JP2014190064A - 溢水評価装置、溢水評価方法、プログラム - Google Patents

溢水評価装置、溢水評価方法、プログラム Download PDF

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Abstract

【課題】降雨時の排水溝の溢水評価を行うことが可能な溢水評価装置等を提供する。
【解決手段】溢水評価装置1は、排水溝70を排水方向に沿って複数の領域jに分割し、評価対象の領域jの通水量として、自然斜面61の表層から領域jに流入する水量qsurface、j、降雨により領域jに流入する水量qrain、j、排水溝70の流下中、時間tにおいて領域jに存在している排水の水量qstock,jの和を取った総水量qin,jを算出する。そして、qin,jを排水溝70の領域jの通水限界量Qlimitと比較し、qin,jが通水限界量Qlimitを超える場合、領域jにおいて溢水が生じると判定する。
【選択図】図2

Description

本発明は、降雨時の排水溝の溢水評価を行う溢水評価装置等に関する。
山間部などでは、鉄道を敷設する際、自然斜面の上に盛土を設け、その上にレールを敷設することが多い。このような盛土は、降雨により崩壊等の危険があるので、鉄道の安全、安定輸送確保のため、雨量を指標とした運転規制が行われている。運転規制値は過去に発生した盛土崩壊時の雨量を参考に経験的に定められる。
しかしながら、このような運転規制値は、個々の盛土の現在状況に沿わないこともあり、近年、定量的かつ合理的な運転規制値の設定方法が求められている。その一つとして、地形をメッシュ化して個々のメッシュ条件から浸透流解析や安全解析を行って降雨に対する安全性を求める方法がある(例えば、特許文献1など)。
特開2008−121185号公報
盛土の崩壊には、降雨時に自然斜面の表層を流れて盛土に流入する水量が影響する。そこで、自然斜面と盛土の境界部に排水溝を設け、自然斜面からの水を排水して盛土に流入することを防ぐ。しかしながら、自然斜面の表層から流れこむ水量が多いと排水溝で処理しきれず盛土に流入し、盛土崩壊の恐れが生じる。
従って、降雨時の盛土の安全性の評価としては、排水溝による溢水の有無を検討することが望ましい。しかしながら、従来はこのような溢水評価を行うシステムが存在しなかった。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的は、降雨時の排水溝の溢水評価を行うことが可能な溢水評価装置等を提供することである。
前述した目的を達成するための第1の発明は、降雨による排水溝の溢水の有無を評価する溢水評価装置であって、排水溝を排水方向に沿って複数の領域に分割する領域分割手段と、評価対象の領域の上流側にある領域の水量を用いて、前記評価対象の領域を通過する通水量を算出する通水量算出手段と、前記通水量と通水限界量を用いて、溢水の有無の判定を行う溢水判定手段と、を具備することを特徴とする溢水評価装置である。
前記排水溝は、斜面に設けたものであり、少なくともいずれかの領域の水量は、排水溝の流下中計算時点において前記領域に存在している水量と、斜面の表層から前記領域に流入する水量と、降雨により前記領域に流入する水量との総和であることが望ましい。
排水溝の流下中計算時点において前記領域に存在している水量は、前記領域より排水溝の上流側に位置する領域に以前あった水量であることが望ましい。
また、前記排水溝は、斜面上の盛土の境界部分に設けたものであり、前記通水量は、排水溝の流下中、計算時点において前記領域に存在している水量を含み、当該水量は、前記領域より排水溝の上流側に位置する領域に以前あった水量であり、前記領域より排水溝の上流側に位置する領域に以前あった水量が、当該領域の通水限界量を超えていた場合、盛土の形状に応じて、前記排水溝の流下中、計算時点において前記領域に存在している水量として、前記通水限界量を用いるか、前記領域より排水溝の上流側に位置する領域に以前あった水量を用いるか、が定められることが望ましい。
さらに、評価対象の領域は、前記排水溝と横断排水工との接続箇所に対応し、前記通水限界量は、横断排水工について定めたものであることが望ましい。
さらに、前記溢水判定手段は、前記通水量と、前記評価対象の領域に貯留されている貯留水量との和を前記通水限界量と比較することにより、排水が横断排水工で処理しきれないと判定される場合、前記和と前記通水限界量の差を、前記評価対象の領域の貯留限界量とさらに比較し、溢水の有無の判定を行うことが望ましい。
