JP2014162811A - 環状オレフィン開環重合体水素添加物の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 開環重合体と触媒とを効率よく分離し、光学材料に好適な環状オレフィン開環重合体水素添加物を製造する方法を提供する。
【解決手段】 多環式ノルボルネン系単量体を炭化水素溶媒中で開環重合し、得られた反応液に、多価アルコールを接触させ、次いで層状無機化合物と接触させた後、濾過し、その後、均一系触媒で得られた開環重合体を水素添加することを特徴とする環状オレフィン開環重合体水素添加物の製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、光学材料に好適な環状オレフィン開環重合体水素添加物の製造方法に関する。
従来から、環状オレフィン開環重合体水素添加物から触媒残渣を除去する方法は検討されている。例えば特許文献1では、極性基を有する環状オレフィン開環重合体の製造方法において、開環重合反応液に水及び/又はアルコール存在下に、活性白土、活性炭、珪藻土、活性アルミナ、ゼオライトから選ばれる吸着剤で処理することにより重合触媒を除去する方法が提案されている。また、特許文献2では、極性基を有し、橋頭にヘテロ原子を有する環状オレフィン開環重合体が、触媒金属との配位結合を容易に形成しやすいことにより金属残渣の除去を困難にさせる問題を解決する目的で、開環重合触媒と水素添加触媒とが残る環状オレフィン開環重合体水素添加物溶液に、塩基性官能基と酸性官能基とを有する有機化合物を接触させた後、塩基性吸着剤に接触させる方法が実施例に記載されている。ここでは、開環重合反応後の反応液に水素添加触媒を添加して、引き続き水素添加反応を進めている。
極性基を有しない環状オレフィン開環重合体水素添加物であっても、特許文献3の実施例でも同様に、水素添加触媒が開環重合反応に用いた触媒を吸着する能力を利用し、トルエン中でノルボルネン系単量体を開環重合させた後、濾過すること無くニッケル系水素添加触媒で水素添加し、環状オレフィン開環重合体水素添加物を得ている。
また、特許文献4では、多環式ノルボルネン系単量体を、炭化水素溶媒中で開環重合することで、析出する開環重合体を分取し、これを改めて炭化水素溶媒中で、ルテニウム触媒を用いて水素添加し、環状オレフィン開環重合体水素添加物を得ている。
特開平3−066725号公報 国際公開WO2011/048784号 特開平9−241484号公報 特開2002−020464号公報
本発明は、光学特性に優れた環状オレフィン開環重合体水素添加物の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、多環式ノルボルネン系単量体を用いて得られる環状オレフィン開環重合体水素添加物を工業生産するに当たり、特許文献4の記載に従って、炭化水素系溶媒中で多環式ノルボルネン系単量体を開環重合し、イソプロパノールで開環重合触媒を失活させた後、濾別した開環重合体中に触媒残渣が多く残ってしまい、水素添加触媒の活性が下がるため、高い水素転化率を得るためには多量の水素添加触媒を用いて長時間反応させなければならないことを確認した。実際、特許文献4の実施例2において、開環重合体100重量部に対して水素添加触媒を0.62部も用い、10時間もの長い時間水素添加反応を行っている。用いる水素添加触媒量の多さは最終的に得られる水素添加物への触媒残渣の増加をもたらし、反応時間の長さは生産性の低下をもたらすため、工業生産には適さない。そこで特許文献1の記載を参考に、開環重合触媒の失活をイソプロパノールではなく水を用いて行うことを検討した。しかしながら、この方法では、析出した触媒を濾別する際に濾過剤に目詰まりが発生し、工業生産に適さないことが判明した。
かかる知見のもと、本発明者らは開環重合体と触媒とを効率よく分離するべく鋭意検討した結果、開環重合反応液にある種のアルコール系化合物を接触させ、かつ特定形状の吸着剤を用いることで、開環重合体に混合する触媒残渣量を高度に抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
かくして、本発明によれば多環式ノルボルネン系単量体を炭化水素溶媒中で開環重合し、得られた反応液に、多価アルコールを接触させ、次いで層状無機化合物と接触させた後、濾過し、その後、均一系触媒で前記反応液中の開環重合体を水素添加することを特徴とする環状オレフィン開環重合体水素添加物の製造方法が提供される。
この製法は、結晶性の環状オレフィン開環重合体水素添加物の製造に好適である。前記多環式ノルボルネン系単量体がヘテロ原子を含まないものである時に、本発明の著効が得られる。前記多価アルコールが、炭素数2又は3の多価アルコールである時に、本発明の著効が得られる。前記炭化水素溶媒が環状炭化水素である時に、本発明の著効が得られる。前記開環重合が、タングステン又はモリブデンを含有する触媒存在下で行われる時に、本発明の著効が得られる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の製造方法は、触媒由来の金属を含む環状オレフィン開環重合体溶液に、多価アルコールを接触させることを特徴とし、その後、吸着剤である層状無機化合物を接触させて、触媒由来の金属を開環重合体溶液から除去し、均一系ルテニウム触媒を用いた水素添加反応に供するものである。
<環状オレフィン開環重合体の製造>
環状オレフィン開環重合体は、多環式ノルボルネン系単量体を少なくとも含有する単量体を、炭化水素溶媒中で開環重合することにより得られるものである。
炭化水素溶媒の具体例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ビシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデン、シクロオクタン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;又はこれらの混合溶媒;が挙げられる。これらの溶媒の中でも、芳香族炭化水素や脂環族炭化水素のような環状炭化水素が好ましく用いられる。
多環式ノルボルネン系単量体は、分子内に、ノルボルネン骨格と、そのノルボルネン骨格に縮合した1つ以上の環構造を有するノルボルネン系化合物であればよい。多環式ノルボルネン系単量体の少なくとも一部は、3環以上の環を有する多環式ノルボルネン系単量体であるのが好ましい。樹脂組成物からなる成形体の耐熱性を特に良好なものとする観点からは、多環式ノルボルネン系単量体として、下記式(1)又は(2)で表される化合物が特に好ましい。
Figure 2014162811
Figure 2014162811
式(1)、(2)中、R、R、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子;ハロゲン原子;置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基;又はケイ素原子、酸素原子もしくは窒素原子を含む置換基;を表す。また、RとR、RとRはそれぞれ結合して環を形成していてもよい。Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜20の二価の炭化水素基である。mは1又は2である。
、R、R〜Rのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基;ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等のアルケニル基;エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル(プロパルギル)基、3−ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基等のアルキニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ビフェニリル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;等が挙げられる。
これらの置換基としては、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;等が挙げられる。
の置換基を有していてもよい炭素数1〜20の二価の炭化水素基の、二価の炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基等のアルキレン基;ビニレン基等のアルケニレン基;エチニレン基等のアルキニレン基;フェニレン基等のアリーレン基;これらの組み合わせ;等が挙げられる。その置換基としては、R、R、R〜Rの炭化水素基の置換基として例示したのと同様のものが挙げられる。
式(1)で表される多環式ノルボルネン系単量体の具体例としては、ジシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−エン、テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロ−9H−フルオレンともいう)、テトラシクロ[10.2.1.02,11.04,9]ペンタデカ−4,6,8,13−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9,9a,10−ヘキサヒドロアントラセンともいう)が挙げられる。
