JP2014194530A - 光学素子 - Google Patents

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貴章 村上
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哲平 小西
Kensuke Fujii
健輔 藤井
Akihiko Yoshihara
明彦 吉原
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Abstract

【課題】良好な反射防止機能を有しながら、耐擦傷性にも優れる光学素子を提供する。
【解決手段】透光性材料からなる光学部材10と、光学部材10の表面に形成された、スティフィネス定数C33が13×1010N/m2以上の誘電体材料からなる高屈折率層21と、Siを含む誘電体材料からなる低屈折率層22とを交互に積層してなる反射防止層20と、反射防止層20上に形成された、下記一般式(A)で表わされるフッ素含有有機化合物を含む防汚コーティング層30と
を備える光学素子。
Rf−R1−Z …(A)
[式(A)中、R1はエーテル結合を含む炭素数2〜12のアルキレン基であり、Zはケイ素原子を含有する1価の有機基、または1価の環状オルガノポリシロキサン基であり、Rfはパーフルオロアルキル基である。]
【選択図】図1

Description

本発明は、光学素子に関する。
光学機器に用いられるレンズやカバーガラス等の光学素子は、ガラス等の光を透過する透明な材料により形成されているが、所定の屈折率を有しているため、表面または裏面において約8%の光が反射し、その反射分、光の透過率が低下する。このため、一般に、光学素子の表面または裏面に反射防止層を形成して、光の反射を抑制するととともに、光の透過率を高めている(例えば、特許文献1参照)。ここで、光学機器に用いられるカバーガラスとはカメラ等の撮像機器に使われる光学素子の中で最も外側に配置されるものをいう。
しかしながら、反射防止層を設けた光学素子は、耐擦傷性に乏しく、表面が傷つきやすいという問題があった。すなわち、一般に、反射防止層は、誘電体等からなる低屈折率材料層と高屈折率材料層を交互に積層することにより形成されており、最表面となる最上層は低屈折率材料、例えばフッ化マグネシウム、酸化ケイ素等で構成されている。しかしながら、フッ化マグネシウム等のフッ化物は、柔らかく、擦れると傷つきやすい。また、酸化ケイ素もフッ化物程ではないが、擦れると傷つきやすい。表面に傷がつくと、光学素子の光学特性は大きく低下し、意匠性も低下する。
近時、携帯電話や携帯端末等の電子機器にも、撮像装置が搭載されデジタルカメラ等のカメラ機能を有するものがあり、レンズやカバーガラス等の光学素子が用いられている。このような電子機器、なかでも携帯電話や携帯端末等においては、その使用形態から、光学素子の表面は様々なものと頻繁に接触する。このため、反射防止層を設けた光学素子の表面は傷つきやすかった。
特開平7−81977号公報
本発明は、良好な反射防止機能を有しながら、耐擦傷性にも優れる光学素子の提供を目的とする。
本発明の一態様に係る光学素子は、透光性材料からなる光学部材と、前記光学部材の表面に形成された、スティフィネス定数C33が13×1010N/m2以上の誘電体材料からなる高屈折率層と、Siを含む誘電体材料からなる低屈折率層とを交互に積層してなる反射防止層と、前記反射防止層上に形成された、下記一般式(A)で表わされるフッ素含有有機化合物を含む防汚コーティング層とを備えることを特徴としている。

Rf−R1−Z …(A)

[式(A)中、R1はエーテル結合を含む炭素数2〜12のアルキレン基であり、Zは下記一般式(B1)で表わされるケイ素原子を含有する1価の有機基、または下記一般式(B2)で表わされる1価の環状オルガノポリシロキサン基であり、Rfは下記一般式(D)で表わされるパーフルオロアルキル基である。]

−Si(Ra)3−kXk …(B1)

[式(B1)中、Xは互いに独立にアルコキシ基、オキシアルコキシ基、アシロキシ基、アルケニルオキシ基、及びハロゲン基からなる群より選ばれる基であり、Raは炭素数1〜4のアルキル基またはフェニル基であり、kは2または3である。]

−Sin(Rb)2nー1On …(B2)

