JP2014206510A - ガスクロマトグラフ用データ処理装置、データ処理方法、及び、データ処理用プログラム - Google Patents

ガスクロマトグラフ用データ処理装置、データ処理方法、及び、データ処理用プログラム Download PDF

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Abstract

【課題】従来考慮されていなかったオーブンに設定される設定温度条件と、カラム内部における実際の実温度条件との間のずれ量を推定することができるガスクロマトグラフ用データ処理装置を提供する。【解決手段】オーブンに所定の設定温度条件が設定された状態で恒温分析又は昇温分析により化合物について実測された実測保持時間を記憶する実測保持時間記憶部2と、前記化合物について既知の恒温分析時のデータと、カラム内部の温度条件について仮定した仮説温度条件と、に基づいて算出される予測保持時間を記憶する予測保持時間記憶部5と、前記実測保持時間と前記予測保持時間に基づいて、カラム内部の実温度条件を推定する実温度条件推定部6とを備えた。【選択図】図2

Description

本発明は、ガスクロマトグラフ分析により得られたデータの処理を行うためのデータ処理装置、データ処理方法、及び、データ処理用プログラムであって、例えばある化合物について恒温分析で得られた既知のデータに基づいて、昇温分析時の保持時間等を予測するためのデータ処理等に用いられるものである。
化合物の定性を行う場合、例えばガスクロマトグラフ分析により対象となる化合物の保持時間を測定し、その測定された保持時間から調整保持時間やリテンションインデックスに変換して、データベースから調整保持時間やリテンションインデックスが近い化合物を検索し、化合物の該当候補を絞り込むことが行われている。
ところで、調整保持時間やリテンションインデックスは、保持時間が測定されたときの温度条件によってその値が異なってしまう。より具体的には、恒温分析、昇温分析のいずれで測定されたかや、昇温分析においてどのような昇温速度が設定されたかによって調整保持時間やリテンションインデックスは値が変化してしまう。
このため、ガスクロマトグラフ分析によってある化合物について実測した値とデータベース上の既知の値とがそれぞれの温度条件が異なっているために直接比較する事ができない場合には、データベースに登録されている既知の調整保持時間やリテンションインデックスに基づいて、実測した温度条件であった場合の調整保持時間やリテンションインデックスを予測する事が行われている(特許文献1を参照)。
以下にデータベースに登録されている恒温分析で測定された保持時間から所定の昇温速度で昇温分析を行った場合に測定されるはずの保持時間を予測する方法について説明する。
まず、ある化合物について恒温分析により測定される調整保持時間と、恒温分析時のカラムの温度との間には式1に示すような関係があることが知られている。
ここで、t’:調整保持時間、T:恒温分析時のカラム温度である。すなわち、恒温分析時の調整保持時間の対数は、恒温分析時のカラム温度の逆数と線形関係がある。そして、各係数a、bについてはある化合物についてデータベースに登録されている恒温分析時の温度が異なる2つの調整保持時間を取得し、式1へ代入して連立方程式を解くことで決定することができる。また、式1から任意の温度Tにおける恒温分析時の保持時間tについても求められる。
さらに、恒温分析での保持時間から昇温分析での保持時間を予測するための一般式としては、以下の式2〜4が知られている。
ここで、L:カラム長さ、v(T):温度Tにおける化合物のカラム内部の移動速度、r:設定昇温速度、t:時間、T:初期温度、t:恒温分析での保持時間、t:昇温分析での予測保持時間である。
ここで、カラム長さLは未知の値であるが、式2に式3を代入した状態で左辺、右辺ともにLがあるので消去でき、最終的には式5を解くことになる。
すなわち、式5の右辺の定積分が1となる時間tが昇温分析での保持時間となる。この定積分は、式1から得られる保持時間tと温度Tの関数と、式4の温度Tと時間tとの関数を用いて、式6に示すように積分区間を微小時間Δtで多数に分割した区分求積法により演算することできる。
より具体的には、図8に示すように微小時間Δtごと分割された時刻tにおけるカラム温度Tを式4で算出し、式1に基づいてそれぞれの時刻tにおける恒温分析での保持時間t(T)を算出し、昇温開始時刻から順番に積算していけばよい。そして、nを増やしていき和が1となった時点の時刻tが昇温分析での予測保持時間tとなる。
しかしながら、上述したような手法を用いて既知の恒温分析でのデータから予測された昇温分析での予測保持時間は、カラム温度が予測に用いた昇温速度と同じになるようにオーブンを設定して、ガスクロマトグラフ分析を行った際に実測される実測保持時間と比較して大きなずれが発生する場合がある。
この現象について本願発明者が鋭意検討を行ったところ、図9の各グラフに示すようにオーブンに設定される設定昇温速度に対して、実際のカラム内部の昇温速度である実昇温速度がずれていることが原因であることを見出した。
すなわち、オーブンに設定される設定昇温速度はあくまでも目標値であり、カラム内部の温度を直接測定できないこともあって、図9に示すようにカラム内部の実昇温速度には遅れが生じている可能性が高い。このため、式4等の理想式から算出されるある時刻tにおける温度Tと同時刻tにおける実際のカラム内部温度はずれており、その結果算出される時刻tでの恒温分析での保持時間t(T)も実際の値とは異なった値が算出される。この結果、式6における積算結果も実際と比較して不正確なものとなるために予測された昇温分析時の予測保持時間tは、実測された実測保持時間に対して大きな誤差を有することになる。
また、設定昇温速度と実昇温速度との間には、ずれがあることは推定されるものの、カラム内部の温度を実測することができないため、どの程度ずれているのかを直接測定により定量的に評価することは難しい。加えて、ガスクロマトグラフ分析に用いられるオーブンにも機差が存在するため、保持時間が測定されるガスクロマトグラフごとでも設定昇温速度と実昇温速度との間のずれ量が異なっている可能性がある。これらのことから、設定昇温速度と実昇温速度とのずれ量については定式化や一般化することは難しく、各クロマトグラフの昇温特性をそれぞれ定量的に評価する方法も知られていない。