また、式(2)で表される多環式ノルボルネン系単量体としては、式(2)のmが1である場合のテトラシクロドデセン類と、式(2)のmが2である場合のヘキサシクロヘプタデセン類が挙げられる。
テトラシクロドデセン類の具体例としては、テトラシクロドデセン、8−メチルテトラシクロドデセン、8−エチルテトラシクロドデセン、8−シクロヘキシルテトラシクロドデセン、8−シクロペンチルテトラシクロドデセン等の無置換又はアルキル基を有するテトラシクロドデセン類;8−メチリデンテトラシクロドデセン、8−エチリデンテトラシクロドデセン、8−ビニルテトラシクロドデセン、8−プロペニルテトラシクロドデセン、8−シクロヘキセニルテトラシクロドデセン、8−シクロペンテニルテトラシクロドデセン等の環外に二重結合を有するテトラシクロドデセン類;8−フェニルテトラシクロドデセン等の芳香環を有するテトラシクロドデセン類;8−メトキシカルボニルテトラシクロドデセン、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロドデセン、8−ヒドロキシメチルテトラシクロドデセン、8−カルボキシテトラシクロドデセン、テトラシクロドデセン−8,9−ジカルボン酸、テトラシクロドデセン−8,9−ジカルボン酸無水物等の酸素原子を含む置換基を有するテトラシクロドデセン類;8−シアノテトラシクロドデセン、テトラシクロドデセン−8,9−ジカルボン酸イミド等の窒素原子を含む置換基を有するテトラシクロドデセン類;8−クロロテトラシクロドデセン等のハロゲン原子を含む置換基を有するテトラシクロドデセン類;8−トリメトキシシリルテトラシクロドデセン等のケイ素原子を含む置換基を有するテトラシクロドデセン類;が挙げられる。
ヘキサシクロヘプタデセン類の具体例としては、ヘキサシクロヘプタデセン、12−メチルヘキサシクロヘプタデセン、12−エチルヘキサシクロヘプタデセン、12−シクロヘキシルヘキサシクロヘプタデセン、12−シクロペンチルヘキサシクロヘプタデセン等の無置換又はアルキル基を有するヘキサシクロヘプタデセン類;12−メチリデンヘキサシクロヘプタデセン、12−エチリデンヘキサシクロヘプタデセン、12−ビニルヘキサシクロヘプタデセン、12−プロペニルヘキサシクロヘプタデセン、12−シクロヘキセニルヘキサシクロヘプタデセン、12−シクロペンテニルヘキサシクロヘプタデセン等の環外に二重結合を有するヘキサシクロヘプタデセン類;12−フェニルヘキサシクロヘプタデセン等の芳香環を有するヘキサシクロヘプタデセン類;12−メトキシカルボニルヘキサシクロヘプタデセン、12−メチル−12−メトキシカルボニルヘキサシクロヘプタデセン、12−ヒドロキシメチルヘキサシクロヘプタデセン、12−カルボキシヘキサシクロヘプタデセン、ヘキサシクロヘプタデセン12,13−ジカルボン酸、ヘキサシクロヘプタデセン12,13−ジカルボン酸無水物等の酸素原子を含む置換基を有するヘキサシクロヘプタデセン類;12−シアノヘキサシクロヘプタデセン、ヘキサシクロヘプタデセン12,13−ジカルボン酸イミド等の窒素原子を含む置換基を有するヘキサシクロヘプタデセン類;12−クロロヘキサシクロヘプタデセン等のハロゲン原子を含む置換基を有するヘキサシクロヘプタデセン類;12−トリメトキシシリルヘキサシクロヘプタデセン等のケイ素原子を含む置換基を有するヘキサシクロヘプタデセン類;が挙げられる。
これらの多環式ノルボルネン系単量体は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
なかでも、環状オレフィン開環重合体水素添加物として結晶性のものを得たい場合、結晶性を高め、得られる成形体の耐熱性を特に良好なものとする観点から、多環式ノルボルネン系単量体全体に対して50重量%以上のジシクロペンタジエンを含むものを用いることが好ましく、ジシクロペンタジエンを単独で用いることが特に好ましい。
また、多環式ノルボルネン系単量体には、エンド体及びエキソ体の立体異性体が存在するが、そのどちらも単量体として用いることが可能であり、一方の異性体を単独で用いてもよいし、エンド体及びエキソ体が任意の割合で存在する異性体混合物を用いることもできる。但し、環状オレフィン開環重合体水素添加物として結晶性のものを得るためには、結晶性を高め、得られる樹脂組成物の耐熱性を特に良好なものとする観点から、一方の立体異性体の割合を高くすることが好ましく、例えば、エンド体又はエキソ体の割合が、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることが特に好ましい。なお、割合を高くする立体異性体は、合成容易性の観点から、エンド体であることが好ましい。
環状オレフィン開環重合体を得るにあたっては、多環式ノルボルネン系単量体に、多環式ノルボルネン系単量体以外の単量体を共重合させてもよい。多環式ノルボルネン系単量体と共重合できる単量体としては、ノルボルネン骨格に縮合した環構造を有しない2環のノルボルネン系化合物、モノ環状オレフィン、及び環状ジエン、並びにこれらの誘導体が挙げられる。
ノルボルネン骨格に縮合した環構造を有しない2環のノルボルネン系化合物の具体例としては、ノルボルネン、5−メチルノルボルネン、5−エチルノルボルネン、5−ブチルノルボルネン、5−ヘキシルノルボルネン、5−デシルノルボルネン、5−シクロヘキシルノルボルネン、5−シクロペンチルノルボルネン等の無置換又はアルキル基を有するノルボルネン類;5−エチリデンノルボルネン、5−ビニルノルボルネン、5−プロペニルノルボルネン、5−シクロヘキセニルノルボルネン、5−シクロペンテニルノルボルネン等のアルケニル基を有するノルボルネン類;5−フェニルノルボルネン等の芳香環を有するノルボルネン類;5−メトキシカルボニルノルボルネン、5−エトキシカルボニルノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニルノルボルネン、5−メチル−5−エトキシカルボニルノルボルネン、ノルボルネニル−2−メチルプロピオネイト、ノルボルネニル−2−メチルオクタネイト、5−ヒドロキシメチルノルボルネン、5,6−ジ(ヒドロキシメチル)ノルボルネン、5,5−ジ(ヒドロキシメチル)ノルボルネン、5−ヒドロキシ−i−プロピルノルボルネン、5,6−ジカルボキシノルボルネン、5−メトキシカルボニル−6−カルボキシノルボルネン、等の酸素原子を含む極性基を有するノルボルネン類;5−シアノノルボルネン等の窒素原子を含む極性基を有するノルボルネン類;が挙げられる。
モノ環状オレフィンの具体例としては、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンが挙げられる。
また、環状ジエンの具体例としては、シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエンが挙げられる。
環状オレフィン開環重合体水素添加物として、結晶性のものを得るためには、結晶性を高め、得られる成形体の耐熱性を特に良好なものとする観点から、水素添加反応に供する環状オレフィン開環重合体を得るための単量体として、用いる単量体全体に対して80重量%以上の多環式ノルボルネン系単量体を含むことが好ましく、用いる単量体が実質的に多環式ノルボルネン系単量体のみで構成されることが特に好ましい。
これらのノルボルネン系単量体は、例えばメタセシス重合触媒が用いて、公知の方法に従って行うことができるが、反応は炭化水素溶媒中で行うことが必要である。
メタセシス重合触媒としては、特に限定はなく公知のものが用いられる。具体的には、例えば、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウムおよび白金などから選ばれる金属のハロゲン化物、硝酸塩またはアセチルアセトン化合物と、還元剤とからなる触媒系;チタン、バナジウム、ジルコニウム、タングステンおよびモリブデンから選ばれる金属のハロゲン化物またはアセチルアセトン化合物と、助触媒の有機アルミニウム化合物とからなる触媒系;あるいは、特開平7−179575号、J.Am.Chem.Soc.,1986年,108,p.733、J.Am.Chem.Soc.,1993年,115,p.9858、およびJ.Am.Chem.Soc.,1996年,118,p.100などに開示されている公知のシュロック型やグラッブス型のリビング開環メタセシス触媒などを用いることができる。
これらの触媒は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。触媒
の使用量は、重合条件等により適宜選択されればよいが、全単量体量に対するモル比で、
通常1/1,000,000〜1/10、好ましくは、1/100,000〜1/100
である。