[式(B2)中、Rbは互いに独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基またはフェニル基であって、その少なくとも1つは下記一般式(C)で表わされる基に置換されており、nは2〜40の整数である。

−Rc−Si(Ra)3−kXk …(C)

(式(C)中、Rcは炭素数1〜5のアルキレン基であり、Ra、X及びkは式(B1)における定義と同じである。)]

F−(CF2CF2O)r−(CF2O)s− …(D)

[式(D)中、r及びsはそれぞれ1〜200の整数であり、かつr+s(平均)は2〜200である。]
本発明によれば、良好な表面反射防止機能を有しながら、耐擦傷性にも優れる光学素子を提供できる。
本発明の一実施形態の光学素子を示す断面図である。 例1の光学素子を作製する際に設計した反射率特性図である。 例2の光学素子を作製する際に設計した反射率特性図である。
以下、本発明の実施の形態について説明する。説明は図面に基づいて行うが、それらの図面は単に図解のために提供されるものであり、本発明はそれらの図面に何ら限定されない。また、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、厚みの比率等は実際のものとは異なることに留意されたい。さらに、以下の説明において、同一もしくは略同一の機能及び構成を有する構成用途については、同一符号を付し、重複する説明は省略する。
図1は本発明の一実施形態の光学素子を示す断面図である。
図1に示すように、本実施形態の光学素子1は、光学部材10と、光学部材10の表面の少なくとも一部に形成された反射防止層20と、反射防止層20上に設けられた防汚コーティング層30とを備える。
(光学部材)
光学部材10は、ガラス等の光を透過する材料により形成されており、例えば、レンズや基板、カバー部材等である。ガラスの場合、基材強度の観点からは、化学強化ガラス等の強化ガラスで形成されていることが好ましい。
光学部材10の形成材料として好ましい化学強化ガラスとしては、例えば、以下の組成のものが挙げられる。
(1)酸化物基準のモル百分率表示で、SiO262〜68%、Al2O36〜12%、MgO7〜13%、Na2O9〜17%、K2O0〜7%を含み、但し、Na2O及びK2Oの含有量の合計からAl2O3含有量を減じた差が10%未満であり、ZrO2を含有する場合、その含有量が0.8%以下である化学強化ガラス。
(2)酸化物基準のモル百分率表示で、SiO2を60〜70%、Al2O3を6〜14%、B2O3を0〜15%、Li2Oを0〜15%、Na2Oを0〜20%、K2Oを0〜10%、MgOを0〜8%、CaOを0〜10%、ZrO2を0〜5%、SnO2を0〜1%、CeO2を0〜1%、As2O3を50ppm未満、Sb2O3を50ppm未満含有し、但し、12%≦Li2O+Na2O+K2O≦20%および0%≦MgO+CaO≦10%である化学強化ガラス。
(3)酸化物基準のモル百分率表示で、SiO2を63.0〜67.5%、Al2O3を9.5〜12.0%、Na2Oを8.5〜15.5%、K2Oを2.5〜4.0%、MgOを3.0〜9.0%、Σ(CaO+SrO+BaO+ZnO)を0〜2.5%、TiO2を0.5〜1.5%、CeO2を0.02〜0.5%、As2O3を0〜0.35%、SnO2を0〜1.0%、F2を0.05〜2.6%含有し、但し、SiO2とAl2O3の含有量の比が5.3〜6.85、Na2OとK2Oの含有量の比が3.0〜5.6、Al2O3とK2Oの含有量の比が2.8〜3.6、Al2O3とTiO2+CeO2の含有量の比が7.6〜18.5である化学強化ガラス。
市販の化学強化ガラスを使用することもできる。光学部材10の形成材料として好ましい化学強化ガラスの市販品を例示すると、例えば、ドラゴントレイルガラス(旭硝子(株)製 商品名)、ゴリラガラス(コーニング社製 商品名)、ショットセンセーション カバー(ショット社製 商品名)、ショットセンセーション カバー スリーディー(ショット社製 商品名)等が挙げられる。
なお、光学部材10は、前述したように、光を透過する材料により形成されていればよく、例えば、ソーダガラス等の汎用ガラス、石英ガラス、水晶ガラス、サファイアガラス等の他、アクリルやポリカーボネート等の樹脂材料で形成されていてもよい。これらの材料の中でも、サファイアガラスは、基材の強度の観点から、好ましい。
また、光学部材10は、ガラス等からなる基材の表面乃至裏面に、紫外・赤外光反射膜等の光学機能を有する膜が形成されていてもよい。
(反射防止層)
反射防止層20は、高屈折率層21と低屈折率層22とを交互に積層して構成される。
高屈折率層21を構成する材料としては、スティフィネス定数C33が13×1010N/m2以上、好ましくは20×1010N/m2以上、より好ましくは30×1010N/m2以上の誘電体材料が使用される。スティフィネス定数C33が13×1010N/m2未満では、耐擦傷性が低下する。具体的には、チタニア(TiO2)、ジルコニア(ZrO2)、五酸化タンタル(Ta2O5)、五酸化ニオブ(Nb2O5)、窒化ケイ素(Si3N4)、アルミナ(Al2O3)等が使用される。高屈折率層21を構成する材料は、屈折率が1.7以上が好ましく、2.0以上がより好ましい。
低屈折率層22を構成する材料としては、Siを含む誘電体材料が使用される。具体的には、酸化ケイ素(SiO2)、SnとSiの混合酸化物(SnO2/SiO2)、ZrとSiとの混合酸化物(ZrO2/SiO2)、AlとSiとの混合酸化物(Al2O3/SiO2)等が使用される。低屈折率層21を構成する材料は、屈折率が1.6以下が好ましく、1.2〜1.6がより好ましい。ここで、屈折率は、波長600nmの光に対する屈折率をいう。
表1に、高屈折率層21及び低屈折率層22に使用される材料の具体例を、それぞれのスティフィネス定数C33及び屈折率とともに示す。
Figure 2014194530
高屈折率層21及び低屈折率層22は、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンビーム法、イオンプレーティング法、CVD法等によって形成できる。なかでも、スパッタリング法や、真空蒸着法、イオンプレーティング法は生産性の観点から好ましい。高屈折率層21及び低屈折率層22は構造がアモルファスであることが好ましい。
なお、図1の例では、高屈折率層21と低屈折率層22が2層ずつ、すなわち高屈折率層21a、低屈折率層22a、高屈折率層21b、低屈折率層22bの順に積層されているが、高屈折率層21と低屈折率層22が交互に積層されていれば、積層数は特に限定されるものではない。但し、最上層には、低屈折率層22が配置されることが好ましい。
(防汚コーティング層)
防汚コーティング層30は、AFP(Anti Finger Print)と呼ばれるものであり、下記一般式(A)で表わされるフッ素含有有機化合物で構成される。