また、前記貯留限界量は、前記接続箇所に設けた溜桝の貯留限界量を含むことが望ましい。
第2の発明は、降雨による排水溝の溢水の有無を評価する溢水評価装置が、排水溝を排水方向に沿って複数の領域に分割する領域分割ステップと、評価対象の領域の上流側にある領域の水量を用いて、所定の時間のあいだに前記評価対象の領域を通過する通水量を算出する通水量算出ステップと、前記通水量と通水限界量を用いて、溢水の有無の判定を行う溢水判定ステップと、を実行することを特徴とする溢水評価方法である。
第3の発明は、降雨による排水溝の溢水の有無を評価する溢水評価装置を、排水溝を排水方向に沿って複数の領域に分割する領域分割手段と、評価対象の領域の上流側にある領域の水量を用いて、所定の時間のあいだに前記評価対象の領域を通過する通水量を算出する通水量算出手段と、前記通水量と通水限界量を用いて、溢水の有無の判定を行う溢水判定手段と、して機能させるためのプログラムである。
本発明では、排水溝を複数の領域に分割し、降雨による水の流入や、斜面の表層からの水の流入によって刻々と変化する各領域の水量を用いて、評価対象の領域を通過する通水量を算出できる。これと通水限界量とを用いて排水溝の溢水の有無を判定でき、降雨時の溢水評価が容易にできる。さらに、排水溝から溢れた排水の扱いを盛土の形状に応じて定め、盛土の形状の違いを水量計算に反映させることもできる。
また、評価対象の領域を、排水溝と横断排水工を接続した接続箇所とし、通水限界量を横断排水工のものとすることで、排水溝に、排水を行うための横断排水工を設けた場合の溢水評価ができるようになる。このとき、溢水の有無は、横断排水工で通水量と貯留水量の和を処理しきれず、かつ通水限界量に対する超過量が接続箇所の貯留限界量を超えるかどうかで判定できる。貯留限界量は横断排水工に付帯する設備を考慮して定めることができ、例えば溜桝を設ける場合、溜桝の貯留限界量を含むものとできる。
本発明によれば、降雨時の排水溝の溢水評価を行うことが可能な溢水評価装置等を提供することができる。
溢水評価装置1のハードウエア構成を示す図 溢水評価方法を示すフローチャート 計算モデルを示す図 計算モデルを示す図 溢水評価方法について説明する図 計算モデルを示す図 溢水評価方法を示すフローチャート 計算モデルを示す図 計算モデルを示す図 溢水評価方法について説明する図
以下図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。
[第1の実施形態]
(1.溢水評価装置1)
図1に本発明の実施形態に係る溢水評価装置1のハードウエア構成について示す。図1に示すように、溢水評価装置1は、制御部11、記憶部12、入力部13、表示部14、通信部15等が、バス16を介して接続された一般的なコンピュータで実現できる。
制御部11は、CPU、ROM、RAM等で構成される。CPUは、記憶部12、ROM、記録媒体等に格納されるプログラムをRAM上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、バス16を介して接続された各部を駆動制御し、後述する処理を実現する。ROMは、不揮発性メモリであり、プログラムやデータ等を恒久的に保持している。RAMは、揮発性メモリであり、記憶部12、ROM、記録媒体等からロードしたプログラム、データ等を一時的に保持するとともに、制御部11が各種処理を行うために使用するワークエリアを備える。
記憶部12は、ハードディスク等であり、制御部11が実行するプログラム、プログラム実行に必要なデータ等が格納される。プログラムは、制御部11のCPUにより必要に応じて読み出されてRAMに移され、後述する各種の処理を行う手段として実行される。
入力部13は、データの入力を行い、例えば、タッチパネル、キーボード等の入力装置を有する。入力部13を介して、操作指示、動作指示、データ入力等を行うことができる。
表示部14は、液晶パネル等のディスプレイ装置、およびディスプレイ装置と連携してコンピュータのビデオ機能を実現するための論理回路等を有する。
通信部15は、ネットワークを用いた通信を媒介する通信インタフェースであり、ネットワークを介して他の装置と通信を行う。ネットワークは、有線、無線を問わない。
バス16は、各部間の制御信号、データ信号等の授受を媒介する経路である。
(2.溢水評価装置1による溢水評価方法)
次に、溢水評価装置1による排水溝の溢水評価方法について説明する。図2は、溢水評価方法の手順を示すフローチャートであり、各ステップは溢水評価装置1の制御部11が実行する処理である。