結晶性の環状オレフィン開環重合体水素添加物を得るためには、多環式ノルボルネン系単量体を、炭化水素溶媒中で、例えば特開2006−52333号公報に記載される方法に従って開環重合し、得られた開環重合体を水素添加すればよい。この方法によれば、特に好ましい結晶性の環状オレフィン開環重合体水素添加物を与えることのできる、シンジオタクチック立体規則性を有する環状オレフィン開環重合体を得ることができる。シンジオタクチック立体規則性を有する環状オレフィン開環重合体を得るためには、環状オレフィン開環重合体にシンジオタクチック立体規則性を与えることができる開環重合触媒を用いる必要がある。このような開環重合触媒としては、下記式(3)で表される金属化合物(以下、「金属化合物(3)」ということがある。)を含んでなる開環重合触媒が好適である。
Figure 2014162811
式中、Mは周期律表第6族の遷移金属原子から選択される金属原子であり、Rは3,4,5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニル基、又はCH10で表される基であり、Rは置換基を有していてもよいアルキル基及び置換基を有していてもよいアリール基から選択される基であり、Xはハロゲン原子、アルキル基、アリール基及びアルキルシリル基から選択される基であり、Lは電子供与性の中性配位子であり、aは0又は1であり、bは0〜2の整数である。R10は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基及び置換基を有していてもよいアリール基から選択される基である。
金属化合物(3)を構成する金属原子(M)は、周期律表第6族の遷移金属原子(クロム、モリブデン、タングステン)から選択される。なかでも、モリブデン又はタングステンが好適に用いられ、タングステンが特に好適に用いられる。
金属化合物(3)は、金属イミド結合を含んでなるものである。Rは、金属イミド結合を構成する窒素原子上の置換基である。
3,4,5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニル基が有しうる置換基としては、メチル基、エチル基等のアルキル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等のアルコキシ基;等が挙げられ、さらに、3,4,5位の少なくとも2つの位置に存在する置換基が互いに結合したものであってもよい。
3,4,5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニル基の具体例としては、フェニル基;4−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−メトキシフェニル基等の一置換フェニル基;3,5−ジメチルフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメトキシフェニル基等の二置換フェニル基;3,4,5−トリメチルフェニル基、3,4,5−トリクロロフェニル基等の三置換フェニル基;2−ナフチル基、3−メチル−2−ナフチル基、4−メチル−2−ナフチル基等の置換基を有していてもよい2−ナフチル基;が挙げられる。
金属化合物(3)において、窒素原子上の置換基(式(3)中のR)として用いられ得る、−CH10で表される基におけるR10の、置換基を有していてもよいアルキル基の炭素数は、特に限定されないが、通常1〜20、好ましくは1〜10である。また、このアルキル基は直鎖状であっても分岐状であってもよい。このアルキル基が有し得る置換基は、特に限定されないが、例えば、フェニル基、4−メチルフェニル基等の置換基を有していてもよいフェニル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシル基;が挙げられる。
10の、置換基を有していてもよいアリール基アリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等が挙げられる。このアリール基の置換基としては、特に限定されないが、例えば、フェニル基、4−メチルフェニル基等の置換基を有していてもよいフェニル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシル基;等が挙げられる。
10としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等の炭素数が1〜20のアルキル基が好ましい。
金属化合物(3)は、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基及びアルキルシリル基から選択される基を3個又は4個有してなる。すなわち、式(3)において、Xは、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基及びアルキルシリル基から選択される基を表す。なお、金属化合物(3)においてXで表される基が2以上あるとき、それらの基は互いに結合していてもよい。
Xで表される基となり得るハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ベンジル基、ネオフィル基等が挙げられる。アリール基としては、フェニル基、4−メチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等が挙げられる。アルキルシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基等が挙げられる。
金属化合物(3)は、1個の金属アルコキシド結合又は1個の金属アリールオキシド結合を有するものであってもよい。この金属アルコキシド結合又は金属アリールオキシド結合を構成する酸素原子上の置換基(式(3)中のR)は、置換基を有していてもよいアルキル基及び置換基を有していてもよいアリール基から選択される基である。このRで表される基となり得る、置換基を有していてもよいアルキル基や置換基を有していてもよいアリール基としては、前述のR10で表される基におけるものと同様のものを用いることができる。
金属化合物(3)は、1個又は2個の電子供与性の中性配位子を有するものであってもよい。この電子供与性の中性配位子(式(3)中のL)としては、例えば、周期律表第14族又は第15族の原子を含有する電子供与性化合物が挙げられる。その具体例としては、トリメチルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ルチジン等のアミン類;が挙げられる。これらの中でも、エーテル類が特に好適に用いられる。
シンジオタクチック立体規則性を有する環状オレフィン開環重合体を得るための開環重合触媒として、特に好適に用いられる金属化合物(3)としては、フェニルイミド基を有するタングステン化合物(式(3)中、Mがタングステン原子で、かつ、Rがフェニル基である化合物)を挙げることができ、その中でも、テトラクロロタングステンフェニルイミド(テトラヒドロフラン)が特に好適である。
金属化合物(3)は、第6族遷移金属のオキシハロゲン化物と、3,4,5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニルイソシアナート類、又は一置換メチルイソシアナート類と、電子供与性の中性配位子(L)、及び必要に応じてアルコール類、金属アルコキシド、金属アリールオキシドを混合すること等(例えば、特開平5−345817号公報に記載された方法)により合成することができる。合成された金属化合物(3)は、結晶化等により精製・単離したものを用いてもよいし、精製することなく、触媒合成溶液をそのまま開環重合触媒として使用することもできる。
開環重合触媒として用いる金属化合物(3)の使用量は、(金属化合物(3):用いる単量体全体)のモル比で、通常1:100〜1:2,000,000、好ましくは1:500〜1:1,000,000、より好ましくは1:1,000〜1:500,000となる量である。触媒量が多すぎると触媒除去が困難となるおそれがあり、少なすぎると十分な重合活性が得られない場合がある。
金属化合物(3)を開環重合触媒として用いるにあたっては、金属化合物(3)を単独で使用することもできるが、重合活性を高くする観点から、金属化合物(3)に有機金属還元剤を併用することが好ましい。
用いる有機金属還元剤としては、炭素数1〜20の炭化水素基を有する周期律表第1、2、12、13、14族が挙げられる。なかでも、有機リチウム、有機マグネシウム、有機亜鉛、有機アルミニウム、又は有機スズが好ましく用いられ、有機アルミニウム又は有機スズが特に好ましく用いられる。
有機リチウムとしては、n−ブチルリチウム、メチルリチウム、フェニルリチウム等が挙げられる。有機マグネシウムとしては、ブチルエチルマグネシウム、ブチルオクチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、エチルマグネシウムクロリド、n−ブチルマグネシウムクロリド、アリルマグネシウムブロミド等が挙げられる。有機亜鉛としては、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジフェニル亜鉛等が挙げられる。有機アルミニウムとしては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジイソブチルアルミニウムイソブトキシド、エチルアルミニウムジエトキシド、イソブチルアルミニウムジイソブトキシド等が挙げられる。有機スズとしては、テトラメチルスズ、テトラ(n−ブチル)スズ、テトラフェニルスズ等が挙げられる。