Rf−R1−Z …(A)
上記式(A)において、R1はエーテル結合を含む炭素数2〜12のアルキレン基であり、例えば、−CH2OCH2CH2−、−CH2OCH2CH2CH2−等が挙げられる。これらのなかでも、−CH2OCH2CH2CH2−が好ましい。
上記式(A)において、Zは下記一般式(B1)で表わされるケイ素原子を含有する1価の有機基、または下記一般式(B2)で表わされる1価の環状オルガノポリシロキサン基である。

−Si(Ra)3−kXk …(B1)

−Sin(Rb)2nー1On …(B2)
式(B1)において、Xは互いに独立にアルコキシ基、オキシアルコキシ基、アシロキシ基、アルケニルオキシ基、及びハロゲン基からなる群より選ばれる基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基等のオキシアルコキシ基、アセトキシ基等のアシロキシ基、イソプロペノキシ基等のアルケニルオキシ基、クロル基、ブロモ基、ヨード基等のハロゲン基等が挙げられる。これらのなかでも、メトキシ基、エトキシ基、イソプロペノキシ基、クロル基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。
式(B1)において、Raは炭素数1〜4のアルキル基またはフェニル基であり、これらのなかでもメチル基が好ましい。kは2または3であり、反応性、基材に対する密着性等の観点から、3が好ましい。
式(B2)において、Rbは互いに独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基またはフェニル基であって、その少なくとも1つは下記一般式(C)で表わされる基に置換されており、nは2〜40、好ましくは2〜10の整数である。

