JP2014170109A - 回折光学素子、光学系および光学機器 - Google Patents

回折光学素子、光学系および光学機器 Download PDF

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Abstract

【課題】設計入射角度で入射する光束の設計次数の回折効率を向上し、設計次数±1次の回折効率を低減させ、かつ斜入射角度(画面外光入射角度)で入射し結像面に到達する不要光を低減する回折光学素子、光学系および光学機器を提供する。
【解決手段】回折光学素子で、格子面および格子壁面を備えた回折格子と、前記格子壁面に配置され、使用波長帯域の光に対して透明な薄膜と、を有し、前記薄膜のd線での屈折率をnfd、前記回折格子の材料のd線での屈折率をngd、前記薄膜の膜厚をwf、前記d線の波長をλdとするとき、以下の式を満たすことを特徴とする。
0.05 < nfd−ngd < 0.5
0.01 <(nfd−ngd)*wf/λd < 0.05
【選択図】図1

Description

本発明は、回折光学素子、光学系および光学機器に関する。
2つの回折格子を密着配置し、各回折格子を構成する材料と格子高さを適切に設定することで広い波長帯域で高い回折効率を得ることが知られている。この格子面と格子壁面を備えた回折光学素子に光束が入射すると、スカラー回折理論で計算される理想的な回折光学素子であっても、格子壁面の影響により、不要光(フレア)が発生する。
特許文献1は、厳密結合波解析(RCWA:Regorous Coupled Wave Analysis)を使用し、設計次数の回折効率を向上した回折光学素子について開示している。特許文献2は、光学系のレンズに用いられる回折光学素子において、斜入射角度(画面外光入射角度)で入射する光束による不要光のうち、結像面に到達する不要光を低減する回折光学素子について開示している。
特開2009−217139号公報 特開2011−257689号公報
特許文献1の回折光学素子は、2つの回折格子を構成する材料の屈折率およびアッべ数の関係を規定することで設計次数の回折効率を向上させている。しかしながら、格子壁面付近の素子構造を制御して、回折格子の材料を変更せずに回折効率を向上させることは開示されていない。
また、特許文献2の回折光学素子は、斜入射角度で入射する光束によって射出し、結像面に到達する不要光を低減しているが、設計入射角度で入射する光束の設計次数の回折効率を向上し、設計次数±1次の回折効率を低減させることは開示されていない。
本発明の目的は、設計入射角度で入射する光束の設計次数の回折効率を向上し、設計次数±1次の回折効率を低減させ、かつ斜入射角度(画面外光入射角度)で入射し結像面に到達する不要光を低減する回折光学素子、光学系および光学機器を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明に係る回折光学素子は、格子面および格子壁面を備えた回折格子と、前記格子壁面に配置され、使用波長帯域の光に対して透明な薄膜と、を有し、前記薄膜のd線での屈折率をnfd、前記回折格子の材料のd線での屈折率をngd、前記薄膜の膜厚をwf、前記d線の波長をλdとするとき、以下の式を満たすことを特徴とする。
0.05 < nfd−ngd < 0.5
0.01 <(nfd−ngd)*wf/λd < 0.05
本発明によれば、設計入射角度で入射する光束の設計次数の回折効率を向上し、設計次数±1次の回折効率を低減させ、かつ斜入射角度(画面外光入射角度)で入射し結像面に到達する不要光を低減できる。
(a)は本発明の実施形態に係る回折光学素子の平面図及び側面図、(b)は回折格子部の部分拡大斜視図、(c)は回折格子部の部分拡大断面図である。 本発明の実施形態に係る回折光学素子を有する光学系および光学機器の詳細図である。 本発明の実施形態に係る回折光学素子を有する光学系の部分拡大断面図である。 本発明の実施形態に係る回折光学素子を有する光学系において、設計入射角度(撮影光入射角度)の不要光の影響を説明するための模式図である。 (a)、(b)は、実施例1の回折光学素子の設計入射角度光束に対する回折効率のグラフである。 (a)、(b)は、比較例の回折光学素子の設計入射角度光束に対する回折効率のグラフである。 本発明の実施形態に係る回折光学素子を有する光学系において、斜入射角度(画面外光入射角度)の不要光の影響を説明するための模式図である。 (a)、(b)は、実施例1の回折光学素子の画面外入射+10度光束に対する回折効率のグラフである。 (a)、(b)は、比較例の回折光学素子の画面外入射+10度光束に対する回折効率のグラフである。 (a)、(b)は、実施例1の回折光学素子の画面外入射−10度光束に対する回折効率のグラフである。 (a)、(b)は、比較例の回折光学素子の画面外入射−10度光束に対する回折効率のグラフである。 (a)、(b)は、実施例2の回折光学素子の設計入射角度および画面外入射角度光束に対する回折効率のグラフである。 (a)、(b)は、実施例3の回折光学素子の設計入射角度および画面外入射角度光束に対する回折効率のグラフである。 (a)、(b)は、実施例4の回折光学素子の設計入射角度および画面外入射角度光束に対する回折効率のグラフである。 (a)、(b)は、実施例5の回折光学素子の設計入射角度および画面外入射角度光束に対する回折効率のグラフである。 (a)、(b)は、実施例6の回折光学素子の設計入射角度および画面外入射角度光束に対する回折効率のグラフである。 (a)、(b)は、比較例の回折光学素子の設計入射角度および画面外入射角度光束に対する回折効率のグラフである。 本発明の第2の実施形態に係る回折格子部の部分拡大斜視図である。 本発明の第3の実施形態に係る回折格子部の部分拡大斜視図である。
《第1の実施形態》
(光学系および光学機器)
図2は、本発明の実施形態に係る回折光学素子DOE1を用いた光学系および光学機器を示す。即ち、光学系として第2面に回折面が設けられた望遠タイプの撮影光学系が撮像装置(カメラなど)に適用されている。図2において、30は撮影レンズで、内部に絞り40とDOE1を有する。絞り40はDOE1よりも後側に配置されている。41は結像面であるフィルムまたはCCDやCMOS等の光電変換素子が配置されている。回折格子部10に入射する光束の入射角の分布の重心(図形の重心と同じ)は包絡面の回折格子の中心での面法線に対し、回折格子部10の中心よりに分布するように設定されている。
このような光学系に、回折光学素子を適用すれば、撮影光の不要光が低減され、かつ画面外から光束が入射した場合の、結像面に到達する不要光が低減されているため、フレアが少ない撮影レンズが得られる。
なお、本実施形態では前玉のレンズの貼り合せ面にDOE1を設けたが、これに限定するものではなく、レンズ表面に設けても良いし、撮影レンズ内に複数、回折光学素子を使用しても良い。DOE1が適用可能な光学系は、図2に示す撮影光学系に限定されず、ビデオカメラの撮影レンズ、イメージスキャナーや、複写機のリーダーレンズなど広波長域で使用される結像光学系、双眼鏡や望遠鏡などの観察光学系、光学式ファインダーであっても良い。また、DOE1を含む光学系が適用可能な装置も撮像装置に限定されず、広く光学機器であれば良い。
(回折光学素子)
図1(a)は、本実施形態に係る回折光学素子(DOE)1の平面図と側面図である。DOE1は、可視波長帯域内の使用波長領域で特定の一つの次数(以下、「特定次数」または「設計次数」ともいう)の回折光の回折効率を高めるように構成されている。DOE1は透明な一対の基板2および3と、その間に配置された回折格子部10と、を有する。各基板2および3は、平板又はレンズ作用を奏する形状を有するが、本実施形態では、基板2の上下面と基板3の上下面はそれぞれ曲面を有する。回折格子部10は光軸Oを中心とした同心円状の回折格子形状を有し、レンズ作用を奏する。
即ち、第1の回折格子である回折格子11およびその出射側の第2の回折格子である回折格子12は、光軸Oから外周部にいくに従って格子ピッチを徐々に変化させてレンズ作用(光の収斂作用や発散作用)を実現している。第1の格子面11a、第2の格子面12aおよび第1の格子壁面11b、第2の格子壁面12bは互いに隙間なく接しており、回折格子11、12は、全体で1つのDOE10として作用する。
図1(b)は、回折格子部10の部分拡大斜視図である。図1(c)は図2の拡大断面図である。格子形状を分かりやすくするために、格子深さ方向にかなりデフォルメされ、格子数も実際よりは少なく描かれている。図1(b)および図1(c)において、入射光束aは、DOE1の設計入射角度である入射角度0度で入射する光束である。入射光束bは、斜入射角度(画面外光入射角度)で下向きに入射する光束である。入射光束cは、斜入射角度(画面外光入射角度)で上向きに入射する光束である。
図1、図2において、回折格子部10は、回折格子(第1の回折格子)11と回折格子(第2の回折格子)12とが光軸方向に密着接合することによって形成され、回折格子11および12の格子壁面には使用波長帯域で透明な薄膜20が設けられている。ここで、回折格子部10を、回折格子(第1の回折格子)11と回折格子(第2の回折格子)12のいずれか一方だけで形成することもできる。なお、回折格子11は基板2と一体であっても良いし、別体であっても良い。同様に、回折格子12は基板3と一体であっても良いし、別体であっても良い。
なお、本実施形態では、回折格子11と12が光軸方向において密着しているが、介在する薄膜20は後述する図18に示すように両者の境界面の全域に亘って設けられている場合もあるので、回折格子11と12が光軸方向に積層されていれば足りる。