有機金属還元剤の使用量は、金属化合物(3)に対して、0.1〜100モル倍が好ましく、0.2〜50モル倍がより好ましく、0.5〜20モル倍が特に好ましい。使用量が少なすぎると重合活性が向上しない場合があり、多すぎると副反応が起こりやすくなるおそれがある。
上述したような金属化合物(3)を含む開環重合触媒を用いて、後述する条件で多環式ノルボルネン系単量体を含む単量体の開環重合反応を行うことにより、シンジオタクチック立体規則性を有する結晶性の環状オレフィン開環重合体を得ることができる。
水素添加反応に供する環状オレフィン開環重合体におけるラセモ・ダイアッドの割合は、特に限定されないが、通常60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70〜99%である。環状オレフィン開環重合体のラセモ・ダイアッドの割合(シンジオタクチック立体規則性の度合い)は、開環重合触媒の種類を選択すること等により、調節することが可能である。ここで、ラセモ・ダイアッドの割合は、実施例記載の方法で求められたものである。
開環重合反応は、単量体と、開環重合触媒と、必要に応じて用いられるその他添加剤とを混合することにより開始させることができる。これらの成分を添加する順序は、特に限定されない。各成分を混合するにあたっては、それぞれの成分の全量を一度に添加してもよいし、複数回に分けて添加してもよく、比較的に長い時間(例えば1分間以上)にわたって連続的に添加することもできる。なかでも、重合温度や得られる開環重合体の分子量を制御して、特に成形性に優れた樹脂組成物を得る観点からは、単量体及び/又は開環重合触媒を、複数回に分けて、又は連続的に、添加することが好ましく、単量体を、複数回に分けて、又は連続的に、添加することが特に好ましい。
有機溶媒中の重合反応時における単量体の濃度は、特に限定されないが、1〜50重量%であることが好ましく、2〜45重量%であることがより好ましく、3〜40重量%が特に好ましい。単量体の濃度が低すぎると重合体の生産性が悪くなるおそれがあり、高すぎる場合は重合後の溶液粘度が高すぎて、その後の水素添加反応が困難となる場合がある。
重合反応系には、活性調整剤を添加してもよい。活性調整剤は、開環重合触媒の安定化、重合反応の速度及び重合体の分子量分布を調整する目的で使用することができる。活性調整剤は、官能基を有する有機化合物であれば特に制限されないが、含酸素、含窒素、含りん有機化合物が好ましい。具体的には、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、フラン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、ベンゾフェノン、シクロヘキサノン等のケトン類;エチルアセテート等のエステル類;アセトニトリルベンゾニトリル等のニトリル類;トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、キヌクリジン、N,N−ジエチルアニリン等のアミン類;ピリジン、2,4−ルチジン、2,6−ルチジン、2−t−ブチルピリジン等のピリジン類;トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等のホスフィン類;トリメチルホスフェ−ト、トリフェニルホスフェ−ト等のホスフェート類;トリフェニルホスフィンオキシド等のホスフィンオキシド類;等が挙げられる。これらの活性調整剤は、1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。添加する活性調整剤の量は、特に限定されないが、通常、開環重合触媒として用いる金属化合物に対して0.01〜100モル%の間で選択すればよい。
また、重合反応系には、開環重合体の分子量を調整するために分子量調整剤を添加してもよい。分子量調整剤としては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィン類;スチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテル、酢酸アリル、アリルアルコール、グリシジルメタクリレート等の酸素含有ビニル化合物;アリルクロライド等のハロゲン含有ビニル化合物;アクリルアミド等の窒素含有ビニル化合物;1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、2−メチル−1,4−ペンタジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエン等の非共役ジエン;1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等の共役ジエン;が挙げられる。
添加する分子量調整剤の量は目的とする分子量に応じて決定すればよいが、通常、用いる単量体に対して、0.1〜50モル%の範囲で選択すればよい。
重合温度は特に制限はないが、通常−78℃〜+200℃の範囲であり、好ましくは−30℃〜+180℃の範囲である。重合時間は、特に制限はなく、反応規模にも依存するが、通常1分間から1000時間の範囲である。
多環式ノルボルネン系単量体の開環重合を進行させた後、多価アルコールを添加する。開環重合反応液と多価アルコールとが接触することで、通常、開環重合反応は停止する。即ち、本発明において多価アルコールは、開環重合反応の停止剤として機能する。そして、多価アルコールと接触した開環重合反応液に、吸着剤として機能する層状無機化合物と接触させることで、触媒残渣を吸着剤に吸着させ、その後、開環重合体を単離することになる。
多価アルコールとしては、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,2−ペンタンジオール、2−メチル−2,3−ブタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,3−ジメチル−2,3−ブタンジオール、3,3−ジメチル−1,2−ブタンジオール、3−メチルー2,4−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,2−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,4−ジヒドロキシベンゼン、1,2,3−プロパントリオール、1,2,3−ブタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,3,5−ペンタントリオール、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノール、1,3,5−シクロヘキサントリオール、1,2,3−シクロヘキサントリオール、1,2,3,4−ブタンテトラオール、テトラ(ヒドロキシメチル)メタン、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、1,3,5−ヒドロキシベンゼン
などが挙げられ、融点が低く室温で、液体状態で扱える、1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール及び1,2,3−プロパントリオールなどの炭素数2〜3の多価アルコールが好適に用いられる。
開環重合反応液と接触させる多価アルコールの量に格別な制限はないが、開環重合体100重量部に対し、通常0.01〜5重量部であり、開環重合体の溶液安定性の観点から、0.1〜3重量部であるのが好ましい。
多価アルコールと接触させた後、開環重合反応液に接触させる層状無機化合物は、吸着剤として機能するものであれば特に制限されず、例えば、ハイドロタルサイト、アルナイト、カルサイト、マグネサイト等のハイドロタルサイト様化合物、ディッカイト、ナクライト、カオリナイト、アノーキサイト、メタハロイサイト、ハロイサイト等のカオリン族、クイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト等のスメクタイト族、バーミキュライト等のバーミキュライト族、雲母、イライト、セリサイト、海緑石等の雲母族、アタパルジャイト、セピオライト、パリゴルスカイト、ベントナイト、パイロフィライト、タルク、緑泥石群などが挙げられる。また、これらは混合層を形成していてもよい。
開環重合反応液に接触させる吸着剤の量に格別な制限はないが、開環重合体100重量部に対し、通常0.05〜10重量部であり、開環重合反応液と吸着剤を分離する濾過工程での濾過速度の低下抑制の観点から、0.5〜5重量部であるのが好ましい。
こうして得られた開環重合体を、常法に従って、水素添加触媒の存在下にノルボルネン系開環共重合体を水素と接触させることで水素添加することができる。本発明において水素添加触媒は、水素添加反応液中で分散しやすいので添加量が少なくてよく、また、高温高圧にしなくとも活性を有するので重合体の分解やゲル化が起こらず、低コスト性および品質安定性などに優る均一系触媒を採用する。特に環状オレフィン開環重合体水素添加物が結晶性のものである場合、不均一系触媒に比べて、触媒除去効率が高いので好ましい。