−Rc−Si(Ra)3−kXk …(C)
式(C)において、Rcは炭素数1〜5のアルキレン基であり、好ましくはエチレン基である。Ra、X及びkは式(B1)におけるものと同じである。
上記式(A)において、Rfは下記一般式(D)で表わされるパーフルオロアルキル基である。

F−(CF2CF2O)r−(CF2O)s− …(D)

式(D)において、r及びsはそれぞれ1〜200の整数であり、かつr+s(平均)は2〜200である。r+s(平均)は好ましくは10〜100であり、より好ましくは20〜60であり、より一層好ましくは35〜45である。また、r/sはパーフルオロエーテル鎖が適度な柔軟性を有する範囲である0.80〜0.95であることが好ましい。
防汚コーティング層30の形成材料としては、特に、下記一般式(A−1)および(A−2)で表される化合物が好ましい。これらの化合物を、前述した反射防止層に組み合わせることで、光学素子に高い耐擦傷性を付与できる。なお、これらの化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、混合して用いてもよい。
Figure 2014194530
上記一般式(A−1)および(A−2)中、Meはメチル基を示す。また、r及びsは前記と同じである。
防汚コーティング層30の形成にあたっては、上記フッ素含有有機化合物を真空槽内で蒸発させて、反射防止層20の表面に付着させる真空蒸着法(乾式法)や、上記フッ素含有有機化合物を有機溶剤に溶解させ、所定の濃度になるように調整し、反射防止層20の表面に塗布する方法(湿式法)等を用いることができる。後述の実施例で具体的に記載するように、生産性等の観点から、真空蒸着法による形成が好ましい。
なお、防汚コーティング層30の厚さは、15nm以下が好ましい。厚さが15nmを超えると、ヘーズ(白濁)値が大きくなるおそれがある。但し、あまり薄いと、耐擦傷性が低下することから、1nm以上がより好ましく、2〜10nmがより一層好ましい。
本実施形態の光学素子1においては、透光性材料からなる光学部材10上に、スティフィネス定数C33が13×1010N/m2以上という特定の誘電体材料からなる高屈折率層21と、Siを含む誘電体材料からなる低屈折率層22とを交互に積層してなる反射防止層20を設け、その上に前述の一般式(A)で表わされるフッ素含有有機化合物を含む防汚コーティング層を設けたことにより、良好な表面反射防止機能を有しながら、優れた耐擦傷性を具備できる。
以上、本発明の一実施形態及びその変形例について説明してきたが、本発明は、以上説明した実施の形態の記載内容に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることはいうまでもない。
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は当然にこれらの実施例に限定されない。なお、例1−2は実施例、例3−4は比較例であり、いずれの例においても、基材となる光学部材には化学強化されたガラスを用いた。
[例1]
(基材の前処理)
光学部材を、アルカリ洗浄、純水洗浄、乾燥の順に前処理した。
この光学部材を薄膜形成装置の基板ホルダーにセットした。
(反射防止層の形成)
薄膜形成装置内部に、アルゴンガスに10体積%の酸素ガスを混合した混合ガスを導入しながら、酸化ニオブターゲット(AGCセラミックス(株)製、商品名 NBOターゲット)を用いて、圧力0.3Pa、周波数20kHz、電力密度3.8W/cm2、反転パルス幅5μsecの条件でパルススパッタリングを行い、光学部材上に、厚さ12nm、屈折率(n)2.3のニオブ酸化物(Nb2O5)からなる高屈折率層(第1層)を形成した。