加えて、上述した昇温分析だけでなく、恒温分析により実測された実測保持時間と、式1等に基づいて算出される予測保持時間との間にも誤差が発生することがある。この原因もオーブンに設定される設定維持温度と、カラム内部の実維持温度とに誤差があるためであると予想される。
すなわち、設定昇温速度や設定維持温度等といったオーブンに設定される設定温度条件と、カラム内部における実昇温速度や実維持温度等といった実温度条件との間に生じている誤差があるために、算出される予測保持時間が実測保持時間から大きく外れることがあると考えられる。
これらのことから、昇温分析だけでなく恒温分析を含めたガスクロマトグラフ分析において定性の精度をより向上させるには、従来考えられていなかったオーブンに設定される設定温度条件とカラムの実温度条件との違いを定量的に評価する、あるいは、予測保持時間を算出する際に実温度条件に近いものを使用できるようにし、より精度よく予測保持時間を算出できるようにする必要がある。
国際公開公報WO2012/118209号公報
本発明は上述したような問題を鑑みてなされたものであり、従来考慮されていなかったオーブンに設定される設定温度条件と、カラム内部における実際の実温度条件との間のずれ量を推定することができ、そのずれ量の推定に基づいて既知の恒温分析時のデータから予測された予測保持時間やリテンションインデックスの予測精度を高めることができるガスクロマトグラフ用データ処理装置、データ処理方法、及び、データ処理プログラムを提供する事を目的とする。
すなわち、本発明のガスクロマトグラフ用データ処理装置は、オーブンに所定の設定温度条件が設定された状態で恒温分析又は昇温分析により実測された実測保持時間を記憶する実測保持時間記憶部と、前記化合物について既知の恒温分析時のデータと、カラム内部の温度条件について仮定した仮説温度条件と、に基づいて算出される予測保持時間を記憶する予測保持時間記憶部と、前記実測保持時間と前記予測保持時間に基づいて、カラム内部の実温度条件を推定する実温度条件推定部とを備えたことを特徴とする。
ここで、温度条件とは恒温分析における維持温度、昇温分析における昇温速度、初期設定温度等を含む概念である。また、保持時間とは、保持時間からボイドタイムが差し引かれた調整保持時間も含む概念である。
このようなものであれば、前記実温度条件推定部は、前記実測保持時間と前記予測保持時間に基づいて、カラム内部の実温度条件を推定するように構成されているので、実測することが難しいカラム内部での実際の実温度条件を測定することなく、前記実昇温条件を推定することができる。また、この推定された実昇温条件に基づいてより精度よく予測保持時間を算出できるようになり、未知試料の定性等における推定精度も向上させることができる。
また、ガスクロマトグラフ分析において特に推定することが難しい昇温速度を精度よく推定できるようにするには、前記実測保持時間記憶部が、オーブンに前記設定温度条件として所定の設定昇温速度が設定された状態で昇温分析により化合物について実測された実測保持時間を記憶し、前記予測保持時間記憶部が、前記化合物について既知の恒温分析時のデータと、前記仮説温度条件として仮定されるものであり、速度補正値とからなる前記仮説温度条件である仮説昇温速度と、に基づいて算出される予測保持時間を記憶するものであり、前記実温度条件推定部が、前記実測保持時間と前記予測保持時間とに基づいて、カラム内部の実温度条件として実昇温速度を推定するように構成されていればよい。
ここで、「前記設定昇温速度に速度補正値が加えられた仮説昇温速度」とは、速度補正値としてゼロのものも含み、仮説昇温速度と設定昇温速度が同一の場合も含む概念である。
このようなものであれば、前記実温度条件推定部は、前記実測保持時間と前記予測保持時間とに基づいてカラム内部の実際の昇温速度である前記実昇温速度を推定するように構成されているので、前記カラム内部の温度を直接測定することなく、前記実昇温速度を得ることができる。
次に本発明によってカラム内部の実昇温速度を推定できる理由について定性的に説明する。
前記実測保持時間は、設定昇温速度の通りに昇温された場合に測定された値ではなく、カラムの実際の昇温速度である実昇温速度で昇温されたときの値を示していると考えられる。このことから前記実測保持時間と前記予測保持時間の値が一致又は近似している場合には、前記予測保持時間を算出するために用いた仮説昇温速度は、前記実昇温速度に略一致していると考えられる。
したがって、例えば前記実測保持時間と前記予測保持時間との誤差を評価し、その誤差が所定の値よりも小さい場合には、その予測保持時間を算出するのに用いた仮説昇温速度が実昇温速度であると推定することができる。また、例えば前記速度補正値を所定範囲に振って複数の予測保持時間を算出し、その中で最も実測保持時間と近い予測保持時間を算出するのに用いた仮説昇温速度を実昇温速度として推定することもできる。
このように前記実温度条件推定部は、前記実測保持時間と前記予測保持時間に基づいて実昇温速度を推定することができる。
推定された実昇温速度を用いて、算出される昇温分析での保持時間の予測精度をさらに高めるには、前記実温度条件推定部において推定された実昇温速度と、既知の恒温分析時のデータと、に基づいて補正後予測保持時間を算出する補正後予測保持時間算出部をさらに備えたものであればよい。
仮説昇温速度としてどのような値を与えるのが適当であるかについて見当をつけるのが難しいために、実昇温速度と近似した値となる速度補正値を設定できず、ランダムな速度補正値しか設定できない場合でも、前記実測保持時間と前記予測保持時間とに基づいて精度よく実昇温速度を推定することができるようにするには、前記予測保持時間記憶部が、前記化合物について複数の速度補正値に基づいてそれぞれ算出された予測保持時間を複数記憶するものであり、前記実温度条件推定部が、前記速度補正値と、前記実測保持時間及び前記予測保持時間の誤差である保持時間誤差の複数の組み合わせに基づいて、速度補正値と保持時間誤差との関係式である速度補正値−誤差関係式を同定する関係式同定部と、前記関係式同定部において同定された速度補正値−誤差関係式に基づいて、前記保持時間誤差が予め定められた所定値となるときの速度補正値である適正速度補正値を算出する適正速度補正値算出部と、前記適正速度補正値算出部において算出された適正速度補正値と、前記設定昇温速度とに基づいて前記実昇温速度を算出する実昇温速度算出部とから構成されていればよい。