(ブレーズ構造)
回折格子11は、格子面11aと格子壁面11bから構成される同心円状のブレーズ構造を有し、回折格子12は、格子面12aと格子壁面12bから構成される同心円状のブレーズ構造を有する。ブレーズ構造にすることで、DOE1に入射した入射光は、回折格子部10で回折せずに透過する0次回折方向に対し、設計上の回折次数(図では+1次)方向に集中して回折する。
(可視領域全体での高回折効率)
本実施形態のDOE1の使用波長領域は可視域であるため、可視領域全体で設計次数の回折光の回折効率が高くなるように、スカラー回折理論に従って、回折格子11及び12を構成する材料及び格子高さを選択している。即ち、複数の回折格子(回折格子11,12)を通過する光の最大光路長差(回折部の山と谷の光学光路長差の最大値)が使用波長域内で、その波長の整数倍付近となるように、各回折格子の材料及び格子高さが定められている。このように回折格子の材料、形状を適切に設定することによって、使用波長全域で高い回折効率が得られる。
一般に、回折格子の格子高さは、格子周期方向に垂直な方向(面法線方向)の格子先端と格子溝の高さで定義される。また、格子壁面が面法線方向からシフトしているときや格子先端が変形しているとき等の場合は、格子面の延長線と面法線との交点との距離で定義される。なお、回折格子材料や格子高さは限定されない。
本実施形態では、回折格子11と12は互いに異なる材料により形成され、回折格子11は低屈折率分散材料から構成され、回折格子12はそれよりも高い屈折率を有する高屈折率分散材料から構成されている。以下の式を満足することによって、99%以上の高い回折効率を得ることができる。
νd1<25
νd2>35
0.940≦(n12×d1−n11×d2)/(m×λ)≦1.060
ただし、波長λにおける回折格子11および回折格子12を構成する材料の屈折率をそれぞれn11、n12、アッべ数をνd1、νd2および格子高さをd1、d2、設計次数をmとする。
また、可視波長域全域で99%以上の高い回折効率を得るためには、高屈折率低分散材料のアッべ数を35より大きく、低屈折率高分散材料のアッべ数を25より小さくすることが好ましい。さらに、部分分散比θgFが通常の材料より小さな値(リニア異常分散性)を有する材料を用いることが好ましい。このリニア分散特性を得るために、ITO微粒子を微粒子分散させてベース樹脂材料に混ぜる方法を用いることができる。ITOは他の無機酸化物と異なり、電子遷移による屈折率の変化に加え、錫によるドーピングや酸素の空孔によりフリーキャリアが発生し屈折率が変化する。
この電子遷移とフリーキャリアの影響により非常に強いリニア分散特性を有する。従って、ITOと同様にフリーキャリアの影響があるSnO2及びATO(アンチモンをドーピングしたSnO2)等も使用することができる。
また、微粒子を分散させた樹脂材料は、紫外線硬化樹脂であって、アクリル系、フッ素系、ビニル系、エポキシ系のいずれかの有機樹脂を含むが、特に限定されない。微粒子材料の平均粒子径は、回折光学素子への入射光の波長(使用波長又は設計波長)の1/4以下であることが好ましい。これよりも粒子径が大きくなると、微粒子材料を樹脂材料に混合した際に、レイリー散乱が大きくなる可能性が生じる。
(薄膜)
回折格子11と12の境界面の少なくとも一部に、薄膜20が略均一な厚さで設けられる。本実施形態では、第1の回折格子の格子壁面と第2の回折格子の格子壁面の間に格子壁面に沿って設けられている。積層型の回折格子部を備える本実施形態では、薄膜を第1回折格子あるいは第2回折格子の格子壁面に沿って設けるが、第2の回折格子のみで回折格子部を構成する場合は、第2の回折格子の格子壁面に沿って設ける。
本発明は、格子壁面の高屈折率薄膜によって高屈折率薄膜内部に一部の光束が閉じ込められ、全反射による多重反射を介して光導波路のように伝播し、射出された後に薄膜内を透過しない光束と干渉することを利用している。この光導波路の条件を最適化すると回折格子から射出した光が設計回折次数の回折光に結合する条件となり、この結果、設計次数の回折効率が向上し、設計次数±1次の回折効率を低減することを見出した。鋭意検討した結果、好ましい条件として、式(1)、(2)を得た。
0.05 < nfd−ngd < 0.5、 (1)
0.01 <(nfd−ngd)*wf/λd < 0.05 (2)
ただし、nfdは薄膜のd線での屈折率、ngdは回折格子(第1の回折格子がなく、第2の回折格子だけで構成される場合)の材料のd線での屈折率、wfは薄膜の膜厚、λdはd線の波長である。
ここで、回折格子部が、第1の回折格子と、第2の回折格子とで構成される場合は、以下の通りとなる。即ち、図1乃至図3に示す積層型の回折光学素子において、第1、第2の回折格子の材料のd線での屈折率をnd1、nd2、薄膜のd線での屈折率をnfd、薄膜の膜厚をwf、d線の波長をλdとするとき、以下の式を満たすようにする。