次いで、装置内部に、アルゴンガスに40体積%の酸素ガスを混合した混合ガスを導入しながら、シリコンターゲットを用いて、圧力0.3Pa、周波数20kHz、電力密度3.8W/cm2、反転パルス幅5μsecの条件でパルス幅5μsecの条件でパルススパッタリングを行い、高屈折率層(第1層)上に、厚さ35nm、屈折率(n)1.45の酸化ケイ素(SiO2)からなる低屈折率層(第2層)を形成した。
次いで、低屈折率層(第2層)上に、上記高屈折率層(第1層)の場合と同様の材料を用いて同様の形成方法により、厚さ115nmの高屈折率層(第3層)を形成し、さらに、その上に、上記低屈折率層(第2層)の場合と同様の材料を用いて同様の形成方法により、厚さ85nmの低屈折率層(第4層)を形成し、4層構造の反射防止層を形成した。
(防汚コーティング層の形成)
次いで、反射防止層を形成した光学部材を、基体を搬送する搬送手段、前室、真空チャンバー、基体取り出し室を有し、真空チャンバー内の上流側に直流電源に接続されたリニアイオンソースを設置し、下流側に縦型蒸着源を設置した縦型インライン成膜装置((株)アルバック製、型名:SDP−850VT)の前室にセットし、光学部材の搬送速度15mm/秒、真空チャンバー内の圧力0.07Paの条件で、低屈折率層(第4層)上に、一般式(A−2)(但し、r+s(平均)=40、r/s=0.80〜0.95)で示すフッ素含有有機化合物(フッ素含有有機化合物Aと表記)からなる膜を成膜し、厚さ2.4nmの防汚コーティング層を形成した。
なお、真空蒸着前の光学部材に対し行うリニアイオンソースによる光学部材の表面クリーニングでは、リニアイオンソースの導入ガスとして酸素ガスのみを用いた。導入ガス量はリニアイオンソースが安定に放電する最低流量とした。600Wの電力を直流電源によりリニアイオンソースへ供給し、生成したプラズマの正イオンビームを光学部材の被処理面に照射した。リニアイオンソースの前面と光学部材の被処理面との距離を50mmとした。
また、膜厚の管理は、水晶振動子モニタで膜厚を測定しながら成膜速度を調整しつつ蒸着することで行い、成膜後、最終的な膜厚を、分光エリプソメータ((株)堀場製作所製、装置名 UVISEL)により測定した。
防汚コーティング層形成用のフッ素含有有機化合物を収容した加熱容器を240℃程度まで加熱し、240℃程度に到達した後、温度が安定するまで10分間、その状態を保持した。その後、リニアイオンソースで表面処理した光学部材を所定の位置まで搬送し、蒸着を行った。
その後、縦型インライン成膜装置から取り出された反射防止層および防汚コーティング層が形成された光学部材を、恒温槽(タバイエスペック(株)製 装置名 PL−4KPH)を用い、大気中で90℃、60分間の熱処理を行い、光学素子を得た。
[例2]
(基材の前処理)
光学部材を純水洗浄し、乾燥させた。
この光学部材を薄膜形成装置の基板ホルダーにセットした。
(反射防止層の形成)
薄膜形成装置内部の圧力を2×10−4Paとした後、装置内部に、アルゴンガスに55体積%の窒素ガスを混合した混合ガスを導入しながら、シリコンターゲットを用いて、投入電力6kWにてスパッタリングを行い、光学部材上に、厚さ15nm、屈折率(n)2の窒化ケイ素(Si3N4)からなる高屈折率層(第1層)を形成した。
次いで、装置内部に、アルゴンガスに64体積%の酸素ガスを混合した混合ガスを導入しながら、シリコンターゲットには電力6kWを、62atm%Sn含有Siターゲットには電力0.6kWを投入してスパッタリングを行い、高屈折率層(第1層)上に、厚さ35nm、屈折率(n)1.49の錫(Sn)含有酸化ケイ素(SiO2)からなる低屈折率層(第2層)を形成した。
次いで、低屈折率層(第2層)上に、上記高屈折率層(第1層)の場合と同様の材料を用いて同様の形成方法により、厚さ133nmの高屈折率層(第3層)を形成し、さらに、その上に、上記低屈折率層(第2層)の場合と同様の材料を用いて同様の形成方法により、厚さ85nmの低屈折率層(第4層)を形成し、4層構造の反射防止層を形成した。