このようなものであれば、例えば適当に選ばれた2つの異なる速度補正値を使用した仮説昇温速度で算出された2つの予測保持時間から、速度補正値と前記実測保持時間及び予測保持時間の誤差である前記保持時間誤差との関係を示す速度補正値−誤差関係式を作り、その速度補正値−誤差関係式から予測保持時間と実測保持時間が所定の誤差以内となる場合の速度補正値である適正速度補正値を算出することができる。そして、前記実測保持時間と前記予測保持時間が略一致していることから、設定昇温速度に適正速度補正値を用いて算出される昇温速度は、実昇温速度は略同じ値となる。
設定昇温速度に対して実昇温速度が時間軸方向にオフセットした形で誤差を有している場合だけでなく、昇温を開始してからの経過時間によって設定昇温速度と実昇温速度の誤差が変化するような場合でも実昇温速度を精度よく推定できるようにするには、前記実測保持時間記憶部が、複数の化合物について実測保持時間をそれぞれ記憶するものであり、前記予測保持時間記憶部が、複数の化合物のそれぞれについて速度補正値が異なる仮説昇温速度に基づいて算出された複数の予測保持時間をそれぞれ記憶するものであり、前記実温度条件推定部が、少なくともカラム温度が昇温されるカラム温度昇温区間を各化合物の実測保持時間又は前記設定昇温速度を用いて算出された予測保持時間ごとに分割して複数の分割区間を形成し、各分割区間における実昇温速度を推定するように構成されていればよい。
前記各分割区間の昇温速度を最もよく反映していると考えられる化合物の実測保持時間及び予測保持時間に基づいて実昇温速度を推定するようにして、推定精度をより高めるには、前記関係式同定部が、実測保持時間が実測された各化合物についてそれぞれ前記速度補正値−誤差関係式を同定するように構成されており、前記適正速度補正値算出部が、各化合物の前記速度補正値−誤差関係式に基づいて前記適正速度補正値をそれぞれ算出するように構成されており、前記実昇温速度算出部が、各分割区間に対してそれぞれ各分割区間の終端を示す実測保持時間又は予測保持時間に対応する化合物の前記速度補正値−誤差関係式から算出された前記最小誤差補正値を前記設定昇温速度に加えた昇温速度である中間補正昇温速度を算出し、前記中間補正昇温速度に基づいて前記実昇温速度を算出するように構成されていればよい。
各分割区間に推定された実昇温速度が、一部の分割区間においてのみ精度よくフィッティングされるのではなく、略全ての分割区間において均一にフィッティングされて、実測保持時間と予測保持時間との誤差である保持時間誤差が全体で小さくできるようにするには、前記実昇温速度算出部が、各分割区間について算出した前記中間補正昇温速度に速度再補正値を加えた昇温速度である最終補正昇温速度を算出し、前記最終補正昇温速度を用いて算出された各化合物の予測保持時間と前記実測保持時間の誤差が最も小さくなる最終補正昇温速度を前記実昇温速度として出力するように構成されていればよい。
カラム内部の温度を直接測定することなく、1又は複数の化合物についてそれらの保持時間を実測した結果からカラム内部の温度条件を精度よく推定できるようにするには、オーブンに所定の設定温度条件が設定された状態で恒温分析又は昇温分析により化合物について実測保持時間を実測する保持時間実測ステップと、前記化合物について既知の恒温分析時のデータと、カラム内部の温度条件について仮定した仮説温度条件と、に基づいて予測保持時間を算出する保持時間予測ステップと、前記実測保持時間と前記予測保持時間に基づいて、カラム内部の実温度条件を推定する実温度条件推定ステップとを備えたことを特徴とするガスクロマトグラフ用データ処理方法を用いればよい。
また、既存のガスクロマトグラフ用データ処理装置に対して、上述してきた実温度条件の推定を行うための機能を追加し、例えば予測保持時間の予測精度を高め、より正確な化合物の定性を可能とするには、オーブンに所定の設定温度条件が設定された状態で恒温分析又は昇温分析により実測された実測保持時間を記憶する実測保持時間記憶ステップと、前記化合物について既知の恒温分析時のデータと、カラム内部の温度条件について仮定した仮説温度条件と、に基づいて算出される予測保持時間を記憶する予測保持時間記憶ステップと、前記実測保持時間と前記予測保持時間に基づいて、カラム内部の実温度条件を推定する実温度条件推定ステップとを備えたことを特徴とするガスクロマトグラフ用データ処理プログラムを用いればよい。
このように本発明のガスクロマトグラフ用データ処理装置、データ処理方法、及び、データ処理プログラムによれば、実際に測定された実測保持時間と既知データから予測された予測保持時間とに基づいて、直接カラム内部の温度を測定することなく、間接的に実昇温速度等の実温度条件を推定することができる。また、前記実測保持時間と前記予測保持時間との保持時間誤差は、設定温度条件と補正条件とからなる仮説温度条件と、実温度条件の差を反映するものであるので前記実測保持時間及び前記予測保持時間に基づいて実温度条件を推定することができる。
本発明の一実施形態に係るガスクロマトグラフデータ処理装置を用いた分析システムを示す模式図。 同実施形態に係るガスクロマトグラフデータ処理装置の機能について示す機能ブロック図。 同実施形態における実測保持時間記憶部及び予測保持時間記憶部に記憶されているデータ例。 同実施形態における関係式同定部により同定される速度補正値−誤差関係式を構成するデータ例及びそのグラフ。 同実施形態における実温度条件推定部により出力される中間補正昇温速度の概念を示すグラフ。 同実施形態における実温度条件推定部により出力される最終補正昇温速度の概念を示すグラフ。 同実施形態における実温度条件推定部により推定された実昇温速度を用いた場合の予測保持時間と実測保持時間の誤差の低減効果を示す実験データ。 恒温分析のデータから昇温分析の予測保持時間を算出する際の演算手法を示す模式図。 設定昇温速度と実昇温速度とのずれを示すイメージ図。
本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1に示すように本実施形態のガスクロマトグラフ用データ処理装置100は、ガスクロマトグラフ101と組み合わせて分析システム200を構成してある。