nd1 < nd2 (3)
0.05 < nfd−nd2 < 0.5 (4)
0.01 <(nfd−nd2)*wf/λd < 0.05 (5)
ここでは、回折格子11を構成する材料のd線に対する屈折率nd1よりもnd2の方が大きい例について説明している。逆にnd2<nd1の場合には、回折格子の格子形状の向きも逆になり、格子壁面による不要光の影響は同様となる。
また、回折格子の材料のd線での消衰係数をkgd、薄膜のd線での消衰係数をkfdとするとき、以下の式を満たすことが好ましい。この式を満足しないと薄膜で反射が発生してしまうため、上述した効果を得ることが困難になる。
0 ≦ kfd−kgd < 0.5 (6)
なお、薄膜20の製造方法は特に限定されない。例えば、回折格子12を製造し、その後、薄膜20を選択的に形成する。具体的には、薄膜を構成する材料を真空蒸着等の物理蒸着手法やスピンコート法等で薄膜形状に成膜した後、リソグラフィー手法やナノインプリント法等によるによるパターニングしてエッチング手法等で選択的に形成する手法を用いることができる。また、マスクパターンを用いて選択的に蒸着手法等で形成する方法等を用いることができる。
また、薄膜20は、後述するように両者の境界面の全域に亘って設けられている場合もあるので、その場合は格子壁面部のみに選択的に形成する必要はない。その後、回折格子11を形成することで回折光学素子を製造することができる。また、回折光学素子の輪帯毎に薄膜の幅または形状を変えることによって輪帯毎に制御して形成しても良い。
以下、添付図面を参照して、具体的な実施例を説明する。
(実施例1)
本実施例では、回折格子11は、ITO微粒子を混合させたアクリル系紫外線硬化樹脂(nd=1.5631、νd=18.4、θgF=0.422、n550=1.5698)から構成されている。回折格子12は、ZrO微粒子を混合させたアクリル系紫外線硬化樹脂(nd=1.6196、νd=43.6、θgF=0.569、n550=1.6227)から構成されている。
なお、第1の回折格子11、第2の回折格子12のndは、d線に対する夫々の屈折率、νdはd線に対するアッベ数、θgFはg線とF線に対する部分分散比、n550は波長550nmに対する屈折率である。
図1(b)に示す格子壁面の格子高さdは10.40μm、設計次数は+1次である。薄膜20は、d線に対する屈折率nd=1.80、および消衰係数kd=0.0で構成され、積層面である格子壁面に垂直な方向の膜厚wfは80nmである。
図3は図1(b)の部分拡大断面図、図4は設計入射角度(撮影光入射角度)における不要光の影響を説明するための模式図である。図3及び図4において、光軸Oに対して入射する撮影光束AとA’は、基板2を通過後、それぞれ光軸Oから上方向に数えてm番目、下方向に数えてm番目の回折格子であるm格子とm’格子に入射する。図4で、撮影光束A、A’のm格子、m’格子に対しての入射角度は重心光線方向である。また、格子壁面方向は重心光線方向と等しい。
図4において、撮影光束Aのm格子により射出する+1次回折光はAm1、0次回折光はAm0、+2次回折光はAm2、撮影光束A’のm’格子により射出する+1次回折光はA’m1、0次回折光はA’m0、+2次回折光はA’m2としている。設計次数である+1次回折光Am1、A’m1は結像面41に結像される。これに対して設計次数−1次である0次回折光Am0、A’m0は結像面41の像側に結像し、設計次数+1次である+2次回折光Am2、A’m2は結像面41の物体側に結像する。結像面でのスポットサイズが設計次数から離れるほどぼけるため、不要光が目立ちにくくなる。
即ち、設計入射角度(撮影光入射角度)における不要光は、設計次数±1次の回折光の回折効率が最も影響が大きいことになる。図5は、図1(c)に示す設計入射角度(撮影光入射角度)である入射光束aと、図3および図4の入射光束Aを想定して、入射角度0度、格子ピッチ100μm、波長550nmにおけるRCWA計算を行った結果を示すグラフである。
図5(a)は、設計次数である+1次回折光付近での回折効率に関し、横軸は回折次数、縦軸は回折効率である。図5(b)は、図5(a)の縦軸の回折効率の低い部分を拡大し、横軸を回折次数から回折角にして高回折角度範囲を表示した結果である。なお、回折角は図1(c)の下向きを正の方向としている。
図6は、薄膜20を有しない以外は図1と同様の構成を有するDOEを使用した場合の、図5に相当する比較例としてのグラフである。図5(a)より、設計次数である+1次回折光の回折効率は99.43%(回折角+0.19度)であり、図6(a)に示す薄膜を設けていない回折格子の場合の+1次回折光の回折効率98.71%(回折角+0.19度)より大きく向上している。