均一系触媒としては、例えば、ウィルキンソン錯体、すなわち、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I);遷移金属化合物とアルキル金属化合物の組み合わせからなる触媒、具体的には、酢酸コバルト/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリド/n−ブチルリチウム、ジルコノセンジクロリド/sec−ブチルリチウム、テトラブトキシチタネート/ジメチルマグネシウム等の組み合わせが挙げられる。
特に、環状オレフィン開環重合体水素添加物として、結晶性のものを得るためには、環状オレフィン開環重合体の水素添加反応(主鎖二重結合の水素添加)は、均一系ルテニウム触媒を水素添加触媒として存在する状況下で、反応系内に水素を供給することにより行う。
均一系ルテニウム触媒としては、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリジンルテニウム(IV)ジクロリド、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム、RuH(OCOPh)(CO)(PPh、RuH(OCOPh−CH)(CO)(PPh、RuH(OCOPh−C)(CO)(PPh、RuH(OCOPh−C11)(CO)(PPh、RuH(OCOPh−C17)(CO)(PPh、RuH(OCOPh−OCH)(CO)(PPh、RuH(OCOPh−OC)(CO)(PPh、RuH(OCOPh)(CO)(P(c−C11、RuH(OCOPh−NH)(CO)(PPh等が挙げられる。
均一系触媒の添加量は、環状オレフィン開環重合体100重量部に対して、通常0.001〜0.5重量部であり、開環重合体水素化物から得られる成形品の光学特性の観点から、0.005〜0.1重量部であるのが好ましい。
開環重合反応液に接触させる吸着剤の量に格別な制限はないが、開環重合体100重量部に対して、通常0.001〜0.5重量部であり、開環重合体水素化物から得られる成形品の光学特性の観点から、0.005〜0.1重量部であるのが好ましい。
水素添加反応は、通常、不活性有機溶媒中で行う。このような不活性有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、デカヒドロナフタレン等の脂環族炭化水素;テトラヒドロフラン、1,2−エタンジオールジメチルエーテル等のエーテル類;等が挙げられる。
水素添加反応は、使用する水素添加触媒系によっても適する条件範囲が異なるが、反応温度は通常−20℃〜+250℃、好ましくは−10℃〜+220℃、より好ましくは0℃〜200℃である。水素添加温度が低すぎると反応速度が遅くなりすぎる場合があり、高すぎると副反応が起こる場合がある。水素圧力は、通常0.01〜20MPa、好ましくは0.05〜15MPa、より好ましくは0.1〜10MPaである。水素圧力が低すぎると水素添加速度が遅くなりすぎる場合があり、高すぎると高耐圧反応装置が必要となる点において装置上の制約が生じる。反応時間は所望の水素添加率とできれば特に限定されないが、通常0.1〜8時間であるが、生産性の観点と水素添加率の観点から、1〜5時間が好ましい。
環状オレフィン開環重合体の水素添加反応における水素添加率(水素添加された主鎖二重結合の割合)は、特に限定されないが、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上、最も好ましくは99%以上である。水素添加率が高くなるほど、環状オレフィン開環重合体水素添加物の耐熱性が良好なものとなる。
以上のようにして得られる、環状オレフィン開環重合体水素添加物は、下記の式(4)又は式(5)で表されるような多環式ノルボルネン系単量体由来の繰返し単位を有するものである。
Figure 2014162811
(式中、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子;ハロゲン原子;置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基;又はケイ素原子、酸素原子もしくは窒素原子を含む置換基;を表す。R、Rは結合して環を形成していてもよい。Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜20の二価の炭化水素基である。)
Figure 2014162811
(式(4)、(5)中、R〜R及びmは、前記と同じ意味を表す。)
本発明において、均一系触媒を用いて得られる環状オレフィン開環重合体水素添加物が融点を有しないものである場合、そのガラス転移点は好ましくは50℃以上、より好ましくは70〜250℃であり、融点を有するものである場合、その融点は、好ましくは200℃以上、より好ましくは230〜350℃である。
特に均一系ルテニウム触媒を用いた場合に得られる結晶性環状オレフィン開環重合体水素添加物は、結晶性を有するものである限りにおいて、その融点は特に限定されないが、200℃以上の融点を有することが好ましく、230〜290℃の融点を有することがより好ましい。このような融点を有する結晶性環状オレフィン開環重合体水素添加物を用いることによって、特に成形性と耐熱性とのバランスに優れた成形材料となる。
本発明の環状オレフィン開環重合体水素添加物には、その用途に応じて添加剤を配合することができる。添加剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などの酸化防止剤;ヒンダードアミン系光安定剤などの光安定剤;石油系ワックスやフィッシャートロプシュワックスやポリアルキレンワックスなどのワックス;ソルビトール系化合物、有機リン酸の金属塩、有機カルボン酸の金属塩、カオリン及びタルクなどの核剤;ジアミノスチルベン誘導体、クマリン誘導体、アゾール系誘導体(例えば、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、及びベンゾチアソール誘導体)、カルバゾール誘導体、ピリジン誘導体、ナフタル酸誘導体、及びイミダゾロン誘導体などの蛍光増白剤;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤などの紫外線吸収剤;ガラス繊維;着色剤;難燃剤;難燃助剤;帯電防止剤;可塑剤;近赤外線吸収剤;滑剤、及び、軟質重合体などの環状オレフィン開環重合体水素添加物以外の高分子材料;等を例示することができる。
本発明の方法により得られる、必要に応じて添加剤が配合された環状オレフィン開環重合体水素添加物は、溶融成形などの方法により成形される。成形体の形状は特に制約されない。
本発明の方法により得られる環状オレフィン開環重合体水素添加物は、残留金属量がきわめて低く、熱特性や光学物性に優れるため、光学材料に好適に用いることができる。光学フィルムなどの光学材料を得る方法としては、射出成形、押出成形、プレス成形、ブロー成形、カレンダー成形等の方法が挙げられる。
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより詳細に説明する。なお、各例中の部及び%は、特に断りのない限り、重量基準である。
また、各例における測定や評価は、以下の方法により行った。
(1)環状オレフィン開環重合体の分子量(重量平均分子量及び数平均分子量)
ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)システム HLC−8320(東ソー社製)で、Hタイプカラム(東ソー社製)を用い、テトラヒドロフランを溶媒として40℃で測定し、ポリスチレン換算値として求めた。
(2)環状オレフィン開環重合体溶液の濾過量
濾過面積1.96×10−2、孔径0.45μmのWhatman社製のシリンジフィルターをディスペンサーに取り付け、試料を入れ、0.10MPaの窒素を用いて定圧濾過を行ない、3分間の濾過量を測定した。
(3)環状オレフィン開環重合体水素添加物における水素添加率
オルトジクロロベンゼン−d溶媒として、145℃でH−NMR測定により求めた。
(4)ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物のガラス転移温度および融点
窒素雰囲気下で300℃に加熱した試料を液体窒素で急冷し、示差操作熱量計(DSC)を用いて、10℃/分で昇温し、ガラス転移温度および融点をそれぞれ求めた。
(5)ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物のラセモ・ダイアッドの割合
オルトジクロロベンゼン−d4を溶媒として、150℃でinverse−gated decoupling法を適用して13C−NMR測定を行い、オルトジクロロベンゼン−d4の127.5ppmのピークを基準シフトとして、メソ・ダイアッド由来の43.35ppmのシグナルと、ラセモ・ダイアッド由来の43.43ppmのシグナルの強度比に基づいて、ラセモ・ダイアッドの割合を求めた。