前記ガスクロマトグラフ101は、図1に示すように固定相が内部に塗布された管であるカラム13と、移動相として用いられるキャリアガスをカラム13内に導入するためのキャリアガス導入部11と、前記カラム13内に定性したい化合物を導入するための試料導入部12と、前記カラム13の温度を一定に保つ、又は一定の昇温速度で昇温させるためのオーブン14と、前記カラム13の出口側において通過する物質を検知して電気信号を出力する検知部15と、前記検知部15から出力された電気信号に基づいて、各試料が導入されてからのカラム13の出口に到達するまでの時間である保持時間を測定する保持時間測定部16を備えたものである。
前記オーブン14にはユーザにより様々な昇温分析条件、恒温分析条件を含む温度条件を設定できるように構成してあり、昇温分析における温度条件として少なくとも初期オーブン温度と、設定昇温速度、昇温開始時刻、昇温終了時刻等が設定でき、恒温分析における温度条件として設定維持温度を設定できる。このオーブン14内には温度センサ(図示しない)が設けられており、設定された初期オーブン温度と設定昇温速度に決定される各時刻での目標温度と、前記温度センサで測定される測定温度との差が小さくなるように温度のフィードバック制御が行われるように構成してある。すなわち、フィードバック制御であるため、ユーザにより設定された目標値である設定昇温速度と、実際のカラム13内の昇温速度である実昇温速度との間には遅れ等の誤差がわずかに発生することになる。
前記ガスクロマトグラフ用データ処理装置100は、ガスクロマトグラフ分析により得られた化合物の調整保持時間やリテンションインデックスと、データベースに登録されている、又は、既知のデータに基づいて算出される各化合物の調整保持時間やリテンションインデックスとを比較し、化合物を定性するために用いられるものである。
そして、このガスクロマトグラフ用データ処理装置100では、前記ガスクロマトグラフ101で昇温分析を行った場合に、カラム13内部で生じている温度変化を略そのまま反映させて既知の恒温分析での保持時間から昇温分析での保持時間である予測保持時間を算出できるように構成してある。言い換えると、予測保持時間と、ガスクロマトグラフ101によって実測される実測保持時間との誤差が所定値以下となるようにするために、必要な場合には予測保持時間を算出する際に用いられる昇温速度をオーブン14に設定される設定昇温速度ではなく、別の昇温速度に補正して予測保持時間を算出するようにガスクロマトグラフ用データ処理装置100は構成してある。
より具体的には、前記ガスクロマトグラフ用データ処理装置100は、CPU、メモリ、A/D、D/Aコンバータ、入出力機器、モニタ等からなるいわゆるコンピュータによって構成されており、各機器が協業するとともにメモリに格納されたガスクロマトグラフ用データ処理プログラムが実行されることによって図2の機能ブロック図に示すような各部の機能を発揮するものである。
すなわち、前記ガスクロマトグラフ用データ処理装置100は、図2(a)に示すように実測された実測リテンションインデックスと、既知のデータから予測される予測リテンションインデックスとを比較し、未知試料の定性を行う定性部C1と、前記定性部C1で実測値との比較に用いられる予測リテンションインデックスや予測保持時間を既知データに基づいて算出する既知データ変換部C2とから構成してある。
ここで、恒温分析のリテンションインデックスとは、式7に示すように未知試料又は化合物の調整保持時間の対数と、アルカン等の標準物質が示す調整保持時間の対数により算出される値である。また、昇温分析のりテンションインデックスは式7’に示すように未知試料又は化合物の調整保持時間とアルカン等の標準物質が示す調整保持時間により算出される値である。
ここで、I:リテンションインデックス、t’(X):未知試料又は化合物の調整保持時間、t’(P):炭素数Zのアルカンの調整保持時間、t’(PZ+1):炭素数Z+1のアルカンの調整保持時間、Z:アルカンの炭素数である。
そして、リテンションインデックスは、ガスクロマトグラフ分析が行われる際のオーブン14の温度などの温度条件が異なると同じ化合物であってもその値が異なってしまうものの、理論上カラム13の長さやキャリアガスの線速度等といったガスクロマトグラフ101の機差に関する影響を受けないようにできる。そこで、前記定性部C1は、リテンションインデックスが実測された温度条件と同じ温度条件を反映した予測リテンションインデックスを算出し、比較を行えるようにしている。
すなわち、前記定性部C1は、実測リテンションインデックスと予測リテンションインデックスの比較を行うために、実測保持時間、予測保持時間から各々の値を算出するように構成してある。実測リテンションインデックスは、例えば未知試料について前記ガスクロマトグラフ101により恒温分析又は昇温分析で実測された保持時間や、標準物質の保持時間から算出される。また、予測リテンションインデックスは、前記既知データ変換部C2において既知データから実測リテンションインデックスの恒温分析条件や昇温分析条件等の温度条件と一致するように変換された各化合物の保持時間や標準物質の保持時間から算出される。そして、前記定性部C1は算出した実測リテンションインデックスと、予測リテンションインデックスとを比較し、実測リテンションインデックスに対して予測リテンションインデックスが一致する化合物があった場合、未知試料は一致した化合物に該当すると判定し、その化合物名を出力するように構成してある。
前記既知データ変換部C2は、図2(b)に示すように少なくとも実測保持時間記憶部2、恒温分析既知データ記憶部3、恒温−昇温変換部4、予測保持時間記憶部5、実温度条件推定部6、補正後予測保持時間算出部7としての機能を発揮するものである。
各部について説明する。
前記実測保持時間記憶部2は、前記ガスクロマトグラフ101により設定温度条件として設定昇温速度を用いて昇温分析を行った場合に実測された保持時間である実測保持時間を複数の化合物についてそれぞれ記憶するものである。本実施形態では例えば図3(a)に示すように複数の化合物についてそれぞれ設定昇温速度を変化させた場合の実測保持時間を記憶している。ここで、オーブン14の温度フィードバック制御には誤差が存在し、カラム13内部の温度は設定昇温速度通りには昇温しない。したがって、前記実測保持時間はユーザの設定した設定昇温速度の通りに昇温された結果得られた値ではなく、設定昇温速度とは別の実昇温速度で昇温分析された結果得られた値であると考えられる。