また、図5(b)より、0次回折光および+2次回折光の回折効率は夫々0.00126%、0.00120%であり、図6(b)に示す薄膜を設けていない回折格子の場合の0次回折光および+2次回折光の回折効率より、大幅に低減している。因みに図6(b)に示す値は夫々0.00841%、0.00774%である。なお、0次回折光および+2次回折光の回折効率の数値自体は低い数値ではあるが、高輝度光源、小絞り、長時間露光等の撮影時には不要光として影響してくるため、本実施形態における効果は大きい。
図7は、斜入射角度(画面外入射角度)における不要光の影響を説明するための模式図である。図3において、画面外光束B,B’のm格子、m’格子に対しての入射角度は、重心光線方向に対して角度ωi、ωi’である。図8は、図1(c)に示す画面外入射光束bと、図3および図7に示す入射光束Bを想定して入射角度+10度、格子ピッチ100μm、波長550nmにおけるRCWA計算結果を示すグラフである。入射角は図1(c)の下向きを正の方向としている。
図8(a)は、設計次数である+1次回折光付近での回折効率に関し、横軸は回折次数、縦軸は回折効率である。図8(b)は、図8(a)の縦軸の回折効率の低い部分を拡大し、横軸を回折次数から回折角にして高回折角度範囲について表示した結果である。回折角は図1(c)の下向きを正の方向としている。図8(a)に示すように、設計次数である+1次回折光の回折効率が集中しているが、この+1次回折光は結像面に到達しないため影響は小さい。
残りの不要光は、図8(b)に示すように、特定角度方向にピークを有する不要光となって伝播する。この不要光は略−10度方向にピークを有し、この伝播方向は格子壁面に入射する画面外入射角度+10度光束の成分が全反射して伝播する射出方向−10度方向と略等しい。図9は、薄膜20を有しない以外は図1(c)と同様の構成を有するDOEを使用した場合の、図8に相当する比較例としてのグラフである。
画面外光+10度入射の不要光のうち、設計入射角度の+1次回折光の回折角+0.19度付近に射出する不要光が像面に到達することになる(図7のBm)。回折光学素子の後段の光学系によって、画面外入射光の不要光が像面に到達する回折次数、回折角度が異なる(図7ではBm〜Bm+)。しかし、いかなる光学系であっても、少なくとも設計入射角における設計回折次数が伝播する回折角度に略一致する、画面外光による不要光の回折光は像面に到達するため、像性能の低下を招くことになる。
図8(b)に示す−10度方向の不要光ピーク角度は図9(b)とほぼ同じだが、不要光の広がりは図8(b)と図9(b)では異なる。図8の回折角+0.19度付近の回折効率はRCWA計算結果から、回折次数−48次(回折角+0.30度)の回折効率が0.00661%、回折次数−49次(回折角+0.11度)の回折効率が0.00633%である。一方、薄膜を有しない比較例では、回折次数−48次(回折角+0.30度)の回折効率が0.0156%、回折次数−49次(回折角+0.11度)の回折効率が0.0155%であるため、本実施例では不要光の影響が大幅に減少していることになる。
本実施例においては、不要光は、格子壁面付近に入射する光束bの一部が薄膜20の内部に閉じ込められ、光導波路のように伝播し、これらの光束が射出後に干渉する結果、像面に到達する光束が比較例よりも減少していると考えられる。
次に、図10は、図1(c)に示す入射光束cを想定して入射角度−10度、格子ピッチ100μm、波長550nmにおけるRCWA計算を行った結果を示すグラフである。入射角は、図1(c)の下向きを正の方向としている(図3のm’格子では上向きが正の方向となる)。図10(a)は、設計次数である+1次回折光付近での回折効率に関し、横軸は回折次数、縦軸は回折効率である。図10(b)は、図10(a)の縦軸の回折効率の低い部分を拡大し、横軸を回折次数から回折角にして高回折角度範囲について表示した結果である。
図11は、薄膜20を有しない以外は図1(c)と同様の構成を有するDOEを使用した場合の、図10に相当する比較例としてのグラフである。図10(a)で、設計次数である+1次回折光の回折効率が集中しているが、この+1次回折光は像面に到達することはないため影響は小さい。残りの不要光は、図10(b)のように特定角度方向にピークをもつ不要光となって伝播していることが分かる。図11(b)と比較すると、+方向の不要光のピークは増加し、−方向の不要光のピークは減少している。
これは、格子壁面に設けた高屈折率薄膜によって、低屈折率媒質側から格子壁面に入射した光束の一部が反射することで+方向の不要光が増加し、−方向の透過に起因する不要光が減少していることを意味している。