(6)フィルムの全光線透過率
光線透過率測定は、熱溶融押出し成形により得られたフィルムを選択した任意の部位で、120mm×120mmの正方形薄膜サンプルに切り出した後、可視分光光度計(日本分光社製、V−570)にて、フィルムの厚み方向の波長450nm光線透過率を測定した。
(7)フィルムのHAZE測定
HAZE測定は、熱溶融押出し成型により得られたフィルムを選択した任意の部位で120mm×120mmの正方形薄膜サンプルに切り出した後、HAZEメーター(製品名「NDH5000」、日本電色工業社製)を使用して、測定した。
〔合成例1〕ジシクロペンタジエン開環重合体溶液の合成
充分に乾燥した後、窒素置換した金属製耐圧反応容器に、シクロヘキサン154.5部、ジシクロペンタジエン(エンド体含有率99%以上)の70%シクロヘキサン溶液42.8部(ジシクロペンタジエンの量として30部)、1−ヘキセン1.9部を加え、53℃に加温した。一方、テトラクロロタングステンフェニルイミド(テトラヒドロフラン)錯体0.014部を0.70部のトルエンに溶解した溶液に、19%のジエチルアルミニウムエトキシド/n‐ヘキサン溶液0.061部を加えて10分間攪拌し、触媒溶液を調製した。この触媒溶液を反応器に加えて開環重合反応を開始した。その後、53℃を保ちながら、4時間反応させ、ジシクロペンタジエン開環重合体溶液を得た。得られたジシクロペンタジエン開環重合体の数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)は、それぞれ、8,750および28,100であり、これらから求められる分子量分布(Mw/Mn)は3.21であった。
〔実施例1〕
合成例1で得られたジシクロペンタジエン開環重合体溶液200部に、停止剤として1,2−エタンジオール0.037部を加えて、60℃に加温し、1時間攪拌し重合反応を停止させた。その後、ハイドロタルサイト様化合物(製品名「キョーワード(登録商標)2000」、協和化学工業社製)を1部加えて、60℃に加温し、1時間攪拌した。得られたジシクロペンタジエン開環重合体溶液の一部を採取し濾過量を測定したところ、26.5g/3分であった。残りのジシクロペンタジエン開環重合体溶液に濾過助剤としてラヂオライト(登録商標)#1500(昭和化学工業社製)を0.4部加え、PPプリーツカートリッジフィルター(製品名「TCP−HX」、ADVANTEC東洋社製)を用いて、吸着剤と溶液を濾別した。濾過後のジシクロペンタジエン開環重合体溶液200部(重合体量30部)に、シクロヘキサン100部を加えて、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム0.0043部を添加し、水素圧6MPa、180℃で4時間水素添加反応を行なった。得られた水素添加反応液は、重合体が析出してスラリー溶液となっており、遠心分離器を用いて重合体水素添加物と溶液を分離し、60℃で24時間減圧乾燥して、結晶性を有するジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物28.5部を得た。ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物の水素添加率は99%以上、融点は262℃、ラセモ・ダイアッドの割合は89%であった。得られたジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物100部に酸化防止剤(テトラキス〔メチレン−3−(3’、5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、製品名「イルガノックス(登録商標)1010」、BASFジャパン社製)1.1部を混合後、内径3mmΦのダイ穴を4つ備えた二軸押出し機(製品名「TEM−37B」、東芝機械社製)に投入し、熱溶融押出し成形によりストランド状の成形体にした後、ストランドカッターにて細断し、ペレット形状の熱溶融押出し成形体を得た。二軸押出し機の運転条件を、以下に箇条書きで記す。
・バレル設定温度:270〜280℃
・ダイ設定温度:210℃
・スクリュー回転数:145rpm
・フィーダー回転数:50rpm
引き続き、得られたペレットを、Tダイを備える熱溶融押出しフィルム成形機(製品名「Measuring Extruder Type Me−20/2800 V3」、Optical Control Systems社製)にて、厚み100μm、幅120mmのフィルムを2m/分の速度でロールに巻き取る方法にて、フィルム成形体を得た。フィルム成形機の運転条件を、以下に箇条書きで記す。
・バレル温度設定:280℃〜290℃
・ダイ温度:240℃
・スクリュー回転数:30rpm
得られたフィルムの、HAZE、光線透過率を測定したところ、それぞれ、HAZEは0.2、光線透過率は、90.7%であった。
〔実施例2〕
吸着剤をハイドロタルサイト様化合物の代わりに、活性白土(製品名「ガレオンアース(登録商標)」、水澤化学工業社製)1部に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてジシクロペンタジエン開環重合体溶液を得た。得られたジシクロペンタジエン開環重合体溶液の一部を採取し、濾過量を測定したところ、17.3gであった。残りのジシクロペンタジエン開環重合体溶液を用いて、実施例1と同様にして水素添加反応を行い、ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物28.2部を得た。ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物の水素添加率は99%以上、融点は260℃、ラセモ・ダイアッドの割合は89%であった。得られたジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物を用いて実施例1と同様にしてフィルム成形体を得た。得られたフィルムのHAZE、光線透過率を測定したところ、それぞれ、HAZEは0.3、光線透過率は90.3%であった。
〔実施例3〕
停止剤を1,2−エタンジオール0.037部から1,3−プロパンジオール0.045部に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてジシクロペンタジエン開環重合体溶液を得た。得られたジシクロペンタジエン開環重合体溶液の一部を採取し、濾過量を測定したところ、15.8gであった。残りのジシクロペンタジエン開環重合体溶液を用いて、実施例1と同様にして水素添加反応を行い、ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物28.3を得た。ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物の水素添加率は99%以上、融点は262℃、ラセモ・ダイアッドの割合は90%であった。得られたジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物を用いて実施例1と同様にしてフィルム成形体を得た。得られたフィルムのHAZE、光線透過率を測定したところ、それぞれ、HAZEは0.3、光線透過率は90.2%であった。
〔実施例4〕
停止剤を1,2−エタンジオール0.037部からグリセロール0.054部に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてジシクロペンタジエン開環重合体溶液を得た。得られたジシクロペンタジエン開環重合体溶液の一部を採取し、濾過量を測定したところ、24.8gであった。残りのジシクロペンタジエン開環重合体溶液を用いて、実施例1と同様にして水素添加反応を行い、ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物27.8部を得た。ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物の水素添加率は99%以上、融点は261℃、ラセモ・ダイアッドの割合は88%であった。得られたジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物を用いて実施例1と同様にしてフィルム成形体を得た。得られたフィルムのHAZE、光線透過率を測定したところ、それぞれ、HAZEは0.2、光線透過率は90.9%であった。
〔実施例5〕
吸着剤をハイドロタルサイト様化合物の代わりに、スメクタイト(製品名「ルーセンタイト(登録商標)SWN」、コープケミカル社製)を1部加えるに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてジシクロペンタジエン開環重合体溶液を得た。得られたジシクロペンタジエン開環重合体溶液の一部を採取し、濾過量を測定したところ、25.9gであった。残りのジシクロペンタジエン開環重合体溶液を用いて、実施例1と同様にして水素添加反応を行い、ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物28.0部を得た。ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物の水素添加率は99%以上、融点は262℃、ラセモ・ダイアッドの割合は89%であった。得られたジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物を用いて実施例1と同様にしてフィルム成形体を得た。得られたフィルムのHAZE、光線透過率を測定したところ、それぞれ、HAZEは0.3、光線透過率は90.2%であった。