(防汚コーティング層の形成)
次いで、低屈折率層(第4層)上に、フッ素含有有機化合物Aに代えて、一般式(A−1)(但し、r+s(平均)=40、r/s=0.80〜0.95)で示すフッ素含有有機化合物(フッ素含有有機化合物Bと表記)を用い、かつその膜厚を7.0nmとした以外は、例1の場合と同様にして、防汚コーティング層を形成した。
その後、反射防止層および防汚コーティング層が形成された光学部材を、恒温槽(PL−4KPH)を用い、大気中で90℃、60分間の熱処理を行い、光学素子を得た。
[例3]
防汚コーティング層の形成材料として、フッ素含有有機化合物Aに代えて、オプツールDSX(ダイキン工業(株)製 商品名;フッ素含有有機化合物Cと表記)を用い、かつその膜厚を7.0nmとした以外は、例1の場合と同様の材料を用いて同様の方法により、光学素子を得た。
[例4]
防汚コーティング層は形成せず、例2と同様にして光学部材に反射防止層を形成して、光学素子を得た。
上記例1〜4で得られた光学素子について、以下に示す擦り試験を行い、耐擦傷性を評価した。結果を、光学素子の構成とともに、表2に示す。また、図2及び図3に、例1及び例2の光学素子を作製する際に設計した各反射率特性図を示す。
[擦り試験]
底面が10mm×10mmである平面金属圧子の表面に、スチールウール#0000を装着して、光学素子を擦る摩擦子とした。この摩擦子を用い、平面摩耗試験機3連式(大栄科学精器製作所製)に装着して摩耗試験を行った。具体的には、摩擦子の底面が光学素子の防汚コーティング層(例4では、反射防止層)の表面に接触するように摩耗試験機に取り付け、摩擦子への加重が1000gとなるように重りを載せ、平均速さ4800mm/分、片道30mmで往復摺動した。往復1回で擦り回数1回とし、擦り試験(1)については、擦り回数50回後の表面の外観を目視にて観察し、下記の基準により評価した。
○:擦り傷なし
×:擦り傷あり
擦り試験(2)〜(4)については、擦り回数3000回、5000回、8000回後の表面の水の接触角を測定し、水の接触角が100°以上を「○」、100°以下を「×」として評価した。防汚コーティング層表面の水の接触角の測定は、自動接触角計DM−501(協和界面科学(株)製)を用いて、純水1μLを滴下して行った。防汚コーティング層表面における水接触角の測定箇所5箇所として、その平均値を算出して評価に用いた。
Figure 2014194530
表2から明らかなように、フッ素含有有機化合物Aまたはフッ素含有有機化合物Bを最上層に成膜した例1及び例2で得られた光学素子では、擦り回数が5000回に達しても接触角が100°以上で、良好な耐擦傷性を有していた。特に、フッ素含有有機化合物Bを最上層に成膜し、かつ反射防止層の高屈折率層形成材料としてスティフィネス定数が30×1010N/m2のSi3N4を用い、低屈折率層にSnとSiとの混合酸化物を用いた例2の光学素子では、擦り回数8000回でも接触角が100°以上で、より良好な耐擦傷性を有していた。これに対し、フッ素含有有機化合物Cを最上層に成膜した例3の光学素子では、擦り回数3000回で接触角が100°以下で、反射防止層のみが設けられた例4の光学素子では、僅か50回の擦り回数で傷が見られ、いずれも耐擦傷性が低かった。
本発明の光学素子は、良好な反射防止機能を有しながら、耐擦傷性にも優れており、かかる特性が要求される用途に広く用いることができる。例えば、携帯電話や携帯端末等のカメラ機能部における光学素子では、反射防止機能とともに厳しい耐擦傷性が要求されるため、特に有用である。
1…光学素子、10…光学部材、20…反射防止層、21,21a,21b…高屈折率層、22,22a,22b…低屈折率層、30…防汚コーティング層。