図2及び図7に示す光学系で、設計入射角における設計回折次数が伝播する回折角度+0.19度に略一致する画面外光による不要光の回折光が、少なくとも像面に到達する(図7のB’m)。図10の回折角+0.19度付近の回折効率はRCWA計算結果から、回折次数+51次(回折角+0.28度)の回折効率が0.00526%、回折次数+50次(回折角+0.065度)の回折効率が0.00541%である。一方、比較例の場合(図11)は、回折次数+51次(回折角+0.28度)の回折効率が0.00174%、回折次数+50次(回折角+0.065度)の回折効率が0.00177%である。
これより、本実施例では比較例に比べて増加しているが、回折効率の数値が極めて小さく、またm格子による影響の方が大きいため、像性能の低下に対しての影響は小さい。このように、本実施例の回折光学素子を適用した光学系において、不要光の影響が小さいm’格子の不要光の増加を影響ない程度に抑制し、不要光の影響が大きいm格子の不要光を大幅に減少させることができる。この結果、結像面に到達する不要光が小さくなるため、像性能の低下を抑制することができる。
なお、ここでは格子ピッチ100μmとしている。さらに格子ピッチの広い輪帯においては壁面の寄与が小さくなるため、設計次数の回折効率は相対的に高く、不要光の回折効率は相対的に低くなる。また、図示してはいないが、この不要光の伝播方向については格子ピッチに依存せず、伝播方向は同じであった。このため、ひとつの基準として格子ピッチ100μmの回折効率を示している。
また、ここでは画面外光束B,B’の入射角は画面外+10度(光軸方向に対しては入射角ωは+13.16度)を想定する。この入射角度より小さい角度では、レンズ表面や結像面反射によるゴーストやレンズ内部、表面微小凹凸による散乱が多いため、回折光学素子の不要光は比較的目立たない。また、この入射角度より大きい角度では、前側レンズ面の反射やレンズ鏡筒による遮光により回折光学素子の不要光の影響度は比較的小さい。このため、画面外入射光束は+10度付近が回折光学素子の不要光に対して最も影響が大きく、ここでは画面外光束の入射角は略+10度と想定する。
(実施例2)
本実施例は、実施例1に対して、薄膜の膜厚wfを60nmとしたものである。図12(a)は、入射角度0度、格子ピッチ100μm、波長550nmにおけるRCWA計算を行った結果を示すグラフである。設計次数である+1次回折光の回折効率は99.36%であり、薄膜を設けていない回折格子の場合の+1次回折光の回折効率98.71%より大きく向上している。
また、図12(a)に示す0次回折光および+2次回折光の回折効率は夫々0.00305%、0.00321%である。一方、図6(b)の薄膜を設けていない回折格子の場合は、0次回折光および+2次回折光の回折効率が夫々0.00841%、0.00774%であり、本実施例では大幅に低減している。
図12(b)は、+10度、格子ピッチ100μm、波長550nmにおけるRCWA計算結果を示すグラフである。回折次数−48次の回折効率が0.00431%、回折次数−49次の回折効率が0.00443%である。一方、薄膜を有しない比較例においては、回折次数−48次の回折効率が0.0156%、回折次数−49次の回折効率が0.0155%であるため、本実施例では不要光の影響が大幅に減少していることになる。
(実施例3)
本実施例は、実施例1に対して、薄膜の屈折率nfを1.7、膜厚wfを160nmとしたものである。図13(a)は、入射角度0度、格子ピッチ100μm、波長550nmにおけるRCWA計算を行った結果を示すグラフである。設計次数である+1次回折光の回折効率は99.49%であり、薄膜を設けていない回折格子の場合の+1次回折光の回折効率98.71%より大きく向上している。
また、図13(a)で、0次回折光および+2次回折光の回折効率は夫々0.000759%、0.000613%である。一方、図6(b)の薄膜を設けていない回折格子の場合の0次回折光および+2次回折光の回折効率は夫々0.00841%、0.00774%であり、大幅に低減している。
図13(b)は、+10度、格子ピッチ100μm、波長550nmにおけるRCWA計算結果を示すグラフである。回折次数−48次の回折効率が0.000577%、回折次数−49次の回折効率が0.000768%である。一方、薄膜を有しない比較例においては、回折次数−48次の回折効率が0.0156%、回折次数−49次の回折効率が0.0155%であるため、本実施例では不要光の影響が大幅に減少していることになる。
(実施例4)
本実施例は、実施例1に対して、薄膜の屈折率nfを2.0、膜厚wfを40nmとしたものである。図14(a)は、入射角度0度、格子ピッチ100μm、波長550nmにおけるRCWA計算を行った結果を示すグラフである。設計次数である+1次回折光の回折効率は99.28%であり、薄膜を設けていない回折格子の場合の+1次回折光の回折効率98.71%より大きく向上している。