図2(b)に示すように前記恒温分析既知データ記憶部3は、例えばNIST等のデータベースに登録されている多数の化合物について調整保持時間やリテンションインデックス等の既知のデータを記憶するものである。本実施形態では、式8に示すような各化合物について恒温分析での保持時間と恒温分析時の温度との関係を示す保持時間−温度関係式についても化合物ごとに記憶している。
ここで、t:恒温分析での保持時間、t:メタンや希ガス等のカラム13に保持されない成分の保持時間(ボイドタイム)、a、b:化合物ごとに決まる固有の係数、T:温度である。なお、以下の説明ではこの式8の関数をRT算出関数とも呼ぶ。
前記恒温−昇温変換部4は、恒温分析で既知のデータから昇温分析での保持時間を算出するものである。より具体的には、ユーザによりオーブン14に設定された設定昇温速度、初期温度、速度補正値を用いて任意の昇温分析条件での保持時間として予測される予測保持時間を式8、9、10に基づいて算出する。言い換えると、前記恒温−昇温変換部4は、設定昇温条件である設定昇温速度と、補正条件である速度補正値とからなり、カラム13内部の温度条件について仮定した仮説温度条件での予測保持時間を式8、9、10に基づいて算出するように構成してある。
ここで、t:昇温分析での予測保持時間、t(T):式8で求められる温度Tでの恒温分析での保持時間、r:設定昇温速度、t:時間、T:初期温度、h:速度補正値である。
なお、式10は昇温分析時のカラム13内部の温度を示す式である。本実施形態ではオーブン14に設定される設定昇温速度と実際のカラム13の昇温速度である実昇温速度はずれていると考えているので、設定昇温速度rに速度補正値hを足した値r+hである仮説昇温速度を実昇温速度の候補として用いている。式10から明らかなように速度補正値がゼロのときはオーブン14に設定された設定昇温速度をそのまま使うことになる。また、式9による昇温分析での予測保持時間tの決定方法の詳細については発明の背景に記載したものと同様であるので説明を省略する。
また、前記恒温−昇温変換部4は、前記恒温分析既知データ記憶部3から式8に示したRT算出関数を直接取得できない場合には、登録されている恒温分析の温度が異なる2つのリテンションインデックスからそれぞれ2つの調整保持時間を算出し、その後RT算出関数を同定するようにも構成してある。
より具体的には前記恒温−昇温変換部4は、式7のリテンションインデックスを算出する式について調整保持時間について解き、式11、式12に示すように同一の化合物について測定された既知の2つの異なる温度でのリテンションインデックスを代入して2つの異なる温度での調整保持時間へ変換する。
ここで、IT1、IT2:化合物の温度T、Tにおける既知のリテンションインデックス、t’T1、t’T2:化合物の温度T、Tにおける調整保持時間、t’T1(P)、t’T2(P):炭素数Zのアルカンの温度T、Tにおける調整保持時間、t’T1(PZ+1)、t’T2(PZ+1):炭素数Z+1のアルカンの既知温度T1、T2における調整保持時間、Z:炭素数である。なお、炭素数Zはガウス記号[ ]を用いて表すと、式11ではZ=[IT1]、式12ではZ=[IT2]で選択される整数である。
そして、前記恒温−昇温変換部4は、発明の背景に記載した式1に示すように調整保持時間の対数と温度の逆数は線形関係があることを利用して、式13に示すように2つのリテンションインデックスからRT算出関数を同定する。
ここで、T:恒温分析温度、t’:化合物の恒温分析温度Tにおける調整保持時間である。
このようにして、前記恒温−昇温変換部4は既知のリテンションインデックスから任意の温度Tにおける恒温分析での調整保持時間を算出するためのRT算出関数を同定して式8の代わりに用いる場合もある。
前記予測保持時間記憶部は、前記化合物について既知の恒温分析時のデータと、前記設定温度条件と補正条件とからなる仮説温度条件と、に基づいて算出される予測保持時間を記憶するものである。より具体的には、前記予測保持時間記憶部5は、本実施形態では前記ガスクロマトグラフ101により昇温分析された各化合物と同じ化合物について前記恒温−昇温変換部4において変換された昇温分析での予測保持時間を記憶するものである。この予測保持時間記憶部5は、仮説温度条件として設定された各化合物についてそれぞれ補正条件である速度補正値の異なる仮説昇温速度で変換された予測保持時間を前記速度補正値と対にして記憶している。本実施形態では速度補正値は仮説昇温速度が設定昇温速度を中心として所定の範囲内に均等に散らばるように−1≦h≦1となるように設定してある。この速度補正値の条件設定については上記例に限られるものではなく、ガスクロマトグラフ101の機差等に応じて適宜設定すればよい。前記予測保持時間記憶部5が記憶している予測保持時間の一例として、速度補正値が0であり、オーブン14に設定されている設定昇温速度をそのまま使用して算出された予測保持時間について図3(b)に示す。さらに、この予測保持時間記憶部5は図3(c)に示すように各設定昇温速度に対してそれぞれ異なる補正値を加えた仮説昇温速度で算出された予測保持時間についても同様に記憶している。
ここで設定昇温速度をそのまま用いた場合、実測保持時間と予測保持時間との間に大きな保持時間誤差が発生していることを図3(d)に示す。図3(d)は図3(b)の各予測保持時間から図3(a)の各実測保持時間時間を引き、60倍して秒数表示にしたものである。この図3(c)から沸点が低い化合物ほど保持時間誤差が大きく、沸点の高い物質ほどその誤差がプラス側へ変化し、絶対値が小さくなっていることが分かる。このことから、設定昇温速度に対して実昇温速度はずれており、特に立ち上がり部分において大きな遅れが生じていると考えられる。
図2(b)に示す前記実温度条件推定部6は、ある設定昇温速度で実測された前記実測保持時間と前記予測保持時間に基づいて、カラム13内部の実温度条件のひとつである実昇温速度を推定するように構成してある。ここで、前記実温度条件推定部6は、オーブン14に設定されている設定昇温速度ごとに対応する実昇温速度を推定するとともに、図5に示すようにカラム温度が昇温されるカラム温度昇温区間について同時に昇温分析を開始された各化合物について前記設定昇温速度を用いて算出された予測保持時間ごとに分割して複数の分割区間を形成し、各分割区間における実昇温速度を推定するように構成してある。本実施形態では4つの化合物について実測保持時間を得ているので、図5に示すように4つの分割区間を形成している。なお、分割区間は各化合物について実測された実測保持時間に基づいて分割しても構わない。また、本実施形態ではカラム温度昇温区間のみを分割しているが、昇温分析において一定温度に保っている区間も含んで分割するようにしてもよい。
