270℃まで昇温し、270℃で140分保持した。その後、250℃まで1.3℃/分の速度で冷却しながら2520g(140モル)のイオン交換水をオートクレーブに圧入した。その後200℃まで1.0℃/分の速度で冷却してから、室温近傍まで急冷した。
内容物を取り出し、26300gのNMPで希釈後、溶剤と固形物をふるい(80mesh)で濾別し、得られた粒子を31900gのNMPで洗浄、濾別した。これを、56000gのイオン交換水で数回洗浄、濾別した後、0.05重量%酢酸水溶液70000gで洗浄、濾別した。70000gのイオン交換水で洗浄、濾別した後、得られた含水PPS粒子を80℃で熱風乾燥し、120℃で減圧乾燥した。得られたPPS(a−2)は、溶融粘度が50Pa・s(310℃、剪断速度1000/s)であった。
[参考例3](b)PPE樹脂
b−1:ポリ(2,6−ジメチルフェニレンオキサイド)(三菱エンジニアリングプラスチックス製“ユピエース”PX−100F)
b−2:100重量部の“ユピエース”PX−100Fを1部の無水マレイン酸と溶融混
することにより得られたポリ(2,6−ジメチルフェニレンオキサイド)。
[参考例4](c)エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基から選択される少なくとも1種の官能基を含有するシランカップリング化合物
c−1:3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業製KBE−9007)。
[参考例5](d)オレフィン系樹脂
d−1:無水マレイン酸で変性されたエチレン・1−ブテン共重合体(三井化学製“タフマー”MH5020)。
[参考例6]二軸押出機のスクリュー構成
I:ニーディングスクリューおよび切り欠きスクリューを配した構成
II:ニーディングスクリューを配した構成(切り欠きスクリューは配していない)
[実施例1〜4、9、10]
表1、表2に示す(a)PPS樹脂、(b)PPE樹脂、(c)シランカップリング剤、(d)オレフィン系樹脂を表1に示す割合でドライブレンドした後、真空ベントを具備した日本製鋼所製TEX30α型二軸押出機(スクリュー構成I、L/D=45、L/D中の切り欠きスクリュー割合10%)を用い、スクリュー回転数300rpmにて、ダイス出樹脂温度が330℃以下となるようにシリンダー温度を設定して溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。得られたペレットを130℃で1晩乾燥してから、射出成形に供した。
得られた成形品について、モルフォロジー観察、引張伸び、クリープ歪み、誘電率を評価した。
[実施例5]
表1の実施例5に示す(a)PPS樹脂、(c)シランカップリング剤を、表1の実施例5に示す割合になる様にドライブレンドした後、真空ベントを具備した日本製鋼所製TEX30α型二軸押出機(スクリュー構成I、L/D=45、L/D中の切り欠きスクリュー割合10%)を用い、スクリュー回転数300rpmにて、ダイス出樹脂温度が330℃以下となるようにシリンダー温度を設定して溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。次いで、得られたペレットと(b)PPE樹脂とを、表1の実施例5に示す割合になる様にドライブレンドした後、真空ベントを具備した日本製鋼所製TEX30α型二軸押出機(スクリュー構成I、L/D=45、L/D中の切り欠きスクリュー割合10%)を用い、スクリュー回転数300rpmにて、ダイス出樹脂温度が330℃以下となるようにシリンダー温度を設定して溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。得られたペレットを130℃で1晩乾燥してから、射出成形に供した。
得られた成形品について、モルフォロジー観察、引張伸び、クリープ歪み、誘電率を評価した。
[実施例6]
スクリュー回転数を150rpmとした以外は、実施例3と同様に溶融混練、射出成形、評価を行った。
[実施例7]
L/D中の切り欠きスクリューの割合を5%とした以外は、実施例3と同様に溶融混練、射出成形、評価を行った。
[実施例8]
表1の実施例8に示す(a)PPS樹脂、(b)PPE樹脂、(c)シランカップリング剤を表1の実施例8に示す割合でドライブレンドした後、真空ベントを具備した日本製鋼所製TEX30α型二軸押出機(スクリュー構成I、L/D=45、L/D中の切り欠きスクリュー割合10%)を用い、スクリュー回転数500rpmにて、ダイス出樹脂温度が330℃以下となるようにシリンダー温度を設定して溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。
次いで、得られたペレットを同様の条件でさらにもう一度溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。ペレットを130℃で1晩乾燥してから、射出成形に供した。
得られた成形品について、モルフォロジー観察、引張伸び、クリープ歪み、誘電率を評価した。
[比較例1]
表2に示す(a)PPS樹脂、(b)PPE樹脂、(c)シランカップリング剤を表1に示す割合でドライブレンドした後、真空ベントを具備した日本製鋼所製TEX30α型二軸押出機(スクリュー構成II、L/D=45、L/D中の切り欠きスクリュー割合0%)を用い、スクリュー回転数100rpmにて、ダイス出樹脂温度が330℃以下となるようにシリンダー温度を設定して溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。得られたペレットを130℃で1晩乾燥してから、射出成形に供した。