(S101:パラメータの入力受付)
まず、溢水評価装置1は、計算に必要なパラメータのユーザによる入力を受け付ける(S101)。パラメータは、排水溝条件、降雨、表層流、盛土の種類に関するものなどがある。排水溝条件は、排水溝の形状などである。降雨に関するものとしては、単位時間・単位面積当たりの降雨量の時間変化などがある。また、表層流に関するものとしては、自然斜面の表面を流れて排水溝に流入する水量の時間変化などがある。
S101によって、降雨時の排水溝の溢水評価モデルが設定される。このモデルの例について示したものが図3である。図3(a)はモデルを示す斜視図である。図3(b)は排水溝70の排水方向(長さ方向)に沿った断面図であり、図3(c)は排水溝70の幅方向に沿った断面図である。
図3(a)に示すように、モデルでは、自然斜面61の上に盛土60が形成され、自然斜面61上の盛土60との境界部分に沿って排水溝70が配置される。ここで、盛土とは、鉄道または道路の土構造物の一種であって、土を地盤面より高く盛り上げて造った土構造物をいうものとする。
排水溝70に流入する水量としては、降雨により流入する水量qrain、自然斜面61の表層から流入する水量qsurfaceがある。これらの水は排水溝70によって排水されるが、排水溝70によって処理しきれない場合、排水溝70を溢れて盛土60に流入し盛土崩壊の原因となる。
自然斜面61の表層から流入する水量qsurfaceは、例えば前記した特許文献1に記載の方法を用いて自然斜面61の表層を流れる水量を算出し入力とできる。また、降雨により流入する水量qrainはS101で入力した降雨量から算出できる。
図3(b)、(c)に示すように、排水溝条件としては、全長P(m)、排水方向の勾配I、水の時間Δt(分)当たりの流下距離L(m)、排水溝70の断面積A(m2)、径深R(m)、余裕率a、幅W(m)などがある。なお、Δtは時刻歴計算における計算間隔である。
図4は、盛土の種類について示す図である。図4(a)は自然斜面61上に1方向の斜面を有する盛土60が形成された例(以下、片切片盛という)であり、図4(b)は自然斜面61上に前後2方向の斜面を有する盛土60が形成された例(以下、傾斜地盤という)である。S101ではこのような盛土の種類についても入力する。上記のように、種類によって盛土の形状は異なる。
(S102:排水溝70の領域分割)
溢水評価装置1は、図5(a)に示すように、排水溝70を排水方向に沿って複数の領域jに分割し(S102)、これらを溢水評価対象の領域とする。jの値は下流側から順に1、2、3…とする。ここでは、La(m)ごとに領域分割するものとし、排水溝70の領域数Nを以下の式(1)で算出する。
N=P/La…(1)
なお、Laの値は様々に設定することが可能であり、例えば10mとできる。この値は予め定めておいてもよいし、S101で入力するようにしてもよい。
(S103:Δt分間で排水溝70の一領域が処理できる通水限界量Qlimitの算出)
次いで、溢水評価装置1は、Δt分間で排水溝70の一領域が処理できる通水限界量Qlimit(m3/Δt)を算出する(S103)。
S103では、まず下記のマニング式(2)を用いて、排水溝70の補正前の通水限界量q(m3/s)を算出する。
q=A・(1/n)・R2/3・I1/2…(2)
nは排水溝70の材料や形式などにより定まるマニングの粗度係数であり、S101で入力される。
次に、本実施形態では排水溝70における土砂等の堆積を考慮するため、下記の式(3)を用いて余裕率aによる通水限界量qの補正を行い、補正後の通水限界量q’(m3/s)を算出する。
q’=q/a…(3)
次いで、時間Δtの間に排水溝70を流れる通水限界量Qを以下の式(4)で算出する。
Q=Δt・60・q’…(4)
そして、下式(5)により、Δt分間で排水溝70の一領域が処理できる通水限界量Qlimitを算出する。
limit=La・Q/L…(5)
(S104:自然斜面61の表層から領域jに流入する水量qsurface、jの算出)
図2の説明に戻る。溢水評価装置1は、一方、時間tにおいて自然斜面61の表層から排水溝70の領域jに流入する水量qsurface、j(t)を算出する(S104)。
水量qsurface、j(t)については、前記したように、特許文献1の記載の方法を用いて、図5(a)に示すように自然斜面61をメッシュ分割して各メッシュの浸透流解析を行い、自然斜面61の表層から排水溝70に流入する水量qsurface、j(t)を算出できる。この際、各メッシュの幅は領域jの長さLaに合わせておき、排水溝70の領域jの上にあるメッシュから領域jに流入する水量qsurface、j(t)を算出する。ただし、水量qsurface、j(t)は、特許文献1以外の方法で定めることも可能である。