そして、上述した昇温速度の推定のために前記実温度条件推定部6は、図2(b)に示すように関係式同定部61と、適正速度補正値算出部62と、実昇温速度算出部63とから構成してある。各部についてその構成及び動作について説明しながら実昇温速度の推定方法について説明する。
前記関係式同定部61は、前記速度補正値と、前記実測保持時間及び前記予測保持時間の誤差である保持時間誤差の複数の組み合わせに基づいて、速度補正値と保持時間誤差との関係式である速度補正値−誤差関係式を同定するものである。本実施形態では、前記関係式同定部61は、実測保持時間を取得している各化合物について前記速度補正値−誤差関係式を同定するように構成してある。ここで、設定昇温速度が5℃/minに設定されている場合を具体例として図3(c)に示した仮説昇温速度を用いて算出された予測保持時間と実測保持時間との誤差である保持時間誤差について図4(a)に示す。また、図4(b)に速度補正値と保持時間誤差との関係を示すグラフを示す。
図4から分かるように速度補正値と保持時間誤差との間には1対1の対応関係があり、速度補正値と保持時間誤差の複数の組み合わせがあれば、速度補正値−誤差関係式として近似直線又は近似曲線を同定することができる。また、このグラフから分かるように各直線は横軸と交差していることから、保持時間誤差がゼロとなる速度補正値が各化合物にそれぞれ存在していることも分かる。
速度補正値−誤差関係式が各化合物について同定されると、図2(b)に示される前記適正速度補正値算出部62は、前記関係式同定部61において同定された速度補正値−誤差関係式に基づいて、前記保持時間誤差が予め定めた所定値であるゼロとなるときの速度補正値である適正速度補正値を各化合物について算出するように構成してある。すなわち、前記適正速度補正値算出部62は、図4(b)において各直線において横軸と交差している時の速度補正値を適正速度補正値として取得するように構成してある。本実施形態では、図4(b)のグラフから前記適正速度補正値算出部62によって算出される第1〜第4分割区間に対応する適正速度補正値はそれぞれ−0.45,−0.2,−0.13,−0.07である。なお、この予め定めた所定値はゼロ以外の値に設定してもよい。例えば、実測保持時間と予測保持時間との間の保持時間誤差として許容できる大きさに基づいて前記予め定めた所定値として設定してもよい。
次に前記実昇温速度算出部63は、図5に示すように前記適正速度補正値算出部62において算出された適正速度補正値と、前記設定昇温速度とに基づいて前記実昇温速度を各分割区間に対して算出するよう構成してある。
より具体的には、前記実昇温速度算出部63は、まず、各分割区間に対してそれぞれ各分割区間の終端を示す予測保持時間に対応する化合物の前記速度補正値−誤差関係式から算出された前記最小誤差補正値を前記設定昇温速度に加えた昇温速度である中間補正昇温速度を算出するように構成してある。すなわち、図5に示す具体例では、昇温開始からSamle Number 1の化合物が検出される予測保持時間までの第1分割区間には、Samle Number 1の化合物の速度補正値―誤差関係式で算出された適正速度補正値が設定昇温速度に加えられたものが中間補正昇温速度として算出される。Samle Number 1の化合物が検出されてからSamle Number 2の化合物が検出されるまでの第2分割区間については、Samle Number 2の化合物の速度補正値−誤差関係式で算出された適正速度補正値が設定昇温速度に加えられたものが中間補正値昇温速度として算出される。以下、第3分割区間、第4分割区間についても同様に前記実昇温速度算出部63は動作する。従って、前記実昇温速度算出部63により算出される第1〜第4分割区間の中間補正昇温速度はそれぞれ5−0.45=4.55,5−0.20=4.80,5−0.13=4.87,5−0.07=4.93となる。
そして、本実施形態では前記実昇温速度算出部63は、図5に示すようにカラム温度昇温区間全体で見た場合、中間補正昇温速度が分割区間ごとに変化し、各分割区間の境界において連続となる関数として昇温条件を補正している。すなわち、各分割区間の開始点は直前までの関数で算出し、算出された開始点と算出された中間補正昇温速度から次の関数を決め、カラム13内部の温度変化を示す折れ線を定義している。なお、各分割区間のカラム13の温度変化を示す直線は、昇温開始時刻における初期温度を通るとともに、前記中間補正昇温速度を有する直線として定義するなどして、各分割区間において不連続な関数として定義してもよい。
次に前記実昇温速度算出部63は、図5に示すような中間補正昇温速度に対してさらに速度再補正値を加えた昇温速度である最終補正昇温速度を算出し、速度再補正値を所定範囲内で振って予測保持時間を算出する。すなわち、図6のグラフに示すように各分割区間の昇温速度を太点線で示す範囲で変化させた状態で予測保持時間を算出するように前記実昇温速度算出部63は構成してある。さらに、前記実昇温速度算出部63は、各速度再補正値Hを用いた場合の予測保持時間と実測保持時間との保持時間誤差を算出し、各化合物における保持時間誤差が最も小さくなる速度再補正値を探索する。そして、前記実昇温速度算出部63は、それぞれの分割区間の中間補正昇温速度に対して探索された速度再補正値を加えたものを実昇温速度として推定して出力するように構成してある。言い換えると同一の速度再補正値を各分割区間の中間補正昇温速度に対して加えることで、前記実昇温速度算出部63は、カラム昇温区間全体における昇温速度のフィッティングを行っていることになる。
最後に前記補正後予測保持時間算出部7は、前記実温度条件推定部6において推定された実昇温速度と、前期恒温分析既知データ記憶部3に記憶されている既知の恒温分析時のデータと、に基づいて補正後予測保持時間を算出し、実昇温速度が反映されてより正確な値となった予測保持時間を前記定性部C1へと出力するように構成してある。