得られた成形品について、モルフォロジー観察、引張伸び、クリープ歪み、誘電率を評価した。
[比較例2〜3]
表2に示す(a)PPS樹脂、(b)PPE樹脂、(c)シランカップリング剤、(d)オレフィン系樹脂を表1に示す割合でドライブレンドした後、真空ベントを具備した日本製鋼所製TEX30α型二軸押出機(スクリュー構成II、L/D=45、L/D中の切り欠きスクリュー割合0%)を用い、スクリュー回転数300rpmにて、ダイス出樹脂温度が330℃以下となるようにシリンダー温度を設定して溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。得られたペレットを130℃で1晩乾燥してから、射出成形に供した。
得られた成形品について、モルフォロジー観察、引張伸び、クリープ歪み、誘電率を評価した。
上記実施例と比較例の結果を比較して説明する。
実施例3では、(b)PPE分散相中に(a)PPSからなる分散粒子が存在することにより、比誘電率が2.85まで低下した。
一方、(b)PPE分散相中に(a)PPSからなる分散粒子を含まない比較例1、2では比較的誘電率が高くなった。
実施例4では、無水マレイン酸と混練したPPEを用いたことにより、低い誘電率と共に高い引張伸度が得られた。
実施例5では、実施例4の組成をベースに混練方法変更した結果、n/nの値が小さくなり、比誘電率が更に低下すると共にクリープ歪みも小さくなった。
実施例3の組成をベースに(d)オレフィンを配合した実施例9では、高い引張伸度が発現すると共に、比誘電率が2.66まで低下した。
一方、同様の組成で有りながら、(b)PPE樹脂中に(a)PPS樹脂からなる分散粒子を含まない比較例3では、誘電率が高くなるばかりか、クリープ歪みが著しく大きくなった。
1:PPS樹脂連続相
2:PPE分散相
3:PPEからなる分散相中に存在するPPS成分からなる分散粒子

Claims (8)

  1. (a)成分と(b)成分の合計を100重量%として、(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂85〜51重量%、(b)ポリフェニレンエーテル樹脂15〜49重量%からなる樹脂組成物であって、前記樹脂組成物からなる成形品の電子顕微鏡で観察されるモルフォロジーにおいて、(a)成分が連続相(海相)を、(b)成分が分散相(島相)を形成すると共に、(b)成分からなる分散相中に、(a)成分からなる分散粒子が存在することを特徴とするポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  2. 前記(b)ポリフェニレンエーテル樹脂からなる分散相中に、前記(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂からなる分散粒子が、1〜200nmの数平均粒子径で存在することを特徴とする請求項1に記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  3. 前記(b)ポリフェニレンエーテル樹脂からなる分散相中に、前記(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂からなる分散粒子が、分散相の面積を基準として2〜50%の面積割合で存在することを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  4. 前記(b)ポリフェニレンエーテル樹脂からなる分散相が、300nmを超える粒子径からなる分散相(A)と、300nm以下の粒子径からなる分散相(B)との2群からなると共に、分散相(A)についてのみ、前記(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂からなる分散粒子を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  5. 前記(b)ポリフェニレンエーテル樹脂からなる分散相(A)の分散粒子数nと分散相(B)の分散粒子数nの比(n/n)が0.05〜1.00であることを特徴とする請求項4に記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  6. 前記(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂と前記(b)ポリフェニレンエーテル樹脂の合計を100重量部として、さらに(c)エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基から選択される少なくとも1種の官能基を含有するシランカップリング化合物0.1〜5重量部を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  7. 前記(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂と前記(b)ポリフェニレンエーテル樹脂の合計を100重量部として、さらに(d)オレフィン系樹脂1〜45重量部を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  8. スクリュー長さLとスクリュー直径Dの比(L/D)が10以上であり、かつ前記L/Dのうちの3〜20%が、スクリューフライトに切り欠き部を有する撹拌スクリューエレメントで構成される二軸押出機を用いて溶融混練することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
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