(S105:降雨により領域jに流入する水量qrain、jの算出)
図2の説明に戻る。溢水評価装置1は、時間tにおいて降雨により排水溝70の領域jに流入する水量qrain、j(t)を計算する(S105)。
S105では、以下の式(6)を用いて水量qrain、j(t)を算出することができる。
rain,j(t)=La・W・(U(t)/1000)・(Δt/60)…(6)
U(t)(mm/h)は時間tにおける降雨量であり、S101での入力より定まる。
(S106:領域jの通水量の算出)
次に、溢水評価装置1は、通水量として、時間tにおける領域jの総水量qin,jを算出する(S106)。
S106では、まず、排水溝70の流下中、時間tにおいて領域jに存在している排水の水量qstock,j(t)を算出する。
ここでは、以下の式(7−1)または式(7−2)を用いて、水量qstock,j(t)を算出することができる。
stock,j(t)=Qstock,j+L/La(t−Δt)…(7−1)
ただし、j+L/La>Nの時、qstock,j(t)=0…(7−2)
式(7−1)は、図5(b)に示すように、以前の時間t−Δtにおいて、領域jから距離Lだけ上流側の領域j+L/Laにあった水量である貯留水量Qstock,j+L/La(t−Δt)が、時間Δtのあいだに領域jに到達し、上記の水量qstock,j(t)となることを示している。貯留水量Qstock,j+L/La(t−Δt)については後述する。
また、式(7−2)は、領域jが排水溝70の上流側の端部近傍にあり、時間t−Δtにおいて領域jより上流側にある領域の排水が、時間tにおいて領域jより下流側に全て流れてしまっていることを示す。
貯留水量Qstock,j+L/La(t−Δt)は、盛土の種類を考慮して定められる。すなわち、
i)盛土の種類が片切片盛のケースでは、
stock,j+L/La(t−Δt)=qin,j+L/La(t−Δt)…(8−1)
ただし、qin,j+L/La(t−Δt)>Qlimitの時、
stock,j+L/La(t−Δt)=Qlimit…(8−2)
とする。また、
ii)盛土の種類が傾斜地盤のケースでは、
stock,j+L/La(t−Δt)=qin,j+L/La(t−Δt)…(9)
とする。
i)盛土の種類が片切片盛のケースにおける式(8−1)は、前記の貯留水量Qstock,j+L/La(t−Δt)が時間t−Δtにおける領域j+L/Laの総水量qin,j+L/La(t−Δt)と同じであることを示す。
また、式(8−2)は、上記の総水量qin,j+L/La(t−Δt)が通水限界量Qlimitを超えている場合、貯留水量Qstock,j+L/La(t−Δt)を通水限界量Qlimitとすることを示す。従って、前記の式(7−1)では、排水溝70の流下中、時間tにおいて領域jに存在している排水の水量qstock,j(t)として、この通水限界量Qlimitが用いられることになる。
これは、図6(a)に示すように、盛土60の種類が片切片盛の場合、通水限界量Qlimitを超えた排水71は盛土60側に流下し、排水溝70を流れる排水71の水量が通水限界量Qlimitとなることを表している。
一方、ii)盛土の種類が傾斜地盤のケースにおける式(9)は、通水限界量Qlimitを超えるかどうかに関わらず、前記の貯留水量Qstock,j+L/La(t−Δt)を、時間t−Δtにおける領域j+L/Laの総水量qin,j+L/La(t−Δt)とすることを示す。従って、前記の式(7−1)では、排水溝70の流下中、時間tにおいて領域jに存在している排水の水量qstock,j(t)として、時間t−Δtにおける領域j+L/Laの総水量qin,j+L/La(t−Δt)がそのまま用いられる。
これは、盛土60の種類が傾斜地盤の場合、図6(b)に示すように、通水限界量Qlimitを超えた排水71は盛土60の斜面と自然斜面61の間で排水溝70の上方にダムアップし、全ての排水71が排水溝70に沿って流下するとみなすためである。
最後に、溢水評価装置1は、時間tにおける領域jの通水量として、総水量qin,j(t)を、下式(10)により算出する。
in,j(t)=qrain,j(t)+qsurface、j(t)+qstock,j(t)…(10)