〔実施例6〕
合成例1の重合反応で用いる溶剤のシクロヘキサン100%の溶剤を、シクロヘキサン/トルエン=60/40の混合溶剤に変更したこと以外は、合成例1および実施例1と同様にしてジシクロペンタジエン開環重合体溶液を得た。得られたジシクロペンタジエン開環重合体溶液の一部を採取し、濾過量を測定したところ、25.0gであった。残りのジシクロペンタジエン開環重合体溶液を用いて、実施例1と同様にして水素添加反応を行い、ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物28.1部を得た。ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物の水素添加率は99%以上、融点は261℃、ラセモ・ダイアッドの割合は89%であった。得られたジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物を用いて実施例1と同様にしてフィルム成形体を得た。得られたフィルムのHAZE、光線透過率を測定したところ、それぞれ、HAZEは0.2、光線透過率は90.6%であった。
〔合成例2〕1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン開環重合体溶液の合成
充分に乾燥した後、窒素置換した金属製耐圧反応容器に、シクロヘキサン/トルエン=60/40の混合溶剤118.5部、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン33部、1−ヘキセン0.15部を加え、45℃に加温した後、さらに重合触媒としてトリイソブチルアルミニウム15%トルエン溶液0.875部、イソブチルアルコール0.0075部、ジイソプロピルエーテル0.01部、および6塩化タングステンの0.6%シクロヘキサン溶液10.5部を反応器に加えて開環重合反応を開始した。その後、45℃を保ちながら、4時間反応させ、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン開環重合体溶液を得た。得られた1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン開環重合体の数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)は、それぞれ、17,300および28,500であり、これらから求められる分子量分布(Mw/Mn)は1.65であった。
〔実施例7〕
合成例2で得られた1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン開環重合体溶液200部に、停止剤として1,2−エタンジオール0.069部を加えて、50℃に加温し、1時間攪拌し重合反応を停止させた。その後、ハイドロタルサイト様化合物(製品名「キョーワード(登録商標)2000」、協和化学工業社製)を2部加えて、50℃に加温し、1時間攪拌した。得られた1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン開環重合体溶液の一部を採取し、濾過量を測定したところ、17.6gであった。残りの1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン開環重合体溶液に濾過助剤としてラヂオライト(登録商標)#1500(昭和化学工業社製)を0.8部加え、PPプリーツカートリッジフィルター(製品名「TCP−HX」、ADVANTEC東洋社製)を用いて、吸着剤と溶液を濾別した。濾過後の1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン開環重合体溶液200部に、シクロヘキサン/トルエン=60/40の混合溶剤120部を加えて、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム0.0057部を添加し、水素圧5MPa、160℃で2時間水素添加反応を行った。得られた1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン開環重合体の水素添加物の水添率は99%以上であった。得られた1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン開環重合体の水素添加物の溶液に酸化防止剤(テトラキス〔メチレン−3−(3’、5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、製品名「イルガノックス(登録商標)1010」、BASFジャパン社製)0.61部を混合後、円筒型濃縮乾燥機(日立製作所製)を用い、270℃、1kPa以下で、シクロヘキサンおよびその他の揮発成分を除去しつつ、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン開環重合体水素添加物を溶融状態で押出機からストランド状に押出し、冷却後、ペレット化して1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン開環重合体の水素添加物のペレット38.4部を製造した。押出機の運転条件を以下に箇条書きで記す。
・ダイ設定温度:200℃
・スクリュー回転数:145rpm
・フィーダー回転数:50rpm
引き続き、得られたペレットを、Tダイを備える熱溶融押出しフィルム成形機(製品名「Measuring Extruder Type Me−20/2800 V3」、Optical Control Systems社製)にて、厚み100μm、幅120mmのフィルムを2m/分の速度でロールに巻き取る方法にて、フィルム成形体を得た。フィルム成形機の運転条件を、以下に箇条書きで記す。
・バレル温度設定:230℃〜240℃
・ダイ温度:190℃
・スクリュー回転数:30rpm
得られたフィルムの、HAZE、光線透過率を測定したところ、それぞれ、HAZEは0.2、光線透過率は、89.0%であった。
〔比較例1〕
停止剤を1,2−エタンジオール0.037部からメタノール0.038部に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてジシクロペンタジエン開環重合体溶液を得た。得られたジシクロペンタジエン開環重合体溶液の一部を採取し、濾過量を測定したところ、7.7gであり、測定途中で濾過詰まりが発生した。残りのジシクロペンタジエン開環重合体溶液を用いて、実施例1と同様にして水素添加反応を行い、ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物27.2部を得た。ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物の水素添加率は99%以上、融点は262℃、ラセモ・ダイアッドの割合は89%であった。得られたジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物を用いて実施例1と同様にしてフィルム成形体を得た。得られたフィルムのHAZE、光線透過率を測定したところ、それぞれ、HAZEは0.3、光線透過率は90.3%であった。
〔比較例2〕
停止剤を1,2−エタンジオール0.037部からイソプロパノール0.071部に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてジシクロペンタジエン開環重合体溶液を得た。得られたジシクロペンタジエン開環重合体溶液の一部を採取し、濾過量を測定したところ、13.9gであった。残りのジシクロペンタジエン開環重合体溶液を用いて、実施例1と同様にして水素添加反応を行い、ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物27.5部を得た。ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物の水素添加率は99%以上、融点は262℃、ラセモ・ダイアッドの割合は90%であった。得られたジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物を用いて実施例1と同様にしてフィルム成形体を得た。得られたフィルムのHAZE、光線透過率を測定したところ、それぞれ、HAZEは0.4、光線透過率は88.9%であった。
〔比較例3〕