このように本実施形態のガスクロマトグラフ用データ処理装置100によれば、実測保持時間と、予測保持時間とに基づいて実際のカラム13内部の温度変化を示す実昇温速度を推定することができる。
本実施形態において示した方法により推定された実昇温速度を用いて予測保持時間を算出した場合の保持時間誤差と、オーブン14に設定された設定昇温速度をそのまま用いて予測保持時間を算出した場合の保持時間誤差とを図7に示す。
図7(a)に示すように前記実温度条件推定部6で推定された実昇温速度を用いて昇温分析の予測保持時間を算出した場合、実測保持時間に対する誤差が±3秒以内の精度で推定されたものが13/20であった。一方、図7(b)に示すように設定昇温速度をそのまま用いて予測保持時間を算出した場合、実測保持時間に対する誤差が±3秒以内の精度で推定されたものは6/20しかなかったことから予測保持時間の算出精度が向上できていることが確認できる。また、図7(a)及び(b)を比較すれば分かるように、推定された実昇温速度を用いることにより特に沸点の低い化合物においては誤差を大幅に低減できている。
そして、前記実温度条件推定部6で推定された実昇温速度を用いて算出される補正後予測保持時間が前記定性部C1で使用されて、予測リテンションインデックスが算出されるので実際のリテンションインデックスとの誤差をより小さくすることができる。
したがって、前記ガスクロマトグラフ101により実測された実測リテンションインデックスと様々な既知のデータから算出された予測リテンションインデックスを比較して、未知試料がどの化合物に該当するかを高い精度で定性する事が可能となる。
その他の実施形態について説明する。
前記実施形態では、中間補正昇温速度をさらに速度再補正値により再補正したものを実昇温速度として出力するように前記実温度条件推定部は構成されていたが、再補正を行わずに図5に示したような中間補正昇温速度を実昇温速度として出力するように構成しても構わない。また、複数の化合物の実測保持時間を用いて分割区間ごとに実昇温速度の推定を行うのではなく、単一の化合物の実測保持時間と予測保持時間に基づいて実昇温速度を推定しても構わない。さらに、前記実温度条件推定部は、図5のグラフに示すように昇温条件を連続関数として算出していたが、各分割区間の境界において不連続となるように各関数を算出するようにしてもよい。また、前記実施形態では実測保持時間と各速度補正値により定まる予測保持時間とに基づいて、各分割区間における昇温速度を示す傾きのみを推定し、各分割区間の直接が連続となるようにしていたが、例えば、傾きだけでなくある時刻での温度や、昇温分析における温度変化を表す式の切片等についても推定するようにしてもよい。
前記速度補正値としては設定昇温速度に加えることにより仮説昇温速度を設定していたが、例えば速度補正値を前記設定昇温速度に乗じることで仮説昇温速度を設定してもよい。また、カラム内部の温度条件について仮定した仮説温度条件は、設定昇温条件や補正条件を用いずに、例えば各パラメータを乱数等で決定したとしても、設定昇温条件と、補正条件の2つに分解することができる。言い換えると、仮説温度条件については如何なる決め方をしたとしても、設定温度条件と補正条件とからなる温度条件として表すことができる。
前記実温度条件推定部は、速度補正値−誤差関係式をまず同定し、その同定された式に基づいて適正速度補正値を求めるように構成されていたが、例えばこのような速度補正値−誤差関係式を同定せずに、ランダムに速度補正値を振り、算出される予測保持時間が実測保持時間と一致するもの、あるいは、算出される予測保持時間と実測保持時間の誤差である保持時間誤差が所定値以下となるものを総当たりで探索するようにしてもよい。言い換えると前記実温度条件推定部が、実昇温速度の候補となる仮説昇温速度を設定昇温速度に基づいて複数作成し、仮説昇温速度で算出された予測保持時間と、実測保持時間を比較して最も適当な仮説昇温速度を実昇温速度として推定するようにしてもよい。要するに、実測保持時間と予測保持時間を使用すれば設定昇温速度よりも実体に近い実昇温速度を見つけることができる。
また、ガスクロマトグラフ用データ処理装置にユーザからの入力を受け付ける受付部をさらに設けてもよい。より具体的には、設定昇温速度と速度補正値とからなる仮説昇温速度を設定する際に、速度補正値をユーザが好きな値を設定できるように速度補正値を受け付けるようにしてもよい。また、複数の補正条件を用いて算出された実昇温速度のうちいずれを用いて予測保持時間を算出するようにするかについてユーザからの選択を受け付けられるように受付部を構成してもよい。
加えて、前記実施形態で恒温分析におけるカラム内部の実昇温速度を推定するよう前記温度条件推定部は構成してあったが、その他の温度条件としてオーブンに一定温度に保つように設定される設定初期温度等に対する実際のカラム内部の温度を実測保持時間と予測保持時間に基づいて推定するように構成してもよい。
さらに、昇温分析だけでなく恒温分析におけるオーブンに設定される設定温度条件と、カラム内部の実際の温度条件である実温度条件との誤差を推定したり、前記実温度条件そのものを推定したりするように前記温度条件推定部を構成してもよい。
より具体的には、恒温分析時における温度条件の推定では、設定温度条件が、オーブンに設定される設定維持温度であり、補正条件が補正温度であり、仮説温度条件が、設定維持温度と複数の補正温度とから算出される仮説維持温度となる。そして、それぞれ補正温度の異なる複数の仮説維持温度で予測保持時間を算出し、実測保持時間との差が予め定めた所定値よりも小さくなる仮説維持温度を実温度条件である実維持温度として推定するように前記実温度条件推定部を構成すればよい。
このように本発明によれば、恒温分析又は昇温分析においてオーブンに設定される各種設定温度条件(設定維持温度、設定初期温度、設定昇温速度、設定昇温時間等)に対するカラム内部における実温度条件(実維持温度、実初期温度、実昇温速度、実昇温時間等)との間の誤差や、関係を推定し、さらに実温度条件を推定することができる。
前記実施形態では、実測リテンションインデックスと比較される予測リテンションインデックスを正確に算出するために実昇温速度の推定を行っているが、例えば調整保持時間同士の比較のため等その他の目的のために実昇温速度の推定を行っても構わない。また、オーブンの特性やカラム内部の温度変化特性をより正確に把握するために本発明の実昇温速度の推定方法を用いてもよい。