式(10)は、時間tにおける領域jの総水量qin,jが、前記の水量qstock,jに、S104、S105で求めた水量qsurface、j、水量qrain,jを加えた総和であることを示している。
(S107:溢水の有無の判定、S108:警告表示)
図2の説明に戻る。次いで、溢水評価装置1は、S106で算出した通水量である総水量qin,j(t)を、S103で算出した通水限界量Qlimitと比較し、領域jにおける溢水の有無を判定する(S107)。
S107では、qin,j(t)がQlimit以下の場合、溢水が無い(S107:N)としてS109の処理に移る。
一方、qin,j(t)がQlimitを超える場合、領域jにおいて排水溝70から溢水する(S107:Y)と判定し、これにより盛土崩壊の恐れがある旨を表示部14に警告表示するなどし(S108)、S109の処理に移る。なお、領域jから溢水する水量Qoverflow,j(t)は以下の式(11)で計算できる。
overflow,j(t)=qin,j(t)−Qlimit…(11)
(S109:時刻歴計算)
溢水評価装置1は、所定の計算終了時間となるまで(S109:N)、時間をt→t+ΔtとしてS104〜S108の処理を繰り返す。こうして時刻歴計算を行い、計算終了時間となると(S109:Y)、処理を終了する。
以上説明したように、本実施形態では、排水溝70を複数の領域jに分割し、降雨による水の流入や、自然斜面61の表層からの水の流入によって刻々と変化する各領域jの総水量qinを用いて、評価対象の領域jを通過する通水量Qinを算出できる。これと通水限界量Qとを用いて排水溝70の溢水の有無を判定でき、降雨時の溢水評価が容易にできる。また、排水溝70から溢れた排水の扱いを盛土の形状に応じて定め、盛土の形状の違いを水量計算に反映できる利点がある。
しかしながら、本発明がこれに限ることはない。例えば本発明は別の溢水評価モデルに対しても適用可能である。以下、本発明の第2の実施形態として、第1の実施形態と異なるモデルを用いて溢水評価を行う例を説明する。なお、第2の実施形態において、第1の実施形態と同様の点については、図等で同じ符号を付すなどして説明を省略する。
[第2の実施形態]
図7を参照して第2の実施形態の溢水評価方法について説明する。図7は溢水評価方法の手順を示すフローチャートであり、図の各ステップは溢水評価装置1の制御部11が実行する処理である。
(S201:パラメータの入力受付)
第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様、溢水評価装置1は、まず計算に必要なパラメータのユーザによる入力を受け付ける(S201)。パラメータは、排水溝条件、降雨、表層流に関するものの他、後述する横断排水工条件などがある。
前記したように、本実施形態は、溢水評価を行うモデルにおいて第1の実施形態と異なる。このモデルを図8、図9に示す。図8(a)はモデルを示す斜視図である。図8(b)は排水溝70の排水方向(長さ方向)に沿った断面図であり、図8(c)は排水溝70の幅方向に沿った断面図である。図9(a)は横断排水工71の排水方向(長さ方向)に沿った断面図であり、図9(b)は横断排水工71の幅方向に沿った断面図である。
図8(a)に示すように、第2の実施形態では、排水溝70の途中に横断排水工71が設けられる。また、排水溝70において、横断排水工71との接続箇所70aには溜桝72が設けられている。降雨により排水溝70に流入する水量qrain、自然斜面61の表層から排水溝70に流入する水量qsurfaceについては第1の実施形態と同様であるが、これらの水は、排水溝70に流入した後、上記の接続箇所70aに向かって流れ、横断排水工71によって排水される。本実施形態では、この接続箇所70aにおいて溢水の有無を評価する。
図8(b)、(c)に示すように、排水溝条件としては、第1の実施形態と同様、全長P(m)、排水方向の勾配I、水の時間Δt(分)当たりの流下距離L(m)、排水溝70の断面積A(m2)、径深R(m)、余裕率a、幅W(m)などがある。これらの値のうち、必要なものは接続箇所70aの両側で値を定める。例えば図の例では、全長P、流下距離L、勾配Iについては、接続箇所70aの両側にてそれぞれ定められる。接続箇所70aの両側における各値を添え字1、2で表す。
また、図9(a)、(b)に示すように、横断排水工条件としては、排水方向の勾配I横断、横断排水工71の断面積A横断(m2)、径深R横断(m)、余裕率a横断などがある。