吸着剤をハイドロタルサイト様化合物1部の代わりに、シリカゲル(製品名「キャリアクト(登録商標) Q10」、富士シリシア化学社製)3部に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてジシクロペンタジエン開環重合体溶液を得た。得られたジシクロペンタジエン開環重合体溶液の一部を採取し、濾過量を測定したところ、18.7gであった。残りのジシクロペンタジエン開環重合体溶液を用いて、実施例1と同様にして水素添加反応を行い、ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物28.1部を得た。ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物の水素添加率は99%以上、融点は262℃、ラセモ・ダイアッドの割合は89%であった。得られたジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物を用いて実施例1と同様にしてフィルム成形体を得た。得られたフィルムのHAZE、光線透過率を測定したところ、それぞれ、HAZEは0.6、光線透過率は87.3%であった。
〔比較例4〕
吸着剤をハイドロタルサイト様化合物1部加える代わりに、イオン交換樹脂(製品名「ダイヤイオン(登録商標)CR11」、三菱化学社製)を3部加えるに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてジシクロペンタジエン開環重合体溶液を得た。得られたジシクロペンタジエン開環重合体溶液の一部を採取し、濾過量を測定したところ、27.6gであった。残りのジシクロペンタジエン開環重合体溶液を用いて、実施例1と同様にして水素添加反応を行い、ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物28.5部を得た。ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物の水素添加率は99%以上、融点は260℃、ラセモ・ダイアッドの割合は89%であった。得られたジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物を用いて実施例1と同様にしてフィルム成形体を得た。得られたフィルムのHAZE、光線透過率を測定したところ、それぞれ、HAZEは0.8、光線透過率は86.9%であった。
〔比較例5〕
水素添加触媒をクロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム0.0043部を加える代わりに、ニッケル−アルミナ触媒(日揮触媒社製)0.6部を加えるに変更したこと以外は、実施例1と同様にして水素添加反応を行い、水素添加反応液を得た。得られた水素添加反応液は、析出したポリマーと固体触媒の水素添加触媒の分離は遠心分離では困難であった。得られた水素添加反応液を多量のイソプロピルアルコールに注いでポリマーを完全に析出させ、濾過により分離して回収した後、o−ジクロロベンゼンを加え200℃に加温することでポリマーのみを溶解させ、濾過によりo−ジクロロベンゼンのポリマー溶液と固体触媒を分離した。o−ジクロロベンゼンに溶解したポリマーが冷えて析出したところを、さらに濾別洗浄し、真空下60℃で24時間減圧乾燥し、ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物23.2部を得た。ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物の水素添加率は99%以上であったが、融点は243℃、ラセモ・ダイアッドの割合は83%であった。ニッケル‐アルミナ触媒を用いた水素添加反応では、結晶性ポリマーとの分離が困難になるだけでなく、副反応による立体規則性の低下が起こった。
〔比較例6〕
停止剤を1,2−エタンジオール0.55部からメタノール0.50部に変更したこと以外は、実施例7と同様にして1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン開環重合体溶液を得た。得られた1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン開環重合体溶液の一部を採取し、濾過量を測定したところ、4.3gであり、測定途中で濾過詰まりが発生した。残りの1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン開環重合体溶液を用いて、実施例7と同様にして水素添加反応を行い、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン開環重合体の水素添加物のペレット37.8部を得た。1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン開環重合体水素添加物の水素添加率は99%以上であった。得られた1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン開環重合体水素添加物を用いて実施例7と同様にしてフィルム成形体を得た。得られたフィルムのHAZE、光線透過率を測定したところ、それぞれ、HAZEは0.2、光線透過率は88.8%であった。
〔比較例7〕
停止剤を1,2−エタンジオール0.55部からイソプロパノール1.05部に変更したこと以外は、実施例7と同様にして1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン開環重合体溶液を得た。得られた1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン開環重合体溶液の一部を採取し、濾過量を測定したところ、12.8gであった。残りの1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン開環重合体溶液を用いて、実施例7と同様にして水素添加反応を行い、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン開環重合体の水素添加物のペレット37.8部を得た。1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン開環重合体水素添加物の水素添加率は99%以上であった。得られた1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン開環重合体水素添加物を用いて実施例7と同様にしてフィルム成形体を得た。得られたフィルムのHAZE、光線透過率を測定したところ、それぞれ、HAZEは0.5、光線透過率は85.5%であった。
上記実施例及び比較例の結果を表1及び2に整理する。
Figure 2014162811
Figure 2014162811
この結果から、以下のことがわかる。
環状オレフィン開環重合の停止反応に、停止剤に多価アルコールを用いた場合(実施例1、3、4、7)と、1価のアルコールを用いた場合(比較例1、2、6、7)とを比べると、濾過量に差があり、多価アルコールを用いた方が濾過性に優れる。また、炭素数の少ない1価のアルコールを用いると濾過詰まりが発生し、濾別自体が困難となる(比較例1、6)。炭素数の多い1価のアルコールを用いると、光学物性の低下を引き起こす(比較例2、7)。
炭化水素溶媒中では、環状オレフィン開環重合溶液に加える吸着剤に層状無機化合物を用いた場合(実施例1、2、5)と、シリカゲル(比較例3)やイオン交換樹脂(比較例4)といった金属残渣を除くのに有効とされていた吸着剤を比較すると、層状無機化合物を用いた方が、光学物性が優れる。
シクロヘキサンの代わりにシクロヘキサン/トルエン混合溶媒を用いても、停止剤に多価アルコールを用いて、吸着剤に層状無機化合物を用いた場合、光学物性の向上が見られた(実施例1、6)。
水素添加触媒に、不均一系触媒であるニッケル−アルミナ触媒を用いた場合、水素添加反応後に析出した重合体と触媒との分離が困難であった(比較例5)。また、水素添加反応時にラセモ・ダイアッドの割合の低下が起こり、融点が低下していることがわかる。

Claims (6)

  1. 多環式ノルボルネン系単量体を炭化水素溶媒中で開環重合し、得られた反応液に、多価アルコールを接触させ、次いで層状無機化合物と接触させた後、濾過し、その後、均一系触媒で得られた開環重合体を水素添加することを特徴とする環状オレフィン開環重合体水素添加物の製造方法。
  2. 前記環状オレフィン開環重合体水素添加物が結晶性である請求項1記載の製造方法。
  3. 前記多環式ノルボルネン系単量体が、ヘテロ原子を含まないものである請求項1又は2記載の製造方法。
  4. 前記多価アルコールが、炭素数2又は3の多価アルコールである請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
  5. 前記炭化水素溶媒が、環状炭化水素である請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
  6. 前記開環重合が、タングステン又はモリブデンを含有する触媒存在下で行われるものである請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
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