さらに既存のガスクロマトグラフ用データ処理装置に対して、実昇温速度を推定するための機能を付加する場合には、例えば記録媒体に記録された前記ガスクロマトグラフ用データ処理プログラムを当該データ処理装置に対してインストールすればよい。
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な変形や実施形態の組み合わせを行っても構わない。
200・・・分析システム
100・・・ガスクロマトグラフ
101・・・ガスクロマトグラフ用データ処理装置
2 ・・・実測保持時間記憶部
3 ・・・恒温分析既知データ記憶部
4 ・・・恒温−昇温変換部
5 ・・・予測保持時間記憶部
6 ・・・実温度条件推定部
61 ・・・関係式同定部
62 ・・・適正速度補正値算出部
63 ・・・実昇温速度算出部
7 ・・・補正後予測保持時間算出部

Claims (9)

  1. オーブンに所定の設定温度条件が設定された状態で恒温分析又は昇温分析により化合物について実測された実測保持時間を記憶する実測保持時間記憶部と、
    前記化合物について既知の恒温分析時のデータと、カラム内部の温度条件について仮定した仮説温度条件と、に基づいて算出される予測保持時間を記憶する予測保持時間記憶部と、
    前記実測保持時間と前記予測保持時間とに基づいて、カラム内部の実温度条件を推定する実温度条件推定部とを備えたことを特徴とするガスクロマトグラフ用データ処理装置。
  2. 前記実測保持時間記憶部が、オーブンに前記設定温度条件として所定の設定昇温速度が設定された状態で昇温分析により化合物について実測された実測保持時間を記憶し、
    前記予測保持時間記憶部が、前記化合物について既知の恒温分析時のデータと、前記仮説温度条件として仮定されるものであり、前記設定昇温速度と速度補正値とからなる仮説昇温速度と、に基づいて算出される予測保持時間を記憶するものであり、
    前記実温度条件推定部が、前記実測保持時間と前記予測保持時間とに基づいて、カラム内部の実温度条件として実昇温速度を推定するように構成されている請求項1記載のガスクロマトグラフ用データ処理装置。
  3. 前記実温度条件推定部において推定された実昇温速度と、既知の恒温分析時のデータと、に基づいて補正後予測保持時間を算出する補正後予測保持時間算出部をさらに備えた請求項2記載のガスクロマトグラフ用データ処理装置。
  4. 前記予測保持時間記憶部が、前記化合物について複数の速度補正値に基づいてそれぞれ算出された予測保持時間を複数記憶するものであり、
    前記実温度条件推定部が、
    前記速度補正値と、前記実測保持時間及び前記予測保持時間の誤差である保持時間誤差の複数の組み合わせに基づいて、速度補正値と保持時間誤差との関係式である速度補正値−誤差関係式を同定する関係式同定部と、
    前記関係式同定部において同定された速度補正値−誤差関係式に基づいて、前記保持時間誤差が予め定められた所定値となるときの速度補正値である適正速度補正値を算出する適正速度補正値算出部と、
    前記適正速度補正値算出部において算出された適正速度補正値と、前記設定昇温速度とに基づいて前記実昇温速度を算出する実昇温速度算出部とから構成されている請求項2又は3いずれかに記載のガスクロマトグラフ用データ処理装置。
  5. 前記実測保持時間記憶部が、複数の化合物について実測保持時間をそれぞれ記憶するものであり、
    前記予測保持時間記憶部が、複数の化合物のそれぞれについて速度補正値が異なる仮説昇温速度に基づいて算出された複数の予測保持時間をそれぞれ記憶するものであり、
    前記実温度条件推定部が、少なくともカラム温度が昇温されるカラム温度昇温区間を各化合物の実測保持時間又は前記設定昇温速度を用いて算出された予測保持時間ごとに分割して複数の分割区間を形成し、各分割区間における実昇温速度を推定するように構成されている請求項2乃至4いずれかに記載のガスクロマトグラフ用データ処理装置。
  6. 前記関係式同定部が、実測保持時間が実測された各化合物についてそれぞれ前記速度補正値−誤差関係式を同定するように構成されており、
    前記適正速度補正値算出部が、各化合物の前記速度補正値−誤差関係式に基づいて前記適正速度補正値をそれぞれ算出するように構成されており、
    前記実昇温速度算出部が、各分割区間に対してそれぞれ各分割区間の終端を示す実測保持時間又は予測保持時間に対応する化合物の前記速度補正値−誤差関係式から算出された前記最小誤差補正値を前記設定昇温速度に加えた昇温速度である中間補正昇温速度を算出し、前記中間補正昇温速度に基づいて前記実昇温速度を算出するように構成されている請求項5記載のガスクロマトグラフ用データ処理装置。
  7. 前記実昇温速度算出部が、各分割区間について算出した前記中間補正昇温速度に速度再補正値を加えた昇温速度である最終補正昇温速度を算出し、
    前記最終補正昇温速度を用いて算出された各化合物の予測保持時間と前記実測保持時間の誤差が最も小さくなる最終補正昇温速度を前記実昇温速度として出力するように構成された請求項6記載のガスクロマトグラフ用データ処理装置。
  8. オーブンに所定の設定温度条件が設定された状態で恒温分析又は昇温分析により化合物について実測保持時間を実測する保持時間実測ステップと、
    前記化合物について既知の恒温分析時のデータと、カラム内部の温度条件について仮定した仮説温度条件と、に基づいて予測保持時間を算出する保持時間予測ステップと、
    前記実測保持時間と前記予測保持時間とに基づいて、カラム内部の実温度条件を推定する実温度条件推定ステップとを備えたことを特徴とするガスクロマトグラフ用データ処理方法。
  9. オーブンに所定の設定温度条件が設定された状態で恒温分析又は昇温分析により化合物について実測された実測保持時間を記憶する実測保持時間記憶ステップと、
    前記化合物について既知の恒温分析時のデータと、カラム内部の温度条件について仮定した仮説温度条件と、に基づいて算出される予測保持時間を記憶する予測保持時間記憶ステップと、
    前記実測保持時間と前記予測保持時間に基づいて、カラム内部の実温度条件を推定する実温度条件推定ステップとを備えたことを特徴とするガスクロマトグラフ用データ処理プログラム。
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