さらに、本実施形態では、横断排水工71との接続箇所70aにおける排水溝70および溜桝72について、それぞれ貯留限界量Q排水溝、Q溜桝が定められる(図9(a)参照)。貯留限界量Q排水溝、Q溜桝は、それぞれ接続箇所70aにおける排水溝70、溜桝72の体積である。
(S202:横断排水工71の通水限界量Q横断の算出)
図7の説明に戻る。S201においてパラメータが入力されると、溢水評価装置1は、横断排水工71の時間Δtあたりの通水限界量Q横断(m3/Δt)を算出する(S202)。
S202では、まず下記のマニング式(12)を用いて、横断排水工71の補正前の通水限界量q横断(m3/s)を算出する。
横断=A横断・(1/n横断)・R横断 2/3・I横断 1/2…(12)
横断は横断排水工71の材料や形式などにより定まるマニングの粗度係数であり、S201で入力される。
次に、横断排水工71の土砂等の堆積を考慮するため、下記の式(13)を用いて余裕率a横断による通水限界量q横断の補正を行い、補正後の通水限界量q横断’(m3/s)を算出する。
横断’=q横断/a横断…(13)
そして、時間Δtの間に横断排水工71を流れる通水限界量Q横断を以下の式(14)で算出する。
横断=Δt・60・q横断’…(14)
(S203:排水溝70の領域分割)
一方、溢水評価装置1は、図10(a)に示すように、排水溝70を排水方向に沿って複数の領域k、k、jに分割する(S203)。この時、横断排水工71との接続箇所70aを領域j(評価対象の領域)とし、領域jの両側の領域をk、kとして下流側(領域j側)から順にk=1、2、3…、k=1、2、3…と定める。本実施形態でも、領域k、k、jはLa(m)ごとに分割し、接続箇所70aの両側における領域数N、Nを以下の式(15)で算出する。
=P/La、N=P/La…(15)
(S204:自然斜面61の表層から領域k、k、jに流入する水量qsurface、k1、qsurface、k2、qsurface、jの算出)
図7の説明に戻る。次に、溢水評価装置1は、前記のS104と同様にして、時間tにおいて自然斜面61の表層から領域k、k、jに流入する水量qsurface、k1(t)、qsurface、k2(t)、qsurface、j(t)を算出する(S204)。
(S205:降雨により領域k、k、jに流入する水量qrain、k1、qrain、k2、qrain, jの算出)
また、溢水評価装置1は、前記のS105と同様にして、時間tにおいて降雨により領域k、k、jに流入する水量qrain、k1(t)、qrain、k2(t)、qrain, j(t)を算出する(S205)。
(S206:領域jの通水量Qin,jの算出)
次に、溢水評価装置1は、時間Δtのあいだに領域jを通過し横断排水工71によって排水される通水量Qin,jを算出する(S206)。
S206では、まず、下式(16−1)〜(16−3)を用いて、排水溝70の流下中、時間tにおいて領域k、kに存在している排水の水量qstock,k1(t)、qstock,k2(t)を算出する。
stock,k1(t)=qin,k1+L/La(t−Δt)、qstock,k2(t)=qin,k2+L/La(t−Δt)…(16−1)
ただし、
+L/La>N1の時、qstock,k1(t)=0…(16−2)
+L/La>N2の時、qstock,k2(t)=0…(16−3)
式(16−1)は、以前の時間t−Δtにおいて、領域k、kから距離Lだけ上流側の領域k+L/La、k+L/Laにあった総水量が、時間Δtのあいだに領域k、kに到達することを示している。
式(16−2)、(16−3)は、それぞれ、領域k、kが排水溝70の上流側の端部近傍にあり、時間t−Δtにおいて領域k、kより上流側にある領域の排水が、時間tにおいて領域k、kより下流側に全て流れてしまっていることを示す。
また、排水溝70の流下中、時間tにおいて領域jに存在している排水の水量qstock,j(t)については、領域jに両側から排水が流れることから、これらの排水のそれぞれについて水量を算出し、この和をqstock,j(t)としておく。これを下式(17−1)〜(17−4)で示す。
stock,j(t)=qin,L1/La(t−Δt)+qin,L2/La(t−Δt)…(17−1)
ただし、
/La>N、L/La>Nの時、
stock,j(t)=0…(17−2)
/La≦N、L/La>Nの時、
stock,j(t)=qin,L1/La(t−Δt)…(17−3)
/La>N、L/La≦Nの時、
stock,j(t)=qin,L2/La(t−Δt)…(17−4)