また、図14(a)から0次回折光および+2次回折光の回折効率は夫々0.00269%、0.00262%である。一方、図6(b)の薄膜を設けていない回折格子の場合の0次回折光および+2次回折光の回折効率は、夫々0.00841%、0.00774%であり、大幅に低減している。
図14(b)は、+10度、格子ピッチ100μm、波長550nmにおけるRCWA計算結果を示すグラフである。回折次数−48次の回折効率が0.00268%、回折次数−49次の回折効率が0.00280%である。一方、薄膜を有しない比較例においては、回折次数−48次の回折効率が0.0156%、回折次数−49次の回折効率が0.0155%であるため、本実施例では不要光の影響が大幅に減少していることになる。
(実施例5)
本実施例は、実施例1に対して、薄膜の屈折率nfを1.8、消衰係数kfを0.05、膜厚wfを80nmとしたものである。図15(a)は、入射角度0度、格子ピッチ100μm、波長550nmにおけるRCWA計算を行った結果を示すグラフである。設計次数である+1次回折光の回折効率は99.39%であり、薄膜を設けていない回折格子の場合の+1次回折光の回折効率98.71%より大きく向上している。
また、図15(a)から0次回折光および+2次回折光の回折効率は、夫々0.00400%、0.00394%である。一方、図6(b)の薄膜を設けていない回折格子の場合の0次回折光および+2次回折光の回折効率は、夫々0.00841%、0.00774%であり、大幅に低減している。
図15(b)は、+10度、格子ピッチ100μm、波長550nmにおけるRCWA計算結果を示すグラフである。回折次数−48次の回折効率が0.00104%、回折次数−49次の回折効率が0.000877%である。一方、薄膜を有しない比較例においては、回折次数−48次の回折効率が0.0156%、回折次数−49次の回折効率が0.0155%であるため、本実施例では不要光の影響が大幅に減少していることになる。
(実施例6)
本実施例は、実施例1乃至5と、回折格子を構成する材料が異なった場合である。回折格子11は、ITO微粒子を混合させたチオアクリル系紫外線硬化樹脂(nd=1.6925、νd=12.9、θgF=0.395、n550=1.7042)から構成されている。回折格子12は、K−VC89(K−VC89は株式会社住田光学ガラスの商品名、nd=1.8100、νd=41.0、θgF=0.567)から構成されている。薄膜の屈折率nfが2.2、幅wfが60nmである。
図16(a)は、入射角度0度、格子ピッチ100μm、波長550nmにおけるRCWA計算を行った結果を示すグラフである。設計次数である+1次回折光の回折効率は99.50%であり、薄膜を設けていない回折格子の場合の+1次回折光の回折効率99.14%より大きく向上している。
また、図16(a)から0次回折光および+2次回折光の回折効率は、夫々0.00126%、0.00127%である。一方、図17(a)の薄膜を設けていない回折格子の場合の0次回折光および+2次回折光の回折効率は、夫々0.00364%、0.00344%であり、大幅に低減している。
図16(b)は、+10度、格子ピッチ100μm、波長550nmにおけるRCWA計算結果を示すグラフである。回折次数−48次の回折効率が0.00171%、回折次数−49次の回折効率が0.00174%である。一方、図17(b)に示す薄膜を有しない比較例においては、回折次数−48次の回折効率が0.00612%、回折次数−49次の回折効率が0.0614%である。このため、本実施例では不要光の影響が大幅に減少していることになる。
以下、表1に上記実施例1乃至6の結果をまとめた表を示す。nd1は回折格子11のd線の屈折率、nd2は回折格子12のd線の屈折率である。nfは薄膜の屈折率、wfは薄膜の膜幅、である。
《第2の実施形態》
本発明は、上述した第1の実施形態に限定されるものでなく、例えば図18のように薄膜21を格子壁面のみではなく、連続して境界面全域に設けても良い。この場合、格子壁面部は上述した式の関係を満たし、かつ格子面部は反射防止機能を有していれば良い。境界面全域に薄膜を形成するため、容易かつ安価に回折光学素子を製造することができる。
例えば、回折格子12を製造した後、格子面から格子壁面全域に薄膜を真空蒸着等の物理蒸着手法やスピンコート法等により形成し、その後、回折格子11を形成すれば良いが、この方法に限定されない。さらに、界面全域に薄膜を設けることにより回折格子11と回折格子12の密着性を上げることもできる。格子面と格子壁面の屈折率、膜厚が異なっても良いため、製造方法に応じて格子面の反射防止機能と格子壁面のフレア低減機能を任意に設計することができる。
《第3の実施形態》