Claims (9)

  1. 透光性材料からなる光学部材と、
    前記光学部材の表面に形成された、スティフィネス定数C33が13×1010N/m2以上の誘電体材料からなる高屈折率層と、Siを含む誘電体材料からなる低屈折率層とを交互に積層してなる反射防止層と、
    前記反射防止層上に形成された、下記一般式(A)で表わされるフッ素含有有機化合物を含む防汚コーティング層と
    を備えることを特徴とする光学素子。

    Rf−R1−Z …(A)

    [式(A)中、R1はエーテル結合を含む炭素数2〜12のアルキレン基であり、Zは下記一般式(B1)で表わされるケイ素原子を含有する1価の有機基、または下記一般式(B2)で表わされる1価の環状オルガノポリシロキサン基であり、Rfは下記一般式(D)で表わされるパーフルオロアルキル基である。]

    −Si(Ra)3−kXk …(B1)

    [式(B1)中、Xは互いに独立にアルコキシ基、オキシアルコキシ基、アシロキシ基、アルケニルオキシ基、及びハロゲン基からなる群より選ばれる基であり、Raは炭素数1〜4のアルキル基またはフェニル基であり、kは2または3である。]

    −Sin(Rb)2nー1On …(B2)

    [式(B2)中、Rbは互いに独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基またはフェニル基であって、その少なくとも1つは下記一般式(C)で表わされる基に置換されており、nは2〜40の整数である。

    −Rc−Si(Ra)3−kXk …(C)

    (式(C)中、Rcは炭素数1〜5のアルキレン基であり、Ra、X及びkは式(B1)における定義と同じである。)]

    F−(CF2CF2O)r−(CF2O)s− …(D)

    [式(D)中、r及びsはそれぞれ1〜200の整数であり、かつr+s(平均)は2〜200である。]
  2. 前記低屈折率層が、SiとSnとの混合酸化物、SiとZrとの混合酸化物、及びSiとAlとの混合酸化物のいずれかにより形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
  3. 前記光学部材が、カバーガラスであることを特徴とする請求項1または2に記載の光学素子。
  4. 前記光学部材が、レンズであることを特徴とする請求項1または2に記載の光学素子。
  5. 前記防汚コーティング層の厚さが15nm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学素子。
  6. 前記光学部材は、酸化物基準のモル百分率表示で、SiO2を62〜68%、Al2O3を6〜12%、MgOを7〜13%、Na2Oを9〜17%、K2Oを0〜7%含有し、Na2OおよびK2Oの含有量の合計からAl2O3含有量を減じた差が10%未満であり、ZrO2を含有する場合、その含有量が0.8%以下である化学強化ガラスからなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学素子。
  7. 前記光学部材は、酸化物基準のモル百分率表示で、SiO2を60〜70%、Al2O3を6〜14%、B2O3を0〜15%、Li2Oを0〜15%、Na2Oを0〜20%、K2Oを0〜10%、MgOを0〜8%、CaOを0〜10%、ZrO2を0〜5%、SnO2を0〜1%、CeO2を0〜1%、As2O3を50ppm未満、Sb2O3を50ppm未満含有し、かつ12%≦Li2O+Na2O+K2O≦20%および0%≦MgO+CaO≦10%である化学強化ガラスからなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学素子。
  8. 前記光学部材は、酸化物基準のモル百分率表示で、SiO2を63.0〜67.5%、Al2O3を9.5〜12.0%、Na2Oを8.5〜15.5%、K2Oを2.5〜4.0%、MgOを3.0〜9.0%、Σ(CaO+SrO+BaO+ZnO)を0〜2.5%、TiO2を0.5〜1.5%、CeO2を0.02〜0.5%、As2O3を0〜0.35%、SnO2を0〜1.0%、F2を0.05〜2.6%含有し、SiO2とAl2O3の含有量の比が5.3〜6.85、Na2OとK2Oの含有量の比が3.0〜5.6、Al2O3とK2Oの含有量の比が2.8〜3.6、Al2O3とTiO2+CeO2の含有量の比が7.6〜18.5である化学強化ガラスからなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学素子。
  9. 前記光学部材がサファイヤからなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学素子。
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