続いて、時間tにおける領域k、k、jの総水量qin,k1(t)、qin,k2(t)、qin,j(t)を、以下の式(18)、(19)、(20)を用いて算出する。
in,k1(t)=qsurface、k1(t)+qrain, k1(t)+qstock, k1(t)…(18)
in,k2(t)=qsurface、k2(t)+qrain, k2(t)+qstock, k2(t)…(19)
in,j(t)=qsurface、j(t)+qrain, j(t)+qstock,j(t)…(20)
そして、時間Δtのあいだに排水溝70の領域jを通過し横断排水工71によって排水される通水量Qin,j(t)を、以下の式(21)を用いて算出する。
Figure 2014190064
式(21)は、図10(b)に示すように、時間Δtのあいだに領域jを通過し横断排水工71で排水される通水量Qin,j(t)が、領域jの総水量qin,j(t)と、領域k=1から領域k=L/La−1までの各領域の総水量qin,k1の和と、領域k=1から領域k=L/La−1までの各領域の総水量qin,k2の和とを加えたものであることを示している。
(S207:横断排水工71による排水処理の可否判定、S208:領域jの貯留水量Qstock,jの算出)
図7の説明に戻る。次に、溢水評価装置1は、S206で算出した通水量Qin,j(t)と時間t−Δtにおいて領域jに貯留されている貯留水量Qstock,j(t−Δt)の和を、S202で算出した横断排水工71の通水限界量Q横断と比較し、横断排水工71で排水を全て処理できるか否かの判定を行う(S207)。貯留水量Qstock,jについては後述する。
通水量Qin,j(t)と貯留水量Qstock,j(t−Δt)の和が通水限界量Q横断以上である、すなわち下式(24−1)
in,j(t)+Qstock,j(t−Δt)≧Q横断…(24−1)
を満たす場合、排水が横断排水工71で処理しきれないと判定し(S207:N)、S209の処理に移る。
一方、S207において、通水量Qin,j(t)と貯留水量Qstock,j(t−Δt)の和が通水限界量Q横断未満である、すなわち下式(24−2)
in,j(t)+Qstock,j(t−Δt)<Q横断…(24−2)
を満たす場合、排水が全て横断排水工71で処理されると判定し(S207:Y)、時間tにおける領域jの貯留水量Qstock,j(t)を0として(S208)、S212の処理に移る。
(S209:溢水の有無の判定、S210:領域jの貯留水量Qstock,jの算出、S211:警告表示)
S209において、溢水評価装置1は、通水限界超過量としてQin,j(t)+Qstock,j(t−Δt)−Q横断の値を算出し、これを排水溝70、溜桝72の貯留限界量Q排水溝、Q溜桝と比較することで、領域jにおける溢水の有無の判定を行う(S209)。
in,j(t)+Qstock,j(t−Δt)−Q横断の値が排水溝70、溜桝72の貯留限界量Q排水溝、Q溜桝の和未満である場合、すなわち下式(25−1)
in,j(t)+Qstock,j(t−Δt)−Q横断<Q排水溝+Q溜桝…(25−1)
を満たす場合、領域jにおける溢水は無い(S209:N)と判定する。
そして、横断排水工71で処理しきれなかった水量は横断排水工71に付帯する排水溝70、溜桝72に貯留されるとして、下式(23)にて、時間tにおいて領域jに貯留される貯留水量Qstock,j(t)を算出し(S210)、S212の処理に移る。
stock,j(t)=Qin,j(t)+Qstock,j(t−Δt)−Q横断…(26)
一方、通水限界超過量Qin,j(t)+Qstock,j(t−Δt)−Q横断の値が排水溝70、溜桝72の貯留限界量Q排水溝、Q溜桝の和以上の場合、すなわち、下式(25−2)
in,j(t)+Qstock,j(t−Δt)−Q横断≧Q排水溝+Q溜桝…(25−2)
を満たす場合、横断排水工71で処理しきれなかった排水が横断排水工71に付帯する排水溝70、溜桝72から溢水すると判定し(S209:Y)、これにより盛土崩壊の恐れがある旨を表示部14に警告表示するなどし(S211)、S212の処理に移る。なお、以降の時刻歴計算を行う場合は、Qstock,j(t)の値を、例えば、下式(27)で更新しておくことができる。
stock,j(t)=Q排水溝+Q溜桝…(27)
(S212:時刻歴計算)
溢水評価装置1は、所定の計算終了時間となるまで(S212:N)、時間をt→t+ΔtとしてS204〜S211の処理を繰り返す。こうして時刻歴計算を行い、計算終了時間となると(S212:Y)、処理を終了する。