また、本発明は、2つの回折格子が光軸方向において密着する第1の実施形態(実施例1乃至6)に限定されるものでなく、図19のように離間させ、境界面全域に亘って異なる材料が設けられていても良い。この場合、2つの回折格子は異なる格子高さに、2つの薄膜の膜厚を異なる膜厚としても良く、回折格子を構成する材料や薄膜材料の選択性が広げることができる。
(変形例)
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、上述した薄膜は、単層で構成されるものに限らず、多層で構成されるものであっても良い。また、上述した実施例では、格子ピッチを100μmとしたが、80μm以上であれば良い。
10・・回折格子部、11・・第1の回折格子、12・・第2の回折格子、11a、12a・・格子面、11b、12b・・格子壁面、20・・薄膜

Claims (14)

  1. 格子面および格子壁面を備えた回折格子と、
    前記格子壁面に配置され、使用波長帯域の光に対して透明な薄膜と、
    を有し、
    前記薄膜のd線での屈折率をnfd、前記回折格子の材料のd線での屈折率をngd、前記薄膜の膜厚をwf、前記d線の波長をλdとするとき、以下の式を満たすことを特徴とする回折光学素子。
    0.05 < nfd−ngd < 0.5
    0.01 <(nfd−ngd)*wf/λd < 0.05
  2. 前記薄膜の前記d線での消衰係数をkfd、前記回折格子の材料の前記d線での消衰係数をkgdとするとき、以下の式を満たすことを特徴とする請求項1に記載の回折光学素子。
    0 ≦ kfd−kgd <0.5
  3. 前記薄膜が前記格子壁面から前記格子面まで連続して設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の回折光学素子。
  4. 前記回折格子による回折の設計次数が、+1次または−1次であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の回折光学素子。
  5. 前記回折格子の格子ピッチが、80μm以上であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の回折光学素子。
  6. 第1の格子面および第1の格子壁面を備えた第1の回折格子と、
    前記第1の回折格子の出射側にあって、第2の格子面および第2の格子壁面を備えた第2の回折格子と、
    前記第1の格子壁面、前記第2の格子壁面の内、少なくとも前記第2の格子壁面に配置され、使用波長帯域の光に対して透明な薄膜と、
    を有し、
    前記第1の回折格子、前記第2の回折格子の材料のd線での屈折率を夫々nd1、nd2とし、
    前記薄膜の前記d線での屈折率をnfd、前記薄膜の膜厚をwf、前記d線の波長をλdとするとき、
    以下の式を満たすことを特徴とする回折光学素子。
    nd1 < nd2
    0.05 < nfd−nd2< 0.5、
    0.01 <(nfd−nd2)*wf/λd < 0.05
  7. 前記第2の回折格子が前記第1の回折格子と密着接合し、かつ、前記第2の格子壁面が前記薄膜と接し、前記第1の回折格子および前記第2の回折格子が積層されることを特徴とする請求項6に記載の回折光学素子。
  8. 前記薄膜の前記d線での消衰係数をkfd、前記第2の回折格子の材料の前記d線での消衰係数をkgdとするとき、以下の式を満たすことを特徴とする請求項6または7に記載の回折光学素子。
    0 ≦ kfd−kgd <0.5
  9. 前記薄膜が前記第2の格子壁面から前記第2の格子面まで連続して設けられていることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載の回折光学素子。
  10. 前記第1の回折格子、前記第2の回折格子が離間し、夫々の格子高さをd1、d2とし、前記第1の回折格子、前記第2の回折格子の材料のアッべ数を夫々νd1、νd2とするとき、以下の式を満たすことを特徴とする請求項6乃至9のいずれか1項に記載の回折光学素子。
    νd1<25
    νd2>35
    0.940≦(n12×d1−n11×d2)/(m×λ)≦1.060
    ただしλは可視波長帯域内の任意の波長である。
  11. 前記回折格子による回折の設計次数が、+1次または−1次であることを特徴とする請求項6乃至10のいずれか1項に記載の回折光学素子。
  12. 前記回折格子の格子ピッチが、80μm以上であることを特徴とする請求項6乃至11のいずれか1項に記載の回折光学素子。
  13. 請求項1乃至12のうちいずれか1項に記載の回折光学素子と、前記回折光学素子の出射側に配置された絞りとを有することを特徴とする光学系。
  14. 請求項13に記載の光学系を有することを特徴とする光学機器。
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