このように、第2の実施形態では、評価対象の領域jを横断排水工71の接続箇所70aとし、横断排水工71の通水限界量Q横断を用いることで、排水溝70に、排水を行うための横断排水工71を設けた場合の溢水評価ができるようになり、第1の実施形態と同様の効果が得られる。このとき、溢水の有無は、横断排水工71で通水量Qinと貯留水量Qstockの和を処理しきれず、かつ通水限界量Q横断に対する超過量が接続箇所70aの貯留限界量を超えるかどうかで判定できる。貯留限界量は横断排水工71に付帯する設備を考慮して定めることができ、溜桝72を設ける場合、溜桝72の貯留限界量Q溜桝を含むものとできる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
1………溢水評価装置
60………盛土
61………自然斜面
70………排水溝
71………横断排水工
72………溜桝

Claims (9)

  1. 降雨による排水溝の溢水の有無を評価する溢水評価装置であって、
    排水溝を排水方向に沿って複数の領域に分割する領域分割手段と、
    評価対象の領域の上流側にある領域の水量を用いて、前記評価対象の領域を通過する通水量を算出する通水量算出手段と、
    前記通水量と通水限界量を用いて、溢水の有無の判定を行う溢水判定手段と、
    を具備することを特徴とする溢水評価装置。
  2. 前記排水溝は、斜面に設けたものであり、
    少なくともいずれかの領域の水量は、排水溝の流下中計算時点において前記領域に存在している水量と、斜面の表層から前記領域に流入する水量と、降雨により前記領域に流入する水量との総和であることを特徴とする請求項1記載の溢水評価装置。
  3. 排水溝の流下中、計算時点において前記領域に存在している水量は、前記領域より排水溝の上流側に位置する領域に以前あった水量であることを特徴とする請求項2に記載の溢水評価装置。
  4. 前記排水溝は、斜面上の盛土の境界部分に設けたものであり、
    前記通水量は、排水溝の流下中、計算時点において前記領域に存在している水量を含み、
    当該水量は、前記領域より排水溝の上流側に位置する領域に以前あった水量であり、
    前記領域より排水溝の上流側に位置する領域に以前あった水量が、当該領域の通水限界量を超えていた場合、
    盛土の形状に応じて、
    前記排水溝の流下中、計算時点において前記領域に存在している水量として、前記通水限界量を用いるか、前記領域より排水溝の上流側に位置する領域に以前あった水量を用いるか、が定められることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の溢水評価装置。
  5. 評価対象の領域は、前記排水溝と横断排水工との接続箇所に対応し、
    前記通水限界量は、横断排水工について定めたものであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の溢水評価装置。
  6. 前記溢水判定手段は、
    前記通水量と、前記評価対象の領域に貯留されている貯留水量との和を前記通水限界量と比較することにより、排水が横断排水工で処理しきれないと判定される場合、
    前記和と前記通水限界量の差を、前記評価対象の領域の貯留限界量とさらに比較し、溢水の有無の判定を行うことを特徴とする請求項5に記載の溢水評価装置。
  7. 前記貯留限界量は、前記接続箇所に設けた溜桝の貯留限界量を含むことを特徴とする請求項6に記載の溢水評価装置。
  8. 降雨による排水溝の溢水の有無を評価する溢水評価装置が、
    排水溝を排水方向に沿って複数の領域に分割する領域分割ステップと、
    評価対象の領域の上流側にある領域の水量を用いて、所定の時間のあいだに前記評価対象の領域を通過する通水量を算出する通水量算出ステップと、
    前記通水量と通水限界量を用いて、溢水の有無の判定を行う溢水判定ステップと、
    を実行することを特徴とする溢水評価方法。
  9. 降雨による排水溝の溢水の有無を評価する溢水評価装置を、
    排水溝を排水方向に沿って複数の領域に分割する領域分割手段と、
    評価対象の領域の上流側にある領域の水量を用いて、所定の時間のあいだに前記評価対象の領域を通過する通水量を算出する通水量算出手段と、
    前記通水量と通水限界量を用いて、溢水の有無の判定を行う溢水判定手段と、
    して機能させるためのプログラム。
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